中国は「戦狼外交」で、向かうところ敵なしの状態だが、実は相当に焦っている。西を向いても東を向いても「敵」だらけであるからだ。
中国は、EU(欧州連合)へ焦点を合わせ対中制裁の解除を求めるべく、昨年11末に非公式だが4人のメンバーで訪欧させた。だが、「時すでに遅し」であった。EUは、人権問題をめぐる中国への制裁の延長を決めた後だったのである。
『大紀元』(1月4日付)は、「中国代表団、昨年訪欧か 関係改善図るも『時は遅し』」と題する記事を掲載した。
昨年11月末、中国政府は欧州に非公式の代表団を派遣し、中欧関係の緩和、新疆ウィグル自治区の人権問題をめぐる対中制裁の撤廃についてロビー活動を行う予定だった。だが、欧州連合(EU)はほぼ同時期に制裁の延長を発表し、中国側の計画は頓挫したとみられる。香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が1月3日報じた。
(1)「『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が、関係筋2人の情報として報じたところによると、中国の呉紅波・欧州事務特別代表が率いる中国代表団は、昨年11月末に欧州を訪れた。中国側はドイツのシンクタンク、メルカトル中国研究所(MERICS)に対する報復制裁を撤廃する代わりに、EUも対中国制裁を取り下げるよう交渉する予定だった。中国外交部の元高官が代表団に加わった。米国やEUなどの諸国が、新疆ウィグル自治区での人権迫害を理由に中国政府高官や関連当局に制裁を科したことを受け、中国は2021年3月に報復措置として、ERICSを含む米国やEUなどの複数の国会議員や団体に制裁を加えた」
中国は、昨年11月末に非公式で4人が訪欧し、制裁解除のロビー活動を行なったが不発であった。中国が先に動いたことは、制裁によって不利益を受けていることを物語っている。ならば、戦狼外交という大言壮語を慎めば良いはずだが、国民の手前つい「大口」を叩いて収拾に困っているのだろう。中国の外交的愚かさが、よく表されている。
(2)「匿名希望の関係者によると、中国政府は欧州との関係緩和をはかるため、英国、米国、カナダ、EUに対する報復制裁を撤廃する意向を示していた。「しかし、時は遅すぎた」と同関係筋は話した。
欧州議会は同時期に、新疆での人権迫害に関与する中国当局者4人と当局政府機関に対する制裁を22年3月から1年間延長することをすでに決議し、数日後、そのほかの制裁措置も22年12月8日まで継続すると発表した」
事態が、ここまでこじれてしまった以上、中国が抜本的な手を打たない限り、打開は難しいであろう。日韓関係の冷却化も良く似た事態である。韓国が、解決策を出さない限り進展は不可能である。
(3)「同関係筋の話では、こうした状況を受け、中国政府は自らの制裁措置を解除しないことを決定した。在ドイツ中国大使館およびMERICSは、交渉の有無を含めてコメントを控えている。一方、ドイツのグローバル公共政策研究所(GPPi)のトルステン・ベナー所長は、「中国政府が強硬的な姿勢を抜本的に見直さなければ、中欧関係は来年も改善しないだろう」と予測した」
下線の通り、事態の悪化を招いた張本人は中国である。その中国が、新疆ウイグル族の強制収容を解かない限り、中国は制裁を受け続ける筈だ。
『大紀元』(2021年12月28日付)は、「報告書によると中国は最大300万人のウイグル人を拘束している」と題する記事を掲載した。
米国ホロコースト記念博物館による2021年11月の評価によると、中国はウイグル人やその他のチュルク系少数民族に対するジェノサイドを行っている可能性があり、収容所には300万人もの人々が収監されている。中国政府は新疆ウイグル自治区における収容所の使用やその他の規制はテロへの恐れが原因であると長らく主張してきたが、ホロコースト記念博物館の60ページに及ぶ報告書ではその他の要因が存在することが示唆されている。
同報告書の執筆者たちは、「中国政府によるウイグル人に対する扱いに対しては漢族至上主義的な価値観がますます影響を及ぼしており、これがジェノサイド思想を根付かせる環境を醸成している」と述べ、中国の支配的な民族集団に言及している。執筆者たちは、このような価値観が政府の構成人員一般に広がったことが弾圧キャンペーンの一因となったと主張している。
さらに同報告書は、中国政府の取り組みには地政学的な理由があるとも主張している。中国政府がウイグル人を支配することの同意語として使っている「地域に対する支配」は、中国が70か国近くに投資する「一帯一路」インフラ計画の成功に不可欠であると考えられている。強制不妊手術や性的虐待、奴隷化、拷問、強制移住などの人道に対する犯罪も行われていると考えうる合理的な根拠がある。独立機関である同博物館の調査結果は、米国国務省と世界各国政府による調査が、中国によるウイグル人に対する行動が、人道に対する犯罪に相当すると結論付けたことを裏付けた。