勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ロシア経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    シリアは9日、同国内にある2つのロシア軍基地の管理を引き継ぐことで合意したと明らかにした。ロシア軍のシリア駐留は事実上終了する。シリア国営通信SANAによると、「ロシア軍の(シリア国内における)プレゼンスを再編」することで、地中海沿岸のヘメイミーム空軍基地とタルトス海軍基地の輸送施設の管理がシリア文民当局に移るという。

     

    ロシア軍のシリア撤退は、経済衰退が構造的段階に入った証拠である。ロシアにとって、ヘメイミーム空軍基地とタルトス海軍基地は、地中海での唯一の軍事拠点であり、「ロシアが大国である証明」そのものであった。それを手放すのは、国力の衰退が軍事地政学にまで波及したことを意味する。なぜ基地を維持できなくなったのか。ウクライナ戦争で兵力・資金・装備が枯渇したことだ。ロシアは、ウクライナ戦争で兵力、弾薬、航空機を大量に失い、海外展開の余力が消えたのである。戦争は、最大の国力消耗である。習近平氏にとっては、良い教訓になろう。台湾侵攻が、南シナ海不法占拠撤退の引き金になるのだ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(8月10日付)は、「ロシアの影響力低下の兆し シリア、ロシア軍基地の移管合意」と題する記事を掲載した。

     

    シリアは9日、同国内にある2つのロシア軍基地の管理を引き継ぐことで合意したと明らかにした。ロシア軍のシリア駐留は事実上終了する。

     

    (1)「シリア国営通信SANAによると、「ロシア軍の(シリア国内における)プレゼンスを再編」することで、地中海沿岸のヘメイミーム空軍基地とタルトス海軍基地の輸送施設の管理がシリア文民当局に移るという。今回の合意は、ロシアにとっては戦略的な大きな打撃になる。シリアのシャラア暫定大統領の勢力が2024年末に親ロシアのアサド前政権を崩壊に追い込んだ後も、ロシアは両基地を維持しようとしてきた」

     

    ロシアは事実上、シリアを失うことになった。経済衰退が最大の原因で、ウクライナ侵攻がもたらした結果である。

     

    (2)「ロシアの影響力が弱まる兆しがみえる一方で、米国は数十年に及ぶシリアのテロ支援国家指定の解除に動いている。トランプ米大統領は7月8日、米議会にシリアの指定を解除する意向を伝えた。45日間の審査期間を経て解除される。11年のシリア内戦勃発以降、ロシアはアサド前政権の財政・政治的な重要な後ろ盾となってきた。15年にはアサド前政権を支援するために軍事介入に踏み切った」

     

    米国は、シリアを引き寄せている。後述のように、原油購入先をロシアから米国へ切替えさせる動きをみせている。

     

    (3)「だが、22年のウクライナ侵略開始後、ロシアにとってこの地域の重要性は薄れ始めた。シャラア氏率いる「シャーム解放機構(HTS)」などが前政権を崩壊に追い込んだ際も、ロシアは傍観する姿勢をとった。一方で、アフリカでの軍事展開や地中海でのプレゼンスを維持する拠点として両基地を重視してきた。ロシアのプーチン大統領は、アサド氏の亡命を受け入れたが、内戦で戦った反体制勢力を主導したシャラア氏との関係構築も目指している。プーチン氏はシャラア氏に対し、クルド人勢力主体の民兵組織が実効支配する北東部を奪還する取り組みを支援すると伝えている。さらに戦闘で被害を受けた地域の復興や経済の再建も支援する用意があるとも語った」

     

    プーチン氏のシリア向け発言は、「リップサービス」の域を出ないであろう。経済的に行き詰まっているロシアが、軍事的・経済的な支援余力があるか疑問である。

     

    (4)「シリアは、依然としてエネルギーをロシア産原油に大きく依存している。ロイター通信は4日、(米国との)対シリア制裁解除の協議の一環として、シリア政府がロシア産石油の輸入を削減する姿勢を示したと報じている」

     

    シリア政府が、ロシア産石油の輸入を削減する姿勢を示した。これは、シリアがロシア依存から米国依存へと軸足を移し始めたという意味だ。米国が、シリアのテロ支援国家指定を解除しようとしているのも、中東の勢力図が「ロシア抜き」で再編される前兆である。

     

    ロシアの影響力低下は「3段階目」に入った。これは、ロシア衰退の「兆し」ではなく、衰退の第三段階に当たる。

     

    1段階は、経済力の衰退である。GDP縮小、技術力低下、エネルギー依存の限界であった。

     

    2段階は、軍事力の衰退である。ウクライナ戦争で兵力・装備を喪失、海外展開の余力が消滅した。

     

    3段階は、地政学的資産の喪失である。現状は、まさにこの段階で地中海の基地を失った。中東での影響力が消えると同時に、同盟国が離反し始める(シリアが米国側へ)。これは、ロシアが、大国としての「外部投射能力」の消滅状態を意味する。

     

    ロシアは、こうして「大国の外形」を維持できなくなった。ロシアの大国性は、核、エネルギー、軍事拠点、同盟国で支えられてきた。そのうちの軍事拠点と同盟国が崩れ始めたことを示す。ロシアは、「核だけが大国の証明」という状態に近づいている。これは、国力衰退の末期症状にあたる。

     

     

     

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    原油産出国のロシアが、皮肉にもガソリン不足に直面している。ウクライナのミサイルとドローン攻撃によって、製油所が機能不全に陥っている結果だ。ロシア当局はこれまで、燃料不足の原因として投機家やパニック買いを挙げてきた。プーチン氏は、6月28日に初めて燃料不足が現実のものであることを認めた。原因が、ウクライナ攻撃であることを間接的に臭わすことになった。

     

    『ウォールストリート・ジャーナル』(7月1日付)は、「ロシア全土に燃料不足拡大、プーチン氏は政治危機に直面」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア全土に燃料不足が拡大し、プーチン大統領にとって新たな政治的課題となっている。ウクライナによるロシアの製油所を標的とした執拗なドローン攻撃で、多くの一般市民にとって戦争は身近なものとなった。

     

    (1)「ウクライナは長年にわたりロシアのエネルギー施設を標的にしてきたが、ウクライナのドローンとミサイルの数と破壊力は増大している。同国政府は1200マイル(約1900キロ)離れたシベリアのチュメニにある製油所を攻撃できるようになった。また、6月18日に強固な防空網を突破してモスクワの主要製油所を破壊したことが転換点となった。ロシアの石油会社ガスプロムネフチの元戦略責任者で、現在はドイツのベルリンにあるカーネギー・ロシア・ユーラシアセンターのシニアフェローを務めるセルゲイ・バクレンコ氏は、6月20日時点でロシアの製油能力の約28%が停止していると推計している」

     

    ウクライナは、自力でミサイルやドローンを開発しており、強固な防空網を突破してモスクワの主要製油所を破壊するまでになっている。これは、ロシアにとって「重大事態」の幕開けになろう。ロシアの製油能力の約28%が、6月20日時点で停止している。

     

    (2)「バクレンコ氏は「これは全て、ウクライナが発射できるドローンの数が急増したことによるものだ」と指摘。 問題はもはや物流上の困難や市場の不均衡ではなく、「燃料の物理的な不足にある」と述べた。ロシア大統領府のペスコフ報道官は6月30日、ロシアが数十年ぶりに燃料の輸入を開始する計画だとし、複数の国と交渉中だと述べたが、国名は明かさなかった。すでに戦費で逼迫しているロシアの財政をさらに圧迫することになる」

     

    ロシアが、数十年ぶりに燃料の輸入を開始する計画で複数の国と交渉中である。自国で原油を産出しながら、ガソリンを輸入する羽目に陥った。この事態を国民はどう評価するかだ。ウクライナ侵攻を失敗と受止めれば、プーチン神話にも陰りが出るであろう。

     

    (3)「かつて世界有数の石油製品輸出国だったロシアは、ウクライナの攻撃が激化する中、ガソリンとジェット燃料の輸出を数カ月にわたり禁止してきた。プーチン氏は6月28日、ディーゼル燃料の輸出禁止も検討していると述べた。ロシアでは燃料不足が全土で発生しているが、広大な国土の中で地域によって状況は異なる。プーチン氏が2022年に始めた戦争の影響を通常受けにくいモスクワでも、ここ数日間で多くのガソリンスタンドが閉鎖された。営業中のガソリンスタンドでも、数時間待ちになることが多い」

     

    モスクワは、ここ数日間で多くのガソリンスタンドが閉鎖された。営業中のガソリンスタンドも、数時間待ちという事態になっている。戦争の影が、モスクワにまで及ぶことによって、モスクワ市民も安閑としていられなくなった。

     

    (4)「シベリアや北カフカスなどでは、住民が給油のために一晩以上待ったケースも報告されている。シベリアのイルクーツクでは、政府が何キロにも及ぶ給油待ちの列の近くに仮設トイレを設置し始めた。ロシアの多くの地域で携行缶へのガソリンの給油が禁止され、1回の給油量は5ガロン程度に制限された。ロシアのディーゼル精製能力は元々高かったため、ディーゼル燃料不足はまだそれほど深刻ではない」

     

    ロシアの地方では、モスクワ以上のガソリン不足に直面している。シベリアのイルクーツクでは、政府が何キロにも及ぶ給油待ちの列の近くに仮設トイレを設置し始めた。

     

    (5)「緊張は高まっている。ロシア西部オリョール州政府は、燃料販売を地元登録車両のみに限定し、給油は週1回に制限する計画だ。クラスノダール地方のガソリンスタンドでは、地元住民と、ウクライナのドローン攻撃を受けて燃料販売が全面的に停止されたクリミアから給油に来たドライバーとの間で乱闘騒ぎが起きている。クラスノダールの主要製油所の一つが6月28日に爆破された」

     

    ロシア西部オリョール州政府は、燃料販売を地元登録車両のみに限定し、給油は週1回に制限する。ここまで来ると、必ず「戦争反対」という事態にまで発展するであろう。すでに4年4ヶ月も無益な戦争をしていることで、国民が「厭戦気分」なるのは自然であろう。

     

    (6)「ロシア独立紙ノーバヤ・ガゼータなどのアナリストで、モスクワを拠点とするアンドレイ・コレスニコフ氏は、「燃料をめぐる社会的危機は明らかに存在し、政治的な問題に発展する可能性もあるが、今のところ深刻な事態には至っていない」と述べた。「これは、いら立ちへと変わる疲弊感を強めている。しかし人々には状況を変える手段がないため、当局への不満や戦争が終わらないことへの不満を漏らすだけだ」と語った。燃料不足が常態化する中、9月に予定されているロシアの議会選挙に向けた政治活動が本格化している。自由で公正な選挙を期待する声はないが、選挙はロシア国民が静かに不満を表明する場となっている」

     

    9月に予定されているロシアの議会選挙は、燃料不足が常態化する中で迎える。国民は、どういう意思表示するのか。国民の良識が問われている。

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    米国が新たに課した制裁は、ロシアの低迷する戦争経済の柱を直撃し、トランプ政権発足以来初めてロシアへの圧力で欧州と足並みをそろえた。米国は、ロシア最大の石油生産会社ロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えた。これが今後、どう影響するか三つの要因にかかっている。1)制裁がどれだけ順守されるか、2)インドと中国の主要市場の反応、3)ロシア政府が制裁を回避できるかどうかだ。

     

    米財務省は、同盟国にも制裁への参加を求める」と明言しており、これは第三国の企業金融機関が対象企業と取引すれば制裁対象になる可能性を示唆するとしている。米政府元高官も「問題は、ロスネフチやルクオイルと取引する企業に制裁を科すかどうかだ」と述べており、二次制裁の布石と見る専門家もいる。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月24日付)は、「トランプ氏の石油制裁、ロシア経済の生命線を直撃」と題する記事を掲載した。

     

    米国が新たに課した制裁は、ロシアの低迷する戦争経済の柱を直撃し、トランプ政権発足以来初めてロシアへの圧力で欧州と足並みをそろえた。アナリストによると、米国がロシア最大の石油生産会社であるロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えたことがどう影響するかは、三つの要因にかかっている。制裁がどれだけ順守されるか、インドと中国の主要市場の反応、ロシア政府が制裁を回避できるかどうかだ。

     

    (1)「RBCキャピタルマーケッツのグローバル商品戦略責任者ヘリマ・クロフト氏は顧客向けのメモで、米国による新たな制裁は「ロシアの戦費調達を断つための米国の動きとしては、これまでで最も重要なものだ」と指摘。「トランプ政権が今の言葉を実行に移せば、米資本市場へのアクセスを維持したい製油業者はロシア産原油を断念するだろう」と述べた。欧州連合(EU)は23日に新たな対ロ制裁を承認した。ロシア産の液化天然ガス(LNG)の購入を段階的に停止するほか、軍事物資に対する制裁の回避や石油貿易でロシア政府を支援している外国企業37社を制裁対象にする内容だ。香港と中国の企業15社に対する貿易禁止や資産凍結も盛り込んだ」

     

    「米資本市場へのアクセスを維持したい製油業者はロシア産原油を断念するだろう」というのは、二次制裁を恐れている結果だ。この動きが広がれば、効果は出るであろう。EUも23日から制裁を拡大した。香港と中国の企業15社に対する貿易禁止や資産凍結も盛り込んだ。

     

    (2)「トランプ氏が制裁導入を決めたのは、米政府が求める現在の前線でのウクライナ即時停戦と和平交渉をロシア政府が拒否した後だった。トランプ氏はかねて、ロシア経済への支援を続ける中国に経済的打撃を与えるよう欧州に求めてきた。EUが2024年に購入したロシア産LNGは70億ユーロ(約1兆2400億円)相当と過去最高だった。制裁発表を受けて原油価格は23日に上昇。トレーダーは制裁措置が世界の供給を混乱させる可能性を懸念している」

     

    中国も二次制裁を警戒して、ロシア産原油購入をストップした。二次制裁は、米銀との取引を禁止されるだけに痛手になる。ドルが、基軸通貨である結果だ。

     

    (3)「中国外務省は、中国企業に対するEUの制裁は違法だと述べ、大半の国はロシア政府との貿易を続けるとの見方を示した。石油輸出の減少は、ロシア政府の戦争資金源を直撃する。エネルギー収入は、同国の歳入の最大3分の1を占めるためだ。制裁で物流と決済にも支障が出て、ロシア産石油の利益率は縮小するとみられる。ロシア経済は現在、不安定な状態にある。3年以上にわたって西側諸国から制裁を受け、労働力不足や高金利、戦時下の緊縮財政が重荷となり、成長はここ数カ月鈍化している。政府は拡大する財政赤字を増税や特別基金で穴埋めしている」

     

    中国は、EU制裁を甘くみている。米国が二次制裁の手を伸せば、そんな「暢気」なことを言っていられまい。

     

    (4)「ロシア経済に耐性があるのは、世界的な価格高騰が起きないよう石油が部分的にしか制裁対象になっていないことが一因だ。これまでの制裁はもっぱらロシア石油産業の長期的な持続性を損なうことを目的としたもので、同国の目先のキャッシュフローへの影響は限定的だった。バイデン前米政権はロシア石油会社3位と4位のガスプロムネフチとスルグトネフテガスを制裁対象にしたが、ロスネフチとルクオイルは対象外だった。この2社は合わせてロシアの石油の約半分を生産している。トランプ政権による今回の措置を受け、ロシアの主要石油会社4社が全て米国の制裁対象となった」

     

    今回の措置を受け、ロシアの主要石油会社4社が全て米国の制裁対象となった。これまでは、トップ1位と2位を制裁対象から除外していた。これで、ロシアは逃げ道がなくなった。

     

    (5)「EUも7月、ロスネフチの主要顧客だったインドの製油所を制裁対象に加え、同社との取引禁止を強化した。英国も先週、ルクオイルとロスネフチに対する制裁を発表した。 ロシアに対する西側の圧力は、ウクライナにとって歓迎すべき救いの手になるだろう。ウクライナには、戦闘を継続できるかどうかは欧州の資金や軍事物資購入、制裁にかかっているとの懸念があった。戦争を終結させる方法についても、米国と欧州の認識の隔たりは狭まりつつある」

     

    EU、英国、米国が揃って対ロ制裁強化に動いている。米国と欧州は、戦争を終結させる方法についても、その認識の隔たりは狭まりつつある。早期停戦が求められている。

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    米国が、ロシアのウクライナ侵攻を止めるべく、経済制裁を強化した。米国内の資産が凍結され、取引できなくなるという極めて大きい制裁である。米国が、侵略戦争を中止させる「本気度」を内外に明らかにした。

     

    米財務省は22日、ロシアの石油最大手ロスネフチと2位のルクオイルのほかに、前記2社が株式の50%以上を所有する事業体もすべて対象になる。英政府によると、ロスネフチはロシアの石油生産全体の半分ほどを担っている。発表から1日以内に、インドの石油精製業者はロシアからの石油流入を削減する措置をとり、中国の国有石油会社は少なくとも一時的にロシア産石油の購入を停止した。早くも、効果が出てきた。

     

    制裁目的は、ロシアの戦費調達につながるエネルギー収入を制限するのが狙いだ。ベッセント米財務長官は「今こそ殺りくを止め、即時停戦を行うべき時だ」と声明を出し、さらなる追加制裁を示唆した。そのうえで「同盟国にもこの制裁措置に参加し、順守するよう呼びかける」と表明した。英政府は15日、ロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えると発表した。主要7カ国(G7)に対して制裁に加わるよう呼び掛けていた。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月24日付)は、「トランプ氏、プーチン氏への忍耐は限界に」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ氏は、スコット・ベッセント財務長官と会談し、ロシアの石油産業に対する一連の制裁措置を準備するよう指示した。これは第2次トランプ政権下で米国がロシアに対して初めて直接措置を講じることを意味する。トランプ氏は後に「時が来たと感じた。われわれは長い間待っていた」と記者団に語った。

     

    (1)「トランプ氏は数カ月前からそうした行動をちらつかせていたが、ウクライナ戦争についてプーチン氏と交渉できると信じ続けていたため、毎回立ち消えになっていた。この姿勢は米国や欧州の政策立案者たちをいら立たせていた。複数の当局者によると、トランプ氏の忍耐はついに限界に達した。プーチン氏が自分を振り回しているとの結論に至り、ロシアによるウクライナ攻撃の映像を目にし続けたためだ」

     

    トランプ氏の「堪忍袋の緒が切れた」という感じだ。ロシアの残忍なウクライナ攻撃の映像を見る度に、胸を痛めていたという。トランプ氏は、ロシアを米国へ引き寄せるという外交戦略を持っているだけに「荒療治」を避けて、和平を実現したかったに違いない。そういう「幻想」は、プーチン氏の高等戦術で打ち砕かれた。

     

    (2)「米当局者によると、ロシアの石油産業に対する米国の制裁パッケージは、トランプ氏が行動を決断した場合に備えて数カ月前から起草し準備していた。あるホワイトハウス高官は、トランプ氏は戦争を終わらせる時が来たと明確にしており、紛争の平和的解決を引き続き求めていくと述べた。プーチン氏との亀裂は、6月の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で表面化し始めた。この時トランプ氏はプーチン氏の戦争終結拒否を「見当違い」と発言した。政府高官によると、翌7月の両者の電話会談は以前よりもはるかに短く、通常の会話の際の温かみに欠けていた」

     

    トランプ氏は、6月ころからプーチン氏との違和感を強め始めたという。最終決断するまでに4ヶ月もかかった。

     

    (3)「トランプ氏は、プーチン氏への圧力を強める他の手段も持っているが、これまでのところ使っていない。こうした手段には、長距離トマホーク巡航ミサイルのウクライナへの供与、制裁対象のロシア石油大手と取引する企業への新たな二次制裁の実施、欧州連合(EU)の制裁を支えるためロシアの違法石油タンカーの大規模ないわゆる影の船団を新たな制裁の標的にすることなどがある」

     

    米国が、ロシアへ「引導」を言い渡すのは、ウクライナへ長距離トマホーク巡航ミサイルを引き渡す時だ。プーチン氏は、これが実施されると自らの国内の権威はガタ落ちだけに、恫喝を始めている。

     

    (4)「第1次トランプ政権でウクライナ担当特使を務めたカート・ボルカー氏は「トランプ氏はプーチン氏との取引を今も本当に望んでいるため、一部の選択肢をテーブルから外している」とし、「これはトランプ氏が、プーチン氏がまだ自分の計画に従わないことにいら立っているだけだということを示している」と述べた。ボルカー氏は、プーチン氏に真剣な譲歩を約束させるには「制裁よりもはるかに多くのこと」が必要であり、ウクライナへのトマホーク供与が重要な次のステップになると述べた」

     

    ウクライナが、トマホークを手に入れたとき、ロシアは真剣な譲歩を約束せざるを得なくなると観測されている。

     

    (5)「それでも、ロシアの脆弱(ぜいじゃく)な戦時経済が石油・ガス収入にどれほど依存しているかを踏まえると、ロスネフチとルクオイルに対する最新の制裁は経済的なゲームチェンジャーになる可能性があると複数の政府当局者は述べた。発表から1日以内に、インドの石油精製業者はロシアからの石油流入を削減する措置をとり、中国の国有石油会社は少なくとも一時的にロシア産石油の購入を停止した」

     

    今回の経済制裁強化によって、インドも中国も即時にロシア産石油の購入を停止した。「二次制裁」を警戒したからだ。

     

     

     

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    ロシアのドミトリエフ大統領特別代表(外国投資・経済協力担当)は16日、ロシアと米国の国境線があるベーリング海峡にトンネル建設案をX(旧ツイッター)で提案した。両国の大統領の姓から「プーチントランプ」トンネルと称し、両国の団結の象徴となると主張した。トランプ米大統領は17日、ドミトリエフ氏の提案について「面白い。考える必要がある」と表明した。

     

    ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、米ロ首脳はこれから停戦問題を議論するという時期に、米ロを結ぶベーリング海峡横断鉄道トンネル建設案が、ロシアから提案された狙いはなにか。先ず、その意図に関心を呼ぶ。しかもトンネル名称が、プーチンートランプとしている。トランプ氏の名称がつくだけに、ウクライナ問題で米国を懐柔する狙いもありそうだ。

     

    『ロイター』(10月19日付)は、「米ロ結ぶ『プーチントランプ』トンネルをベーリング海峡に、ロシア特使が提案」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア政府系ファンドの責任者で国際経済投資協力を担当するキリル・ドミトリエフ特使は、ロシア極東と米アラスカ州を結ぶベーリング海峡横断鉄道トンネルの建設を提案した。トンネルの名称は「プーチントランプ」トンネル。米ロの「団結の象徴」になるとし、米起業家のイーロン・マスク氏が設立したトンネル掘削会社の参画を呼びかけた。

     

    (1)「ドミトリエフ氏は政府系ファンドのロシア直接投資基金(RDIF)の総裁を務め、プーチン大統領が特使に任命。プーチン氏が16日にトランプ米大統領と電話会談を行った後にトンネル建設構想を発表した。ロシアと「国際パートナー」が総額80億ドルを投じ、全長112キロのトンネルを8年未満で建設するとしている。ベーリング海峡はロシア極東のチュクチ自治管区と米国のアラスカ州との間にあり、最も狭い地点の幅は82キロ。同海峡を通してロシアと米国を結ぶ構想は少なくとも150年前から存在していた」

     

    ロシア極東と米アラスカ州を結ぶ全長112キロの鉄道トンネル建設案である。総額80億ドル、8年以内の完成を目指すとされる。冷戦期にも、「ケネディフルシチョフ橋」構想が浮上したことがあり、今回の提案はその延長線上にあると指摘されている。

     

    技術的には可能とされている。ベーリング海峡の水深は比較的浅く、ディアミード諸島を中継点にすれば距離も短縮できる。しかし、経済的・政治的な障壁は非常に高いものがある。建設費は過去の試算では1050億ドルとも言われてきた。今回の80億ドル案はかなり楽観的である。外交的には、米ロ関係が依然として緊張状態にあることや、費用対効果が不透明である。ただ、北極圏の資源開発や物流の利点が最近、大きな関心を高めている。

     

    (2)「ドミトリエフ氏は、冷戦時代にベーリング海峡に「ケネディフルシチョフ」橋を建設する計画が浮上したことがあるとした上で、当時の想定ルートのスケッチと、今回の「プーチントランプ」トンネルの想定ルートが記された図を示し、「ロシアと米国を結ぶときが来た」と表明。実現すれば米国の大手エネルギー企業がロシアの北極圏プロジェクトに参画できると示唆した。また、マスク氏のトンネル掘削会社「ザ・ボーリング・カンパニー(The Boring Company)」が建設に関わることもできるとし、マスク氏宛てにXに「共に未来を築こう」と投稿した」

     

    ベーリング海峡を横断する構想は、実は150年以上前から存在していたという。必要性があったことは事実である。この構想の裏には、ロシアの北極圏資源開発戦略が深く関わっている。ロシアは、北極海沿岸に豊富な石油・天然ガス資源を抱えており、ヤマルLNGなどのプロジェクトを通じて国際的な輸出ルートの確保を目指している。

     

    ロシアは、欧米の制裁下でも北極圏開発を進めている。米国とトンネルによって直接接続が可能になれば、大きな経済的メリットを受けられる。これには、ロシアのウクライナ侵攻停止が大前提になる。かつ、米ロ外交の復活によって、米国がロシアを引き寄せ中国へ共同戦線を張るという思惑が実現できるか。米国は、地政学的視点からこのベーリング海峡鉄道トンネル建設案を検討しなければならない。

     

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