米中デカップリンが注目され始めた現在、アップルは生産のほとんどを中国に委託している。万一、米中の軍事対立が起これば、アップルの中国生産はストップしかねないリスクを抱える。そこでアップルは2年前、インドでの生産計画を明らかにしたが、ようやくその第一歩が始まる模様だ。
『日本経済新聞 電子版』(9月26日付)は、「APPLE 最新iPhone14をインド生産 中国依存を修正か」と題する記事を掲載した。
米アップルは26日、新型スマートフォン「iPhone14」をインドで生産すると明らかにした。アップルは主に中国でiPhoneを製造してきたが、米中の経済対立や中国のロックダウン(都市封鎖)政策を背景に、中国への依存を減らす狙いがあるとみられている。
(1)「アップルは同日の声明で、「私たちはインドでのiPhone14製造をうれしく思う」と述べた。インドではすでにiPhoneのほかのモデルを製造しているが、iPhone14は9月に世界各国で発売されたばかりの最新型だ。米ブルームバーグ通信は8月、アップルが新機種の生産について、中国とインドでの時期の差を従来の6~9カ月から短縮しようとしていると報じていた」
iPhone14は、9月に発売されたばかりの最新型である。それが、インドで生産できることを証明した形だ。部品製造から組立てまで、インドで一貫生産できる体制が整ったとすれば、中国には脅威となろう。
(2)「ロイター通信はJPモルガンのアナリストの分析として、アップルがインドでの生産を拡大して2025年にはiPhoneの25%が同国製になる可能性があると報じている。現時点でインドのスマートフォン市場では安価な中国メーカー製や韓国メーカー製が大半を占めるが、所得向上を背景にiPhone需要も拡大が期待されている」
アップルは、2025年にはiPhoneの25%がインドで生産可能になるという。ようやく、念願であった「脱中国」への夢が部分的に叶う。生産のすべてを中国一国に委託するのは、全く危険である。一方で、アップルが中国製半導体を購入したことで、米議会の反発を買っている。
『日本経済新聞 電子版』(9月23日付)は、「米議員、リスク分析要請 iPhoneの中国製メモリー採用で」と題する記事を掲載した。
米上院情報特別委員会のメンバーは9月22日、中国半導体メーカーの長江存儲科技(YMTC)と米アップルとの潜在的な取引が国家安全保障にもたらす脅威を分析するよう米情報機関トップに要請したと明らかにした。議員らは取引が実現すれば「中国企業に大きな利益をもたらし、米国企業を世界的に弱体化させる」との懸念を示している。
(3)「上院情報特別委員会のワーナー委員長(民主党)とルビオ副委員長(共和党)が22日、米国政府の情報機関を統括するヘインズ国家情報長官に宛てた連名の書簡を公開した。YMTCに関する包括的な公開報告書を作成するよう求めている。韓国メディアなどは9月上旬、アップルがスマートフォンの最新機種「iPhone14」シリーズで使うNAND型フラッシュメモリーの調達先候補にYMTCを加えたと報じていた。アップルはこれまで韓国のサムスン電子やSKハイニックス、キオクシア、米マイクロン・テクノロジーなどからNANDを調達しており、中国勢が加わるのは初めてだ」
米国は、半導体の国内生産比率を高めるべく補助金を支給する。こういう状況下で、アップルが、中国の半導体を購入することで、米国製半導体シェアを食われれば、米国労働者にしわ寄せが行くと懸念しているもの。
(4)「ワーナー上院議員らはヘインズ氏に宛てた書簡のなかで、「アップルのような世界的な大手メーカーとの大型契約に支えられたYMTCの成功は、半導体メモリー生産を支える2万4000人分の米国人の雇用を脅かすことになる」と指摘。「世界の半導体市場を支配するという中国政府の目標を前進させる」とも述べた。英紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の取材に対し、アップルは中国国内で販売する一部のiPhoneに使うNANDについて、YMTCからの調達を検討していると認めた。中国国外で販売するiPhoneにYMTC製品を使うことは考えていないと回答している」
アップルは、中国国内で販売されるiPhoneに使う半導体だけ、中国製半導体を使うと説明している。海外で販売されるiPhoneについては使用しないのだ。米中デカップリングの認識が高まるとともに、部品についも関心が向くようになってきた。