勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

    テイカカズラ
       


    習近平・中国国家主席は3月20日から22日までロシアを訪問する。プーチン大統領の要請に応じて首脳会談をすることになった。中国は、すでにロシアのウクライナ侵攻を巡って独自の仲裁案を公表しており、習氏がプーチン氏に説明する見通しだ。この首脳会談後、習氏はウクライナのゼレンスキー大統領とオンライン会談に臨む。 

    習氏が、ウクライナ和平提案することには大きな前提があるはずだ。中国は、ロシアへ武器供与をしないこと。また、台湾侵攻を放棄して平和裏の統一を目指すことでなければ、辻褄が合わないのだ。習氏は、そこまで深く考えてウクライナ和平提案をしているのかが問われよう。

     

    『ロイター』(3月17日付)は、「中国はウクライナ和平を橋渡しできるか」と題する記事を掲載した。 

    中国政府は2月24日、ウクライナ危機に関する中国の立場を表明する文書を公表し、ロシアとウクライナがともに歩み寄って全面的な停戦を目指すよう呼びかけた。習近平国家主席は近くロシアを訪れてプーチン大統領と会談する見通しで、ウクライナのゼレンスキー大統領ともバーチャル方式で話し合う機会を設けると報じられている。 

    (1)「中国は伝統的に他国の対立、特に自国から遠く離れた地域の対立には干渉しないという原則を堅持してきた。しかし先週には北京でサウジアラビアとイランの外交関係正常化合意をお膳立てし、習指導部の下で中国は責任ある大国として存在感を示そうとしている、と専門家は分析する。香港城市大学のワン・ジャンギュ教授(法学)は「習氏は、国際社会において少なくとも米大統領と同じぐらい影響力のある政治家とみなされたいのだろう」と述べた」 

    習氏は、世界の大立て者として登場しようと狙っているという見方がある。ゼロコロナに3年間も固守した人物が、にわかに「開明的」人間として世界から注目されたいという欲望を持ち始めたというのだ。

     

    (2)「中国としては、ウクライナ問題で侵略者ロシアの味方をしているとの批判を払しょくすることにも躍起となっている。そこで仲介者を演じるのは、早期の事態打開が見込み薄だとしても、中国にとって「ローリスク・ハイリターン」の試みだともみられている。中国は「ウクライナ危機の政治的解決」と題した文書で、ロシアとウクライナがともに緊張を徐々に和らげて包括的な停戦に至るよう促した。この文書は民間人の保護やあらゆる国家の主権尊重を求めているが、ロシアの侵略行為に対する非難は差し控えた」 

    ウクライナ侵攻を止める和平提案は、平和の使者という好イメージである。和平は実現しなくても「ローリスク・ハイリターン」として得点を稼げるという見立てである。

     

    (3)「米国は、中国は自らを中立的であると示し、和平を求めながら、同時にこの戦争に関するロシアの「作り話」を受け入れて非軍事的支援を行い、軍事支援も検討していると批判した。NATOは、中国はウクライナ問題で仲介者として大きな信頼は置けないと述べた。専門家の見立てでは、サウジ・イランの場合と違って中国がロシアとウクライナを和平交渉の場に引き出すのは難しそうだ。スティムソン・センターの中国プログラムディレクター、ユン・スン氏は、「サウジとイランは実際に対話と関係改善を望んでいるが、ロシアとウクライナは少なくとも今のところそうではない」と指摘する」 

    西側諸国は、中国の動きに疑念を持っている。陰に陽に、ロシアを支持する姿勢を見せているからだ。当事国のロシアとウクライナは、今のところ和平を望む片鱗も見せていない。ウクライナは、占領地の全奪回を目指している。ロシアは、反ナチス追放という「幻」を掲げている状態である。

     

    (4)「中国はロシアにとって最重要の同盟国で、これまでロシア産原油を購入し、西側が門戸を閉ざしたロシア製品に市場を提供してきた。さらに中国はウクライナにも一定の影響力がある。オックスフォード大学のロシア専門家、サミュエル・ラマニ氏は、ウクライナとしても戦後の復興局面で中国から支援を受けられるチャンスを台無しにしたくはないはずだと述べた。ラマニ氏は、2014年のロシアによるクリミア併合以降、中国はウクライナとの貿易を拡大しているし、クリミアをロシア領として承認をしていないとも説明した」 

    ウクライナは、IMF(国際通貨基金)とともに戦後復興計画に取り組んでいる。その際、中国からの資金援助や企業投資があれば、復興への立上がりが楽になる。ここは一応、中国の話だけは聞いておこうという姿勢だ。要するに、「話半分」程度であろう。

     

    (5)「ラマニ氏は、「最も大事なのは、ゼレンスキー氏が中国をことさら挑発してロシアに武器供与をし始める事態を望んでいないということだ」といいう。ロシアと強い結びつきがある中国だけに、仲介者として振る舞っても大いに疑いの目を向けられるだろう。ウクライナ侵攻開始の直前、中国とロシアは「無制限」の友好関係にあると宣言していた。中国は戦争開始以後ずっと和平を提唱しているものの、おおむねロシアの立場を尊重している。つまりNATOが東方拡大路線でロシアに脅威を与え、西側がウクライナに戦車やミサイルを供与することで戦争が激化したという主張だ」 

    ウクライナには、中国を怒らせてロシアへ武器供与させないように、という消極的配慮も指摘されている。また、ウクライナ支援のNATOや米国が、「侵略者を許さない」という姿勢で一貫していることも、中国の話に消極的にさせている。ここで、ロシアへ中途半端な妥協をすれば、いずれ次の獲物を探して軍事行動を起すという危惧の念を深めているのだ。もう一つ、ロシアに「侵略得」という結果を与えれば、台湾侵攻を奨励するようなもの、という警戒感もある。要するに、中ロを同じ仲間と見なしているのである。

     

     

    a0960_004876_m
       


    ロシアのウクライナ侵攻が1年経った。和平への動きはあるのか。ロシア軍は、さらに大軍を戦線へ投入する構えだ。ウクライナ軍は、西側諸国から戦車の供与を受けて奪回作戦への準備中である。こうした中で、英独仏が和平への動きを見せている。 

    終戦は、戦場で決まるとされる。ロシア軍が継戦しても「無駄」という認識を持つには、どうすべきかが焦点だ。その具体策が、NATO(北大西洋条約機構)とウクライナとの防衛協力協定である。ロシアは、ウクライナ側に実質的なNATOという大きな壁を認めれば、戦いの矛を収めるであろうという狙いである。
     

    米国のデビッド・ペトレイアス退役陸軍大将は、終戦の条件として次の点を上げている。『CNN』(2月21日付「米陸軍退役大将に聞く、ウクライナでの戦争はどのように終結するか」 

    「交渉による解決で終わると思う。それはプーチン氏がこの戦争について、戦場においてもロシア国内においても持続不可能だと悟る時だ。ロシアが1年目の戦闘で被った損害は、ソ連時代の約10年間、アフガニスタンで被った水準の何倍にも達する公算が大きい。国内では各種制裁と輸出規制の悪影響が重くのしかかる。一方でそれは、ウクライナがミサイルとドローン攻撃に耐え得る限界に達する時でもある。その際、米国と主要7カ国(G7)はかつてのマーシャルプランのような計画を策定して、ウクライナの復興を支援する。安全保障上の枠組みも鉄壁のものとなる(NATOへの加盟か、それが不可能なら米国主導の同盟がそれを保証する)。安全保障の確約は、復興の取り組みを成功させ、外部からの投資を引き付ける上で極めて重要になるだろう」 

    下線部の指摘は、NATOなどによってウクライナの安全保障を恒久的に行なうことが、ウクライナを納得させる、としている。この構想が、現実に動き始めているのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月25日付)は、「ウクライナ・NATO防衛協定構想 独仏英が提案」と題する記事を掲載した。 

    独仏英3カ国は、ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)との関係強化に向けた協定締結を模索している。ロシアがウクライナの一部領土を占拠し続ける中でも、和平協議に着手するようウクライナを促す狙いがある。独仏英の当局者が明らかにした。 

    (1)「英国のリシ・スナク首相は先週、ウクライナが戦争終結後、国防目的で最新鋭の軍事機器、兵器、砲弾をより幅広く入手できるような協定を交わす計画を示した。その上で、この提案を7月のNATO年次会合の議題にするよう呼びかけた。フランスとドイツもこの構想を支持している。3カ国は、ウクライナの自信を高め、ロシアとの和平協議を促すとみている。ただ、これら当局者は和平協議の開始時期・場所、条件は完全にウクライナ次第だと述べた。スナク氏は24日、西側諸国は戦場でウクライナを「決定的に有利」にする戦闘機などの兵器を提供する必要があると語った」 

    英独仏の3ヶ国が、ウクライナとロシアの和平準備に取りかかるろうとしている。その前に、戦場でウクライナ軍が徹底的に有利になることを前提にしている。戦争終結後、NATOはウクライナへ国防目的で最新鋭の武器で供与する協定を結び安全を保障する。これが、和平案である。

     

    (2)「この3カ国の当局者によれば、こうした表向きの発言とは裏腹に、2014年以降ロシアの支配下に置かれているクリミアとウクライナ東部からロシア軍を駆逐できるかとの疑念が英仏独の政治家の間でひそかに強まっている。特に紛争が膠着状態に陥った場合は、ウクライナへの軍事支援をいつまでも継続できないとの見方がある。あるフランス当局者は「われわれはロシアを勝たせてはならないと繰り返しているが、それはどういう意味だろうか。これほど激しい戦争が長く続けば、ウクライナも損害に耐えがたくなる」とし、「クリミアを奪還できると考えている人は皆無だ」と話した」 

    英独仏は、ウクライナによるクリミア半島奪回を困難視している。クリミア半島奪回まで戦えば、戦争が長引くからだ。

     

    (3)「こうした論調は、ロシアの侵略に対する結束を呼びかけたジョー・バイデン米大統領をはじめとする今週の西側首脳の公式発言とは著しい対照をなす。ウクライナが近くロシアと協議を開始するという見込みに触れた西側の首脳はいなかった。米当局者はNATOの安保協定についてのコメントを避けた。米政府は、ロシアによる将来の攻撃を十分抑止できるよう、ウクライナが戦争終結後に防衛力を強化することが望ましいとの考えを示してきた。ドイツ政府はコメントを拒否した。英仏政府の報道官は現時点でコメントの要請に応じていない」 

    米国は、侵略者に利益を与えてはならぬという立場である。英独仏とは、この点で、食い違がっている。

     

    (4)「複数の関係者によると、エマニュエル・マクロン仏大統領とオラフ・ショルツ独首相は今月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談で、ロシアとの和平協議の検討を促した。マクロン氏はパリの大統領官邸(エリゼ宮)での夕食会で、フランスとドイツのような旧敵同士でさえも戦後は和解したと、ゼレンスキー氏に冷静なメッセージを伝えた。また、ゼレンスキー氏は戦時下の優れた指導者だが、ゆくゆくは政治家として難しい判断をする必要があると伝えた 

    下線部は、意味深長である。ウクライナが、どの時点で戦いを終わらせるか、という政治判断を強調している。 

    (5)「ある英当局者の話では、NATOとの協定のもう一つの狙いは、ロシア政府の想定を変えることだ。ウクライナへの軍事支援を長期的に強化する用意が西側にあると見れば、ロシアも自国の軍事目標の達成は難しいとの結論に至るとの読みがある」 

    NATOが、ウクライナと防衛協力協定を結べば、ロシアも長期の戦いの無益を悟るであろうとしている。ただ、ロシアはこれをどう捉えるかだ。

     

    あじさいのたまご
       


    ウクライナのレズニコフ国防相は2月5日、2月後半にロシアの新たな大攻勢が予想されるとして、ウクライナ側は備えを固めていると記者会見で話した。以下は、英国『BBC』(2月6日付)が伝えた。

     

    「レズニコフ国防相は記者会見で、ロシアの攻勢開始までに、西側諸国が提供を約束した武器のすべてが届くわけではないものの、ロシア軍を抑えられるだけの備蓄はウクライナ側にあると話した。ロシアは、大攻勢開始に必要な軍備をすべて用意できているわけではないものの、開戦1周年となる2月24日を念頭に、象徴的な意味も込めて大攻勢に臨むかもしれないとの見方を、レズニコフ氏は示した」

     
    ウクライナ国防相は、「ロシアは、大攻勢開始に必要な軍備をすべて用意できているわけではない」と足元を見透かした発言をしたが、英国防省はこれを裏づける見解を表明した。
     

    『日本経済新聞 電子版』(2月8日付)は、「『ロシア軍、大規模攻撃へ戦力不足』英国防省など指摘」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアが2月中にも大規模な攻撃を始めるとの警戒が広がる中、英国防省は7日「(ロシア軍には)攻撃のための弾薬と機動部隊が不足している」との分析を発表した。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)やロシアの強硬派の間でも作戦を疑問視する声が出ている。

     

    (1)「ウクライナや欧米諸国の間では、侵攻開始から丸1年となる2月24日の前後に、ロシア軍が大規模な攻撃を仕掛けるとの見方が多い。ウクライナ国防省は、ロシアのプーチン大統領が3月末までにドネツク、ルガンスクの東部2州の全域を占領するよう命令したと分析している。ただ、こうした目標の早期達成は「非現実的」だとの見方が少なくない。英国防省は7日にSNS(交流サイト)のツイッターで発表した戦況分析で、ロシア軍の戦力不足に言及し、「今後数週間以内に戦争の動向に実質的な影響を与える戦力を整えられる可能性は低いままだ」と指摘した」

     

    ロシアは、2月24日の開戦1年を期して大攻勢を掛けるという噂が飛んでいる。動員兵の約20万人が訓練を終わって、前線へ投入されるだろう、というのが根拠になっている。だが、英国防省は下線のように、この大攻勢説に否定的である。ロシア軍の戦力不足が深刻だとしている。

     

    (2)「米国の戦争研究所も7日に公表した戦況分析で、「ロシアの指導部はロシア軍の戦力について誤った想定に基づいて決定的な攻撃を再び計画している可能性がある」と改めて否定的に評価し、同日の英国防省の戦況分析におおむね同意した。ロシアの強硬派で2014年の東部紛争で親ロシア武装勢力を組織したとされるイーゴリ・ストレルコフ氏は5日までに、大規模な攻勢について「成功は疑わしい」とネット上で指摘した。「新たな動員なしにウクライナ軍を粉砕することはできない」として、ロシア軍幹部に作戦の見直しを促した」

     

    米国の戦争研究所も、英国防省と同一の見解である。ロシアの強硬派も同じ立場としている。2~3月は、雪解けで戦車を思うように動かせない特殊事情がある。ロシアが、昨年の開戦時に大敗したのは、雪解けが障害になったのだ。同じ失敗を繰返さないであろう。

     

    (3)「ロシア軍は想定される大規模な攻撃を前に、ドネツク州の交通の要衝バフムトの攻防で多大な兵力損失を被り、なお制圧できていない。ウクライナ軍の東部の本拠地はドネツク州北部のクラマトルスクやスラビャンスクにあり、防御態勢を固めている同国軍を攻略するのは容易ではない。一方、ウクライナ軍はロシア軍の大規模な攻撃を耐え、戦地が泥沼化する春を待つ戦略だ。欧米による戦車供与など強力な軍事支援を受けて反転攻勢に出る方針で、ゼレンスキー大統領は7日夜のビデオメッセージで「敵のすべてのシナリオに対応し、国家を守る」と訴えた」

     

    ウクライナ軍は7日、ロシア軍の死者数が過去24時間で1030人に上ったと発表した。侵攻開始後で最多となり、この2日間の死者数は1900人になったとしている。ウクライナや西側諸国によると、ロシアは侵攻開始から丸1年となる24日までに新たな戦果を上げるため、東部に軍や傭兵を投入しているという。『ロイター』(2月8日付)が伝えた。

     

    ロシア軍の攻撃は、人海戦術になっている。ウクライナ軍の弾薬を使い果たせるために、「人間の盾」としてロシア兵を前線に立たせているというもの。この状況では、大攻勢を掛ける戦術そのものに疑問符がつくのであろう。

     

    caedf955
       

    ウクライナのレズニコウ国防相は2月5日、ウクライナ東部の要衝バフムトについて、「依然として象徴だ」と述べた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、昨年末の訪米時に米議会で、「バフムトの戦いは、独立と自由のための戦争であり、悲劇的な物語を変えるだろう」と述べた。この言葉通り、今もバフムトの戦いは続いている。

     

    ロシア軍は、正規軍や民間軍事会社ワグネルの傭兵を投入してバフムト攻略を続けている。ロシア軍が、多くの犠牲者を出しながら攻略できない理由は、ウクライナ軍の高い士気による反撃もさることながら、バフムトという地形が「天然の要塞」になっていることも大きく影響している模様だ。

     

    米『CNN』(2月7日付)は、「東部バフムト、天然の防御で『難攻不落の』要塞に ウクライナ軍司令官」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ陸軍の司令官は6日、同国東部の都市バフムトについて、天然の防御により「難攻不落の要塞(ようさい)」になっているとの見方を示した。

     

    (1)「陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は、SNSのテレグラムで「この地域ならではの地理的な特徴がある。当該の都市は圧倒的な高台や丘に囲まれ、街自体が敵にとって罠(わな)になっている」と述べた。シルスキー氏によると、ウクライナ軍は天然の地形に沿って障害物を設置。それが現場の地域を難攻不落の要塞にし、数千人の敵が死亡する状況になっているという。「我々はあらゆる選択肢を用いる。技術的な能力のみならず自然の機能も活用して、敵の最もすぐれた部隊を撃滅する。戦闘は続いている」(シルスキー氏)と指摘」

     

    ロシア軍は、人海戦術による攻撃を繰返している。最も古典的な戦い方と言われている。この人海戦術には、ワグネルが集めた囚人部隊が投入されており、文字通り「屍を超えて」という悲惨な戦い方である。ウクライナ軍は、バフムトの高台に陣地を構えているので、天然の城(要塞)に守られている。

     

    (2)「ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、「バフムトで降伏する者は1人もいない。我々は可能な限り戦うだろう」と述べていた。ロシア民間軍事会社「ワグネル」のトップ、エフゲニー・プリゴジン氏は5日、バフムトでは戦闘が続いており、ウクライナ軍に退却の兆候は見られないとテレグラムで明らかにした」

     

    攻撃側のワグネル創設者プリコジン氏は、このバフムト戦が「困難な戦い」であることを認めたテレグラムを公開した。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(2月7日付)は、「ワグネル創設者プリゴジン、バフムトでの苦戦を認める」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジンは25日、激戦が続くウクライナ東部の要衝バフムトの戦況について、ウクライナ軍を退却させるに至っていないことを認めた。ウクライナ軍は撤退も近いと言われたが、それは嘘だったのだろうか。

     

    (3)「プリゴジンは、「状況を明確にしたい。ウクライナ軍はどこからも撤退はしていない。ウクライナ軍は最後の最後まで戦い続けている。アルチョモフスク(バフムトのこと)の北部ではすべての街路、すべての住宅、すべての吹き抜け階段で、激しい戦闘が行われている」とテレグラムに投稿した。「もちろん、メディアがウクライナ軍の撤退を期待するのはありがたいが、北部でも南部でも東部でも(撤退は)起きていない」と指摘」

     

    バフムトは、数カ月間にわたってロシア軍の集中攻撃の対象となり、無数の砲撃にさらされてきた。バフムトの制圧を目指すロシア軍は、まだ勝利宣言するには至っていない。

     

    (4)「米シンクタンクの「戦争研究所」が5日に発表したレポートによると、ロシア部隊は「バフムトとブフレダルの周辺では攻勢を続けているが、ドネツク市西郊における攻撃のペースは落ちている」という。またレポートは、「ロシア軍の正規部隊、予備役、ワグネルを合わせ、バフムトの制圧に向けて(合わせて)数万人規模の部隊が投入されているが、すでにかなりの人的被害が出ている」としている」

     

    ロシア側は、バフムト攻略で数万人規模の兵員が投入して、多大の犠牲者を出している。これは、今後の大攻略戦に大きく響くことになろう。昨年10月、ロシア軍は大敗走したが、その再現が起こりかねないほど、バフムトに執着している。これでは、他の戦線で大穴を作りかねないだろう。

     

    (5)「米シンクタンク、ディフェンス・プライオリティ―ズで大規模戦略プログラムのディレクターを務めるラジャン・メノンは5日、本誌にこう語った。「ワグネルとロシア正規軍の合同部隊は何カ月にもわたってバフムトとソレダルを攻略しようとしてきたが、人数と火器、特に砲撃力に勝っているにも関わらず、最近になってようやくソレダルを制圧できたに過ぎない」

     

    ワグネルは特に、大きな人的被害を出している。中でも、プリゴジンが恩赦を約束して戦いに駆り出した不運な元受刑者たちの犠牲が大きい、という

     

    (6)「目下、ロシア軍はバフムトを3方向から包囲しているように見える。ならば、なぜウクライナ軍はここまで踏ん張っているのか。ウクライナ軍の狙いは、この戦いをできるだけロシア軍にとって犠牲の多いものにすることと、(敵の)部隊を足止めしてよそで使えないようにするなり、ドンバスの西側のウクライナ支配地域まで追いやることだ。血みどろの戦いだが、ウクライナ軍の士気を高めるとともに、ロシア軍の軍事的能力の低下につながっている

     

    下線部は、ウクライナ軍がバフムトを死守している理由を明確にしている。天然の要塞を利用して、ロシア側を引きつけ消耗戦を強いることである。ロシア軍は、この戦術に嵌り込んでいる印象だ。

     

    a0960_005040_m
       

    ウクライナは、膠着した戦線打開を目指して戦闘機と長距離砲の供与を西側諸国へ求めている。米国は拒否姿勢を示したが、フランス大統領マクロン氏は、「排除せず」と含みを持たせる発言をしている。ウクライナは、最も弱点である戦闘機の供与があれば、膠着した戦線突破への手がかりとなろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(2月1日付)は、「マクロン氏、ウクライナへ仏戦闘機供与『排除せず』」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナがロシアの攻撃に対抗するのを支援するために欧米諸国が軍事支援の次のステップを検討するなか、フランスがウクライナへの戦闘機供与に前向きな姿勢を示した。「本来的に、何一つ排除されない」。フランスのマクロン大統領は1月30日、訪問先のオランダ・ハーグでの記者会見でこう述べた。ウクライナから戦闘機供与の要請は受けていないと付け加えた。

     

    (1)「米国とドイツが先週、主力戦車をウクライナに供与する決定を発表して以来、ウクライナを支援する国々の関心は、米戦闘機「F16」、もしくは欧米製の他の戦闘機を供与する可能性に集まっている(フランスはまだ戦車の供与を決めていない)。ウクライナの政府高官は、より先端的な航空機は防空体制を強化して、ロシア軍の攻撃を撃退し、春の新たな攻撃に備えるために役立つと話している」

     

    ロシア軍の春先の攻撃が予測されるだけに、ウクライナは、兵器拡充に躍起となっている。戦車は理想通りに手当できたので、次は戦闘機の供与を求めている。

     

    (2)「米国のバイデン大統領は30日夜、ウクライナへのF16戦闘機の供与を否定し、最大の支援国である米国がジェット戦闘機の供与を先導するというウクライナ政府の期待に水を差した。協議について説明を受けた2人の政府関係者によると、フランス政府は欧州諸国の政府に対し、ジェット機を含む追加の兵器システムを送ることが検討議題に上っていることを伝えた。すぐに決定される可能性は低い。その関係者によると、フランス政府は、以前からの防空・ミサイル防衛システムの供与に加え、戦車を供与して戦車の使い方についてウクライナ軍を訓練する新たなプロジェクトに重点を置いている」

     

    フランスは、自国製戦闘機の供与の可能性を認めている。

     

    (3)「ウクライナのレズニコフ国防相は、31日に仏パリでマクロン氏と仏国防相と会談し、ジェット機について話し合ったことを認めた。「飛行機の具体的な名前やタイプ」には触れていないと述べた。レズニコフ氏は、バイデン氏の発言を深刻には受け止めておらず、榴弾砲や戦車の場合と同様、時間がたてば、支援国が折れる可能性があると指摘した。「我々が要請を出したとき、最初はすべてノーという答えが返ってくる。だが、いずれ近代的なジェットプラットフォームを入手できると確信している」と指摘」

     

    ウクライナは、米国がF16戦闘機の供与に「ノー」としたことに落胆していないという。米国は、一度は断るが二度、三度の交渉で受け入れているからだ。戦車の提供と同様に、最終的にはF16を供与してくれるものと期待している。

     

    (4)「マクロン氏は、オランダのルッテ首相との会談後の記者会見で「我々は、噂ではなく、ウクライナからの要請に基づいて判断する」と語った。ウクライナ政府は高度な中距離防空システム「SAMP-T」を手に入れるためにフランス、イタリア両政府と交渉に入っている。これは米国の地対空ミサイルシステム「パトリオット」と似たシステムで、弾道ミサイルを撃ち落とすことができる」

     

    マクロン氏は、ウクライナの要請には現実的対応をするとしている。可能な場合は、積極的に応じるというもの。

     

    (5)「防衛アナリストは、マクロン氏が戦闘機の供与を決めた場合、フランスは戦闘機「ミラージュ」の古いモデルをウクライナに送ると予想している。ミラージュは仏ダッソー・アビアシオンによって製造されており、フランスは昨年の年初時点で「ミラージュ2000」を106機運用していた。全機が2030年までに第5世代の戦闘機「ラファール」に置き換えられることになっている」

     

    フランスは、「ミラージュ2000」を106機運用しているが、全機が2030年までに第5世代の戦闘機「ラファール」に置き換えられる。この退役戦闘機「ミラージュ2000」を順次、ウクライナへ供与する可能性を示している。

     

    (6)「フランスは昨年6月に、「ミラージュ2000C」を14機退役させた。これらをウクライナに供与すればフランス軍の能力は落ちない。今後数年で、さらに26機の要撃機「ミラージュ2000-5」を段階的に退役させる予定になっている。フランスは戦闘機を自国で生産していることから、輸出に当たって第三者の承認を得る必要がない。欧州数カ国の軍隊がF16を運用しているが、これらの戦闘機をウクライナに送るには米国からの承認が必要になる。前出の欧州当局者の一人は、そのためにフランス製戦闘機が明らかな候補になると語った」

     

    フランスは、退役した「ミラージュ」をウクライナへ供与しても良いという可能性を示している。すでに退役した「ミラージュ」14機が候補になるか、だ。

    このページのトップヘ