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中国とパキスタンは、インドを共通の敵にして蜜月ぶりを演じてきた。それにも関わらず、中国の対パキスタン直接投資は、中国経済の落込みを反映して停滞している。中国は、不動産バブルの崩壊危機に直面して、他国への直接投資にまで気を配る余裕を失っているようだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月12日付)は、「経済不和でも関係絶てず、中国・パキスタン間の一帯一路にブレーキ」と題する記事を掲載した。

 

パキスタン南西部にある港町グワダルで、アダム・カディール・バクシュ氏は経営する自動車部品事業が大きく躍進すると期待してきた。しかし、約束された中国からの追い風がないため、実現していない。「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)は何の恩恵ももたらさなかった」という。

 

(1)「中国の習近平国家主席がパキスタンを訪問、一帯一路構想のもとにインフラ開発プロジェクト開始を表明したのは2015年だ。しかし「中国が地元で調達したのは砂と砂利だけだ。地元には何の恩恵もない」とグワダル農村社会開発協議会のナシル・ソラビ会長は語る。CPECは一帯一路の主要事業で500億ドル(約5.7兆円)を投じる。中国が約束した投資額の半分は既に投資や政府間借款として流入し、17年、18年のパキスタンの成長率を5%超に押し上げた。しかし恩恵を受けていない人たちもいる。数千人の住民が座り込みの抗議活動を展開したため、グワダル港への幹線道路は11月半ばから封鎖されている」

 

中国・パキスタン経済回廊(CPEC)建設において、中国がパキスタンから調達したものは砂と砂利だけという。こうして、地元の反感を買っており、数千人の住民が座り込みの抗議活動を展開している。このため、グワダル港への幹線道路が封鎖されている。中国らしい、「丸ごと」中国企業が受注するという「こす辛い」ことをやっているのだ。

 


(2)「実際、中国からパキスタンへの直接投資は減少している。パキスタン国立銀行によれば79月期の中国からの外国直接投資は7690万ドルにとどまり、前年同期の1億5490万ドルからほぼ半減した。20年度の外国直接投資額は、総選挙のあった18年度を除いて14年度以来最低だった。中国からの直接投資は全体の35割を占めるため、経済への危険信号だ。国連のデータでは、中国の対パキスタン輸出も17年をピークに減少に転じ、中でもインフラ整備に欠かせない鉄鋼は16年から20年までに40%減った」

 

中国からの対パキスタン投資が激減している。中国経済の懐が怪しくなってきた証拠である。中国経済は、パンデミック下で厳しい「ゼロコロナ」を行なっており、経済活動が抑制されている。その影響が、対パキスタン投資激減の理由である。

 


(3)「ナワズ・シャリフ元首相が「ゲームチェンジャー」と呼んだCPECは、パキスタンの深刻な電力不足対策には役立った。イスラマバードに拠点を置くシンクタンク、タバドラブの最高経営責任者(CEO)モシャラフ・ザイディ氏も、CPECは都市や道路インフラに貢献したと話す。しかし今、CPECで最大の68億ドルをかけてカラチとペシャワル間の鉄道を改良する計画など、多くのプロジェクトが行き詰まっている。両国間の意見の相違は1年以上続いている」

 

CPECで最大のカラチとペシャワル間の鉄道改良計画など、多くのプロジェクトが行き詰まっている。資金調達面で暗礁に乗り上げているのだ。

 


(4)「中パ双方は運営上の不一致が表面化しないよう隠してきたが、最近は止められなくなっている。電力・石油担当首相特別補佐官のタビシュ・ガウハル氏は8月の閣議で、CPECの発電プロジェクトが国際標準よりも25%高いと指摘した。9月には「中国大使はパキスタンがCPECを台なしにし、3年間で何も進んでいないと不満を述べた」と上院計画・開発常任委員会のサリーム・マンドヴィワラ委員長が明らかにした」

 

下線部は、中国のあくどい商魂に対して、パキスタンが抵抗しているためだ。これまでも、建設見積もりで、二重計算や高金利融資など中国の不正が摘発されてきた。中国ビジネスは、本質的に相手を食い物にするという不正が隠されており、パキスタンが警戒しているのだ。

 

(5)「プラハ経済大学の国際関係・中国学助教授のジェレミー・ガーリック氏は「世界的な緊張やコロナの影響で、中国の投資は、今後数年にわたり減速が続く可能性が高い」と予測する。7~9月期には中国からの外国直接投資が半減した一方で、米国からの外国直接投資は4倍に急増した。それでも、米国も中国とパキスタンの関係を変えることまではできない、と知っている」

 

早くも、中国の直接投資が今後、数年にわたり減速すると見込まれている。中国の窮状ぶりが知れ渡ってきたのだろう。米国が、この穴を埋めるべく積極的だが、中パの密接な関係には食い込めないという。

 

(6)「クーゲルマン氏は、「多くの国は経済支援を求めるが、中国陣営には加わらないとする態度とは異なり、パキスタンは中国と深く同盟を結んでいる」と指摘する。中国とパキスタンはインドを共通の敵と見なすことでも一致している。中国は南に友好的な隣国を欲しており、パキスタンは、米国ほど見返りを求めない国との友好を望んでいる。では、パキスタンは中国の関心と投資を取り戻せるのだろうか。「CPECの初期の収穫段階は終わり、中国主導のインフラ開発のピークは過ぎた」と、ある政府当局者は匿名を条件に述べた。「CPECはまだ終わっていないが、残りの9年は過去の開発のごく一部すら期待できないだろう」という」

 

CPEC事業は、まだ終わっていないものの計画期間の残り9年間は遅々としたものになりそうだという。パキスタンが、中国経済の急減速ぶりを認識しているのだ。中国経済の苦しさが肌でわかるのだろう。