勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: ロシア経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       


    ロシアのショイグ国防相は28日、プーチン大統領と会い、9月21日に発令された部分動員令にもとづき予備兵30万人の招集を完了したと報告した。このうち、8万2000人がすでに戦地へ派遣され、21万8000人は訓練を急いでいる。

     

    南部のヘルソン市では、学生のような顔をした新兵が多数派遣されていると、現地から報じている。代わって、これまでの軍隊が姿を消しているという。精鋭部隊を撤退させ、「弾よけ」に予備兵を送り込んでいる模様だ。

     

    『ロイター』(10月29日付)は、「ロシア、30万人の部分動員終了 ウクライナ『すぐに補充必要に』」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのショイグ国防相は23日、9月に発表した30万人の「部分動員」が終了したと述べた。国営テレビで放送されたプーチン大統領との会談で、動員された新兵8万2000人が紛争地域に派遣され、そのうち4万1000人が部隊に配属されたことを明らかにした。21万8000人は訓練中という。

     

    (1)「ショイグ国防相は「これ以上の措置は予定されていない」とし、今後はロシア国内の数百万人の予備兵を動員するのではなく、原則として志願兵や職業軍人を派遣するとした。動員を巡っては、対象年齢の男性が数万人規模で国外に逃れる事態を引き起こしたほか、反動員デモで2000人以上が逮捕された。プーチン大統領はショイグ国防相に対し、動員に関する問題は「不可避」とし、軍の増強には「修正」が必要と述べた。また、兵士らの「任務への献身、愛国心、そして我が国を守るという固い決意に感謝したい」とした」

     

    ショイグ国防相は、これ以上の予備役動員は予定していないとした。これは、国内の生産活動に影響が出るという問題が起こっているからだ。


    ロシア中銀は、次のように指摘している。「部分動員令は、向こう数カ月は消費者需要とインフレを抑制する要因になると想定する。その後は、供給制約要因に加わり物価押し上げに働くと予想する」と述べた。『ロイター』(10月28日付)が報じた。動員令は事実上、無差別な徴兵である。これにより、企業の生産活動に大きな影響が出ている。「供給制約要因に加わり物価押し上げに働く」と予見できる状態になっている。こういう影響を考慮して、国防相は「今後、原則として志願兵や職業軍人を派遣するとした」と言わざるを得なくなっている。国内の部隊を派遣するという意味だろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月29日付)は、「ロシア、動員兵8万人超を投入 各地で戦闘激化の懸念」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアが28日、軍事侵攻を続けるウクライナに新たに動員した8万人を超す兵士を投入したと明らかにし、同国軍との戦闘が激化する可能性が高まってきた。東部ドネツク州では攻防が激しさを増し、南部ヘルソン州にも動員された兵士が配備された。南部クリミア半島のロシア黒海艦隊の本拠地への攻撃も伝えられ、緊張が高まっている。

     

    (2)「プーチン氏はロシアの最大の目標として、東部ドネツク、ルガンスク両州の「解放」を掲げる。特に苦戦が続くドネツク州の戦線に、動員した兵士を集中的に投入するとみられる。ウクライナ軍参謀本部は29日、28日に州都ドネツク北方のマイオルシク地区で攻撃を試みたロシア軍を撃退し、約300人を死亡させたと発表した。ロシアは、ウクライナ軍が占領地の奪回を急ぐ南部ヘルソン州にも、動員した兵士を投入している。ウクライナ軍参謀本部は28日、「ドニエプル川の右岸(西岸)地域で敵の部隊が強化されている」と分析し、新たに動員された1000人以上の兵士が配備されたと指摘した」

     

    動員兵の前線派遣が始まっている。短期の訓練で前線投入は極めて危険である。精鋭部隊を後退させ、動員兵を「弾よけ」に使っている感じだ。装備も不足している状態で、これからの「冬将軍」に耐えられるか疑問だ。満足な軍装でないと言われている。

     

    (3)「タス通信によると、ロシアが占領し、黒海艦隊の本拠地があるウクライナ南部クリミア半島のセバストポリで29日早朝、無人機による攻撃があった。飛行型と海洋航行型の両方の無人機16機により攻撃を受け、撃退したという。セバストポリ市の行政幹部は29日、渡し船など民間船舶の航行が禁止されたと明らかにした。セバストポリ市幹部は29日、記者団に「(軍事侵攻開始以来で)無人機による過去最大の攻撃があった」と語り、ウクライナの攻撃だと主張した」

     

    ウクライナ軍はすでに、クリミア半島まで無人機を飛ばしてけん制している。セバストポリ市は黒海に面したクリミア半島南西部に位置する軍港都市である。ウクライナ本土から見れば、最も遠い地点である。ここまで、無人機を飛ばしているのは、いつでも攻撃体制に移れるという示唆であり、現地を不安がらせる効果を狙っているのであろう。「余裕の攻撃」と言って良さそうだ。

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    ロシア占領下のヘルソン州西岸では10月18日夜から、ウクライナ軍による爆撃を避けるために直ちに避難するよう促すメッセージが、住民の携帯電話に送信されていた。同時に、ドニプロ川を渡る交通手段が19日午前7時から利用可能になるとも伝えていた。ウクライナ軍は、ロシア軍が19日から軍事行動を停止したと発表した。具体的に、撤退を開始した模様である。

     

    ロシア軍は、ドニプロ川西岸に約2万5000~4万人のロシア精鋭部隊を投入。塹壕を掘るなど、長期の抵抗戦を行なう構えを見せてきた。それが、武器・弾薬・食糧の深刻な不足に悩まされ、ついに撤退に追込まれた。これで、ウクライナ軍のヘルソン奪回作戦は、大きく前進することになった。

     


    『共同通信』(10月22日付)は、「ロシア軍、ヘルソン州西部から撤退開始か 米研究所」と題する記事を掲載した。

     

    米シンクタンク、戦争研究所は21日、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部ヘルソン州の戦況について、ロシア軍が州西部から撤退を開始したとの分析を発表した。また州都ヘルソンなどからの撤退を覆い隠すためにロシア軍はドニエプル川にあるカホフカ水力発電所のダムを爆破するようだと指摘した。

     

    (1)「英国防省は21日、ヘルソン州を流れるドニエプル川に架かり、ウクライナ軍が7月下旬に攻撃したアントノフ大橋の近くにロシア軍が簡易橋を設置したとの分析を発表した。簡易橋は、川の西岸に位置する州都ヘルソンなどから東岸に撤退する経路として活用する可能性がある。ウクライナ軍は21日、ヘルソン州の88集落を奪還し、ドニエプル川西岸の都市ベリスラフでは、ロシアの占領当局の活動が19日から停止したと発表した」

     

    ヘルソン州を流れるドニエプル川は、最も狭い川幅で約1キロメートルもあるという。ここへ、ロシア軍が簡易橋を設置し撤退するものと見られるという。ただ、仮橋のために重量のある武器の撤退は困難と見られ、現地に放置されると予測されている。要するに、ロシア軍は「身体一つ」で撤退という屈辱を強いられている。

     


    (2)「ロシア側はウクライナ軍の攻撃を理由に15日、ヘルソン州の住民に退避を勧告。ウクライナのゼレンスキー大統領はカホフカ水力発電所のダムをロシアが自作自演で破壊しようとしていると批判している。ダム破壊による被害をロシアが撤退の口実にするとの観測もある」

     

    ロシア軍は、撤退という無様な姿をカムフラージュすべく、カホフカ水力発電所のダムを破壊する危険性が浮上している。ロシア軍の陰謀作戦で、ウクライナ軍が発電所を破壊したと言い逃れする準備を始めたという。ロシア軍特異のウソ情報を広める「偽旗戦術」を練り始めているのだ。

     


    ウクライナは、年末までにヘルソン州全体の奪還作戦を終了させたいとしている。すでに始まった平原の「泥沼化」によって進軍が抑えられるので、幹線道路を使った作戦を展開すると見られる。「ハイマース」によるロシア軍の兵站線潰しが、ロシア軍の戦意を大きく引き下げている。

     

    ロシアのテレビ局は19日、住民多数がドニプロ川西岸に集まる様子を放映。ボートに乗るための列が映されたものの、全体の人数などは明らかではない。一方、ウクライナ当局は、多数の人が実際に避難しているかどうかについて疑問を抱いており、群衆が川岸に集まっている画像は大部分が見せかけだと示唆した。

     

    ロシアに追放されたヘルソン州トップの側近のセルヒイ・クラン氏は、見せかけの「住民退去劇」で、ロシア軍のドニプロ川西岸からの完全撤退という、より大きな動きを覆い隠そうとしている可能性があると述べた。ロシア軍が、19日からドニエプル川西岸の都市ベリスラフで、活動を停止したことを勘案すると、「住民退去劇」はどこまで本当かは不明であろう。

     

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    ロシア軍は、武器・弾薬・兵士の「戦闘三点セット」が底をつくという「軍事大国」らしからぬ異常事態に落込んでいる。ウクライナ側は、こういう苦衷をすべて把握しており、ロシア軍を追詰める展望を明らかにする余裕を見せている。それによると、年内にヘルソン州を奪回し、来年夏までに戦闘を終わらせる計画を立てている。

     

    だが、ロシア軍にもメンツがある。ヘルソン州が簡単に奪回されると、クリミア半島への水源確保などに支障を来たすことから、ドニプロ川西岸に塹壕を掘るなどして抵抗を続ける構えを見せているという。

     


    米『CNN』(10月21日付)は、「
    ロシア軍、南部反攻の阻止に注力 ウクライナ軍参謀本部」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍参謀本部のオレクシー・フロモウ氏は21日までに、ロシア軍の最優先任務は南部前線を維持することだとの見解を示した。

     

    (1)「フロモウ氏によると、ロシアは南部ヘルソンに向かうウクライナ軍を押しとどめるため、塹壕を掘ったり追加のリソースを投入したりする策を講じている。ロシア軍は部分的動員の第1波の助けを借りつつ、ドニプロ川西岸に展開する兵士を増やすことで南部前線を維持する計画だという。水路の要衝であるドニプロ川では最近、両岸で戦闘が発生している。フロモウ氏はまた、ヘルソン州に40個を超えるロシア軍の大隊戦術群が展開していることも示唆した。1個大隊戦術群は通常、約1000人の人員で構成される」

     

    ドニプロ川西岸に展開するロシア軍は、これまで2万5000人程度とされたが、新たな情報では、40個を超える大隊(約4万人)という大部隊を結集している模様。ロシアが、残存兵力をかき集めて投入している感じだ。ただ、ドニプロ川西岸のロシア軍はウクライナ軍による高機動砲「ハイマース」による攻撃で、兵站線が潰され孤立させられている。すでに、ロシア軍総司令官は撤退を示唆するほど苦戦を強いられているほどだ。

     


    (2)「プーチン政権にとって、ヘルソンやザポリージャ、ミコライウといった南部方面は、クリミア半島につながる陸上回廊や半島への水供給を維持する観点から戦略的価値がある。ミコライウ州やオデーサ州の制圧に向けた橋頭堡(ほ)を将来的に築き、ウクライナの海洋国家としての地位を奪う意味でも南部は戦略的価値が高いという」

     

    ウクライナは、西側諸国の武器支援によってロシア軍を追詰めている。ただ、ロシア軍も簡単に撤退できない事情がある。ヘルソン州の持つ象徴的意味合いだ。ヘルソン州からの撤退は、ウクライナ侵攻が敗北したというイメージになる。ロシア軍も引くに引けない苦しい立場であろう。それでも、ウクライナ側は最終的な勝利を確信している。

     

    『CNN』(10月20日付)は、「来夏までにウクライナ勝利、ロシアの敗北必至 国防省情報総局長」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノフ総局長(少将)は20日までに、ウクライナは今年末までに「重要な勝利」を収め、戦争は来年の夏までに「終わるであろう」との予測を示した。

     

    (3)「情報総局が公表した発言内容で、ロシアの敗北は不可避であって止められないとし、ロシアの破壊につながるだろうとも主張。ウクライナが握るとする重要な勝利については「まもなくわかるだろう」とした。この勝利に、ロシアが占領するウクライナ南部のヘルソン市が含まれることを期待するとも述べた。ウクライナ軍はここ数週間、同市などで大きな戦果を得ている。総局長は「来年春の終わりには戦争は終わるであろうし、夏までには全てが終わるであろう」とも占った」

     

    下線のように、ロシア軍の敗北を見通す「強気」観測を披露するに及んでいる。これは、戦局に対する絶対的な自信をのぞかせている証拠であろう。西側諸国50ヶ国の軍事支援を受けて、「負けるはずがない」という不敗の自信を見せていると言えよう。ロシア軍の士気の低さと武器弾薬の欠乏が、その最大の拠り所であろう。

     


    (4)「ウクライナが1991年時点での国境線を取り戻す意向も表明。2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ・クリミア半島と親ロシア派勢力が占領した東部のドネツク、ルハンスク両州の奪回を意味するとした。また、ロシアはウクライナで核兵器の投入はしないだろうとの見方も表明。理論的には使うことができるだろうが、そうなればロシア連邦の崩壊への道のりを速めるだけとなると指摘。「彼らはこのことを十分に理解しているし、我々が望むほど愚かではない」とも説いた」

     

    ウクライナ軍が、1991年の国境線を取り戻すとは、クリミア半島まで奪回する意思を示している。こういう最終局面で、ロシア軍は核を使う懸念も残っている。ただ、ロシアが核を使えば、ロシアとプーチン氏の国際的な立場が消える懸念もつきまとっている。核を使って、「最終勝者」になれる保証がないのだ。

     


    (5)「また、「ロシア大統領府の指導者たちは、ウクライナ戦争の主要な目標について一致しており、それは敗北を喫しないことだ」と強調。「ハト派」もいれば「タカ派」もいるが、共に情勢が非常に悪化していることは認識しているとし、現状から抜け出すための方途についての意見が若干異なっているだけだと説明した。その上で、「一部の者は戦争をやめ、ある種の平和的な解決方法を模索すべきと明確に理解している」とし、「(侵攻を)続けなかったり、敗れたりしたら、ロシアは存在しなくなると判断している者もいる」と続けた」

     

    ロシア国内では、「ハト派」と「タカ派」が対立しているという。世上、プーチン氏がすべてを決めているとされるが、核だけは別格な感じである。西側は、軍部自身に対して「核投下への報復」を通告済である。仮に、プーチン氏が投下を命じても、軍部が拒否するという事態も想定の一つに入れている感じだ。

     

    (6)「ロシア大統領府内の現在の判断について、「もはや勝利の問題ではなく、敗北しないことが問題になっている」と分析。ウクライナが勝利すれば、「非常に深刻な政治的なプロセスが、現在のロシア連邦の組織の変化と組み合わせた形で始まるだろう」とも締めくくった」

     

    ウクライナ軍の勝利は、ロシア連邦の解体をもたらす。また、核使用の際もロシア連邦は解体の憂き目に遭おう。いずれに転んでも、ロシアには過酷な運命が待っている感じだ。 

     

     

     

     

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    ロシア軍に目立つ厭戦気分

    戦術核投下の可能性あるか

    目先の利益に迷った習近平

    NATOが突付けた新冷戦

     

    ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻後の作戦がことごとく失敗している。3日間で、ウクライナ首都キーウを陥落させる計画は、ウクライナ軍の猛反撃によって画餅に帰した。これまで、数ヶ月を経て獲得したウクライナ北東部の要衝の地は、たった数日のウクライナ軍の攻撃で奪回されるなど、劣勢は明らかである。

     

    この作戦結果は、ウクライナとロシアの武器性能の違いによるものだ。ウクライナ軍は、欧米の支援で新鋭武器を供与されている。中でも、米国が供与した機動性ミサイル「ハイマース」が威力を発揮している。車両に据え付けられた発射装置で、227ミリのGPS誘導ロケット弾の射程は77キロ先まで届く。ハイマースは、ロケット発射後すぐに移動できるので、ロシア軍から場所を特定されないメリットがある。まさに、「忍者」のような行動が可能である。

     


    ロシア軍には、ウクライナ軍のハイマースに匹敵する兵器がないのだ。それゆえ、ウクライナ軍は自由自在にロシア軍司令部や兵站線を攻撃できるという逆転した立場になった。このため、ロシア軍の最前線部隊では、武器・弾薬・食糧の供給が減少しており、士気は極めて低いとされている。

     

    今回のウクライナ北東部の奪回作戦で、ロシア軍はウクライナ軍の攻勢にたじろぎ、3旅団(約1万の兵士)分に相当する武器弾薬を遺棄して逃走した。ロシア兵は、自転車や私服姿で遁走したとも報じられている。第二次世界大戦で、旧ソ連軍は「赤軍」として勇名を馳せた。現在は、そのイメージとかけ離れた軟弱な敗退情景を見せたのである。

     

    ロシア軍に目立つ厭戦気分

    米英軍の予想によれば、ロシア軍はすでに7~8万の兵士が死傷しているという。戦場離脱(脱走兵)や休暇後に部隊に戻らない兵士も多いという。兵士の補充では、囚人まで駆り出されている。また、ロシア軍は下級将校の不足を埋めるため一部の士官学校の卒業時期の前倒しを実施していると報じられている。最近のウクライナ戦況悪化を受け、予備役士官が軍務契約への署名を拒んでいるのも原因とされる。

     


    要するに、ロシア軍全体で「厭戦気分」が漂っていることに注目すべきだ。帝政ロシア時代には、5大反乱を経て1917年のロシア革命にいたった。こういう歴史を持つロシアだけに、ウクライナ侵攻という「兄弟戦争」の矛楯に兵士も国民も気付くことになろう。

     

    プーチン氏は、これからどう対応するかだ。プーチン氏の性格は二つの特色を持つと言う。自分の誤りを絶対に認めないこと。一度決めたことは、Uターンしないこととされている。となれば、今回のウクライナ侵攻に出口がないことになろう。

     

    プーチン氏と中国国家主席習氏が9月15日、ウズベキスタンのサマルカンドで対面会談した。ロシアがウクライナを侵攻して以降、両首脳が会うのは初めて。プーチン氏は、中国がウクライナ侵攻をめぐって「懸念」を抱いていることに理解を示したと発表された。これは、中国が会談前にウクライナ侵攻に対して「懸念」を伝えたことを意味する。

     

    インドのモディ首相も、プーチン氏とサマルカンドで対面会談した。その際、モディ氏が「今は戦争の時ではない」と述べ、約7カ月に及ぶウクライナ侵攻について公に批判した。『ロイター』によれば、プーチン氏はモディ氏の発言に対し、口をすぼめ、モディ氏に視線を向けた後下を向いたという。そして、「ウクライナ紛争に関するインドの立場や懸念は理解している」とした上で、「われわれは可能な限り早期の停戦に向け全力を尽くしている」と言明した。ウクライナが交渉を拒否したとも述べた。

     

    前記の習氏やモディ氏が、プーチン氏に対して「停戦ないし休戦」を求めていることは明らかである。ロシアの同盟国である中央アジアのカザフスタンのカジェゲリディン元首相がプーチン政権を批判し、ソ連崩壊を繰り返すことになると警告した。元首相は、ドイツメディアのインタビューに答え、ロシアのウクライナ侵攻を巡るロシア側の主張を「理解できない要求」だと批判した。ロシア国内で、中央政府に対する地方の不満が高まっており、ロシアが連邦制を維持できず政治的に分裂する可能性があると指摘した

     

    ロシアの同盟国にさえ、プーチン批判が出てきたことは、プーチン氏の選択を一層狭めことになった。プーチン氏は、EU(欧州連合)へロシア産の原油や天然ガス供給を絶てば、EUが音を上げてロシアへ妥協を申入れるという読みがある。だが、ロシア産エネルギーへ大きく依存するドイツが、すでに天然ガスの85%を備蓄したと発表しているほど。ドイツでは与党内に、ウクライナへ最新型戦車を送れという議論が高まっている。プーチン氏は、ウクライナ軍の戦況好転が、EUの結束を高めていることを見落としているのだ。

     

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    ロシア陣営で「新G8」

    今来年でGDP大幅減

    これから10年雌伏期

    同盟の価値を再認識へ

     

    ロシアのプーチン大統領は6月17日、「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」で欧米諸国を痛烈に批判する演説を行い、「一極世界の時代」の終わりを宣言した。西側諸国による経済制裁にも関わらず、原油価格の高騰によって貿易黒字はむしろ増加。プーチン氏が意気軒昂である裏には、こういう事情がある。

     

    一方、西側諸国は自ら科した経済制裁によって原油価格が高騰して、消費者物価が危険ラインを突破している。ロシア外務省広報官が、「西側は自分で自分の足を撃っている」と嘲笑しているほど。プーチン氏が、「一極世界の時代」の終わりと言いたい理由はここにある。

     


    プーチン氏は、すでに戦勝気分である。
    自身について、公然と皇帝ピョートル1世になぞらえているのだ。ピョートル1世は17世紀末~18世紀のロシア皇帝で、ロシア近代化のほかに大国化を推進した。大北方戦争でスウェーデンと長年にわたり領土戦争を繰り広げた皇帝である。プーチン氏は、皇帝ピョートル1世の「再来」として振る舞うつもりだ。

     

    こういう歴史錯誤は、なぜ起こっているのか。

     

    ロシアは、ビザンティン帝国から正教を受容したので、ローマ・カトリック世界とは異なる道を歩むことになった。欧州のような、近代ヨーロッパ文化を誕生させたルネサンスも宗教改革も経験しなかったのだ。この歴史が、ピョートル1世を生み領土拡大が「善」とする国家観を生み出し、プーチン氏にまで引継がれている背景であろう。

     


    ロシア陣営で
    「新G8」

    ロシア下院のヴォロディン議長は6月11日、ロシアに対し友好的な国による「新G8」を提唱した。「アメリカが対ロ制裁などによって新G8結成のための条件を自ら作り出した」とした。その新G8候補国は、「中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、イラン」などだ。そして、「新G8」のGDPは、購買力平価によれば現在の「G7」を凌ぐとしている。購買力平価という、雲を掴むようなデータを持出して、ロシア側陣営の勝利を宣言しているのだ。

     

    ロシアが、ここまで西側諸国へ対抗心をむき出しにしている裏には、ロシア国内を鼓舞する狙いもあろう。客観的に見て、「新G8」がロシアの要請によってまとまるメリットはない。逆に、西側諸国から不利益を被るリスクの方が高まるだけである。そんな不利な取引になることに加わる国はあるまい。

     


    ロシアが、「新G8」などを言い出している裏には、原油や天然エネルギーの価格が高騰して、「売り手市場」になっていることもあろう。確かに、今年の貿易黒字は昨年を大幅に上回る見込みである。以下は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月17日付)から引用した。

     

    ロシアの貿易黒字は、今年1月~5月に昨年同期に対して、約3倍増の1100億ドル(約14兆5600円)に達した。このまま行けば、今年は過去最高の経常黒字となる見通しだ。ロシアは、この潤沢な資金を緊急時に備えるためではなく、落込む国内経済の下支えに使っている。国際金融協会(IIF)は今月取りまとめた報告書の中で、「ロシアの構造的な経常黒字はバッファーの迅速な構築につながり、制裁の効果が時間と共に低下するのは必至だ」と指摘した。


    IIFの試算によると、資源価格が高止まりし、ロシアがこれまで通り石油・ガス輸出を続けるならば、ロシアは今年、3000億ドル以上のエネルギー販売代価を受け取る可能性がある。これは西側の制裁で凍結されたロシアの外貨準備の額にほぼ匹敵する。

     

    以上の報道から得られる示唆は、厖大な貿易黒字を落込むロシア経済の下支えに使えることだ。これが、経済制裁の効果を目立たなくさせている理由である。問題は、この資源高状況がいつまで続くかである。

     

    ロシア産原油や天然ガスの最大需要先であるEUが、今年年末までに原油の9割を輸入削減する。天然ガスも、EUはアフリカからの輸入を増やす交渉が軌道に乗っている。こう見ると、ロシアが現在享受している「価格高騰」メリットに永続性がないことは明らか。これからは、経済制裁効果を軽減してきたバッファーが消える。ロシア経済へ、ストレートで悪影響が出る局面を迎えるであろう。

     


    今来年でGDP大幅減

    IIFの予測によれば、ロシア経済が今年はマイナス15%、2023年も3%のマイナス成長になるとしている。これによって約15年分の経済成長が消し飛ぶと見ているのだ。このような悲観的なシナリオが出てくる背景を探ってみたい。

     

    ロシアが今後、経験させられるのは「産業化の逆行」である。すなわち、より前の段階の古い技術を生かした経済成長になることだ。新しい技術は、西側諸国からの提供がストップする。技術脆弱国のロシアにとって、致命的な痛手になる。プーチン氏を初め、ロシアの政治家にはその深刻さが全く分かっていないのだろう。(つづく)

     

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