中国は、習近平氏が国家主席に就任以来の10年間、一帯一路プロジェクトへの高利融資(年利7%以上)で利益を上げてきた。だが今や、焦げ付き債権となって中国を苦しめている。IMF(国際通貨基金)や世界銀行は、こうした状況を放置できず、4月12日、途上国債務問題に関する閣僚級の円卓会議を米ワシントンで開催。日米欧や中国などの債権国、アフリカ諸国を中心とした債務国、民間の債権者らが参加。IMFと世銀は、初めて議長声明を発表し、債務減免協議の加速に向けて連携を強化すると明記した。
発展途上国への最大の貸付国は、荒稼ぎを狙った中国である。だが、債務国の元利返済が困難になると、債務整理の当事者になることを嫌い逃避の形だ。そこで、スリランカの過剰債務問題処理で、日本・フランス・インドなどが調整役を買って出ている。普段、「俺が、俺が」と主役を張りたがる中国が、すっかりかすんでしまっている。
『TBS』(4月14日付)は、「スリランカ救済に向けた債権国間の協調『歴史的快挙』鈴木財務大臣」と題する記事を掲載した。
鈴木財務大臣は、インドやフランスとともにスリランカの債務問題を解決する債権国会合を発足することを発表し、「歴史的快挙」との認識を示しました。
(1)「鈴木財務大臣は「我が国は、フランス、インドとともに、スリランカの債務問題を解決する道を模索してまいりました。このような広範な債権国間の協調体制が生まれることは、歴史的快挙であります」
鈴木財務大臣は、アメリカのワシントンで開かれたメディア向けのイベントでこう述べた上で、協調の枠組みに入っていない最大の債権国・中国を念頭に、「この会合は全ての債権国に開かれている」と強調しました」
メインの貸付国の中国が、顔を出さない債務調整会議というのも珍しいことだ。通常の中国であれば割り込んでくるはず。それが、姿を隠しているのだ。不都合なことになると現れないのでは、「大国外交」とは言えない
(2)「スリランカは中所得国と位置付けられており、G20が低所得国向けに創設した債権国協調のメカニズムが無く課題となっていました。
今後、各国の財務官クラスが集まり、スリランカの債務問題の解決に向けて交渉を開始するとしていますが、最大の債権国である中国を含む枠組みにできるかが歴史的快挙のカギとなりそうです」
スリランカの過剰債務問題(筆頭貸付国は中国)では、日本・フランス・インドが主体になって債務整理案を立てている。この調整で、日本が手際よく進めた結果、フランスから高く評価されることになった。IMFや世銀は、アフリカ訪問の債務問題処理に頭を悩ませている。ここでも、筆頭貸付国は中国だが、例によって責任回避の姿勢である。フランスは、アフリカの旧宗主国だ。フランスは、事情を知り尽くしているだけに、日本と共同でアフリカ諸国の債務整理をしたい意向をみせている。日本の公平性が認められたのであろう。
『時事通信』(4月15日付)は、「アフリカの窮状深刻化、IMF『資金繰り難に直面』」と題する記事を掲載した。
20カ国・地域(G20)や国際通貨基金(IMF)、世界銀行が途上国の過剰債務問題に手間取る中、アフリカ諸国の窮状が深まっている。米欧の利上げで、脆弱(ぜいじゃく)な国ほど借り入れコストが増大。サブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)地域では「2022年春以降、どの国も国際市場でドル建て国債を発行できない」(IMF)状況に陥っている。
(3)「セラシIMFアフリカ局長は14日の記者会見で、「サブサハラ諸国は大きな資金繰り難に直面している」。危機感をあらわにした。アフリカ最大の経済規模を誇るナイジェリアでさえ、ドル建て国債の10年物利回りは12%を超える。セネガルのサル経済相は同日、米シンクタンクの会合で「資金をどこかから得たいが、市場では難しい」と言明。世銀などに優遇条件での融資を増やすよう求めた」
アフリカも、中国の過剰貸付の犠牲国である。中国は、1990年代からアフリカへ接触して貸し付けてきた。先進国を出し抜いて経済関係を深めてきたのだ。それだけに、たっぷりと中国に甘い汁を吸われてきた。今になって、過剰貸付の責任を取らずにスリランカに対するのと同じ姿勢だ。フランスが、日本へ協調を申し入れている背景である。
(4)「IMFによると、サブサハラの低所得35カ国のうち、19カ国が過剰債務を抱えるか、そのリスクに直面する。G20が導入した債務再編を促進する「共通枠組み」の下でも、協議は遅々として進まない。この枠組みで再編を目指すエチオピアのアハメド財務相は11日の世銀会合で、「プロセスに2年以上かかっている。その間、経済の不均衡は拡大した」と訴えた。ゲオルギエワIMF専務理事は13日の記者会見で、債務国と債権者を集めて前日開いた「円卓会議」で「明白な進展があった」と成果を強調。しかし、「協議スケジュールに関する問題では合意はなかった」と明かし、前途の多難さをうかがわせた」
岸田首相は、5月の連休中にエジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークへの訪問を予定している。この訪問で、アフリカ現地の情勢を把握して、G7首脳会議で討論するのであろう。