勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: インドネシア経済ニュース

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    日本が建設を請け負う予定で進んでいたインドネシア高速鉄道(ジャカルタ・バンドン区間142キロメートル)は、契約寸前に中国へ横取りされたプロジェクトである。中国側は、事前調査もしないで日本の作成した建設計画書に基づく「盲建設」であったことから工事は大幅に遅れている。

     

    それでも、同プロジェクトは昨年末時点で工事の進捗率は79.9%までこぎつけ、2022年末までに一部区間の試運転を行った後、2023年に全線完工を目指している。だが、ここで新たな経営問題がでてきた。インドネシア政府の首都移転(24年から首都をジャカルタからカリマンタン島[ボルネオ島]へ)の影響もあり、採算が取れるのは40年後という気の遠くなるような話に変わったのだ。中国には、泣かされるプロジェクトとなった。日本から横取りした「報い」を受けているようだ。

     


    『大紀元』(2月9日付)は、「中国受注の『インドネシア高速鉄道計画』、利益出るまで40年かかる見通し」と題する記事を掲載した。

     

    中国受注の「インドネシア高速鉄道計画」は、20億ドルのコスト超過に直面している。投資を回収し、利益が出るまでに40年はかかる見通しだという。高速鉄道を建設する企業連合の「インドネシア中国高速鉄道社(KCIC)」のドウィヤナ・スラメット・リヤディ社長が2月7日の議会公聴会で明かした。

     

    (1)「現在、KCICが建設中の首都ジャカルタと西ジャワ州バンドンを結ぶ高速鉄道(総延長142キロメートル)プロジェクトは、中国の「一帯一路」構想のもと、中国国家開発銀行が資金を提供して、2018年から着工した。土地の所有権をめぐる紛争や環境問題、パンデミックによる人員不足などにより相次ぐ工期延長の影響で、完工時期が何度も延期された。現在、遅れながらも工事は続いている。当初は完成後20年以内に投資を回収し、利益を上げ始める計画だった。

     

    KCICは、インドネシアの国営企業であるウィジャヤ・カルヤやKAIなどが60%を、残りを中国企業が保有する。 中国の国家開発銀行が資金を提供するこのプロジェクトは、2015年にKCICに発注され、18年に着工された。だが、十分な事前調査をしないことや、建設中に沿線住民へ被害を与えるなどの問題を引き起した。中国と同じ感覚で強行したことが反感を招いたもの。日本流の話合い路線によるソフトな対応であれば、ここまでこじれることもなかったであろう。

     


    (2)「リヤディ社長によると、政府の首都移転(24年から首都をジャカルタからカリマンタン島(ボルネオ島)へ)の影響もあり、同鉄道の乗客数は当初見積もりの1日あたり6万1157人から3万1215人に激減する可能性がある。そのため、投資を回収できるのは完成してから40年はかかるという。用地買収の遅れや労働者の賃金上昇、高騰が続く原材料などで、プロジェクトは約20億ドルのコスト超過に直面しているという。プロジェクト終了時の総事業費は113兆ルピア(約78.5億ドル)に上ると試算される。ロイター通信がKCICのデータを引用して報じたところによると、同プロジェクトは昨年末時点で工事の進捗率は79.9%で、2022年末までに一部区間の試運転を行った後、2023年に全線完工を目指している」

     

    インドネシア政府も無責任である。高速鉄道を建設しながら首都移転とは驚く。需要予測が、完全に狂うからだ。乗客予測では、1日あたり6万1157人が、3万1215人へと実に49%も激減する可能性があるという。これでは、高速鉄道を建設する意味が薄れてしまうだろう。なにか、中国への当てつけのようにも見えるのだ。

     


    プロジェクトは計画よりも約20億ドル増えて、約78.5億ドルへと膨らむという。計画の34%増にもなる。これほど杜撰なプロジェクト計画もないだろう。最初から、計画はあってもない同然のものだったのだろう。中国における高速鉄道建設もこの調子で行なっているにちがいない。他国では、恐ろしくて中国からの高速鉄道導入話を敬遠して当然だ。ASEAN(東南アジア諸国連合)では最近、高速鉄道建設の計画がパタッと止まっているのは、この結果であろう。

     

    (3)「このプロジェクトをめぐって、日本と中国は当時、激しい受注合戦を展開した。最終的にインドネシアは、財政負担を伴わない中国案の採用を決定した。中国は現在、世界で最も早く高速鉄道を開発・建設している国である。「インドネシア高速鉄道計画」は中国以外の国で、完全に中国規格で建てる初の鉄道となる。そのため、将来に向けた成功事例を作るためにも重要な存在とされている」

     

    完全に中国の敗北である。竣工期間は狂う。建設予算は大幅に増える。こういう当てにならない中国へ、高速鉄道建設を委託する国は現れるはずがない。中国は、自分で自分の首を締めてしまったのだ。

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    中国は、あらゆる分野で背伸びしている。端から見ていると、「痛々しい」ほどの自己主張である。これが、「中華再興」というものとしたら、侘しい限りである。

     

    中国国有旅客機メーカーである中国商用飛機(COMAC)が、航空機リースの中国飛機租賃集団(CALC)と組み、海外進出を果たそうとしている。CALCが出資するインドネシアの地域航空会社が、中国初の国産ジェット旅客機の運航をインドネシア運輸省に申請したのだ。

     

    商用機は、世界標準となっている欧米で、安全性確保で求める機体や部品の「型式証明」を取得する決まりになっている。中国は、その取得に失敗したにもかかわらず、強引に海外で飛行させるようと挑戦をしているもの。習近平氏並の度胸の良さだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月11日付)は、「
    中国国産機、苦肉の海外進出『型式証明』なお未取得」と題する記事を掲載した。

     

    2021年12月、上海浦東国際空港からCOMACが開発したリージョナルジェット機「ARJ21」(座席数は78~90席程度)が試験飛行に飛び立った。機体には、白地に紺色と黄色のインドネシアのトランスヌサ航空仕様の鮮やかな塗装が施されていた。トランスヌサは、11年に商業飛行の許可を得たインドネシアの地域航空会社だ。現在は運航を休止しているが、以前は東ヌサトゥンガラ州クパンのエルタリ空港を拠点に複数の都市を結んでいた。近く、運航を再開する見通しで、ARJ21の導入を計画しているのはトランスヌサがCALC(中国飛機租賃集団)の傘下にあるためだ。

     

    (1)「2016年に商用飛行が始まったARJ21は、海外進出はいまだ実現していない。航空機の世界標準となっている欧米で、安全性確保で求める機体や部品の「型式証明」を取得できなかったためだ。中国の政治・経済的な影響力の強いアフリカや広域経済圏構想「一帯一路」関連の航空会社を海外受注のターゲットとせざるを得なかった。中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は14年、アフリカ各国を歴訪し、ARJ21を売り込んだ。その結果、アフリカのコンゴ共和国が3機の購入を決めた。16年にはコンゴ政府が型式証明を付与し、18年には同国からパイロット研修生を受け入れるなどした。ただその後、新型コロナ禍で世界の航空機需要が急減しており、COMACはコンゴにARJ21を納入したかどうかは明らかにしていない」

     


    航空機の安全運航は、絶対条件である。中国の商用機
    ARJ21は、航空機の世界標準となっている欧米で、安全性確保で求める機体や部品の「型式証明」を取得できなかった。だが、中国政府は2016年から「強引に」飛行させている。この間に、事故は起こっていないが、危ないフライトである。これまでは、中国の影響力の強いアフリカで売り込みを図ってきたが、実績は不明である。

     

    (2)「停滞する海外進出の課題を解決するために打ち出したのが、生産・リース・運航を三位一体で運用する「垂直統合戦略」だ。CALCは16年にCOMACと提携関係を結んだ時点で、インドネシアの航空会社に投資する計画を公表していた。インドネシア運輸省によると、トランスヌサは現在、運航再開に向けた許可手続きを申請中だ。22年1~3月期に再び営業を始める構えで、機材はエアバスの「A320neo」と「ARJ21」を使う予定だ。ジャカルタデンパサール(バリ島)、ジャカルタジョクジャカルタなど「ドル箱」路線を開設したい方針で、運輸省に提出した再開計画では「ARJ21を26年までに最大30機、取得する」としている」

     

    中国は、インドネシアをターゲットにして、生産・リース・運航を三位一体で運用する「垂直統合戦略」を立て「ARJ21」の売り込みをしている。インドネシアでは、エアバスの「A320neo」とライバル関係になるという。確立しているエアバスの「名声」に対抗できるか不明である。

     


    (3)「ただ、その先行きは不透明な側面もある。インドネシアには型式証明のような飛行機ごとの運航許可制度がある。「A320neo」は、すでに許可を得ている一方、「ARJ21は未取得」という。現在は運航を停止している小規模な地域航空会社が、ARJ21を最大30機、このほかエアバス機も導入する計画は「現実的ではない」(関係者)との声も聞かれる。機種を増やせば、乗務員のライセンス取得や保守部品などのコストもかさむ。さらに、インドネシアと中国は南シナ海問題での対立も浮き彫りになっている。インドネシアにとって中国は最大の貿易相手国だ。経済面の依存は強いものの、中国が海外進出を熱望しているARJ21の運航をインドネシア政府が認めるかどうかは定かではない」

     

    形式証明で落第した中国商用機が、エアバスと互角の競争ができるのか。最終的には、インドネシア政府が中国機に運航許可を出すかどうかだ。現状では、疑問視されている。

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    インドネシアは、自らのEEZ(排他的経済水域)で石油掘削している。これに対して、中国が南シナ海全体の領有権を主張し、インドネシアへ抗議するという「盗賊行為」を行なった。習近平氏が、直々で指示を与えている結果とされている。諸悪の根源は、「習近平にあり」という印象が一層強まる。

     

    『日本経済新聞』(12月28日付)は、「インドネシアの南シナ海EEZ資源開発、中国が中止要求」と題する記事を掲載した。

     

    インドネシアが南シナ海の排他的経済水域(EEZ)で進める資源開発について、同海域の主権を主張する中国が中止を求めていることがわかった。インドネシアは中国との間に南シナ海の領有権の問題は存在しないとの立場だが、中国が揺さぶりをかけている。

     

    (1)「インドネシアは南シナ海の南にある自国領ナトゥナ諸島の周辺のEEZにある「トゥナ・ブロック」と呼ばれる海域で、7月から海底の石油と天然ガスの状況を調査する掘削作業を進めている。インドネシア政府関係者は日本経済新聞の取材に、中国政府から「インドネシアの掘削作業が中国の主権を侵す」として複数回、抗議と掘削中止要求を受けたと明らかにした」

     

    中国は、戦前の日本陸軍と同じ振る舞いをしている。日本軍は、満州へ進駐して「自国領」としたが、中国は南シナ海へ進出して「中国領」と宣言する。この「遅れてきた帝国」中国は、周辺国から大きな警戒心を持たれ、米国への軍事的依存度を高める皮肉な結果を招いている。愚かな振る舞いと言うほかない。

     

    (2)「作業現場周辺で中国海警局とみられる船の目撃情報も確認したという。ただ、インドネシア政府は中国による抗議と中止要求を公表していない。中国との間に南シナ海に関する領有権の争いはないとの立場で、抗議を公にして反応すれば、領有権問題の存在を国際社会に認めることにつながる可能性があるためだ。同国海上保安機構のアアン長官は22日、当面の掘削作業を11月下旬に完了したと明らかにした」

     

    インドネシアは、中国の抗議を完全無視している。国際的にEEZとして認められているからだ。

     


    (3)「中国は南シナ海のほぼすべての沿岸国・地域と領有権を争っている。これまでにフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾が領有権を主張している。ナトゥナ諸島周辺のインドネシアのEEZをめぐっては、南シナ海で主権が及ぶ範囲として中国が独自に主張する「九段線」と一部が重複する。2019年末ごろから周辺海域で中国船の動きが活発化し、インドネシアとの対立が目立ち始めた。20年5月下旬、インドネシアは九段線や中国が域内で主張する歴史的権利を否定する書簡を国連に送った。中国も南シナ海での主権を訴えつつ、交渉による解決を求める書簡を国連に送り返した。インドネシアは交渉を拒否した」

     

    インドネシアは、東南アジアで最大の人口を抱える国家である。経済的にも発展可能性を秘めた国家として脚光を浴びている。中国が、このインドネシアと事を構えるのは、極めて無思慮な行為である。インドネシアが、軍事的に米国と手を結ぶリスクを見落としているのだ。

     


    (4)「中国が、一方的に領有権の問題を訴えて力を背景に実効支配をうかがう構図は、日本の沖縄県尖閣諸島をめぐる日中の対立と似る。海上保安庁によると21年1月から12月26日までで、尖閣諸島周辺の領海に中国の海警局の船が計40日間、侵入した。日本政府は、尖閣諸島が固有の領土で領有権の問題は存在しないとの立場だ。中国側が、領海侵入するたびに抗議をせざるを得ない。中国には日本に反応させることで、日中に領有権の問題があると国際社会に印象づけようとする狙いがある」

     

    中国が、日本に次いでインドネシアと軍事的に対立するのは、決して好ましいことであるはずがない。その無益な道へ突き進んでいる。

     

    (5)「中国国営の新華社は11月8日、「習氏は自ら戦略と戦術の配置をして、さらには自ら参与した」と明らかにした。中国海警局の尖閣諸島周辺の領海侵入を巡る指示や、南シナ海の仲裁裁判所の判決などへの対処方針について、習近平(シー・ジンピン)国家主席が深く関与していると明かしている」

     

    習近平氏が、中国の飽くなき領土拡大を指示している張本人である。領土拡大が、権力維持の支えになるとは、中国の後進性を遺憾なく示している。

     


    (6)「インドネシアは、中国がナトゥナ諸島周辺の実効支配の機会を探ろうとしているとみて、周辺の防衛・警備体制の強化を急いでいる。国軍は同諸島にある基地の滑走路を拡張し、戦闘機の配備を増やすほか、潜水艦の基地も建設する。地元漁民による中国船の早期通報システムも整備している。米国との安全保障協力も進めており、周辺の海域では共同で沿岸警備の訓練施設を建設している。8月には離島防衛を念頭に、国内の3カ所で両国の陸軍が過去最大規模の軍事演習を実施した」

     

    下線部は、中国がまんまと落し穴に落込む前兆を示して興味深い。インドネシアが、自国防衛で軍事基地強化を図れば、その後ろに米軍が座ることを予見できるはずだ。インドネシアは、潜水艦基地を建設する。それは、「第二のAUKUS」になる可能性を秘めているのだ。米国潜水艦が、インドネシア潜水艦基地を利用するようになれば、中国は自ら包囲網をつくらせるような愚策である。習近平氏は、目先の利益で目が眩んでいるようだ。

     

     

     

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    韓国の現代車が、東南アジア初の自動車工場をインドネシアに建設して、日本車の牙城へ挑戦する。日本車は9割ものシェアを占める。そこへ、0.35%の現代車が工場を建設するというもの。果たして成算はあるのか。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月20日付)は、「現代自動車、インドネシア再挑戦 日本勢の牙城に挑む」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の現代自動車は日本車の販売シェアが圧倒的なインドネシアで攻勢を強める。電気自動車(EV)関連の大規模な投資を通じて政府や消費者にアピールし、年内に販売店を合計100店舗体制にする。全国規模に営業網を広げ、東南アジア最大の自動車市場で日本メーカーの牙城に挑む。

     

    (1)「現地法人の幹部は、「ブランドイメージと認知度を高め、現代自がEVの最先端技術を持っていることを消費者に示したい」と、意気込む。11月中旬に同国自動車産業協会(ガイキンド)が主催したインドネシア国際自動車ショーで、現代自はひときわ目立つ大規模な展示スペースを確保した。K-POPアーティスト「BTS(防弾少年団)」のコーナーなどを設けて来場者の注目を集め、年内にインドネシアでの販売店数を20年末時点の4倍以上に増やす計画を打ち出した」

     

    今流行の「Kカルチャー」で、顧客の関心を集める戦略である。販売店数を100店舗に増やすという。

     


    (2)「ガイキンドによると、現代自の2021年1~11月の販売台数は2751台と、シェアはわずか0.36%にとどまる。トヨタ自動車やホンダなどの存在感が圧倒的で、日本メーカーのシェアは合計で9割を超える。現代自が日本勢に対抗する切り札に位置づけるのがEVだ。大規模な投資を通じて、EV」関連産業の国内集積を目指すインドネシア政府へのロビー活動を強めている。

     

    インドネシアに進出している日本車は、トヨタ、ホンダ、ダイハツ、三菱、スズキである。これらメーカーが築いてきた地盤へ、現代自が乗り込む。

     

    (3)「現代自はジャカルタ郊外のブカシ県に1700億円を投じ、同社として東南アジア初の完成車工場を建設した。22年1月にガソリン車の生産を始め、3月にはEVに車種を広げる。近隣のカラワン工業団地ではLGエネルギーソリューションと1200億円を投じ、車載電池の合弁工場を24年に稼働する予定だ」

     

    韓国も、現代自のほかにLGが車載電池の生産を始める。EVに向けて本格的に取り組む。腰の据わった攻略であろう。

     

    (4)「インドネシアのジョコ大統領は21年に入り、60年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を掲げるなど、急速に脱炭素に向けカジを切っている。22年に議長国を務める20カ国・地域(G20)の議論では近年、気候変動問題が主要議題となっており、会議で主導権を握る政治的思惑もある」

     

    インドネシア政府は、60年までに「カーボンニュートラル」実現目標を掲げる。EV生産はそのシンボルになるが、電源をクリーンエネルギーにしなければ竜頭蛇尾に終わる。

     

    (5)「インドネシアをEVの主要生産拠点にする現代自の戦略は、ジョコ氏の方針に呼応する。鄭義宣(チョン・ウィソン)会長は10月下旬に同国政府主催の会合に出席し、ジョコ氏に直接、グループの将来的な戦略を説明した。「インドネシアがEVの先導国家に飛躍するため、関連技術の育成などEV産業の集積に貢献する」と強調した」

     

    現代自は、インドネシアをASEANの主要生産拠点にする方針である。迎え撃つ側の日本車メーカーも、その点は抜かりなく対応するであろう。

     

    (6)「中国市場での長期低迷に苦しむ現代自にとって、東南アジアはインドに次ぐ成長エンジンとして魅力的で、特にインドネシアは2億7000万人の人口を抱える域内最大市場だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)自動車連盟によると、19年の域内の自動車販売のうち、インドネシアは約103万台とトップで、シェアは約30%を占めた。日本勢は現時点で、東南アジアでのEV投資には慎重な姿勢で、現代自は巻き返しの好機とみる。インドネシアでのEV普及のネックとされる充電施設の整備には韓国政府も支援し、国ぐるみで取り組む。EVが普及するまでは、向上したブランドイメージをテコに、現地生産したガソリン車などの販売を拡大する」

     

    現代自は、インドネシア人口が2.7億人であることから、企業の盛衰を掛けて進出するに違いない。韓国政府も好機と見てEV普及のネックとされる充電施設の整備に協力する。

     

    (7)「韓国とインドネシアは1910月に2国間の自由貿易協定(FTA)を締結し、関税の97%(金額ベース)の撤廃を段階的に進めている。自動車部品の輸出関税はすでに撤廃されており、インドネシアで生産を広げる土壌が整ったことも現代自の攻勢の背景にある。ハナ金融投資の宋善在(ソン・ソンジェ)アナリストは「現代自にはロシアやブラジルなどで現地の消費者の要求をくみ取り、シェアを獲得した成功体験がある。現地工場を持つことで価格競争力も生まれ、一定の勝算はある」と分析する。

     

    現代自は、中国市場で失敗した。その教訓を生かし、インドネシア進出で対応するのであろう。だが、日本メーカー9割の牙城を切り崩すのは大変だ。日本側も守りを固めて対応するに違いない。トヨタは、EVの品揃えを済ませている。

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    インドネシア高速鉄道建設は、日本との契約寸前に中国へ横取りされた曰く付きの建設プロジェクトである。結果として、当初契約と異なり工期は遅れる、建設費は4割高となりインドネシア政府が損害を被ることになった。約束しても守らない。インドネシア政府は、中国商法に騙されることになった。

     

    『日本経済新聞』(10月14日付)は、「高速鉄道 中国案のツケ、インドネシア 費用膨張で税金投入検討 総工費が日本案の4割高に」と題する記事を掲載した。

     

    中国が主導してインドネシアで建設が進む高速鉄道の計画をめぐり、ジョコ大統領は6日、国費の投入を可能にする改正大統領令を公布した。当初の両政府の合意では、インドネシア政府に財政負担を一切伴わない触れ込みだったが、事前の事業調査の甘さが露呈して費用が想定を上回り、方針転換を迫られている。

     

    (1)「ジョコ政権は政府融資も選択肢に入れる。インドネシア国鉄社長は9月上旬、国会の証言で「高速鉄道事業が19億ドル(約2100億円)のコスト超過に陥っている」と表明し、政府に財政支援を求めていた。インドネシアと中国両政府は2015年9月に高速鉄道の建設で合意した。首都ジャカルタと西ジャワ州の中心都市バンドン間の140キロメートルを中国の高速鉄道技術で結び、現行の在来線で3時間半の所要時間を45分に短縮する計画だ」

     

    インドネシアと中国両政府は、2015年9月に高速鉄道の建設で合意した。中国は、工事欲しさに破格の価格を提示したほか、日本の測量図を使うという杜撰な工事計画であった。それが、工期の長期化と19億ドルもの工費割り増しという最悪の結果を招くことになった。

     

    (2)「インドネシア政府は当初、総工費を55億ドルと見積もった。起工式から5年を迎えた今年1月時点では60億7000万ドルに膨らむと見込んだ。その後、国鉄も資本参加する事業主体のインドネシア中国高速鉄道社(KCIC)が改めて費用を精査した結果、少なく見積もっても79億7000万ドルに達するとわかった」

     

    当初の総工費は、55億ドル。それが、60億7000万ドルに膨らみ、最終的に79億7000万ドルにまでなるという。こういう工費の膨張は、中国側がいかにインチキであるかを物語っている。一帯一路プロジェクトもこんな杜撰な調子で行っているのだろう。呆れた話だ。

     


    (3)「国鉄は国会証言で、土地取得や建設にかかる費用が想定を上回ったほか、計画の再三の遅延により、見込んでいた収入を得られなくなったことを追加費用発生の理由に挙げた。財務や税務などのコンサルタント料もかさんだという。KCICは当初、16年中に建設予定地の土地収用を終える方針だった。だが、当局が保有する土地データが実際と異なる例があり、所有者の把握が難航した。建設に必要な土地面積は予定より3割広いことが分かり、コストをかさ上げした」

     

    中国側だけを責める訳にもいかない事情がある。インドネシア側の建設用地買収が遅れ、かつ建設に必要な土地面積は予定より3割広いというおまけも付いた。これらが、建設費を押し上げた。

     

    土地収用問題は、最初から難航が予想されていた。中国は、そういう事情も知らずに、日本へ決まりかけた受注を横取りした。

     

    (4)「追加の費用負担を巡っても問題が生じた。全体の負担の枠組みは、75%を中国国家開発銀行(CDB)の融資、25%をKCICの資金から充てる取り決めになっている。KCICは資本の60%をインドネシア、40%を中国の企業で構成する共同事業体だ。ただインドネシア側がKCICの資本金を十分に支払っていないことが判明し、中国側は追加費用の捻出に向けたCDBの追加融資や中国企業の負担を拒否しているもようだ

     

    下線部は、中国の資金事情の悪化を反映している。他国の一帯一路でも、空手形を切って相手国を怒らせているケースが東欧などで続出している。これが、反中ムードを高める一因になっている。

     


    (5)「高速鉄道計画をめぐっては、当初、日本の政府開発援助(ODA)を通じた新幹線方式の提案が有力視された。日本案では総工費を6000億円と見積もり、うち4500億円を償還期間40年、金利0.%の円借款で充てる内容だった。日本企業が受注する条件付きだったとはいえ、1%以上する通常のODA案件の金利より低く抑えた。しかし、ジョコ氏は最終的に中国案の採用を決めた。インドネシア政府に財政負担や債務保証を一切求めず、技術も移転するという破格の条件が決め手となった

     

    ジョコ大統領が、中国案に乗ったのは政治的な理由とされる。インドネシア側が建設費を負担しないことが、功績になると踏んだもの。その後の工事遅延で、日本を誘い込む動きを見せたものの、日本側が辞退して関わりを持たぬようにした経緯がある。

     

    (6)「高速鉄道の工事の進捗率は現在79%にとどまり、開業は22年末までずれこむ見通しだ。完工は日本案で想定した21年よりも遅れるうえ、総工費も4割以上高い水準に膨らんだ。触れ込みに反してインドネシア政府が国費を投入する方向となり、中国案のメリットは薄らいでいる」

     

    日本案で着工していれば、今年は開通していた。総工費も日本案より高く付き、中国に全て騙された形である。この一件で、中国の高速鉄道建設案には大きな瑕疵がついた。

     

     

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