ロシアは、8月8日の停戦受託期限を前に停戦案を提示した。ウクライナが、東部ドネツク州から軍を撤退させることに同意すれば停戦に応じるというもの。欧州は、これを拒否した。ロシアが、にわかに停戦案を提示した裏には、経済的に行き詰まっていることを示すと欧州側は読んでいる。ロシアは、自国産原油輸入国へ50%の「二次制裁」が掛ることに驚いた結果であるとし、欧州側は安易な妥結を忌避する姿勢だ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月10日付)は、「ウクライナと欧州、プーチン氏の停戦案に対案」と題する記事を掲載した。
欧州諸国とウクライナは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ戦争の停戦案を示したことを受け、対案を提示した。事情に詳しい欧州の当局者らによると、この対案は、ドナルド・トランプ米大統領とプーチン氏の今後の協議が進展するための枠組みとして機能する必要があるという。
(1)「ロシア案は、ウクライナが東部ドネツク州から軍を撤退させることに同意すれば停戦に応じるというものだが、欧州案はこれを拒否した。欧州案は、9日に英国で開かれた米高官らとの会合で示された。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は9日夜の演説で、会合は建設的だったとし、「われわれの主張は聞き入れられている。危険性も考慮されている」と述べた。「米国に戦争を終結させる決意と能力があることが重要で、われわれはトランプ大統領の、殺りくを止めようとする取り組みを歓迎する」と指摘」
NATO(北大西洋条約機構)は、国防費の引上げを決めるなど米国へ足並みを揃えている。米国は、欧州側の意見を聞かざるを得ない立場だ。
(2)「米当局者は、この会合で、ウクライナ戦争を終結させるというトランプ氏の目標に向けて進展があったと述べた。欧州側の参加者によると、米国側は欧州案に前向きな反応を示した。米当局者は、この会合で、ウクライナ戦争を終結させるというトランプ氏の目標に向けて進展があったと述べた。欧州側の参加者によると、米国側は欧州案に前向きな反応を示した」
米国は、欧州案へ前向きであるという。米欧の結束は、ロシアへ十分な対抗力を見せつけられる。
(3)「英国、ドイツ、フランスなどの欧州諸国とウクライナは、プーチン氏と米国のスティーブ・ウィットコフ中東担当特使による6日のモスクワでの会談で和平案が示されたことを受け、対応を急いだ。欧州の目的は、ウクライナと共に共通のレッドライン(譲れない一線)を引くことにある。これは、ロシアとのいかなる交渉にも適用されなければならないと、欧州の当局者らは言う」
ウクライナの問題は今や、欧州の問題になっている。プーチン氏にとっては、想定外の欧州結束の事態を迎えている。
(4)欧州案は、何よりも停戦を優先するよう求めている。また、領土の交換は相互的な方法でのみ可能とし、ウクライナ軍が一部の地域から撤退する場合、ロシア軍も他の地域から撤退しなければならないとしている。重要なのは、ウクライナが領土面で譲歩するには、同国の北大西洋条約機構(NATO)加盟の可能性を含む「安全の保証」の確約が必要だと、欧州案に明記されていることだ。同案は、米国のJD・バンス副大統領、マルコ・ルビオ国務長官、ウクライナ担当のキース・ケロッグ特使、ウィットコフ氏に提示された。フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領は9日午後、トランプ氏に電話をかけ、欧州案を説明した」
欧州案では、ウクライナが領土面で譲歩する場合、同国の北大西洋条約機構(NATO)加盟の可能性を含む「安全の保証」の確約が必要と明記されている。ロシアが、最も忌避したい項目だ。これが実現すれば、ロシアのウクライナ侵攻目的はゼロになる。プーチン敗北である。
(5)「フィンランドのストゥブ大統領はソーシャルメディアへの投稿で、「欧州はウクライナと団結している」とし、「われわれはトランプ大統領や米国と緊密に協力し続ける」と指摘。この会合は重要な前進だったと同氏は付け加えた。「脆弱な停戦はロシアの利益にしかならず、ロシアの占領地を固定化し、ウクライナの反撃の機会を制限することになる」。欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のカヤ・カラス外交安全保障上級代表は会合後、欧州当局者らへのメッセージでそう述べた」
ウクライナは、停戦交渉においてNATOから全面的な支援を受ける形となった。プーチン氏には、難敵が現れた形である。
(6)「プーチン氏はこれまで、ウクライナの非軍事化や政権交代、ヘルソンおよびザポリージャ全域の譲渡を求めるという、より強硬な姿勢を示していたが、6日のウィットコフ氏との会談では、そうした立場を繰り返すことはなかった。会談について説明を受けた複数の欧州当局者はそう述べた。欧州当局者の一部は9日、ウクライナがドネツク州全域を引き渡す場合、ロシアはザポリージャ州とヘルソン州の占領地域から撤退しなければならないと述べた。ある欧州首脳の上級補佐官は、トランプ氏が予定していた制裁措置をプーチン氏が回避できたことは遺憾だと話した。この措置が実行されていれば、ロシアの戦争経済に深刻な打撃を与え、同国がウクライナ侵攻を拡大する能力は低下していたはずだという。同補佐官は、プーチン氏は米国の圧力にいかに脆弱であるかを示したとし、トランプ氏はその影響力を行使しなければならないと述べた」
欧州は、完全にロシアの足下を見下している。EUは、関税交渉で米国へ報復せずに妥結したことで、米国へ「恩を売った」形になっている。欧州は、結束して米国を取り込む姿勢に変わっているのだ。



