米国トランプ政権は、ウクライナのインフラ復旧投資に関し,米国が管理権を要求していることが分った。ウクライナは「まな板の鯉」である。ウクライナは、米国の要求をすべて受入れない限り、念願の停戦状態にならないことから受入れざるを得ない状況である。膨大なウクライナの復旧では、EU(欧州連合)や日本などの介入を排除して、先ず米国企業が選択権を持つ形になりそうだ。
『ブルームバーグ』(3月28日付)は、「米国、ウクライナに投資計画全ての管理権要求-欧州など他国排除」と題する記事を掲載した。
米国はウクライナで将来行われる主要インフラ投資全ての管理権を要求している。欧州など他のウクライナ支援国は排除され、ウクライナの欧州連合(EU)加盟をくじくことにもなりかねない。
(1)「ブルームバーグニュースが入手した草案文書によると、トランプ政権が要求しているのはインフラと天然資源に関連する全ての投資プロジェクトの「優先交渉権」で、ウクライナとの改定版パートナーシップ協定で規定される。ウクライナが受け入れる場合、道路や鉄道、港湾、鉱山、石油・ガス、重要鉱物の採掘などあらゆるプロジェクトで、米国が極めて大きな権限を握る。国土の広さで欧州最大を誇り、EUとの協調を強めようとしているウクライナに、米国の経済的な影響力が前例のない形で拡大することになる」
米国は、ウクライナの道路や鉄道、港湾、鉱山、石油・ガス、重要鉱物の採掘などあらゆるプロジェクトで極めて大きな権限を握る。ウクライナの「属国化」である。トランプ氏は、米国民に「戦果」を誇るのだろう。
(2)「ウクライナの特別復興投資基金は、米政府が管理し同基金に移管される利益について米国は優先的に請求できる。草案文書によると、米国は2022年のロシアによる全面侵攻以降にウクライナに提供された「物質的・金銭的便益」を同基金への拠出金と位置づけた。これは実質的に、戦争開始以降の米国の軍事・経済支援を払い切るまで、ウクライナは基金の利益を全く受け取れないことを意味する」
米国は、ウクライナへ支援した全資金を回収する意思だ。だが、2026年に中間選挙を控える状況で、この「強欲作戦」は裏目に出る可能性が高い。非営利調査団体モア・イン・コモンが、3月9日に公表した世論調査結果によれば、米国人の67%、共和党員の65%が、米国は戦争終結までウクライナへの支援供与を続けるべきだと答えている。超大国の米国が、戦争被害国から支援資金を取り立てることに否定的である。
(3)「米国とウクライナは2月に天然資源協定に調印する計画だったが、ホワイトハウスで会談した両国の首脳が激しい口論となり決裂。この後で米政府は協定内容を改定し、ウクライナ側に草案を先週末提示していた。ホワイトハウスは先週、ウクライナの重要鉱物を対象とした前回の合意よりも、もっと踏み込むと説明していた。両国の協議は継続中で、最終的な草案では条件が変更される可能性もある。事情に詳しい関係者がブルームバーグニュースに述べたところによると、ウクライナは今週、米国に対し修正案を提示する可能性が高い」
ウクライナは、恐る恐る米国へ修正案を出すのだろう。トランプ氏のご機嫌を損ねれば、すべての努力が水泡に帰す。
(4)「パリで開かれた欧州首脳との会議に出席したウクライナのゼレンスキー大統領は27日、米国が提示した合意案は「詳細な検討」が必要で、交渉過程で条件は常に変化していると記者団に説明。合意に至ったと断言するのは時期尚早だとしつつ、「われわれは米国との協力を支持する。米国にウクライナ向け支援の停止を促す恐れのあるシグナルは一つでも発したくない」と続けた。米財務省報道官はコメントの要請に対し、「この重要な合意の早期締結と、ウクライナとロシア両国の恒久的な平和の確保に米国は引き続き努めている」と述べた」
ゼレンスキー氏は、米国にウクライナ向け支援の停止を促す恐れのあるシグナルは一つでも発したくないとしている。ウクライナにとって、米国が「命綱」であるからだ。
(5)「ウクライナは、2022年にEU加盟候補国として認定され、正式加盟に向けた交渉が始まる見通しだ。ただ、交渉完了には長い年月がかかる可能性があり、ウクライナ経済の大部分における投資決定権を米国が実質的に握るとなれば、交渉は一段と難しくなる公算が大きい。ウクライナは以前、米国との合意がEUと結んだ連合協定と矛盾することがあってはならないと主張してきた。これまでの支援を共同基金への拠出金に位置づけようとする米国の働きかけも、拒否していた」
ウクライナは、戦争終結と引き換えにしているので、米国と難しい交渉を迫られている。最終的に、米国の意向に従うほかないのだ。
(6)「この草案文書によると、米国は基金の理事会メンバー5人のうち3人を指名し、決定を阻止できる特別議決権も得る。ウクライナ政府はあらゆる天然資源・インフラ関連の新プロジェクトから得る利益の50%を基金に払い込むことが義務づけられ、米国はこれまでの支援金額を完全に回収するまで、利益の全額に加えて年4%のリターンを受け取る権利を有する。ウクライナは全てのプロジェクトを「可能な限り早期に」基金に提示し、審査を受ける義務も負う。却下されたプロジェクトについて、ウクライナは「大きく改善した」条件で第三者に提案することが少なくとも1年間は禁じられる」
米国は、ウクライナ支援金に年4%の金利を課すという。これは、米国民からみて余りにも情け容赦ない姿勢に映るだろう。来年11月、米中間選挙では争点にされるに違いない。トランプ氏の理由は、国債発行で得た資金だから、その金利分を払えと言うのだ。