勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       

    トランプ米大統領は6日、ウクライナ戦争の解決は「人々が思っている以上に近づいている」と述べた。今週、トルコで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議での協議の場で、ウクライナ問題を取り上げる考えを示した。トランプ氏は、「ロシアのプーチン大統領は圧力を感じている。われわれは協議を続けており、戦争を終わらせられるか見極める」と語った。また、この件に関して「非常に良い電話会談を行った」とも述べた。以上、ロイターが6日報じた。

     

    トランプ氏が挙げた、「ロシアのプーチン大統領は圧力を感じている」は、ウクライナによる攻撃でガソリン不足が全土で起っていることを指している。ロシア国民の間で不安と不満が高まっており、プーチン氏も決断を迫られている。

     

    『CNN』(7月6日付)は、「ロシアの燃料危機、ほぼ全土に広がる ウクライナのドローン攻撃が激しさ増すなか」と題する記事を掲載した。

     

    CNNの分析によると、ロシアの83地域のほぼすべてでガソリン不足が生じているか供給の混乱が報告されている。多くのガソリンスタンドが給油制限を導入する中、ロシア政府は同国の製油所を標的にしたウクライナの猛烈なドローン(無人機)攻撃の阻止に追われている。燃料危機は、まずロシア支配下のクリミアで深刻化し、6月21日に非常事態宣言が発令され、一般市民への燃料販売が全面的に禁止された。その範囲は現在、ロシアの11のタイムゾーンすべてに及んでいる。

     

    (1)「CNNは各地域の首長らの公式声明に加え、全国・地方メディアの報道を分析した。その結果、ロシアの国際的に認められている地域のうち50超が供給の問題を公式に報告しており、非公式にはほぼすべての地域で混乱が伝えられていることが分かった。東部のイルクーツク州やザバイカル地方を含む少なくとも3地域は、非常事態の1段階下にあたる「高度警戒態勢」を宣言している」

     

    東部のイルクーツク州やザバイカル地方でも、非常事態の1段階下にあたる「高度警戒態勢」を宣言している。クリミア半島の非常事態に次ぐ事態だ。

     

    (2)「ロシアのプーチン大統領は5日、国営テレビの長時間インタビューで「現在、一定の不足が見られるが深刻なものではない」と主張した。これは、すべてが制御下にあると国民を安心させるために仕立てられた、急ごしらえのPR活動の一環のように見えた。ただ、プーチン氏が最も喫緊の課題について「防空システムの生産を迅速かつ大幅に増やすこと」だとした発言は、あまり安心材料にはならなかったかもしれない。これは、ウクライナの攻撃に対するロシアの脆弱(ぜいじゃく)性が高まっていることを明確に示すものだった」

     

    ロシアの防空体制は、ウクライナのドローン攻撃を防げないほど脆弱化している。完全に、攻守ところを変えている。

     

    (3)「ロシア国民の順応性も試されている。CNNの分析によると、ロシア各地のガソリンスタンドは購入制限を課しており、給油に最適な場所を探せる燃料追跡サイトも登場している。給油を待つ車の列が長くなるにつれ、人々の間では緊張が高まっている。SNSに投稿された動画では、クリミアに隣接するロシア南部の都市クラスノダールで車の後部に積んだ容器に給油する男性を2人の女性がルール違反だと非難している。燃料の買い占めを防ぐため、ロシアの複数の地域では19リットル程度の大型容器の使用は禁止されているのだ」

     

    ロシアの複数の地域では、19リットル程度の大型容器の使用は禁止されている。買い溜め防止である。これを巡って、市民同士のいざこざも起っている。

     

    (4)「国民にどの程度不安が広がっているかをはかることは不可能だが、プーチン氏もこの状況を懸念しており、国営メディアのインタビューで攻撃の目的について「我々に不確実性を生み出すこと、あるいはさらにロシア社会を分断すること」だと警告するほどだった。欧州政策分析センターの上級研究員、アレクサンダー・コリアンドル氏は燃料不足について二面性を持つと指摘する。「国民感情を直撃し、インフレにも打撃を与える」と」

     

    ガソリン不足は、国民に不安感を煽ると同時に、インフレをもたらしている。産油国ロシアが、意外な脆弱性を見せつけている。

     

    (5)「ロシアメディアは、給油所で最大18時間待つ人もいると報じている。インターネット上では、前に進まない車の横に飲み物やシーシャのパイプを置いたテーブルを広げる人々を描いたミームも登場している。首都モスクワでさえ、ガソリンスタンドの外にまで乗用車やトラックが列をなす異様な光景が広がっている。給油できる保証もないまま、何時間も待つ運転手もいる。モスクワでは、先月18日にウクライナが実施したドローン攻撃を受け、不安が高まっている。この攻撃は、ロシアが全面侵攻を開始して以降最大規模で、南東部カポトニャの製油所を狙った攻撃としては1週間足らずで二度目だった。迎撃は大規模な爆発を招き、燃料タンクの屋根が派手に吹き飛んだ」

     

    給油所では、最大18時間も待たされる人が出てきた。事態は、深刻である。こうなるとプーチン政権も国民へお座なりな説明で済まなくなってきた。停戦への決断が迫られる理由である。

     

    (6)「ロシアには、この危機に対処する手段がまだ残されている。しかし、専門家らはCNNに対し、その選択肢は狭まりつつあると語る。プーチン氏は、政府が取り組んでいる措置を列挙した。製油所の計画保守期間の短縮から、軽油輸出禁止の検討、輸入拡大などだ。しかしウクライナの攻撃が今のペースで続けば、その正常化は実現しない可能性がある。そして燃料不足によるインフレ進行と消費低迷という経済リスクは、これ以上ないほど悪いタイミングで訪れている。イランと米イスラエルの戦争の最初の数カ月で急騰した原油価格は現在下落しつつあり、ロシアが輸出で得る利益の増加によって拡大する財政赤字を埋める機会は閉じつつある。ロシア経済はすでに停滞しており、その一方で国防支出は増え続けている」

     

    ロシアは、燃料不足によるインフレ進行と消費低迷に加えて、ホルムズ海峡の通過が可能となり原油価格の値下がりに見舞われている。値下がりは、ロシア原油の輸出減となって経済へ跳ね返る。プーチン氏も「年貢の納め時」となった。

     

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    原油産出国のロシアが、皮肉にもガソリン不足に直面している。ウクライナのミサイルとドローン攻撃によって、製油所が機能不全に陥っている結果だ。ロシア当局はこれまで、燃料不足の原因として投機家やパニック買いを挙げてきた。プーチン氏は、6月28日に初めて燃料不足が現実のものであることを認めた。原因が、ウクライナ攻撃であることを間接的に臭わすことになった。

     

    『ウォールストリート・ジャーナル』(7月1日付)は、「ロシア全土に燃料不足拡大、プーチン氏は政治危機に直面」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア全土に燃料不足が拡大し、プーチン大統領にとって新たな政治的課題となっている。ウクライナによるロシアの製油所を標的とした執拗なドローン攻撃で、多くの一般市民にとって戦争は身近なものとなった。

     

    (1)「ウクライナは長年にわたりロシアのエネルギー施設を標的にしてきたが、ウクライナのドローンとミサイルの数と破壊力は増大している。同国政府は1200マイル(約1900キロ)離れたシベリアのチュメニにある製油所を攻撃できるようになった。また、6月18日に強固な防空網を突破してモスクワの主要製油所を破壊したことが転換点となった。ロシアの石油会社ガスプロムネフチの元戦略責任者で、現在はドイツのベルリンにあるカーネギー・ロシア・ユーラシアセンターのシニアフェローを務めるセルゲイ・バクレンコ氏は、6月20日時点でロシアの製油能力の約28%が停止していると推計している」

     

    ウクライナは、自力でミサイルやドローンを開発しており、強固な防空網を突破してモスクワの主要製油所を破壊するまでになっている。これは、ロシアにとって「重大事態」の幕開けになろう。ロシアの製油能力の約28%が、6月20日時点で停止している。

     

    (2)「バクレンコ氏は「これは全て、ウクライナが発射できるドローンの数が急増したことによるものだ」と指摘。 問題はもはや物流上の困難や市場の不均衡ではなく、「燃料の物理的な不足にある」と述べた。ロシア大統領府のペスコフ報道官は6月30日、ロシアが数十年ぶりに燃料の輸入を開始する計画だとし、複数の国と交渉中だと述べたが、国名は明かさなかった。すでに戦費で逼迫しているロシアの財政をさらに圧迫することになる」

     

    ロシアが、数十年ぶりに燃料の輸入を開始する計画で複数の国と交渉中である。自国で原油を産出しながら、ガソリンを輸入する羽目に陥った。この事態を国民はどう評価するかだ。ウクライナ侵攻を失敗と受止めれば、プーチン神話にも陰りが出るであろう。

     

    (3)「かつて世界有数の石油製品輸出国だったロシアは、ウクライナの攻撃が激化する中、ガソリンとジェット燃料の輸出を数カ月にわたり禁止してきた。プーチン氏は6月28日、ディーゼル燃料の輸出禁止も検討していると述べた。ロシアでは燃料不足が全土で発生しているが、広大な国土の中で地域によって状況は異なる。プーチン氏が2022年に始めた戦争の影響を通常受けにくいモスクワでも、ここ数日間で多くのガソリンスタンドが閉鎖された。営業中のガソリンスタンドでも、数時間待ちになることが多い」

     

    モスクワは、ここ数日間で多くのガソリンスタンドが閉鎖された。営業中のガソリンスタンドも、数時間待ちという事態になっている。戦争の影が、モスクワにまで及ぶことによって、モスクワ市民も安閑としていられなくなった。

     

    (4)「シベリアや北カフカスなどでは、住民が給油のために一晩以上待ったケースも報告されている。シベリアのイルクーツクでは、政府が何キロにも及ぶ給油待ちの列の近くに仮設トイレを設置し始めた。ロシアの多くの地域で携行缶へのガソリンの給油が禁止され、1回の給油量は5ガロン程度に制限された。ロシアのディーゼル精製能力は元々高かったため、ディーゼル燃料不足はまだそれほど深刻ではない」

     

    ロシアの地方では、モスクワ以上のガソリン不足に直面している。シベリアのイルクーツクでは、政府が何キロにも及ぶ給油待ちの列の近くに仮設トイレを設置し始めた。

     

    (5)「緊張は高まっている。ロシア西部オリョール州政府は、燃料販売を地元登録車両のみに限定し、給油は週1回に制限する計画だ。クラスノダール地方のガソリンスタンドでは、地元住民と、ウクライナのドローン攻撃を受けて燃料販売が全面的に停止されたクリミアから給油に来たドライバーとの間で乱闘騒ぎが起きている。クラスノダールの主要製油所の一つが6月28日に爆破された」

     

    ロシア西部オリョール州政府は、燃料販売を地元登録車両のみに限定し、給油は週1回に制限する。ここまで来ると、必ず「戦争反対」という事態にまで発展するであろう。すでに4年4ヶ月も無益な戦争をしていることで、国民が「厭戦気分」なるのは自然であろう。

     

    (6)「ロシア独立紙ノーバヤ・ガゼータなどのアナリストで、モスクワを拠点とするアンドレイ・コレスニコフ氏は、「燃料をめぐる社会的危機は明らかに存在し、政治的な問題に発展する可能性もあるが、今のところ深刻な事態には至っていない」と述べた。「これは、いら立ちへと変わる疲弊感を強めている。しかし人々には状況を変える手段がないため、当局への不満や戦争が終わらないことへの不満を漏らすだけだ」と語った。燃料不足が常態化する中、9月に予定されているロシアの議会選挙に向けた政治活動が本格化している。自由で公正な選挙を期待する声はないが、選挙はロシア国民が静かに不満を表明する場となっている」

     

    9月に予定されているロシアの議会選挙は、燃料不足が常態化する中で迎える。国民は、どういう意思表示するのか。国民の良識が問われている。

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    ロシアの大学キャンパスは今、ウクライナ戦争で膨大な兵士を失った「穴埋め」に、強引な徴兵戦術が行われている。学生を兵士に仕立てて前線へ送るのだ。戦時中の日本が行った大学生の繰上げ卒業による「学徒動員」である。「大学の『トップ』たちは今、学生たちに戦争に行くよう呼びかけている」、「大学中に無人機部隊関連のポスターが貼られている。 文字通り至る所に」「圧力が凄まじい」という生々しい声が、CNNの取材で分かったという。

     

    『CNN』(4月20日付)は、「ロシア、大学生を兵役募集の標的に 『凄まじい』圧力 との証言も」と題する記事を掲載した。

     

    こうした証言や増え続ける公開情報から得られる証拠は、ロシアが学生に対してドローン(無人機)部隊への加入を誘引、強要するキャンペーンを密かにエスカレートさせていることを示唆している。このような動きはロシアの教育制度に緊張をもたらす恐れがあるとともに、ロシア政府の抱える課題の深刻化を浮き彫りにする。具体的にはウクライナでの4年に及ぶ戦争に向けた兵員の確保だ。

     

    (1)「戦場での損失が拡大しているにもかかわらず、クレムリン(ロシア大統領府)は2022年秋に実施した悲惨な「部分動員」の二の舞を何とか回避してきた。この時は数十万人の男性が国外逃亡する事態を引き起こしている。しかし専門家によると、学生に特化した今回の動員は、より強硬な徴兵戦術が再び台頭しつつあることを示す兆候の一つだという。これまでの取り組みとは異なり、学生たちには1年間の有期契約、前線から遠く離れた場所での勤務、そして先端技術の習得の機会が約束されている。しかし、専門家や弁護士らはCNNに対し、これは実際には標準的な無期限の軍契約を隠すための口実である可能性が高いと指摘する。また、約束された特典に懐疑的な学生が多いことから大学側は強制や脅迫に訴える形で、学生を入隊させようとしているという」

     

    学生が、入隊条件に疑問を抱いているので、大学側は強制や脅迫して入隊させようとしている。悲劇的だ。

     

    (2)「CNNは、大学のウェブサイトやソーシャルメディアのページ、地元メディアの報道を分析し、ロシア国内の複数の学生への取材を通じて、広範かつ多面的な学生勧誘キャンペーンが行われている証拠を突き止めた。この取り組みが本格的に始まったのは、今年1月のようだ。その2カ月前にはロシア国防省が無人航空機(UAV)やドローンを用いた戦闘を専門とする新たな軍種「無人システム部隊」の創設を公式に発表している。ロシア全土の大学は、洗練された募集動画やポスターを次々とソーシャルメディアアカウントに掲載し始めた。一部の大学のアカウントでは、ロシアのいわゆる「特別軍事作戦(SMO)」に従事した兵士や退役軍人による対面講義が紹介されることさえあった」

     

    学生募集は、今年1月から始まった。ロシア全土の大学が、洗練された募集動画やポスターを使い募集している。

     

    (3)「サンクトペテルブルク国立大学(ロシアのプーチン大統領の母校)は、ウェブサイト上でこれらの契約を公然と宣伝。大学関係者や軍関係者が入隊のメリットを詳述する長時間の講義動画も併せて掲載している。25年のフォーブス誌によるロシアの大学ランキングで2位にランクインしたモスクワの国立研究大学高等経済学院(HSE)は、2月に「無人システムフェスティバル」を開催。そこでは同国のドローン部隊の募集ポスターが堂々と掲示されていた」

     

    サンクトペテルブルク国立大学も、学生募集の対象になっている。モスクワの国立研究大学高等経済学院も募集が掛っている。

     

    (4)「ベルリン在住のロシア人軍事弁護士アルテム・クリガ氏は、ロシア国防省が大学に対し、このキャンペーンの実施方法について具体的な指示を出したと主張している。同氏はSNSテレグラムの自身のページに、モスクワのある大学から受け取ったとする文書を公開している。その中には、「連邦公立高等教育機関の軍事訓練センター長」宛ての通達書が含まれており、そこでは「国防省の代表者と共同で学生向けのキャンペーンを組織し、(中略)国防省人事総局に毎日報告すること」が求められている。この「指針」には、男女を問わず学生に提供されるインセンティブが詳述されており、その中には「敵の砲火にさらされるリスクが低い」ことや、「独自の知識と技能の習得」などが含まれている。CNNが分析した大学の募集資料も、まさにこうした具体的な提案を明記している。

     

    男女を問わず学生に募集を掛けている。募集には、「独自の知識と技能の習得」という殺し文句が入っているという。

     

    (5)「これらの文書は多額の金銭的インセンティブにも言及する。連邦および地方自治体からの入隊ボーナスは1人あたり40万ルーブル(約5000ドル=約793000円)以上とされている。一部の大学ではこれよりも格段に高い金額を提示。サンクトペテルブルク国立大学は軍に入隊する学生に対し、約56000ドルの一時金を約束している。「金銭面だけが、実現する可能性の高い唯一の約束だ」とクリガ氏。CNNの取材に対し「(それ以外の)すべては嘘(うそ)だ。これはロシア軍との単純な契約であり、期限も特別な条件もない」と語った」

     

    入隊ボーナスは、1人あたり40万ルーブル(約80万円)という。これだけは正しくても、後の入隊条件は「全部ウソ」と手厳しい批判が投げかけられている。

     

     

    あじさいのたまご
       

    ロシア軍のクゾブレフ上級大将は11月下旬、プーチン大統領にウクライナ東部ハルキウ州クピャンスクの「解放を完了した」と報告した。クピャンスクは、小さいながら戦略的に重要な要衝だ。その後プーチン氏は、ロシア軍最高の栄誉である金星章をクゾブレフ氏に授与した。だが授与式からわずか3日後、ウクライナのゼレンスキー大統領がクピャンスクへの境界標前に立つ動画を公開した。第三者による評価では、ロシアは2022年前半以降、クピャンスク全域を支配下に置いたことはない。このように、ロシア軍は大統領を欺くような戦況報告をして、勲章まで授与されている。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(12月22日付)は、「自信深めるプーチン氏、根拠に不正確な戦況報告か」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領がロシアに有利とみられている和平案を提示したにもかかわらず、プーチン氏は戦争を推し進めている。欧米の政府関係者はロシア大統領府に届く不正確な情報が同氏の判断に影響していると考えている。

     

    (1)「2人の当局者によると、ロシア軍や情報機関はプーチン氏に定期報告を行う際、ウクライナ側の死傷者数を水増ししているほか、ロシアが人員などの軍事資源で優位に立っていると強調したり戦術的な失敗を小さく見せたりしているという。プーチン氏と定期的に面会する側近が、ウクライナ侵略が勢いを失いつつあるロシア経済の重荷になっていると説明しているものの、軍幹部が伝える楽観的な戦況報告によってプーチン氏は全面的な勝利を収められると信じているという」

     

    太平洋戦争でも、旧日本軍は戦果を過大に発表していた。これが、戦争を長引かせた大きな要因だ。ロシアでも、ウクライナ侵攻で同じ手が使われている。

     

    (2)「バンス米副大統領も10月、その傾向に言及した。「ロシア側は実際の戦況より自分たちが優位に立っていると考える傾向があり、本質的にずれた期待を抱いている」と述べ、これが合意をより困難にしているとの見方を示した。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のロシア専門家キア・ジャイルズ氏は、ロシアの偽情報作戦が国外にも届いており、「トランプ氏の側近の大半にロシアが早期に戦争に勝利する」と確信させる「非常に高い効果」を上げていると指摘した」

     

    プーチン氏は、完全に「雲の上」の人になっている。ロシア軍の嘘情報を真に受けているからだ。

     

    (3)「ゼレンスキー氏は12月中旬、「ロシアから大量の偽情報が流れてきている。そのため米国の仲間にロシアの言うことをうのみにすべきではないと合図を送った」と報道陣に述べた。ロシアの独立系ニュースサイト「ファリデイリー」はプーチン氏が10月以降、公開の場で6回軍幹部から説明を受けており、ウクライナ侵略開始以降で最も多いと報じた。そのうち3回でプーチン氏は軍服を着用していた。4時間半に及んだ19日の記者会見で、プーチン氏はロシア軍が優位に立っていると再び主張した。「我が軍は前線全体で前進しており、敵は後退している」と述べ、「25年末までに(戦場での)新たな成功を目にするだろう」と国民に約束した」

     

    ロシア軍の嘘情報は、米国まで流れて正常な判断を妨げているほどだ。プーチン氏が丸め込まれているのは、最も信頼している軍幹部から聞かされるかららだ。

     

    (4)「プーチン氏への戦況報告は、ウクライナ侵略の総司令官であるゲラシモフ参謀総長が主に行っている。ウクライナは、抵抗しないとの報告を受けていたゲラシモフ氏が2022年にウクライナの首都キーウへの電撃戦を指揮した。1カ月後には撤退を余儀なくされ、作戦は大失敗に終わった。戦闘が長期化すると、侵略を支持する強硬派はゲラシモフ氏と当時のショイグ国防相がプーチン氏に実情を知らせず、多数の兵士を犠牲にする「肉ひき機」戦術に依存していると非難した。前出のジャイルズ氏は、組織内におけるこの「独立した偽情報のループ」が軍事作戦の結果に直接影響していると指摘した。最も顕著な例が22年に始まったウクライナへの全面侵略そのものだ。プーチン氏は数日で終わると期待したが、4年近く続いている」

     

    ウクライナ侵攻をはじめた時のゲラシモフ参謀総長が、いまもプーチン氏への「嘘戦況報告」の張本人となっている。

     

    (5)「ゲラシモフ氏は24年8月、プーチン氏にロシア西部クルスク州でウクライナ軍の前進を止めたと報告した。だが実際にはウクライナ軍が既に同州の一部を制圧しており、混乱の中で避難した住民に死者が出た。同じ集落を何度も制圧したと主張するなど勝利を誇張する報告と、戦場での実態には落差があった。これは民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏(故人)による23年の反乱で、ゲラシモフ氏とショイグ氏が主な標的となる理由にもなった。ジャイルズ氏によれば、ロシアが停戦合意によって得られる利益を無視し、多大な犠牲を払って侵略を継続しているのも、この落差を埋めるためだと考えれば説明できる」

     

    ロシアが、停戦合意によって得られる利益を無視し、多大な犠牲を払って侵略を継続しているのも、すべて「嘘戦況報告」が原因としている。実に、「罪作りな話」である。

     

     

    テイカカズラ
       

    ロシアは、ウクライナ和平をめぐって「のらりくらり」しながら時間稼ぎをしている。ウクライナの体力疲弊を待つ形だ。最終的には、ロシアの思い描く通りの決着へ持ち込もうという算段だ。ふらつくロシア経済は、ウクライナ侵攻4回目の冬を迎える。国民生活は疲弊しているが、未だ崖っ縁までには至っていない。これが、プーチンロシア大統領にわずかな「余裕」を与えている。

     

    『ブルームバーグ』(11月27日付)は、「ウクライナ侵攻から4回目の冬、ロシア国民に痛み-経済的体力が試練に」と題する記事を掲載した。

     

    プーチン大統領の下でロシアが開始したウクライナ侵攻から4回目の冬を迎え、ロシア国民は日常生活のあらゆる部分で影響の広がりを実感している。ロシア中部と南部の何十もの地域で、エネルギー施設や住宅がドローンとミサイルの攻撃を受けており、前線との近さを実感せざるを得ない。空襲警報のサイレンがほぼ毎晩鳴り続け、戦闘が迫っていると絶えず知らせる。

     

    (1)「前線のはるかかなた、モスクワを含むロシア各地で、経済的痛みを人々は感じ始めた。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥り、成長エンジンに亀裂が幾つも生じつつある。大規模財政出動と記録的なエネルギー収入が支えるロシア経済のレジリエンス(体力)が試練にさらされている。苦しみはウクライナとは到底比べものにならず、プーチン氏に戦争終結を促す可能性は低い。それでも2022年2月の全面侵攻を決断した代償が、これまでになく大きいという現実を浮き彫りにする」

     

    ロシアの今年の冬は、いつもの冬よりも厳しくなりそうだという。戦争の痛みが、あちこちで強くなっているからだ。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥っている。軍需産業は、武器を納品しても政府から代金が支払われない状態だ。この状態が、前記の鉄鋼・鉱業・エネルギー産業へ波及している。

     

    (2)「トランプ米政権は停戦実現に向け、ロシアの石油・天然ガス収入の抑制を目指す圧力を強めている。ロシアが望む制裁緩和を盛り込んだ包括的和平案を巡り、米ロの交渉が水面下で続いているもようだ。米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブエフ氏は「全体の経済指標に基づけば、今この戦争をやめることがロシアの最善の利益になるだろう。けれども戦争を終わらせたいと考えるには、崖っぷちに立たされている認識が必要だ。ロシアはそこにまだ至っていない」と指摘した」

     

    プーチン氏は、「時間を味方につけている」。粘り勝ちで、ウクライナを屈服させるという「我慢比べ」をしている。トランプ氏が、ウクライナへ強力な武器を与えて、ロシアの経済的消耗度を引上げれば、事態の打開へ繋がるであろう。だが、トランプ氏には別の思惑がある。ロシアを味方につけて対中国戦略を練っているからだ。

     

    米国が、先に提出した和平案には、ロシアをG8へ復帰させるという項目さへあって仰天させた。トランプ氏が、ロシアを取込もうという戦術が含まれている。ウクライナの犠牲で、米国の対中戦略へロシアを組入れるというのだ。ロシアと米国の下打ち合せでは、ロシアがこれを望んだのであろう。ロシアの本心は、新興国のトップでなく先進国の一角に席を占めて「大国ロシア」の威容を国民に示したいのであろう。

     

    このロシアの願望は、どこまで満たして行けばいいのか。その場合の欧州の反応はどうか。難しい方程式である。だが、なによりも侵略されたウクライナの悲劇の回復が第一でなければならないが、当のウクライナ政府の幹部は、大規模な汚職容疑で揺れている。戦争で国土が消えるかどうかという瀬戸際で、賄賂を懐に入れる輩がいるとは絶句する。そう言ってはいけないが、「タヌキとキツネの化かし合い」という局面である。

     

    こうなると、最前線で命を的にさせられて戦っている両軍の兵士とその家族、犠牲になった兵士や家族が、最大の貧乏籤を引かされたことになる。最前線から遠く離れるほど、それぞれの「欲望」が渦巻いて、この戦争を利用しようとしている一団の人たちが控えているのだ。

     

    ロシアの文豪トルストイは、若き日にクリミア戦争に従軍した経験が、反戦思想の原点となった。晩年には非暴力主義(トルストイ主義)を提唱し、ガンジーにも大きな影響を与えた。トルストイにとって戦争とは、人間の理性と愛を破壊する最大の暴力とみた。このトルストイが、次のような名言を残している。

     

    「戦争は、最も卑劣な人間が、最も高貴な理想を語るときに始まる」。この言葉は、プーチン氏や習近平氏にそのまま当てはまる。プーチン氏は、「大ロシア帝国の復活」を。習氏は「中華民族再興」を語って、戦争を美化しているのだ。正義の戦争などは存在しない。邪悪だけが開戦動機である。

     

     

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