勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: アフリカ経済

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    日本へもコロナ感染第6波が押し寄せてきた。1月8日現在、新規感染者8480人と前週同曜日比で、何と7946人増になった。驚くべき増加である。オミクロン株特有の早い感染力を表している。感染予防は従来通りという。ワクチン接種・三密回避・マスク着用・手洗い励行の四つである。

     

    警戒感を強めなければならないが、先行きに一つの明るさも見える。現状を克服すれば、後はインフルエンザのようなエンデミック(周期的流行)局面に入ると、南アフリカで最初にオミクロン株を治療した専門家が指摘しているのだ。

     

    『中央日報』(1月8日付)は、「『オミクロン株でパンデミック終わるかも』 南アフリカ研究陣が分析」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの変異株「オミクロン」の震源として注目を引いた南アフリカの研究陣がパンデミック(伝染病の世界的大流行)様相が終わりそうだという内容の研究結果を出した。

    (1)「1月7日(現地時間)のブルームバーグ通信によると、研究陣はスティーブ・ビコ・アカデミック国立病院でオミクロン株による感染の推移を現場調査した結果、「パンデミックの様相が終わることを示唆する可能性がある」と明らかにした。今回の研究分析対象は病院内の現流行患者466人の記録と以前の感染事例3976件。オミクロン株が前例のないペースで急速に広がり、以前の変異株よりはるかに軽い症状を見せたというのがその根拠だ。続いて「こうしたパターンが続き、世界的に繰り返されれば、我々は感染者と死亡者の完全なデカップリング(脱同調化)を見ることができるだろう」と述べた」

     

    下線部のように、感染者は増えるが死亡率は下がるというデカップリング状態になるという。

     


    (2)「世界保健機関(WHO)の関係者も4日、オミクロン株について一部の地域の感染者数は過去最多だが、死亡者数は以前の流行と比べて少なく、デカップリング現象が表れていると伝えた。こうした傾向はオミクロン株がコロナパンデミックの深刻な局面が終わる前兆になるというのが専門家らの分析だ。急速な伝染局面が終わり、特定の地域でインフルエンザのようなエンデミック(周期的流行)局面に入ったということだ。昨年12月にマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏もコロナのパンデミック様相が今年中に収束してエンデミックになると予想した」

     

    WHOでも、感染者は増えても死亡率の低下を認めている。ただ、猛威は去ってもインフルエンザのような周期的な流行になると見ている。残念ながら、新型コロナウイルスは地球上から消えないが、予防注射で防げる程度に弱るのだろう。

     


    (3)「南アフリカ医療研究協議会はホームページで、今回の研究で現流行では病院患者の4.5%だけが死亡したと明らかにした。以前の流行時の21%と比較するとかなり低い。集中治療室に入院した患者も少なく、病院入院期間もかなり短かった。今回の研究で入院率自体は速いペースで上昇したが、分析対象となった最初の入院から33日後に減少に入った。研究報告書は「このような現象は以前にスティーブ・ビコ病院や南アフリカのどこでも観測されなかったことだ」とし「オミクロン株に関連して地域社会で無症状が高い水準であることを反映するものかもしれない」と分析した」

     

    南アのような防疫体制が完備されていない地域でも、オミクロン株の死亡率は以前の5分の1に低下している。依然として、死に至る危険性を秘めているが、集中治療室に入院した患者も少なく、病院入院期間もかなり短くなっているのは朗報である。オミクロン株確認後、最初の入院から33日後に感染者は減少に入っている。つまり、1ヶ月間が勝負期間である。日本では、2月初旬までが警戒期間となりそうだ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(1月4日付)は、「オミクロン型 ロンドンで感染縮小の兆し」と題する記事を掲載した。

     

    英政府のアドバイザーを務める科学者や保健当局者は、ロンドンで新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染縮小の兆しが現れ始めたことを歓迎している。規制を強化しなくても、国民医療制度(NHS)がオミクロン型感染の波を乗り越えられそうだとの期待が膨らむ。

     

    (4)「ロンドンでは14日までに、1日あたりの新規感染者数(7日移動平均)が、2021年12月22日に記録したピークの2万8000人近くを20%ほど下回った。クリスマスなどを機に大勢集まる行事をかなり自粛する動きが功を奏した。オミクロン型は、南アフリカで21年11月下旬に初めて確認された後、英国ではまずロンドンに感染が広がった」

     

    ロンドンは、南アフリカに次いで二番目にオミクロン株の感染が見られた地域である。そのロンドンで、感染者が減少傾向を見せてきた。

     


    (5)「英インペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授(疫学)は、ロンドンで18~50歳の感染拡大ペースの「上昇が止まった」という見方に「慎重ながら楽観視している」と話した。だが減少しつつあるかどうかは「まだ分からない」と付け加えた。当初の感染拡大をけん引した20~34歳の年齢層では、1日あたりの新規感染者数が12月20日に記録したピークの3分の2弱にまで減少した。ファーガソン氏は英BBCのニュース番組「トゥデイ」に対し、「感染症が急速に広がりこれだけ多くの人数に達した中、この数字がずっと続くことはあり得ないので、感染者数は減少に転じるだろう。ロンドンでは既に減りつつあるのかもしれない」と語った」

     

    下線のように、ロンドンでは感染者が減少に転じる兆候を見せている。

     


    (6)「オミクロン型の毒性に関しては、従来型より弱いことを示す証拠がロンドンで多く出てきている。コロナ感染症の重症化は、たいてい15日以内に起きる。ロンドンで目下、人工呼吸器を装着しているコロナ患者は245人で、2週間前の感染者数全体の約1%に相当する1年前の感染の波における同時期には814人と、その2週間前の感染者数全体の10%に達していた。21年12月末に発表されたイングランドの統計では、集中治療室に入っているコロナ患者の60%がワクチン未接種だった

     

    このパラグラフは、重要なデータを提示しているので整理したい。

    1)コロナ感染症の重症化は、たいてい15日以内に起きる。

    2)人工呼吸器を装着しているコロナ患者は、2週間前の感染者数全体の約1%

    3)集中治療室に入っているコロナ患者の60%がワクチン未接種。

     

    前記3つの結論は、発症して15日以内に病状が悪化しなければ峠を越す。人工呼吸器をつける患者は感染者全体の1%。その6割がワクチン未接種者である。ワクチン接種していれば、オミクロン株に感染しても重症化しないようである。

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    日本では、コロナ患者が激減して一息入れている。だが、南アで発見された新変異株「オミクロン」の感染力が強いことから、水際作戦と称して空港では厳重警戒である。

     

    『ロイター』(12月3日付)は、「WHO、オミクロン株パニックの必要なし『ワクチンは改良より公平な配布を』」と題する記事を掲載した。

     

    世界保健機関(WHO)幹部は12月3日、新型コロナウイルス新変異株「オミクロン」の出現を受けパニックにならぬよう呼び掛け、ワクチン改良が必要かどうかの判断は時期尚早という認識を示した。

     



    (1)「オミクロン株の感染はこれまでにアジアやアフリカ、米州、中東、欧州で確認され、南アフリカでは9州のうち7州で検出されている。WHOの主任科学者ソミヤ・スワミナサン氏は、ロイターネクストのインタビューで、南アのデータを踏まえると、オミクロン株の「感染性は極めて高い」としつつも、「現在の状況は1年前と異なる。準備と注意が必要だが、パニックに陥る必要はない」と強調した」

     

    オミクロン株は感染力が強いもののパニックに陥る必要はないという。つまり、重症化するリスクが少ないということだ。

     

    (2)「現時点でデルタ株が世界の感染の99%を占めているとした上で、オミクロン株が「感染の主流になるかを予測することは不可能」と述べた。また、WHOで緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は、既存ワクチンをオミクロン株に対応できるよう改良することを裏付けるデータはないと指摘。「現時点でワクチンは効果を発揮している。より公平なワクチン配布に焦点を充てる必要がある」と述べた」

     

    世界のコロナは99%がデルタ株である。現状では、オミクロン株に対して既存ワクチンで効果を発揮しているという。新たなワクチン開発の必要性を示唆するデータはない。

     


    (3)「独ビオンテックのサヒン最高経営責任者(CEO)はロイターネクストの会合で、ウイルスの変異にかかわらず、既存ワクチンが引き続き重症化リスクの予防に有効と強調。その上で「いずれかの時点で、オミクロン株に対する新たなワクチンが必要となると確信している」とし、ビオンテックが比較的速いペースでオミクロン株に対応するワクチンを準備することが可能という見通しを示した」

     

    ワクチンをファイザーと共同開発しているビオンテックCEOは、既存ワクチンが引き続き重症化リスクの予防に有効としている。その上で、オミクロン株対応のワクチンを準備することは可能という。

     

    このように、米英製ワクチンでオミロン株対応が有効という結果が出ている。これで、一安心だが、感染力が強くても重症化しないとはどういうメカニズムなのか。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月5日付)は、「」オミクロン、感染力の“謎”解けるか…『風邪と混種』の可能性提起」と題する記事を掲載した。

     

    オミクロン変異株が風邪のウイルスと一部の遺伝子を共有していて、その他の新型コロナ変異株より伝播力が強いという研究結果が出た。そのため、人体には致命的でないかもしれないとの見解があるが、専門家たちは「正確な結果が出るまで注意を怠ってはならない」と明らかにした。

     

    (4)「米国の生体医学情報分析業者「Nference」の研究陣が最近、オミクロン変異株の遺伝子を分析した結果、風邪を惹き起こすウイルスの遺伝子コードの一部が入っていることを発見したとワシントンタイムズが4日報道した。この変異株が、新型コロナを起こす「ウイルスSARS-CoV-2」と風邪を誘発する「ウイルスHCoV-229E」に同時に感染した人から初めて発生した可能性があると見ている。既存の新型コロナや別の変異株からはHCoV-229Eのような遺伝子コードは発見されなかった」

     

    オミクロン株には、風邪を引き起す遺伝子コードの一部が入っているという。別の変異株からは発見されなかった。

     


    (5)「この研究結果は、公式の発表手続きを踏んでいるところであり、まだ同僚の審査を受けていない状態なので、さらなる綿密な検証が必要な状況だ。とはいえ、オミクロンが強力な伝播力を備えた理由について興味深い示唆を提供しているという点で注目されている。残る関心事は、このウイルスが人体にどんな影響を及ぼすのかだ。ウイルスはさらに伝播力が強い側に進化すれば、深刻な症状を起こす特性を失う傾向がある。だが、オミクロン変異株でもこうしたことが起きているかはさらに今後を見なければならないというのが専門家たちの大勢の見解だ」

     

    オミクロンが強力な伝播力を備えた理由について、風邪の遺伝子の一部を持っていることである程度説明が付きそうであるが、詳細はさらなる研究を必要という。

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    コロナ変異「オミクロン株」による感染拡大が、世界中へ大きな衝撃を与えている。日本では、原則として外国人の入国を認めない、と厳戒体制だ。注目の米国の空気は、かなり楽観的である。ワクチン接種してマスクを着用すれば、年末の国内旅行はOKという姿勢である。

     

    『ブルームバーグ』(12月2日付)は、「オミクロン株出現でも年末休暇プランを中止する必要ないーファウチ氏」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスのオミクロン変異株の出現でも、米国のワクチン接種済みの人々は年末の休暇プランを中止すべきではない。バイデン米大統領の首席医療顧問を務める米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長が12月1日、コロナに関するCNNグローバル・タウンホールでこう呼び掛けた。

     


    (1)「『あなたとあなたの家族がワクチン接種を受けているのであれば、ホリデーを楽しむべきだ』とファウチ氏は発言。『われわれの従来の提言と異なる行動は必要ない』と述べた。同氏はオミクロン株の感染が向こう数週間で増えると予測した上で、室内でマスクなしで家族が集まることを控える必要はないと述べた。今後数週間で旅行する人は入念なマスク着用など予防措置を取り、『賢明になる』よう呼び掛けた」。

     

    ファウチ氏は、米大統領首席医療顧問を務め、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長である。いわば、米国感染症研究の最高峰が、ここまで言いきっているのは、科学的根拠によるものだ。メディアには、過激情報が氾濫しているが、米国情報が最も正確のようである。私は、科学的な米国情報に基づいている。

     

    (2)「ファウチ氏は、「米当局が実施しているアフリカ南部諸国からの渡航制限は一時的なものになるとの見解を示した。米国で新型コロナウイルスのオミクロン変異株感染が初めて確認された後に語った」

     

    米国のアフリカ南部諸国からの渡航制限は、一時的な措置としている。正式な分析結果を待っているのであろう。ただ、これまでの証拠類で事態が「大袈裟」にならないことを認識しているものと見られる。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月2日付)は、「
    オミクロン株との闘い、心強い兆候あちこちに」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスと闘うための重要な武器が、新たな変異ウイルス「オミクロン株」にも有効であることを示す希望の光が見えてきた。世界の科学者や保健機関は、これまでに確認された少数のオミクロン感染例に関する断片的なエビデンス(証拠)をまとめ上げようとしている。

     

    (3)「南アフリカでの急速な感染拡大や、突然変異の数の多さから、オミクロン株に対する懸念が強まっている。ウイルスは突然変異によって、ヒトの細胞に侵入し、ワクチンや以前の感染で獲得した免疫反応をすり抜けられるようになる恐れがある。これまでのところ、新たなエビデンスはほとんど裏付けに乏しく、矛盾したものもあり、科学的に明確に結論付けるには全く不十分だ。それでも一部は、ワクチンが重症化を予防し、ウイルスの拡散を抑制することを示唆している」

     

    科学的な証拠は少ないが、先進国におけるオミクロン株の感染者にみる症状では、軽いことが大きな特色である。

     

    (4)「イスラエルは、オミクロン株に感染した45歳の心臓医のケースを調査した。それによると、心臓医はロンドンとイスラエルで開催された会合に出席し、帰国後数日間に100人以上と接触していた。だがこれまでのところ、この心臓医を通してオミクロン株に感染したのは1人しかいない。マスクをせずに一緒に車に乗っていた同僚の医師(70歳)だ。この2人の医師が勤務するイスラエル中部のシェバ・メディカル・センター感染症疫学部のディレクター、ギリ・レゲブ・ヨチャイ氏が明らかにした。心臓医の妻と3人の子供もウイルス検査で陰性だったという」。

     

    イスラエルでの経験は参考になりそうだ。オミクロン株に感染した45歳の心臓医は、帰国後に100人以上と接触したが、感染者は一人であるとう。マスクをせず、一緒に車に乗っていた同僚の医師(70歳)だけだという。心臓医の家族4人は感染していないのである。

     


    (5)「前記のレゲブ・ヨチャイ氏は、「この出来事は、われわれが怪物を相手にしているのではないことを確信させてくれる」と指摘。感染の拡大を予想してもおかしくないほど、心臓医は他の人々との接触が多かったと述べた。この心臓医を含め、オミクロン株への感染が確認されたイスラエル人は4人いる。イスラエル保健省によると、全員がワクチンを接種済みで、症状は軽い」

     

    イスラエル保健省によると、感染者4人全員がワクチンを接種済みで、症状は軽いという。

     

    (6)「香港大学の研究を主導したクオクユン・ユエン教授によると、6カ月以内にメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの接種を完了していた2人の患者は、症状が非常に軽かったという。また、感染が判明してから数日後には、血液中の抗体濃度が10倍になったという。ユエン氏は、「これは免疫学的記憶という点で非常に満足のいくものだ」とし、「mRNAワクチンを接種してあれば、オミクロン株ウイルスに感染した場合の免疫学的記憶と免疫反応の活性化が非常に早いようだ」と述べた。

     

    メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを6カ月以内に接種していた患者(2人)では、症状が非常に軽いという。

     

    (7)「ワクチン開発会社ビオンテックの共同創業者であるウグル・サヒン氏は11月30日、オミクロン株はワクチンへの反応で生成された抗体をすり抜ける可能性はあるものの、体内に侵入すれば免疫細胞の攻撃にさらされる公算が大きいとの見方を示した。その上で、「われわれのメッセージは、怖がることはない、計画は変わらないということだ。それは、3回目の追加接種(ブースター接種)を加速させることだ」と述べた」

     

    ファイザーと共同でワクチンを開発したビオンテック創業者は、オミクロン株に対しても有効であると述べている。3回目の追加接種(ブースター接種)で、より安全になると見ている。 

     

     

     

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    日本もついに、「オミクロン株感染者」が出た。11月30日、ナミビアから成田空港に到着30代男性が、新たな変異株「オミクロン株」に感染していたことが分かった。国内で確認されたのは初めてである。水際作戦で、食止められるかどうかである。

     

    「オミクロン株」の感染源とされる南アでは、どういう状況なのか。遠隔地だけに日本へ情報は入りくいが、米国の情報収集力によって得られた「オミクロン株」の実態によれば、大騒ぎするほどのことではなさそうである。むろん、詳細な「オミクロン株」の遺伝子分析が終わっていない段階で、軽率な結論は慎まなければならない。だが、状況証拠を見ればそういうイメージが湧いてくる。

     


    南アの保健相は11月26日、オミクロン株に対するワクチンの感染予防効果が低下したとしても、重症化や死亡を防ぐ効果はあるとみていると述べた。科学者や医師によると、南アでは現在、入院患者4人につき3人程度がワクチンを接種しておらず、その他は1回しか接種していないという。これでは、急激な感染拡大に見舞われたのも自然という感じを受ける。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)は、「南アのオミクロン株感染者、入院急増も重症化は増えず」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が確認された南アフリカで、感染の中心地となっているハウテン州の入院患者がここ2週間で急増している。ただ、重症化した患者は比較的少ないという。南ア国立感染症研究所(NICD)が明らかにした。

     


    (1)「ハウテン州は首都プレトリアや経済の中心地であるヨハネスブルグを含む。NICDによると、感染拡大が始まったプレトリア周辺では2歳未満の子どもの入院急増も目立つ。ただ、予防的な入院のケースも多いもようだという。NICDの公衆衛生専門家、ワシラ・ジャサット氏は、ここ2週間の全体の入院患者のうち、コロナ感染症と診断された人の割合はこれまでに南アを襲った感染の波の場合と同程度だと述べた」

     

    南アの公衆衛生専門家によれば、「オミクロン株」でコロナ感染症と診断された人の割合は

    これまでのコロナ感染者の割合と変わらないという。予防的意味での入院が増えているので、これが理由で感染者急増と見なされている背景かも知れない。

     

    (2)「世界保健機関(WHO)は先週、南アなどで見つかったオミクロンを「懸念される変異株(VOC)」に指定。NICDのデータは、オミクロンの人体への影響や他のコロナ変異株との違いについての初期の手掛かりを与える形となった。ただ、医師や専門家は、報告された患者数がまだ少ないことや、感染が初期段階であることなどから、他の変異株と比較したオミクロンの深刻さなどについて明確な結論を導き出すことは難しいとしている」

     

    「オミクロン株」は、まだ感染初期のために深刻さなどについて明確な結論を出せないという。現状では、予防的意味で入院した者が増えていることから、外部に誇大報道されている面もあろう。

     

    (3)「NICDのデータによると、ハウテン州では11月27日までの2週間で、1日当たりのコロナ感染による入院者数が平均49人に急増。その前の2週間では、1日当たり平均は18人だった。1日当たりの死者数に変化は見られない。南アでは11月11日に初めてオミクロン感染が確認された。コロナ感染者はそれ以降急増し、1日当たり300人程度だったのが28日には3220人に膨らんだ」

     

    NICDのデータでは、感染者が急増していることになっている。実際は、予防的な意味での入院者がいるというから、「正味」の感染者数把握は困難である。

     

    (4)「ハウテン州を中心としたオミクロン流行は、プレトリア周辺の大学生の年齢層で初めて確認された。一般的に若年層は、高齢者層と比べてコロナ感染で重症化する可能性がはるかに低いため、南アでのデータからオミクロン感染に関する結論を出すことは困難だという。多くの国と同様に、南アでは若年層のコロナワクチン接種率が高齢者層に比べて極めて低い。南アの人口6000万人のうち、ワクチン接種を完了した割合は24%強にとどまる。NICDのジャサット氏によると、ハウテン州で入院したコロナ患者の約4分の1がワクチンを接種していた

     

    下線部の記事については、補足が必要である。コロナ患者の4分の3はワクチン未接種者、残り4分の1は、接種が1回だけで2回済ませていないという。この事実は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)の別の記事で指摘している。となれば、ワクチン接種を2回済ませ、かつ3回目を受ける先進国では「オミクロン」に感染する確率が下がるであろう。

     

     

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    日本では、コロナが下火になってホットしていたのも束の間、また新たな変種株「オミクロン」が出てきた。感染力が強まっていると報じられている。

     

    オランダでは11月28日、アフリカ南部を訪れていた13人が「オミクロン」に感染していたことが分かった。ドイツと英国でも感染が報告されており、オミクロン株が欧州で既にかなり広がっていることが示唆される事態だ。こうなると、世界経済はこれからどうなるのか気懸りである。

     

    これまで猛威を振ってきた「デルタ変異株」よりも感染力が強いとなれば、身構えるのは当然であろう。ただ、冷静に考えることも必要である。『ブルームバーグ』(11月29日付)は、「新たなコロナ変異株『オミクロン』、現時点で分かっていること」と題する記事を次のように掲載した。

     


    WHOは11月28日、「オミクロン株の感染による症状が他の変異株と異なることを示唆する情報は現時点でない」と説明。「従来の感染急増よりも速いペースで確認されており、増殖に強みを持っている可能性はある」とした。

     

    南アの入院率の上昇は、オミクロン株感染の結果ではなく、コロナに感染する人の数が全体的に増えていることが理由の可能性があると指摘した。ECDC(欧州疾病予防管理センター)は、感染力の強いデルタ変異株が再び勢いづいている欧州では、オミクロン株の出現と拡散が「極めて高い」リスクとなり得ると分析した。

     

    米モデルナのポール・バートン最高医療責任者(CMO)は11月28日、オミクロン株が既存のワクチンをかいくぐる可能性があると指摘した上で、その場合は改良したワクチンを来年の早い時期に提供できるとの見通しを示した。コロナワクチンはこれまでの変異株に対し、重症化と死亡のリスクを減らす効果を示してきた。メルクやファイザーが開発した経口薬などその他の治療方法がオミクロン株に効果があるかどうかは今後評価することになる。

     

    『ブルームバーグ』(11月29日付)は、「オミクロン、世界経済回復への影響はどの程度か 最悪はロックダウン」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」は、世界経済がより力強い足取りで2022年入りするという楽観に水を差した。需要の弱さよりもインフレを政策の焦点としようとする当局の計画にも狂いが生じる可能性がある。

     

    (1)「渡航制限が導入されれば消費者信頼感も企業景況感も悪影響を受け、多くの国・地域でホリデーシーズンを目前に活動が抑制される可能性が高い。市場は直ちに反応し、26日には米・英・オーストラリアの今後1年の利上げ幅予想が少なくとも10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)縮小した」

     

    オミクロンの感染が拡大すれば、金利引き上げ幅は米英豪では0.01%ほど縮小すると観測している。大した影響でないという見方だ。

     

    (2)「次に何が起こるかはこの新変異株のワクチンへの耐性や感染力の強さに左右される。デルタ変異株は最近数カ月にわたり猛威を振るったが、経済をリセッション(景気後退)に押し戻すことはなかった」

     

    デルタ変異株では、世界経済をリセッションへ追込むことはなかった。ただ、中国経済は別である。不動産バブル崩壊と、コロナワクチンで欧米製のような優秀品のないことが、決定的なハンディキャップとなる。

     

    (3)「最悪のシナリオは、ロックダウン(都市封鎖)の再来だろう。これはサプライチェーンの混乱を悪化させるとともに、回復しつつある需要を軟化させ、スタグフレーション懸念を再浮上させる」

     

    オミクロンの感染力が、デルタ株よりも強い場合でも、米英型ワクチンでは対応可能であることが分かっている。新ワクチンは、来年の早い時点で発売される見通しである。西側諸国でのロックダウン・リスクは低いと見られる。

     


    (4)「一方、オミクロンが当初懸念されたほどの脅威でないことが分かれば、それほど厳しい結果にはならない。それでも、新変異株の出現は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が依然として世界経済への脅威であり、今後数年にわたりそうあり続ける可能性を再認識させる」

     

    今回の発展途上国での変種出現は、良い教訓を与えている。22年は、途上国へのワクチン供与に全力を挙げることだ。

     

    (5)「政策当局にとっての困難は、昨年の景気刺激策によって選択肢が狭まっていることだ。昨年の景気後退後に金融政策を引き締めた中央銀行はほんの一握りであり、先進国・地域の主要な政策金利はゼロ付近にとどまっている。各国政府の債務負担は既に急増している。「経済の不確実性がさらに高まったことは確実で、22年の展開を予測する際エコノミストには大いなる謙虚さが必要だ。ここにきて、必要な謙虚さの度合いはさらに大きくなっている」とスバラマン氏は述べた」

     

    下線部では、かなり慎重な見方である。ただ、新たなワクチンや経口薬の登場を考慮に入れれば、余りの悲観論は不要に思われる。ただし、中国経済は別である。先進国にはない、特有の脆弱構造であることを見落としてはならない。

     


    (6)「ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は、「まだスタグフレーションになってはいないが、国境を超える移動の制限と関連のサプライチェーン混乱がさらに1年続けばそうなるかもしれない」と話した。20年の景気後退期ほどの影響はないとみるエコノミストもいる。野村ホールディングスのグローバルマーケットリサーチ責任者、 ロブ・スバラマン氏は、「企業や家計は制限やロックダウンに適応してきたため、今回の打撃はそれほど深刻ではないかもしれない」と述べた」

     

    私は、オミクロンの出現を過剰警戒する必要はないとみる。その意味で、下線部の指摘に妥当性を感じる。人間、同じ過ちを繰返さず、少しずつ「経験値」を重ねて行くからだ。

     

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