中国は、グローバルサウス諸国の「盟主」たらんとしているが、ダンピング輸出によって大きな損害を与えている。中国の輸出依存モデルが、アジアでZ世代の未来を危うくしていると不興を買っているのだ。アジアは、グローバル化の波に乗り数十億人の生活水準と雇用を押し上げてきた。しかし今、中国というアジア最大の経済から押し寄せる安価な製品の洪水と、トランプ米大統領が始めた貿易戦争という二重苦にさらされ、輸出基盤がかつてなく圧迫されている。
(1)「中国からのしわ寄せは、賃金の伸び悩みと生活費高騰に苦しむ若い世代をさらに追い詰めている。親世代の繁栄を支えた製造業の雇用は見つけにくく、大学卒業者のホワイトカラー職争奪戦が激化している。内需が低迷し、不動産セクターが重しとなっている中国は、成長維持のため製造業への依存を一段と強めている。米国向けの輸出が大きく落ち込んでいるにもかかわらず、今年の年間貿易黒字額はすでに1兆ドル(約155兆円)を超えた。 中国の輸出攻勢は近隣国の経済をのみ込み、各国で反発を招いている」
中国は不況の真っ只中にあるが、ダンピング輸出で近隣諸国を窮乏化させるという「二次被害国」を生んでいる。
(2)「過大な負担を強いられているのが、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国、とりわけ東南アジアだ。低コストの国内市場が中国の圧倒的な生産規模との競争に苦しむ中で、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の脆弱性がますます高まっている。輸入規制などの対策も、中国製品の流入を食い止める効果は乏しい。労働集約型産業への打撃が大きく、若年層を直撃している」
最も大きな被害を被っているのは、ASEAN諸国である。労働集約型産業への打撃が大きく、若年層がその被害を最も大きく受けている。
(3)「シドニーのシンクタンク、ローウィー研究所が最近公表したリポートによると、インドネシアでは2022年以降に約60の繊維工場が閉鎖され、約25万人の雇用が失われた。インドネシア繊維・フィラメント糸生産者協会は、25年にさらに50万人分が失われる恐れがあると推計。予想通りなら数年のうちに同セクターで雇用の4分の1が消える計算になる」
インドネシアは、中国のダンピング輸出で2022年以降、約60の繊維工場が閉鎖され、約25万人の雇用が失われた。25年はさらに50万人分が失われる恐れがあるという。
(4)「影響は、インドネシア以外にも及んでいる。タイでも昨年、約2000の工場が閉鎖された。地元当局は安価な中国製品の流入が主因だと指摘。こうした工場は従来、若者が最初に就く製造業の仕事を提供し、ミドルクラス(中間所得者層)入りするための最も確実な就職先となっていた。これは、低付加価値の生産にとどまる話ではない。米中経済安全保障調査委員会(USCC)は、中国の過剰生産能力は今や繊維や玩具などの業種のみならず、はるかに大きな市場を再編しつつあると警告している」
タイでも昨年、約2000の工場が閉鎖された。中国の過剰生産能力は、今や繊維や玩具などの業種のみならず、はるかに大きな市場をまきこんでいる。
(5)「中国は、電気自動車(EV)やバッテリー、医薬品、ロボット工学といった先端産業で急速に台頭。その背後にあるのが、国家による資金提供と積極的な産業政策だ。エコノミストのデービッド・オーター、ゴードン・ハンソン両氏は、「チャイナショック2.0」と呼ばれる現象が、最初の中国ショックより破壊的なものになる可能性があると分析している」
中国は、国家資金の援助で輸出産業へ補助金を出している。ダンピング輸出の裏には,こういった政府の補助金がテコになっている。
(7)「新たなチャイナショックの政治的影響は、すでに表れ始めている。アジアの一部では、若い有権者が自国のリーダーや経済エリートへの不満と不信を強めている。中国の輸出急増が唯一の要因ではないものの、各国政府への圧力が高まるリスクがある。その怒りはこの夏、インドネシアや東ティモール、フィリピンの街頭で目に見える形で表面化した。汚職や縁故主義、雇用不足にうんざりした若者が抗議行動を主導し、政府の説明責任をより強く求めた。ネパールでは、汚職に反発した若者らの動きが9月上旬に首相を退陣へと追い込んだ」
ダンピング輸出による被害は、先方国へ社会不安の種を蒔いていることだ。インドネシアや東ティモール、フィリピン、ネパールまで被害は広まっている。
(6)「アジア各国が取り得るより有益な対応策としては、自国企業が新規市場を開拓し効率性を高められるよう支援することや域内で足並みをそろえた貿易防衛措置を講じること、職を失った働き手の再訓練や所得支援を拡充することなどが挙げられる。Z世代が貿易の恩恵を共有できる仕組みを整えなければ、経済的不満が政治的な不安定へと直結し得る。中国の新たな経済モデルは、自国の経済成長を下支えしている可能性がある。しかし、その裏でアジアの労働市場に不確実性が輸出されている。どれだけ安価な製品が出回っても、不安定さを補うことにはならない」
中国からのダンピング輸出の被害を受けている国は、職を失った働き手の再訓練や所得支援を拡充する政策を迫られている。中国は、自分の庭をきれいにして、ゴミを他国へ投棄しているのだ。





