勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時報

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    中国は、国内経済立て直しで海外企業による対内直接投資呼び込もうと必死である。だが、習近平氏による安全保障重視策の結果、海外企業への締め付けが厳しくなっている。海外企業は、こうした動きを警戒しており、中国への直接投資に慎重な構えだ。今年は、40年ぶりに資本の準流出が起ると見られている。中国経済には、頭痛の種がまた一つ増えた形である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月18日付)は、「習氏の外資締め付け、投資促進と矛盾」と題する記事を掲載した。

     

    中国の各都市は経済が停滞する中、資本を切実に求めており、西側企業から投資を引き出すのに躍起となっている。中国政府は2023年を「中国(への)投資年」と位置づけ、地方当局者は外国に出向いて投資家の関心を喚起するツアーを始めた。こうした動きを妨げているのが、外国からの脅威とみなすものの排除を重視する習近平国家主席の安全保障政策だ。外国企業にとって対中投資はいまや潜在的な地雷原と化している。

     

    (1)「中国の各都市は経済が停滞する中、資本を切実に求めており、西側企業から投資を引き出すのに躍起となっている。中国政府は2023年を「中国(への)投資年」と位置づけ、地方当局者は外国に出向いて投資家の関心を喚起するツアーを始めた。こうした動きを妨げているのが、外国からの脅威とみなすものの排除を重視する習近平国家主席の安全保障政策だ。外国企業にとって対中投資はいまや潜在的な地雷原と化している」

     

    中国地方政府は、3年間のゼロコロナによる経済活動の停滞で大きな傷手を受けている。それだけに、海外企業誘致の増加を目指してきた。だが、習氏の海外企業への締め付けが大きな障害になっている。

     

    (2)「中国における事業リスクが大幅に高まったとの認識から、同国への資本流入に急ブレーキがかかっている。調査会社ロジウム・グループのアナリスト、マーク・ウィツキ氏による政府統計の分析によると、今年1~3月期の中国の対内直接投資は200億ドル(約2兆7700億円)と、前年同期の1000億ドルから急減した。ゴールドマン・サックスのエコノミストの予想では、今年の中国からの資本流出額は対内投資額を帳消しにする見通しだ。これは流入超が40年間続いた中国にとって衝撃的な変化だ。中国指導部にとって、外国企業に圧力をかけ続ける一方で、投資を呼び込もうとするのは、ますます危ない「綱渡り」になりつつある。その結果、自国の台頭を支えてきた資本や技術、アイデア、経営スキルを失う恐れがある」

     

    中国は、これまでの40年間にわたり海外企業の対内直接投資によって、技術、アイデア、経営スキルを得てきた。だが、習氏の海外企業締め付けで、この流れが中断する。今年は、資本の純流出が起る可能性が高まっている。

     

    (3)「その陰で、財政難に苦しむ中国各地の市や郷は置き去りにされている。3年にわたって新型コロナウイルスによる規制が続いたあと、負債を抱え、雇用創出もままならない多くの地方政府は今すぐ資本を必要としている。公式統計によると、昨年の地方政府の歳出額は、コロナ検査などのコストで医療費が18%増加したことなどにより前年から増加した。一方、開発業者への土地使用権売却による収入が前年比で23%減となったことなどから、歳入は落ち込んだ。地方政府の直接債務は歳入の120%に達している」

     

    コロナによって、中国地方政府は出費増加と土地収入減で4割以上の損害を被っている。その穴を債務で埋めているのだ。地方政府の直接債務は、歳入の120%にも達している。

     

    (4)「多くの当局者によると、従来の外資誘致戦略は失敗に終わっている。中国南西部にある四川省の省都・成都市の貿易当局者は最近、投資促進ツアーで欧州を訪れたが、成果がないまま帰国。「欧州からの投資誘致に20年関わっているが、基本合意書への署名が1件もなかったのは初めてだ」と話す」

     

    四川省の省都・成都市の貿易当局者は、欧州へ投資促進ツアーで訪ねたが成果はゼロ。欧州の中国警戒の強さを身に滲みた。

     

    (5)「中国で活動する複数の業界団体が最近実施した調査によると、ドイツなど欧州や米国の企業は対中投資の拡大を中断するか減らしている。自動販売機などの産業用製品の米大手メーカー、クレーン(本社:コネティカット州スタンフォード)は1990年代から中国で製造を行っているが、同社に近い関係者によると、政策を巡り不透明感が高まったことなどから対中投資を大幅に縮小している。上海米商工会議所の会頭で元上海総領事のショーン・スタイン氏は中国が最近、米コンサルティング会社に圧力をかけていることから、「外国企業の目や耳が切り落とされる」恐れがあると指摘した」

     

    ドイツは、中国依存で欧州一の國である。それでも、ロシアのウクライナ侵攻で損害を被った結果、中国の地政学的リスクに敏感になっている。

     

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    ロシアは、ウクライナ侵攻で財政的にも苦境に立たされている。5月9日の「祖国大勝利パレード」は、昨年よりも規模を小さくして行った。侵略戦争の損害が大きいことを伺わせている。ロシアは、緊急対策としてエネルギー企業への課税強化を図り、最大6000億ルーブル(約1兆円)の税収を増やそうとしている。これによって、エネルギー企業の設備投資が抑制されるので発展力を奪うことは確実だ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月8日付)は、「ロシア政府、歳入不足でエネルギー企業に増税」と題する記事を掲載した。

     

    西側諸国の複数の政府関係者によると、ロシア産原油の輸出価格に上限を設ける主要7カ国(G7)を中心とした西側の経済制裁により、ロシア政府は石油各社への課税を強化せざるを得なくなっている。すでに制裁に苦しんでいるロシアのエネルギー業界にとっては追い打ちだ。

     

    (1)「フィナンシャル・タイムズ(FT)が入手した、ある西側の国による影響分析では、歳入不足を補うためのこの増税は業界の長期的な投資能力を犠牲にすることになり、逆効果になる可能性が高いことがわかった。西側政府の関係者はFTの取材に対し「これはロシアのエネルギー業界にとって間違いなく壊滅的な打撃になる」と語った。「この課税強化で設備や探査、既存の石油・ガス田への投資に充てることができたはずの資金が奪われ、ロシアの石油・ガス業界の将来の生産能力は低下するだろう」と指摘」

     

    ロシアが、歳入不足をカバーするための増税が、企業の設備投資を抑制するので、発展力に影響が出ることは不可避となった。

     

    (2)「ロシアのプーチン大統領は4月、石油会社への課税方法を変更した。これによりロシア産の主力油種「ウラル原油」の価格ではなく、国際指標の北海ブレント原油価格から一定額を差し引いた水準に基づいて課税されることになった。ウラルはここ数カ月、北海ブレントよりも安値で取引されている。ロシアはウクライナ侵攻の戦費調達の妨害を狙った西側の制裁で、石油輸出収入が不足した。その穴を埋めるため、今回の課税強化で税収を最大6000億ルーブル(約1兆円)増やそうとしている。この措置により、ロシアは「現在」の戦費を賄うために「未来」を犠牲にしていると関係者はみる」

     

    課税基準は、割安のロシア産の主力油種「ウラル原油」ではなく、高値の国際指標の北海ブレント原油価格から一定額を差し引いた水準に基づいて課税されるという。ロシアのエネルギー企業にとっては、実勢販売価格を上回る価格を基準に課税されるという、とんでもない事態に直面している。

     

    (3)「2023年1〜3月期のロシアの石油・ガス関連の税収は前年同期比45%減少した。中でも3月の石油精製製品では前年同月比85%も落ち込んだ。前出の関係者は、ロシアは歳入の45%をこうした収入に依存しているとも語った。「課税強化は歳入が大きく落ち込んでいる明白な証拠だ」

     

    ロシアの石油・ガス関連の税収は1~3月期に前年同期比45%もの減少である。これでは、戦費を賄えないのは当然である。ロシアは、確実に日干しにされている。

     

    (4)「英調査会社エナジー・アスペクツ傘下のオイルエックスによると、4月のロシアの原油産出量は日量1040万バレルに減少した。上限価格の設定に対抗し、ロシア政府が減産をちらつかせたことが反映されている可能性があるという。アジア向けが大半を占める輸出量は470万バレルで、過去5年間の平均を下回った。G7各国は上限価格の設定は想定通りの効果を上げていると考えているが、税関のデータではロシアの石油会社は少なくとも一部の輸出では、上限を超える価格を確保していることが示されている。極東へのある輸出ルートではここ数週間、74ドルもの高値で販売されていた」

     

    4月の輸出量は470万バレルで、過去5年間の平均を下回った。しかも、価格は「上限制」でかんぬきをはめられている。ただ、例外もあるようで1バレル74ドルの販売もある。

     

    (5)「今週、日本で開催されるG7財務相・中央銀行総裁会議では、対ロ制裁が主な議題になるとみられる。西側政府関係者は「上限価格とその効果が焦点になる」との見方を示した。制裁参加国は今後、「上限を超える価格での不正な取引行為など、制裁逃れの対策強化にも取り組む」と述べた。さらにこの関係者は、各国が「船舶の位置情報の操作」や「運航費や積み荷の運賃、関税、保険料を石油と分けて明細に記載していないこと」などの「危険信号」を指摘し、石油各社が制裁に従うよう支援していくとも語った」

     

    G7では、ロシア産原油の上限制を守らせるために規制を厳しくする。ロシアを財政面から追込む意図である。

     

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    ロシアの22年GDP成長率は、マイナス2.1%にとどまった。ウクライナ侵攻直後は、二桁のマイナス成長率予測であったから、予想外の「健闘」と言えた。だが、今年に入って状況はがらりと変わっている。 

    今年1~2月は、政府歳入の半分近くを占める石油・ガス収入が、前年比46%落ち込む一方、歳出は50%余り急増したのだウクライナでの戦費が予算の重石となっており、ロシアが現時点で財政収支を均衡させるには、石油価格がバレル当たり100ドルを超える必要があるとアナリストは推定す。現状では、50ドルを割り込んだ状況だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月29日付)は、崩壊し始めたロシア経済 来年は資金枯渇か」と題する記事を掲載した。 

    ロシアによるウクライナ侵攻開始当初は、石油・ガス価格が跳ね上がり、ロシアに思わぬ巨額の利益をもたらした。だが、こうした局面は終わった。戦争が2年目に突入する中、西側の制裁による打撃が広がり、ロシア政府の財政は厳しさを増している。経済は低成長軌道へとシフトし、長期的に脱却できない可能性が高まっている。 

    (1)「短期的にロシアの戦費調達を脅かすほど、経済への打撃が深刻であることを示す兆候はまだ見られない。だが、財政収支は赤字に転落しており、ウラジーミル・プーチン大統領が市民を生活の困窮から守る一助となってきた補助金や社会保障向けの支出と、膨らむ軍事支出との間でどう折り合いをつけるか、ジレンマが深まっている状況を示している。ロシアの富豪オレグ・デリパスカ氏は今月の経済会議で、ロシアの財政資金が枯渇しつつあると警鐘を鳴らした。「来年には資金が尽きるだろう。われわれは外国人投資家を必要としている」と指摘する」 

    ロシア経済が、ウクライナ侵攻による経済制裁効果と軍事費増額で、確実に破局に向かっている。来年には、資金が枯渇するという暗い予測も出てきた。

     

    (2)「見通し悪化の大きな原因は、エネルギーを武器に使えば、西側諸国によるウクライナ支援を抑制できるとのプーチン氏の読みが外れたことだ。欧州諸国の政府はウクライナへの支援を縮小するどころか、ロシア産エネルギーへの依存脱却に向けて代替調達先の確保に迅速に動いた。ロシア産ガスの欧州への供給がほぼ止まると、価格は当初、急騰したものの、その後急落した。ロシアは現在、石油生産を6月まで従来レベルから5%減らす意向を示している。同国の石油価格は国際指標を下回っている」 

    プーチン氏の読みは、ことごとく間違った。エネルギーを武器に使えば、欧州は音を上げてウクライナを長期支援できまいと見てきたのだ。現実は逆になった。欧州が、ロシア産エネルギー購入を止め、ロシア産原油上限制60ドルの枠をはめてしまったのだ。これで、ロシア産原油は欧州という需要先を失い、価格が暴落している。

     

    (3)「ロシアのエネルギー収入は今年12月に前年比でおよそ半減し、財政赤字も膨らんだ。1~2月の財政赤字は340億ドル(約4兆4600億円)と、国内総生産(GDP)比1.5%余りに達した。そのため、ロシアは危機時の財政緩衝材である政府系ファンド(SWF)から赤字の穴埋めを余儀なくされている。ロシア政府は依然として国内で借り入れすることが可能であるほか、侵攻前から280億ドル減ったとはいえ、SWFはなお1470億ドル相当を保有する。行き場を失った石油についても、中国やインドが新たな受け皿になった」 

    ロシア財政の緩衝材役を果たすSWFは、1470億ドル相当を保有するに過ぎない。今後、これは減る一方である。軍事費と国民生活をどのようにバランスさせるかだ。

     

    (4)「国際通貨基金(IMF)はロシアの潜在成長率について、ウクライナからクリミア半島を強制併合した2014年より前の段階では約3.5%だと推定していた。だが、生産性の低下や技術的な後退、世界からの孤立といった要因が重なり、今では1%程度まで下がったと指摘するエコノミストもいる。前出のプロコペンコ氏は「ロシアのような経済にとって、1%はないも同然で、維持する水準にすら届かない」と話す」 

    ロシアの潜在成長率は、すでに1%程度にまで下がっている。この程度の成長率では、ロシア国民の生活を守れないという。これは、日本で経験済みである。

     

    (5)「今年12月は政府歳入の半分近くを占める石油・ガス収入が前年比46%落ち込む一方、歳出は50%余り急増したウクライナでの戦費が予算の重石となっており、ロシアが現時点で財政収支を均衡させるには、石油価格がバレル当たり100ドルを超える必要があるとアナリストは推定している。ロシア財務省によると、同国の代表的な油種であるウラル原油の平均価格は2月、バレル当たり49.56ドルとなった。これは同月に80ドル程度で取引されていた国際指標の北海ブレントに対して大幅なディスカウント水準だ。ウィーン国際経済研究所のエコノミスト、バシリ・アストロフ氏は、「ロシアは石油の販売先が限られるため、今では世界の市場で価格交渉力が弱まっている」と指摘する」 

    ロシア財政を維持するには、原油価格が1バレル100ドルでなければ無理という。現状は、その半分にすぎない。財政赤字は膨らんで当然であろう。

     

    (6)「IMFは2027年までには、ロシアの成長率がウクライナ侵攻前の予想から7%程度切り下がると想定している。「人的資本の喪失、国際金融市場からの孤立、先端技術の入手困難などの要因がロシア経済を損なう見通しだ」としている。 ウィーン国際経済研究所のエコノミスト、バシリ・アストロフ氏は、「われわれは1年や2年の危機を言っているのではない」と述べる。「ロシア経済は異なる軌道を歩むことになるだろう」と指摘する」 

    ロシア経済は、ウクライナ侵攻の長期化で異次元へ進むという危機感が表明されている。

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    EV(電気自動車)は、地球に優しいとされるが泣き所もある。衝突事故で電池に少しでも傷が生じれば、使用不能になる「キワモノ」であるのだ。損保会社は、衝突のEVをほぼ「全損」扱いにしており、EV保険料も高くなるのだ。EVユーザーやこれから購入する向きは、知っておくべき知識のようだ。

     

    『ロイター』(3月25日付)は、「電池にかすり傷で全損も、エコには程遠いEV保険事情」と題する記事を掲載した。

     

    電気自動車(EV)の多くは、事故によりバッテリーに軽微な損傷があっただけでも修理や評価が不可能になる。保険会社としては、たいした距離も走っていない車両を全損扱いとせざるをえない。すると、保険料は高くなり、EV移行のメリットも薄れてしまう。そして今、一部の国ではこうしたバッテリーパックが廃棄物として山をなしている。これまで報道されていなかったが、想定されていた「循環型経済」にとって手痛い落し穴だ。

     

    (1)「『EV購入の動機は持続可能性だ』と語るのは、自動車リスク情報を扱う調査会社サッチャム・リサーチの調査ディレクター、マシュー・エブリー氏。「だが、ちょっとした衝突事故でもバッテリーを廃棄せざるをえないとすれば、EVはあまりサステナブルとは言えない」。バッテリーパックのコストは数万ドルに達することがあり、EV価格に占める比率は50%にも至る。交換するのは不経済である場合も多い。フォードやゼネラル・モーターズ(GM)など一部の自動車メーカーは、バッテリーパックを修理しやすいものにしていると話しているが、テスラは、テキサス工場で製造する「モデルY」について逆の戦術を選んだ。構造材化された新たなバッテリーパックは、専門家に言わせれば「修理可能性ゼロ」だ」

     

    EVは、少しの衝突事故でも電池を廃棄するとすれば、環境に優しい持続的自動車とは言えない。テスラの「モデルY」は、電池が構造と一体化されているので取り外しが不可能という。少しの事故でも廃車だ。テスラは、コスト半減でEV「330万円」を目標にする。一方、修理不可能という現実が待っている。

     

    (2)「テスラなどの自動車メーカーがもっと修理しやすいバッテリーパックを製造し、バッテリーセルに関するデータに第三者がアクセスできるようにしない限り、EV販売台数が増えるにつれて、ただでさえ高い保険料は上昇を続け、衝突事故後に廃車となる高年式車は増えていく――これが保険会社や自動車産業の専門家の見方だ。アリアンツ・センター・フォー・テクノロジーでマネージングディレクターを務めるクリストフ・ラウターワッサー氏の指摘によれば、EV用バッテリーの製造においては化石燃料車の製造よりもはるかに多くの二酸化炭素が排出され、何千マイルも走行しなければ、そうした追加の排出量は相殺できないという。「たいして走りもしないうちに廃車にしてしまえば、二酸化炭素排出量におけるEVの利点はほぼすべて失われてしまう」とラウターワッサー氏は言う」

     

    EV用バッテリー製造では、ガソリン車製造よりもはるかに多くの二酸化炭素が排出される。EVは、何千マイルも走行しなければ、こうした追加の排出量は相殺できない。EV電池が、ちょっとした衝突でも使用不能に陥るのは最大の環境負荷だ。

     

    (3)「大半の自動車メーカーはバッテリーパックを修理可能としているものの、バッテリーに関するデータへのアクセスを提供する意志のあるメーカーはほとんどないようだ。EU圏では、すでに保険会社やリース会社、自動車修理工場が、自動車メーカーを相手に、利益率の高いコネクテッドカー(ネットに接続される車)に関するデータへのアクセスをめぐる争いを展開している」

     

    EVメーカーは、バッテリーに関するデータを開示していない。これが、保険会社やリース会社、自動車修理工場との紛争を引き起している。

     

    (4)「前記のクリストフ・ラウターワッサー氏は、争点の1つがEV用バッテリーのデータへのアクセスだと述べる。アリアンツでは、バッテリーパックに傷があっても内部のセルは無事である可能性が高い事例を確認しているが、診断データがないため、そうした車両も全損扱いにするしかないという。なお保険会社と自動車産業の専門家によれば、EVは最新の安全機能を搭載しているため、これまでのところ従来タイプの車に比べて事故の確率が低くなっているという

     

    EVメーカーは電池情報を開示していない。この結果、電池の表面に傷があっても内部のセルは無事である可能性もあるものの、情報不足で修理できず全損になる。壮大な無駄を作っているのだ。

     

    (5)「EV用バッテリーの問題が明らかにしているのは、自動車メーカーが喧伝する環境に優しい「循環型経済」に潜む落し穴だ。英国の解体事業者最大手サイネティックのマイケル・ヒル事業部長は、同社ドンカスター工場では、火災リスクを避けるための点検を行う「アイソレーション・ベイ」に収容されるEVの台数が過去12カ月間で急増しており、3日で12台程度のペースだったのが、1日最高20台にまで上昇していると話す」

     

    EVは、循環型経済のエースである。だが、肝心のバッテリーは衝突事故で修理不可能という事態に陥っている。「テスラの構造的バッテリーパックは、何かあったらスクラップ直行だ」と指摘されている。テスラ車に潜む意外な落し穴である。

     

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    EU(欧州連合)の主要機関は昨年10月、2035年にガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止することで合意した。二酸化炭素(CO2)を排出する乗用車と小型商用車の新車はEU内で売れなくなることが確定したのだ。しかし、大逆転が起こった。温暖化ガスを排出しない合成燃料の利用に限り、内燃機関車の販売が認められることになった

     

    EUは、EV(電気自動車)を普及させるべく、内燃機関車の販売中止を模索したが、EV推進に伴う雇用問題発生と電池へ使用する稀少鉱物資源開発による自然前破壊などの関係が浮上したと指摘されている。こうした副作用問題にからみ、温暖化ガスを排出しない合成燃料の利用が現実解決策として登場したのであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月25日付)は、「EU、35年以降もエンジン車販売容認 合成燃料利用で」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「欧州連合(EU)の欧州委員会とドイツ政府は25日、2035年以降も条件付きでガソリン車など内燃機関車の新車販売を認めることで合意した。「e-Fuel(イーフューエル)」と呼ばれる温暖化ガスを排出しない合成燃料の利用に限り販売が認められる。欧州委員会上級副委員長らが同日、ツイッターで表明した。電気自動車(EV)化で先陣を切ったEUの政策方針が大きく転換する」

     

    今回の決定は、事前に報道されていたこともあり、衝撃波は小さくなっている。英国『フィナンシャル・タイムズ』(3月9日付社説)は、辛辣な批評を下した。「これがまさに自動車関連法案で起きた「衝突事故」というものだろう。2035年までに内燃エンジンを搭載した新車の販売を禁止するという欧州連合(EU)の野心的な計画は、EUの自動車産業をけん引するドイツの反対で土壇場で頓挫した」としている。

     

    確かに、ドイツの反対によって路線を修正した。ただ、合成燃料で新たな二炭化炭素を排出しないことは確かだ。ただ、EV1本に絞って自然環境を守る「パンチ力」に水を差した形だ。

     

    (2)「EUは22年10月、35年に内燃機関車の新車販売を事実上禁止することで合意。その後はEVや水素を使う燃料電池車といったゼロエミッション車のみの販売を認めることにしていたが、フォルクスワーゲン(VW)やメルセデス・ベンツグループなど自動車大手を抱えるドイツ政府が合成燃料の利用を認めるように求めていた。イタリアや東欧などでもドイツの意見に賛同する動きがあったが、フランスは合成燃料の利用に反対していた。イーフューエルは二酸化炭素と水素でつくる合成燃料。燃料として利用する際に温暖化ガスを排出するが、生成過程で二酸化炭素を利用するため温暖化ガスの実質的排出はゼロとみなされている」

     

    内燃機関車の使用承認によって、これまでの自動車産業の雇用が維持できるメリットは大きい。失業者を抱えてのEV化促進では、EVユーザーも目覚めが悪いであろう。環境面で、実質的にマイナスにならないとすれば、ドイツの主張にも一理はあるのだ。

     

    (3)「欧州委員会のティメルマンス上級副委員長は、同日「自動車における合成燃料の将来的な使用について、ドイツとの合意を見いだした」とツイッターに投稿した。ドイツのウィッシング運輸・デジタル相も同日、「手ごろな価格の車の選択肢を持ち続けることで、気候変動対策への欧州の立場は守られる」と発信した」

     

    ドイツは、EUの盟主である。EU経済を引っ張るドイツで、EV化に伴い失業者が増えたのでは、EU経済全体にも大きく影響する。ここは、現実的な解決策が求められたのであろう。環境保護派にとっては、良いニュースでない。

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