戦争は痛ましいものである。前途有為の青年が、戦場で斃れるからだ。ロシアが侵攻したウクライナ戦争では、ロシア兵士の戦死者が1万~2万人も出ていると報じられている。このため、著しい兵士の士気低下が起こっているという。
この士気低下の理由が分ってきた。戦死者に、モスクワ出身者がいないことだ。最前線へは,モスクワ出身兵士が出動していないことを覗わせている。これは、偶然でなく政府による意図的な兵士の選別であろう。
『中央日報』(5月5日付)は、「死亡者のうちモスクワ出身はいない、ロシア軍戦死者の悲しい真実」と題する記事を掲載した。
ウクライナを侵攻したロシア軍隊を支えているのはモスクワから数千キロメートル離れた極東・シベリア地域から来た所得が低いいわゆる「土の箸とスプーン」出身だった。
(1)「英紙『タイムズ』は、ウクライナで戦っている多くのロシア兵士が首都モスクワから遠く離れた地方に基盤を置いていると3日(現地時間)、伝えた。寒く土地がやせているシベリア・極東地域や少数民族別に区分された一部の共和国など、ロシア内の非主流地域から来た兵士たちが多かった。ウクライナ戦争が70日以上続いていて、この地域出身の兵士はさらに増えている。ウクライナのシンクタンク、国防戦略センターによると、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はモスクワを除き、主に極東とシベリア地域から毎週200人ずつ入隊するよう要求している」
ウクライナ最前線で戦っているロシア軍兵士は、シベリア・極東地域や少数民族に区分された一部の共和国などの出身者である。戦死してもモスクワから遠く離れた地域であれば、ロシア国民に広く知られないで済むという計算が働いていると見られる。報道統制しているので、好都合なのだろう。プーチン氏は、主に極東とシベリア地域から、毎週200人ずつ入隊するよう要求しているという。これは、200名の戦死者が出るという想定であろう。
(2)「ブチャで戦争犯罪を起したとされる第64分離車両化小銃旅団も、モスクワの東6000キロメートル以上離れた極東地域ハバロフスクの小さな村に基地を置いている。ハバロフスクは中国と国境を接していて、モスクワとは7時間の時差がある。戦争初期はロシア兵士がウクライナ占領地で略奪したテレビ・洗濯機・貴金属・化粧品などをベラルーシの国境都市マジルの宅配会社からシベリアの人里離れた地方などに送る防犯カメラの映像が公開された。ロシアの家族に送ったものと推定される」
ブチャで大量虐殺を行なった部隊は、モスクワの東6000キロメートル以上離れた極東地域ハバロフスクの小さな村に駐屯している。寒村ゆえに貧しく、略奪したテレビ・洗濯機・貴金属・化粧品を故郷へ送ったことが判明している。
(3)「入隊者が、多いため死亡者も多かった。ロシア独立メディア『メディアゾナ』は4月末、ロシア兵士死亡の内容が出てきた1700本余りの記事を研究した結果、少なくとも1774人が死亡(西側は1万5000余人死亡推定)したと推定した。このうちロシア南部の北カフカースのダゲスタン共和国、東部シベリアのブリヤート共和国などだけで200人余り以上が戦死した。メディアゾナは、「モスクワとサンクトペテルブルク地域の戦死者はいなかった」とした。『ワシントン・ポスト』(WP)は、「ダゲスタン・ブリヤート共和国は貧しい地域」と伝えた。ダゲスタン共和国の昨年の平均給与は3万2000ルーブル(約6万円)、ブリヤート共和国の平均給与は4万4000ルーブルだ。モスクワの平均給与は11万ルーブルだ」
ロシア僻地は給与も低く、モスクワ平均給与の3~4割レベルである。それだけに、高い給与に釣られて入隊してくるのであろう。
(4)「ロシア独立メディア『メドゥーサ』によると、ダゲスタン共和国は3月からウクライナ戦争に参戦する兵士たちを募集している。一般兵士の月給は17万7000ルーブルだった。ロシアの今年の最低生活費は1人あたり月1万3000ルーブル程度だ。ウクライナの1カ月派兵で年間生活費を得られる場合があるため貧しい地域からは若者が軍隊に志願入隊する場合が多かった」
一般兵士の月給は、17万7000ルーブル(約33万2000円)である。ダゲスタン共和国の昨年の平均給与は3万2000ルーブル(約6万円)、ブリヤート共和国の平均給与は4万4000ルーブル(約8万2000円)であるから、4~5倍もの高収入である。喜んで入隊するのだろう。
(5)「『メドゥーサ』は、「ダゲスタン共和国の多くの若者たちが貧しい家を立て直し、出世のために軍隊に行こうとする。過去、各地で徴兵人員を制限すると徴集委員会に賄賂を送りさえした」と伝えた。今回の戦争でも多くの人々が入隊した。ロシア国営メディア「リアノボスティ通信」は3月、「ダゲスタン共和国では1週間で300人以上が兵役契約を締結した」と伝えた。しかし、100人以上が戦死した。20代の若い青年たちが多かった」
貧しい地域では、一般兵士の高い給与に目が眩み、応募してくるのであろう。事情を知らないままに、ウクライナ最前線へ送り込まれている。
(6)「高麗(コリョ)大学ロシア語ロシア文学科のチェ・ジョンヒョン教授は、「極東とシベリア地域などは所得が低く生活水準が劣悪だ。他の職業よりも給与がよい軍入隊でお金と名誉を得ようとする者が多い。世論統制もうまくいっていて、ウクライナ戦争の真実について知らずに志願した若い青年たちが多かった」と背景を説明した。続いて「反面、モスクワなど大都市で徴兵しないのはロシア内部で逆風が吹く恐れがあるためだ。モスクワで徴兵するようになれば西側で『ロシアは本当の危機に直面している』と考える可能性もある」と付け加えた」
ロシア軍は目下、辺鄙な地域で一般兵士を募集しているが、モスクワで徴兵を開始するようになれば、募集兵業務が行き詰まってきたことを示す。