勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:台湾経済 > 台湾経済

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    バルト三国の一つリトアニアは、中国と犬猿の仲である。リトアニアが、外交関係のない台湾と積極的交流をしており、これを阻止すべく圧力を掛けているからだ。ロシアへも立ち向かうリトアニアである。自由と民主主義の戦いでは中ロに屈しない姿勢を見せている。

     

    リトアニアは、今年6月に台湾へ代表団を送ったが、8月にも代表団を送る。台湾の外交部(外務省)は6日、バルト3国のリトアニアの政府高官が率いる代表団が、8月7日から台湾を訪問すると発表した。代表団は、運輸通信省の副大臣や電動バス会社の幹部らで構成され、5日間滞在する。台湾の交通当局や企業の訪問を予定する。

     


    リトアニアは、6月12日からの4日間、政府高官が率いる代表団が訪問した。代表団は、リトアニア経済革新省の副大臣や、企業経営者など計10人で構成された。リトアニアは、工業水準が高く台湾から半導体技術の導入を目指している。

     

    中国は、「一つの中国論」でリトアニアの台湾訪問に反対してきた。これまでに、数々の圧力を加えドイツの自動車部品メーカーには、リトアニア製部品を採用した部品の中国輸入を認めないとまで騒ぎを広げたが、EU(欧州連合)の厳しい反対に遭遇した。だが、リトアニアはこれら圧力に屈せず、意気軒昂である。韓国政府に見習わせたいほどだ。

     

    台湾政府も、リトアニアの誠意に答えるべく投資ファンドをつくって支援姿勢を強めている。互いに、「持ちつ持たれつ」の関係性を樹立している。

     

    『大紀元』(1月12日付)は、「台湾、リトアニアへの投資強化 10億ドル規模融資ファンドを創設へ」と題する記事を掲載した。

     

    台湾は、中国当局から経済報復を受けているリトアニアに対して支援する姿勢を打ち出した。経済政策を担う国家発展委員会(NDC)は1月11日、台湾・リトアニアの共同プロジェクトに対して10億ドル規模の与信制度を創設すると発表した。NDCは5日、リトアニアの産業を支援するために2億ドル規模の「中東欧投資基金」を設立すると発表したばかりだ。

     

    (1)「NDCトップの龔明鑫(クン ミンシン)主任委員(閣僚に相当)は11日、リトアニアのアウシュリネ・アルモナイテ経済イノベーション相とオンライン会談で、リトアニアとの協力を深化すると約束した。「ともに強力な民主主義的サプライチェーンを構築し、世界の民主主義陣営の結束と強さを高める。同時に、中国共産党の経済的な圧力に対処するリトアニアを引き続き全力で支援する」と述べた。

     

    台湾とリトアニアは、協力深化を約束しあっている。具体的には、台湾の資金で台湾技術をリトアニアへ供与するものだ。

     


    (2)「龔主任委員は、両国の協力が見込まれるリトアニアの産業のために「10億ドル規模の
    融資ファンド」を創設するとした。半導体開発、バイオテクノロジー、衛星技術、ファイナンス、科学研究の6分野が対象。両閣僚はその後の記者会見で、台湾とリトアニアは「今後、様々な分野での交流と協力がより緊密に、より頻繁に行われる」と示した。特に、半導体分野での協力が最も著しくなるという。台湾のNDC、経済省などの政府官庁は近く共同で「台湾・欧州半導体産業協力専門チーム」を立ち上げる予定」

     

    台湾は、リトアニアに対して10億ドル規模の投資ファンドを作る。半導体開発、バイオテクノロジー、衛星技術、ファイナンス、科学研究の6分野で事業の立上げを目標にするという。

     

    (3)「中国は昨年以降、「台湾」の名前を冠した出先機関の開設を認めたリトアニアに対して、経済的、外交的な圧力を強めている。アルモナイテ氏は台湾側の支援に感謝し、今春に駐台湾代表処を正式に開設すると明らかにした」

     

    欧州では、台湾の半導体技術に関心を集めている。すでに、ドイツが台湾のTSMCと半導体進出で話をまとめようとしている。リトアニアが、TSMC誘致に成功すれば大きな成果となろう。

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    中国は、台湾と国交を結んでいる国に対して、「物量作戦」で断交を迫る醜い外交戦術を行なっている。台湾を外交的に孤立させる目的だ。これに引っかかり、台湾と断交する国が確実に増えている。

     

    米国はこれを憂慮しており、台湾と断交した国は米国が経済援助しないと締め付けを厳しくしているほど。このほど、台湾シンクタンクが調査したところによれば、台湾との断交後に経済発展した国はないという。完全に、中国の口車に乗せられたことが分る。

     


    『大紀元』(7月21日付)は、「台湾と断交した国『長期的な経済成長は見られない』、台湾研究機関」と題する記事を掲載した。

     

    中国の圧力で台湾と国交を断絶した国は近年、増えている。台湾の最高学術研究機関である中央研究院の欧米研究所は5月、「台湾から中国に鞍替えした国々では長期的な経済成長が見られない」と指摘する研究報告書を発表した。米政府系放送局『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)20日付が報じた。

     

    (1)「中国が台湾と国交を有する国を説得する方法は、主に「経済的脅迫」「外交支援」「貿易投資」などであると同報告書は指摘した。現在、台湾と国交を有し、台湾を国と認めているのは、バチカン市国を含め14カ国となっている。調査ではアフリカ、ラテンアメリカ・カリブ海、中東欧、オセアニアの4地域の国について、中国や台湾との関係が経済に与える影響を比較した。台湾と断行後、中国へシフトした国、あるいは中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に参加した国は、期待していた長期的な経済成長を得られなかったと結論づけた」

     

    中国は、台湾と断交させるために露骨な「札ビラ」戦術を取っている。この誘惑作戦に負けたところが、台湾と断交している。中国は、「一つの中国」を盾にして、台湾との同時国交を認めず、必ず台湾と断交させる。

     


    EU(欧州連合)も、この「一つの中国」で台湾と断交しているが、台湾と復交しないまでも関係復活に乗り出している。台湾の半導体企業誘致がお目当てだ。最近、EUからの台湾訪問国が急増している。

     

    (2)「報告書は、アフリカのマラウイの事例を挙げた。同国は、2007年に台湾と断交後、中国と国交を樹立したが、2005~12年の間に中国からの直接投資で創出された雇用機会はわずか1万3000人で、中国が当初約束した30万人を大きく下回る結果となった。中国と国交を結んだ時、当時のマラウイ大統領は「我が国は貧困から脱却できる」と喜んだが、10年以上経った今も、地元住民はマラウイを「貧しい国だ」と考えているという」

     

    中国は国交結ぶ場合、大風呂敷を広げている。アフリカのマラウイも、この大風呂敷に騙された国である。30万人も雇用が増えるとやくそくしたのに、わずか1万3000人。約束の4%である。

     


    (3)「ラテンアメリカやカリブ海地域では、中国に乗り換えたことが、現地の経済発展を助けたと示す証拠はない。コスタリカ、ドミニカ、グレナダなどは中国と国交を結んだ後、台湾と国交を有する国々と比べて、経済成長が緩やかになっているという」

     

    コスタリカ、ドミニカ、グレナダなどは、中国と国交を結んだ後、台湾と国交を有する国々と比べて、経済成長が緩やかという。台湾と支援を結んでいる国は、米国からの支援が増えている可能性がある。中国は、台湾と断交させることが目的であるから、「釣った魚にはエサを上げない」のだ。中国という国は狡猾である。

     


    (4)「報告書はまた、そうした国々は、中国の経済援助や投資により短期的な経済成長を経験するが、長期的には巨額債務や貿易不均衡などによって成長が止まる可能性があると指摘した。いっぽう、台湾と国交を再樹立する国もある。太平洋南西部に位置するナウルは2002年に台湾との国交を断絶し、北京に切り替えたが、経済状況が改善しないため05年に再び台湾との国交を復活させた」

     

    太平洋南西部のナウルは、2002年に台湾と国交断絶したが、05には復交するというケースもある。中国と国交を結んでも良いことがなかったのだ。台湾も、一度は断交になった国と復交するというシーソーゲームを展開している。

     


    (5)「南太平洋のサモアは長年中国の同盟国であり、中国の資金援助もあって2000年以降経済が著しく成長したが、06年をピークに経済発展は減速し、ここ10年は停滞気味だった。中国が投資を続けているにもかかわらず、サモアの新首相は昨年、中国が出資する港湾プロジェクトを中止した。同国の対中債務はすでに高く、このプロジェクトを支援することは不可能だったからだという」

     

    南太平洋のサモアは、台湾と断交後に経済成長した。それも6年ほどで終り、その後は「鳴かず飛ばず」の状態だ。中国が、経済支援しないからだ。中国は、露骨な振る舞いをしている。

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    最先端半導体(3~4ナノ)生産が遅れている。原因は製造設備の供給遅延だが、従来型半導体不足の影響とされている。従来型半導体の供給遅延が、最先端半導体の製造設備供給を遅らせるという悪循環だ。

     

    1ナノメートルとは、10億分の1つまり、0.000 000 001メートルという気の遠くなるような超超微細の単位である。ここまで「極細」にした半導体がなければ、高性能コンピューティング、人工知能(AI)、自動運転車といった最新テクノロジー分野の開発ペースが鈍りかねないと懸念される。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月10日付)は、「先端半導体に広がる供給不足、製造装置納入に遅れ」と題する記事を掲載した。

     

    2年にわたる世界的な半導体不足が、次世代スマートフォンやアプリを支えるデータセンターに欠かせない先端半導体の分野にも広がってきた。先端半導体はこれまで、自動車や電子製品を直撃した世界的な半導体不足の影響を概ね免れてきた。ところが、ここにきて生産障害や製造装置の不足といった問題に直面しており、世界のトップ2社が顧客への納期を確実に守れるのか懸念が生じている。

     

    (1)「こうした影響は来年にも電子製品のサプライチェーン(供給網)に波及する可能性があり、あるアナリストは2024年以降に先端半導体が最大で20%不足する恐れがあると警告している。先端半導体の供給が脅かされれば、高性能コンピューティング、人工知能(AI)、自動運転車といった最新テクノロジー分野の開発ペースが鈍りかねないとの指摘が出ている。世界で最先端半導体の製造能力を備えているのが、台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子の2社に限られることも、問題の一因となっている。コストの高さや技術的な障害が2強集中の構図を生んだ背景にある。両社とも向こう数カ月にわたる野心的な計画を掲げている」

     


    最先端半導体の生産シェアは、TSMCが92%、サムスンが8%であり、TSMCが圧倒的な強みを発揮している。最先端半導体が、2024年以降に最大で20%不足する恐れがあるという。これによって、最新テクノロジー分野の開発ペースが鈍る恐れが出てきた。

     

     

    (2)「半導体ファウンドリー(受託生産)で世界最大手であるTSMCは、製造装置の入手に手間取っており、2023~24年に期待しているほど生産ペースを引き上げることができないかもしれないと顧客の一部に通知した。内情に詳しい関係筋が明らかにした。製造装置の納入は足元で想定以上に遅れている。新規受注のリードタイム(発注から納品までの期間)は、従来型半導体の不足が主因となって23年に延びているケースもある」

     

    最先端半導体製造装置の大手メーカーは、オランダのASMLホールディングである。日本メーカーは、技術競争力の面で最先端半導体設備から脱落した。最先端半導体設備の製造では、従来型半導体を使っている。これが供給不足に陥っており、2~3年納品が遅れている。

     


    (3)「技術的な問題も立ちはだかっている。サムスン電子のファウンドリー部門では、4ナノ工程の歩留まり(欠陥のない合格品の割合)改善ペースが想定を下回っており、生産能力に制約が生じているという。ただ、TSMCとサムスンは供給障害を回避するための取り組みで前進していると話している。TSMCの魏哲家最高経営責任者(CEO)は4月、アナリストとの電話会議で最新の3ナノチップの生産について聞かれ、製造機械の納入で問題が生じているが、問題に対処していると述べていた。サムスンのファウンドリー事業幹部、カン・ムンスー氏は先月、アナリストとの電話会議で、4ナノ工程の歩留まり改善が遅れたが、「想定される改善カーブに戻っている」と説明した」

     

    サムスンは、4ナノチップの歩留まりが良くないこと。TSMCは、製造機械の納入遅れで最新の3ナノチップ生産が軌道に乗らないことを明らかにした。

     


    (4)「先端半導体メーカーが増産に向けて見込んでいる設備投資額と、半導体製造装置業界の売上高見通しには隔たりがある。業界団体SEMIによると、半導体製造装置の世界売上高は今年およそ1070億ドル(約14兆3400億円)に達すると見込まれている。製造装置は半導体工場の新規建設コストの大半を占める。それに対し、コンサルティング会社インターナショナル・ビジネス・ストラテジーズ(IBS)では、半導体メーカーの設備投資予算は1800億ドルに達すると予想している」

     

    半導体製造装置の世界売上高は、今年およそ1070億ドルを見込む。半導体メーカーの設備投資予算は1800億ドルである。この差の730億ドルは、製造設備の供給遅延になる。実に、4割にも相当する製造設備納品の遅延が起こる計算だ。

     

    (5)「IBSのハンデル・ジョーンズCEOは、最も進んだ3ナノ、2ナノ半導体の生産について、旺盛な需要と設備不足による影響が非常に大きくなると指摘する。同分野では2024~25年に推定10~20%の供給不足が生じるリスクがあるという。米インテルはファウンドリー事業の構築を目指しているが、計画はなお初期段階にあり、またサムスンやTSMCの代役を務めるにはまだ道のりが遠そうだ」

     

    最も進んだ3ナノ、2ナノ半導体は、24~25年に10~20%の供給不足が起きる懸念もあるという。世界でTSMCとサムスンしか製造できない以上、穴埋めできるメーカーが存在しないのだ。

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    中国は、2月4日の中ロ「共同声明」でNATO(北大西洋条約機構)への警戒と、台湾統一を認め合った。この抽象的エールの交換が、中国にとっては大きなマイナスをもたらしている。中国は、ロシアのウクライナ侵略を間接的に支持したことになると同時に、台湾市民に「第二のウクライナ」にならない強い決意を持たせたからだ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムス』(3月9日付)は、「『ウクライナの次は台湾かも』、中国に身構える市民」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがウクライナに侵攻するまで、ウー・ハオチンさんは対戦車ミサイル「ジャベリン」のことなど聞いたこともなかった。それが今、市街戦でのその威力について友人たちと話し、台湾は予備役に使い方を訓練すべきだと言うようになっている。「台湾はとても平和なので、戦争のことなど考えていなかった。でも、ウクライナでの戦闘をニュースで見て、これはここでも起こり得ることだとわかり始めた」と経済学を専攻する22歳の学生のウーさんは話した。

     


    (1)「『ウクライナの人々は勇敢に祖国を守っている。私たちも、中国が攻めてきたら同じことをしなければならないかもしれないが、まだ準備ができていない』 ロシアのウクライナ侵攻は台湾への警鐘となっている。台湾は自国の領土であるとする中国共産党が、武力統一の警告を行動に移す可能性があるという意識が高まっている。「ウクライナ危機は、この脅威が現実的なものであることを私たちに思い起こさせている。多くの人がにわかに自衛への意識を高め始めた」と話すのは法学教授で、2021年に一般市民を対象に戦闘と抵抗の意志を強めることについて教える団体を創立したホー・チェンフイ氏だ」

     

    台湾市民にとって、ウクライナ戦争は他人事でない。明日の我が身になるリスクという認識が高まった。中国にとっては,予期せぬ出来事だ。

     


    (2)「元特殊部隊の士官で、防衛関連や災害対応について8000人以上を訓練してきたイーノック・ウー氏も、市民の関心が一気に高まったと指摘する。「私たちは5月か6月にレジリエンス(回復力)に関する連続セミナーを始める予定だったが、全てを今週末に繰り上げることにした」と同氏は話した。「発表から1時間で予約が完全に埋まった」。台湾の当局者らは、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は戦わずに台湾の支配権を握りたい考えだとみている。だが、中国の武力行使する危険は高まっているという。中国に支配されることへの台湾の反発姿勢を政治的・経済的圧力では崩すことはできないと、中国側が認識するに至ったからだという」

     

    ウクライナ戦争を機に、台湾市民の防衛セミナー参加意識がぐっと高まっている。ウクライナ市民は、自主的に銃をとってロシア軍へ抵抗する姿勢を見せている。台湾市民にとっては、またとない手本である。

     


    (3)「中国は、台湾周辺の空と海での軍事活動で圧力を強めているが、その脅威に対する懸念の兆候は最近まではほとんどなかった。直近の意識調査でも、台湾市民の半数以上が戦争にはなりそうにないと考えていた。「台湾人は、欧米諸国がウクライナに食料や武器を送るだけで、人員は派遣しないのを目の当たりにしている。これまで台湾人が想像していなかったことだ」と淡江大学国際戦略研究所の黄介正教授は言う。「人々は、米軍がそばにいる限り、安全だと思っていた」

     

    台湾市民は、米軍へ大きく依存してきた。むろん、現実の戦争になれば、「クアッド」(日米豪印)や「AUKUS」(米英豪:軍事同盟)が出動して、中国軍と戦う準備が進んでいる。だが、先ず台湾市民によって台湾を防衛するのが基本である。

     

    (4)「米国は台湾の防衛を支援すると約束しているが、米軍が戦争に直接介入するかどうかについては曖昧な文言になっている。「今では多くの人が『今日のウクライナは明日の台湾』と言っている」。台湾の最大野党・国民党の国際問題部局の責任者も務める黄教授は付け加えた。「最初に香港、それから米国のアフガニスタン撤退、そして今はこの事態だ。これらの影響で多大な不安が積み重なり、水面下でくすぶっている」と指摘する」

     

    下線部は、重要である。国民党は、これまで中国共産党へ親近感を見せてきた。それだけに、中国からの侵攻を受ければ、最初に「白旗」を掲げ中国軍へ協力しかねない「危ない」存在と見られている。その国民党が、台湾人のアイデンティティを賭けて戦う意志を見せる。本当だとすれば、大きな変化だ。

     


    (5)「台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は戦争に関する議論を避け、ウクライナ紛争についても不安をあおるような発言はしていない。高官らによると、あからさまに防衛強化を急ごうとすれば、挑発的な戦闘準備と中国側に受け止められかねないことが理由に絡んでいる。米ホワイトハウスは先週、支援の証しとしてマイケル・マレン元米統合参謀本部議長率いる代表団を台北に派遣した。台湾の防衛強化を急ぎ、より踏み込む必要性について水面下で協議したとみられる。「私はマレン氏に、この問題に真剣に取り組める絶好の機会だと話した」と黄教授は話した」

     

    米国は、ウクライナ侵攻で台湾が動揺しないように、マイケル・マレン元米統合参謀本部議長率いる代表団を台湾へ送った。万一の際に米軍が取る対応策を示したに違いない。

     


    (6)「中国の人民解放軍は台湾海峡を越えなければならないため、台湾をめぐる戦争の遂行は全く異なるものとなるが、ウクライナ紛争は教訓をもたらしている。「ロシアが空挺(くうてい)部隊の投入にてこずっていることは、防空体制を維持することの重要性を示している」と台湾国防部のシンクタンク、国防安全研究院の許智翔研究員は指摘する。「我々の防空体制はパトリオットミサイルのような大規模なシステムを備える米国をモデルにしている。しかし、米国のような制空権の優位性はないかもしれない。ウクライナの状況から、人が持ち運べる地対空ミサイル『スティンガー』や対戦車ミサイルのジャベリンなど、小型の携帯式システムの有用性を見て取れる」」

     

    ウクライナ国民の戦いぶりは、台湾市民にとってひな形になる。どんなことがあっても、制空権を中国軍に奪われないことだ。これが、勝利への最後の道であることを示唆している。

     

     

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    中国が、「戦狼外交」で威張り散らしている間に、EUの対中国観は一変した。EUの大国・ドイツは、これまでメルケル首相の「親中政策」でEUを牽引してきた。そのメルケル氏の退任で,中国を応援する国はなくなった。

     

    EUは、代わって台湾へ熱い眼差しを向けている。台湾は、半導体生産で世界トップを行く。民主政治でありながら、中国から軍事的に威嚇されている。こういう台湾に対して、EUは「中国より台湾」というムードが高まってきたのだ。中国にとっては、思っても見なかった事態が展開している。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(11月17日付)は、「中国の怒りを買おうとも EUの台湾への急接近は 経済的にも合理的な判断だ」と題する記事を掲載した。

     

    去る11月3日、欧州議会の公式代表団が史上初めて台湾に足を踏み入れた。欧州議会の「外国の干渉に関する特別委員会」の面々は台湾に3日間滞在し、総統の蔡英文(ツァイ・インウェン)や行政院長(首相)の蘇貞昌(スー・チェンチャン)、立法府(立法院)を代表する游錫堃(ヨウ・シークン)らとの協議に臨んだ。

     


    (1)「10月末にも、やはり史上初めて台湾外交部長(外相)の呉釗燮(ウー・チャオシエ)がブリュッセルで、9カ国を代表する欧州議会議員や複数のEU本部当局者(個人名や肩書は公表されていない)と「非政治的レベル」の協議をしている。こうした相互訪問は前例のないもので、欧州の台湾政策における大きな変化を示唆している。これまで欧州議会や加盟国の一部が主張してきた路線を、欧州委員会や(加盟国全体の外交政策などを調整する)欧州対外行動庁も支持するようになってきた」

     

    EUと台湾の交流が、軌道に乗り始めた。経済面での協力関係がスタートする。EUと中国の包括的投資協定の批准が棚上げされる一方で、EUと台湾の投資問題が取り上げられる雰囲気になっている。

     

    (2)「その背景には、民主主義の友邦である台湾を支えるためなら政治的にも経済的にも投資を惜しまないという欧州側の意思がある。それは経済的な利益にもなり、台湾海峡の現状を守り平和を保つことにも役立つ。台湾にも欧州にも攻撃的な姿勢を強める中国に対し、ひるまず剛速球を投げ返す姿勢だ。10月には欧州議会が、台湾との関係を強化し「包括的かつ強化されたパートナーシップ」の確立を求める決議を採択している。そこにはEUと台湾の投資協定や、各種の国際機関で台湾が果たす役割を強化することへの支持、科学や文化、人材面での交流の拡大、メディア・医療・ハイテクなどの分野での協力推進などが含まれる

     

    中国が、EUと台湾と対立している間に、これら両者は幅広い協定を結ぼうとしている。中国は、威張り散らしている間に、果実を台湾にとられてしまった感じだ。

     


    (3)「さらに注目すべきは、長年にわたり中国政府の怒りを買うことを懸念して台湾との関係強化に消極的だった欧州委員会や欧州対外行動庁が、この決議に賛同したことだ。外相に当たる外交安全保障上級代表のジョセップ・ボレルもマルグレーテ・ベステア上級副委員長(競争政策担当)も支持に回った。これは欧州議会における親台勢力、とりわけドイツ選出のラインハルト・ビュティコファー議員らにとって目覚ましい勝利だ。中国政府は激しく反発するだろうが、彼らの提案は伝統的な「一つの中国」政策の枠組みを全く崩していない。台湾の独立を支持しているわけではなく、むしろ台湾海峡の現状の維持を唱えている」

     

    欧州でいう「一つの中国」は、本土と台湾の「共存」である。本土が台湾を威嚇することは、「一つの中国」の精神に反するという見方だ。欧州は、この見解に立って台湾海峡の現状維持に務めなければならない、という論理の展開をする。中国は見事に一本、EUにとられた感じだ。

     

    (4)「欧州議会の採択した決議の内容は全て、従来の「一つの中国」政策の範囲内に収まる。要は今までの解釈が狭すぎただけだ。ビュティコファー議員は2020年9月に同僚議員や有識者と連名で発表した寄稿で、欧州が「一つの中国」を支持すべき理由をこう述べている。今は中国政府が「新たな台湾政策を通じて、現状の維持を極めて危うくしている」が、だからこそ「欧州諸国は従来の台湾政策を変え、(台湾海峡の)現状維持に努めなければならない」と。ビュティコファーらに言わせると、台湾はこの数十年で「開かれた複数政党制の統治形態へと進化し、個人の尊厳を重んじる」民主主義の友邦となった。だから欧州の支持・支援を得るに値する」

     

    EUは、台湾が民主主義の友邦であるという認識である。中国にとっては,痛いところだ。今回の中国「歴史決議」では、中国が欧米民主主義を採用しないと宣言している。これでは、EUと台湾の密着を非難する根拠がなく、自ら漂流する道を選んだに等しい。

     

    (5)「実は経済的な理由もある。台湾の人口は2400万、市場として小さくはない。それにハイテク産業の基盤があるから、協力すれば経済的にも科学的にも双方に利がある。いい例が台湾積体電路製造(TSMC)だ。この会社は半導体の世界生産の半分以上を占めている。だからこそEU幹部のボレルもベステアも、台湾は「欧州半導体法の目標達成にとって重要なパートナー」だと言っている。この法律は半導体の設計から製造に至る全過程(バリューチェーン)で欧州勢のシェア拡大を目指している」

     

    EUにとって台湾の存在は、半導体製造において願ったり叶ったりである。台湾は、EUにとって半導体の重要パートナーになる。

     

    (6)「皮肉なもので、欧州の台湾接近を主張するビュティコファー議員に共鳴する仲間が増えたのは、中国政府のおかげでもある。中国のこれまでにない攻撃的な姿勢こそが、欧州各国にビュティコファー議員の望むアプローチを支持させた最大の要因だ。例えば中国が香港における「法の支配」を踏みにじったこと。あれを見れば、台湾に「一国二制度」が適用されるとは思えなくなる。今では多くの政治家が、こう考えている。もしも台湾海峡の現状を変えるために武力を行使すれば欧州との政治的・経済的な関係は壊滅的な打撃を受けるぞ、と中国に警告し、軽率な行動を慎むようクギを刺す必要がある、と。一方で最近の中国政府は欧州に対し、これまでになく敵対的な姿勢を見せている。こうなるとEUとしても台湾支援を急がざるを得ない

     

    EUの中には、中国に対して台湾海峡の現状変更に反対する旨を警告すべき、という議論を生んでいる。下線部は、従来見られなかったEUの姿勢である。

     

    (7)「この先に必要なのは、欧州議会の決議を支持するよう加盟各国に働き掛けること。そして仮に中国が台湾に攻撃を仕掛けた場合には団結して強力に対応する用意があると表明することだ。既に中東欧の一部加盟国は台湾政策を大きく転換している。この動きに、欧州の諸大国も続くべきだ。中国寄りだったアンゲラ・メルケル首相が去り、新たな枠組みの連立政権が誕生するドイツには、主導的な役割を果たすチャンスがある。連立協議中の3党は全て、台湾との関係拡大を公約している

     

    ドイツの次期政権を担う3党は、台湾との関係強化を公約している。ドイツの「親台姿勢」は、中国にとってショックであろう。

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