インドは、「クアッド」(日米豪印)へ参加して以来、米国との距離を縮め関係を強化している。すでに、米印共同で武器生産に入ることを決めている。さらに幅広い米印技術協力を約束した。一方で、米国はインドに対して中台衝突時に、インドがどのような協力をできるか問い合わせ中という。米印は、同盟ではないものの中国への対抗では「一体化」している。
『ロイター』(9月9日付)は、「米印首脳、技術協力など幅広い問題での協力確約 共同声明」と題する記事を掲載した。
バイデン米大統領とインドのモディ首相は8日、インドの首都ニューデリーで会談した。両首脳は会談後、米国とインドは民主主義的価値観や半導体のサプライチェーン(供給網)、量子コンピューティングなど幅広い問題で協力するとの共同声明を発表した。
(1)「米ホワイトハウスのインド太平洋調整官、カート・キャンベル氏は首脳会談後、記者団に対し、インドと中東や欧州を結ぶインフラや通信分野における「主要な突破口」を見いだすことに両首脳が取り組んでおり、9日にも何らかの発表が行われる可能性があると明らかにした。また、米国家安全保障会議(NSC)の高官によると、米国とインドは、2024年に国際宇宙ステーションのほか、5Gや6G技術、マイクロチップでも協力する見通しという。両首脳は約1時間にわたり非公開の会談を行った。両首脳がインド首相官邸で対面した際、米国の報道陣が両首脳から見えないように車内に待機させられるなど異例の事態となった」
米国は、遅れているインドの製造業へテコ入れすべく必死の努力をしている。下線のような技術支援が行われれば、インドのステップアップが進むであろう。インドは、中国への有力な対抗勢力として、米国から全面的な協力を得ている。
(2)「モディ氏を巡っては、首相就任以来、インド国内における報道の自由が縮小していると批判されている。ホワイトハウスの声明によると、今回の首脳会談にはイエレン財務長官、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が参加。インド側からはジャイシャンカル外相やアジット・ドバル国家安全保障補佐官などが出席したという。バイデン大統領は20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は出席後、ベトナムを訪問する」
モディ首相は、国内的に強権手法を用いるとして批判されている。米国も、この点を重々承知はしているが、内政干渉になるので沈黙している。中国という「大きな対抗物」を前に、米印が協力する構図だ。
『ブルームバーグ』(9月8日付)は、「インド軍、 中台衝突想定し調査研究-どんな貢献できるか米国が打診」と題する記事を掲載した。
インドは、中国による台湾侵攻を想定し、どのような対応ができるか検討している。米国から戦争が起きた場合、どんな貢献ができるのか非公式に問い合わせがあったためだ。インド政府高官が明らかにした。
(3)「インド軍の制服組トップ、チャウハン国防参謀長は約6週間前、米国とその同盟国を巻き込む台湾を巡る戦争が及ぼす広範な影響と、それに対してインドが取り得る行動を検討するための調査研究を命じた。非公開情報だとして2人の高官が匿名を条件に語った。米国が幾つかの異なるフォーラムでこの問題を提起した後に、この命令が出されたという。この調査研究の期限は設定されていないが、インド軍はできるだけ早く完了させるよう指示されていると高官の1人は説明。検討に基づく選択肢は、モディ首相ら政治指導者が、必要性が生じた場合に最終的な決断を下すために利用できるようになるとこの高官は話した」
インド軍は、中台衝突時に米軍へどのような協力ができるか検討を要請している。フィリピンは、軍事補給地の増加(4カ所)で米国へ協力する約束をした。インドも直接、中台紛争へ介入はしないが、それ以外のことで協力の道を探っている。
(4)「米中関係が劇的に悪化した場合、インドの「多国間協調」政策がどのように試されるかを示すものだ。モディ首相は、米国と緊密な関係を築きながら、ロシアに対する国際制裁への参加を拒否することで、国際関係において独自の道を切り開いている。ただ、中国との緊張関係がヒマラヤ山脈地帯の国境沿いにある係争地帯で高まっているほか、習近平国家主席がニューデリーで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)を欠席することも対中関係悪化の一因となる」
中国は、インドの感情を逆さなぜすることばかり行っている。国境紛争では、中国軍が非武器(スコップなど)でインド軍陣地へ殴り込みをかけるなどして多数の死者を出している。インドの怒りは、大変なものだ。今度は、習氏が何の挨拶もなくG20サミットでインド訪問を取り止めている。「静かな怒り」を燃やしているのだ。
(5)「高官らによれば、インド軍が検討する選択肢の一つは、同盟国の軍艦や航空機のために修理・整備施設を提供したり、中国に抵抗する部隊に食料や燃料、医療機器を供与したりする後方支援拠点としての役割だ。より極端なシナリオとしては、インドが北方国境沿いに直接関与し、中国が別の戦いに対応しなければならなくなる可能性を分析することだという」
インドは、米軍の兵站機能を果たす決意だ。戦争では、兵站がいかに重要かをロシアのウクライナ侵攻が立証している。フィリピンやインドが、米軍の兵站機能を果たすとすれば、中国は大変な脅威になろう。