日本が建設を請け負う予定で進んでいたインドネシア高速鉄道(ジャカルタ・バンドン区間142キロメートル)は、契約寸前に中国へ横取りされたプロジェクトである。中国側は、事前調査もしないで日本の作成した建設計画書に基づく「盲建設」であったことから工事は大幅に遅れている。
それでも、同プロジェクトは昨年末時点で工事の進捗率は79.9%までこぎつけ、2022年末までに一部区間の試運転を行った後、2023年に全線完工を目指している。だが、ここで新たな経営問題がでてきた。インドネシア政府の首都移転(24年から首都をジャカルタからカリマンタン島[ボルネオ島]へ)の影響もあり、採算が取れるのは40年後という気の遠くなるような話に変わったのだ。中国には、泣かされるプロジェクトとなった。日本から横取りした「報い」を受けているようだ。
『大紀元』(2月9日付)は、「中国受注の『インドネシア高速鉄道計画』、利益出るまで40年かかる見通し」と題する記事を掲載した。
中国受注の「インドネシア高速鉄道計画」は、20億ドルのコスト超過に直面している。投資を回収し、利益が出るまでに40年はかかる見通しだという。高速鉄道を建設する企業連合の「インドネシア中国高速鉄道社(KCIC)」のドウィヤナ・スラメット・リヤディ社長が2月7日の議会公聴会で明かした。
(1)「現在、KCICが建設中の首都ジャカルタと西ジャワ州バンドンを結ぶ高速鉄道(総延長142キロメートル)プロジェクトは、中国の「一帯一路」構想のもと、中国国家開発銀行が資金を提供して、2018年から着工した。土地の所有権をめぐる紛争や環境問題、パンデミックによる人員不足などにより相次ぐ工期延長の影響で、完工時期が何度も延期された。現在、遅れながらも工事は続いている。当初は完成後20年以内に投資を回収し、利益を上げ始める計画だった。
KCICは、インドネシアの国営企業であるウィジャヤ・カルヤやKAIなどが60%を、残りを中国企業が保有する。 中国の国家開発銀行が資金を提供するこのプロジェクトは、2015年にKCICに発注され、18年に着工された。だが、十分な事前調査をしないことや、建設中に沿線住民へ被害を与えるなどの問題を引き起した。中国と同じ感覚で強行したことが反感を招いたもの。日本流の話合い路線によるソフトな対応であれば、ここまでこじれることもなかったであろう。
(2)「リヤディ社長によると、政府の首都移転(24年から首都をジャカルタからカリマンタン島(ボルネオ島)へ)の影響もあり、同鉄道の乗客数は当初見積もりの1日あたり6万1157人から3万1215人に激減する可能性がある。そのため、投資を回収できるのは完成してから40年はかかるという。用地買収の遅れや労働者の賃金上昇、高騰が続く原材料などで、プロジェクトは約20億ドルのコスト超過に直面しているという。プロジェクト終了時の総事業費は113兆ルピア(約78.5億ドル)に上ると試算される。ロイター通信がKCICのデータを引用して報じたところによると、同プロジェクトは昨年末時点で工事の進捗率は79.9%で、2022年末までに一部区間の試運転を行った後、2023年に全線完工を目指している」
インドネシア政府も無責任である。高速鉄道を建設しながら首都移転とは驚く。需要予測が、完全に狂うからだ。乗客予測では、1日あたり6万1157人が、3万1215人へと実に49%も激減する可能性があるという。これでは、高速鉄道を建設する意味が薄れてしまうだろう。なにか、中国への当てつけのようにも見えるのだ。
プロジェクトは計画よりも約20億ドル増えて、約78.5億ドルへと膨らむという。計画の34%増にもなる。これほど杜撰なプロジェクト計画もないだろう。最初から、計画はあってもない同然のものだったのだろう。中国における高速鉄道建設もこの調子で行なっているにちがいない。他国では、恐ろしくて中国からの高速鉄道導入話を敬遠して当然だ。ASEAN(東南アジア諸国連合)では最近、高速鉄道建設の計画がパタッと止まっているのは、この結果であろう。
(3)「このプロジェクトをめぐって、日本と中国は当時、激しい受注合戦を展開した。最終的にインドネシアは、財政負担を伴わない中国案の採用を決定した。中国は現在、世界で最も早く高速鉄道を開発・建設している国である。「インドネシア高速鉄道計画」は中国以外の国で、完全に中国規格で建てる初の鉄道となる。そのため、将来に向けた成功事例を作るためにも重要な存在とされている」
完全に中国の敗北である。竣工期間は狂う。建設予算は大幅に増える。こういう当てにならない中国へ、高速鉄道建設を委託する国は現れるはずがない。中国は、自分で自分の首を締めてしまったのだ。