EU(欧州連合)のフォンデアライエン欧州委員長は13日、中国製の安価な電気自動車(EV)の流入を問題視し、補助金支援が競争を阻害していないか調査すると発言した。欧州市場で中国製EVのシェアは、すでに昨年の約2倍の8.2%へ上昇している。この裏には、中国政府が税制優遇や工場建設の支援、低利融資、エネルギー料金の上限設定など手厚い支援を与えていることも影響している。EUは、こういう実態を調査して関税引上げを目指している。これに対して、中国政府は早くも警戒しEUを威嚇し「対抗措置もあり得る」としている。
中国EVは、欧州市場で存在感を高めている。独シュミット・オートモーティブ・リサーチの調査では、欧州EV市場の中国車シェアは2019年の0.5%から21年には3.9%に急伸。23年1〜7月には8.2%まで伸ばしている。欧州で実際に販売される中国車のうち9割近くが、上海汽車集団が買収した英国車の老舗ブランド「MG」など表向きは欧州企業名を冠したものという。こうして、欧州ブランド名を利用しており、実態以上に欧州市場で影響力を得ているのだ。こうなると、EUとしても危機感を持って当然であろう。
『ロイター』(9月14日付)は、「中国、EV補助金調査巡り欧州連合を批判ー自国企業守ると主張」と題する記事を掲載した。
欧州連合(EU)が中国の電気自動車(EV)に関する補助金の調査を始め、中国が反発している。中国商務省は「強い懸念と不満」を示す声明を発表した。
(1)「EUの行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は13日、「巨額の国家補助金によって価格が人為的に低く抑えられており、われわれの市場をゆがめている」と欧州議会で述べ、調査の開始を発表。「EU域内に起因するこうしたゆがみをわれわれが受け入れることはない。域外によるゆがみも同様だ」と指摘した。事情に詳しい関係者によれば、調査は最長9ヶ月を要する可能性があり、米国が中国のEVにすでに課している27.5%水準に近い関税率が適用され得るという」
EU加盟国からは、安価な中国製が域内で広く流通すれば、欧州の自動車メーカーの利益を損なうと不満が出ていた。複数の欧州メディアによると、フランスが水面下で欧州委に調査開始を強く求めていた模様だ。フランスは外交面で、中国と友好ぶりを演出しているが、内情は複雑である。
(2)「中国商務省は、ウェブサイトに14日掲載した声明で、EUの動きは世界の自動車産業に深刻な混乱をもたらし、中国とEUの関係に悪影響を及ぼすと主張。声明によれば、中国はEUに対しEV産業のために公平で差別のない予測可能な市場環境を生み出すため対話を行うよう求めるとともに、EUによる今後の行動を注視し、中国企業の権利と利益を断固として守るという」
米国は、中国EVへ27.5%水準に近い関税率を科している。EUでも、これと同水準が適用されると中国EVへ大きな影響が出る。
中国EVは、EUで二つの価格帯で販売されている。浙江吉利控股集団が子会社のボルボ・カー(スウェーデン)と立ち上げたポールスターのように、欧州市場での販売価格が8万9900ユーロ(約1400万円)を超える超高級EVがある一方、3万ユーロ(約467万円)以下の相対的に安価なEVが中国製全体の7割を占める。欧州車大手の同型車と比べても中国製EVは割安だといい、欧州自動車工業会(ACEA)のジグリッド・デ・フリース事務局長は「中国車メーカーが公的資金と政府の意向に支えられ、欧州や他地域の市場で攻勢をかけているのは周知の事実だ」と危機感をあらわす。以上、『日本経済新聞 電子版』(9月13日付)が報じた。
(3)「中国全国乗用車市場情報連合会(乗連会)の崔東樹秘書長は、「中国の新エネルギー車(NEV)輸出が好調なのは、国家から多額の補助金を受けているからではなく、自国の産業チェーンが持つ競争力が高いからだ」と反論。「EUは、中国EU産業の発展を客観的に見るべきであり、恣意的に一方的な経済・貿易手段を用いて」成長を妨げるべきではないとコメントした。中国共産党系の新聞、環球時報は論評で、欧州は明らかに「中国との競争を恐れているためゆっくりと電動化に向かう欧州の自動車メーカーを保護する傘として、貿易保護主義を求めようとしている。EUによって不公正な措置が取られた場合、中国には自国企業の法的利益を守る対抗措置として行使し得るさまざな手段がある」と論じた。
今年6月、欧州議会が承認した欧州電池規制には、電池の製造時CO2排出量の報告義務化が盛り込まれている。火力発電に依存する中国製EVに対し、欧州製EVはライフサイクルアセスメント(LCA)で優位に立っている。EUは、脱炭素を大義に中国EVにグリーン関税を課すことができるという。
ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)、またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法である。「環境のEU」らしい対応であるから、中国EVの泣き所を突く手段は、すでに持っているのだ。こうなると、中国がEUに圧力をかけることは難しくなろう。





