欧州要人の中国訪問が、相次いでいる。一連の「中国詣で」は、先行きが不透明な欧州景気を下支えするため、中国との交流を絶やすべきではないとの経済界の声に押された面が強い。中国にとっては、欧州を誘い込む絶好の機会だ。欧州は、「米国より中国のほうが信用できる」という中国の宣伝に警戒している。欧州首脳は、「二枚舌外交」に精力を使っている。
『日本経済新聞 電子版』(2月10日付)は、「欧州の中国詣で、相互不信の『二枚舌外交』 日本は攻めの外交を」と題する記事を掲載した。
マクロン仏大統領、スターマー英首相に続き、2月下旬にドイツのメルツ首相が中国を訪れる。滞在は短期間にとどめ、友好親善よりも実務外交を前面に押し出す。
(1)「1月に訪中したカナダのカーニー首相と欧州主要国には共通する思惑がある。まず、中国とは余計なもめごとを起こしたくない。対米関係がギクシャクするなか、中国とあつれきを起こす余裕はない。つぎに対米追従でないことを有権者に示すためにも「中国カード」を持っておきたい、というものだ。欧州の場合、経済がなおも中国を必要としているという事実を無視できない。2026〜29年は選挙ラッシュだ。自らの経済界への配慮が各国を訪中へといざなう」
各国首脳の中国訪問は、経済上の理由からだ。2026〜29年は、選挙ラッシュを迎える。これに備えて、経済界の顔を立てて「お義理訪中」である。
(2)「例えば英国は、24年の総選挙でスターマー政権が発足した直後から首相の訪中がアジア政策における最大の検討課題になった。英金融界が中国マネーを求め、選挙中から強力なロビー活動を展開していた。米富豪エプスタイン氏への機密漏洩が疑われ、ロシアや中国ともパイプがあるとされるマンデルソン前駐米大使らが政権中枢に「中国の大切さ」を説いたとの風説もある。先行き不安の募る英国が、経済利益のために中国に近づかざるを得なかった面があるのは確かだ」
英国スターマー首相の訪中は、英金融界が中国マネーを求めてロビー活動を行った結果とされる。このバランスを取るべく、帰国の途中に日本を訪問し高市首相と会談した。
(3)「ドイツでは、世界経済のブロック化をにらんで「欧州から中国への輸出」でなく、「中国でつくり、中国で売る」というビジネスモデルを志向する企業が増えた。ドイツ政府には、中国企業との公平な競争条件を整えてもらいたいと経済界は期待する。むろん今回の首相訪中には経済使節団が同行する」
ドイツ首相の訪中も、企業が希望している結果だ。「中国でつくり、中国で売る」ビジネスモデルの支援を要請している。
(4)「もっとも、欧州と中国の蜜月関係は戻らない。足元では英国がやや対中融和的で、フランスは中間派、ドイツがやや対中強硬派という温度差はあるが、いずれも中国という強権国家とは価値観が相いれない。しかも、ウクライナへの侵略で中国がロシアを後押ししていることが欧州には許せない。「デュアルユース(軍民両用)製品を大量にロシアに輸出している。明らかな証拠があるのに、それでもロシアとは単なる通商関係のように取り繕っている」。匿名を条件に取材に応じた複数の欧州の政府高官はいずれも憤る。つまりウクライナでの戦争が終わらない限り、欧州は対中関係でそれほど踏み込めない」
欧州は、中国がウクライナ戦争でロシアを支援していることに警戒している。第一、欧州と中国では価値観が異なる。蜜月関係に戻ることはない。ただ、儀礼的な訪中である。
(5)「しかも、首脳が頼んでも中国が欧州向けレアアース(希土類)の供給を永続的に保証し、過剰生産にもとづくデフレ輸出をやめるとも思っていない。成果が乏しいのを覚悟で訪中するのは実績を残して経済界、そして中国に恩を売るのが狙いなのだ。欧州の疑心暗鬼は中国も理解している。それでも表向きは友好親善を演じ、経済実利で誘って米国から引き離せれば成功だ。外から見れば「欧州は中国に傾いている」と映り、国際的に「米国より中国のほうが信用できる」というナラティブを広めることができる」
欧州首脳は、外交成果がないことを承知で訪中している。自国の経済界や中国に恩を売るのが狙いである。
(6)「欧州は、その「わな」を認識しつつ中国に近づく。いうなれば双方が相互不信を抱えたまま本音と建前を使い分ける二枚舌外交を繰り広げている。だからこそ日本に外交展開の余地がある。欧州は、アジア外交で中国とのバランスをとるためにも、ほかのインド太平洋諸国との関係強化を望んでいる。衆院選の大勝で政治余力のできた高市政権は米国だけでなく、欧州にも目を向けるべきだろう。要人の訪日を待つのではなく、首相や閣僚が自ら外遊して欧州とのパイプをつなぐ「攻めの外交」に転じ、安全保障や国防、ウクライナ支援といった中国の手が届かない分野で関係を深めればいい。欧州首脳による訪中の返答として、中国要人の訪欧ラッシュが始まってからでは日本は後手に回る」
欧州は、アジア外交で中国とのバランスをとるためにも、ほかのインド太平洋諸国との関係強化を望んでいる。日本は、この機会を生かして積極的な対欧州外交に転じるべきである。





