中国の習近平国家主席は最近、外交問題に関心を高めている。サウジアラビアとイランの和解で登場した。専門家によれば、中国は最後のまとめ役になったに過ぎないとされるが、習氏にとっては名誉この上ない話だ。この余勢を駆って、ロシアのウクライナ侵攻を止めるのは習近平だけという見方が出てきた。ロシアは、物心両面で中国への依存を深めている。プーチン・ロシア大統領は、習氏へ絶大な信頼を寄せている様子がうかがえる。この信頼関係を生かして、習氏がプーチン氏へウクライナ侵攻の「止め役」になるというのだ。
英紙『フィナンシャル・タイムズ』(5月1日付)は、「中国、和平の仲介なるか」と題する記事を掲載した。筆者は、ギデオン・ラックマン氏である。チーフ・フォーリン・アフェアーズ・コメンテーターだ。
中国の習近平国家主席は4月26日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議した。中国の外交努力については懸念すべき明白な理由が複数ある。習氏はロシアのプーチン大統領を「親愛なる友人」だと繰り返し強調している。中国政府が2月に公表したウクライナ和平案は漠然としており、ロシア軍の撤退を一切、求めていない。とはいえ、中国がこの残虐な戦争を終わらせるうえで重要な役割を担い得るとの見方を退けるのは間違いだろう。
(1)「中国政府が和平実現に関与するとなれば、それはウクライナ、ロシア、米国、欧州、そして中国政府にとって、それぞれに異なる理由から歓迎すべきものとなるかもしれない。ウクライナ政府は、習氏のみがプーチン氏に影響力を及ぼせる存在だとみている。もちろん、それは習氏が自らの影響力を行使すると決めた場合だ。一方、ロシアは西側諸国による制裁を前に、自国経済を維持するのに中国に依存している」
ウクライナ政府は、中国がロシアへ最も大きな影響力を発揮できると読んでいる。ロシア経済が、中国依存度を深めているのも理由だろう。
(2)「バイデン米政権は、中国が実際にロシアに強い圧力をかけられる見込みは極めて低いとみており、一部の政府高官らは中国が逆にロシアに武器を提供する方向へと舵(かじ)を切る可能性を依然、懸念している。しかし、ウクライナ政府の中国への期待は大きい。彼らは、3月の中ロ首脳会談から習氏とプーチン氏は緊張関係にあることを示す兆候を捉えたとしており、筆者には、だからこそ習氏は予定より早く訪ロを切り上げたのだとまで語った(注:筆者は4月26日の習氏とゼレンスキー氏の電話会談前にウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問していた)」
ウクライナは、冷静に中国とロシアの力関係の変化を読んでいる。
(3)「習氏が、プーチン氏にしびれを切らしつつあるかもしれないとすれば、その理由は何か。中国とロシアがともに米国の覇権に敵対心を抱いているのは間違いない。ロシアが短期間でウクライナを制圧できていれば、中国としても好都合だったかもしれない。ところがウクライナ戦争で米国主導の同盟関係は弱体化するどころか、米欧およびアジアの民主主義諸国はこれまで以上に結束を強めている。今や長引く戦争は中国にとって戦略上、負担となっている。中国は何十年もかけて欧州での影響力拡大に力を入れてきた。だが2022年2月に中国がロシアとの「無制限」の協力関係を表明して以降、多くの欧州諸国は中国が脅威だとの確信を強めている」
中国は、ロシアのウクライナ侵攻で欧州の中国警戒論という巻き添えを食っている。これは、中国にとっては思わざる事態である。ウクライナ侵攻が長引くほど、中国に負担になることから、ロシアへ圧力を掛けざるを得ないという見方が生まれている。
(4)「バイデン政権は内部で協議を重ね、中国の和平外交を直ちに無視するのではなく、これを米国の望む形で利用できるか試してみることに決めた。米政府は、自分たちが「和平に反対するのか」とみられる危険を認識している。だが、中国の動きを見守ることにした理由はそれだけではない。米国もウクライナ戦争を終結させる方法をみつけようとますます必死だ。ウクライナ戦争が長期化するほど莫大な資金を軍事・経済支援としてウクライナに提供する西側の団結を維持するのが難しくなると理解しているからだ。より現実的な展開は、ウクライナが和平交渉に先立ち、いかに戦場で優位に立つかだろう」
米国にとっても、ウクライナ侵攻が長引くことは経済的な負担を増やす。だから、ウクライナ軍が決定的勝利を収めるか、優位に立つかによって和平交渉が必要としている。
(5)「これまでも西側同盟の中では、ウクライナに和平交渉に応じるよう圧力をかけるかどうか散々議論されてきた。だが、さほど話題になっていないものの、おそらくもっと重要なのは、誰がロシアに対し、ウクライナの領土から撤退し、国家としてのウクライナの崩壊を狙うような様々な活動を阻止するよう意味ある譲歩を強要できるのかという問題だ。唯一これをできるのは中国だ。プーチン氏と公の場で温かい握手を交わしつつ、裏でプーチン氏の腕をひねりあげることができるのは習氏だけだ。習氏は、どこかの段階でそうすることが中国の利益になると判断するかもしれない」
西側にとって、プーチン氏に圧力を掛け、ウクライナに意味ある譲歩を引き出させる人物は誰か。こういう視点になると、習氏が候補者になるというのだ。ただ、習氏はその場合に重大な決断を迫られる。台湾侵攻を封印することになるからだ。ウクライナ侵攻を止める一方で台湾侵攻をするのは、国際世論を納得させられないからだ。





