勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ロシア経済ニュース

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    ウクライナ軍は、ヘルソン州都ヘルソン市を「無血奪還」に成功した。ロシア軍の兵站線を徹底的に叩いたことで戦意喪失し、3万とされるロシア軍を撤退に追い込んだもの。これからは、「冬将軍」を迎える。このことから戦線膠着が予想され、「停戦論」が聞かれるようになってきた。

     

    これに対し、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は17日までに、同国の目標はロシアが侵攻して奪った全ての自国領の解放であり、ロシアとの交渉に応じる唯一の条件は全占領地からの撤退であるとの考えを示した。ザルジニー総司令官は、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長との会談で改めてこれを主張。この条件が満たさなければ、「ウクライナ軍は一切の交渉、合意事項や妥協的な決定は受け入れない考えを伝えた」とした。『CNN』(11月17日付)が報じた。

     

    このように、停戦論が聞かれ始めたが、米ロ高官は密接な連絡をとっていることが判明した。表向きは、米国がロシアへ核を使用せぬように警告しているとされる。だが、それだけにと止らず、「停戦」が議題に上がっていると推測される。そうでなければ、ザルジニー総司令官が停戦問題に言及する筈がないのだ。

     

    問題は、ロシアのプーチン氏が「停戦」を決断できるかである。プーチン氏の政治生命にも関わる問題であるからだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月22日付)は、「停戦できぬプーチン氏の論理、戦況劣勢で権力に揺らぎも」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の上級論説委員 坂井 光氏である。

     

    ロシア軍のウクライナ侵攻からまもなく9カ月。当初は首都キーウ(キエフ)に迫ったが、反転攻勢にあい、劣勢を強いられている。プーチン大統領はいつまで無謀な戦いを続けるつもりなのか。

     

    (1)「戦況はロシアに不利だ。英国防省によると、ロシアが支配する地域は最大だった3月からほぼ半分にまで減少した。精密兵器に関しては保有していた80~85%を使用したと推定され、その精度の低さも露呈した。特筆すべきは失った兵力だ。その数は負傷や脱走などを含めると約10万人に達した。これは侵攻開始時の兵力の5割に及ぶ。新たに動員したがその士気は低い。十分な訓練や装備、食料なしで前線に送られるケースが多い。しかも、逃亡を企てる自国兵を後方から銃撃するなど非人道的な行動も報告されている。一方のウクライナは西側からの支援で勢いづいている。情報機関関係者によると、米英仏など約20カ国の特殊部隊が作戦を指導し、情報提供、兵器輸送、通信支援など幅広く活動。反転攻勢の原動力となっている」

     

    ウクライナ軍は、米軍提供の「ハイマース」で攻勢に転じた。ロシアには、この種の兵器を保持しないので完敗である。もはや、戦争の帰趨は決まったような観さえある。

     

    (2)「『このままでは勝てない』。戦況の詳細を知る立場にあるロシアのエリート層には危機感が広がっている。それでもプーチン氏から強硬路線を変える兆しは見えない。というより、劣勢だからこそ続けざるを得ないのだろう。現状で停戦すれば領土的な野望だけでなく、「ネオナチから解放する」という目的も達成できない。その責任は政治的な立場を失うだけでは済まされない可能性が高い。もはやプーチン氏が戦いを続ける目的は、自らの保身と野心のためのみに違いない。前線の兵士や国民の生活など眼中にないことだけは確かだ。かつての日本の指導部と同じような論理といえる」

     

    プーチン氏は、絶体絶命の危機に立たされている。核使用は、中国やインドも反対している。もはや打つ手はないのだ。

     

    (3)「米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル電子版』は11月6日、パトルシェフ安全保障会議書記と米国のサリバン大統領補佐官が極秘に複数回協議したと報じた。さらに、ナルイシキン対外情報局(SVR)長官もバーンズ米中央情報局(CIA)長官と14日にトルコで会談した。ロシア側の2人はプーチン氏と同じソ連国家保安委員会(KGB)出身のエリートで同氏の最側近だ。いずれの協議も停戦については話していないとされるが、無謀な戦争が招く悲惨な歴史を繰り返さないための取引の兆しとも推定できる」

     

    米ロ間では、情報トップが会談しているほか、高官同士も話合っている。表向きの理由は、米国がロシアへ核使用反対であることと、使用した場合に米国の対応を通告したとされる。だが、それだけとは思えない。戦争終結方法を話合ったと見るのが常識的だ。

     

    (4)「一方、オリガルヒ(新興財閥)のプリゴジン氏と南部チェチェン共和国のカディロフ首長がロシア軍への強烈な批判などを繰り返し始めた。プリゴジン、カディロフ両氏ともプーチン氏の盟友ではあるが、別動隊のような存在だった。彼らが野心をあらわにしたことは、プーチン氏の求心力の低下と、権力構造の揺らぎを示唆するものといえそうだ。ソ連時代の最高指導者はその最期まで権力を手放さなかった。例外は宮廷クーデターで失脚したフルシチョフだ。この戦争が終わるとき、プーチン氏のたどる道が見えてくるはずだ」

     

    ロシアでは、プーチン氏を取り巻く非公式グループが積極的に発言している。プーチン氏の「タガ」が緩んでいる証拠と見える。ロシア国内が、てんやわんやの騒ぎに陥っていることは確実だ。中国は、こういう事態をどう見ているか。台湾侵攻への貴重な教訓が潜んでいるはずだ。

     

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    ロシアのウクライナ侵攻は、世界的なエネルギー供給構造に劇的な変化をもたらしたという分析が、IEA(国際エネルギー機関)から発表された。これは、ロシアからの化石燃料輸出が減ったことから起こったもので、脱化石燃料依存へのスピードが加速され今後、数十年も続くという明るい分析である。

     

    ロシア経済は化石燃料依存であるので、西側諸国の経済制裁が継続されれば、これから経済成長の手段を失うだけに深刻な事態が想定される。ロシアが自ら蒔いた種とはいえ、罪のない一般ロシア国民には想定外の受難期を迎えそうだ。

     

    フランスのボルヌ首相は10月3日、フランス議会で演説し、ウクライナでの戦争は続くが、フランスは準備が整っており、ロシアにとって戦争の代償を耐えられないものにしたいと述べた。ロシアは、まさに「戦争の代償を耐えられない」構造変動が起きる原点に立たされたわけだ。

     

    米『CNN』(11月5日付け)は、「ウクライナ戦争でエネルギー源移行が加速、大転換とIEA」と題する記事を掲載した。

     

    国際エネルギー機関(IEA)は5日までに、ウクライナに侵攻したロシアの化石燃料の輸出が減少の一途をたどっていることを受け、より持続可能で安定したエネルギー源確保への移行が世界規模で加速する可能性があるとの報告書を公表した。年次の「世界エネルギー見通し」で指摘したもので、国際エネルギー市場は「大きな方向転換」の最中にあるとの認識も示した。

     

    (1)「ロシアから欧州へのエネルギー源の輸出がしぼんだことを受け、多くの国が新たな事態への適応を図っているとし、世界規模の二酸化炭素の排出量は2025年に最高水準に達する可能性があるとも予想した。また、IEAのエネルギー源需給などに関する予測としては初めて、全ての化石燃料への世界的な需要は2030年代半ばに頭打ちとなる前に、ピークあるいは横ばいの水準に到達する可能性があるともした。IEAのビロル事務局長は、エネルギー市場や関連政策はロシアのウクライナ侵攻を受け変質したとし、その波及効果は当面の期間の問題ではなく今後数十年にも及ぶと指摘した」

     

    ロシアのウクライナ侵攻に対する西側諸国の経済制裁によって、化石燃料の最大輸出国ロシアの輸出量が減少している。西側諸国は、エネルギー源の転換に乗り出しており、これによってエネルギー供給構造に大きな変化が起こっている。

     

    (2)「世界エネルギー見通しによると、多くの政府はエネルギー危機に直面し短期的な消費者保護対策だけでなく長期的な展望を踏まえた措置を講じているとも分析。一部政府は原油や天然ガスの調達元の多様化の拡大を図り、多くはエネルギー政策に関する構造的な変化の加速も見据えているとした。IEAの予測によると、クリーンエネルギーへの世界規模での投資は2030年までに年間で2兆ドル以上に膨らむ可能性がある。現状と比べ50%以上の増加を意味する

     

    クリーンエネルギーへの投資は、2030年までに現行の5割増しが予測される。これは、エネルギー供給構造に抜本的な影響を与えるはずだ。

     

    (3)「IEAは、化石燃料の最大の輸出国であるロシアが、国際的なエネルギー市場での強固な足場を取り戻すことは決してないだろうとも予測した。ウクライナ侵攻に伴って欧州市場との関係が破綻し、エネルギー市場での大きな地位低下にさらされることになったと断じた」

     

    世界的なエネルギー供給構造の大変革によって、IEAはロシアが国際的なエネルギー市場で強固な足場を取り戻すことは決してないだろうと予測する。化石燃料に依存するロシア経済は今後、輸出すべき産物を失う悲劇が待っているのだ。

     

    (4)「事務局長は3日には、世界や欧州のガス市場でみられる直近の傾向や予想し得る事態の進展を踏まえれば、欧州が来年の冬、ガス調達でより厳しい試練に遭遇する方向にあることが見てとれるとも主張。欧州の各国政府がさらなるガス不足を回避するために迅速な行動に出る必要があるとし、エネルギー使用の効率向上や再生可能などのエネルギー開発の加速に早急に取り組むことが重要と説いた。ガス需要を構造的に減らす他の措置の導入も訴えた」

     

    目先の問題として、欧州は来年の冬に天然ガス調達で厳しい試練に立たされる。これを乗り切れば、事態は好転していくと見られる。あと少しの辛抱で、ロシアの経済力は激変に見舞われ、「侵略余力」を失うであろう。

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    ロシア大統領プーチン氏が、ウクライナ4州に厳戒令を出したのに続き、ロシア全土に警戒体制を敷くことになった。事実上の戦時体制移行である。狙いは、プーチン氏への反対論を抑えることにありそうだ。

     

    少数の人間で始めたウクライナ侵攻の硝煙が、ついにロシア全土へ広がってきたと言える。西側諸国の厳しい経済制裁によって、ロシアは武器弾薬の生産が不可能という最悪事態を迎えている。「弾切れ」では、戦争継続が不可能である。最後は、「核」に頼ろうとしている気配である。それは、自らとロシアの「生命」に関わる問題になる。ブーメランがあるのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(10月20日付)は、「プーチン氏、ロシア全土に警戒体制 国内の反発封じ込め」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領が19日、9月末に一方的な「併合」を宣言したウクライナ東・南部4州に戒厳令を敷くと表明した。注目されるのは同時に発令したロシア全土で警戒体制を強める大統領令だ。プーチン氏は4州の戦況悪化だけでなく、ウクライナの後方かく乱工作と内政不安にも危機感を募らせ、事実上の戦時体制移行を迫られた。

     

    (1)「プーチン氏は19日、苦戦するウクライナ軍事侵攻を巡り、急きょ戒厳令とロシア全土への警戒体制導入を発表した。戒厳令は軍に権限を集中し、外出禁止令や通信の規制、民間施設などの接収を可能にする非常手段だ。9月中旬までにウクライナ軍によりハリコフ州を奪還され、10月19日には南部ヘルソン州で同軍の攻勢が本格化した。9月21日に発令した一部予備役を招集する部分動員令に続いて、戦時体制の強化を迫られた。ロシア全国に発令した警戒体制が、プーチン氏が抱く危機感の強さを示す」」

     

    今回のロシア全土への警戒体制の裏は、ウクライナ軍の攻勢を受けて、ロシア軍がドニプロ川西岸から撤退する事態を受けて導入するものであろう。ロシア軍にっとは、手痛い敗北であるだけに、ロシア全土に反戦気運とプーチン批判が起こるに違いない。それを、事前に封じ込める目的である。

     

    (2)「今回の警戒体制は3段階ある。まず、ウクライナと隣接するロシア南部の各州に「中レベル対応」と呼ぶかなり強い警戒体制を敷いた。さらに南部連邦管区と首都モスクワを含む中央連邦管区に「高度準備体制」を、全国のその他の地域には「基本準備体制」をそれぞれ導入した。「中レベル対応」では、地域防衛のために経済や行政組織を動員し、軍部隊の物資補給など全面的支援を各地域に強制する。「準備体制」では「高度」と「基本」で程度の差はあるが、交通機関など重要な施設の安全確保や社会秩序維持への警備、取り締まりの強化が求められる」

     

    ロシア南部の各州には、「中レベル対応」と呼ぶかなり強い警戒体制を敷くという。ウクライナ軍の攻撃を警戒しているのであろう。

     


    (3)「プーチン氏は、全土の警戒体制で2つのリスクを抑え込もうとしている。一つは10月8日にクリミア半島とロシア南部を結ぶ「クリミア大橋」で起きた爆破事件のような、ウクライナによるとされる後方かく乱工作、もう一つは部分動員令をきっかけに広がったプーチン政権への国民の反発だ。ウクライナは東・南部での軍事攻勢だけでなく、ロシア国内で破壊工作をしているのではないかとプーチン政権は警戒している。8月には民族主義的思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリア氏がモスクワ郊外で自動車爆弾の爆発により死亡する事件があり、ロシア当局は「ウクライナの特殊機関の工作」と主張している」

     

    プーチン氏は、東ドイツ(当時)に在勤当時、民衆蜂起を目の当たりにして、民衆パワーの恐ろしさを実感したという。ロシアでそれが起こった場合を想定して、早手回しに手を打ったのが真相であろう。独裁者にとって一番「可愛い」のは自分である。古今東西、これが真実である。

     


    (4)「プーチン氏は、「内なる敵」にもおびえる。部分動員令の発令直後から、政権に抗議する街頭デモが広がり、2000人以上が拘束された。軍への招集を逃れるため国外に脱出する人も後を絶たない。プーチン氏は10月14日、国民のさらなる反発を恐れ、「動員は約2週間で終わる」と約束せざるをえなかった。国民の「プーチン離れ」は広がりつつあり、独立系調査機関レバダセンターが部分動員令の直後の9月下旬に実施した世論調査によると、プーチン氏の支持率は83%から77%に急落した。実際はもっと深刻とみられる。警戒体制に盛り込んだ社会秩序の維持強化には、さらなる内政の締め付けで反政権の動きを封じ込める思惑が透ける」

     

    英国BBC記者が述懐していたが、ロシア人は実に人なつっこい人達である。そのロシアから、スターリンやプーチンが出るのはなぜか。それは、ロシアに西欧のような市民社会の経験がないからだ、としている。まことに至言であろう。中国もそうだが、市民社会という経験のない国家には、こういう独裁者を受入れる脆弱性がある。それは同時に、市場経済機構を受入れないことでもある。ロシアや中国の経済発展には、自ずと限界ができるのは当然であろう。

     

     

    あじさいのたまご
       

    ロシアのプーチン大統領は、14日、ウクライナの大部分の標的をすでに攻撃したため、新たな「大規模攻撃」の必要はもはやないと述べた。これには裏があった。高精度ミサイル在庫が、ウクライナ侵攻前の14%にまで減ってきたのだ。ミサイル増産は、経済制裁によって半導体などの主要部品が輸入できず、お手上げ状態である。

     

    『ワルシャワ時事』(10月15日付)は、「高精度ミサイル3分の2消費、ロ軍の弾薬欠乏深刻 ウクライナ分析」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナのレズニコフ国防相は14日、ロシア軍が軍事侵攻を開始した2月以降、保有していた高精度ミサイルの3分の2を消費したとの見方を示した。

     


    (1)「特に地上発射型ミサイルの備蓄量は、侵攻前の14%程度にまで低下したと分析している。レズニコフ氏はツイッターで、ロシア軍はウクライナ侵攻前、計1844発の高精度ミサイルを保有していたと指摘。今月12日時点の残存数は609発で、「民間施設を標的に高精度ミサイルを使った結果、軍事施設を攻撃する能力を低下させた」と述べた」

     

    ロシアのミサイルは、「高精度」を謳っているが、命中率が低いことで有名である。被害が広がるのは、精度が落ちる結果とされている。米国製の高機動ミサイル「ハイマース」は、2~3メートルの誤差でピンポイント攻撃が可能である。これは、使用する半導体の能力差であろう。

     

    誤差率の高いロシアのミサイル備蓄量は、侵攻前の14%にまで減っている。命中精度が低いから、余計に撃つのであろう。このままだと、間もなく「弾切れ」になる。戦争どころの話ではなくなるのだ。ロシア軍は、「弾切れ」を回避すべく、あちこちへ手を延ばしている。

     


    米『CNN』(10月15日付)は、「ロシア軍、ウクライナで先端兵器の急速な消耗 米政府高官」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米政権高官は15日までに、ウクライナへ侵攻したロシア軍で先端兵器の備蓄分が急速に減っており、代替品の確保もできていない状況にあるとの分析を示した。

     

    (2)「ウォリー・アデイエモ財務副長官がCNNとの単独会見で明かした。ロシアは侵攻に対抗する西側諸国の制裁策をかいくぐって軍への補給を確保する方途を必死になって探っているとも指摘した。副長官はこの中で、ロシアが直面する装備品不足は戦闘現場での判断にも影響を与えているとし、必要とする戦車がないため戦線で可能なことについて重大な選択を迫られる結果になっていると述べた。ロシアはウクライナへ撃ち込む高精度ミサイルに不可欠の半導体を持っていないともした」

     

    ロシアは、安易に始めた戦争で「弾切れ」という最悪事態を迎えている。短期間でウクライナを屈服させられると見た誤算が招いた悲劇である。下線部のように、世界の武器の闇市場で部品などを買い漁るという醜態を演じている。これでは、世界2位の武器輸出国もメンツ丸潰れであろう。戦車も足りないと言う。多くを、ウクライナ軍に分捕られているか、破壊された結果である。

     


    (3)「欧米諸国らによる対ロ制裁は、以前から問題を抱えていたロシア軍をさらに窮地に追い込んでいるとも説明。兵員、弾薬、戦車やほかの物資が不足しており、部隊強化などを進めることが一層難しくなっているとした。ロシアは制裁をかわすため代理企業やエリート層を使っているとも主張。その上で中国は大きな助けになっていないとし、「中国はみずから持っていないものをロシアに回すことはできない。中国は最先端の半導体を製造してはいない」と続けた。これら半導体を調達するためロシアが情報機関やダミー企業を動員しているのは、米国の同盟国やパートナー国がこの半導体を手掛けているためだとも説いた」

     

    ロシアは、大量の武器弾薬をウクライナ前線での敗走で置き去りにしてきたことが響いている。ウクライナ軍は、ロシア軍の武器弾薬を押収して、逆に攻撃用に使うという漫画のような事態へ陥っている。ロシア軍の戦車に付いている「Z」マークを消して、ウクライナ国旗をたなびかせているのだ。

     

    中国は、軍事面でのロシア支援が不可能である。米国の「二次制裁」によって、対ロシア並の制裁を受けるからだ。この体たらくの中国が、米国覇権へ対抗すると息巻いている。どう見ても、不釣り合いな振る舞いに見えるのだ。

     

     

     

    テイカカズラ
       

    ロシア軍によって5月29日、制圧された東部ドネツク州リマンは、ウクライナ軍によって9月30日に完全包囲された。勝利は、目前に来ている。ウクライナ軍は、このリマンを奪回した後、6月に陥落した東部ルガンスク州の拠点都市セベロドネツク奪還へ向けた作戦を展開する。リマンは、こういう戦略上において極めて重要な位置にあるのだ。

     

    米国の戦争研究所は9月23日、ロシアからの情報に基づきウクライナ軍が東部ドネツク州リマンの北方約20キロや北西約22キロの地点で、ロシア軍の防衛線を突破したもようだと分析した。ウクライナ軍は、それからわずか1週間足らずでリマンを完全包囲した。この作戦は、三方からリマンを包囲しているもので、米国式の陽動作戦がまたも成功していると指摘されている。

     


    ロシアのプーチン大統領は9月30日、ウクライナ東部4州を「ロシア領」と宣言したが、ドネツク州とルガンスク州の二つは早くもウクライナ軍の奪回作戦に怯えざるを得ないという皮肉な局面に遭遇している。

     

    米『CNN』(10月1日付)は、「ウクライナ軍、東部要衝でロシア軍の包囲進める 補給路断ち」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍は9月30日、同国東部ドネツク州の戦況に触れ要衝リマンでロシア軍を包囲する作戦の完了を図っていると報告した。

     

    (1)「ウクライナ軍の東部作戦管区の報道担当者がCNNの取材に述べた。「ロシア軍は退却を望んでいる。我が軍はあらゆる兵器で打撃を与えている」と述べた。リマンは同州の要衝スラビャンスク市から東方に離れた町で、過去数カ月間、ロシアの占領下にある。ウクライナ軍は過去2週間、北部、南部や西部の3方向からつめ寄り、制圧地域を徐々に固めてきたという。同報道担当者は、ロシア軍がリマン周辺で築いていた武器、装備や兵員などの補給路のほぼ全てをウクライナ軍の砲火の射程内にとらえていると説明した」

     

    ロシアのリマン守備隊は、ウクライナ軍の袋のネズミになっている。補給路が完全遮断されているからだ。降伏か、脱走かの二者択一へ追込まれた。

     


    (2)「ウクライナ国旗が掲げられていることを示す多くの映像が出回っているとも指摘。敵兵力の存在の確認や地雷除去など情勢の安定化を図る措置が講じられた後に、地域の解放を公式に確認することになるとも述べた。リマン周辺にいるロシア軍兵士の人数については様々な推定数字を引き合いに出しながら約5000人とした。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、リマンに残るロシア軍は撤収のためウクライナ側の承認を求めなければならないとの優位な情勢にあることも明かした。「ロシア指導者たちがこれら兵士の安否を気づかうのであればだが」ともつけ加えた」

     

    ウクライナ政府は、リマン攻略情報を伏せている。前回同様に、勝利情報を一挙に公開して、ロシアへの打撃を計算に入れている感じもする。ウクライナは、勝ち戦情報を抑えるという、余裕のある姿勢だ。

     

    (3)「一方、親ロシア派が名乗る「ドネツク人民共和国」トップのデニス・プシリン氏はリマンで自派の武装勢力が「深刻な状態」に直面していることを認めた。SNS上で、ウクライナ軍の攻勢に耐えているとし、増援部隊が投入されているとした。プシリン氏は、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ東部・南部4州の編入宣言に立ち会うためモスクワに滞在。4州にはドネツク州も含まれた」

     

    「ドネツク人民共和国」トップは、すでに自派が深刻な事態に直面していると認めている。詳細は、次の記事で読み取れる。

     


    『CNN』(10月1日付)は、「
    ウクライナ軍、東部リマンを包囲 親ロ派がロシア軍司令部を批判」と題する記事で、ロシア軍の拙速ぶりを浮かび上がらせている。

     

    ウクライナ東部ドネツク州の一部を実効支配する自称「ドネツク人民共和国(DPR)」の親ロ派、イゴール・ガーキン氏はSNSのテレグラムで、ロシア軍司令部の「プロ意識の低さ」を痛烈に批判した。

     

    「ガーキン氏はウクライナ軍が同州東部リマンのロシア軍を実質的に包囲したことに触れ、「我が軍の士気に大きな打撃となる一方、ウクライナ軍にとっては大きな士気向上につながる」可能性があると指摘した。ガーキン氏は2014年の紛争時にDPRの「国防相」だった人物で、現在は親ロ派の宣伝要員や軍事アナリストを務める」

     

    「ガーキン氏は、ウクライナ軍の兵力はロシアや親ロ派の部隊の3~4倍に上ると指摘。火力や航空戦力ではロシアが優勢だが、樹木に覆われた険しい地形では役に立たないとの認識を示した。さらに「なぜ『回廊』の維持や撤退支援に必要な部隊を投入して、前もってリマンからの撤退を確保しなかったのか、私には答えが見当たらない」と指摘。もしロシア軍がリマンから撤退できなければ、「比較的小さな戦術的敗北」にとどまらず、ウクライナ軍の「大きな士気向上」につながりかねないと述べた。また、リマン付近でのウクライナの攻勢について、ザポリージャ州の南部戦線での進軍から注意をそらす陽動戦術の「可能性が高い」との見方も示した」

     

    この記事の中で、ロシア軍の作戦の拙さによって、大きな犠牲が出ることを懸念している。ウクライナ軍の「リマン奪回」は、作戦上もまたウクライナ軍の士気の点でも、一段と勝利に向けた気運を高めるであろう。

     

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