勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 欧州経済ニュース時報

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    習近平氏が国家主席に就任以来、中国の行動は世界の価値観と逆行している。ゼロコロナ政策も、その一つである。欧米の有効なワクチンを導入せず、国産の効かないワクチンに固執した結果が、前代未聞の完全な都市封鎖である。こういう非常識国家で、これ以上のビジネス継続は困難。こういう在中の欧州企業は、23%が撤退を検討し始めている。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(5月5日付)は、「中国の欧州企業、厳しいコロナ規制に23%が撤退検討」と題する記事を掲載した。

     

    中国に進出する欧州企業トップらは、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込める中国政府の「ゼロコロナ」政策が対中投資のネックになっていると警鐘を鳴らした。実際、厳しいロックダウン(都市封鎖)により、国内のサービス業の業況は2年ぶりの水準に落ち込んでいる。

     


    (1)「在中国欧州連合(EU)商工会議所が5日発表した緊急調査によると、中国から別の地域に投資を振り向けることを検討している欧州企業は4月下旬時点で年初の2倍に増えた。同会議所のイエルク・ブトケ会頭の説明では、中国からの撤退を検討している企業は回答した372社の約23%と過去10年で最も高い割合だ。約78%は厳しいコロナ対策のせいで中国の投資先としての魅力が薄れていると答えた。ブトケ氏は「世界はコロナとの共生を学んでおり、ゼロ・トレランス(不寛容)はうまくいかない。中国は戦略を変えるべきだ。変えないなら我々は行動で示す、と中国政府に伝えようとしている」と語った」

     

    中国のゼロコロナは、西欧的な価値観に従えば理解不能な「人権無視」である。欧州では、中国がロシアのウクライナ侵攻に声援を送るのを理解できずにいる。それと同様に、ゼロコロナも理解不能である。欧州企業は、こういう中国でビジネスを継続することが不可能と考えるのであろう。「郷に入れば郷に従え」にも限界があるのだ。

     


    (2)「調査が発表される直前には、米アップルや独フォルクスワーゲンをはじめ数十社が中国のロックダウンにより、部品などの供給に支障が出る恐れがあると相次ぎ警告を発した。企業はゼロコロナ政策の脱却に向けた工程表を求めているとブトケ氏は言う。「中国市場は予測可能性を失った。それが中国の強みであり、政策は常に合理的だった。今はまるでもぐらたたきのようだ」

     

    中国が、世界のサプライチェーンを担っている以上、ゼロコロナは実施不可能な筈である。中国には、そういうグローバルという認識が存在しない独り善がりな国である。

     

    (3)「同氏によると、ロシアのウクライナ侵攻に対し中国が「高みの見物」を決めているのも企業心理を悪化させている。調査では回答企業の7%が戦争を理由に中国からの投資の引き揚げを検討していると答えた」

     

    中国による、ロシアのウクライナ侵攻支持を理由にして、調査企業の7%が中国からの投資撤退を検討している。中国が、地政学的リスクを抱えているからだ。ウクライナ侵攻が、欧州企業から見て、それだけ深刻な事態を意味する。中国株が、外資に売られている理由も同じである。

     


    (4)「
    ロックダウンの経済活動への影響は、5日に発表された中国の4月の財新非製造業購買担当者景気指数(PMI)にも表れている。新規受注や生産などの前月比の増減を企業に尋ねて算出するものだ。4月は36.2と、3月の42から急低下した。約2年ぶりの低水準で、2005年の調査開始以来、2番目に大きい落ち込み幅だった。財新智庫のシニアエコノミスト、王喆氏は「現在の感染拡大はサービス業界に大きな打撃を与えている」と話す。需要も供給も「激減した」という」

     

    ロックダウンが、中国の非製造業の景況感(PMI)を悪化させている。4月は36.2と、3月の42から急低下している。5月も同様の状況が続くのであろう。

     

    (5)「習近平政権のゼロコロナ政策で数百万人が数週間にわたり自宅隔離を強いられ、国内移動を制限されている。米国のスターバックスやエスティ・ローダー、アップル、コカ・コーラなど多国籍企業数社は中国の厳しい行動制限により、世界最大の消費市場である中国で売り上げが立たなくなると訴えた。400社を対象にした財新の調査では、都市間移動の規制で輸送・原材料コストがかさむ中、企業は需要動向が見通せず値下げを余儀なくされている。コロナ感染者の流入を恐れ、地方当局は通常なら商品が自由に流通する都市間の交通網に厳しい規制をかけている。調査対象企業の中には、需要の急減やコスト上昇を理由に従業員を解雇したと答えたところもある」

     

    下線部の多国籍企業は悲鳴を上げている。中国市場は、規模も大きいのでロックダウンによる影響が大きい。サービス業には、製造業と違って撤退という選択肢はない。

     


    (6)「
    エコノミストらは、今回のロックダウンはIT(情報技術)企業や自動車メーカーが集中する上海市内やその周辺に集中しているため、2年前に湖北省武漢市から広がった第1波よりもさらに大きな混乱をもたらすと警告している。上海の感染者数はこの2週間で減少し、米テスラなど操業を再開したメーカーもある。中国の金融ハブである上海の感染状況は多少改善したものの、国内各地の企業は絶え間なく変わる当局の感染対策に対応しなければならない状況が続いている。(浙江省)杭州市や武漢などでは、住民は公共交通機関や公共施設を利用したり外食したりするために48時間ごとにPCR検査を受けなければならない

     

    48時間ごとのPCR検査を受けさせられるのは苦痛そのものだ。有効なワクチンがあれば、こういう無駄な検査をしなくても済む筈である。 

     

     

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    ロシアへの経済制裁効果が、なかなか現れないと指摘されている。だが、ロシアではすでに原油需要の低下によって、貯蔵スペース不足に直面する事態になっている。この状況が続けば、永久に施設を閉鎖する恐れも出ているという。西側諸国による一致した経済制裁で、先ず原油輸入を禁止ないし抑制している効果が現れてきた。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月14日付)は、「ロシア産原油のだぶつき、成長エンジンを直撃」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアでは行き場を失った原油がエネルギー供給網を逆流し、産油量の落ち込みが鮮明になってきた。ウクライナとの戦闘が激化する中で、ロシア経済の屋台骨に深刻な影響をもたらしつつある。製油所では、国内外の需要の落ち込みを受けて精製量を減らすか、閉鎖に追い込まれたところも出ている。パイプラインやタンク内の貯蔵スペースは減少の一途をたどっており、油井でも生産を縮小している。とはいえ、損失は今のところ限定的で、エネルギー業界は依然としてロシア政府に巨額の収入をもたらしている。ただ、向こう数カ月には、原油を採掘してから供給先に届けるまでに問題が生じる可能性が高い、とトレーダーやアナリストは指摘している。

     


    (1)「国際エネルギー機関(IEA)は13日、ロシアでは5月以降、日量およそ300万バレルの生産が滞るとの予想を示した。これにより産油量は日量900万バレル弱と、アナリストの予想以上に落ち込む見通しだ。ロシアの産油量がどこまで打撃を受けるかは、アジアで新規顧客を確保できるかどうかにかかっている。米国の顧客は完全に避けており、欧州でも代替の調達先を探る動きが広がっている。IEAでは、ロシア産原油の長年の買い手が離れていったことで、中国が急いでその分を輸入している兆候はまだ見られないとしている」

     

    ロシアは、5月以降の原油生産が日量300万バレル減少して、日量900万バレル弱に落込む見通しである。これはIEAの予測であり、アナリストの予想を上回る落込みである。この落込みをアジアでどこまでカバーできるかだ。

     

    (2)「産油量が持続的に落ち込めば、西側の経済制裁で深刻な景気後退に向かっているとみられる厳しい局面で、ロシア経済のけん引役が大きく損なわれることになる。DNBマーケッツの上級石油アナリスト、ヘルジ・アンドレ・マーティンセン氏は「潜在的な生産能力の一部が恒久的に失われる恐れがある」と話す。ロシアの石油・天然ガス業界がこの危機を乗り越えることができるかどうかは、政府の運命を左右することになりそうだ。2021年のロシア予算で、歳入の45%は石油・ガス業界によるものだった(IEA調べ)。国際金融協会(IIF)では、ロシアは3月の原油輸出代金として121億ドル(約1兆5200億円)を受け取ると試算している」

     

    急激な需要減で生産量を落とせば、潜在的な生産能力の一部が恒久的に失われる恐れがあるという。宝の持腐れに直面するのだ。2021年のロシア予算で、歳入の45%は石油・ガス業界による利益である。原油生産量が5月以降、25%以上も減れば、歳入への影響が出て当然である。

     


    (3)「トレーダーによると、ロシアの精製業界はウクライナへの侵攻開始直後から問題に直面した。欧州の買い手が代替の調達先の確保に動き、輸出が急減したためだ。その後の3月初旬には、米国がロシア産石油の輸入禁止に踏み切った。ロシアでは十分な買い手がつかなったことで、ディーゼルやガソリンなど石油製品の貯蔵スペースが枯渇し始めた。そのため、精製業者の稼働率は低下。4月8日までの1週間に製油所の生産量は日量約170万バレル減った。S&Pグローバル・コモディティー・インサイツの石油分析責任者、リチャード・ジョスウィック氏が分析した。これは稼働率が下がる春季メンテナンス期間の通常レベルをさらに7割下回る水準だという」

     

    石油精製業界にも,影響が出ている。4月8日までの1週間に、製油所の生産量は日量約170万バレル減っている。それでも、石油製品の貯蔵スペースが枯渇し始めている。だぶついているのだ。

     


    (4)「
    ロシアの製油業界が衰退すれば、石油市場への影響は大きい。ロシアはウクライナに侵攻するまで、米国、サウジアラビアに次いで世界第3位の石油生産国だった。また世界最大の輸出国でもあり、日量500万バレルの原油とコンデンセート(注:熱水 ナフサの成分に似ている)に加え、ディーゼルなど日量290万バレルの石油精製品を海外に供給していた。ロシア国営パイプライン会社トランスネフチでは、製油所への原油供給が落ち込んでいるため、パイプライン内の原油貯蔵スペースがひっ迫しているもようだ。トレーダーやアナリストが明らかにした」

     

    ロシアは、世界3位の原油生産国である。また、世界最大の輸出国でもあり、日量500万バレルの原油を輸出してきた。それだけ、国内需要が少ないことを意味する。西側諸国が輸入を禁止ないし抑制すると、途端に大きな影響が出る体質である。

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    中国にとって厄介な問題が持ち上がってきた。欧州が、ロシアのウクライナ侵攻擁護に大きな衝撃を受けたからだ。NATO(北大西洋条約機構)は、中国をロシアと同様の敵対勢力として警戒し始めている。中ロが、一本化して世界の秩序奪取に動く危険性に目覚め始めたのである。先のNATO外相会議に、日本、韓国、豪州などを招待した理由はこれだ。

     

    欧州は、また「一帯一路」によって鉄道で中国と直結し、貿易関係が深まっている。この中国が将来、欧州へ刃を向けたとき、深い経済関係が「仇」になって、欧州経済を苦しめるという危機感も持ち上がっている。こうして中国は、欧州の「厄介者」となってきた。

     


    『朝鮮日報』(4月12日付)は、「欧州『中国を放っておいてはいけない』、敵と認識し始めた」と題する記事を掲載した。

     

    欧州各国の間で「中国発の安全保障上の危機」への懸念が急浮上している。欧州と中国はこれまで新疆ウイグル自治区の人権弾圧や中国企業に対する禁輸措置などさまざまな問題で対立を繰り返してきたが、基本的には友好関係を維持してきた。ところが、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに中国に対する欧州諸国の見方が一気に変わった。中国は欧州にとって「現存する実体的な安全保障上の脅威」であり「中国に対する高い経済依存度が欧州に突き刺さる致命的な刃物になりかねない」との見方が欧州諸国の間で浮上しているのだ。

     


    (1)「北大西洋条約機構(NATO)は今月7日(現地時間)、ベルギーのブリュッセルで外相会談を開き、今年6月にスペインのマドリードで開催予定のNATO首脳会議で「NATOの安全保障に及ぼす中国の影響」を正式な議題として採択することを決めた。NATOは先月31日に2021年度の年次報告書を発表し、その中で「中国の野心と攻撃的な行動が(冷戦後に欧米の構築してきた)ルールを基盤とする世界秩序と安保領域に体系的な挑戦を加えている」と指摘したが、それからわずか1週間で上記の議題が採択されることになったのだ」

     

    中国は、習近平氏の超民族主義によって自らの国家主席任期中に世界覇権へ挑戦するという野望を持っている。子どもじみた夢だが、軍事力を背景にしてロシアと一緒になって暴れ始められると厄介なことになる。同じユーラシア大陸にあるだけに、切実な問題となってきた。

     


    (2)「欧州の安全保障を担当するNATOが中国問題を正式な議題とするのは今回が初めてだ。ドイツの日刊紙ディー・ツァイトや週刊誌のシュピーゲルなどは「中国と欧州連合(EU)の間には新疆ウイグル自治区の人権問題、台湾問題、リトアニアに対する貿易報復問題など以前から対立があったが、(ロシアによるウクライナ侵攻後)習近平・国家主席はプーチン大統領をあからさまに擁護しているため、対立の次元が変わりつつある」との分析を示した。欧州に対するロシアの安全保障上の脅威を明確に知りながらも、ロシアを支援することを通じ欧州に対して事実上の「敵対行為」をしているというのだ

     

    ウクライナ侵攻が、欧州の危機であることを知りながら、中国はロシアを支援する。まさに欧州には、「敵の味方は敵」である。中国は、こういう欧州の危機感を理解していないのだ。

     


    (3)「欧州と中国は、最近も過激な発言をやりとりしている。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は先月23日「中国は露骨なうそや虚偽情報の拡散などでロシアに政治的な支援を行っている」と批判した。EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン執行委員長は今月1日、遠隔形式で行われた第23回中国EU首脳会議で習主席に対し「ロシア制裁を支援しないなら少なくとも妨害はするな」として習主席に直撃弾を浴びせた。EUのボレル外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は「われわれ(EU)が何を話しても習主席は特別な反応を示さず、言いたいことしか言わなかった」「中国とEUは異なる『価値観』を持っている」と指摘した」

     

    EU執行委員長(首相)は、習氏に対して「ロシア制裁を支援しないなら少なくとも妨害はするな」と面前で冷たく言い放った。これは、欧州の中国へ向けられた率直な怒りだ。

     

    (4)「これに対して中国外交部(省に相当)は「(EUは)不適切な発言を続けている」と反発した。中国外交部は先月30日「中国は歴史の正しい側に立っており、中国に対する非難は自ずと崩壊するだろう」と主張した。中国の王毅・外相も「西側によるロシア制裁は一方的で不法」と批判している。米国の政治専門メディア「ポリティコ」は「ロシアを後押しする中国の動きは欧州と中国との関係に恐怖を吹き込んだ」「欧州諸国は今や中国を冷戦後の秩序と安全保障の枠組みに対する挑戦者と認識している」と分析した」

     

    中国は、口だけでもロシアを支援しなければ、「中ロ協調」が崩れ米国へ対抗する足場を築けないという「危機感」を持っている。これが、中国を窮地に追い込んでいるのだ。

     


    (5)「双方の対立が経済分野に広がる可能性も高まっている。ポリティコはEU幹部の話として「中国によるロシアへの支援が確認された場合、EUは中国に貿易制裁を加えることができる」と報じた。中国との「経済戦争」も辞さないということだ。「中国に対する経済依存が欧州にとってアキレス腱(けん)になりかねない」との危機感も高まっている。ロシアが天然ガスなどを武器に欧州に攻勢を加えたように、中国も欧州が抱えるこのような弱点を突いてくるとの見方だ。中国は2020年の時点でEUにとって最大の貿易相手国であり、輸入全体の約20%、輸出も15%以上を占めている」

     

    欧州は、中国との経済関係を深めている。これが、逆に欧州経済の脆弱性に繋がるリスクになる。こうして、安保リスクが自由貿易体制を破壊してブロック化させる理由だ。冷戦化というのは、否応なく経済も分割させる。

     


    (6)「欧州が投資に力を入れている再生可能エネルギー関連のインフラも中国に大きく依存している。ドイツのベルン・ロイター・リサーチによると、太陽光発電設備に必要な部品のマーケットで中国製が占める割合は部品によっては64~97%に達している。現在エネルギーはロシア、未来のエネルギーは中国に押さえられている形だ。チェコのヤン・リパフスキー外相は「欧州にとってウクライナ戦争が『ハリケーン』だとすれば、中国は『気候変動』に相当する問題だ」と述べ、中国を「より長期的で致命的な問題」と指摘した」

     

    太陽光発電設備では、中国のシェアが圧倒的になっている。これは、将来のエネルギー戦略において、大きなリスクとして浮上する問題である。欧州としては、「脱中国体制」を模索せざるを得なくさせよう。 

     

     

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    北欧3ヶ国のうち、NATO(北大西洋条約機構)へ加盟しているのはノルウェーだけである。フィンランドとスウェーデンは、ロシアとの軍事的関係から中立を標榜。NATOへ参加せずにきた。だが、ロシア軍のウクライナ侵攻を目の辺りにして、NATO加盟へ傾いている。フィンランドとスウェーデン両軍は、先ごろ初めて連合部隊を編成、北大西洋条約機構と合同演習を実施した。

     

    フィンランドとスウェーデンが中立を唱えてきたのは、ロシアの「恫喝」である。NATOへ加盟したら報復するという「暴力団」並の脅しをかけられてきた。ロシアは、国家として考えられない振る舞いを続けてきたが、フィンランドとスウェーデンはウクライナ並の愛国心から、この威嚇に屈しないという姿勢を見せている。

     


    『ロイター』(4月5日付)は、「ウクライナ侵攻受けNATO拡大機運、『露の脅威』現実に」と題する記事を掲載した。

     

    今年3月、ノルウェー北部の沿岸に銃声と砲声が響き渡った。フィンランドとスウェーデン両軍が初めて連合部隊を編成、北大西洋条約機構(NATO)と合同演習を実施した。両国ともNATOには加盟していない。演習はずっと前から決まっていたが、ロシアのウクライナ侵攻を背景とした欧州の緊迫感の高まりを象徴する形になった。スウェーデン軍の将校はロイターに「脅威が存在すると認識していないなら、あまりにもおめでたい。欧州全域の安全保障環境は一変しており、われわれはそれを受け入れ、適応しなければならない」と語った。

     

    (1)「フィンランドはロシアと国境を接し、その距離は1300キロに及ぶ。同国のニーニスト大統領は3月28日、フェイスブックへの投稿で、NATOのストルテンベルグ事務総長に新規加盟受け入れの諸原則と手続きの詳細を問い合わせたことを明らかにした。また、ハービスト外相はロイターに対し、NATOに加盟する30カ国の「ほぼ全て」と新規加盟の可能性を議論したとし、4月半ばまでに議会へ必要事項を提出すると述べた」

     

    フィンランドは、ロシアと過去2回の侵略戦争を戦っている。それだけに、ロシアへ根深い不信感を持っている。これまでの経緯で中立を標榜しているが、本音はNATO加盟にある。ロシアを信じられないのだ。

     

    (2)「中立を掲げ、1814年以来戦争をしていないスウェーデンはもう少し慎重だ。それでも地元テレビ局が最近行った世論調査では、フィンランドが加盟するならスウェーデンもNATOに入りたいとの意見が59%に達した。NATO加盟国の一部は、既にフィンランドとスウェーデンをパートナーとみなしている。米海兵隊のバーガー司令官は演習中、記者団に対して、正式加盟に絡む政治問題を別にすれば、両国は訓練を通して「戦友」になったと言い切った」

     

    スウェーデンは、200年以上も戦争をしていないのでNATO加盟に慎重である。だが、最新の世論調査ではNATO加盟が6割にも達している。ウクライナ侵攻が、引き金になった。NATO加盟国は、すでにフィンランドとスウェーデンをパートナー扱いである。加盟申請すれば、実現は早いであろう。

     


    (3)「ストルテンベルグ氏は3月上旬、NATOはウクライナで起きている戦争に関してフィンランド、スウェーデン両国とあらゆる情報を共有していると発言。両国は定期的にNATOの会合にも出席しており、ストルテンベルグ氏は演習中、世界で両国ほど近しいパートナーはいないと話した。ストルテンベルグ氏はただ、両国がNATOの集団安全保障の網の目には入っていない」と指摘する」

     

    NATOは、フィンランド、スウェーデン両国をパートナーとして認めるが、加盟国でないので集団安全保障の対象でないと明言。ウクライナと同じ扱いだ。

     


    (4)「ロシアはこれまで、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟には繰り返し反対しており、インタファクス通信によると、3月12日の外務省談話で、両国が加盟すれば「重大な軍事的、政治的結果を招く」と警告している」

     

    ロシアは、前記二ヶ国のNATO加盟に反対している。加盟したならば軍事的報復をするという。「第二のウクライナ」になるという脅しである。

     

    (5)「フィンランドは、1939年から44年の間に当時のソ連に2回も侵攻された苦い経験を持つ。フィンランドはソ連との戦争で約9万6000人が死亡、5万5000人の子どもが父親を失った。ソ連への領土割譲で40万人余りが家をなくした。だが、フィンランド国民は頑強に抵抗する姿勢を示し、この戦争以降は強力な国防力を持ちつつ、ロシアと友好関係を築くという明確な国家目標を定めてきた。同国は徴兵制を敷き、男女合わせた予備役はおよそ90万人。フィンランドは食料、燃料、医薬品の国家的な緊急配給制度を持つ数少ない欧州諸国の1つ。第二次大戦以降、全ての主要な建物は地下シェルターを備えることが義務付けられ、全国5万4000の施設に人口550万人のうち440万人を収容できる」

     

    フィンランドは、ロシアから過去2回の侵略を受けている。それだけに、対ロ防衛には抜かりがない。主要建物には、地下シェルターを備えているほどだ。

     


    (6)「スウェーデンがロシアに脅威を感じるようになった時期は、フィンランドよりも遅かった。例えば冷戦終了後は国防費を削減し、緊急用シェルターの保守管理も放棄していた。しかし今や雰囲気は一変しつつある。ロシアが2014年にクリミアを強制編入すると、スウェーデン政府は再び軍備を強化し、ロシアのバルト艦隊本拠地に近いゴトランド島の兵力も増強。その年に限定的な徴兵制を復活させた。今月に入って政府は、国防費を2倍に拡大して国内総生産(GDP)の2%前後にするとともに、いざとなれば最大700万人が避難できるように防空壕ネットワークを再整備する方針を打ち出した」

     

    スウェーデンは、ロシアが2014年にクリミアを強制編入して以来、限定的な徴兵制を復活させた。さらに、今回のウクライナ侵攻が重なった。危機感が高まるのは当然である。国防費もGDPの2%前後へ引き上げている。

     


    (7)「スウェーデンは、3月2日に出た世論調査で、ロシアの脅威が増したと答えた人の割合は約71%と、1月時点の46%を大幅に上回った。手動式発電ラジオや水のろ過装置など防災用品がよく売れている。外交関係者や政治家は、フィンランドのほうがスウェーデンより早くNATOに加盟することになりそうだと言う。フィンランドのハービスト外相はこの問題で「ほぼ毎日」スウェーデンの外相と話し合っていると明かした。ある外交政策専門家は「フィンランドが単独加盟するのは理想的ではない。加盟手続きに内在するあらゆるリスクがフィンランドに降りかかるからだ」と解説した」

     

    スウェーデンのロシア脅威論は、71%にも達している。まだ、NATO加盟論で固まった訳でないが、野党はすべて賛成である。フィンランドのNATO加盟が早まれば、ロシアの軍事侵攻を招きやすいので、スウェーデンとの同時加盟がより安全と見られている。

    あじさいのたまご
       

    常人では考えられない策を打ち出すのが、ロシア大統領のプーチン氏である。兄弟国を平然と侵略するところに、その異常な性格が見て取れる。現在のウクライナ戦争は皮肉にも、ロシア軍に不利な展開である。

     

    プーチン氏が、形勢逆転を狙い2024年の大統領選で勝利を収めるには何をするか。プーチン氏の「方程式」では、手段を問わない勝利への道を模索することであろう。ここに、大量破壊兵器の使用という悪魔の囁きが出てくるのだ。

     


    『ブルームバーグ』(3月29日付)は、「プーチン氏の狂気、戦術核使用も辞さず-NATO元司令官」と題するコラムを掲載した。筆者は、NATO元欧州連合軍最高司令官、ジェームズ・スタブリディス氏である。

     

    ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で用いる軍事的手法について、興味深い二項対立があると、われわれは最近数週間で気付いた。極超音速ミサイルやサイバー攻撃、精密誘導兵器といった最新兵器に手を伸ばす一方、大都市を包囲して破壊するぞと脅す古くからの戦い方をプーチン氏は命じている。

     

    (1)「ロシア軍が包囲した南東部のマリウポリを守る英雄的人々に対し、プーチン大統領は「降伏すれば、家や伴侶、子供たちに危害を加えない」との呼び掛けを事実上行った。ウクライナの人たちは予想通りきっぱり拒否したが、砲撃の音がとどろき巡航ミサイルが飛び、戦争犯罪が日に日に増している。核戦力の「特別態勢」への移行を命じ、「有名な黒いスーツケースと赤いボタンについてご存じだろう」とペスコフ大統領報道官が不気味な発言をしたことを含め、核兵器を巡るプーチン大統領のあからさまな威嚇が、恐らく最も懸念される」

     

    核兵器をちらつかせて威嚇する。これが、「ロシア帝国」再来を目指すプーチン一派の本質である。トルストイもチャイコフスキーも赤面する発言だ。手段を選ばないプーチン氏が目指す「大国」ロシアは、死臭漂う忌むべき国家への転落が間違いない。

     

    (2)「プーチン氏にも子供がいて、祖国を深く愛している。大破局レベルまで事態をエスカレートさせることを望んでいないに違いない。欧米からの核報復を回避したい思惑もあり、あるいは民間人がほぼ避難した後に都市を粉々に破壊する目的で、比較的低出力の戦術核兵器を使うような危険を冒すだろうか。そこまでするかもしれない。だが実際に行えば、歴史に残る戦争犯罪人の殿堂の筆頭に名前が掲げられよう。脅しは今後も続くとしても、そもそもプーチン氏が越えたくない一線なのではないかとは思う」

     

    プーチン氏も本心では、歴史に残る戦争犯罪人の汚名を帰せられたくないだろう。プーチン氏はもちろん、ロシアも歴史の中に沈むからだ。

     


    (3)「ロシアは、化学兵器を使用する可能性の方が高いだろう。プーチン大統領は、ウクライナがひそかに保有していると同国を不当に非難した際にそれを予見させた。北大西洋条約機構(NATO)は脅威を深刻に受け止め、ストルテンベルグ事務総長は「生物・化学兵器、放射性物質、核の脅威に対しウクライナを守る装備品」などについて「追加支援供与の合意を期待する」と語った。生物・化学兵器の攻撃は住民を恐怖に陥れるだろう。ウクライナ政府の首を取る電撃作戦「プランA」が失敗した今、それがプーチン氏の「プランB」戦略の主要目標だ。減り続ける巡航ミサイルや爆弾を温存する効果も期待できる。神経ガスの煙より速く都市を空にする手段はそうあるまい」

     

    プーチン氏は、化学兵器を使う可能性のほうが高いという。ウクライナが使用したように見せかけて使うのだ。すでに、その下準備は進んでいる。ウクライナが、化学兵器をつくっていると「ウソ話」を広めているからだ。

     


    (4)「
    プーチン大統領が大量破壊兵器を使用すれば、ポーランドからウクライナへの武器の供給ラインを確保しておくため、少なくとも西部上空の飛行禁止区域設定というNATOが避けてきた対応が恐らく必要になるだろう。ウクライナ全土での抵抗活動の開始に備え、ゼレンスキー政権が西部のリビウに移らざるをえない事態も想定される。化学兵器による攻撃が実際あれば、リビウ防衛のためNATOが地上軍派遣を求められる状況にもなりかねない」

     

    ロシアの化学兵器使用に対して、NATOはどう対応するか。「ウクライナ西部上空に飛行禁止区域を設定する」のは当然である。NATOは、ウクライナへ地上軍を派遣してリビウ防衛に全力を挙げ、ウクライナ政権を守らなければならない。

     


    (4)「ロシアが実戦使用を発表したもう一つの最新兵器が、極超音速ミサイル(「キンジャール」)だ。同ミサイル発射の重要性はウクライナを打ち負かすことでなく、欧米へのメッセージに大いに関係している。核兵器を保有しているだけでなく、それを防ぎようのないプラットフォームを使って配備できるという米国およびNATOへの警告だ。NATOはプーチン氏のシグナルを真剣に受け止めるべきだが、過剰反応すべきでない。欧米側には、必要ならサイバー戦争や通常兵器の攻撃、海上対応といった段階的に拡大できる他の多くの選択肢が存在する

     

    下線のように、NATOはサイバー戦争・通常兵器の攻撃・海上対応と戦線を拡大して、ロシア軍と前面対決する。この段階では、確実に「第三次世界大戦」へと広がる。ロシア経済は破綻するはずだ。

     

    (5)「ロシアのウクライナ侵攻から1カ月余りが経過し、都市を破壊し、住民を恐怖に陥れる古くからの戦略をプーチン大統領は主に用いている。しかしその背後からは、サイバー攻撃と極超音速ミサイル、恐らくは化学兵器、戦術核さえ含む最新鋭兵器が不気味に迫る。米国と同盟国はそのどれにも、また全てに対応する計画を今準備しなければならない」

     

    仮に、「第三次世界大戦」になれば、プーチン氏の政治生命はそこで終わるはずだ。ロシア経済が破綻し、戦線が拡大する過程では,ロシア国民も目が覚めて、プーチン支持を取り止めるであろう。

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