勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ベトナム経済

    あじさいのたまご
       

    中国の習近平国家主席が4月14日、ベトナムを訪問し、両国は供給網(サプライチェーン)や鉄道をはじめ、45件の分野での協力協定に調印した。協定の内容は公表されておらず、資金拠出あるいは拘束力のある内容が含まれているかは不明である。

    ベトナムのファム・ミン・チン首相との会談で習主席は、両国は一方的な圧力に反対すべきだと述べた。中国国営新華社が報じたが、ベトナムのチン首相が同意したとは触れていない。チン氏は、ベトナムが米国と相互関税の交渉中であることから、中国に「言質」を取られるような不注意な発言を控えたのであろう。

    『ロイター』(4月22日付)は、「ベトナム、違法な迂回輸出の取り締まり強化 米の対中批判意識」と題する記事を掲載した。


    ロイターが確認した文書によると、ベトナムの商工省は、米国など貿易相手国への違法な迂回輸出を取り締まるよう通達を出した。


    (1)「15日付の通達で、米国の関税で緊張が高まる中、貿易を巡る不正行為が今後増加する可能性が高いと指摘。不正が防止されなければ「各国が輸入品に適用する制裁を回避するのが一段と困難になる」とした。迂回輸出の発生源となっている国は挙げていない。ただベトナムの輸入の40%近くは中国からのものであり、米国は中国が米関税を回避するためベトナムを迂回輸出拠点として利用していると非難している。ベトナムはトランプ政権から46%という特に高い相互関税をかけられており、ベトナム政府は高関税の回避に向け米に働きかけている」

    ベトナムは、4月14日の習近平氏の訪越後に、商工省が米国など貿易相手国への違法な迂回輸出を取り締まるよう通達を出した。取締り相手国は中国である。ベトナムが、間髪を入れずに違法な迂回輸出取締り令を出したのは、中国への「面従腹背」の象徴と言えよう。米国の誤解を避けたいという配慮である。


    (2)「通達では、「特に生産と輸出に使用される輸入原材料」の原産地を確認するため、輸入品の監督と検査を強化するよう担当者に指示した。違法な迂回輸出とは例えば、中国製品がベトナムに入ると、特に価値が追加されなくとも原産地をベトナムに変更。その後米国に輸出されると、原産地が中国の場合より低い関税を享受できるという仕組みだ」

    これまでの例では、中国からの貨物を自動的に「ベトナム製」へとレッテルを貼り替えてきた。今後は、こういうルーズな扱いを止めるとしている。ベトナムは最近、対米輸出が急増しているが、その裏にはこういうからくりがあったのだ。

    『日本経済新聞 電子版』(4月15日付)は、「中国ベトナム首脳、供給網構築で協力 米関税の影響抑制」と題する記事を掲載した。

    ベトナムを訪れている中国の習近平国家主席は14日、ハノイで最高指導者のトー・ラム共産党書記長と会談した。トランプ米政権による相互関税の影響を抑えるため、サプライチェーン(供給網)の構築などで協力を確認した。


    (3)「習氏はトランプ関税を巡り「一方的ないじめ行為に共同で反対し、自由貿易体制とサプライチェーンの安定性を守らなければならない」と呼びかけた。中国・ベトナム間の鉄道や高速道路、港湾の全面的な連結を急ぐべきだと唱えた。中国税関総署によると、中越の2024年の貿易総額は23年比13%増の2606億ドル(およそ37兆円)で5年前から6割ほど伸びた。習氏は「中国の巨大市場は常にベトナムに開かれている」と述べ、対中輸出の拡大を促した」

    中国は、最終製品の自給率向上を目標にしている。それだけに、ベトナムから最終財の輸入よりも中間財の輸入を増やしたいはずだ。ベトナムにメリットが少なく、「互恵貿易」とはならないであろう。

    (4)「ラム氏も経済・貿易や科学技術、基礎インフラ整備を巡る連携に意欲を示した。両国は会談後、インフラの相互接続や税関での検査・検疫、農産品貿易などに関する45の2国間協力文書に署名した。安全保障分野では習氏が両国の外交、国防、公安3省の閣僚による対話の枠組み「3プラス3」を立ち上げて戦略的協力を強めるよう提起した。中越が領有権を争う南シナ海問題を巡っては「適切な処理」を呼びかけた。ラム氏は「中国との海上の相違点を適切に処理し、安定を維持したい」と語った。習指導部が掲げる台湾統一の実現を支持すると伝え「あらゆる台湾独立分裂行為に断固反対する」と言明した」

    習氏は、両国の外交、国防、公安3省の閣僚による対話の枠組み「3プラス3」の立ち上げを提案した。ラム氏は、これを「聞き及ぶ」程度にしている。ベトナムは、中国へ慎重に対応している。


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    ベトナムは、西側諸国から「モテモテ」である。7月には、英国防相と米国防長官が訪越した。8月には米副大統領も訪越している。米中対立の激化とともに、ベトナムの地政学的な価値が高まっていることが背景にある。

     

    この中で、日本はベトナムと極めて良好な関係を維持している。TPP(環太平洋経済連携協定)では、米国が抜けた後に日本を側面から支援して、TPP11を結成させた功労国である。こうした背景もあって、昨年10月、菅義偉首相が就任後、初の外国訪問地としてベトナムを選んだ。

     

    今や日本にとって、ベトナムが安全保障上で最も信頼できる東アジアのパートナーになっている。中国は、南シナ海や東シナ海において国際法を無視して拡張主義的な動きを展開している中で、日越両国は航行の自由、法の支配、紛争の平和的解決、米軍のプレゼンスなどの戦略的利益を共有しており、「自然の同盟関係」にある。

     


    昨年10月時点で、日本で働く外国人労働者約172万人の内、ベトナム人は約44万人であり、中国人を抜いて初めて1位となった。ベトナムの若者達が人口減少と労働力不足に苦しむ日本を支える形になっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月11日付)は、「ベトナムで日中外交戦、コロナ・安保駆け引き」と題する記事を掲載した。

     

    岸信夫防衛相は11日、訪問先のベトナムでファン・バン・ザン国防相と会談した。日本からの艦艇の輸出に向けて協議を加速すると確認した。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相も同じ時期にベトナムを訪ね、新型コロナウイルスワクチンを供与すると表明した。

     

    (1)「ベトナムは、南シナ海で中国との間に領有権問題を抱える。東南アジア諸国のなかで現在は、中国に強硬な立場を取る。日米欧は、中国の軍事的な拡大を懸念して外交の要衝と位置づけ、中国も関係改善を目指して働きかける。岸氏は11日のザン氏との協議で、中国が活発に活動する東シナ海や南シナ海の情勢に言及した。中国が海警局を準軍事組織に位置づける海警法を整備したことに深刻な懸念を示し、緊張を高める行為に反対すると伝えた」

     


    ベトナムは、中国に島嶼を奪われた被害国である。その「恨み」を胸の奥に秘めて、いつの日か、「取り返す機会」をじっと待っているところだ。ベトナムが、最も頼りにしている国は日本である。韓国に言わせれば、日本は「非道徳国家」だが、ベトナムにとっての日本は「頼りになる紳士国」である。

     

    (2)「日本からの装備品の輸出も話し合った。会談後、両国は輸出に必要となる「防衛装備品・技術移転協定」に署名した。第三国への装備品の拡散を防ぐため、転売時には日本の同意が必要になるルールだ。何を輸出するかは今後、検討する。海洋での防衛力を重視して艦艇などが候補にあがる。既に日本の防衛装備庁とベトナム海軍が議論を始めた。岸氏は会談後のオンラインでの記者会見で、「ベトナムと新たな段階の協力をさらに発展させ、地域や国際社会の平和と安定に積極的に貢献する」と述べた」

     

    今回の岸防衛相の訪越目的は、日本からベトナムへの「防衛装備品・技術移転協定」署名である。日越は、TPPに加盟国同士であり「ツーカー」の関係にある。日本は、「ベトナムと新たな段階の協力をさらに発展させ、地域や国際社会の平和と安定に積極的に貢献する」と将来展望を述べた。日本の後ろには、米英が控えておりベトナムとの友好促進を期待している。



    『日本経済新聞 電子版』(9月12日付)は、「『困ったときはお互いさま』 岸防衛相、ベトナムで講演」と題する記事を掲載した。

     

    岸信夫防衛相は12日、訪問先のベトナムの国防省で基調講演した。中国が南シナ海で軍事拠点化を進め「行動をエスカレートさせている」と指摘した。日本とベトナムの防衛協力の強化が必要だと訴え「困ったときはお互いさま」と話した。

     

    (3)「海警局を準軍事組織に位置づける中国の海警法について、「国際法との整合性の観点から問題がある規定を含む」と訴えた。「東シナ海と南シナ海をつなぐ位置に台湾がある」と述べ、台湾海峡の平和と安定の重要性を説明した。「今や自衛隊は自由で開かれたインド太平洋の維持、強化のために貢献する存在となった」と力説した。ベトナム軍が「この地域の平和と安定を維持するうえで不可欠」だと言及し、能力強化を支援する意向を強調した。ベトナムとの防衛協力を「新たな段階へと進化させる」と語った。11日に署名した防衛装備品・技術移転協定をもとに、装備品の輸出について協議を加速すると言明した。サイバー防衛能力の向上や医療分野の技術提供を促進する考えも示した」。

     

    岸防衛相は、「東シナ海と南シナ海をつなぐ位置に台湾がある」と台湾の重要性をアピールしている。ベトナムも、台湾防衛に協力して欲しいというニュアンスである。中国にとっては神経を逆なでする発言だが、台湾問題は「独裁との戦い」という意味を持ち始めている。

    テイカカズラ
       


    韓国は、旧慰安婦と旧徴用工の賠償問題で解決済みにも関わらず、日本へ再度の賠償請求を起すという執拗さを見せている。ところが、韓国軍がベトナム戦争で引き起したベトナム村民への殺戮について、まったく顧みようとしない態度を取り続けている。こういう無責任な韓国政府の態度が、ついにベトナム村民から提訴されて公になった。米紙『ニューヨークタイムズ』(NYT)が報じたもの。

     

    日本は法的に解決済み問題だが、韓国はベトナムで無辜(むこ)の村民を約70人も大量殺戮した。日本は、朝鮮の人たちの生命を奪ってはいないのだ。それにもかかわらず、韓国はこれまで日本を「悪逆非道」と非難してきた。韓国兵のベトナムでの行為は、「死刑」に相当する犯罪行為を働いたのである。改めて、韓国社会の身勝手さが問われる事件である。

     


    『中央日報』(8月24日付)は、「『受けたのはコメ30袋だけ』 韓国に訴訟を起こしたベトナム戦被害者の涙」と題する記事を掲載した。

     

    ベトナム戦当時、派兵韓国軍に被害を受けたという村の生存者が韓国裁判所に被害補償訴訟を提起したとニューヨークタイムズ(NYT)が21日(現地時間)、ソウル発記事で伝えた。

     

    NYTはこの記事で、「韓国軍が村に来て母、姉、弟や親戚など5人を失った」というベトナム中部のフォンニィ・フォンニャット村の生存者グエン・ティ・タンさん(61)の話を伝えた。また、現在の韓国政界と一部の市民団体が民間人被害事件を調べるための特別法制定を進めていると報じた。グエンさんは、「韓国軍がわが村に来たあの日の悪夢から抜け出せずにいるが、韓国政府はわが村を訪問したこともなく、何があったのかも尋ねもしなかった」と話した。

     


    (1)「韓国はベトナム戦争当時、32万人の将兵を派遣した。韓国軍は強い軍規と戦闘力で武装し、米軍以上の戦果を上げたという評価を得ている。NYTは、韓国軍が駐留した地帯では、まだ乳飲みの子豚も生き残れなかったことで有名であったとも伝えた。その現地では、韓国軍によって民間人までが殺害されたとする主張が提起されている」

     

    韓国兵が、ベトナム戦争で残虐行為を働いた事実は本欄でも取り挙げてきた。ただ、法廷へ持ち出されることはなかった。韓国の民間では、現地へ慰霊碑を建てたように報じられている程度である。文大統領は、事実を知りながら頬被りして、日本へ「人権に時効はない」とうそぶいてきた。なんと矛楯したことを行ってきたのかと呆れるのだ。

     


    (2)「NYT報道によると当時、米軍海兵隊や南ベトナム民兵隊はクアンナム省のディエンバンで作戦中。フォンニィ・フォンニャット村へ向かう途中、小屋が焼けている状況を発見していた。韓国軍が負傷させ逃げる民間人を救助もしていたのだ。また、フォンニィ村へ到着後には、頭を銃で撃たれた子どもや妊産婦、まだ生きているままで胸が切られた女性などを含む遺体の山を発見した。調査団の1人はこの姿を写真に残している。70人以上の村人が亡くなったと推定される」

     

    米軍の調査団では、殺戮現場の写真を撮ってあるという。まさに「大虐殺」をしたことになる。韓国では、日本の「旭日旗」を「戦犯旗」と呼んでいる。韓国軍旗こそ、まさに「虐殺旗」であり、ヒトラーの「ハーケンクロイツ」並みである。恥を知るべきだ。

     

    (3)「1968年4月米軍捜査官は、「戦争犯罪の可能性があるほど」という結論を下し、ベトナム駐留中だったチェ・ミョンシン中将(1926~2013)に関連内容を問い合わせている。チェ将軍は、「虐殺は共産主義者などが装ったこと」と反論した。しかし、参戦した韓国兵のリュ・ジンソンさんは、「ベトナム戦に参戦した韓国海兵隊は、(韓国軍に危害を与える恐れがある場合)小さい火災でも、それを追跡して現場で発見されたもの全てを破壊し、非武装の民間人を含む敵に恐怖心を与えよとの命令があった」と主張した」

     

    ベトナムへ派遣された韓国兵の証言がある。韓国は、これだけ証拠が揃っていれば、逃げ隠れはできない。日本に対して「人権論」を訓示してきた手前、早く謝罪して罪を認めるべきだろう。

     

    (4)「(前記の韓国兵)リュさんは当時、村に武装した男性はいなかったとも打ち明けた。機密解除された米軍文書で、米海兵隊捜査官のジョン・カンパネラ少佐は、「この事件の犠牲者は無防備状態の民間人で、ほとんどが女性や子どもだった」と明らかにした。また「死亡者とケガ人の遺族をなだめるために謝罪の意を伝え、2月18日にお見舞いの名目でコメ30袋を渡した」と記載してある」

     

    現地では当時、米軍が韓国兵による村民虐殺を気の毒がって、コメ30袋をお見舞いに贈っている。これも、韓国の責任を立証している。

     

    (5)「NYTは、「ベトナムの生存者は正義を望んでいるが、彼らが受けたのはコメ30袋だった」と報道。NYTは、韓国とベトナム政府のいずれも被害者が発生したこの事件の解決に積極的でないと指摘した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、2018年ハノイを訪問した当時、「不運な過去に対する遺憾」を表明したが、公式的な謝罪はしていないということだ。NYTは、「文大統領の遺憾表明は生存者をほぼ慰めることができなかった」とし、「グエンさんと他の生存者が文大統領に送った嘆願書には、『韓国政府と役人らは、生存者に謝罪を望むのか尋ねなかった。われわれは謝罪を望んでいる』と書かれている」と伝えた」

     

    このパラグラフで、文氏の立場が一層、不利になっている。日本へは鋭い責任追及をしながら、自国兵による虐殺事件には口を閉ざしているからだ。何と、「二重人格」的振る舞いであろうか。弁護士出身らしく、正義に則った行動をすべきだ。

     

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