勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ロシア経済ニュース時評

    a0960_008527_m
       

    米国が新たに課した制裁は、ロシアの低迷する戦争経済の柱を直撃し、トランプ政権発足以来初めてロシアへの圧力で欧州と足並みをそろえた。米国は、ロシア最大の石油生産会社ロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えた。これが今後、どう影響するか三つの要因にかかっている。1)制裁がどれだけ順守されるか、2)インドと中国の主要市場の反応、3)ロシア政府が制裁を回避できるかどうかだ。

     

    米財務省は、同盟国にも制裁への参加を求める」と明言しており、これは第三国の企業金融機関が対象企業と取引すれば制裁対象になる可能性を示唆するとしている。米政府元高官も「問題は、ロスネフチやルクオイルと取引する企業に制裁を科すかどうかだ」と述べており、二次制裁の布石と見る専門家もいる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月24日付)は、「トランプ氏の石油制裁、ロシア経済の生命線を直撃」と題する記事を掲載した。

     

    米国が新たに課した制裁は、ロシアの低迷する戦争経済の柱を直撃し、トランプ政権発足以来初めてロシアへの圧力で欧州と足並みをそろえた。アナリストによると、米国がロシア最大の石油生産会社であるロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えたことがどう影響するかは、三つの要因にかかっている。制裁がどれだけ順守されるか、インドと中国の主要市場の反応、ロシア政府が制裁を回避できるかどうかだ。

     

    (1)「RBCキャピタルマーケッツのグローバル商品戦略責任者ヘリマ・クロフト氏は顧客向けのメモで、米国による新たな制裁は「ロシアの戦費調達を断つための米国の動きとしては、これまでで最も重要なものだ」と指摘。「トランプ政権が今の言葉を実行に移せば、米資本市場へのアクセスを維持したい製油業者はロシア産原油を断念するだろう」と述べた。欧州連合(EU)は23日に新たな対ロ制裁を承認した。ロシア産の液化天然ガス(LNG)の購入を段階的に停止するほか、軍事物資に対する制裁の回避や石油貿易でロシア政府を支援している外国企業37社を制裁対象にする内容だ。香港と中国の企業15社に対する貿易禁止や資産凍結も盛り込んだ」

     

    「米資本市場へのアクセスを維持したい製油業者はロシア産原油を断念するだろう」というのは、二次制裁を恐れている結果だ。この動きが広がれば、効果は出るであろう。EUも23日から制裁を拡大した。香港と中国の企業15社に対する貿易禁止や資産凍結も盛り込んだ。

     

    (2)「トランプ氏が制裁導入を決めたのは、米政府が求める現在の前線でのウクライナ即時停戦と和平交渉をロシア政府が拒否した後だった。トランプ氏はかねて、ロシア経済への支援を続ける中国に経済的打撃を与えるよう欧州に求めてきた。EUが2024年に購入したロシア産LNGは70億ユーロ(約1兆2400億円)相当と過去最高だった。制裁発表を受けて原油価格は23日に上昇。トレーダーは制裁措置が世界の供給を混乱させる可能性を懸念している」

     

    中国も二次制裁を警戒して、ロシア産原油購入をストップした。二次制裁は、米銀との取引を禁止されるだけに痛手になる。ドルが、基軸通貨である結果だ。

     

    (3)「中国外務省は、中国企業に対するEUの制裁は違法だと述べ、大半の国はロシア政府との貿易を続けるとの見方を示した。石油輸出の減少は、ロシア政府の戦争資金源を直撃する。エネルギー収入は、同国の歳入の最大3分の1を占めるためだ。制裁で物流と決済にも支障が出て、ロシア産石油の利益率は縮小するとみられる。ロシア経済は現在、不安定な状態にある。3年以上にわたって西側諸国から制裁を受け、労働力不足や高金利、戦時下の緊縮財政が重荷となり、成長はここ数カ月鈍化している。政府は拡大する財政赤字を増税や特別基金で穴埋めしている」

     

    中国は、EU制裁を甘くみている。米国が二次制裁の手を伸せば、そんな「暢気」なことを言っていられまい。

     

    (4)「ロシア経済に耐性があるのは、世界的な価格高騰が起きないよう石油が部分的にしか制裁対象になっていないことが一因だ。これまでの制裁はもっぱらロシア石油産業の長期的な持続性を損なうことを目的としたもので、同国の目先のキャッシュフローへの影響は限定的だった。バイデン前米政権はロシア石油会社3位と4位のガスプロムネフチとスルグトネフテガスを制裁対象にしたが、ロスネフチとルクオイルは対象外だった。この2社は合わせてロシアの石油の約半分を生産している。トランプ政権による今回の措置を受け、ロシアの主要石油会社4社が全て米国の制裁対象となった」

     

    今回の措置を受け、ロシアの主要石油会社4社が全て米国の制裁対象となった。これまでは、トップ1位と2位を制裁対象から除外していた。これで、ロシアは逃げ道がなくなった。

     

    (5)「EUも7月、ロスネフチの主要顧客だったインドの製油所を制裁対象に加え、同社との取引禁止を強化した。英国も先週、ルクオイルとロスネフチに対する制裁を発表した。 ロシアに対する西側の圧力は、ウクライナにとって歓迎すべき救いの手になるだろう。ウクライナには、戦闘を継続できるかどうかは欧州の資金や軍事物資購入、制裁にかかっているとの懸念があった。戦争を終結させる方法についても、米国と欧州の認識の隔たりは狭まりつつある」

     

    EU、英国、米国が揃って対ロ制裁強化に動いている。米国と欧州は、戦争を終結させる方法についても、その認識の隔たりは狭まりつつある。早期停戦が求められている。

    a0960_008417_m
       

    米国が、ロシアのウクライナ侵攻を止めるべく、経済制裁を強化した。米国内の資産が凍結され、取引できなくなるという極めて大きい制裁である。米国が、侵略戦争を中止させる「本気度」を内外に明らかにした。

     

    米財務省は22日、ロシアの石油最大手ロスネフチと2位のルクオイルのほかに、前記2社が株式の50%以上を所有する事業体もすべて対象になる。英政府によると、ロスネフチはロシアの石油生産全体の半分ほどを担っている。発表から1日以内に、インドの石油精製業者はロシアからの石油流入を削減する措置をとり、中国の国有石油会社は少なくとも一時的にロシア産石油の購入を停止した。早くも、効果が出てきた。

     

    制裁目的は、ロシアの戦費調達につながるエネルギー収入を制限するのが狙いだ。ベッセント米財務長官は「今こそ殺りくを止め、即時停戦を行うべき時だ」と声明を出し、さらなる追加制裁を示唆した。そのうえで「同盟国にもこの制裁措置に参加し、順守するよう呼びかける」と表明した。英政府は15日、ロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えると発表した。主要7カ国(G7)に対して制裁に加わるよう呼び掛けていた。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月24日付)は、「トランプ氏、プーチン氏への忍耐は限界に」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ氏は、スコット・ベッセント財務長官と会談し、ロシアの石油産業に対する一連の制裁措置を準備するよう指示した。これは第2次トランプ政権下で米国がロシアに対して初めて直接措置を講じることを意味する。トランプ氏は後に「時が来たと感じた。われわれは長い間待っていた」と記者団に語った。

     

    (1)「トランプ氏は数カ月前からそうした行動をちらつかせていたが、ウクライナ戦争についてプーチン氏と交渉できると信じ続けていたため、毎回立ち消えになっていた。この姿勢は米国や欧州の政策立案者たちをいら立たせていた。複数の当局者によると、トランプ氏の忍耐はついに限界に達した。プーチン氏が自分を振り回しているとの結論に至り、ロシアによるウクライナ攻撃の映像を目にし続けたためだ」

     

    トランプ氏の「堪忍袋の緒が切れた」という感じだ。ロシアの残忍なウクライナ攻撃の映像を見る度に、胸を痛めていたという。トランプ氏は、ロシアを米国へ引き寄せるという外交戦略を持っているだけに「荒療治」を避けて、和平を実現したかったに違いない。そういう「幻想」は、プーチン氏の高等戦術で打ち砕かれた。

     

    (2)「米当局者によると、ロシアの石油産業に対する米国の制裁パッケージは、トランプ氏が行動を決断した場合に備えて数カ月前から起草し準備していた。あるホワイトハウス高官は、トランプ氏は戦争を終わらせる時が来たと明確にしており、紛争の平和的解決を引き続き求めていくと述べた。プーチン氏との亀裂は、6月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で表面化し始めた。この時トランプ氏はプーチン氏の戦争終結拒否を「見当違い」と発言した。政府高官によると、翌7月の両者の電話会談は以前よりもはるかに短く、通常の会話の際の温かみに欠けていた」

     

    トランプ氏は、6月ころからプーチン氏との違和感を強め始めたという。最終決断するまでに4ヶ月もかかった。

     

    (3)「トランプ氏は、プーチン氏への圧力を強める他の手段も持っているが、これまでのところ使っていない。こうした手段には、長距離トマホーク巡航ミサイルのウクライナへの供与、制裁対象のロシア石油大手と取引する企業への新たな二次制裁の実施、欧州連合(EU)の制裁を支えるためロシアの違法石油タンカーの大規模ないわゆる影の船団を新たな制裁の標的にすることなどがある」

     

    米国が、ロシアへ「引導」を言い渡すのは、ウクライナへ長距離トマホーク巡航ミサイルを引き渡す時だ。プーチン氏は、これが実施されると自らの国内の権威はガタ落ちだけに、恫喝を始めている。

     

    (4)「第1次トランプ政権でウクライナ担当特使を務めたカート・ボルカー氏は「トランプ氏はプーチン氏との取引を今も本当に望んでいるため、一部の選択肢をテーブルから外している」とし、「これはトランプ氏が、プーチン氏がまだ自分の計画に従わないことにいら立っているだけだということを示している」と述べた。ボルカー氏は、プーチン氏に真剣な譲歩を約束させるには「制裁よりもはるかに多くのこと」が必要であり、ウクライナへのトマホーク供与が重要な次のステップになると述べた」

     

    ウクライナが、トマホークを手に入れたとき、ロシアは真剣な譲歩を約束せざるを得なくなると観測されている。

     

    (5)「それでも、ロシアの脆弱(ぜいじゃく)な戦時経済が石油・ガス収入にどれほど依存しているかを踏まえると、ロスネフチとルクオイルに対する最新の制裁は経済的なゲームチェンジャーになる可能性があると複数の政府当局者は述べた。発表から1日以内に、インドの石油精製業者はロシアからの石油流入を削減する措置をとり、中国の国有石油会社は少なくとも一時的にロシア産石油の購入を停止した」

     

    今回の経済制裁強化によって、インドも中国も即時にロシア産石油の購入を停止した。「二次制裁」を警戒したからだ。

     

     

     

    a0960_008527_m
       

    ロシアのドミトリエフ大統領特別代表(外国投資・経済協力担当)は16日、ロシアと米国の国境線があるベーリング海峡にトンネル建設案をX(旧ツイッター)で提案した。両国の大統領の姓から「プーチントランプ」トンネルと称し、両国の団結の象徴となると主張した。トランプ米大統領は17日、ドミトリエフ氏の提案について「面白い。考える必要がある」と表明した。

     

    ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、米ロ首脳はこれから停戦問題を議論するという時期に、米ロを結ぶベーリング海峡横断鉄道トンネル建設案が、ロシアから提案された狙いはなにか。先ず、その意図に関心を呼ぶ。しかもトンネル名称が、プーチンートランプとしている。トランプ氏の名称がつくだけに、ウクライナ問題で米国を懐柔する狙いもありそうだ。

     

    『ロイター』(10月19日付)は、「米ロ結ぶ『プーチントランプ』トンネルをベーリング海峡に、ロシア特使が提案」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア政府系ファンドの責任者で国際経済投資協力を担当するキリル・ドミトリエフ特使は、ロシア極東と米アラスカ州を結ぶベーリング海峡横断鉄道トンネルの建設を提案した。トンネルの名称は「プーチントランプ」トンネル。米ロの「団結の象徴」になるとし、米起業家のイーロン・マスク氏が設立したトンネル掘削会社の参画を呼びかけた。

     

    (1)「ドミトリエフ氏は政府系ファンドのロシア直接投資基金(RDIF)の総裁を務め、プーチン大統領が特使に任命。プーチン氏が16日にトランプ米大統領と電話会談を行った後にトンネル建設構想を発表した。ロシアと「国際パートナー」が総額80億ドルを投じ、全長112キロのトンネルを8年未満で建設するとしている。ベーリング海峡はロシア極東のチュクチ自治管区と米国のアラスカ州との間にあり、最も狭い地点の幅は82キロ。同海峡を通してロシアと米国を結ぶ構想は少なくとも150年前から存在していた」

     

    ロシア極東と米アラスカ州を結ぶ全長112キロの鉄道トンネル建設案である。総額80億ドル、8年以内の完成を目指すとされる。冷戦期にも、「ケネディフルシチョフ橋」構想が浮上したことがあり、今回の提案はその延長線上にあると指摘されている。

     

    技術的には可能とされている。ベーリング海峡の水深は比較的浅く、ディアミード諸島を中継点にすれば距離も短縮できる。しかし、経済的・政治的な障壁は非常に高いものがある。建設費は過去の試算では1050億ドルとも言われてきた。今回の80億ドル案はかなり楽観的である。外交的には、米ロ関係が依然として緊張状態にあることや、費用対効果が不透明である。ただ、北極圏の資源開発や物流の利点が最近、大きな関心を高めている。

     

    (2)「ドミトリエフ氏は、冷戦時代にベーリング海峡に「ケネディフルシチョフ」橋を建設する計画が浮上したことがあるとした上で、当時の想定ルートのスケッチと、今回の「プーチントランプ」トンネルの想定ルートが記された図を示し、「ロシアと米国を結ぶときが来た」と表明。実現すれば米国の大手エネルギー企業がロシアの北極圏プロジェクトに参画できると示唆した。また、マスク氏のトンネル掘削会社「ザ・ボーリング・カンパニー(The Boring Company)」が建設に関わることもできるとし、マスク氏宛てにXに「共に未来を築こう」と投稿した」

     

    ベーリング海峡を横断する構想は、実は150年以上前から存在していたという。必要性があったことは事実である。この構想の裏には、ロシアの北極圏資源開発戦略が深く関わっている。ロシアは、北極海沿岸に豊富な石油・天然ガス資源を抱えており、ヤマルLNGなどのプロジェクトを通じて国際的な輸出ルートの確保を目指している。

     

    ロシアは、欧米の制裁下でも北極圏開発を進めている。米国とトンネルによって直接接続が可能になれば、大きな経済的メリットを受けられる。これには、ロシアのウクライナ侵攻停止が大前提になる。かつ、米ロ外交の復活によって、米国がロシアを引き寄せ中国へ共同戦線を張るという思惑が実現できるか。米国は、地政学的視点からこのベーリング海峡鉄道トンネル建設案を検討しなければならない。

     

    a0005_000022_m
       

    ロシアは、経済状況を反映して合計特殊出生率が変動する國である。1991年のソ連崩壊以降の合計特殊出生率は、それまでの2人台が一挙に1.39人(1993年)という落込みとなった。こうした世相の変化を反映するロシアの出生率は、2022年のウクライナ侵攻後に再び現れている。2022年の1.42人が、25年には1.32と推計されているほど。出生率の「がた減り」が始まったのだ。

     

    ロシアは本来、戦争を「忌避」する社会だ。ロシア人は、「平和愛好国民」のようである。第二次世界大戦で受けた甚大な人的被害が、脳裏に深く焼き付いているにちがいない。それにもかかわらず、またウクライナ侵攻を始めた。出生率低下は当然であろう。

     

    『ニューズウィーク 日本語オンライン』(7月18日付)は、「ロシアの労働人口減少問題は、『お手上げ状態』と人口学者...経済への影響は『制裁よりも深刻』」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアで当局者らは、人口危機によって今後数年以内に数百万人規模の労働力不足に陥る可能性があると警告した。

     

    (1)「アントン・コチャコフ労働社会保障大臣はウラジーミル・プーチン大統領に対し、2030年までに国内の労働市場で最大300万人の労働力が不足する可能性があると述べたのだ。ウクライナ侵攻に起因する西側諸国を中心とした対ロ制裁は、ロシア経済に打撃を与えてはいるが決定的な打撃とはなっていない。しかし、ウクライナ侵攻による人的損失や徴兵からの逃避がロシア国内で労働力不足を引き起こし、インフレ加速の一因となっている」

     

    国内の労働市場で2030年までに、最大300万人の労働力が不足する。一方では、戦争を続けている。矛盾したことを行なっているのだ。

     

    (2)「プーチンも、長期にわたる出生率低下を受け、人口増加を国家的優先課題として掲げてきた。退職者によって労働市場にできた穴を埋めつつ、減少する労働人口を増やせなければ、ロシアは長期的な経済問題に直面するだろう。15日に開かれた閣僚会議の中で、コチャコフは、ロシアが労働市場の大きな構造変化の時期に入っていると警告した。労働社会保障省の予測によると、2030年までにロシアは最低240万人、最高310万人の追加の労働力が必要となる。310万人という数字は、ロシアの主要都市カザンとノボシビルスクの合計人口に匹敵する」

     

    労働力不足310万人は、ロシアの主要都市カザンとノボシビルスクの合計人口に匹敵する大規模なものだ。

     

    (3)「特に建設業と製造業において「熟練労働者の不足が深刻」とした。10年以内に、1010万人の退職者によってできる穴を埋め、80万人の新規雇用を充足させるため、合計で1090万人を経済活動に参加させる必要があるとも付け加えた。他の議員らも、ロシアが人口危機に直面していることに警鐘を鳴らしている。ロシア下院の経済政策委員会に所属するバレリー・トゥーミンは、高齢化と出生率の低下が、産業、農業、運輸、ハイテク分野における労働力不足をさらに悪化させていると主張している」

     

    建設業と製造業の労働力不足が深刻である。これは、ロシアがインフレに落込むリスクを示している。

     

    (4)「ロシアの人口統計学者イーゴリ・エフレモフは本誌に対し、「ロシアでは長年にわたって労働力不足が観察されており、すでに経済成長の鈍化とインフレの加速を引き起こしている。ゆっくりだが、持続的に進行している」と語る。ロシア政府が労働人口減少を多少緩和できる唯一の政策は、「他国からの労働移民への障壁を低くすること」だと指摘した。「しかし、労働移民はしばしば安全保障上の脅威と見なされているため、政府の移民政策はますます厳格化されている」。そして、ロシアの人口構造に起因する労働力不足は、「短期的にはほとんど手の施しようがない」とも語った。ロシアの労働力不足と出生率低下は、ロシア政府の頭を長く悩ませる課題となっているようだ」

     

    ロシアは、すでに経済成長の鈍化とインフレの加速を引き起こしている。ゆっくりだが、持続的に進行していると指摘されている。ウクライナ侵攻が、ロシア経済に大きな負担になっていることを示している。

    a0001_000268_m
       

    ロシア政府は先週、西側企業の資産を大幅に安い価格で接収できるようにする具体的な法令を整備するようひそかに命じた。企業の全面国有化というさらに厳格な手段も検討しているという。西側企業の資産を「大幅な割引価格」で優先的に購入する権限を国に与えようとするのだ。国はその後、資産を売却すれば利益を得られるというソロバン勘定である。

     

    1~5月の経常黒字は、前年同期比81.6%減の228億ドルであった。輸出とエネルギー収入の減少が重石になったもの。2023年の経常黒字は、ロシア中銀は660億ドル、経済省は866億ドルと予測している。いずれも、22年の2270億ドルから大幅な減少だ。ウクライナ侵攻で膨大な軍事費が掛る一方で、経常黒字は大幅な減少だ。こういう「懐事情」もあって、西側企業の資産を接収して売却益を狙う、姑息なことをはじめる。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(6月15日付)は、「ロシア、『言うことを聞かない』西側企業の資産を接収へ」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領は欧米からの制裁への報復手段を探るなか、「言うことを聞かない」西側企業の資産を差し押さえる権限を導入し、企業の撤退を難しくしようとしている。この件に詳しい関係者によると、ロシア政府は先週、西側企業の資産を大幅に安い価格で接収できるようにする具体的な法令を整備するようひそかに命じた。企業の全面国有化というさらに厳格な手段も検討しているという。

     

    (1)「フィナンシャル・タイムズ(FT)が確認した機密扱いの大統領令は、西側企業の資産を「大幅な割引価格」で優先的に購入する権限を国に与えようとするものだ。国はその後、資産を売却すれば利益を得られることになる。ペスコフ大統領補佐官はFTに対し、欧米の投資家と企業が従業員への給与の支払いを完全に停止したり、多額の損失を出しながら撤退を決めたりする企業もあると述べた。「自らの務めを果たさない企業は当然、言うことを聞かない企業の分類に入る。そうした企業とはさよならする。残った資産をどうするかは、我々が決めることだ」とペスコフ氏は語った」

     

    ロシアは、捨て鉢になっている。ここで気になるのは、中国の台湾侵攻の際に西側企業へこういう乱暴な行為をするであろうという連想である。中ロの一体化を考えると、あり得ないことではあるまい。

     

    (2)「西側企業のロシア撤退に関わった複数の人物は、ロシア政府は今回の行動で「パンドラの箱」を開けたことになり、国内経済に対する国の支配が強まるのは避けられないとみる。ロシア資産を売却中の企業の幹部は「国有化は必然だろう。時間の問題にすぎない。国は資金が必要だろうから」と述べた。国有化される前に「すり抜ける」つもりだというこの企業幹部は、ロシア政府は輸出収入で財政を支える手段をあれこれ模索しているため、最も影響を受けるのは1次産品を扱う企業だと考えている。逆に「経営が難しい」テック企業は影響を受けにくいだろうと話した

     

    テック企業のように扱いの難しい企業は、国有化を免れるであろう。だが、1次産品を扱う企業の接収は、業態が単純ゆえに接収対象にされやすいという。

     

    (3)「ロシアが2022年に本格的にウクライナに侵攻して以降、プーチン政権は西側企業の国有化について大統領令はこの2社のみが対象だった。ロシア政府はこの権限を数千もの西側企業に行使するか否かを決めるにあたっては、欧米が凍結しているロシア中央銀行の3000億ユーロ(約46兆円)規模の資産の行方を注視している。ロシアの経済政策当局者は、国内経済の幅広い業種で西側企業が果たしてきた重要な役割が失われることを危惧している」

     

    ロシア中銀は、凍結されているロシアの外貨準備高3000億ユーロが今後、どのように処理されるかを見ているという。EUでは、ウクライナの復興資金に充てるという説が有力だ。

     

    (4)「政府はエネルギー輸出収入が落ち込み軍事費が急増するなかで、新しい歳入源をみつけようと躍起にもなっている。ロシアの財政赤字は年初から420億ドル(約5兆9000億円)まで拡大した。22年12月に発表された現行法制では、西側企業は資産をロシア企業に売却するときは50%以上値引きすることや、取引価格の5〜10%を「自主的に」政府に寄付することが義務付けられている。中銀は、外国資本の流出でルーブルが下落し、国内投資家の活動が制限されるのではないかと懸念している。もっともシルアノフ財務相は歳入拡大の手段として、欧米企業の撤退を支持していると関係者らは話す」

     

    ロシア政府内部では、欧米企業の接収について異論もある。だが、膨らむ財政赤字の穴を埋めるべく、財源づくりで接収案以外にないのも事実。貧すれば鈍する、だ。

    このページのトップヘ