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ロシアは、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟をめぐって反対し、大規模な軍事演習する騒ぎに発展している。この状況を見た北欧のフィンランドとスウェーデンの二国が、NATOへ加盟したいという動きを誘発し、皮肉な結果を招いている。ロシアにとっては「藪から棒」という驚きであろう。

 

ASEAN(東南アジア諸国連合)でも、同じようなことが起こっている。中国の脅迫的な行動に嫌気した国々が、米国依存姿勢を強めていることだ。ロシアも中国も、身勝手な行動を続けていれば、自国の包囲網を縮めるという結果を招くという教訓が見られる。

 


『フィナンシャル・タイムズ』(1月25日付)は、「スウェーデン・フィンランドのNATO加盟論が再燃」と題する記事を掲載した。

 

ウクライナをめぐる危機においてロシアのプーチン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)はロシアの国境に向かって侵入するのをやめなければならないと主張している。だが、そのプーチン氏の要求が欧州大陸の北端で意図せぬ事態を招いている。フィンランド、スウェーデンのNATO加盟の是非をめぐる議論の再燃だ。

 

(1)「ロシアは、バルト海沿岸の両国を含めてNATOがさらに拡大すれば、厳しい対応を取ると威嚇している。ロシア外務省は2021年12月、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟は「ロシア側の十分な対応を必要とする重大な軍事的、政治的結果を招く」と表明した。米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのアンナ・ウィースランダー北欧部長は、ロシア自身の行動がスウェーデンとフィンランドをロシアにとって望ましくない出方の検討に動かしていると指摘する」

 

ロシアは、これほどNATOの存在が不安であれば、不可侵条約を結ぶことだ。そうすれば、他国に対して喧嘩を売ることもなくなる。スウェーデンとフィンランドは、ロシアの行動に不安を感じてNATOへ救いを求めているのだ。

 


(2)「スウェーデンのリンデ外相は、ロシアのウクライナに対する意図と「攻撃的な言辞」について「深く懸念」していると述べ、フィンランドとともにNATOと話し合ったのは重要だと強調した。スウェーデンとフィンランドは最近、相互の防衛協力を強化。NATO加盟に関しては以前から、いかなる動きにおいても両国は足並みをそろえるものとみなされている。識者は、NATO加盟をめぐる議論はフィンランドのほうが深いとみている。理由として、スウェーデンが徴兵制を廃止して軍を大幅に縮小したことがあるのに対し、フィンランドは防衛を緩めることなく大規模な国防支出と多数の予備役を維持していることが関係しているはずだという」

 

スウェーデンとフィンランドは最近、相互の防衛協力を強化している。ただ、NATOへの加盟意欲では、フィンランドの方がより積極的と見られている。

 


(3)「NATO加盟について、スウェーデンはフィンランドよりも政治的に分裂しているようだ。中道左派の与党・社会民主労働党がNATO加盟に強硬に反対する一方、中道右派の野党勢力は加盟推進で結束している。フィンランドでは中道左派のマリン首相が先週、自身の在任中にフィンランドがNATO加盟を申請する「可能性は極めて低い」と語り、波紋を広げた。フィンランドは選択の余地を残しておくべきだとする野党の痛烈な批判を浴びた首相は、発言が「過剰に解釈された」と釈明した」

 

スウェーデンもフィンランドも、国内にNATO加盟慎重論を抱えている。時間を掛けて加盟しようという腹積もりであろう。

 

(4)「議論の焦点は、純粋にスウェーデンとフィンランドにとってNATO加盟は何を意味するかだけではない。欧州北部の戦略的要衝に位置する両国がNATOに何をもたらしうるのか、という点も絡んでいる。バルト3国の一つ、エストニアのカラス首相はフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、これはスウェーデンとフィンランドだけの決断であるとする一方、「両国がそうすると決めた場合、私たちはNATO内で両国を強く支援する」と語った。カラス氏は、両国は強い軍事能力をもたらして「NATOの版図で半島のような」バルト3国を助けることになると指摘した。「間違いなく、この地の安全保障を高めることになる」

 

スウェーデンとフィンランドは、NATOに救いを求めるという消極的な意味でなく、NATOに対していかなる貢献ができるかが問われている。もっともな指摘である。その点、バルト三国は、NATOへの明確な意思を表明している。自由と民主主義の価値維持を旗印にしている。今回のウクライナ問題でも、バルト三国は自国にある米軍兵器の一時的なウクライナ移転を提案して米国の承認を得たほど。こういう姿勢は、韓国にも見習わせたいものである。