勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    ロシアは、ウクライナ和平をめぐって「のらりくらり」しながら時間稼ぎをしている。ウクライナの体力疲弊を待つ形だ。最終的には、ロシアの思い描く通りの決着へ持ち込もうという算段だ。ふらつくロシア経済は、ウクライナ侵攻4回目の冬を迎える。国民生活は疲弊しているが、未だ崖っ縁までには至っていない。これが、プーチンロシア大統領にわずかな「余裕」を与えている。

     

    『ブルームバーグ』(11月27日付)は、「ウクライナ侵攻から4回目の冬、ロシア国民に痛み-経済的体力が試練に」と題する記事を掲載した。

     

    プーチン大統領の下でロシアが開始したウクライナ侵攻から4回目の冬を迎え、ロシア国民は日常生活のあらゆる部分で影響の広がりを実感している。ロシア中部と南部の何十もの地域で、エネルギー施設や住宅がドローンとミサイルの攻撃を受けており、前線との近さを実感せざるを得ない。空襲警報のサイレンがほぼ毎晩鳴り続け、戦闘が迫っていると絶えず知らせる。

     

    (1)「前線のはるかかなた、モスクワを含むロシア各地で、経済的痛みを人々は感じ始めた。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥り、成長エンジンに亀裂が幾つも生じつつある。大規模財政出動と記録的なエネルギー収入が支えるロシア経済のレジリエンス(体力)が試練にさらされている。苦しみはウクライナとは到底比べものにならず、プーチン氏に戦争終結を促す可能性は低い。それでも2022年2月の全面侵攻を決断した代償が、これまでになく大きいという現実を浮き彫りにする」

     

    ロシアの今年の冬は、いつもの冬よりも厳しくなりそうだという。戦争の痛みが、あちこちで強くなっているからだ。家計は食費を切り詰め、鉄鋼・鉱業・エネルギー産業も苦境に陥っている。軍需産業は、武器を納品しても政府から代金が支払われない状態だ。この状態が、前記の鉄鋼・鉱業・エネルギー産業へ波及している。

     

    (2)「トランプ米政権は停戦実現に向け、ロシアの石油・天然ガス収入の抑制を目指す圧力を強めている。ロシアが望む制裁緩和を盛り込んだ包括的和平案を巡り、米ロの交渉が水面下で続いているもようだ。米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブエフ氏は「全体の経済指標に基づけば、今この戦争をやめることがロシアの最善の利益になるだろう。けれども戦争を終わらせたいと考えるには、崖っぷちに立たされている認識が必要だ。ロシアはそこにまだ至っていない」と指摘した」

     

    プーチン氏は、「時間を味方につけている」。粘り勝ちで、ウクライナを屈服させるという「我慢比べ」をしている。トランプ氏が、ウクライナへ強力な武器を与えて、ロシアの経済的消耗度を引上げれば、事態の打開へ繋がるであろう。だが、トランプ氏には別の思惑がある。ロシアを味方につけて対中国戦略を練っているからだ。

     

    米国が、先に提出した和平案には、ロシアをG8へ復帰させるという項目さへあって仰天させた。トランプ氏が、ロシアを取込もうという戦術が含まれている。ウクライナの犠牲で、米国の対中戦略へロシアを組入れるというのだ。ロシアと米国の下打ち合せでは、ロシアがこれを望んだのであろう。ロシアの本心は、新興国のトップでなく先進国の一角に席を占めて「大国ロシア」の威容を国民に示したいのであろう。

     

    このロシアの願望は、どこまで満たして行けばいいのか。その場合の欧州の反応はどうか。難しい方程式である。だが、なによりも侵略されたウクライナの悲劇の回復が第一でなければならないが、当のウクライナ政府の幹部は、大規模な汚職容疑で揺れている。戦争で国土が消えるかどうかという瀬戸際で、賄賂を懐に入れる輩がいるとは絶句する。そう言ってはいけないが、「タヌキとキツネの化かし合い」という局面である。

     

    こうなると、最前線で命を的にさせられて戦っている両軍の兵士とその家族、犠牲になった兵士や家族が、最大の貧乏籤を引かされたことになる。最前線から遠く離れるほど、それぞれの「欲望」が渦巻いて、この戦争を利用しようとしている一団の人たちが控えているのだ。

     

    ロシアの文豪トルストイは、若き日にクリミア戦争に従軍した経験が、反戦思想の原点となった。晩年には非暴力主義(トルストイ主義)を提唱し、ガンジーにも大きな影響を与えた。トルストイにとって戦争とは、人間の理性と愛を破壊する最大の暴力とみた。このトルストイが、次のような名言を残している。

     

    「戦争は、最も卑劣な人間が、最も高貴な理想を語るときに始まる」。この言葉は、プーチン氏や習近平氏にそのまま当てはまる。プーチン氏は、「大ロシア帝国の復活」を。習氏は「中華民族再興」を語って、戦争を美化しているのだ。正義の戦争などは存在しない。邪悪だけが開戦動機である。

     

     

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    米国とウクライナが23日、4年近く続いているロシアとウクライナの戦争を終わらせるための「平和の枠組み」をまとめたと共同声明を通じ明らかにした。両国は、「ウクライナの主権をすべて保障する」という内容を共同声明に盛り込んだ。

     

    当初の米国案では、ロシア寄りが明らかであった。ウクライナや欧州が、結束してこの案を押し返しているもようだ。米国は、ロシア経済が、ウクライナ侵略で大きく揺らいでいることを知らず、ロシアの手の内に乗せられているのであろう。ロシアは、経済的に戦争が限界へ達している。西側はここで、ひと踏ん張りして「侵略戦争」に片を付けなければならない局面だ。

     

    『中央日報』(11月24日付)は、「国家の支払いが遅延…ロシア防産業界、戦争特需どころか生存危機」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア防衛産業は、ウクライナ戦争で好況を迎えたとみられたが、人員不足、制裁による需給問題、そして財政問題で困難に直面している。制裁のために西側で作られた部品・材料を確保するのに困難がある中、過去に定めた供給価格を強要され、さらにロシア政府が代金の支払いを先に延ばす状況だ。

     

    (1)「海外軍事メディアの『ディフェンスブログ』は、ウクライナ戦争を支えてきたロシア防衛産業が深刻な危機に直面しているというロシア内部の事情を報じた。戦争が長期化し、莫大な軍の需要があるが、複合的な問題がロシア防衛産業全般を圧迫しているという。問題の1つ目、防衛産業企業で勤務していた熟練労働者が戦争に動員されたり犠牲になったりし、防衛産業企業は生産ラインを維持する十分な人材を確保できずにいる。その結果、一部の工場は大量の注文を消化している」

     

    ロシア財政が苦境に立たされている。武器購入代金が足りないという最悪事態を迎えている。西側が、ここで安易な妥協をすれば「悔いを千載に残す」であろう。プーチン氏の「手練手管」に乗せられては駄目だ。

     

    (2)「問題の2つ目、西側の制裁の余波で核心部品・原材料の確保が難しくなった。半導体以外の潤滑油・精密コーティング材料などの輸入がふさがったり価格が急騰したりした。ロシア内部で購入する努力もあったが、ロシア産代替品は性能が落ちるという評価を受けている」

     

    長期戦で軍需品の部品不足が目だってきた。経済制裁を受けながら、4年近くも戦争を続けているのだ。当然の現象である。

     

    (3)「3つ目、防衛産業会社の財政状態が悪化している。ロシア政府が防衛産業会社に対する代金支払いを延ばし、このため戦車を生産する企業は1月に引き渡した戦車の代金を受けていない状況で契約を引き続き履行しなければならない状況だ。政府の支払い遅延はそうでなくとも厳しい防衛産業会社の財政状況を悪化させている。ロシア軍の中高度長期滞空無人機オリオンを生産するクロンシュタットは数億ルーブル規模の債務請求訴訟がいくつか提起されている。政府が、定めた価格政策も問題を悪化させている。企業は政府に過去の固定納品価格で契約を結ぶが、必要な部品は市場価格で購入している。こうした契約構造のため企業に損害が生じている」

     

    ロシア政府は、財政ひっ迫で防衛産業への代金支払を滞らせている。それでも、生産を続けるという無理難題を押しつけられているのだ。こういう状況では、いつまでも継戦は不可能である。

     

    (4)「4つ目、ウクライナの攻撃で基盤体系が破壊された。ドローンとミサイル攻撃、そして鉄道網の破壊などのサボタージュは主な防衛産業工場、物流拠点、燃料と潤滑油供給施設に被害を与えている。

     

    ウクライナによるドローン攻撃、ミサイル攻撃、鉄道網の破壊などが効果的に行われている。これが、ロシアのインフラへ大きな傷跡を残している。

     

    (5)「5つ目、輸出市場の縮小だ。伝統的にロシア防衛産業企業は外国への輸出で損失を補填してきたが、制裁のために輸出が遮断されたり取引が延期されたりするケースが増えた。例えばインドネシアとエジプトはSu35戦闘機を購入する計画だったが、これを取り消した。インドは海軍艦艇に搭載するガスタービン部品の需給問題で契約を取り消した。輸出による収益が減り、企業は内需用低価格契約で生じる損失を埋めるのが難しくなった。ディフェンスブログは危機が単なる一時的な障害でなく、ソ連崩壊後の最悪レベルの構造的危機と分析した」


    武器輸出は、ウクライナ侵攻前に米国と1位2位を競うほどの実績を持っていた。それが、納品遅延ですっかり信用を失いキャンセルされている。いったん失った市場は、簡単に取り戻せないのだ。

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    ロシアとウクライナの戦争は、ロシアのプロパガンダが吹聴する筋書きとは逆に、これまでのところウクライナが勝ち続けている。トランプ米大統領でさえ9月23日、自身のSNSで「ウクライナは欧州連合(EU)の支援を受けて戦いに勝利する立場にある」と表明した。ロシア寄りであったトランプ氏が、米情報部門からの報告でようやく真相を知ったと指摘されている。

     

    『日本経済新聞』(10月15日付)は、「ウクライナは勝利している」と題する歴史学者ハラリ氏の寄稿を掲載した。ハラリ氏は、1976年イスラエル生まれ。歴史学者、哲学者。著書に『サピエンス全史』『NEXUS 情報の人類史』など。

     

    ロシアとウクライナの戦争は、ロシアのプロパガンダが吹聴する筋書きとは逆に、これまでのところウクライナが勝ち続けている。ロシアは22年2月24日、ウクライナの全土を制圧して独立国家としての存在に終止符を打つべく全面攻撃に乗り出し、戦争は激しい局面へと入った。

     

    (1)「ウクライナ軍は戦力で劣るにもかかわらず、ロシア軍のキーウ攻撃を退け、世界を驚かせた。その後22年の夏の終わり頃、反撃に転じた。東部ハルキウ州と南部ヘルソン州の2カ所で大きな勝利を収め、22年の侵攻当初にロシア側に占領された領土の多くを解放した。それ以降、両陣営とも限定的な前進はあったにせよ前線はほとんど動かなくなった。ロシアは絶え間なく前進しているという印象を与えようとしているが、22年春以降、キーウやハルキウ、ヘルソンといった戦略的に重要な大都市の攻撃目標を一つとして制圧できていない」

     

    軍備で劣勢のウクライナ軍が、ロシア軍の侵略に対抗して戦える源泉は、「戦闘方式」にある。NATO軍仕込みで、前線部隊に作戦指揮を任せる自主性だ。ロシア軍は、作戦司令部の命令で戦うので前線部隊には何の自主性も与えられていない。中国軍も、全く同様だ。

     

    (2)「25年に入ってから、兵士の死傷者数20万~30万人という代償を払ってロシア軍がなんとか獲得できたのは、前線周辺のわずかな領土だ。その面積は最も信頼できる複数の情報源によると、ウクライナ全土の約0.%にすぎない。ロシア軍が、25年のスピードで侵攻を続けるとすると、ウクライナの残りの領土すべてを征服するのに理論上、約100年の歳月と数百万人の死傷者が必要となる。それどころか、ロシアが25年8月時点で支配していたウクライナ領土は、22年8月時点より小さい」

     

    ロシア軍が、無謀な作戦命令で多くの犠牲者を出している。旧日本軍と同じで、司令部の作戦命令で戦っているからだ。

     

    (3)「ウクライナにとって適切な場面で戦術的に撤退して軍の体力と兵士の命を温存することは、軍事的に理にかなっている。ロシア側はその間、あまり意味のない前進を勝ち取ろうと高い代償を払って攻撃を仕掛け、自ら流血と疲弊を繰り返すことになるからだ。ウクライナは徹底抗戦でロシアを膠着状態に追い詰めた、というのが本当のところだ。オーストラリア軍の退役少将ミック・ライアン氏は近著の中で、こう記している。もし03年にイラクに侵攻した米軍が3年以上かけてもイラク全土の20%しか制圧できず、死傷者が100万人に達していたとしたら、これを米軍の勝利と呼ぶ人はいるだろうか。ロシアが置かれた状況はそのようなものだ、と」

     

    ウクライナは、前線指揮官の判断で戦術的に撤退し、軍の体力と兵士の命を温存している。言うならば、義経がみせた壇ノ浦での「八艘飛び(はっそうとび)」である。現場に合せた戦い方を採用している。

     

    (4)「北大西洋条約機構(NATO)はウクライナに兵器や他の物資を大量に供与しているが、NATO軍が公式に実際の戦闘に加わったことはない。ウクライナ軍は22年、限られた兵器だけでキーウ、ハルキウ、ヘルソンの勝利を手にしたのだ。当初から全面支援を受けていれば、ロシアが軍隊と戦時経済を立て直すいとまを与えず、22年末か23年夏には勝利していたかもしれない」

     

    NATOは、ロシア軍の動向を逐次、ウクライナ軍へ通報している。これが、ウクライナ軍が敏捷に動ける要因である。

     

    (5)「ウクライナ防衛の最大の弱点は今も、同国を支援する西側諸国の考えだ。制空権と制海権の掌握に失敗したロシアは、地上でもウクライナの防衛線を突破できない以上、米欧各国の意志をくじいてウクライナを窮地に追い込むしかない。「自国の勝利は必然」とのプロパガンダで米欧各国の意欲をそぎ、各国がウクライナ支援から手を引けば、ウクライナが降伏を余儀なくされると期待している。こんなプロパガンダに屈すれば、ウクライナにとっては悲劇だ。またNATOの信頼も失墜し、強まるロシアの脅威に対して最も優れた防衛力を持つウクライナを失うことになる」

     

    ウクライナ軍100万は現在、欧州で最強軍隊とされる。NATOは、このウクライナ軍がロシアに屈することになれば、どれだけ痛手であるか明白だ。ウクライナ軍への軍備支援は、NATO自身の防衛にもなっている。

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    米国防総省は、国内のミサイル関連企業に対し、極めて短期間に生産量を2倍、場合によっては4倍に引き上げるよう求めているという。米国は、ロシアのウクライナ侵攻を止めさせるために、ウクライナ軍へミサイル発射制限を緩和する意向をみせている。こうした「緊急需要」を賄うべく、発注を急いでいるのかもしれない。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月29月付)は、「米国防総省、企業にミサイル生産の倍増要請 中国念頭」と題する記事を掲載した。

     

    事情を知る関係者によると、最も需要の大きな重要兵器の生産を加速しようとする取り組みは、国防総省の幹部と複数の米ミサイルメーカーの幹部との間で行われた一連の会合を通じて進められてきた。スティーブン・ファインバーグ国防副長官は、「軍需品加速評議会」と呼ばれるこの取り組みで主導的な役割を果たしており、一部企業の幹部に毎週電話をかけているという。

     

    (1)「国防総省は、業界を挙げた取り組みを進めるため、6月に省内で主要ミサイル関連企業を集めて会合を開いた。この会合にはピート・ヘグセス国防長官とダン・ケイン統合参謀本部議長が出席し、複数の兵器メーカーや、アンドゥリル・インダストリーズといった新規参入企業、ロケット推進剤や電池など重要部品のサプライヤー数社の幹部らも参加した」

     

    トランプ米大統領は、23日のウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談で、ウクライナ軍が米国製の長距離兵器を使用してロシア国内を攻撃することに対する制限を解除する用意があると伝えた。ただ、制限を解くと確約はしなかった。ゼレンスキー氏は、国連総会に合わせて開いた首脳会談で、トランプ氏に対し、ウクライナ軍にさらに多くの長距離ミサイルを提供し、ロシア領内の標的攻撃に長距離ミサイルを使用することを認めるよう要請した。トランプ氏は反対しないと答えたが、両国当局者によると、そうした攻撃を禁じる米国の方針を撤回すると約束はしなかった。このように、米国は、ミサイルを増産しなければならない「緊急事情」を抱えている。

     

    (2)「国防総省のショーン・パーネル報道官は、こうした取り組みに関する質問に対し、「ドナルド・トランプ大統領とヘグセス長官は、わが国の軍事力を拡大し、軍需品生産を加速するために異例の手段を模索している。今回の取り組みは、防衛産業のリーダーと国防総省上層部の協働によるものだ」と答えた」

     

    トランプ氏は、ミサイル増産に強い関心を持っているという。ノーベル平和賞受賞を本気で期待している表れか。それには、多くのミサイルによって戦争拡大を防ぎ、当事者を停戦のテーブルに着かせなければならないのだ。

     

    (3)「だが、政府内外の関係者の中には、政府が掲げる目標が現実的ではないと懸念する声もある。個々のミサイルの組み立てには完全に仕上げるまでに2年を要する可能性があるほか、新規サプライヤーからの兵器を米軍の使用に十分な安全性・信頼性のある物として試験・認定するには数カ月を要し、数億ドル単位の費用がかかることもある。生産加速に必要な資金についても疑問が残る。7月に署名されたトランプ政権の「大きな美しい法案」では、5年間に追加で250億ドル(約3兆7200億円)の軍需品調達資金の提供が決まった。しかし、アナリストらによれば、国防総省の積極的な目標を達成するにはさらに数百億ドルが必要になるという」

     

    短期間にミサイルの増産は不可能である。中には、完成までに2年を要するものもあるという。

     

    (4)「戦略国際問題研究所(CSIS)のトム・カラコ氏は、「企業は見込みだけでこれらの兵器を作るわけではない」と指摘、「政府が正式な契約として示すまで待つ必要がある。資金による支援の表明がなければならず、言葉だけでは不十分だ」と語る。ロッキード・マーチンやレイセオンなどの防衛関連企業は、潜在的な需要急増に備え、労働力を増やし、工場の床面積を拡張し、予備部品の在庫を増やすなどの対応を取ったとしている。しかし、一部のサプライヤーは新たな目標の達成に苦慮しており、政府から資金が提供されていない注文に多額の投資をすることに慎重だという」

     

    米国政府が、企業へ資金手当を十分に行なわなければ、緊急増産は困難であるという。そういう面倒を十分にみていないところをみると極めて切迫した事情にあると思えないのだ。通常の在庫不足を、早急に正常化させるという意味かも知れない。

    あじさいのたまご
       


    ロシア大統領プーチン氏は、なぜウクライナ侵略戦争始めたのか。プーチン氏は、北大西洋条約機構(NATO)の包囲網からの脱却、ウクライナ東部のロシア語話者マイノリティーの保護などと、もっともらしい理由を挙げている。だが、これは表向きの話だという。本心は、ウクライナがロシアよりも経済的に発展すれば、プーチン氏の力量が非難される。そこで、ウクライナを自国領へ占領してしまえば、そういう非難される事態は起こらない。こういう単純動機というのだが。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月25日付)は、「プーチン氏がウクライナの繁栄を許せない理由」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアが、ウクライナ支配にこだわる理由については、客観的な経済データに基づいて、プーチン氏の主張よりもはるかに説得力のある説明ができる。プーチン政権にとって最大の脅威は、ロシアとその支配から逃れた周辺国の繁栄の格差が拡大していることだ。

     

    (1)「旧ソ連の元衛星国で欧州連合(EU)に加盟した国は1990年以降、国内総生産(GDP)が平均でほぼ10倍になった。一方、ロシアおよびその西側国境沿いの非EU加盟国のGDPの増加率は、同じ期間で4倍にとどまった。その結果、わずか一世代で、ロシアの影響圏を脱した国々の経済力の合計がロシアを上回るという、驚くべき逆転が起きた」

     

    旧ソ連の元衛星国は、EUに加盟した国と非EU加盟国(ロシアを含む)の間で、GDPの増加率に大差がついている。前者の方が、平均でほぼ10倍。後者は4倍にとどまった。経済制度の違いが、これだけの差を生んだ。

     

    (2)「1990年時点で、ロシア連邦のGDPはEUに加盟した元衛星国のGDP合計の2倍だった(ロシアが5000億ドル=約74兆円、元衛星国は約2500億ドル)。今では、EUに加盟した元衛星国のGDPは合わせて2兆4000億ドル、ロシアは2兆2000億ドルで、繁栄の差は年々広がっている。プーチン氏は2001年、ロシア経済が目覚ましい成長を遂げて2020年までに世界第5位の経済大国になると予想したが、現状は大きく異なり世界11位だ」

     

    プーチン氏は2001年、ロシア経済が2020年までに世界第5位の経済大国になると予想した。現状は世界11位だ。何が、こうした予想違いを生んだか。ロシアが、完全な市場経済制度にならなかった結果である。

     

    (3)「プーチン氏にとって、ウクライナが経済的に成功するとの見通しは深刻な脅威だ。ロシア国民は、ウクライナを民族的・言語的にロシアに近い存在として見ることに慣れているため、ウクライナが繁栄すればロシア国内に厄介な問題が生じる。両国がほぼ同じ条件であるならば、経済的な成功で大きな差が生じる唯一の説得力ある理由は、ロシア自体の政治・経済の基本構造になるだろう。そうなるとロシア国民は、化石燃料が生み出す過剰利潤への過度な依存は続けられないのではないかという疑問を持ち始めるかもしれない。その利潤の大半はモスクワやサンクトペテルブルクの腐敗したエリートが支配し、浪費している」

     

    プーチン氏にとって、ウクライナが経済的に成功すると深刻な脅威だ。ウクライナとロシアは、民族的・言語的にロシアに近い存在であるからだ。プーチン氏の統治能力に疑問が沸くからだ。

     

    (4)「ウクライナが、ロシアの影響圏から完全かつ恒久的に切り離されれば、ロシアは包囲される。ただしNATOにではなく、民主主義と経済の繁栄を享受する広大な地域によってだ。欧州との約5800キロメートルの国境に広がる弧の形をした地域は巨大な鏡となり、ロシア国民はその中に自国制度のみじめな失敗を見ることになる。これは大陸規模の「ベルリンの壁」の再現となり、ロシアにとって屈辱的なものとなるだろう」

     

    ウクライナがロシアと別世界で経済発展すると、ロシア国民は自国制度のみじめな失敗を見る羽目になる。プーチン氏は、これに耐えられないのだ。

     

    (5)「根本的な現実は、経済にある。そこから導き出される結論は以下の通りだ。まずロシアの近隣に位置する旧衛星国の目覚ましい発展は、ロシアの現体制の存続には現実的な脅威だ。そのため、ロシアとEUの境界に位置する全ての国、とりわけロシア語話者のマイノリティーがいるバルト3国は、将来ロシアの標的になる可能性が高い」

     

    ロシアとEUの境界に位置する全ての国、とりわけロシア語話者のマイノリティーがいるバルト3国は、将来ロシアの標的になる可能性が高い。

     

    (6)「二つ目の結論は、ウクライナが自らの存在を交渉で放棄することができないように、ウクライナの完全征服はプーチン氏にとって交渉の余地のない、存亡に関わる問題だ。それはプーチン氏が公に述べる理由のためだけではない。三つ目に、米国はロシアと講和条件を交渉するのは無駄だと理解すべきだ。ロシアの現政権はウクライナの征服や抑圧を自発的にやめることは決してない。最後に、欧州は長期的な防衛体制を強化する必要がある。これにはウクライナの戦闘能力の強化や、ウクライナおよび他の取り残された国のEU加盟を急ぐことが含まれる。ウクライナの戦いは、欧州の民主主義の繁栄を守るための共同の闘いだ」

     

    ロシアの現政権は、ウクライナの征服や抑圧を自発的にやめることは決してない。欧州は、長期的な防衛体制を強化する必要がある。プーチン氏という一人の人物が、自己のメンツを守るために他国を攻め滅ぼすことを厭わない。こういう「戦国時代」のような話が、亡霊となって現代をさまよっている。「人間の業」と言うべきことだ。

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