中国にとって厄介な問題が持ち上がってきた。欧州が、ロシアのウクライナ侵攻擁護に大きな衝撃を受けたからだ。NATO(北大西洋条約機構)は、中国をロシアと同様の敵対勢力として警戒し始めている。中ロが、一本化して世界の秩序奪取に動く危険性に目覚め始めたのである。先のNATO外相会議に、日本、韓国、豪州などを招待した理由はこれだ。
欧州は、また「一帯一路」によって鉄道で中国と直結し、貿易関係が深まっている。この中国が将来、欧州へ刃を向けたとき、深い経済関係が「仇」になって、欧州経済を苦しめるという危機感も持ち上がっている。こうして中国は、欧州の「厄介者」となってきた。
『朝鮮日報』(4月12日付)は、「欧州『中国を放っておいてはいけない』、敵と認識し始めた」と題する記事を掲載した。
欧州各国の間で「中国発の安全保障上の危機」への懸念が急浮上している。欧州と中国はこれまで新疆ウイグル自治区の人権弾圧や中国企業に対する禁輸措置などさまざまな問題で対立を繰り返してきたが、基本的には友好関係を維持してきた。ところが、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに中国に対する欧州諸国の見方が一気に変わった。中国は欧州にとって「現存する実体的な安全保障上の脅威」であり「中国に対する高い経済依存度が欧州に突き刺さる致命的な刃物になりかねない」との見方が欧州諸国の間で浮上しているのだ。
(1)「北大西洋条約機構(NATO)は今月7日(現地時間)、ベルギーのブリュッセルで外相会談を開き、今年6月にスペインのマドリードで開催予定のNATO首脳会議で「NATOの安全保障に及ぼす中国の影響」を正式な議題として採択することを決めた。NATOは先月31日に2021年度の年次報告書を発表し、その中で「中国の野心と攻撃的な行動が(冷戦後に欧米の構築してきた)ルールを基盤とする世界秩序と安保領域に体系的な挑戦を加えている」と指摘したが、それからわずか1週間で上記の議題が採択されることになったのだ」
中国は、習近平氏の超民族主義によって自らの国家主席任期中に世界覇権へ挑戦するという野望を持っている。子どもじみた夢だが、軍事力を背景にしてロシアと一緒になって暴れ始められると厄介なことになる。同じユーラシア大陸にあるだけに、切実な問題となってきた。
(2)「欧州の安全保障を担当するNATOが中国問題を正式な議題とするのは今回が初めてだ。ドイツの日刊紙ディー・ツァイトや週刊誌のシュピーゲルなどは「中国と欧州連合(EU)の間には新疆ウイグル自治区の人権問題、台湾問題、リトアニアに対する貿易報復問題など以前から対立があったが、(ロシアによるウクライナ侵攻後)習近平・国家主席はプーチン大統領をあからさまに擁護しているため、対立の次元が変わりつつある」との分析を示した。欧州に対するロシアの安全保障上の脅威を明確に知りながらも、ロシアを支援することを通じ欧州に対して事実上の「敵対行為」をしているというのだ」
ウクライナ侵攻が、欧州の危機であることを知りながら、中国はロシアを支援する。まさに欧州には、「敵の味方は敵」である。中国は、こういう欧州の危機感を理解していないのだ。
(3)「欧州と中国は、最近も過激な発言をやりとりしている。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は先月23日「中国は露骨なうそや虚偽情報の拡散などでロシアに政治的な支援を行っている」と批判した。EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン執行委員長は今月1日、遠隔形式で行われた第23回中国EU首脳会議で習主席に対し「ロシア制裁を支援しないなら少なくとも妨害はするな」として習主席に直撃弾を浴びせた。EUのボレル外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は「われわれ(EU)が何を話しても習主席は特別な反応を示さず、言いたいことしか言わなかった」「中国とEUは異なる『価値観』を持っている」と指摘した」
EU執行委員長(首相)は、習氏に対して「ロシア制裁を支援しないなら少なくとも妨害はするな」と面前で冷たく言い放った。これは、欧州の中国へ向けられた率直な怒りだ。
(4)「これに対して中国外交部(省に相当)は「(EUは)不適切な発言を続けている」と反発した。中国外交部は先月30日「中国は歴史の正しい側に立っており、中国に対する非難は自ずと崩壊するだろう」と主張した。中国の王毅・外相も「西側によるロシア制裁は一方的で不法」と批判している。米国の政治専門メディア「ポリティコ」は「ロシアを後押しする中国の動きは欧州と中国との関係に恐怖を吹き込んだ」「欧州諸国は今や中国を冷戦後の秩序と安全保障の枠組みに対する挑戦者と認識している」と分析した」
中国は、口だけでもロシアを支援しなければ、「中ロ協調」が崩れ米国へ対抗する足場を築けないという「危機感」を持っている。これが、中国を窮地に追い込んでいるのだ。
(5)「双方の対立が経済分野に広がる可能性も高まっている。ポリティコはEU幹部の話として「中国によるロシアへの支援が確認された場合、EUは中国に貿易制裁を加えることができる」と報じた。中国との「経済戦争」も辞さないということだ。「中国に対する経済依存が欧州にとってアキレス腱(けん)になりかねない」との危機感も高まっている。ロシアが天然ガスなどを武器に欧州に攻勢を加えたように、中国も欧州が抱えるこのような弱点を突いてくるとの見方だ。中国は2020年の時点でEUにとって最大の貿易相手国であり、輸入全体の約20%、輸出も15%以上を占めている」
欧州は、中国との経済関係を深めている。これが、逆に欧州経済の脆弱性に繋がるリスクになる。こうして、安保リスクが自由貿易体制を破壊してブロック化させる理由だ。冷戦化というのは、否応なく経済も分割させる。
(6)「欧州が投資に力を入れている再生可能エネルギー関連のインフラも中国に大きく依存している。ドイツのベルン・ロイター・リサーチによると、太陽光発電設備に必要な部品のマーケットで中国製が占める割合は部品によっては64~97%に達している。現在エネルギーはロシア、未来のエネルギーは中国に押さえられている形だ。チェコのヤン・リパフスキー外相は「欧州にとってウクライナ戦争が『ハリケーン』だとすれば、中国は『気候変動』に相当する問題だ」と述べ、中国を「より長期的で致命的な問題」と指摘した」
太陽光発電設備では、中国のシェアが圧倒的になっている。これは、将来のエネルギー戦略において、大きなリスクとして浮上する問題である。欧州としては、「脱中国体制」を模索せざるを得なくさせよう。