ウクライナは、膠着した戦線打開を目指して戦闘機と長距離砲の供与を西側諸国へ求めている。米国は拒否姿勢を示したが、フランス大統領マクロン氏は、「排除せず」と含みを持たせる発言をしている。ウクライナは、最も弱点である戦闘機の供与があれば、膠着した戦線突破への手がかりとなろう。
『フィナンシャル・タイムズ』(2月1日付)は、「マクロン氏、ウクライナへ仏戦闘機供与『排除せず』」と題する記事を掲載した。
ウクライナがロシアの攻撃に対抗するのを支援するために欧米諸国が軍事支援の次のステップを検討するなか、フランスがウクライナへの戦闘機供与に前向きな姿勢を示した。「本来的に、何一つ排除されない」。フランスのマクロン大統領は1月30日、訪問先のオランダ・ハーグでの記者会見でこう述べた。ウクライナから戦闘機供与の要請は受けていないと付け加えた。
(1)「米国とドイツが先週、主力戦車をウクライナに供与する決定を発表して以来、ウクライナを支援する国々の関心は、米戦闘機「F16」、もしくは欧米製の他の戦闘機を供与する可能性に集まっている(フランスはまだ戦車の供与を決めていない)。ウクライナの政府高官は、より先端的な航空機は防空体制を強化して、ロシア軍の攻撃を撃退し、春の新たな攻撃に備えるために役立つと話している」
ロシア軍の春先の攻撃が予測されるだけに、ウクライナは、兵器拡充に躍起となっている。戦車は理想通りに手当できたので、次は戦闘機の供与を求めている。
(2)「米国のバイデン大統領は30日夜、ウクライナへのF16戦闘機の供与を否定し、最大の支援国である米国がジェット戦闘機の供与を先導するというウクライナ政府の期待に水を差した。協議について説明を受けた2人の政府関係者によると、フランス政府は欧州諸国の政府に対し、ジェット機を含む追加の兵器システムを送ることが検討議題に上っていることを伝えた。すぐに決定される可能性は低い。その関係者によると、フランス政府は、以前からの防空・ミサイル防衛システムの供与に加え、戦車を供与して戦車の使い方についてウクライナ軍を訓練する新たなプロジェクトに重点を置いている」
フランスは、自国製戦闘機の供与の可能性を認めている。
(3)「ウクライナのレズニコフ国防相は、31日に仏パリでマクロン氏と仏国防相と会談し、ジェット機について話し合ったことを認めた。「飛行機の具体的な名前やタイプ」には触れていないと述べた。レズニコフ氏は、バイデン氏の発言を深刻には受け止めておらず、榴弾砲や戦車の場合と同様、時間がたてば、支援国が折れる可能性があると指摘した。「我々が要請を出したとき、最初はすべてノーという答えが返ってくる。だが、いずれ近代的なジェットプラットフォームを入手できると確信している」と指摘」
ウクライナは、米国がF16戦闘機の供与に「ノー」としたことに落胆していないという。米国は、一度は断るが二度、三度の交渉で受け入れているからだ。戦車の提供と同様に、最終的にはF16を供与してくれるものと期待している。
(4)「マクロン氏は、オランダのルッテ首相との会談後の記者会見で「我々は、噂ではなく、ウクライナからの要請に基づいて判断する」と語った。ウクライナ政府は高度な中距離防空システム「SAMP-T」を手に入れるためにフランス、イタリア両政府と交渉に入っている。これは米国の地対空ミサイルシステム「パトリオット」と似たシステムで、弾道ミサイルを撃ち落とすことができる」
マクロン氏は、ウクライナの要請には現実的対応をするとしている。可能な場合は、積極的に応じるというもの。
(5)「防衛アナリストは、マクロン氏が戦闘機の供与を決めた場合、フランスは戦闘機「ミラージュ」の古いモデルをウクライナに送ると予想している。ミラージュは仏ダッソー・アビアシオンによって製造されており、フランスは昨年の年初時点で「ミラージュ2000」を106機運用していた。全機が2030年までに第5世代の戦闘機「ラファール」に置き換えられることになっている」
フランスは、「ミラージュ2000」を106機運用しているが、全機が2030年までに第5世代の戦闘機「ラファール」に置き換えられる。この退役戦闘機「ミラージュ2000」を順次、ウクライナへ供与する可能性を示している。
(6)「フランスは昨年6月に、「ミラージュ2000C」を14機退役させた。これらをウクライナに供与すればフランス軍の能力は落ちない。今後数年で、さらに26機の要撃機「ミラージュ2000-5」を段階的に退役させる予定になっている。フランスは戦闘機を自国で生産していることから、輸出に当たって第三者の承認を得る必要がない。欧州数カ国の軍隊がF16を運用しているが、これらの戦闘機をウクライナに送るには米国からの承認が必要になる。前出の欧州当局者の一人は、そのためにフランス製戦闘機が明らかな候補になると語った」
フランスは、退役した「ミラージュ」をウクライナへ供与しても良いという可能性を示している。すでに退役した「ミラージュ」14機が候補になるか、だ。