勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 英国経済ニュース

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    英国が12月15日、包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)に加わった。参加国の拡大は2018年のTPP発足後初めてとなる。これで、加盟国は12カ国となり、枠組みは欧州に広がった。日本にとって意義のあるのは、英国との関係が緊密になる
    ことだ。

    日英伊による戦闘機共同開発も、機体の製造などを担う共同企業体(JV)への出資比率が、3カ国で均等となることに決まった。日本は英伊と等分に出資し、生産や設計にも同等の影響力をもつことができる。3ヶ国は近くJVの設立で合意する見込みだ。戦闘機共同開発は、40~50年に渡る超長期の事業となる。ユーザー国へ戦闘機を納入後、部品供給もあって供給側は共同歩調をとるからだ。

    日本が、英国との関係がTPPや戦闘機共同開発を通して緊密化するのは、日英同盟(1902~23年)以来である。日英同盟によって、日本は世界の檜舞台で活躍する際に、英国から物心両面で支援を受けた関係にある。太平洋戦争で破綻したものの、再び日英関係が旧に倍する強化時代を迎える。

    『日本経済新聞 電子版』(12月日付)は、「TPP英加入、25年見直しで自由貿易磨く 保護主義に対抗」と題する記事を掲載した。

    英国が12月15日、TPPへ加わった。2018年の発足以来、初めての拡大で12カ国体制となった。25年には初の協定見直しに向けた取りまとめを控える。世界で保護主義的な動きが強まるなか、先端技術に対応した高い基準の通商ルールのけん引を目指す。英国のレイノルズ・ビジネス貿易相は15日、「協定は貿易を増やし、英国企業の外国進出の機会を生み出す」と加入を喜んだ。

    (1)「TPPは英国の加入によって人口5億8000万人、世界の国内総生産(GDP)の15%を占める経済圏となった。地理的にはアジア太平洋から欧州に枠組みが広がった。日英は既に経済連携協定(EPA)を結び、多くの品目で関税が削減されている。今回の協定で日本からの輸出では精米やパックご飯などの関税が撤廃され、英国からはバターや脱脂粉乳などの関税が下がる。英国は、加盟国の中でマレーシアとブルネイとはこれまで自由貿易協定(FTA)を結んでおらず、両国との間で関税撤廃や引き下げの恩恵が大きい。英政府の試算によると、今回の加入によって長期的には英経済に年20億ポンド(約3900億円)の押し上げ効果がある」

    TPPもかつて注目を集めた時代からみると、保護貿易時代の現在「孤島」になっている。だが、世界GDP15%がフリーゾーンである。オアシスとして守らなければならない。

    (2)「デジタル貿易や経済的威圧、環境など幅広いテーマが見直しの俎上(そじょう)に載る。先端技術の普及に応じ、協定の見直しを検討する。中国が参加する東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)には、ソースコードの開示要求を禁ずる規定すらない。TPPのデジタル貿易のルール整備が一段と進めば、中国にとって加入に向けた課題は大きくなる」

    デジタル貿易の拡大でルール整備が急がれている。中国が、TPP加盟を申請しているだけに、「守り」を固めて申請を諦めさせなければならない。

    (3)「過度な補助金で市場をゆがめる行為や経済的威圧の抑止も焦点となるなか、自由でルールに基づく貿易といった価値観を共にする英国が協定見直しの議論に参加できるようになったことは、日本にとって仲間が増えることを意味する。ジュリア・ロングボトム駐日英大使は13日の記者会見で「ルールに基づく貿易システムが多大な圧力を受けるなか、今後のTPPの重要性は高まるばかりだ」と述べ、枠組みのさらなる拡大の重要性を強調した」

    TPPは、補助金支給も「御法度」である。中国は、補助金漬けである。こういう国の加盟は、認める訳にいかないのだ。

    (4)「11月には、英国に続く2カ国目として中米コスタリカと加盟交渉を始めた。さらに中国や台湾などが加盟を申請する。巨額の補助金で国有企業や特定の産業を支える中国が、TPPの高度な加盟条件を満たせる見込みは現時点では薄い。それでも、中国の加盟を警戒するある国の通商担当者は「基準を引き下げて中国を入れることに前向きな国が増えている。そうした動きを日英でどこまで抑えられるかはわからない」と先行きへの不安を語る。TPPの議長国は、輪番で25年はオーストラリアが務める。翌26年は中国の加盟に前向きなベトナムが控える。日本など中国の参加に慎重な陣営は、25年中に協定の見直しに向けた議論を決着させたい考えだ」

    TPP加盟国のなかには、中国加盟に賛成する國も出てきた。これは、TPP精神の基本に合わないだけに阻止しなければならない。日英豪が核になって加盟を止めるのだ。

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    日本へもコロナ感染第6波が押し寄せてきた。1月8日現在、新規感染者8480人と前週同曜日比で、何と7946人増になった。驚くべき増加である。オミクロン株特有の早い感染力を表している。感染予防は従来通りという。ワクチン接種・三密回避・マスク着用・手洗い励行の四つである。

     

    警戒感を強めなければならないが、先行きに一つの明るさも見える。現状を克服すれば、後はインフルエンザのようなエンデミック(周期的流行)局面に入ると、南アフリカで最初にオミクロン株を治療した専門家が指摘しているのだ。

     

    『中央日報』(1月8日付)は、「『オミクロン株でパンデミック終わるかも』 南アフリカ研究陣が分析」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの変異株「オミクロン」の震源として注目を引いた南アフリカの研究陣がパンデミック(伝染病の世界的大流行)様相が終わりそうだという内容の研究結果を出した。

    (1)「1月7日(現地時間)のブルームバーグ通信によると、研究陣はスティーブ・ビコ・アカデミック国立病院でオミクロン株による感染の推移を現場調査した結果、「パンデミックの様相が終わることを示唆する可能性がある」と明らかにした。今回の研究分析対象は病院内の現流行患者466人の記録と以前の感染事例3976件。オミクロン株が前例のないペースで急速に広がり、以前の変異株よりはるかに軽い症状を見せたというのがその根拠だ。続いて「こうしたパターンが続き、世界的に繰り返されれば、我々は感染者と死亡者の完全なデカップリング(脱同調化)を見ることができるだろう」と述べた」

     

    下線部のように、感染者は増えるが死亡率は下がるというデカップリング状態になるという。

     


    (2)「世界保健機関(WHO)の関係者も4日、オミクロン株について一部の地域の感染者数は過去最多だが、死亡者数は以前の流行と比べて少なく、デカップリング現象が表れていると伝えた。こうした傾向はオミクロン株がコロナパンデミックの深刻な局面が終わる前兆になるというのが専門家らの分析だ。急速な伝染局面が終わり、特定の地域でインフルエンザのようなエンデミック(周期的流行)局面に入ったということだ。昨年12月にマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏もコロナのパンデミック様相が今年中に収束してエンデミックになると予想した」

     

    WHOでも、感染者は増えても死亡率の低下を認めている。ただ、猛威は去ってもインフルエンザのような周期的な流行になると見ている。残念ながら、新型コロナウイルスは地球上から消えないが、予防注射で防げる程度に弱るのだろう。

     


    (3)「南アフリカ医療研究協議会はホームページで、今回の研究で現流行では病院患者の4.5%だけが死亡したと明らかにした。以前の流行時の21%と比較するとかなり低い。集中治療室に入院した患者も少なく、病院入院期間もかなり短かった。今回の研究で入院率自体は速いペースで上昇したが、分析対象となった最初の入院から33日後に減少に入った。研究報告書は「このような現象は以前にスティーブ・ビコ病院や南アフリカのどこでも観測されなかったことだ」とし「オミクロン株に関連して地域社会で無症状が高い水準であることを反映するものかもしれない」と分析した」

     

    南アのような防疫体制が完備されていない地域でも、オミクロン株の死亡率は以前の5分の1に低下している。依然として、死に至る危険性を秘めているが、集中治療室に入院した患者も少なく、病院入院期間もかなり短くなっているのは朗報である。オミクロン株確認後、最初の入院から33日後に感染者は減少に入っている。つまり、1ヶ月間が勝負期間である。日本では、2月初旬までが警戒期間となりそうだ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(1月4日付)は、「オミクロン型 ロンドンで感染縮小の兆し」と題する記事を掲載した。

     

    英政府のアドバイザーを務める科学者や保健当局者は、ロンドンで新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染縮小の兆しが現れ始めたことを歓迎している。規制を強化しなくても、国民医療制度(NHS)がオミクロン型感染の波を乗り越えられそうだとの期待が膨らむ。

     

    (4)「ロンドンでは14日までに、1日あたりの新規感染者数(7日移動平均)が、2021年12月22日に記録したピークの2万8000人近くを20%ほど下回った。クリスマスなどを機に大勢集まる行事をかなり自粛する動きが功を奏した。オミクロン型は、南アフリカで21年11月下旬に初めて確認された後、英国ではまずロンドンに感染が広がった」

     

    ロンドンは、南アフリカに次いで二番目にオミクロン株の感染が見られた地域である。そのロンドンで、感染者が減少傾向を見せてきた。

     


    (5)「英インペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授(疫学)は、ロンドンで18~50歳の感染拡大ペースの「上昇が止まった」という見方に「慎重ながら楽観視している」と話した。だが減少しつつあるかどうかは「まだ分からない」と付け加えた。当初の感染拡大をけん引した20~34歳の年齢層では、1日あたりの新規感染者数が12月20日に記録したピークの3分の2弱にまで減少した。ファーガソン氏は英BBCのニュース番組「トゥデイ」に対し、「感染症が急速に広がりこれだけ多くの人数に達した中、この数字がずっと続くことはあり得ないので、感染者数は減少に転じるだろう。ロンドンでは既に減りつつあるのかもしれない」と語った」

     

    下線のように、ロンドンでは感染者が減少に転じる兆候を見せている。

     


    (6)「オミクロン型の毒性に関しては、従来型より弱いことを示す証拠がロンドンで多く出てきている。コロナ感染症の重症化は、たいてい15日以内に起きる。ロンドンで目下、人工呼吸器を装着しているコロナ患者は245人で、2週間前の感染者数全体の約1%に相当する1年前の感染の波における同時期には814人と、その2週間前の感染者数全体の10%に達していた。21年12月末に発表されたイングランドの統計では、集中治療室に入っているコロナ患者の60%がワクチン未接種だった

     

    このパラグラフは、重要なデータを提示しているので整理したい。

    1)コロナ感染症の重症化は、たいてい15日以内に起きる。

    2)人工呼吸器を装着しているコロナ患者は、2週間前の感染者数全体の約1%

    3)集中治療室に入っているコロナ患者の60%がワクチン未接種。

     

    前記3つの結論は、発症して15日以内に病状が悪化しなければ峠を越す。人工呼吸器をつける患者は感染者全体の1%。その6割がワクチン未接種者である。ワクチン接種していれば、オミクロン株に感染しても重症化しないようである。

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