勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

    テイカカズラ
       


    ロシア軍は、ウクライナ侵攻で重大局面を迎えている。ウクライナ軍がクリミア半島奪回に向けて作戦計画を練っているからだ。これまで、冬季の作戦は膠着状態になると予想されていたが、地表の凍結によって作戦が容易になるというのである。

     

    冬季作戦では、ロシア軍が不利と見られている。耐寒装備が、不十分であろうと見られていることだ。ロシア軍兵士は、耐寒装備が行き渡っておらず、凍死などの危険性と隣合わせになれば、士気は一層の低下を余儀なくされよう。

     

    『日経ヴェリタス』(12月4日付)は、「ウクライナ軍『迫るレッドライン』ロシア核使用の懸念も」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナでは、侵攻中のロシア軍が戦力を南部から東部に再配置し始めたことで、今後の戦闘の焦点は東部に移るとの見方が浮上している。ただ、ウクライナ軍は東部だけでなく、南部でも反転攻勢を続けており、ロシア軍が南部で大きな後退を強いられれば、化学兵器や小型核兵器といった大量破壊兵器の使用に踏み切る事態がかつてなく現実味を帯びそうだ。

     

    (1)「ロシア軍は11月、南部へルソン州のドニプロ川西岸から部隊を撤退させ、東岸地域で防衛線を構築している。同時に、後退させた部隊の一部を東部戦線に振り向けたことで、東部地域で攻防が激化するとの見方が多い。ただ、主戦場が東部に限定される保証はない。ウクライナ軍は9月以降、南部にロシア軍主力を引き付けたうえで、東部で一気に占領地を奪回してみせた。一方、現在はロシア軍が東部を重視していることで、南部でのロシア側の守りは手薄になっている」

     

    軍事専門家の見方では、ロシア軍の作戦に迷いがあると指摘している。ウクライナの東部と南部のどちらに防衛の力点を置いているか不明というのだ。ウクライナ軍は、南部でクリミア半島奪回に向けて動いている。ロシア軍はそれを気づきながら、東部で不要な攻撃をかけているのは解せないというのである。

     

    (2)「ウクライナ軍にとって9月と状況が異なるのは、南部での前進を阻むドニプロ川という地理的障害があることだ。ただ、これまでの戦闘でもウクライナ軍は渡河作戦を実施しており、ロシア軍がウクライナ軍のドニプロ渡河作戦を警戒しているとの情報もある。仮にウクライナ軍が東岸に橋頭堡(きょうとうほ)を築ければ、そこを起点に障害が比較的少ないヘルソン州南西部を経てクリミア半島の付け根部分まで短期間に進出する展開がみえてくる」

     

    ウクライナ軍が、ドニプロ川を渡河するのは極めて危険を伴う。対岸にはロシア軍が防衛戦を築いているからだ。こういうリスクを冒すよりも、ザボリージャ州を南下してロシア軍を分断し、クリミア半島への兵站線を絶つ戦術を取るだろう。これが、軍事専門家の見方だ。ウクライナ軍は、「敵前上陸」のような危険な作戦を回避するであろう。

     

    (3)「一方、そこはロシア軍にとってはレッドライン(越えてはならない一線)で、「過激な反応」を誘いやすい。これには二つの事情がある。まず、ロシア軍が2014年の電撃侵攻の成果であるクリミア半島を失う可能性が出てくる。これが現実になると、ロシア国内の厭戦(えんせん)気分や、強硬派によるプーチン政権への突き上げが強まるのは避けられない」

     

    ロシア軍が、クリミア半島奪回が視野に入れば、ロシア軍が核を使うだろうという予想がある。西側諸国もこれをもっとも警戒している。だが、軍事専門家によれば、軍事的な意味はないという。ロシア軍は、報復を受けることを十分に認識しているからだ。米国が、ホットラインでロシアへ警告したほか、両国の情報当局トップが会談して意思疎通を図っている。核を使えば、NATO(北大西洋条約機構)が参戦する危険性が高まる。ロシアは、これを最も警戒しているのだ。

     

    (4)「(クリミア半島を失えば)ロシアの中長期的計画が狂うことだ。「ロシア軍はヘルソン州からさらに西に支配地域を広げ、モルドバを制圧することで、ウクライナを海への出口を持たない内陸国にしてしまうことを企図している」(防衛省情報部局関係者)。できれば、目下の戦闘を膠着状態に持ち込んだ上で、今後数年間かけて軍を再建し、14年、22年に続く3度目となる次回侵攻でウクライナの内陸国化を果たしたいと考えているわけだ。その意味でも、ロシア軍はドニプロ東岸(へルソン州南部)を失うわけにはいかない」

     

    このパラグラフは、完全にロシア側の身勝手な青写真である。西側諸国は、絶対にこれを認める訳にいかないのだ。ロシアが受けている経済制裁は、これから一段と厳しくなる。EU(欧州連合)とG7・豪州は、12月5日からロシア産原油価格の上限制(当面は1バレル60ドル)によって、ロシアの収入減を実現させる。これによって、戦争継続を困難にさせる戦術を発動させるのだ。ロシアは、自らの思惑が実現できるほど、世界が甘くないことを知るであろう。

     

    テイカカズラ
       


    ロシアのウクライナ侵攻開始後、すでに9ヶ月が経過した。ロシア軍とウクライナ軍の双方におびただしい犠牲者が出ている。これまで、米英の軍事専門家からはロシア軍の犠牲者が約8万人と推定されてきた。ウクライナ高官が、現地のテレビで初めてウクライナ軍の犠牲者が最大で1万3000人と発表した。ロシア軍については、10万人の犠牲者が出ており、これ以外に負傷・行方不明などが10万~15万人もいると語った。

     

    ロシア軍の犠牲者が、ウクライナ軍に比べて桁違いに多いのは、兵士の生命を無視した戦い方にある。兵士を「弾避け」に使うという残酷な戦闘方式を採用しているのだ。ロシア軍は数カ月にわたって東部ドネツク州バフムート周辺を攻撃しており、最近では新たに動員された経験に乏しい部隊を前方に送り込んでいる状況だ。この攻撃は、軍事的に意味のない戦い方と批判されている。ロシア軍内部での功名争いの一環とも見られるほどだ。

     

    英国『BBC』(12月2日付)は、「ウクライナ兵の犠牲者、これまでに13000人ーゼレンスキー氏側近」と題する記事を掲載した。

     

    ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の顧問を務めるミハイロ・ポドリャク氏は12月1日、犠牲になった兵士は1万~1万3000人だと、ウクライナのテレビ番組で発言した。ウクライナが死者数を明らかにするのは珍しい。また、ポドリャク氏の発言はウクライナ軍が裏付けたものではない。ポドリャク氏は6月の時点で、毎日100~200人のウクライナ兵が亡くなっていると話していた。

     

    (1)「11月には米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が、侵攻開始以来、ロシアとウクライナでそれぞれ10人の兵士が死傷していると述べていた。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は11月30日のビデオ演説で、ウクライナ兵10万人が殺されたと発言。しかしその後、報道官により、これは負傷者も含めた数だと訂正された」

     

    これまで、ウクライナ軍の犠牲者数が明らかにならず、ロシア軍の犠牲者数が報じられてきた。ロシアが、30万人の動員令を出した裏には、相当数の死亡・負傷・行方不明などが出ていることを予想させる。

     

    (2)「1日にウクライナの「民放テレビ24」に出演したポドリャク氏は、「ウクライナ政府は死者数についてオープンに話している」と述べた。「参謀本部による公式の推計と、総司令官(ゼレンスキー氏)による公式な評価では、1万人から1万2500人、1万3000人が亡くなった」。また、殺害された民間人の数は「非常に多い」と付け加えた。この数字は現在、さらに増えているとみられる」

     

    ウクライナ軍は、開戦当初の後退が多かった。これは、兵士の「人命尊重」を第一とする戦術と説明されて来た。ウクライナ軍は、ロシア軍の損耗率が30%に達した5月の時点で、ロシア軍の戦力が大幅に低下したと判断し、反攻作戦を作成して奪回作戦に転じている。

     

    (3)「ロシア軍の損害についてポドリャク氏は、死者10万人と推定。さらに、負傷者や行方不明者、戦闘に復帰できない10万~15万人としている」

     

    ウクライナは、ロシア軍の犠牲者を10万人と推定しているが、犠牲者の多いことは事実である。これが、ロシア軍の士気を引下げている理由だ。ウクライナ軍が設けている「ロシア兵への投降呼びかけ」に対して、多くのロシア兵が問合せしている。特に、戦闘が止む夜間に入ってからの問合せが多いという。「どうすれば、投降できる」という問合せだ。

     

    米シンクタンク戦争研究所(ISW)は11月30日、ウクライナの戦況をめぐり、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州バフムート周辺で戦力を消耗しているとする分析を公表した。

     

    バフムートは東部地域の交通の要衝。ISWによるとロシア軍は5月下旬以降、一貫して同方面に戦力を注いできたが、得られた戦果は少ないという。ISWは、「バフムート市周辺での6カ月にわたる激しい戦闘に伴う損失は、ロシア軍が同市を攻略することで得られる作戦上の利点をはるかに超えている」と指摘。ロシア軍が、バフムート方面に注力することで、他の地域でウクライナ軍が反攻しやすくなる可能性があるとしている。米『CNN』(12月2日付)が伝えた。

     

    ロシアは、こういう「無意味な戦闘」で貴重な兵士の生命を失っているのだ。ロシア軍の犠牲者数が、ウクライナ軍を8倍も上回っているのは、バフムートに見るような無益な戦い方に原因があるのだろう。

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    30万人の動員令は、ロシア企業に大きな後遺症を残すことになろう。企業は、働き盛りを招集されただけに、その穴埋めに必死である。簡単に人員補充もできず、受注があっても応じられない事態になっている。それだけでない。能力と資産のある多くの人々が出国しているのだ。これは、ロシア経済にボディブローのように効いてくるに違いない。

     

    英国『フィナンシャル・タイムズ』(11月29日付)は、「『手当たり次第に動員』、ロシア企業の人手不足深刻」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻するロシア兵の大量動員を発表したのが9月20日。その翌朝には全国の男たちの職場に徴兵事務所への出頭を命じる令状が届いていた。夕方になると、妻たちが帰宅しない夫を探しに職場へ押し寄せた。ある大手鉱業会社幹部は「飲み物を出して彼女たちを落ち着かせなければならなかった」と工場内での絶望的な光景を振り返った。「心情は理解できる。朝に出勤した夫が帰って来なかったのだから」。ロシア企業の間では突然の徴兵による動揺が広がっている。9月21日以降、少なくとも30万人の男性がウクライナ戦争に動員され、それをはるかに上回る人々が国外に脱出した。

     


    (1)「ロシアのガイダル研究所が今月発表した調査結果によると、動員令を受けて同国は1993年以来最悪の労働力不足に陥っている。企業への調査では、大半の回答者が需要に応じようにも増産できないと述べたほか、減産したり製品の品質を落としたりせざるを得ないという回答もあった。労働市場エコノミストのウラジーミル・ギンペルソン氏は「端的に言えば、国内総生産(GDP)を生み出す健康で学識も体力もある人が減ったということだ」と指摘した。同氏はモスクワを離れ、現在は米国で職を得ている。「もしロシア政府が経済成長を優先したいなら、致命的な間違いを犯したことになる」と指摘」

     

    突然の招集である。有無を言わせないで引っ張っていく状況は、ロシア経済に大きなひび割れを起して当然だ。しかも、人口動態的に見て20〜40歳の労働力人口は減少過程にある。ロシアにとっては、泣き面にハチである。

     

    (2)「徴兵と頭脳流出によってロシアの人口減少に拍車が掛かっている。ロシア連邦保安局(FSB)の国境警備局によると、7〜9月の出国者数は970万人と前年同期より120万人増加し、4〜6月の2倍近くに上った。(前出の)ギンペルソン氏によると、生産性向上に不可欠な20〜40歳の労働力人口が2010年代後半から30年にかけて25%減少すると人口統計学者は予測している。単純労働者は中央アジアからの移民で補えるが、動員前から人手不足に悩まされていたIT(情報技術)分野の高技能労働者の後任を探すのは不可能だと米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のオレグ・イツホキ教授は指摘する」

     

    動員令30万人以上の人達が出国している。出国した人たちは、外国で暮らして生きられる技能と資産を持っている。ロシア経済にとっては二重の打撃だ。

     

    (3)「ロシア中央銀行のナビウリナ総裁も10月、動員令により「労働市場の構造変化や専門技能者不足が生じ」インフレが加速する可能性があると懸念を示した。米投資銀行ルネサンス・キャピタルのエコノミスト、ソフィア・ドネツ氏は、「技能労働者の国外流出は長期的な成長力に悪影響を及ぼすだろう」と予想する。働き手の流出は労働力や経済に間接的な負担を強いている。ドネツ氏によれば、生産年齢人口1人当たりの高齢者などの扶養家族が増えた。また、イツホキ氏によれば、「明らかに元から裕福だった」人々が国外に脱出したため、労働者は平均的に貧しくなった。つまり「ロシア経済の需要を生み出していた多くの人がいなくなったわけだ」と同氏は補足した」

     

    このパラグラフは、極めて重要な点を指摘している。ロシア経済への長期的な影響がいかに大きいかである。20~40代は働き盛りである。この層が、招集されるか出国している。出国者は、技能と資産を持っている。これは、供給と需要の二面でロシア経済に打撃を与えるはずだ。

     

     

     

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    ロシアは、核脅迫という「最後通告」とその後の「Uターン」を繰り返し、戦争目的も絶えず変化している。このため西側諸国の政府当局者の間では、プーチン氏は自分の手に負えなくなっているこの戦争で、行き当たりばったりに対処することを余儀なくされているとの見方が強まっている。 

    ロシアは、欧米の制裁で重要産業の運営維持に苦慮している。このため、自動車、航空機、鉄道の部品を含む製品500以上のリストをインドに送付していたことが分かった。『ロイター』(11月29日付)が報じた。ロシアは、ここまで追込まれているが、「止めるに止められない戦争」という、最悪事態へ自ら落込んでいる。プーチン氏にも解決方法はないのだ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月29日付)は、「ぶれるプーチン氏、戦争目的と『レッドライン』は」と題する記事を掲載した。 

    ウラジーミル・プーチン大統領が主導したウクライナ侵攻後、ロシアはしばしば戦争をエスカレートさせるという脅しをかけてきたが、脅しの多くを後にトーンダウンするか無視している。米国とその同盟国は、プーチン氏の真のレッドラインはどこなのか推測せざるを得なくなっている。 

    (1)「キングス・カレッジ・ロンドン戦争学部のマイケル・クラーク客員教授は、「プーチン氏の行動には現在、自暴自棄の要素がある。なぜなら、戦況が芳しくないこと、そして戦闘の長期化を覚悟しなければならないことを知っているはずだからだ」と述べた。ロシアはウクライナへの侵攻を拡大させている。ここ数週間でさらに数万人の兵士を前線に送り、ウクライナの電力網をはじめとする民間インフラへの攻撃を繰り返しており、首都キーウなどの都市はたびたび停電に見舞われている」 

    プーチン氏は、自暴自棄になっている気配があるという。勝ち目のない戦争だが、自ら止めるワケにもいかない。そこで、ウクライナの厭戦気分や支援する西側諸国の支援疲れを待っているのであろう。

     

    (2)「軍事アナリストらによると、ロシアの目的は、冬季にウクライナ国民を凍えさせることで士気を低下させ、西側諸国のウクライナ支援のコストをさらに高め、戦争が積極的に押し進められていることをロシア国内向けに示すことだという。ロシアと北大西洋条約機構(NATO)加盟国の双方が維持するレッドラインの一つは、ほとんど明言されていないが、相手との直接的な軍事衝突を望んでいないことだ」 

    ロシアは、NATO軍との軍事衝突を望んでいない。全面衝突になればさらに勝ち目がなくなるからだ。ロシア大統領選挙は2024年3月である。プーチン氏が立候補するならば、早く戦争を切り上げる必要があろう。

     

    (3)「ロシアのその他のレッドラインは、しばしば幻想であることが判明しており、特に好戦的な発言の一部は裏目に出ている。プーチン氏は9月21日、「ロシアとその国民を守るために利用可能な全ての手段」を講じると述べ、ウクライナで核兵器を使用する用意があると警告した。同氏は「これははったりではない」と付け加えた。ロシア政府はその後、ウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」の準備を進めていると非難した」 

    弱い犬ほど「遠吠え」するというが、ロシアはこれまで何回か「核威嚇」してきた。これにより、ウクライナやNATOの厭戦気分を引き出す計画であった。

     

    (4)「西側諸国の当局者はこの動きについて、衝突をエスカレートさせる口実だと指摘した。西側の当局者やアナリストによると、この脅しの主な目的は、西側諸国の市民に戦争に関するパニックを起こさせ、ウクライナへの支持をやめて、ロシアが示す条件で和平交渉を進めるよう各国政府を説得してもらうことにあった。今のところ、この脅しは西側諸国によるウクライナ支援に影響しておらず、支援は順調に続いているように見える」 

    米国は、ロシアへ核使用のリスクを伝えている。通常兵器での報復である。ロシア軍部は、これを聞いて震え上がったのであろう。ロシアの黒海艦隊を全滅させると通告されているのだ。

     

    (5)「プーチン氏の核戦力による威嚇は、世界からの非難を浴び、ロシアを外交的に一層孤立させた。ジョー・バイデン米大統領はロシア政府に対し、戦術核兵器の使用が「極めて深刻な過ち」になると警告した極め付きは、中国の習近平国家主席が初めて公の場でロシアによる戦争行為を非難したことだった。習氏は、いかなる者も紛争で核兵器を使用したり、その使用をちらつかせたりすべきではないとけん制した」 

    ロシアの盟友である中国は、ロシアの核使用に反対している。インドも表明した。こうなると、ロシアの核脅迫発言は国際社会で自らの孤立を深めるだけだ。

     

    (6)「ロシア政府は、10月下旬までに姿勢を後退させた。プーチン氏はテレビの長時間インタビューで、ロシアにはウクライナで核兵器を使用する計画がないと述べた。世界中にいるロシアの外交官からも同様の発言が出た。西側専門家は、戦場における核兵器の使用はロシアの軍事侵攻の目的達成にほとんど役立たず、米国とその同盟諸国を戦争にさらに深く引き込むリスクがあると指摘する。また、1945年以来維持されてきた核兵器使用のタブーを破れば、ロシアへの非難が強まり国際的な孤立が一層深まるだろ」 

    プーチン氏は、ウクライナで核兵器を使用する計画がないと述べた。自らまき散らした「核脅迫」は不発になりそうだ。こうなると、ロシアはどうするのか。「ダラダラ戦争」を行なって「偽正義」を言い募るという無益な試みで時間を空費するのだ。その間の人命の損失を考える余裕はなくなっている。自分の身の処し方で夢中になっているのであろう。

     

     

     

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    ロシア軍が、第2次動員令として50~70万人を招集するとの報道が、ロシア内外で行なわれている。ロシアメディア『プラウダ』は、「プーチン大統領は年末までに連邦議会での演説を通じて、兵士と将校を補充するための国家動員令を発表するだろう」と報道したのがきっかけであった。

     

    ウクライナ内務相顧問を務めるアントン・ヘラシチェンコ氏は22日、自身のツイッターに「ロシアは来年1月に2度目の動員令を発令する準備をしている。50万~70万人を動員する計画だとした。

    これら報道に対して、クレムリンの報道官は25日(現地時間)、「『プーチン大統領が国家動員令を発表する』というメディア報道は事実ではない」と伝えた。このように、第2次動員令が話題に上がっているが、ロシア軍はウクライナ侵攻で多大の消耗を強いられているだけに、クレムリン報道官の「否定」を額面通りに受取れないのも事実だ。

     

    韓国紙『ハンギョレ新聞』(11月25日付)は、「また強制動員令? 徴集におびえるロシア」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ戦争で守勢に追い込まれたロシア軍が、9月の30万人に続き再び動員令を発表すると懸念される中、ロシアの野党はウラジーミル・プーチン大統領に対し「予備役の部分的な動員令」の終了を公式に確認する大統領令を発するよう要求した。

     

    (1)「ロシアの自由主義系政党「ヤブロコ」のウェブサイトなどによると、北欧に隣接しモスクワ北方に位置するカレリア共和国の議会に所属する2人の議員が22日、プーチン大統領に書簡を送り、このように要求した。同党所属のエミリア・スラブノワ、インナ・ボルチェフスカヤの両議員は、先月28日にセルゲイ・ショイグ国防長官が「部分的な動員令は完了した」と放送で発表したものには法的効力がないとし、動員終了を大統領令で確認することを求めた。ヤブロコは市場経済を支持する自由主義系の政党。プーチン政権に批判的で、今回の戦争に懐疑的な立場を表明してきた」

     

    プーチン氏は、動員終了を大統領令で確認することを求められている。そうでなければ、第2次動員令もありうるからだ。前回の動員令では30万人に止めたが、実際の動員計画では100万人を予定していたとも報じられていた。この説が正しいとすれば、第2次「50~70万人」動員令を出したとしても、当初計画の100万人の枠に収まる。

     

    (2)「スラブノワ議員はこの日、自身のテレグラムに「ロシア国防省は動員令が終了したと述べたが、徴集が再び起こらないという法的保障はない」と書き込み、プーチン大統領が9月21日の大統領令によって予備役徴集を命じたように、これが公式に終了したということも同じ方式で発表することを要求した。彼らは、法的効力のない動員令の終了はロシア人の不安と恐怖をかきたてると強調した。ロシア国民は、冬を前に再び動員令が発表されるのではないかと不安にさいなまれている。米国の戦争研究所によると、ロシアの極右系ブロガーたちは、今年12月または来年1月に新たな動員令が下されるだろうという主張をオンラインなどで流している

     

    ロシアの軍事ブロガーは、オンラインで新たな動員令が今年12月~来年1月に下されると流している。雰囲気づくりをやっているわけだ。

     

    (3)「ウクライナも、ロシアが新たな動員令を下すだろうとの見通しを示している。内務相の顧問を務めるアントン・ヘラシチェンコ氏は22日、自身のツイッターに「ロシアは来年1月に2度目の動員令を発令する準備をしている。50万~70万人を動員する計画だ。以前に動員された30万人はすでに戦死あるいは負傷したか、戦闘意志を喪失している」と述べ「ロシア人は当局に対して静かに不満を持ちはじめた」と付け加えた。英国「スカイ・ニュース」は、この主張が事実なら、これはロシアが戦争の長期化に備えており、戦況がプーチン大統領の考えていたやり方で解決されていないことを示唆すると分析した」

     

    ウクライナ内務省顧問は、第2次動員令として50万~70万人説をツイッターで書き込んでいる。情報戦で、ロシアの極秘情報を握ったのであろう。問題は、ロシアで第2次動員令が出た場合、ロシア国内の反発は大きなものになろう。

     

    米『CNN』(11月28日付)は、「ロシア兵の母親たち、オンライン署名運動 ウクライナからの撤退求め」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア軍兵士の母親たちが市民団体「フェミニスト反戦レジスタンス」と協力し、ウクライナからの撤退を求めるオンライン署名運動を展開している。署名はロシアの「母の日」にあたる27日から始まった。署名は初日の夕方までに1500件を超え、さらに増え続けた。

     

    (4)「嘆願書は、過去9カ月にわたる「特別軍事作戦」が破壊と悲嘆、流血と涙をもたらしていると懸念を表明し、「われわれロシアの母たちは国籍や宗教、社会的地位にかかわらず、平和と調和の中で暮らしたい、子どもたちの将来を恐れることなく平和な空の下で育てたいという願いで一致団結している」と述べている。母親らはこの中で、「死ぬため」に動員される兵士の家族は、防弾ベストなどの装備を自費でそろえなければならず、稼ぎ手を失った家庭で母親たちの負担は増すばかりだと訴えた」

     

    悲痛な母親達の停戦への願いが、プーチン氏に届くか疑問である。だが、第2次動員令が出れば、確実に世論は変わるであろう。

     

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