中国株が、政府の景気刺激策に反応して急反発している。「中国経済復活か」と誤解する向きも出るかも知れないが、中国株は、根本的な脆弱性を抱えている。過剰投資でリターンが少ないのだ。
過去15年間、中国とインドの経済はいずれも急速に成長し、09年基準の米ドル建て換算では中国のGDPは、インドよりも年間約2%高く成長した。だが、09年9月時点で、MSCI中国株指数の株価収益率(PER)は、MSCIインド株指数よりも25%も低かった。14年以降の中国株は、ドル建てで年間リターンがわずか2.5%にとどまっているものの、インド株は年間複利でその4倍のリターンを遂げている。原因は、中国企業が過剰投資によって、低収益に喘いでいる結果だ。
『ロイター』(10月5日付)は、中国とインド投資で浮き彫りになる「大きな間違い」と題するコラムを掲載した。
(1)「中国政府は08年終盤、世界金融危機の直撃を回避するため大規模な景気刺激策を発動し、莫大な国内貯蓄を過剰な投資ブームの資金調達に活用した。固定資本形成の総額はGDPの38%から44%に急増し、依然として高止まりしている。こうした大規模な投資ブームは、急速な信用拡大と併走し、緩和的な金融政策によって支えられていた。一方、インドの貯蓄と投資は比較的低い水準だった。09年から20年にかけ、投資はGDPの34%から27%に減少した。長期金利の平均は中国の2倍の高さだった」
中国の過剰投資経済とインドの過小投資経済が、企業収益面で好対照をなしているという記事だ。中国は低収益で、インドが高収益を上げている。これは、計画経済vs市場経済のパフォーマンス比較でもある。
(2)「中国の資本コストは低く、わずかな利益しか生み出していない。経済全体にわたる過剰生産能力の慢性化が証明しているように、資本配分は大規模に誤って配分されている。中国では20年に住宅バブルが崩壊して以降、債務デフレに苦しんでいる。一方、インドでは不動産や信用、投資のブームがなかったため、中国で見られたような悪影響を回避した。資本コストは比較的高く、比較的高い投資収益率が得られた」
中国は、過剰生産能力の慢性化が証明するように、資本配分を誤っている。それにもかかわらず、習氏は「中国式現代化」を目標にしている。計画経済は、失敗する運命だ。
(3)「こうしたマクロ経済分析は、中国とインドの上場企業に関する各種リポートや決算書で明らかだ。企業が慎重に投資しているかどうかを判断する尺度の一つは、過去の投資の減価償却費に対する新規設備投資の比率だ。香港に拠点を置くGMTリサーチ創業者ギレム・タロック氏は、少なくとも過去10年間のデータのある中国とインドの企業の財務諸表を検証した。いずれも両株式市場に上場する企業数の約4分の1に相当する。その結果、14年の中国上場企業の平均設備投資は減価償却費の2.3倍だった。インドは1.5倍で、随分と低かった。14年以降、中国企業は一貫してインド企業を上回る投資を行っている」
中国の市場経済は、名ばかりである。実態は、過剰投資に現れているように計画経済である。中国上場企業の平均設備投資は減価償却費の2.3倍であるのに、インドは1.5倍と低いのだ。中国は、「投資貧乏」に陥っている。計画経済は、市場経済に対して効率性で劣る実例が、中国とインドの比較に現れている。
(4)「中国政府が先週、新規の景気刺激策を打ち出して以降、中国株は急上昇している。中国人民銀行(中央銀行)は、企業が自社株買いを加速するための融資を約束している。しかし、中国株の本格上昇には、まだ不十分だ。過剰な生産能力を削減する必要があると指摘されている。もっとも、習近平国家主席がこうしたメッセージを受け取ったかどうかは不明だ」
中国株は、いずれ反落する。本格上昇には、過剰な生産能力を削減する必要がある。その時期はまだ先だ。
(5)「中国は、設備投資がGDPに占める割合は減少したかもしれないが、依然として42%という高い水準にある。中国株は、供給側における過剰設備投資が減少したという明確な証拠が出てくるまでは、投資家は警戒心を持ち続けるべきだ」
中国は、GDPの設備投資比率が40%台を占めているのは異常である。過剰投資のマイナス効果から抜け出せないのだ。皮肉な言い方をすれば、設備投資比率が下がりGDP成長率が下がって初めて「贅肉」が取れた経済体質になる。
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2024-10-03 |