ロシアによるウクライナ侵攻は、別名「プーチン戦争」と言われている。プーチン大統領が、一人で始めた戦争であるからだ。開戦前、西側諸国の首脳はプーチン氏と相次いで会談し、ウクライナ侵攻を止めるべく外交交渉に全力を挙げた。それにかかわずの開戦である。外交交渉に精力を使った各国首脳の怒りは爆発している。「金融の核爆弾」とされるSWIFT排除が、一挙に決まったのは裏切られたことへの「怒り」である。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付)は、「プーチン氏の孤立深まる、ウクライナ侵攻で『のけ者』扱い」と題する記事を掲載した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対しては、世界から批判の声が集まり、経済制裁が相次いで科されている。ウクライナでの軍事作戦では今のところ成果をあげられていない。そうした中、核抑止部隊に特別警戒態勢を取るよう命じたことは、プーチン氏の孤立が深まっているだけでなく、さらに憤りを感じていることを示している。
(1)「プーチン氏にとって、経済・政治的なコストだけではなく、ウクライナでの地上戦についても大きな誤算が生じているとみられる。また行き過ぎた行為により自身だけでなく、ロシアの世界的な地位や安定性に対しても幅広い影響が生じる可能性がある。核抑止力に言及する中、プーチン氏は多くの国からのけ者扱いされている。国家のトップを対象とする経済制裁は、シリアのバッシャール・アサド大統領や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領などごく少数だ。プーチン氏もそこに加えられた」
国家のトップが経済制裁という汚名を着せられたのは、シリアのアサド大統領、北朝鮮の金正恩総書記、ベネズエラのマドゥロ大統領など。プーチン氏は、この「ブラック・クラブ」へ登録された。それほど、不名誉な事態なのだ。ロシアという国家が、もはや救いがたい事態へはまり込んでいる証拠でもある。
ロシアは、国際社会から容赦ない批判と仕打ちが許される状況へ落込んでいる。例えば、SWIFT排除が、その典型例である。ロシア中央銀行資産が、凍結されるという前代未聞の異常事態だ。これは、ロシア経済の「敗戦」を意味する。この結果、次のような事態が発生している。
ロシア国債を保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、デフォルト(債務不履行)確率56%を示している。ICE(欧州CDSの主要な決済機関)データ・サービシズによると、1000万ドルのロシア債を5年間保証するコストは2月28日、前払いが約400万ドル、年間10万ドルとされ、デフォルト確率約56%を示した。『ブルームバーグ』(2月28日付)が報じた。
ロシア国債は、デフォルト確率が56%となった。格付け会社が、ロシア国債をジャンク級に引下げていることと連動している。ロシア経済は、破産リスクを抱える事態へ転落した。
(2)「ここにきてロシアの一部友好国もプーチン氏に反旗を翻している様子が見られる。トルコ政府はロシア軍艦の黒海航行を阻止するよう求めるウクライナの要請を検討中。また旧ソ連の一部でロシアとも友好関係にあるアゼルバイジャンは、ウクライナに人道支援物資を送っている。プーチン氏は国内では、すでに制裁の影響を受けている一般市民からさらなる圧力を受けることになるだろう」
トルコ政府は2月27日、ロシアによるウクライナ侵攻に対し初めて「戦争」という表現を使った。地中海と黒海をつなぐ2つの海峡は、トルコが管理している。トルコが、「戦争」という認定になったので、ロシア軍艦艇の通過制限をする可能性も出ている。
トルコは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国ながらロシアとの関係も近く、これまで「戦争」という言葉を使わなかった。しかし、トルコ大統領府のイブラヒム・カルン報道官は2月27日、「ウクライナ戦争が始まって4日目、トルコ政府はロシアの即時攻撃停止と停戦を呼びかけたエルドアン大統領の要請を繰り返し表明する」と語った。トルコは、1936年の条約により地中海と黒海の両海峡を管理している。戦争中や戦争が差し迫った際に、軍艦の航行を制限できる権限を持つのだ。トルコは、いつ「伝家の宝刀」を抜くのか。
ウクライナはまた、トルコから少なくとも20機のドローン(無人機)を購入している。ウクライナで殺傷能力を持つドローンを共同生産する協定も結んでいる。このウクライナ・トルコ関係を見落としてはならない。
(3)「米政府高官は、プーチン氏による核抑止部隊への命令について、北大西洋条約機構(NATO)がロシアの脅威になったことはないため不必要だったと指摘。判断ミスが生じる可能性があるため、危険な行為だと指摘する」
追詰められているプーチン氏は、核抑止部隊への待機命令を出すほど混乱している。ウクライナの戦況が、遅滞している上にSWIFT排除という予想もしていなかった事態の急変に遭遇している。プーチン氏一人で始めた戦争である。どのように結末をつけるのか。ウクライナへの支援の輪が広がっているのだ。



