勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時報

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    EU(欧州連合)のフォンデアライエン欧州委員長は13日、中国製の安価な電気自動車(EV)の流入を問題視し、補助金支援が競争を阻害していないか調査すると発言した。欧州市場で中国製EVのシェアは、すでに昨年の約2倍の8.2%へ上昇している。この裏には、中国政府が税制優遇や工場建設の支援、低利融資、エネルギー料金の上限設定など手厚い支援を与えていることも影響している。EUは、こういう実態を調査して関税引上げを目指している。これに対して、中国政府は早くも警戒しEUを威嚇し「対抗措置もあり得る」としている。

     

    中国EVは、欧州市場で存在感を高めている。独シュミット・オートモーティブ・リサーチの調査では、欧州EV市場の中国車シェアは2019年の0.%から21年には3.%に急伸。23年17月には8.%まで伸ばしている。欧州で実際に販売される中国車のうち9割近くが、上海汽車集団が買収した英国車の老舗ブランド「MG」など表向きは欧州企業名を冠したものという。こうして、欧州ブランド名を利用しており、実態以上に欧州市場で影響力を得ているのだ。こうなると、EUとしても危機感を持って当然であろう。

     

    『ロイター』(9月14日付)は、「中国、EV補助金調査巡り欧州連合を批判ー自国企業守ると主張」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)が中国の電気自動車(EV)に関する補助金の調査を始め、中国が反発している。中国商務省は「強い懸念と不満」を示す声明を発表した。

     

    (1)「EUの行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は13日、「巨額の国家補助金によって価格が人為的に低く抑えられており、われわれの市場をゆがめている」と欧州議会で述べ、調査の開始を発表。「EU域内に起因するこうしたゆがみをわれわれが受け入れることはない。域外によるゆがみも同様だ」と指摘した。事情に詳しい関係者によれば、調査は最長9ヶ月を要する可能性があり、米国が中国のEVにすでに課している27.5%水準に近い関税率が適用され得るという」

     

    EU加盟国からは、安価な中国製が域内で広く流通すれば、欧州の自動車メーカーの利益を損なうと不満が出ていた。複数の欧州メディアによると、フランスが水面下で欧州委に調査開始を強く求めていた模様だ。フランスは外交面で、中国と友好ぶりを演出しているが、内情は複雑である。

     

    (2)「中国商務省は、ウェブサイトに14日掲載した声明で、EUの動きは世界の自動車産業に深刻な混乱をもたらし、中国とEUの関係に悪影響を及ぼすと主張。声明によれば、中国はEUに対しEV産業のために公平で差別のない予測可能な市場環境を生み出すため対話を行うよう求めるとともに、EUによる今後の行動を注視し、中国企業の権利と利益を断固として守るという」

     

    米国は、中国EVへ27.5%水準に近い関税率を科している。EUでも、これと同水準が適用されると中国EVへ大きな影響が出る。

     

    中国EVは、EUで二つの価格帯で販売されている。浙江吉利控股集団が子会社のボルボ・カー(スウェーデン)と立ち上げたポールスターのように、欧州市場での販売価格が8万9900ユーロ(約1400万円)を超える超高級EVがある一方、3万ユーロ(約467万円)以下の相対的に安価なEVが中国製全体の7割を占める。欧州車大手の同型車と比べても中国製EVは割安だといい、欧州自動車工業会(ACEA)のジグリッド・デ・フリース事務局長は「中国車メーカーが公的資金と政府の意向に支えられ、欧州や他地域の市場で攻勢をかけているのは周知の事実だ」と危機感をあらわす。以上、『日本経済新聞 電子版』(9月13日付)が報じた。

     

    (3)「中国全国乗用車市場情報連合会(乗連会)の崔東樹秘書長は、「中国の新エネルギー車(NEV)輸出が好調なのは、国家から多額の補助金を受けているからではなく、自国の産業チェーンが持つ競争力が高いからだ」と反論。「EUは、中国EU産業の発展を客観的に見るべきであり、恣意的に一方的な経済・貿易手段を用いて」成長を妨げるべきではないとコメントした。中国共産党系の新聞、環球時報は論評で、欧州は明らかに「中国との競争を恐れているためゆっくりと電動化に向かう欧州の自動車メーカーを保護する傘として、貿易保護主義を求めようとしている。EUによって不公正な措置が取られた場合、中国には自国企業の法的利益を守る対抗措置として行使し得るさまざな手段がある」と論じた。

     

    今年6月、欧州議会が承認した欧州電池規制には、電池の製造時CO2排出量の報告義務化が盛り込まれている。火力発電に依存する中国製EVに対し、欧州製EVはライフサイクルアセスメント(LCA)で優位に立っている。EUは、脱炭素を大義に中国EVにグリーン関税を課すことができるという。

     

    ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取原料生産製品生産流通・消費廃棄・リサイクル)、またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法である。「環境のEU」らしい対応であるから、中国EVの泣き所を突く手段は、すでに持っているのだ。こうなると、中国がEUに圧力をかけることは難しくなろう。

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    習近平・中国国家主席が、G20サミットを欠席している間に、米国が音頭を取った「欧州・中東・南アジアを結ぶ多国間鉄道・港湾構想」を発表した。「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」に関する覚書だ。これは、EU(欧州連合)、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、米国、その他G20パートナーによって署名された。米国は、世界的なインフラ整備で中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗しようとしている。中国は、完全に虚を突かれた形である。

     

    『ロイター』(9月10日付)は、「米、『インド・中東・欧州経済回廊』で覚書 中国に対抗」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米当局者によると、この構想は中東諸国を鉄道で結び、港でインドと接続させることで輸送時間やコスト、燃料の使用量を削減し、湾岸諸国から欧州へのエネルギー・貿易の流れを後押しすることが狙い。覚書によると、IMEC(インド・中東・欧州経済回廊)はインドとアラビア湾を結ぶ東側回廊と、アラビア湾と欧州を結ぶ北側回廊の2回廊で構成されることが想定されている。鉄道ルートに沿って、参加国は電力・データ回線用のケーブルや、発電に使用する再生可能エネルギー由来の水素パイプラインを敷設する予定だ。この構想の金銭面の詳細はまだ明らかにされていない」

     

    この構想は、中国の「一帯一路」と同じ狙いである。欧州と中東諸国は鉄道(一帯)で結び、その先は船でインドを接続(一路)させる計画である。インドを欧州とつなげるもので、インドの工業生産物が欧州へ輸出可能なルートが建設される。それだけでない。鉄道ルートに沿って、参加国は電力・データ回線用のケーブルや、発電に使用する再生可能エネルギー由来の水素パイプラインを敷設する予定である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月9日付)は、「中東経由でインド欧州間の輸送網 米欧やサウジと覚書」と題する記事を掲載した。

     

    米政府は9日、インドから中東を経由して欧州までを鉄道・海上輸送網で結ぶインフラ計画に関する覚書をインド、サウジアラビア、欧州連合(EU)などと結んだと発表した。中東で影響力を強める中国にインフラ支援で対抗する。

     

    2)「米国が発表した「新たなインド・中東・欧州経済回廊」構想にはフランス、ドイツ、イタリア、アラブ首長国連邦(UAE)も参加する。中東との経済的な結びつきを強め、地域の安定につなげる。米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は9日、記者団に「インドからUAE、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを経由して欧州に至る海上輸送と鉄道を結ぶ」と説明した。エネルギーや物資を効率的に輸送できる物流インフラのほか、通信網も整備する」

     

    インドからUAE、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを経由して欧州へのルートは、インドが次世代において経済的に中国と対抗できる基盤になる。その意味で、インドとG7との結びつきは強固なものになろう。

     

    3)「覚書を結んだ8カ国・機関は作業部会を設け、近く会合を開く。中東各国の鉄道の接続や改修欧州にエネルギー供給するインフラ敷設――などを検討する。ウクライナ紛争を機に欧州が進めるエネルギーの脱ロシア依存を後押しする狙いもある。インフラ支援は米政府が中東への関与を立て直す戦略の一環になる。中東のインフラ計画を話し合う米国、インド、イスラエル、UAEの4カ国による枠組み(I2U2)で22年春ごろに計画が浮上し、他の国も協議に加わって231月から議論を本格化させた」

     

    欧州は、エネルギー供給で確実に脱ロシアが進む。再生可能エネルギー由来の水素パイプラインを敷設する計画だ。中国の一帯一路プロジェクトは、完全にかすむであろう。

     

    4)「意識するのは広域経済圏構想「一帯一路」に代表される経済協力などを通じて中東地域で影響力を高める中国だ。対立が続いていたイランとサウジは3月に中国の仲介で外交正常化にこぎつけ、蚊帳の外に置かれた米国の存在感低下が浮き彫りになった。サリバン氏は「世界の他の地域でも実施する。地域経済の統合はあらゆる戦略的、地政学的利益をもたらす」と強調した。9日には米国とEUがアフリカのアンゴラ、ザンビア、コンゴ民主共和国での鉄道敷設などのインフラ開発で協力することも発表した」

     

    中国は、中東で勢力圏拡大に手をつけ始めたが、今回の「インド・中東・欧州経済回廊」構想が実行の運びになれば、中国の出る幕がなくなる。

     

    5)「バイデン氏はインドのモディ首相と共闘し、中国の習近平国家主席が欠席するG20サミットで米国主導のインフラ支援を提起する。米国とインドは中国を抑止する戦略で一致しており、国際社会で影響力を拡大するグローバルサウスを引きつける思惑がにじむ」

     

    今回の構想で、中東各国の鉄道の接続や改修が進めば、G7はグローバルサウスをぐっと引き寄せられる。中国が逆立ちしてもかなわない事態になろう。

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    日本のバブル破綻を笑っていたドイツ経済が、大異変に見舞われている。人口高齢化からインフラの老朽化まで構造的問題を抱えているのだ。さらに、ウクライナ戦争、金利の上昇、国際貿易の停滞が追い打ちを掛け、かつてない不況へ追込んだ。 

    23年のドイツ経済は、先進国の中で経済成長が最も低迷するとの見方で一致している。同国で発行部数が最多のタブロイド紙ビルトは「助けてくれ。ドイツ経済が崩壊しつつある」と訴え、ショルツ首相に対策を取るよう呼び掛けた。世界第4位の経済規模を誇るドイツは、2四半期連続でGDPがマイナス成長となった後、23年4〜6月はかろうじて横ばいにとどまった。先進国中で、最も成長率が低迷している。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(9月3日付)は、「ドイツ不動産業、資金難で破綻相次ぐ 政府に支援求める」と題する記事を掲載した。 

    ドイツで支払い不能に陥る不動産開発大手が相次ぐなか、関連団体やエコノミストらは政府に対し、危機に見舞われた業界への支援を求めている。

     

    (1)「不動産各社は金利上昇、建設資材の値上がり、深刻な熟練労働者不足、新規需要の減退という災厄が重なる「パーフェクトストーム」の状況に直面し、業界全体が資金繰り難に陥っている。独キール世界経済研究所のモリッツ・シュラリック所長は「10〜15年続いた不動産ブームが終わりを迎えている」と話す。「今や毎日のようにデベロッパーが破綻する経済サイクルに入っている。もはや古い資金調達モデルは立ち行かない」と指摘する」 

    ドイツの対GDP輸出依存度は、38.25%(2021年)である。先進国で最高の依存状態だ。日本は、15.13%(同)とドイツの4割弱にとどまる。ドイツは、世界貿易停滞の影響を最も受ける状況にある。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の影響を大きく受けているほか、高金利も響いている。 

    (2)「Ifo経済研究所(ミュンヘン)のクレメンス・フュースト所長は「金利が急上昇し、建設案件の多くは採算割れしている」と指摘する。「住宅需要は総崩れになった」。状況の一段の悪化を予想する専門家もいる。独立系不動産会社と住宅メーカーを会員とする業界団体BFWのトップ、ディルク・ザレフスキ氏は「デベロッパー各社は物件の値上がりを見込んでいたため、今後も破産申請が増える」とみる。「巨額の債務を負っている企業ほど脆弱だ」と指摘する」 

    不動産危機では、西のドイツと東の中国が世界の双璧である。この両国は、経済面で密接な関係にあるが、同時に苦境という事態になった。輸出不振という面では共通している。

     

    (3)「ショルツ首相は年間40万戸のアパート建設を公約に掲げて就任しただけに、不動産業界の危機は問題だ。2022年の建設件数は29万5300戸にとどまったうえ、業界幹部は23年と24年はこの水準をさらに下回ると予測する。閣僚らは対策を講じている。ショルツ政権は8月下旬、ベルリン郊外のメーゼベルク城で2日間にわたって閣僚会議を開き、年間70億ユーロ(約1兆1000億円)規模の法人税減税を決定した」 

    ショルツ政権は、不動産業界への法人税減税を行っている。特定業界の救済で法人税減税が使われるほど、苦境が深刻ということであろう。 

    (4)「その中には、デベロッパーを対象とする減価償却方法の見直しも盛り込まれている。ゲイウィッツ住宅・都市開発・建設相は住宅建設の「本格的なテコ入れ」につながるはずだと強調した。だが、BFWのザレフスキ氏はルールを変更しても「焼け石に水だ」と吐き捨てた。建設業中央連合会(HDP)のティムオリバー・ミュラー会長も「これでは流動性不足という最大の問題が解消されない」と話す」 

    流動性不足、つまり資金繰りが苦しくなっている。カンフル剤を打たないと、続発する倒産を防げない事態になっている。

     

    (5)「ミュラー氏は住宅購入者向けの低利融資の拡大、新規物件に義務付けられている厳格なエネルギー効率基準の緩和、建設が止まっている案件の完工に向けた公的住宅機関への投資税額控除を求めている。同氏は、このうちいくつかをショルツ氏が月内に不動産トップを集めて官邸で開く会議で採用することに期待していると語った」 

    シュルツ首相が、不動産トップを官邸に集めて救済策を練るほどの窮迫ぶりである。 

    (6)「建設業はドイツのGDPの12%を占め、100万人近くを雇用している。経済の柱の一つと目されているが、深刻な不況から脱せずにいる。今年1〜6月の住宅着工許可件数は13万5200件と、前年同期から5万600件、率にして27%減った。Ifoによると、7月に受注不足を訴えたデベロッパーは40.%に上る。建設案件が中止になった企業は約18.%、資金繰りが苦しい企業は10.%だった」 

    ドイツ建設業はGDPの12%を占め、100万人近くを雇用している。こういう一大産業であれば、救済やむなしであろう。

     

    (7)「キール世界経済研究所のシュラリック氏は政府による介入を要請する。経済に刺激を与えるメリットも見込めるため、政府は大型の住宅建設刺激策を導入すべきだと話す。同氏は、「(このままでは)民間デベロッパーは今後2〜3年は住宅を建てられないので国、地方、公的部門が介入し、建設資金を出すべきだ」とし、国内に多数ある公的住宅機関を支援策の推進に活用したらいいと提案する。「早急に新たなアパートを建てなければならない。短期的な財政刺激策としてだけではなく、中長期的な成長促進策としても必要だ」。シュラリック氏はこう述べた」 

    民間デベロッパーは今後2〜3年、住宅を建てられないほど疲弊しているという。あの勤勉なドイツ人が、ここまで追込まれたのは経済環境の激変を意味する。早期の回復を祈りたいものだ。

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    一部の海外メディアは、中国のEV(電気自動車)が低価格を武器に欧州市場を席巻するのでないかと派手に報じてきた。現実は、決してそんな甘いものでなく、高い壁にぶつかっている。中国からの高い輸送コストと弱いブランド力である。知名度が、極めて低いのだ。

     

    欧州は、自動車の母国である。米国は、大量生産で「自動車王国」を築いたが、乗り心地という「質」では断然、欧州メーカーが勝っているとされる。その欧州へ、新興・中国EVが進出しても、消費者の高いプライドに跳ね返されるというデータが出てきた。

     

    『ロイター』(8月22日付)は、「中国EVメーカー、欧州で費用増とブランド力の壁に直面」と題する記事を掲載した。

     

    中国の電気自動車(EV)メーカー各社は、国内で外国勢に対する優位を確立した勢いを駆って欧州市場に進出しつつある。だが、そこで新たな試練に直面している。比亜迪(BYD)や上海蔚来汽車(NIO)、上海汽車(SAIC)傘下のMGモーターなどに突きつけられているのは、欧州市場における重い輸入コストへの対応や、中国製品は低品質との固定観念をいかに払拭できるかといった課題の克服だ。

     

    (1)「滑り出しは前途洋々だった。欧州で今年これまでに販売されたEV新車のうち、中国ブランドの比率は8%で、22年の6%や2021年の4%から着実に高まっていることが、自動車コンサルティングのイノベブのデータで分かる。また、アリアンツの調査によると、2025年までには少なくとも新たに11種類の中国製EVが欧州に投入される。これには西側メーカーも動揺を隠せず、ステランティスのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は先月、欧州に安価な中国のEVが「侵攻」してきたと警鐘を鳴らした」

     

    中国EV輸出の出足はよかったが、欧州側も対抗して新製品を発売して防戦した。

     

    (2)「欧米各社も反撃の構えを見せ、続々と新たなEVを投入するとともに、コストや価格の引き下げを計画している。つまり中国勢は全力を振り絞っての競争を強いられるだろう。中国汽車工業協会(CAAM)の陳士華副秘書長は先週、このままでは中国メーカーの事業拡張計画があまりにも厚みを欠いたものになりかねないと指摘。「各メーカーにとって、グローバル展開は円滑には行かない。リスクに注意を払わなければならず、現状では手を広げすぎで、はっきりした重点を置かずに全ての地域に乗り込もうとしているのではないか」と苦言を呈した

     

    中国EVは、欧州進出を安易に考えており、すでに行き詰まりを見せている。

     

    (3)「中国勢の最大の強みは価格にある。中国における昨年前半のEV平均販売価格は3万2000ユーロ(3万5000ドル)弱で、欧州の約5万6000ユーロよりずっと安い。だが、欧州において中国ブランドが、本国と同じ価格を設定するのは難しくなりそうだ。吉利汽車のEVブランド「Zeeker(ジーカー)」の欧州最高経営責任者(CEO)を務めるスピロス・フォティノス氏は、物流や売上税、輸入関税、欧州独自の認証基準達成といった要素が全てコスト増につながると解説する。

     

    中国EV平均販売価格は、昨年前半で3万2000ユーロ(約509万円)。欧州が約5万6000ユーロ(約890万円)で、ざっと40%安である。だが、物流や売上税、輸入関税、欧州独自の認証基準達成などのコスト増がかかる。結果的には、中国優位と言えなくなる。

     

    (4)「中国ブランドでもMGなどは有名だが、NIOや小鵬汽車(Xpeng)などは、まず消費者の信頼感を得るところから始めなければならない。さまざまな調査によると、欧州の潜在的なEV購入者の大半は中国ブランドを知らないし、知っている人たちも購入には消極的だ。これは日本や韓国のメーカーが何十年もかかった信頼獲得と欧州独自の嗜好性への適応という苦難の道のりを思い起こさせる。

     

    下線部のように、中国ブランド力の弱さに加え、知っていても購入には消極的という根本的な障害が立ちはだかっている。

     

    (5)「ユーガブが昨年、ドイツの消費者1629人を対象に実施した調査では、テスラに次ぐ欧州EV市場シェアを誇るBYDでさえ、認知率はわずか14%にとどまった。NIOの名前を聞いたことがあると答えたのは17%、Xpengの認知率は8%だった。テスラの認知率は95%で、その10%が次に買う車として検討していると回答。一方、中国ブランドを知っているとした人のうち、購入を考えていたのは1%かそれ未満だったという

     

    米テスラの認知度は95%で、購入可能性はそのうち10%。つまり、9.5%は潜在購入率である。中国ブランドの認知度は8~17%で、購入可能性は1%である。最大限に見積もって0.17%の潜在購入率にすぎない。気の遠くなるような話だ。これでは、中国EVは前途遼遠である。 

     


     

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    中国は、10月中旬に開催予定の一帯一路イベントで、出席者の顔ぶれが5年前とがらりと変わる見通しだ。ロシアのプーチン大統領が出席するので、顔を合わせたくないというのが理由の一つ。もう一つ、EU(欧州連合)が一帯一路事業に対抗するインフラ投資戦略「グローバル・ゲートウエー」(3330億ドル)を推進するためだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月31日付)は、「欧州が避ける中国『一帯一路』イベント」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス流行に伴う隔離状態の3年間を経て、中国の習近平国家主席は自身が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」の盛大なイベントを計画している。

     

    (1)「招待に対する返事は、必ずしも続々と届いているわけではない。特に欧州諸国は、中国との関係が悪化する中、この「一帯一路フォーラム」への参加を見送る構えだ。中国政府は、世界の貿易や輸送インフラをつなぐ一帯一路のネットワークに欧州が参画することを期待していた。しかし、欧州の指導者たちは中国に対する経済的依存度を高めることへの警戒感を米国と共有し、逃げ腰になっている。出席の意向を表明している1人の著名な招待客――ロシアのウラジーミル・プーチン大統領――が、欧州の指導者たちを一段と遠ざけている。欧州首脳の多くは、ロシアのウクライナ侵攻開始以降、中国がロシアを支持していることを理由に、中国に対する姿勢を硬化させた」

     

    ロシアのウクライナ侵攻が、中国の世界の地位を引下げている。中国が、ロシア支持を続けているからだ。中ロは、ますます密接な関係を築いており、西側との壁を高くする反作用を招いている。

     

    (2)「一部専門家の推計によると、中国は一帯一路構想で、欧州やアフリカ、中南米とアジアを結ぶ鉄道・道路・パイプライン・港湾のプロジェクト1兆ドル(約141兆円)の資金を振り向けることを計画していた。中国が次々と多数の途上国を新たなメンバーに迎え、イタリアやギリシャ、チェコなど、米国と近い関係にある富裕国を取り込んだのは、つい5年前のことだった。この結果、一帯一路構想で出資を受けた欧州の港湾や鉄道にモノが届くようになった。だが欧州は今、中国が経済面で域内にもたらす影響力を軽減しようとしており、多くの国々はプロジェクトから距離を置き始めている」

     

    中国は、欧州まで貨物鉄道列車を走らせていることから、5年前は欧州との関係が密接であった。欧州は現在、中国の影響力拡大を警戒している。距離を置こうとしているのだ。

     

    (3)「フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのオラフ・ショルツ首相は、今年の一帯一路フォーラムへの出席を予定していない。両国の政府高官が明らかにした。先進7カ国(G7)で唯一、一帯一路構想に参加したイタリアのジョルジャ・メローニ首相にも、その予定はない。同首相のスケジュールを調整する人物が明らかにした。歴史的に中立な立場を取っているスイスは、過去2回のフォーラムに大統領を派遣したが、外務省の報道担当者によると、今年のフォーラムに参加するかどうかは検討中だという。2018年に一帯一路構想に参加したギリシャは既に、同国首相が出席しないことを中国政府に伝えている。2015年に同構想に参加したチェコは大統領も政府高官も派遣しない見込みだと、政府報道担当者は語った。ギリシャ、チェコ両国が一帯一路構想への協力を約束した後、習氏はそれぞれ3日間の日程で両国を公式訪問していた」

     

    このパラグラフは、ほとんどの欧州首脳が一帯一路イベントへ参加しないことを表明している。プーチン氏の出席が確実である以上、顔を合わせたくないのが本音である。にこやかに握手すれば、どんな悪評を被るか分らないからだ。

     

    (4)「一帯一路フォーラムは2017年に初めて開催され、今回が3回目、コロナ禍後では初となる。今年のフォーラムは習氏の経済外交の柱である同構想の魅力を試す場となるため、中国の外交官らは、招待者リストを埋め、同国の世界的影響力を印象付けようとしている。「過去数年間、欧州の国々は先入観なしに(一帯一路構想に)対応していた」と調査会社ロジウム・グループで欧州と中国を専門とするノア・バーキン氏は指摘する。そうした状況は変化し、一帯一路は概して「中国の影響力を国外へ拡大するための手段」と見なされているという」

     

    中国の戦狼外交が、欧州各国の警戒心を高めている。イベント参加者が減っているのは、自業自得の面が強い。

     

    (5)「これまでのところ欧州の反応がさえないのは、習氏の外交的野心にとって世界情勢がより困難なものになっていることを示している。かつて欧州諸国は気まぐれで一帯一路に参加していたようなものだったが、現在はそれに対抗している。欧州諸国の政府は10月下旬、一帯一路に競合する独自のフォーラムにアフリカ、中南米、アジア(中国は除く)からビジネスリーダーや政府高官、首脳を招待する。EUが3330億ドルを投じるインフラ投資戦略「グローバル・ゲートウエー」を推進するためだ」

     

    中国は、一帯一路で影響力を強めようとしたが「不発」に終わった。その意図を見抜かれたことだ。欧州には欧州のプライドがる。「新興国」中国に、出し抜かれてたまるか、という意地があるのだろう。

     

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