習近平中国国家主席は、自国で深刻化する一方の不況問題に立ち向かわず、アフリカに支援に力を入れている。24年の支援総額は507億ドル(約7兆1500億円)だ。国内の売れ残り住宅の買取り資金枠は、3000億元(約5兆9700億円)である。アフリカ支援総額に対して83%の規模にすぎない。この一事をみても、国内対策がいかに冷淡であるかが分る。
中国のアフリカ支援では、現地側が望む債務問題を棚上げしている。西側諸国にも債務免除で負担させようという魂胆だ。アフリカ諸国が過剰債務に苦しんでいるのは、中国の過剰貸付が原因である。中国は、自らの失敗にも関わらず、債務処理で西側諸国を巻き込む戦術を使い始めた。これが、「中華方式」なのだ。
『ロイター』(9月11日付)は、「中国、アフリカ債務免除に踏み込まず 新たな資金拠出約束」と題する記事を掲載した。
中国は9月4~6日に開いた「中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」で、アフリカ諸国の多くが求めていた債務免除には踏み込まなかったものの、今後3年間にアフリカ支援に3600億元(7兆220億円)を拠出すると表明した。年間平均では、1200億元へ縮小される。
(1)「2000年に発足したFOCACは、習近平国家主席が2013年に広域経済圏構想「一帯一路」を打ち出すと重要性が高まった。中国はFOCACをテコに、対アフリカ政策で欧米や日本に対抗しようとしており、今回はアフリカから50を超える国の指導者が参加した。英調査会社テリマーのハスナイン・マリク氏は「中国は新興市場への資金動員を再び積極化しようとしている」と述べた。ただ、新型コロナウイルスのパンデミック前の水準には戻っていないという」
中国が、アフリカへ接近しているのは資源を狙ってのことだ。それには、債務漬けにして身動きできないようにする。この戦略は、見事な成果を上げた。
(2)「今回の拠出額は、2021年の前回拠出額を上回っているが、ピークだった15年と18年の600億ドル(8兆5300億円)を下回った。15年と18年の資金は道路、鉄道、橋梁などの建設に充てられたが、19年以降は拠出額が減り、アフリカでは建設プロジェクトが停滞している。中国は今回の拠出について、貿易関係を改善するためのインフラプロジェクト30件に充当すると説明したが、詳細は明かさなかった」
中国は、今後3年間にアフリカ支援で3600億元(7兆220億円)を拠出すると表明した。24年の支援総額507億ドル(約7兆1500億円)に比べると、1年当たりは3分の1へ減少する。中国経済の置かれている状況の厳しさが浮かび上がっている。
(3)「アフリカ大陸は54カ国を擁し、総人口は10億人を超える。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実現には輸送網の整備が欠かせないが、インフラ資金が推計で年1000億ドル不足している。中国政府は近年、こうしたプロジェクトへの資金拠出を減らし、「小規模で美しい」プロジェクトに重点を移している。国内経済の低迷やアフリカ諸国の債務リスク増大が主な理由だ。中国外務省の毛寧副報道局長は6日の定例記者会見で、新たな拠出合意と中国の足元の慎重な海外融資戦略との整合性について問われると、「プロジェクトの具体的な実施を含め、中国とアフリカ諸国の協力については双方が協議し、決定する」と述べるにとどめた」
中国は、不動産バブルが崩壊してもはや他国を支援する力を失い始めている。自国だけでも大変な債務を抱え込んでいる。これまでの「中華再興」というふれこみが、二進も三進も行かない状態をつくり出している。
(4)「中国は今回、アフリカで30のクリーンエネルギープロジェクトを始動し、原子力技術分野で協力し、工業化を遅らせている電力不足に取り組む方針も示した。南アのスタンダード銀行の調査部門責任者、グーラム・バリム氏は「FOCAC首脳会議の結果から、グリーンプロジェクト、とりわけ再生可能エネルギー設備に弾みが付きそうだ」と述べた。バリム氏によると、中国は風力発電と太陽光発電の分野で世界的にトップに立ち、重要なサプライチェーン(供給網)を握り、生産コストを抑えている」
中国は、国内で過剰生産に落込んでいるソーラーパネルの売り込み先としてアフリカを利用可能だ。だが、それにも限度があるので、アフリカは中国経済にとって荷物になってきたはずだ。
(5)「しかし懐疑的な見方もある。BNPパリバの新興市場クレジット戦略グローバル責任者、トラン・グエン氏は「問題は投資の規模そのものではなく、債務条件の透明性の欠如にある」と言う。返済に苦しむ国に対して中国から債務負担免除の申し出はなく、多額の対中債務を抱える国にとって明確な成果があったとは言い難い。中国はアフリカ諸国の債務免除を見送る一方で、他の債権者に「共同の行動と公平な負担分担の原則の下、アフリカ諸国の債務の処理と再編に参加するよう」促した。大きな案件がまとまることを期待していたアフリカ諸国は、控えめな成果しか得られなかった」
中国は、アフリカを利用できるときは一国で采配を振るってきたが、過剰債務の処理となると、途端に尻込みして西側諸国と共同歩調を取ると言い出している。従来は、これすら拒否して秘密交渉を行っていた。だが、日本やインド・フランスなどが共同歩調を取って債務処理に当ったのでようやく、そのメリットに気づいたのだ。