勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: カナダ経済ニュース時報

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    ウクライナ軍は、デジタル機器を利用してロシア軍に対抗し、戦線を有利に動かしている。ロシア軍にはそうした敏捷さがなく、兵士が最前線で携帯を使用して、自らの位置をウクライナ軍に察知され砲撃される事態を招いている。

     

    ロシア国防省は1月2日、昨年12月31日に数百人の新規動員兵の拠点が砲撃を受け、兵士63人が死亡したと発表した。その後、死亡者は80名以上に増えたが、原因はロシア兵が携帯を使用したこととされている。改めて、ロシア軍の規律が乱れていると指摘されているのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月7日付)は、「ロシア軍のミス、ウ駐留部隊を危険にさらすー軍事専門家」と題する記事を掲載した。

     

    軍事アナリストによると、ロシア軍は占領下のウクライナで基本的なミスを繰り返し、自軍兵士を危険にさらしている。ウクライナ軍の大砲の射程内にあるにもかかわらず、自軍部隊の集中地域で携帯電話を使用停止にしなかった、などのミスを犯しているという。

     

    (1)「直近の事例では、ウクライナ東部ドンバス地域のマキイフカ市で、ロシア軍動員部隊の拠点がウクライナ軍に破壊されたケースが挙げられる。米国の駐欧州陸軍の元司令官で、開戦以来ウクライナでのロシアの作戦に批判的なベン・ホッジス氏は「ロシア軍は学習する組織ではない」と指摘。「学ぶためには、まず自分が間違っていたことを認める必要があるが、そのような文化はない」と述べた」

     

    ロシア軍は、これまでのウクライナ侵攻で10万人以上の犠牲が出ている、とされている。このため、実戦経験豊富な将校や下士官を失っており、新規募集の兵士が前線へ出ても基本的事項が徹底されていない憾みがあろう。この意味でも、ロシア軍の態勢立て直しは極めて困難になっている。

     

    (2)「ロシア国防省は2日、数百人の新規動員兵が集結していた拠点が昨年12月31日に砲撃を受け、兵士63人が死亡したと発表した。米国がウクライナに供与した高機動ロケット砲「ハイマース」による攻撃だという。ロシア軍とつながりがあるテレグラムチャンネル「リバル(Rybar)」は3日、この攻撃で「100人超のロシア兵が死亡した」と述べた。ウクライナ国防省は自軍による攻撃とは明言しなかったが、兵士400人が死亡、300人が負傷したと発表した。どちらの発表が実際の数字に近いとしても、ロシア軍が昨年2月24日にウクライナに侵攻して以降、自軍に最大級の犠牲者が出た攻撃になったとみられる」

     

    ロシア軍兵士の宿舎近くに、弾薬庫があったとされる。最前線における緊張感が、欠如していたと指摘されている。これも、有能な将校や下士官の不足がもたらした結果であろう。

     

    (3)「ロシア軍のブロガーや親ロシア派の情報筋からの報告では、いくつかの重大な不手際が指摘されている。特に重大なのは、ウクライナ軍の精密な大砲の射程内に多くの部隊をとどめてしまったことだ。砲撃を受けた拠点は、前線から10マイル(約16キロ)も離れていないところにある。兵舎は弾薬庫の隣にあったとみられる。弾薬庫は2次爆発を起こし、兵舎は倒壊した。オープンソースの情報では、兵士による携帯電話の使用が停止されていないため、部隊が集中していることをウクライナ軍に特定される恐れがあるとも指摘されていた。さらに、親ウクライナ派のパルチザン(ゲリラ戦を展開する非正規部隊)がこの兵舎の特定を手助けした可能性を示唆するブロガーもいた」

     

    ウクライナ軍は情報機器を使って、ロシア軍の動静を探っている。NATO軍からの情報もオンラインで入手できるなど、ロシア軍攻撃では至れり尽くせりの状況だ。ロシア軍は、こういう状況認識が甘かったと言える。

     

    (4)「ウクライナ軍の攻撃を受けた原因として、携帯電話の使用に関する規律欠如が挙げられたのは初めてではない。ウクライナ軍は最近、ヘルソン州のロシア占領地域のサヒ付近(ヘルソン市から20マイル弱)にあるロシア特殊部隊の拠点を攻撃した。ある兵士のソーシャルメディアへの投稿がきっかけで、この拠点が容易に特定されたためだった。攻撃後には同じ兵士が破損施設の写真を投稿しており、ウクライナ側が攻撃の成果を確認するのに役立った可能性がある。これらの投稿例は、米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」のロブ・リー上級研究員がツイートした」

     

    ロシア兵の士気が緩んでいることは確かだ。大義のない戦争に狩り出された不満が、こういう形で噴出しているのであろう。戦場の様子が、SNSに 登場するとは考えられない時代になったものだ。

     

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    カナダは、中国科学者に自国バイオ技術を利用させ、ワクチン開発を行なってきた。ようやくカナダで治験すべく中国から輸送しようとしたところ、中国関税当局に差し押さえられたのだ。これにより、開発計画は宙に浮いてしまい、カナダでの製造計画も消えてしまった。カナダの基礎技術をまんまと利用して「ドロン」という悪質な詐欺同然の事態だ。改めて、中国と契約しても「紙切れ」になるという厳しい現実を突付けられた形だ。

     

    『大紀元』(1月30日付)は、「カナダ、中国バイオ企業とのワクチン開発は『失敗だった』」と題する記事を掲載した。

     

    カナダ政府が中国バイオ企業との間で進めていたワクチン開発プロジェクトは失敗に終わった。カナダ放送協会(CBC)が1月27日に伝えた。

     


    (1)「中国天津市に本部を構える康希諾生物股份公司(カンシノ・バイオロジクス、以下はカンシノ)は2009年、カナダの留学経験を持つ中国人科学者によって設立された。同社はカナダの研究機関に太いパイプを持ち、カナダのバイオ技術を使って、エボラ出血熱のワクチンや中共ウイルス(新型コロナウイルス感染症、COVID-19)のワクチンを開発した。2020年5月、カナダにCOVID-19ワクチンが迅速に供給されるよう、カナダ政府が所管する国家研究評議会(NRC)はカンシノ社との間で契約を結んだ」

     

    中国人科学者が、カナダのバイオ技術を使って中国でワクチン研究を行ないカナダで治験を行えるまでこぎつけた。現在、最先端の「mRNA」ワクチンの開発に関する協力契約であった。中国税関が、「試作品」ワクチのカナダ輸送を許可しなかったのだ。契約違反であることは言うまでもない。「無法国家」中国と契約すると、契約は履行されず基礎技術を無断利用されるという取り返しのつかない結果となる。自由国家では、中国人・中国企業と契約しても無効になるという恐ろしい事実を知らされることになった。

     


    (2)「同報道によると、20年5月、中国軍の研究機関とカンシノ社が開発したワクチンカナダで臨床試験(治験)を行う計画だった。治験が成功すれば、同年夏にモントリオールの工場で生産開始予定だった。NRCのレポートによると、同工場は毎月7万~10万回のワクチン生産を見込んでいた。NRCはこの生産施設に4400万カナダドルを投じるなど、生産体制を構築しようとしていた。しかし、5月にカナダに到着予定だったカンシノ社のワクチンは、中国税関当局によって差し押さえられた。カナダの駐中国大使館は中国の税関当局に対して働きかけたが、拒まれたという」

     

    中国のやりそうな手口である。カナダは、まんまと一杯食わされたのだ。その後、mRNAワクチンが中国で開発されたものの、治験による効能は50%前後と報じられたことがある。このワクチンが、カナダの基礎技術を利用したものかどうかは不明である。それにしても、中国は詐欺まがいのことを行なった訳である。目覚めはよくあるまい。

     


    (3)「マギル大学の安全保障問題専門家、ベン・ファン氏は昨年10月、CBCに対して、「カンシノ社は中国軍と中国政府とつながっている」と指摘した。同氏は、中国当局の命令でワクチンが税関当局に差し押さえられたと推測する。当時、カナダの上級裁判所は、2018年12月に逮捕した中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟被告(当時)の審理で、被告の「起訴内容はカナダで罪に当たらない」とする主張を退け、同被告の米国への身柄引き渡しに向けて審理を続けるとした。ファン氏は、「中国共産党がカンシノ社の真の上層管理者である」と非難した」

     

    契約の履行は、国家間の最低の義務である。中国は、いかなる事情があろうともそれを守らなかった。契約義務の履行は、民主社会の前提である。中国のような専制主義国家には、そういう契約義務の履行という概念が存在しないのだ。中国は改めて、それを世界に知らしめたのである。自分の首を自分で締めている状況である。

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