フランス大統領マクロン氏は3月31日午後、特別機で羽田空港に到着した。日仏両政府は1日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)も東京都内で開催する。今回の訪日で、2026年末稼働予定の欧州初の「重レアアース精製・リサイクル工場」は、日本(JOGMEC+岩谷産業)が約1億ユーロ出資し、日本向けに長期供給契約を結んだことも明らかになった。
日本のレアアースに関する中国依存度は、しだいに下がっていく環境が整備されて行く。8月には「重要鉱物特恵市場」(55ヶ国参加)が稼働する。中国の張り巡らした対日レアアース包囲網は、確実に縮小される状況だ。
建設場所は、フランス南西部ピレネー=アトランティック県で、欧州のレアアース精製拠点としては初の本格的施設になる。年間生産量(重レアアース中心)は、ジスプロシウム(Dy)+テルビウム(Tb)で600トンである。世界生産量の約15%に相当するという大規模なものだ。ネオジム(Nd)+プラセオジム(PR)は、800トンとされている。これらは、EVモーター・風力発電・電子部品の永久磁石に不可欠なものだ。
日仏官民共同プロジェクトになる。日本側は、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)と岩谷産業が共同で 「Japan France Rare Earth Company(仮称)」を設立し、1億1000万ユーロの出資+株主ローンを提供する。フランス側は、Carester社(レアアース精製企業)とその子会社 Caremag社が工場建設・運営を担当する。日仏政府の支援は、日本政府がJOGMEC経由で約1億ユーロ拠出。フランス政府が補助金+税額控除など計1億600万ユーロ支援 する。
日本の戦略的メリットは、極めて大きい。
1)日本向け長期供給契約を確保
生産される重レアアース(Dy・Tb)の日本需要の約20%を長期契約で確保するので、中国依存度を大幅に低減させられる。
2)欧州に「日本主導の精製拠点」を持つ初のケース
日本企業が、欧州のレアアース精製に深く関与するのは初めてである。重要鉱物のサプライチェーンを「日米欧」で再構築する流れの中心に日本が入るからだ。
3)製錬技術の環境性能が極めて高い。
CO₂排出の80%以上をプロセス内で再利用し、水使用量を最小化する。液体排出ゼロの特許技術を持つ。日本の化学的精錬法を採用しないが、日本と相互補完関係にある。仏企業は、液体排出ゼロやCO₂再循環システムに力点を置き、重レアアース(Dy・Tb)に特化した分離工程である。その意味では、化学的精錬法でも特殊な技術体系である。日本型の化学的精錬法は、高純度・高回収率・重レアアース分離の精密さにある。
日本が、欧州に共同出資という形でレアアース精錬工場を確保するメリットは次の点にある。
1)欧州に「非中国型精錬」が誕生したこと。中国方式以外の精錬が、世界標準になり得ることを示した。これによって、日本方式の国際標準化に追い風となる。
2)日本が出資し、供給契約を確保したこと。日本は欧州精錬の「共同オーナー」となり、将来、日本方式を組み込む余地が生まれる可能性が高まった。
3)日本企業が、欧州の実証データにアクセスできることで、日本方式の改良・国際展開に有利となる。
『毎日新聞 電子版』(3月31日付)は、「日仏、レアアースを共同調達 首脳会談で合意へ 精製工場も稼働」と題する記事を掲載した。
日仏両政府が経済安全保障分野での連携強化の一環で、第三国からレアアース(希土類)を共同調達する方針を固めたことが分かった。1日に予定する高市早苗首相とマクロン仏大統領の会談で合意する。会談に合わせて発表される首脳共同声明には「日仏重要鉱物協力ロードマップ(行程表)」の策定方針を盛り込み、行程表に基づきレアアースのサプライチェーン(供給網)の強化に取り組む。
(1)「中国がレアアースの輸出規制強化の姿勢を打ち出す中、日本はフランスと共に調達先を多角化し、安定供給につなげたい考えだ。日仏両政府は官民の共同プロジェクトとして、仏南部にレアアース精製工場を建設。2026年末に稼働予定で、電気自動車のモーターの永久磁石などに使用される重レアアースを生産する。経済産業省によると、将来の日本の需要の2割に当たる供給を受ける長期契約を結んでいる」
重レアアースの長期安定供給を受ける長期契約を結んでいる。日本の需要の2割相当である。
(2)「日仏両政府は、このプロジェクトで使われる鉱石のレアアースを共同調達することで一致。アジアや南米などに調達先を広げ、供給網を多角化する。新たな重要鉱物の共同投資プロジェクトについても検討し、両国で会合を開催する。共同声明では、レアアースの輸出規制を強める中国を念頭に「重要鉱物に対する輸出規制は重大な悪影響を及ぼす可能性がある」と深刻な懸念を表明。「両国の産業にとって不可欠な重要鉱物のサプライチェーンの多角化に貢献する」と明記する。人工知能(AI)や宇宙分野における軍民両用技術での連携強化なども盛り込む」
レアアース鉱石を日仏が共同調達する。アジアや南米などに調達先を広げ、供給網を多角化することになった。この面では、中国の「買鉱」と競合するが、日本の化学的精錬法技術を将来、移転するという前提条件付きになるのだろう。その場合は、「委託精錬」という形で鉱山国の利益保持を前提にするのであろう。




