勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ロシア経済ニュース時評

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    G7のウクライナ支援策

    中国のロシア支援が明確

    中国の自国利益優先とは

    NATOが軍事支援協定

     

    中国は、意に沿わぬ国に対しところ構わず「戦狼外交」で威嚇してきた。その中国が一転して、「仲介外交」というハト派に転じ、ウクライナ侵攻の平和解決に向けて特使を派遣した。中国特使は5月16~17日に、最初の訪問国としてウクライナへ。次は、19日にポーランドへ足を伸ばしたが、いずれも厳しい反応が返ってきた。中国特使は、ウクライナでゼレンスキー大統領と会談したが、ウクライナ当局はその事実すら発表せず黙殺された形だ。よほど、ウクライナを怒らせた会談内容であったのであろう。

     

    中国特使は、ポーランドでもほぼウクライナ同様の対応が返ってきた。おまけに、ロシアへ武器の支援をしたならば、欧州との関係で重大な結果をもたらされると警告された。中国特使が、「玄関払い」の扱いを受けることになったのだ。およそ、「特使」という扱いを受けず、厄介者扱いされたのである。

     

    ロシアは、ウクライナを侵略した。中国は本来、そのロシアを説得し侵略行為を中止させなければならない立場である。この重大な事実に触れず一方的に停戦を求めても、ウクライナが聞く耳持たぬのは当然だ。ウクライナは現在、侵略された国土の奪回を求めて反攻作戦の準備をしている最中である。そのウクライナが、中国の「和平案」を受け入れることは、ロシアの侵略を認めることだ。中国は、こうした不条理な和平案を持ち込んだのである。外交センスが、完全にズレていることを示した。

     

    G7のウクライナ支援策

    こうした前哨戦の後、5月19~21日にG7広島サミットが開催された。発表された共同宣言の最初の項目は「ウクライナ」である。次のような内容だ。

     

    1)国際法の重大な違反であるロシアによるウクライナ侵攻を改めて最も強い言葉で非難。

    2)ロシアの残忍な侵略戦争は国際社会の基本的な規範、規則、原則に反し、全世界への脅威だ。

    3)永続的な平和を取り戻すため必要な限り、ウクライナへの揺るぎない支援を再確認する。ウクライナに対する外交、財政、人道、軍事的な支援を強化する。

     

    このG7の共同発表によれば、中国の和平案は「白と黒」の関係に立つ。中国案が12項目からなるが、主要部分は次の点である。

    1)すべての国の主権の尊重

    2)冷戦思考からの脱却

    3)敵対行為の停止

    4) 和平交渉の再開

     

    1)は、文字通りに読めば、ロシアの侵略を認めない前提に立っている。ロシアは、明白にウクライナの主権を侵害したからだ。だが、NATO(北大西洋条約機構)が加盟国を増やしてロシアの主権を脅かしたので、ウクライナ侵攻はロシアの「自衛戦争」という位置づけと理解すれば、ロシアの主権尊重という意味合いになる。両方にとれる「曲球」である。

    2)は、「ロシアの主権尊重」と理解すれば、NATOがウクライナを支援するのは「冷戦志向」という解釈になる。このウクライナへの支援を止めろという文脈だ。

    3)は、「ロシアの主権尊重」の立場から言えば、ウクライナが戦闘行為を中止すべきという結論になる。

    4)は、ロシア主導で和平交渉を行う、という結論になるであろう。

     

    以上のように解釈すると、中国の和平案は中立を装った「ロシア提案の和平案」と言って差し支えないほど、不公平な案である。この裏には、中国の台湾侵攻の意図が隠されていることに気づかねばならない。つまり、台湾の主権は中国にあるという解釈である。だが、中国政府の主権は台湾に及んでいないのだ。選挙で選ばれた台湾政府が、国民と領土を統治しているもので、台湾に国家主権が成立する。中国の台湾侵攻は、国際法違反行為になる。ロシアのウクライナ侵攻と中国の台湾侵攻は、同一次元において完全な国際法違反となる。

     

    中国のロシア支援が明確

    実は、今年2月にインドで開催されたG20の財務相・中央銀行総裁会議で、ウクライナを侵攻するロシア非難の合同宣言を見送らざるを得なかった一件がある。ロシアと中国が反対したからだ。他の18カ国は、ロシア非難で一致していた。ここから読み取れることは、中ロが紛う方なき「一枚岩」の団結を示している点である。

     

    共同宣言案の中で、ロシアによる軍事侵攻を「最も強い表現」で非難するという部分について、中国が受け入れを拒否した。ロシア政府は、西側の「反ロシア」諸国がG20を「不安定」にしたと非難した。G20議長国のインドは、その後に「議長総括」を発表。その中で、ウクライナの状況と対ロシア制裁について「複数の異なる情勢分析」があったと指摘して内幕を明かした。中国とロシアが反対したのだ。

     

    これまでの国連におけるロシア非難決議の採決では、ただ「賛成・反対・棄権」の中から選択するだけで、その理由は不明であった。だが、今年のG20の財務相・中央銀行総裁会議では、中国が国連決議におけるような「棄権」でなく、堂々とロシアと同一意見であることを示した。この一点を以て「中ロ」は一体化していることを明確にした。厳密に言えば、中国にはウクライナ侵攻での公平な「和平仲介」国になる資格がないのだ。(つづく)

     

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    これまで穴だけであったウクライナの防空体制は、大きく前進している。5月16日未明、ロシア軍はウクライナのキーウへ18発ものミサイル攻撃を集中させたが、すべて撃墜したという。ロシア軍は、ミサイル攻撃によってウクライナ軍の盲点を探り出しているが、今回の攻撃の失敗でショックを受けたであろう。

     

    『ロイター』(5月16日付)は、「ロシア、未明にキーウ空爆 ウクライナ「   『異例の激しさ』も全ミサイル撃墜」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア軍は16日未明にウクライナの首都キーウ(キエフ)を複数回にわたり空爆した。市当局者はドローン(無人機)や巡航ミサイルを使った異例の激しい空爆が行われ、おそらく弾道ミサイルも使用されたとの見方を示した。

     

    (1)「その後、ウクライナ軍は未明に発射されたミサイル18発全てを撃墜したと表明。うち6発は極超音速ミサイルだったと述べた。キーウへの空爆は今月8回目。キーウ市の軍管理当局責任者は「異例の頻度だった。最も短時間に最多の攻撃ミサイルがあった」と通信アプリ「テレグラム」に投稿。「暫定情報によると、キーウ空域で敵のターゲットは大部分が検知され、破壊された」と説明した」

     

    ロシア軍のミサイル18発が、すべて空中で捕捉され撃墜された。ウクライナ軍の守備体制が完璧になって来た証明である。ウクライナ軍は、ハイテク機器の操作を習得する能力が極めて高いと指摘されている。しかも、それを応用してさらに精度を上げる点で極めて優秀という。ロシア軍をはるかに上回るとされている。

     

    (2)「ウクライナ軍は、ミサイル18発、イラン製無人機「シャヘド」6機、無人偵察機3機をウクライナ国内で撃墜したと表明。撃墜したミサイルは航空機から発射された弾道ミサイル「キンジャル」6発、黒海の艦船から発射された巡航ミサイル「カリブル」9発、地上発射型ミサイル「イスカンデル」3発としている。ウクライナ軍のナエフ統合軍司令官は「パニックと混乱を引き起こすことが敵の狙いだろう。だが(キーウを含む)北部作戦地域では全てが完全な管理下にある」と述べた」

     

    ウクライナ軍のザルジニー総司令官は16日、同日未明にロシアから発射されたミサイル18発をすべて撃墜したと述べた。ザルジニー氏はSNS「テレグラム」への投稿で、同日午前3時30分ごろ、ロシアがウクライナの北方、南方、東方から空中、海上、地上発射型のミサイル計18発を撃ち込んできたと発表した。内訳はミグ31K戦闘機6機から発射された極超音速ミサイル「キンジャル」6発、黒海の船舶から発射された巡航ミサイル「カリブル」9発と、地上発射のミサイル3発。以上は、『CNN』(5月16日付)による。

     

    下線部のように、キーウの北・南・東の3方向からの同時攻撃である。ロシア軍は、多方面からの攻撃でキーウ防空体制を混乱させようとしたが失敗した。しかも、極超音速ミサイル「キンジャル」が6発も打ち込まれたが、すべて撃ち落とされた。「キンジャル」とは、ロシア軍の極超音速空対地ミサイルで、最大速度はマッハ10とされ、核弾頭も搭載可能だ。2017年12月に就役し、2022年現在はロシア軍の南部軍管区西部軍管区空軍基地に配備されているという。この最新鋭ミサイル6発が撃ち落とされたのは、ウクライナ防空システムが完璧であることを示した。

     

    (3)「ロイター記者によると、キーウでは非常に大きな爆発音が連続して聞こえた。クリチコ市長は、市の西部地区では落下した破片によって数台の車で火災が起き、建物が損傷したと説明。3人が負傷したという。また、キーウ市の南東に位置し主要な民間空港があるボリスピリ市南部では防空システムが無人機攻撃を撃退しているとした。空港は現在閉鎖されている。軍管理当局によると、他の地区では大きな被害は見られず、現時点で負傷者の情報はない。16日未明にはウクライナのほぼ全土で空襲警報が発令された。

     

    ロシア軍のミサイルは、すべて空中で捕捉されたが、残骸が地上へ落下した破片で火災が起きている。これによる被害で、3人が負傷した。犠牲者はゼロである。中国は、この状況をどんな思いで見ていたか。台湾侵攻の場合、米国からの防空システムが供与されれば無傷で済むのだ。

     

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    ウクライナ軍は、気象条件の回復を待って領土奪回作戦を行うとしている。防衛側に立つロシア軍は、深刻な人員と弾薬の不足に直面しているとの分析が、米国家情報長官によって明らかにされた。ロシア側の攻撃主力部隊になっている民間軍事会社ワグネルのプリコジン氏は、弾薬不足を理由にして、5月10日に撤退すると発表。ロシア軍の弾薬不足は深刻な様子である。

     

    米『CNN』(5月5日付)は、「『ロシア、今年大きな攻撃は不可能』米国家情報長官」と題する記事を掲載した。

     

     ヘインズ米国家情報長官は4日、ウクライナとロシアの戦争について、ウクライナ軍の反攻の成否にかかわらず、ロシア軍は弾薬と人員の不足により「今年大きな攻撃」をかけることはできないとの見方を示した。

     

    1)「ヘインズ氏は上院軍事委員会に対し「実際、ロシアが強制動員を開始せず、イランなど既存の供給元に加えて第三者からのかなりの弾薬供給を確保しなければ、小さな攻撃すらロシアにとっては続けることが難しくなるだろう」と述べた。さらに、ヘインズ氏はロシアのプーチン大統領について、「おそらく」ウクライナにおける短期的な野心を縮小したと指摘。「ウクライナの東部と南部の占領地支配を強固にし、絶対にウクライナを北大西洋条約機構(NATO)の加盟国としない」ことを勝利と考えていると付け加えた。

     

    プーチン氏は、勝利の条件として東部・南部の占領地とウクライナのNATO加盟阻止に固執すると見られる。これらが、認められない限り、和平交渉に応じないのだろう。

     

    2)「ただ、こうした評価にもかかわらず、ロシアが今年停戦を交渉する可能性は高くないと同氏は述べた。政治的な要素が「プーチン氏の考えを変える」ことがない限り、そうした交渉に入る公算は極めて低いとした。また、ロシア軍はウクライナ軍の反攻に備えて「新たな防衛態勢」を整えつつあり、「4月に獲得した領土は、その前の3カ月のどの月よりも少なかった」と説明した。

     

    停戦交渉は、今年中に行う可能性が低いとしている。来年が、ロシア大統領選であるので弱みを見せられないというのであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月5日付)は、「ワグネル、10日にバフムト撤退表明『弾薬不足で損失』」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏は5日、激しい戦闘が続いているウクライナ東部の要衝バフムトから部隊を10日に引き揚げると表明した。弾薬不足が解消されず、部隊に重大な損失が生じているためとした。

     

    (3)「プリゴジン氏は、通信アプリ「テレグラム」で「弾薬不足で我々の損失は日々飛躍的に増大している」と撤退の理由を説明し、代わりにロシアの正規軍を投入するよう求めた。撤退表明に先立ってワグネルの兵士だとする複数の遺体の前で撮影したビデオも投稿した。弾薬の補充が足りないと主張し、ゲラシモフ参謀総長やショイグ国防相を強く批判していた。プリゴジン氏はこれまでも発言を撤回したことがあり、実際にバフムトから撤退するかは不透明だ。弾薬の供給を巡りロシア軍に圧力をかける狙いの可能性もある。ロシアのペスコフ大統領報道官は5日、プリゴジン氏が主張した弾薬の供給不足の指摘について「コメントできない」と記者団に述べた」

     

    ワグネルは、撤退日を5月10日としている。これは、5月9日が「祖国大勝利記念日」であることへの配慮であろうか。実際に、撤退するかどうかは不明だが、弾薬不足を理由にしていることは看過できないことだ。米国家情報局長の発言を裏付けているのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月2日付)は、「激戦地でロシア兵2万人死亡、半数がワグネル 米政府」と題する記事を掲載した。

     

    米政府高官は1日、ロシアが侵攻するウクライナ東部ドネツク州の最激戦地バフムト周辺などで2022年12月以降に2万人以上のロシア人が死亡したとの推計を示した。その半数がロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員だと明らかにした。

     

    (4)「米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日、記者団に「バフムトでの大規模な攻勢は失敗した。ロシアは高い代償を伴った」と述べた2万人の死者を含む死傷者は計10万人ほどに達し、軍事品の在庫を使い果たしたとも指摘。ワグネルはロシアの刑務所から採用して戦地に派遣しており、犠牲者の多くは元囚人だったとの認識を示した。カービー氏は、「十分な戦闘訓練や指導などがないまま、戦地に送り込まれた」と話した。

     

    ロシアの死傷者数は、昨年12月以降に10万人に達している。武器弾薬を使い果たしたと見られるのだ。終戦間際、敗色濃厚な日本軍を思わせるようなニュースである。

     

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    ドイツ外相の強い中国警告

    ロシアの長期的耐性に疑問

    中国の経済進出に拒否感も

    戦狼外交で窮地に立つ矛盾

     

    ロシア経済は、ウクライナ侵攻後1年を経て綻びが目立ってきた。頼みの原油と天然ガスの主要市場であった欧州を失い、価格も大幅に低下しているからだ。これが、ロシア経済を直撃している。中国は、こういうロシアに対して精神的支援を送る。西側諸国は、中国が台湾侵攻を目論でいるので、ロシアを支援しているものと解釈する。その結果、「反中防衛網」を作らせる副産物を生んでいる。中国にとっては、全く割の合わない事態に遭遇しているのだ。 

    中国が、自らを包囲させる事態を生んでまでもロシアを支援する理由は何か。それは、二つの側面が考えられる。一つは、習近平氏とプーチン氏の個人的関係である。この両者は、終身職を狙っている。二人は1歳違い(プーチン氏が上)であり、権威主義国家のリーダーとして君臨したいという個人的欲望に基づくのだ。もう一つは、中国の台湾侵攻の際にロシア軍が北方で日本を軍事牽制して、台湾防衛へ集中させないという思惑である。

     

    こう見ると、中国はロシアを支援する理由がある。中国は、これに伴う反作用を無視することで、自国経済が蝕まれるのは確実である。西側諸国が、中国・ロシアを一体的に捉えで警戒姿勢を強めている結果だ。 

    ドイツ外相の強い中国警告

    最近では4月14日、EU(欧州連合)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、中国がウクライナ危機を巡り、ロシア軍撤退による政治的解決を模索しない限り、EUが中国と信頼関係を持つことは「極めて困難」との見方を示した。 

    また、ドイツ外相ベーアボック氏は訪中した14日、中独外相の共同記者会見で「紛争は平和的に解決されなければならない」と述べ、台湾海峡の緊張について重大な懸念を持って注視していると警告した。中国のいかなる台湾支配の試みも容認できず、欧州に深刻な影響を及ぼすと表明したのだ。「一方的で暴力的な現状変更は、われわれ欧州人にとって容認できない」とも語った。フランスのマクロン大統領の中国擁護論とは、一線を画したのだ。欧州の盟主は、ドイツであるという自負心であろう。 

    前記のように、EU外相にあたる外交安全保障上級代表とドイツ外相が、正面切って中国へ不信感を突きつけたことは、中国にとって痛手だろう。マクロン氏からせっかく「親中国論」を引き出したが早速、EUとドイツからしっぺ返しを受けた格好である。中国のロシア支援は、台湾侵攻問題を控えているだけに危機感を増幅させているのだ。

     

    ロシア経済の弱体化は、今年1~3月期の経常収支黒字の大幅減少と財政赤字に現れている。2023年1~3月期の経常収支は、黒字が前年同期比約73%減少し186億ドルとなった。エネルギー収入の大幅な減少が原因だ。石油・ガス収入が、前年比45%も減少したのである。 

    1~3月期の財政収支(速報値)は、290億ドルの赤字になった。歳出が急増した一方、エネルギー収入が減少した結果だ。ロシア政府は、2023年の財政赤字がGDPの2%を上回ないとしている。だが、エネルギー収入の減少と軍事費増加で、財政赤字が膨らむのは不可避である。 

    経常収支の赤字接近が、ロシア経済を揺さぶることは確実である。それは、23年のGDP成長率に表れる。ただ、ロシア政府は基本統計の公表を中止しているので、外部からの推計を困難にさせている。国際機関でも幅のある予測値になっている。 

    OECD(経済協力開発機構)は、最も悲観的な見方を示した。23年のロシア経済成長率をマイナス2.5%と予想し、昨秋のマイナス5.6%から上方修正した。EUが、ロシアのエネルギー輸出を抑えるために講じた措置による影響が、当初予想よりも限定的と見ていることだ。

     

    IMF(国際通貨基金)は、0.7%のプラス成長を予想する。理由は、非常に強力な財政措置を講じることを上げる。エネルギー輸出による収入も底堅いと見る。西欧諸国による禁輸措置を受けているが、それに代わる輸出先を見つけたことが大きいとしている。 

    悲観的な見方も、楽観的な見方も、正確な統計データの発表が中止されているので「手探り状態」である。唯一の手がかりは、ロシアのエネルギー輸出状態と財政赤字がどこまで膨らむかにかかっている。楽観は禁物である。 

    ロシアの長期的耐性に疑問

    英国際戦略研究所(IISS)のマリア・シャギナ上級研究員は、ロシア経済が経済制裁に対して短期的に耐性を示しても、長期的な見通しは暗いと指摘する。その結果、ロシアは内向き志向を強め、中国に過度に依存するようになるだろう見る。資金的に見て、24年以降に窮迫すると予測されているのだ。23年の財政赤字が膨らめば、ルーブル相場は下落して実態悪をさらけ出す。現在は、1ドル=81ルーブルだが、ルーブル安傾向を強めている。 

    ロシア中央銀行は、航空部門でリスクが高まっていると指摘している。新型の機体や部品の不足により、保守面で問題が生じかねないのだ。ロシアの現役航空機の77%が欧米製である。国内旅客輸送量は、97%が欧米製の航空機が担っている。それだけに、部品供給ストプは航空輸送の安全に重大問題を発生させかねないのだ。換言すれば、墜落事故の発生である。(つづく)

     

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    ロシア国内は、ウクライナ侵攻1年が経ち戦況がはかばかしくないことから、底流には批判的ムードが高まっている。政府高官の中には、国外逃亡を計る気運も出ているという。これを回避するには、高官の海外逃亡を未然に防止するのが最善と判断し、パスポートを没収している。この動きは、地方公務員や民間人にも広がっている。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(4月3日付)は、「ロシア、政府高官のパスポート没収 国外逃亡を防止」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア保安当局は、プーチン体制で情報漏洩や国外逃亡への懸念が高まっているとみて、海外渡航をさせないように政府高官や国営企業幹部のパスポートを没収している。ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、保安当局は政府内の海外渡航の要件を厳しくし、一部の著名人や元高官に対してパスポートなど渡航関連書類の引き渡しを求めている。

     

    (1)「このような圧力の高まりは、ロシア大統領府と旧ソ連時代の国家保安委員会(KGB)の後継機関であるロシア連邦保安局(FSB)が国内の民間人エリートによる忠誠心に深い疑念を持っていることを映している。民間人エリートの多くは、個人的にはウクライナとの戦争に反対しており、生活スタイルへの影響にやきもきしている」

     

    治安取締機関のロシア連邦保安局は、国内の反戦世論の盛り上がりを防ぐべく、民間人エリートの動向にも注意している。

     

    (2)「ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ロシアが「センシティブ」な分野で働く一部の人々に対して渡航制限を強化したことを認めた。同氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)に「海外渡航には、より厳しい規則がある。ある部分では正式に、またある部分では特定の従業員に関し、特定の判断で決まる」と語った。「特別軍事作戦の開始以来、この問題により多くの注意が払われている」と指摘。旧ソ連時代から、中級の国家機密にアクセスできる政府高官は、省庁や企業に設置された「特別部門」にパスポートを預けることが求められてきたという」

     

    元政府高官や企業の幹部らによると、旧ソ連時代に保安当局が政府高官にパスポートを預けさせることはほとんどなかったという。現在は、ソ連時代よりも統制を厳しくしている。

     

    (3)「ロシアが、2014年にクリミアを侵攻した後、この状況が変わった。保安当局が米国や英国などへの渡航について警告するようになった。関係者によると、22年のウクライナへの全面的な侵攻以降は、渡航制限がより広範に適用され、国家機関に所属する個々の保安担当者の対応に大きく依存するようになった。このため、国家機関によって保安対策は異なる。中堅クラスの人物さえも海外渡航を控えるよう求められるところもあれば、高官に問題のない範囲内で海外渡航の包括的な許可を与えているところもある」

     

    ロシアのクリミア侵攻後、政府高官などの米英などへの渡航制限がかかるようになった。

     

    (4)「関係者によると、ある国営の大手事業会社の幹部は、正式な許可なく首都モスクワから車で2時間以上の移動を禁じられているという。また、FSBの当局者が、過去に国家機密にアクセスしていた元政府高官に対し、パスポートの引き渡しを求めたケースもあるという。さらには国家機密に一度もアクセスしていない人であっても同様の対応の場合があったと、事情に詳しい関係者は指摘している」

     

    国営企業の幹部も、許可なくモスクワから2時間以上の移動を禁じられている。元政府高官にもパスポートの引き渡しを求めているほどだ。

     

    (5)「ロシア中央銀行の元職員であるアレクサンドラ・プロコペンコ氏は、パスポートの制限は現在、機密情報を取り扱うための人物調査を受けた人以外にも広がっていると述べた。同氏は「保安当局者らは今、特定の人々のところに来て『赤い民間人パスポートを提出してください。祖国の機密情報にアクセスしたことがあるからです。あなたの動きを管理する必要がある』と告げている」と述べた。プロコペンコ氏は国家機密やスパイ行為、国家反逆に関する法律の改正により、ロシアの保安機関はルールを独自に解釈する自由度を確保したと説明した」

     

    現在は、民間人も幅広く網が掛けられ、パスポートの没収が行われている。国内情報の漏洩を抑えようという狙いだ。

     

    (6)「プロコペンコ氏は昨年の侵攻後、中央銀行を辞め、現在はドイツ外交問題評議会の客員研究員を務めている。「基本的にいかなる情報であっても秘密とみなされるため、内部のFSBの当局者があなたは機密情報を持っていると言い始めている。それは何か。なぜ秘密なのか、そして誰が秘密と決めたのかは誰も分からない」とプロコペンコ氏は語った。ロシアの有力紙コメルサントによると、少なくとも7つの地方が地元の公務員に海外渡航をしないように強い勧告を出したという」

     

    地方公務員まで、渡航禁止すべくパスポートの没収を行っている。国家機密漏洩防止の目的である。暗い時代になった。パスポートが戻されるのは、いつになるのか。

     

     

     

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