勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済

     
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    中国は「戦狼外交」で、向かうところ敵なしの状態だが、実は相当に焦っている。西を向いても東を向いても「敵」だらけであるからだ。

     

    中国は、EU(欧州連合)へ焦点を合わせ対中制裁の解除を求めるべく、昨年11末に非公式だが4人のメンバーで訪欧させた。だが、「時すでに遅し」であった。EUは、人権問題をめぐる中国への制裁の延長を決めた後だったのである。

     

    『大紀元』(1月4日付)は、「中国代表団、昨年訪欧か 関係改善図るも『時は遅し』」と題する記事を掲載した。

     

    昨年11月末、中国政府は欧州に非公式の代表団を派遣し、中欧関係の緩和、新疆ウィグル自治区の人権問題をめぐる対中制裁の撤廃についてロビー活動を行う予定だった。だが、欧州連合(EU)はほぼ同時期に制裁の延長を発表し、中国側の計画は頓挫したとみられる。香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が13日報じた。

     


    (1)「『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が、関係筋2人の情報として報じたところによると、中国の呉紅波・欧州事務特別代表が率いる中国代表団は、昨年11月末に欧州を訪れた。中国側はドイツのシンクタンク、メルカトル中国研究所(MERICS)に対する報復制裁を撤廃する代わりに、EUも対中国制裁を取り下げるよう交渉する予定だった。中国外交部の元高官が代表団に加わった。米国やEUなどの諸国が、新疆ウィグル自治区での人権迫害を理由に中国政府高官や関連当局に制裁を科したことを受け、中国は2021年3月に報復措置として、ERICSを含む米国やEUなどの複数の国会議員や団体に制裁を加えた」

     

    中国は、昨年11月末に非公式で4人が訪欧し、制裁解除のロビー活動を行なったが不発であった。中国が先に動いたことは、制裁によって不利益を受けていることを物語っている。ならば、戦狼外交という大言壮語を慎めば良いはずだが、国民の手前つい「大口」を叩いて収拾に困っているのだろう。中国の外交的愚かさが、よく表されている。

     


    (2)「匿名希望の関係者によると、中国政府は欧州との関係緩和をはかるため、英国、米国、カナダ、EUに対する報復制裁を撤廃する意向を示していた。「しかし、時は遅すぎた」と同関係筋は話した。 欧州議会は同時期に、新疆での人権迫害に関与する中国当局者4人と当局政府機関に対する制裁を22年3月から1年間延長することをすでに決議し、数日後、そのほかの制裁措置も22年12月8日まで継続すると発表した」

     

    事態が、ここまでこじれてしまった以上、中国が抜本的な手を打たない限り、打開は難しいであろう。日韓関係の冷却化も良く似た事態である。韓国が、解決策を出さない限り進展は不可能である。

     


    (3)「同関係筋の話では、こうした状況を受け、中国政府は自らの制裁措置を解除しないことを決定した。在ドイツ中国大使館およびMERICSは、交渉の有無を含めてコメントを控えている。一方、ドイツのグローバル公共政策研究所(GPPi)のトルステン・ベナー所長は、「中国政府が強硬的な姿勢を抜本的に見直さなければ、中欧関係は来年も改善しないだろう」と予測した」

     

    下線の通り、事態の悪化を招いた張本人は中国である。その中国が、新疆ウイグル族の強制収容を解かない限り、中国は制裁を受け続ける筈だ。

     

    『大紀元』(2021年12月28日付)は、「報告書によると中国は最大300万人のウイグル人を拘束している」と題する記事を掲載した。

     

    米国ホロコースト記念博物館による2021年11月の評価によると、中国はウイグル人やその他のチュルク系少数民族に対するジェノサイドを行っている可能性があり、収容所には300万人もの人々が収監されている。中国政府は新疆ウイグル自治区における収容所の使用やその他の規制はテロへの恐れが原因であると長らく主張してきたが、ホロコースト記念博物館の60ページに及ぶ報告書ではその他の要因が存在することが示唆されている。 

     


    同報告書の執筆者たちは、「中国政府によるウイグル人に対する扱いに対しては漢族至上主義的な価値観がますます影響を及ぼしており、これがジェノサイド思想を根付かせる環境を醸成している」と述べ、中国の支配的な民族集団に言及している。執筆者たちは、このような価値観が政府の構成人員一般に広がったことが弾圧キャンペーンの一因となったと主張している。

     

    さらに同報告書は、中国政府の取り組みには地政学的な理由があるとも主張している。中国政府がウイグル人を支配することの同意語として使っている「地域に対する支配」は、中国が70か国近くに投資する「一帯一路」インフラ計画の成功に不可欠であると考えられている。強制不妊手術や性的虐待、奴隷化、拷問、強制移住などの人道に対する犯罪も行われていると考えうる合理的な根拠がある。独立機関である同博物館の調査結果は、米国国務省と世界各国政府による調査が、中国によるウイグル人に対する行動が、人道に対する犯罪に相当すると結論付けたことを裏付けた。  

     

     

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    中国外交は、完全な天狗になっている。自国と対立する国へは容赦しないという傲慢さを見せているからだ。豪州を輸入禁止処分にして結局、「AUKUS」(米英豪)という軍事同盟をつくられ、中国は致命的な打撃を受けることになった。この失敗を忘れて、また愚策に走っている。

     

    中国は、リトアニアと台湾との国交問題で揉めている。リトアニアは、すでに駐中国大使館を一時閉鎖して、全員が本国へ引き揚げたほどである。「大使館員の安全が保証されない」という極めて厳しい声明を残している。

    中国は、さらにリトアニアへ追い打ちを掛けている。ドイツの自動車部品大手コンチネンタルが、中国からリトアニア製部品の使用を中止するよう求められているのだ。事態がここまでエスカレートすると、そろそろ中国が「大火傷」を負う番になりそうだ。EU(欧州連合)が、前面に出て中国と対決する場面になるからだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(12月18日付)「
    中国、独車部品大手に圧力 リトアニアとの外交問題波及」と題する記事を掲載した。

     

    自動車部品大手の独コンチネンタルがリトアニアで生産する部品の使用をやめるよう中国から圧力を受けていることが17日、わかった。ロイター通信が報じた。台湾をめぐる中国とリトアニアの外交問題が自動車産業に波及してきた。

     

    (1)「コンチネンタルは日本経済新聞の取材に対し「この件についてはコメントしない」と述べた。ロイターによると、中国政府はコンチネンタルに対し、同社がリトアニアで製造する部品をこれ以上使用しないように求めた。コンチネンタルはリトアニアで電子制御ユニット(ECU)などを生産しており、中国の要求を受け入れればリトアニアの工場から中国への供給ができなくなる。リトアニアで生産する部品を使う自動車部品の納入先は明らかにしていないが、コンチネンタルの顧客にはドイツの自動車メーカーのほか、トヨタ自動車やホンダなど世界の多くの自動車メーカーが含まれる。独メディアによると自動車部品世界最大手の独ボッシュもリトアニアで部品を生産している」

     

    中国は、リトアニアを「小国」と軽く見ているが、この背後にはEUが存在する。EUが黙って、中国の仕打ちを見ていると考えているとすれば「大甘」である。EUは、すでに結束してリトアニアを守る姿勢を見せているのだ。

     


    (2)「ロイターによると、中国の外務省はコンチネンタルに圧力をかけたことを否定したという。リトアニアはバルト3国の一つで欧州連合(EU)に加盟する。同国と中国は台湾の取り扱いをめぐって緊張関係にある。リトアニアは中国が自国の一部と主張する台湾に事実上の大使館となる代表機関の設置を認め、11月に開設された。名称も「駐リトアニア台湾代表処」という「台湾」の表記の採用を容認した。中国はこれに猛反発し、リトアニアとの外交関係を格下げした。これに対してリトアニアは大使館員を引き揚げ、事実上、在中国大使館を閉鎖した。EUはリトアニアを支持するとみられ、中国とリトアニアの対立が中国とEUの対立に発展すれば、その影響は大きくなる可能性がある」

     

    EUは、台湾へかなり傾斜している。台湾の民主主義を擁護すると同時に、台湾の半導体企業のEU進出を希望しているからだ。こういう二つの面から、EUのリトアニア擁護は既定路線になっている。

     


    『ロイター』(12月9日付)は、「中国、多国籍企業にリトアニア製品のボイコット要求 台湾巡り」と題する記事を掲載した。

     

    リトアニアの政府高官と業界団体がロイターに明らかにしたところによると、中国は多国籍企業に対し、リトアニアとの関係を絶たなければ中国市場から締め出すと警告している。「台湾」の名を冠した事実上の大使館である代表機関がリトアニアに設置されたことを受けて、中国政府は11月、リトアニアとの外交関係を格下げした。

     

    (1)「リトアニアと中国の直接貿易はそれほど多くないが、リトアニアには家具、レーザー、食品、衣料などを多国籍企業向けに製造する企業が多く、そうした多国籍企業は中国に製品を販売している。リトアニアのアドメナス外務副大臣はロイターに「(中国は)多国籍企業に対し、リトアニア製の部品などを使用すれば、中国市場での商品の販売・調達を認めないとのメッセージを送っている」と指摘。「一部の企業はリトアニアのサプライヤーとの契約をキャンセルした」と述べた。具体的な社名は明らかにしなかった」

     

    リトアニアが直接、中国へ輸出しているのはリトアニア輸出全体の1%に過ぎない。これでは、中国が圧力を掛けても威力はない。そこで中国は、多国籍企業に対してリトアニア製の部品を使用した製品の販売・調達を認めないと新たな圧力をかけ始めた。

     


    (2)「
    リトアニア産業連盟の代表も、国内サプライヤーから商品を調達している一部の多国籍企業が中国の標的になっていると指摘。「これまでは脅しにすぎなかったが、今はそれが現実のものになっている」とし、標的となっている多国籍企業は欧州企業で、多くのリトアニア企業と取引があると述べた。政府高官によると、リトアニアは国内企業を中国の報復措置から守るため、基金を設立することを検討している。ランズベルギス外相は、欧州委員会に「欧州連合(EU)レベルで強力な対応が必要だ」と支援を要請。欧州委は加盟国に対するあらゆる種類の政治的圧力と強制的な措置に対抗する用意があると表明している」

     

    リトアニア製の部品を購入しているのは、多くがEU企業である。すでに、リトアニア企業からの調達をキャンセルする企業も出始めた状況である。EUは、この問題をEUとして処理する意向を表明した。リトアニアをめぐって、EUと中国が対決する構図だ。

     

    EUの欧州委員会は12月8日、EUと加盟国に経済的な手段を使って圧力をかける第三国に対して、「貿易関連の制裁を科せる制度案」を公表した。原則として加盟国に諮らず、EUが独自に判断できるのが特徴。一方的な行動が目立つ国際社会で迅速に対応できる能力を備える目的だ。今回の制度案策定の念頭には、台湾との関係を深めるリトアニアに圧力を強める中国の存在を前提にしている。中国は、飛んで火に入る夏の虫になりかねなくなってきた。

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