原油とバーター取引可能
世界の4大危機を解決へ
農地の砂漠化進行で苦境
UAE最初のターゲット
初期投資は5年間で回収
米国NASA(航空宇宙局)が、月探査衛星を打ち上げ順調に飛行している。科学者は将来、人間の移住する有力先が月であると指摘するほど、月への関心が高まっている。地球が、急激な温暖化で住みにくい状況へ追い込まれている反映であろう。
ドイツのポツダム気候影響研究所などの研究グループは、地球温暖化が過去10年間で加速したとの分析を発表した。太陽活動などの自然変動の影響を除いたところ、2015年以降に気温上昇のペースが1970~2015年と比べて約2倍に速まっていた。現状のペースで温暖化が進めば、30年までに気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」で設定した1.5度目標(産業革命以前と比較)を超える。危機の到来である。
こうして、人間の生存環境が次第に困難な状況へ向い、砂漠化に伴う農産物減収や、海水温上昇による風水害事故の多発が予想されるのだ。現状は、これに立ち向かう決定的な技術や手段が皆無であり、ただ怯えているのが現実であろう。
こういう緊急事態下で、日本が開発した「曲がる太陽電池=フィルム型」ペロブスカイトの存在が急浮上している。ペロブスカイトが、太陽光発電と同時にフィルムの遮光によって、炎熱化で収量の落ちる農作物栽培に最適であるとの研究成果が明らかになっているからだ。曲がる太陽電池は、世界で「発電+営農」の二役をこなす貴重な存在として認識され始めている。主要原料であるヨウ素は、後述の通り日本が世界2位の生産量だ。ペロブスカイトは、日本発技術と自前資源によって、「地球改造」へ立ち向かう有力手段を提供するであろう。
ペロブスカイトと一口に言っても、実は3種類ある。
1)フィルム型 「軽量で柔軟」(曲がる)であるので、あらゆる場所へ設置可能である。
2)ガラス型 建材として組込まれ利用される。
3)タンデム型 シリコン系太陽光パネルと組み合わせるので、従来の利用と同じである。
これら3種類の中では、フィルム型が「アグリソーラー」(農業+発電)としての二役を演じるので、地球温暖化対策の有力手段になる条件を揃えている。ペロブスカイトは桐蔭横浜大学宮坂力教授の発明だ。日本は、フィルム型の有望性から周辺基本特許の全てを取得しており、他国が追随できない絶対的な強みを持っている。主要原料のヨウ素は、日本が世界埋蔵量(推定)の78%で1位。ただ、生産量の世界シェアは29%で2位である。資源は、豊富で全く問題がない。
原油とバーター取引可能
日本は、積水化学の系列企業が今年からフィルム型ペロブスカイトの量産化に着手した。日本国内での需要を賄いつつ量産化体制のさらなる拡充が整えば、まず、中東地域やアフリカなどの砂漠化進行の激しい地域への普及が可能になる。国内については、すでにこのメルマガで取り挙げたので視点を海外へ移したい。
日本にとっての副次的効果は、中東地域での普及が原油との「バーター取引」を実現させるものとして極めて有望であることだ。日本が、フィルム型ペロブスカイトを輸出することで、中東での「電力・食糧・淡水化・砂漠緑化」事業へ一大貢献が可能になる。ペロブスカイトによる太陽光発電の利用で、大量の造水も低コストで実現する。
同時にペロブスカイトの遮光性を生かして食糧生産(野菜や牧草の栽培による家畜の飼育促進)を行う。必要な水は、太陽光発電の淡水化でいくらでも造水が可能だ。この淡水が、砂漠緑化を可能にさせる。大規模な「循環型農業」の誕生を実現させるのである。
中東産油国は、日本のペロブスカイトによる大きな経済的メリットを認識することで、日本との原油バーター取引に応じるであろう。中東で、ペロブスカイトを敷設した場合のコスト計算は後で行う。概略だけ言えば、ペロブスカイトの耐用年数を砂漠地帯の特性から10年(日本では20年目標)と仮定しても、5年で設備費を回収できるのだ。とすれば、残りは「タダ」で施設が運用できる計算になる。日本にとっては、安定した原油輸入が可能になる「ウイン・ウイン」の関係が成立するであろう。
こういう記述をすると、日本の利益獲得視点だけを浮上させるが、真意は別のところにある。中東産油国が、競ってフィルム型ペロブスカイトを導入することで、世界中へ普及するという効果が期待できるのだ。その意味で、中東産油国にはペロブスカイトの「ショーウインド」の役割を担って貰うのである。
国連諸機関のUNEP(国連環境計画)・FAO(国際連合食糧農業機関)やUNCCD(国連砂漠化対処条約)は、次の問題を世界の「4大危機」として捉えている。
1)気候変動(CO2削減)
2)食料安全保障(農業の崩壊)
3)水不足(淡水化の電力問題)
4)砂漠化(世界の土地劣化)
この4大危機は、これまで取り上げてきたフィルム型ペロブスカイトで一挙に解決へ向うだろう。ペロブスカイトの複合技術が、解決するのである。日本が、世界の抱える難題を解決に向わせる技術開発国になったことは、同時に世界の基幹産業を樹立したことにもなる。これによって、日本経済は揺るぎない地位を固めるはずである。
将来、世界中でフィルム型ペロブスカイトの生産が始まるであろう。日本は、これによる莫大な特許料やノウハウ収入のほかに、機材の輸出も行われる。当然、世界標準技術になるはずである。警戒すべきは、模倣上手でダンピング輸出の得意な国への特許使用を認めないことである。過去の苦い経験を繰り返してはならないのだ。(つづく)
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