中国人民解放軍が、新型コロナウイルスのワクチン開発に着手したのは、19年11月である。開発製薬企業の株価が急騰して判明している。これまでの中国当局の説明では、感染者発生がほぼ同じ時期とされている。だが、ワクチン開発着手と感染者発見が、同時期というのも不思議である。それほど手回しよく開発準備が進むはずはないからだ。ワクチン開発への着手は、もっと遅れて当然である。
だが、米英豪3ヶ国の民間調査によれば、実際のコロナ感染者が発見は、2019年5月でなかったのでないか、という説が登場してきた。その時期に、PCR検査器の受注が急増しているからだ。この5月説に従えば、人民解放軍のワクチン開発が11月であることと整合的になる。
『日本経済新聞 電子版』(10月5日付)は、「中国『発生時期』議論再燃も PCR機器、19年5月に急増」と題する記事を掲載した。
オーストラリアに拠点を置くサイバーセキュリティー会社「インターネット2.0」主体の調査チームは新型コロナウイルスの発生源とされる中国の湖北省のPCR検査機器の調達を巡る報告書をまとめた。2019年5月以降に発注が急増しており、最初の感染例が12月に見つかったとの中国の説明に疑問を呈した。発生源や時期の議論が再燃する可能性がある。
(1)「同社が主体で、米国と豪州の元情報機関の職員や、英国の情報分析の専門家らで構成する「AUKUS(オーカス)調査チーム」と呼ぶチームが調査した。米英豪の安保協力の枠組み「AUKUS」にちなんだ。同社は中国から中国共産党員の名簿とされる200万人のデータを入手して解析するなど、独自の情報収集活動を展開してきた。報告書は19年の湖北省でのPCR検査機器の調達額が約6740万元(約11.6億円)と18年と比べて2倍近くに増えたと言及。月別では5月にいったん発注が顕著に増え、7~10月にかけても大幅に増えた」
PCRの発注元では、大学と疾病予防管理センターが急増している。これに次ぎ、病院が増えた。これだけ見ただけでも、新型コロナウイルスの発生を覗わせている。中国当局は、早くから感染者が出ていることを知りながら隠蔽し、WHOへの通報を遅らせ、現在のパンデミックを発生させたと言えそうだ。
(2)「PCR検査は遺伝子の配列を調べるものだ。コロナだけに使われるものではなく断定できないが、報告書は発注や調達の傾向を「コロナの感染拡大と関連づけられる」と分析。感染拡大の時期は「中国が世界保健機関(WHO)に通知するよりもはるかに早いと、高い確度で結論付けられる」と強調した。米ブルームバーグ通信によると中国の外務省はこの調査結果に対して異議を唱えているという」
中国は、メンツに拘ってWHOへの通報を遅らせ、それによって世界中へウイルスをばらまく結果になった。しかも、今なお責任を回避しており、米国へ擦り付けるという言語道断の振る舞いをしている。
(3)「ウイルスの起源は、中国と米欧の間で論争してきた。研究所からの流出説と、動物からの感染とする説が有力だが、十分な手がかりは得られていない。WHOは21年1~2月に湖北省の武漢で調査を実施し、動物のウイルスが人に感染した可能性が高いと結論づけた。ただ、調査は感染が判明してから1年以上が経過しており、日米英韓など14カ国の政府は「調査は大幅に遅れ、完全な情報へのアクセスも欠いていた」などと共同声明で懸念を示した。中国はWHOの追加調査を受け入れない姿勢を示す」
中国は、上手く隠しおおせたと考えているかも知れない。だが、信頼という金銭に換えがたい信用を失墜している。何と愚かなことをしているのであろう。いずれ、真実は暴露される。そのとき、中国はどう言って申し開きするのか。「独裁者の習近平が勝手に関係機関に命令したこと」として言い逃れするつもりなのだろう。
(4)「今回、同社が調査したのは、コロナの起源を巡る中国の情報開示が不十分だとの問題意識がある。調査チームのデービッド・ロビンソン氏は、「中国から意義のあるデータが提供されていないことで多くの仮説や誤情報がはびこる状況になった」と指摘している。調査チームからデータ提供を受け分析した井形彬・多摩大大学院客員教授は、「これだけでは断定的なことは言いにくいが、コロナの起源に関する議論を再燃させるきっかけになりうる」と話す」
中国は、感染症という世界共同で防疫に当らなければならない疾病に対して、絶えず責任回避のスタンスで臨んでいる。それは、病的とも言えるほどの小児的な振る舞いである。恥ずかしい限りだ。