勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 欧州経済ニュース時報

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    中国にとって厄介な問題が持ち上がってきた。欧州が、ロシアのウクライナ侵攻擁護に大きな衝撃を受けたからだ。NATO(北大西洋条約機構)は、中国をロシアと同様の敵対勢力として警戒し始めている。中ロが、一本化して世界の秩序奪取に動く危険性に目覚め始めたのである。先のNATO外相会議に、日本、韓国、豪州などを招待した理由はこれだ。

     

    欧州は、また「一帯一路」によって鉄道で中国と直結し、貿易関係が深まっている。この中国が将来、欧州へ刃を向けたとき、深い経済関係が「仇」になって、欧州経済を苦しめるという危機感も持ち上がっている。こうして中国は、欧州の「厄介者」となってきた。

     


    『朝鮮日報』(4月12日付)は、「欧州『中国を放っておいてはいけない』、敵と認識し始めた」と題する記事を掲載した。

     

    欧州各国の間で「中国発の安全保障上の危機」への懸念が急浮上している。欧州と中国はこれまで新疆ウイグル自治区の人権弾圧や中国企業に対する禁輸措置などさまざまな問題で対立を繰り返してきたが、基本的には友好関係を維持してきた。ところが、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに中国に対する欧州諸国の見方が一気に変わった。中国は欧州にとって「現存する実体的な安全保障上の脅威」であり「中国に対する高い経済依存度が欧州に突き刺さる致命的な刃物になりかねない」との見方が欧州諸国の間で浮上しているのだ。

     


    (1)「北大西洋条約機構(NATO)は今月7日(現地時間)、ベルギーのブリュッセルで外相会談を開き、今年6月にスペインのマドリードで開催予定のNATO首脳会議で「NATOの安全保障に及ぼす中国の影響」を正式な議題として採択することを決めた。NATOは先月31日に2021年度の年次報告書を発表し、その中で「中国の野心と攻撃的な行動が(冷戦後に欧米の構築してきた)ルールを基盤とする世界秩序と安保領域に体系的な挑戦を加えている」と指摘したが、それからわずか1週間で上記の議題が採択されることになったのだ」

     

    中国は、習近平氏の超民族主義によって自らの国家主席任期中に世界覇権へ挑戦するという野望を持っている。子どもじみた夢だが、軍事力を背景にしてロシアと一緒になって暴れ始められると厄介なことになる。同じユーラシア大陸にあるだけに、切実な問題となってきた。

     


    (2)「欧州の安全保障を担当するNATOが中国問題を正式な議題とするのは今回が初めてだ。ドイツの日刊紙ディー・ツァイトや週刊誌のシュピーゲルなどは「中国と欧州連合(EU)の間には新疆ウイグル自治区の人権問題、台湾問題、リトアニアに対する貿易報復問題など以前から対立があったが、(ロシアによるウクライナ侵攻後)習近平・国家主席はプーチン大統領をあからさまに擁護しているため、対立の次元が変わりつつある」との分析を示した。欧州に対するロシアの安全保障上の脅威を明確に知りながらも、ロシアを支援することを通じ欧州に対して事実上の「敵対行為」をしているというのだ

     

    ウクライナ侵攻が、欧州の危機であることを知りながら、中国はロシアを支援する。まさに欧州には、「敵の味方は敵」である。中国は、こういう欧州の危機感を理解していないのだ。

     


    (3)「欧州と中国は、最近も過激な発言をやりとりしている。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は先月23日「中国は露骨なうそや虚偽情報の拡散などでロシアに政治的な支援を行っている」と批判した。EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン執行委員長は今月1日、遠隔形式で行われた第23回中国EU首脳会議で習主席に対し「ロシア制裁を支援しないなら少なくとも妨害はするな」として習主席に直撃弾を浴びせた。EUのボレル外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は「われわれ(EU)が何を話しても習主席は特別な反応を示さず、言いたいことしか言わなかった」「中国とEUは異なる『価値観』を持っている」と指摘した」

     

    EU執行委員長(首相)は、習氏に対して「ロシア制裁を支援しないなら少なくとも妨害はするな」と面前で冷たく言い放った。これは、欧州の中国へ向けられた率直な怒りだ。

     

    (4)「これに対して中国外交部(省に相当)は「(EUは)不適切な発言を続けている」と反発した。中国外交部は先月30日「中国は歴史の正しい側に立っており、中国に対する非難は自ずと崩壊するだろう」と主張した。中国の王毅・外相も「西側によるロシア制裁は一方的で不法」と批判している。米国の政治専門メディア「ポリティコ」は「ロシアを後押しする中国の動きは欧州と中国との関係に恐怖を吹き込んだ」「欧州諸国は今や中国を冷戦後の秩序と安全保障の枠組みに対する挑戦者と認識している」と分析した」

     

    中国は、口だけでもロシアを支援しなければ、「中ロ協調」が崩れ米国へ対抗する足場を築けないという「危機感」を持っている。これが、中国を窮地に追い込んでいるのだ。

     


    (5)「双方の対立が経済分野に広がる可能性も高まっている。ポリティコはEU幹部の話として「中国によるロシアへの支援が確認された場合、EUは中国に貿易制裁を加えることができる」と報じた。中国との「経済戦争」も辞さないということだ。「中国に対する経済依存が欧州にとってアキレス腱(けん)になりかねない」との危機感も高まっている。ロシアが天然ガスなどを武器に欧州に攻勢を加えたように、中国も欧州が抱えるこのような弱点を突いてくるとの見方だ。中国は2020年の時点でEUにとって最大の貿易相手国であり、輸入全体の約20%、輸出も15%以上を占めている」

     

    欧州は、中国との経済関係を深めている。これが、逆に欧州経済の脆弱性に繋がるリスクになる。こうして、安保リスクが自由貿易体制を破壊してブロック化させる理由だ。冷戦化というのは、否応なく経済も分割させる。

     


    (6)「欧州が投資に力を入れている再生可能エネルギー関連のインフラも中国に大きく依存している。ドイツのベルン・ロイター・リサーチによると、太陽光発電設備に必要な部品のマーケットで中国製が占める割合は部品によっては64~97%に達している。現在エネルギーはロシア、未来のエネルギーは中国に押さえられている形だ。チェコのヤン・リパフスキー外相は「欧州にとってウクライナ戦争が『ハリケーン』だとすれば、中国は『気候変動』に相当する問題だ」と述べ、中国を「より長期的で致命的な問題」と指摘した」

     

    太陽光発電設備では、中国のシェアが圧倒的になっている。これは、将来のエネルギー戦略において、大きなリスクとして浮上する問題である。欧州としては、「脱中国体制」を模索せざるを得なくさせよう。 

     

     

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    北欧3ヶ国のうち、NATO(北大西洋条約機構)へ加盟しているのはノルウェーだけである。フィンランドとスウェーデンは、ロシアとの軍事的関係から中立を標榜。NATOへ参加せずにきた。だが、ロシア軍のウクライナ侵攻を目の辺りにして、NATO加盟へ傾いている。フィンランドとスウェーデン両軍は、先ごろ初めて連合部隊を編成、北大西洋条約機構と合同演習を実施した。

     

    フィンランドとスウェーデンが中立を唱えてきたのは、ロシアの「恫喝」である。NATOへ加盟したら報復するという「暴力団」並の脅しをかけられてきた。ロシアは、国家として考えられない振る舞いを続けてきたが、フィンランドとスウェーデンはウクライナ並の愛国心から、この威嚇に屈しないという姿勢を見せている。

     


    『ロイター』(4月5日付)は、「ウクライナ侵攻受けNATO拡大機運、『露の脅威』現実に」と題する記事を掲載した。

     

    今年3月、ノルウェー北部の沿岸に銃声と砲声が響き渡った。フィンランドとスウェーデン両軍が初めて連合部隊を編成、北大西洋条約機構(NATO)と合同演習を実施した。両国ともNATOには加盟していない。演習はずっと前から決まっていたが、ロシアのウクライナ侵攻を背景とした欧州の緊迫感の高まりを象徴する形になった。スウェーデン軍の将校はロイターに「脅威が存在すると認識していないなら、あまりにもおめでたい。欧州全域の安全保障環境は一変しており、われわれはそれを受け入れ、適応しなければならない」と語った。

     

    (1)「フィンランドはロシアと国境を接し、その距離は1300キロに及ぶ。同国のニーニスト大統領は3月28日、フェイスブックへの投稿で、NATOのストルテンベルグ事務総長に新規加盟受け入れの諸原則と手続きの詳細を問い合わせたことを明らかにした。また、ハービスト外相はロイターに対し、NATOに加盟する30カ国の「ほぼ全て」と新規加盟の可能性を議論したとし、4月半ばまでに議会へ必要事項を提出すると述べた」

     

    フィンランドは、ロシアと過去2回の侵略戦争を戦っている。それだけに、ロシアへ根深い不信感を持っている。これまでの経緯で中立を標榜しているが、本音はNATO加盟にある。ロシアを信じられないのだ。

     

    (2)「中立を掲げ、1814年以来戦争をしていないスウェーデンはもう少し慎重だ。それでも地元テレビ局が最近行った世論調査では、フィンランドが加盟するならスウェーデンもNATOに入りたいとの意見が59%に達した。NATO加盟国の一部は、既にフィンランドとスウェーデンをパートナーとみなしている。米海兵隊のバーガー司令官は演習中、記者団に対して、正式加盟に絡む政治問題を別にすれば、両国は訓練を通して「戦友」になったと言い切った」

     

    スウェーデンは、200年以上も戦争をしていないのでNATO加盟に慎重である。だが、最新の世論調査ではNATO加盟が6割にも達している。ウクライナ侵攻が、引き金になった。NATO加盟国は、すでにフィンランドとスウェーデンをパートナー扱いである。加盟申請すれば、実現は早いであろう。

     


    (3)「ストルテンベルグ氏は3月上旬、NATOはウクライナで起きている戦争に関してフィンランド、スウェーデン両国とあらゆる情報を共有していると発言。両国は定期的にNATOの会合にも出席しており、ストルテンベルグ氏は演習中、世界で両国ほど近しいパートナーはいないと話した。ストルテンベルグ氏はただ、両国がNATOの集団安全保障の網の目には入っていない」と指摘する」

     

    NATOは、フィンランド、スウェーデン両国をパートナーとして認めるが、加盟国でないので集団安全保障の対象でないと明言。ウクライナと同じ扱いだ。

     


    (4)「ロシアはこれまで、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟には繰り返し反対しており、インタファクス通信によると、3月12日の外務省談話で、両国が加盟すれば「重大な軍事的、政治的結果を招く」と警告している」

     

    ロシアは、前記二ヶ国のNATO加盟に反対している。加盟したならば軍事的報復をするという。「第二のウクライナ」になるという脅しである。

     

    (5)「フィンランドは、1939年から44年の間に当時のソ連に2回も侵攻された苦い経験を持つ。フィンランドはソ連との戦争で約9万6000人が死亡、5万5000人の子どもが父親を失った。ソ連への領土割譲で40万人余りが家をなくした。だが、フィンランド国民は頑強に抵抗する姿勢を示し、この戦争以降は強力な国防力を持ちつつ、ロシアと友好関係を築くという明確な国家目標を定めてきた。同国は徴兵制を敷き、男女合わせた予備役はおよそ90万人。フィンランドは食料、燃料、医薬品の国家的な緊急配給制度を持つ数少ない欧州諸国の1つ。第二次大戦以降、全ての主要な建物は地下シェルターを備えることが義務付けられ、全国5万4000の施設に人口550万人のうち440万人を収容できる」

     

    フィンランドは、ロシアから過去2回の侵略を受けている。それだけに、対ロ防衛には抜かりがない。主要建物には、地下シェルターを備えているほどだ。

     


    (6)「スウェーデンがロシアに脅威を感じるようになった時期は、フィンランドよりも遅かった。例えば冷戦終了後は国防費を削減し、緊急用シェルターの保守管理も放棄していた。しかし今や雰囲気は一変しつつある。ロシアが2014年にクリミアを強制編入すると、スウェーデン政府は再び軍備を強化し、ロシアのバルト艦隊本拠地に近いゴトランド島の兵力も増強。その年に限定的な徴兵制を復活させた。今月に入って政府は、国防費を2倍に拡大して国内総生産(GDP)の2%前後にするとともに、いざとなれば最大700万人が避難できるように防空壕ネットワークを再整備する方針を打ち出した」

     

    スウェーデンは、ロシアが2014年にクリミアを強制編入して以来、限定的な徴兵制を復活させた。さらに、今回のウクライナ侵攻が重なった。危機感が高まるのは当然である。国防費もGDPの2%前後へ引き上げている。

     


    (7)「スウェーデンは、3月2日に出た世論調査で、ロシアの脅威が増したと答えた人の割合は約71%と、1月時点の46%を大幅に上回った。手動式発電ラジオや水のろ過装置など防災用品がよく売れている。外交関係者や政治家は、フィンランドのほうがスウェーデンより早くNATOに加盟することになりそうだと言う。フィンランドのハービスト外相はこの問題で「ほぼ毎日」スウェーデンの外相と話し合っていると明かした。ある外交政策専門家は「フィンランドが単独加盟するのは理想的ではない。加盟手続きに内在するあらゆるリスクがフィンランドに降りかかるからだ」と解説した」

     

    スウェーデンのロシア脅威論は、71%にも達している。まだ、NATO加盟論で固まった訳でないが、野党はすべて賛成である。フィンランドのNATO加盟が早まれば、ロシアの軍事侵攻を招きやすいので、スウェーデンとの同時加盟がより安全と見られている。

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    常人では考えられない策を打ち出すのが、ロシア大統領のプーチン氏である。兄弟国を平然と侵略するところに、その異常な性格が見て取れる。現在のウクライナ戦争は皮肉にも、ロシア軍に不利な展開である。

     

    プーチン氏が、形勢逆転を狙い2024年の大統領選で勝利を収めるには何をするか。プーチン氏の「方程式」では、手段を問わない勝利への道を模索することであろう。ここに、大量破壊兵器の使用という悪魔の囁きが出てくるのだ。

     


    『ブルームバーグ』(3月29日付)は、「プーチン氏の狂気、戦術核使用も辞さず-NATO元司令官」と題するコラムを掲載した。筆者は、NATO元欧州連合軍最高司令官、ジェームズ・スタブリディス氏である。

     

    ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で用いる軍事的手法について、興味深い二項対立があると、われわれは最近数週間で気付いた。極超音速ミサイルやサイバー攻撃、精密誘導兵器といった最新兵器に手を伸ばす一方、大都市を包囲して破壊するぞと脅す古くからの戦い方をプーチン氏は命じている。

     

    (1)「ロシア軍が包囲した南東部のマリウポリを守る英雄的人々に対し、プーチン大統領は「降伏すれば、家や伴侶、子供たちに危害を加えない」との呼び掛けを事実上行った。ウクライナの人たちは予想通りきっぱり拒否したが、砲撃の音がとどろき巡航ミサイルが飛び、戦争犯罪が日に日に増している。核戦力の「特別態勢」への移行を命じ、「有名な黒いスーツケースと赤いボタンについてご存じだろう」とペスコフ大統領報道官が不気味な発言をしたことを含め、核兵器を巡るプーチン大統領のあからさまな威嚇が、恐らく最も懸念される」

     

    核兵器をちらつかせて威嚇する。これが、「ロシア帝国」再来を目指すプーチン一派の本質である。トルストイもチャイコフスキーも赤面する発言だ。手段を選ばないプーチン氏が目指す「大国」ロシアは、死臭漂う忌むべき国家への転落が間違いない。

     

    (2)「プーチン氏にも子供がいて、祖国を深く愛している。大破局レベルまで事態をエスカレートさせることを望んでいないに違いない。欧米からの核報復を回避したい思惑もあり、あるいは民間人がほぼ避難した後に都市を粉々に破壊する目的で、比較的低出力の戦術核兵器を使うような危険を冒すだろうか。そこまでするかもしれない。だが実際に行えば、歴史に残る戦争犯罪人の殿堂の筆頭に名前が掲げられよう。脅しは今後も続くとしても、そもそもプーチン氏が越えたくない一線なのではないかとは思う」

     

    プーチン氏も本心では、歴史に残る戦争犯罪人の汚名を帰せられたくないだろう。プーチン氏はもちろん、ロシアも歴史の中に沈むからだ。

     


    (3)「ロシアは、化学兵器を使用する可能性の方が高いだろう。プーチン大統領は、ウクライナがひそかに保有していると同国を不当に非難した際にそれを予見させた。北大西洋条約機構(NATO)は脅威を深刻に受け止め、ストルテンベルグ事務総長は「生物・化学兵器、放射性物質、核の脅威に対しウクライナを守る装備品」などについて「追加支援供与の合意を期待する」と語った。生物・化学兵器の攻撃は住民を恐怖に陥れるだろう。ウクライナ政府の首を取る電撃作戦「プランA」が失敗した今、それがプーチン氏の「プランB」戦略の主要目標だ。減り続ける巡航ミサイルや爆弾を温存する効果も期待できる。神経ガスの煙より速く都市を空にする手段はそうあるまい」

     

    プーチン氏は、化学兵器を使う可能性のほうが高いという。ウクライナが使用したように見せかけて使うのだ。すでに、その下準備は進んでいる。ウクライナが、化学兵器をつくっていると「ウソ話」を広めているからだ。

     


    (4)「
    プーチン大統領が大量破壊兵器を使用すれば、ポーランドからウクライナへの武器の供給ラインを確保しておくため、少なくとも西部上空の飛行禁止区域設定というNATOが避けてきた対応が恐らく必要になるだろう。ウクライナ全土での抵抗活動の開始に備え、ゼレンスキー政権が西部のリビウに移らざるをえない事態も想定される。化学兵器による攻撃が実際あれば、リビウ防衛のためNATOが地上軍派遣を求められる状況にもなりかねない」

     

    ロシアの化学兵器使用に対して、NATOはどう対応するか。「ウクライナ西部上空に飛行禁止区域を設定する」のは当然である。NATOは、ウクライナへ地上軍を派遣してリビウ防衛に全力を挙げ、ウクライナ政権を守らなければならない。

     


    (4)「ロシアが実戦使用を発表したもう一つの最新兵器が、極超音速ミサイル(「キンジャール」)だ。同ミサイル発射の重要性はウクライナを打ち負かすことでなく、欧米へのメッセージに大いに関係している。核兵器を保有しているだけでなく、それを防ぎようのないプラットフォームを使って配備できるという米国およびNATOへの警告だ。NATOはプーチン氏のシグナルを真剣に受け止めるべきだが、過剰反応すべきでない。欧米側には、必要ならサイバー戦争や通常兵器の攻撃、海上対応といった段階的に拡大できる他の多くの選択肢が存在する

     

    下線のように、NATOはサイバー戦争・通常兵器の攻撃・海上対応と戦線を拡大して、ロシア軍と前面対決する。この段階では、確実に「第三次世界大戦」へと広がる。ロシア経済は破綻するはずだ。

     

    (5)「ロシアのウクライナ侵攻から1カ月余りが経過し、都市を破壊し、住民を恐怖に陥れる古くからの戦略をプーチン大統領は主に用いている。しかしその背後からは、サイバー攻撃と極超音速ミサイル、恐らくは化学兵器、戦術核さえ含む最新鋭兵器が不気味に迫る。米国と同盟国はそのどれにも、また全てに対応する計画を今準備しなければならない」

     

    仮に、「第三次世界大戦」になれば、プーチン氏の政治生命はそこで終わるはずだ。ロシア経済が破綻し、戦線が拡大する過程では,ロシア国民も目が覚めて、プーチン支持を取り止めるであろう。

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    ロシア全土でATM(現金自動預払機)の前に外貨を引き出そうとする人の長い列ができた。ウクライナ侵攻に対する制裁措置が西側諸国によって強化され、通貨ルーブル急落懸念が広がっている結果だ。『ブルームバーグ』(2月28日付)が伝えた。

     

    一部の銀行は25日終値を3割余り上回る高値でドルを売却した。ロシア中央銀行が、利上げする重要な水準とされる1ドル=100ルーブルをかなり上回る、ドル高=ルーブル安にもかかわらず、外貨購入意欲は衰えなかった。ロシア国民は、矢継ぎ早に繰り出される金融制裁措置の内容消化が追いつかない状況だという。

     


    『ロイター』(2月28日付)は、「SWIFTでの制裁、ロシア経済に壊滅的打撃も」と題する記事を掲載した。

     

    西側諸国が26日、ロシアの「一部」銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除すると決めたことは、同国経済に深刻な打撃をもたらす一方で、西側の企業と銀行にも大きな痛みを及ぼす。西側が制裁をさらに拡大する余地を残している点も重要だ。

     

    (1)「SWIFTは国境を越えた迅速な決済を可能にするメッセージシステム(ネットワーク)で、国際貿易の主要な決済手段となっている。SWIFTから排除されたロシアの銀行は、友好国の中国などを含めて国外銀行とのやりとりが困難になり、円滑な貿易取引が難しくなり決済手続きコストが上昇するとみられている。西側諸国は、ロシア中央銀行によるルーブルの買い支え能力を制限する措置も約束している。ただ、SWIFTの排除対象となる銀行名はまだ明らかにされていない。専門家は、どの銀行を対象にするかによって、この措置の効果は大きく左右されると言う」

     


    下線部のように、ロシア中央銀行(ロシア銀行)をSWIFT排除に指定している。ドル資金調達にくさびが打ち込まれているのだ。用意周到である。SWIFTの排除対象は、「一部の銀行」とぼかされている。これが、不安を増幅している。

     

    (2)「『悪魔は細部に宿る。どの銀行が選ばれるか見守ろう』と言うのは、アトランティック・カウンシルのユーラシア・センターに所属する経済制裁専門家、エドワード・フィッシュマン氏だ。同氏は、ズベルバンクやVTB、ガスプロムバンクといったロシア最大級の銀行が対象に入れば「決定的な大打撃となる」とツイッターに記した。金融情報についての訓練プログラムを提供する企業を営むキム・マンチェスター氏は、SWIFTからのロシア排除について「まさにロシアの銀行の急所に切り込む」対応だと指摘する。マンチェスター氏によると、バイデン米大統領はこれまで制裁対象を選別してきたため、今後さらに多くの銀行を排除し、最終的には一律排除して制裁を強める余地がある。「移動弾幕射撃」のようなものだという」

     

    下線のような二大銀行を外したSWIFT排除などあり得ない。常識であろう。対外的な送金取引の窓口(コルレス)である。「ロシアの銀行の急所に切り込む」のがSWIFT排除の狙いである。

     


    (3)「SWIFTからのロシア排除は、同国の経済と市場に壊滅的な打撃をもたらす可能性がある。ロシア中銀の元副会長で今は米国在住のセルゲイ・アレクサシェンコ氏は、28日に市場が開くと通貨ルーブルは暴落し、ロシアへの多くの輸入が途絶えることになると予想。「(ロシア)経済の大きな部分が終わりを迎える。最終消費に関連した市場の半分が消滅するだろう。支払いができないとなれば、消費財は姿を消すことになる」と語った」

     

    下線部は、極めて暗いロシア経済を見通している。プーチン氏が、SWIFT排除に激怒して、「高度防衛」と核戦争を予想するような発言をするほど衝撃を受けている背景であろう。

     

    (4)「もっとも、あるロシアの元銀行幹部は、排除の対象が既に制裁を受けている銀行に限られたり、ロシア中銀が資産を別の場所に移す時間的余裕を与えられたりすれば、制裁の効果は鈍りかねないと言う。「既に制裁を受けている銀行であれば、これまでと大して変わらない。しかし、ロシアの上位30行が対象となれば、話は全く違ってくる」と説明。先に米国が発表したズベルバンクやVTBなど数行への制裁は、ロシアの金融機関による外為取引(1日460億ドル程度)の大半に直接照準を定めた対応だ。ロシアにある銀行資産の約8割が標的となる」

     

    下線のように、ロシアの上位30行がSWIFT排除となれば、「絨毯爆撃」のような影響を受けるとしている。ズベルバンクやVTBなど数行が、SWIFT排除でも対外取引の8割程度に達する。

     

    (5)「ロシアの銀行をSWIFTから排除することは、苦渋の決断だった。過去数日間、ウクライナは西側諸国に排除を要請し、英国などの国々は賛意を示したが、ドイツなどの国々は自国の経済や企業への影響を懸念していた。フランスのルメール経済・財務相は25日、SWIFTからのロシア排除は「金融版の核兵器」だと発言。「あなたがもし核兵器を手にしていたら、使う前によく考えるはずだ」と記者団に述べた。しかし、ロシア軍がウクライナの首都キエフへの攻撃を開始し、外交的解決の希望が薄れると、潮目は変化した。ドイツは26日に態度を軟化させ、「巻き添え被害」の抑制に務めながらロシア銀をSWIFTから排除する方法を探る姿勢を示した」

     

    欧州が、ロシアをSWIFT排除する決断をするまでにいかに悩んだか。その苦渋の上の決定である。ロシアのウクライナ侵攻を止めさせ、原状復帰を目指す強い意志の表明である。プーチン氏は、このプロセスを理解すべきである。

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