勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時報

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    中国は、習氏の国家主席3選を目指し国内基盤強化に躍起である。2月4日に交わした中ロ共同声明は、「限りない友情」を約束して国内政治に役立てる目的であった。後に起こったロシアによるウクライナ侵攻で、中ロ共同声明は実にタイミングの悪い外交文書になってしまったのである。

     

    そこで、国内からの批判をかわすために、声高にロシアへ「声援」を送らざるを得なくなっている。もっとも、米国からの制裁を恐れて、ロシアへ経済的・軍事的支援を封じられている。一段と声高な「声援」になっている面もあろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(5月1日付)は、「米中、ウクライナ危機で深まる溝」と題する記事を掲載した。

     

    米中がウクライナ危機を巡って溝を深めている。中国のロシアに対する軍事・経済両面の支援を米国は警戒し、中国は米国によるロシアへの経済制裁が世界経済に悪影響を及ぼすと主張。新冷戦に向けた流れが加速しかねない情勢だ。

     

    (1)「ブリンケン米国務長官は4月26日、米上院外交委員会の公聴会で、バイデン大統領が3月中旬に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と協議した際、「ロシアへの支援は中国の利益にならないし、制裁を弱体化させることにもならない」と伝えたと明らかにした。バイデン政権はロシアの特定の企業・銀行と貿易や金融の取引を禁じた。違反すれば外国企業や外国人も罰する「二次的制裁」が科され、制裁対象の企業・銀行と取引すれば中国にも制裁がおよぶ可能性がある。米側は対ロ支援を続ける中国への抑止効果に期待する」

     

    中国は、ロシアを支援すれば米国が「二次制裁」を課すと通告された。動くに動けない事態に追い込まれている。声高な声援は、その鬱憤晴らしと見るべきだろう。

     

    (2)「習近平(シー・ジンピン)指導部は米国主導の対ロ経済制裁に反対し、国内外で米国の責任論を広めている。中国共産党の機関紙、人民日報は3月下旬から4月中旬の党内部の声が反映されやすい重要コラム「鐘声」で「米国こそウクライナ危機を作り出した主犯だ」と批判した。北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を米国が「指導」し、ロシアがウクライナを攻撃せざるを得ないよう仕向けたとの持論を展開した」

     

    いかなる理由があろうとも、他国への侵略は許されない。中国は事実上、侵略戦争を認めていることになる。この中国が、国連常任理事国なのだ。仲裁役になるべき中国が、逆に戦争を煽っている形である。それほど,中国は冷静さを失っている。

     


    (3)「中国外務省の趙立堅副報道局長も22日の記者会見で、「ロシアとウクライナの衝突が発生して以降、米軍需大手の株価が驚くほど上がっている」と発言。「だれが対岸で火に油を注ぎ、漁夫の利を得ているのか皆がはっきり見ている」と話し、危機の原因は米国にあると一方的に決めつけた」

     

    米国は、まだウクライナへの武器供与した分の在庫補充をしていない。株価は、思惑で上昇したのであろう。中国株の低迷と比較して羨ましく見ているに違いない。

     

    危機の原因が米国にあるという中国の主張は、戦争を紛争解決手段として認めていることだ。これは、国連憲章に違反する発言である。自らの矛楯が分らないほど「興奮」状態にあるのだろうか。

     


    (4)「習指導部はウクライナ危機を巡り米欧とも距離を置く「中立国」を増やそうとしている。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は3月以降、中東や東南アジアの外相らと積極的に協議し、対ロ制裁に加わらないようにクギを刺してきた。3月31日には安徽省でイランのアブドラヒアン外相と会談。中国外務省によると、一方的な制裁を共同で阻止することで合意した」

     

    ロシアは、経済制裁によって武器の生産が間もなくできない事態になる。中国の購入しているロシア製武器の補修部品や弾薬が、供給されなくなるのだ。これは、中国にとって安全保障上の一大事である。中国は、ロシアと共に苦境に立たされるであろう。

     

    (5)「習指導部は米欧のロシア制裁は将来の台湾統一時に対中制裁にも「転用」されかねないとの警戒心がある。制裁の反対を唱えてロシアに貸しを作ると同時に、米国主導の対中包囲網が将来形成されないように布石を打つ思惑もありそうだ。中国内の団結を促す目的もある。国内ではロシアがウクライナに侵攻した直後、米欧と距離をとる習指導部の対応を疑問視する声が上がった」

     

    中国の台湾侵攻の際には、今回と同様に強烈な経済制裁が行なわれるはずだ。中国は、ロシアより一層、世界経済に組み込まれている。それだけに経済制裁の衝撃は大きいであろう。

     


    (6)「新型コロナウイルス対策で隔離が続く上海市などでは不満がたまりつつある。共産党幹部の人事を決める5年に1度の第20回党大会が今年秋に控えており、米国を悪者にして国内の結束を促し、習氏の3期目入りを確実にする思惑も透ける」

     

    米国批判によって、中国がロックダウンによる国民の不満を逸らすことは不可能だ。ロックダウンは、日々の生活を不便にしている政策である。米国批判とは異次元である。

     

    (7)「米国責任論の拡散は、米欧との緊張をさらに高めるリスクがある。習指導部は巨大な国内市場を武器に欧州を切り崩そうとしているが、欧州では中ロ結託への懸念が強まっている。中国が反対を唱える米中二大陣営による「新冷戦」への流れを自ら速めている面がある」

     

    欧州は現在、経済優先で中国へ接近してきたことを反省している。ウクライナ侵攻で、ロシアの肩を持つ中国に失望しているのだ。このことは、4月1日のEUと中国のオンライン・トップ会談で明確にされた。欧州は、何よりも安定を求める地帯である。EU(欧州連合)が結成された背景も、戦争根絶であった。それにも関わらず、ロシアが隣国を侵略した。ロシアに不満を持つと同時に、そのロシアを支援する中国にも強い不満を持っている。この際、中国は「沈黙が金」という諺を思い出すべきだ。

     

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    ロシア国営石油大手のロスネフチは、5月積み出し原油の入札を行なったが、入札者がゼロという異常事態に陥った。欧州の大手資源商社トラフィギュラが4月26日、ロシア産原油の調達を5月15日までに全面停止すると表明したことが理由だ。

     

    今回のロスネフチの入札は、商社が取り扱いを敬遠するようになった分の原油を自ら輸出するための試みだった。原油の輸出先を失うロシアは、経済的に大ピンチに陥る。ロシアの2021年予算のうち、45%が石油・ガス販売収入によるものと国際エネルギー機関(IEA)が分析している。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月27日付)は、「
    ロシア原油輸出に急ブレーキ、買い手つかず」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはこのほど大量の原油を入札にかけたが、買い手がつかず失敗に終わった。国営石油大手に対して近く発動される制裁措置が足かせとなっており、ロシア経済の屋台骨であるエネルギー業界は苦境に追い込まれつつある。

     

    (1)「ロシアはウクライナへの侵攻を開始して2カ月間は、堅調なペースでエネルギー輸出を維持し、巨額の代金を受け取ってきた。ところが、ロシア国営石油大手のロスネフチはここにきてタンカー船を埋めるだけの十分な買い手を確保することができず、輸出に急ブレーキがかかった。事情に詳しいトレーダーが明らかにした。ロスネフチは先週、企業を招いて原油を入札にかけていた。トレーダーへの取材やウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した文書で分かった」

     


    ロシア国営石油大手のロスネフチは、ロシア経済最大の「納税者」とされている。そのロスネフチが、世界への輸出に急ブレーキがかかった。同社は、プーチン大統領の側近であるイーゴリ・セチン氏が率いるという。こうした状況はいち早く、プーチン氏の耳に入っているはずだ。

     

    (2)「今回の一件は、5月15日から導入される欧州の対ロスネフチ制裁が、ロシアの石油販売に影響を与え始めている初期の兆候と言えそうだ。ロスネフチへの措置は、ロシア産原油の全面禁輸には踏み込んでいない。とはいえ、欧州はいずれロシア産石油を全面禁止とする方向に向かっているとの見方は多い。欧州連合(EU)が3月半ばに明らかにした制裁措置では、企業に対してロスネフチの原油を欧州以外で再販することを禁じており、スイスも追随した。これにはウクライナ侵攻以降、ロシア産原油を買い占めているインドなど、アジアの大口買い手への販売も含まれる

     

    欧州の大手資源商社トラフィギュラは26日、ロシア産原油の調達を515日までに全面停止すると表明した。石油製品についても購入を大きく減らし、欧州の顧客が必要とする最低限の量に限定する。EUの対ロシア制裁では、5月後半以降に取引を原則禁じる対象にロスネフチが含まれており、この制裁に沿って関係を見直した。『日本経済新聞 電子版』(4月27日付)が報じた。

     

    EUは、ロスネフチの原油を欧州以外で再販することも禁じている。アジアの買い手は、ロシアから直接購入するほかない。

     


    (3)「ロスネフチの原油販売が行き詰まれば、西側の金融・商業分野からすでに総じて締め出されているロシア経済にはさらなる衝撃が及ぶだろう。ロスネフチによると、同社はロシア最大の納税者で、国家収入の約2割を占める。国際エネルギー機関(IEA)では、ロシアの2021年連邦予算のうち、45%が石油・ガス販売収入によるものだったと分析している。「石油販売ができなくなれば、(ロスネフチは)油井を閉鎖し始めなければならなくなる」。英オックスフォード・エネルギー研究所(OIES)のシニア研究員で、ロシア国営エネルギー大手ガスプロムの子会社で石油販売の責任者を務めていたアディ・イムシロビッチ氏はこう指摘する」

     

    ロスネフチの原油販売が行き詰まれば、2つの問題が起こる。

    1)国家歳入の45%を占める石油・ガス販売が減少すれば、戦争経済が行き詰まる。

    2)大量の原油を貯蔵できる施設がないので、油井を閉めざるを得ない。これが長期化すれば復旧が不可能になる。

    こういう厳しい状況に追い込まれるのだ。

     


    (4)「ロスネフチは先週、ロシアの代表的な油種ウラル原油510万トン(約3800万バレル)について、買い手の企業を招いて入札を実施した。これは大型タンカー船19隻を満載にするほど膨大な量だ。同社は入札の場で、代金支払いをルーブルで行うよう異例の要請を行った上で、原油は5~6月にバルト海と黒海の港湾からタンカーに積み荷されると説明した」

     

    ロスネフチは、大型タンカー船19隻を満載にするほど膨大な原油輸出(原油510万トン:約3800万バレル)の入札に失敗した。5~6月にかけて積み出す予定であった。ロシア経済にとっては痛手だ。ロシアの原油生産量は、日量1000万バレルとされる。3800万バレルは、約4日分の生産量である。これが消える計算になる。

     

    (5)「ロスネフチは実際の販売について、長らく石油商社大手トラフィギュラやビトルといった一握りの企業にほぼすべて委託し、これらの石油商社が世界の買い手へと届けていた。だが、これらの石油商社はEUの制裁が発動されるのを待たず、ロシア市場から撤退している。内情に詳しい関係筋によると、世界最大の独立系石油商社で、ロシアで30年の販売実績を持つビトルは、年内にロシア産石油の取り扱いを停止する見通しだ」

     

    ロスネフチは、石油商社大手のトラフィギュラやビトルなどに販売を委託してきた。この両社は、経済制裁によってすでにロシア市場から撤退している。ロスネフチは、生産に特化して販売を委託していただけに、経済制裁の衝撃は大きい。

     

    (6)「ロシアは米国とは異なり、大量の原油を貯蔵できる施設がない。そのため、原油販売が滞ってだぶつけば、国内のエネ供給網はすぐに目詰まりを起こし、生産縮小に追い込まれる。油井がいったん閉鎖されると、閉鎖前の生産能力に戻すことは難しいとされる。PVMオイル・アソシエーツのアナリスト、タマス・バルガ氏は、ウラル原油は原油の国際指標である北海ブレントに対して約35ドルのディスカウント水準で売られているとして、精製業者がロシア産原油以外から調達を急いでいることを示唆していると指摘している。ウクライナ侵攻前は、両油種とも数ドル程度の価格差で取引されていたという」

     

    ロシアのウラル原油は、国際指標である北海ブレントに対して約35ドルのディスカウント水準で売られている。相場に対して3~4割の値引きだ。高油価の恩恵を100%受けている訳でない。ロシアが、大量の貯蔵施設を持っていない結果、値引きしでもその日に生産した原油を販売せざるを得ないのである。

     

     

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    ウクライナ首都キーウ(キエフ)近郊で、410人の民間人の遺体が見つかった。英米などは「戦争犯罪」と強く非難している。この地域は、残虐性で有名なチェチェンの兵士が占領していたとされる。それだけに、起こるべくして起こったという側面もあろう。

     

    欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス副委員長(通商担当)は4日、ロシアがウクライナ侵攻をやめるよう圧力をかける必要があるとし、EUが新たな対ロシア制裁措置を用意していると明らかにした。

     

    ドムブロフスキス氏は、「EUはこの戦争や残虐な行為を止めるために、さらなる措置を講じなければならないのは明白だ」と強調。「欧州委はすでに次の制裁パッケージを準備している」とした上で「ロシアに対する圧力を強化し、ウクライナへの支援を拡充する必要がある」とし、加盟国による決断に期待を表明した。新たな制裁措置にロシア産石油の輸入禁止が盛り込まれるかどうかについては、「欧州委はいかなる選択肢も排除していない」という認識を示した。以上、『ロイター』(4月4日付)が報じた。

     


    『日本経済新聞 電子版』(4月4日付)は、「ロシアの国際法違反追及へ、キーウ近郊集団埋葬地か」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ侵攻でのロシアの戦闘行為について、欧米各国で国際法違反を追及する声が強まっている。ウクライナによると首都キーウ(キエフ)近郊で410人の民間人の遺体が見つかり、英米などは「戦争犯罪」と非難した。ロシア側は殺害を否定するが、これまでも病院などへの無差別攻撃などが指摘され、国際人道法であるジュネーブ条約などに違反する可能性がある。

     

    (1)「欧米メディアによるとキーウ近郊のブチャなどで民間人のような服装をした複数の遺体が発見され、後ろ手に縛られた遺体もあった。ブチャは撤収前、ロシア南部チェチェン共和国から送り込まれた戦闘員の支配下にあったという。米衛星運用会社のマクサー・テクノロジーズが3月31日に撮影した人工衛星写真では、ブチャの教会近くに穴が掘られているのが確認できる。欧米メディアによると穴は長さ約14メートルで、集団埋葬地とみられるという。米CNNは地元住民の話として、150人を埋葬したと報じた。AP通信によると、北東部スムイ州の州知事は4日、SNS(交流サイト)で「数百人の市民が殺害された」と訴えた」

     


    ロシア当局は、この虐殺事件を「でっち上げ」として否定している。侵略戦争という罪を犯した上に、さらなる非人道行為である。ロシア民族にとって、これ以上の不名誉な事件はない。

     

    (2)「ブリンケン米国務長官は米CNNで民間人の殺害に「衝撃を受けた」と述べ、戦争犯罪の責任を追及していくと語った。トーマスグリーンフィールド米国連大使は4日、ロシアの国連人権理事会における理事国資格停止を要請すると述べた。フランスのマクロン大統領は「(戦争犯罪を)非常に強く示唆する情報があった」と批判した。国連のグテレス事務総長も「深い衝撃を受けている」として、独立した調査による事態解明の必要性を訴えた」

     

    明らかな、戦争犯罪である。徹底的に究明しなければならない。東京裁判では、命令を下していなくても,その責任が問われて戦犯は処刑された。

     


    (3)「戦争犯罪は、集団殺害犯罪人道に対する犯罪戦争犯罪侵略犯罪――に分かれる。早稲田大の萬歳寛之教授は、ブチャの市民殺害などは「組織的に市民らを故意に殺害する、交戦中にやってはいけないルールを逸脱するのどちらかに該当するとみている」と指摘する。武力紛争時に一般市民や医療者らを保護する代表的な国際法がジュネーブ条約だ。第2次世界大戦後の1949年には、戦闘行為に参加しない民間人や捕虜の保護も盛り込んだ。武力紛争による被害をできる限り軽減するのが目的だ」

     

    戦争犯罪は、4種類に分けられるという。この際、世界は徹底的にロシアの犯罪を追及すべきである。あらゆる国際組織からロシアを追放するくらいの覚悟を持って当るべきだ。経済関係があるからという生温いことでなく、ロシアを国家ぐるみ罰するくらいの姿勢で臨まなければならない。

     


    (4)「ロシア軍は3月4日、ウクライナ南部にあるザポロジエ原発を攻撃した。破壊されると危険な施設への攻撃も同条約で禁止されている。燃料気化爆弾やクラスター爆弾も、ロシア軍がウクライナ領内で使用したとの疑いがある。こうした無差別攻撃はジュネーブ条約やオスロ条約に違反する可能性がある。戦争犯罪を裁く場としては、国連安保理決議に基づく国際戦犯法廷や、国際刑事裁判所(ICC)など複数の仕組みがある。ただ、実効性のある罰則をロシアに科すのは難しいとみられる」

     

    個人の犯罪は、ICCが扱う。ロシアは、ICCから脱退しているのでロシア国内での逮捕は不可能である。ただ、国外へ出れば逮捕可能だ。

     


    (5)「ウクライナの提訴を受け、国際司法裁判所(ICJ)は3月にロシアの侵攻に関する審理を始めたがロシアは欠席した。ICCも3月、捜査開始を発表した。ウクライナ領内で起きた戦争犯罪を捜査できるが、ロシアは非加盟国だ。このため、犯罪を認定されたロシアの関係者がICCの締約国に滞在する場合に拘束力は限定される。ICCの検察官が組織的な戦争犯罪を十分立証できればプーチン氏やロシア高官に逮捕状を発行できる。ただ実際に身柄を拘束してICCに引き渡すハードルは高い」

     

    国家の犯罪はICJが裁く。ただ、ICJは、法的に実行できないので国連に負託するほかない。ロシアは、国連安保常任理事国であるから拒否権を持つ。結局。ICJでは実質的にロシアを罰することが不可能だ。

     

    こうなると、経済制裁によってロシアを罰するしかない。西側諸国は、腹を据えてロシアを長期に渡って罰することである。

     

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    ロシアは、自国へ経済制裁を科している「非友好国」に対して、天然ガスの輸入代金をルーブルで支払うように求めた。西側諸国には、ルーブルを手当しなくてはならない手間とコストが掛かるので「難題」を突付けられた形である。輸入契約では、支払いがドルかユーロとなっている。ロシアが敢えて、ルーブルでの支払いを要求するのは、明らかな契約違反になるのだ。

     

    ロシアは先に、ドル建て国債のクーポンをルーブルで支払うと威嚇した。だが、そうなれば「デフォルト」(債務不履行)になると脅され結局、ドルでの支払いなった。これと同様で、エネルギー代金のルーブル支払い要求は、「対外的ポーズ」であろうと指摘されている。

     


    『ロイター』(3月25日付)は、「ガス代金のルーブル決済要求、ロシアの狙いと現実味」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領は23日、同国がウクライナ侵攻に絡んで指定した「非友好国」に輸出する天然ガスについて、代金をルーブルで支払うよう近く求める考えを示した。これにより欧州でガスの需給ひっ迫が起きるのではないかとの警戒感が強まっている。

     

    (1)「ガスの買い手側は、ロシアや同国の幅広い企業が欧米から経済制裁を受けている点を踏まえ、どうすればルーブルでの支払いが可能か必死に手掛かりを求めている。多くの専門家からは、ルーブル決済は契約違反に当たるのではないかとの声も聞かれる。ロシア経済は、欧米の制裁で大打撃を受けている。ただ、ロシア産の石油とガスに依存している欧州連合(EU)は、エネルギー輸入をまだ制裁対象に含めていない。コンサルティング会社のライスタッド・エナジーによると、現在はほぼ全てのロシア産ガス購入契約がユーロ建てないしドル建てで決済されている」

     


    ルーブル決済は、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、急落してきたルーブル相場の押し上げ要因になると見られる。実際、プーチン氏の発言だけで、ルーブルの対ドル相場は9%も反発した。一般的には、プーチン氏の「ルーブル払い」発言は、ルーブル相場のテコ入れ目的と理解されている。

     

    (2)「欧州は、ガス需要の約40%をロシアから輸入しており、年初からの支払額は1日当たり2億~8億ユーロに上る。市場では各国がルーブルで決済するつもりか、あるいは本当にできるのか懸念が広がり、欧州天然ガス価格の指標となる「オランダTTF」は高騰している。ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は、ルーブル決済要求について「プーチン氏が(EUと米国の)同盟分断を狙って打った一手だ」と評し、欧州諸国が要求に応じれば「制裁の足並みは大きく乱れる」とツイッターに記した」

     

    策略家のプーチン氏である。この「ルーブル払い」要求は、政治的な目的があるはず。西側諸国の足並みの乱れを誘う目的と指摘されている。

     


    (3)「複数の買い手は、契約で決済通貨変更が認められていないので、今後もユーロで支払い続けると話している。何人かの法律専門家の見解に基づくと、ロシアが一方的に契約条項を変えることは、まず不可能だ。シドニー工科大学の公共政策ガバナンス研究所でチーフエコノミストを務めるティム・ハーコート氏は、「契約は買い手と売り手の双方で成り立ち、ドル建てかユーロ建てが普通。だから、どちらかが一方的に『違う。これ(ルーブル)で払うのだ』と言ってしまうと、契約は存在しなくなる」と説明した」

     

    プーチン氏は、契約の存在を無視したことを言っている。だから、支払い側は契約通りでドルかユーロで支払えば済むことだ。

     

    (4)「もう1つ厄介な問題は、西側の銀行がロシア資産取引に消極的な点にある。INGバンクは「たとえ買い手がルーブルで支払おうとしても、多くのロシアの銀行に制裁が発動されている以上、かなり難しいことが分かるのではないか」と指摘。ロシアがルーブル決裁にこだわった場合、期間など契約の他の条項も再交渉できる余地が生まれるとの見方を示した」

     

    西側の銀行は、経済制裁へ抵触しないようにルーブルに関わることに消極的という。ロシアが、ルーブル払いに固執すれば、契約の見直しになる。商取引とは、そういうものであら。

     

    (5)「外国為替取引を専門とするある銀行幹部によると、制裁はあくまで部分的なので、ルーブル決裁は技術的に可能だ。西側の買い手がユーロないしドルを取引銀行に支払い、その銀行がロシアの銀行に送金するとともに「ガスプロムに対してルーブルで払って」と頼めばよいというもっとも欧州の買い手が市場でルーブルを調達できるほどの規模で、ロシア中銀がルーブルを供給できるかは、まだ分からない」

     

    下線のように、通常の送金手続きで済むという。ただ一言、「相手にルーブルで払って」と言えばOKというのだ。

     

    (6)外国為替取引を専門とするある銀行幹部は、ドル建てロシア国債の返済を引き合いに出す。ロシア政府はドルではなくルーブルでの支払いをちらつかせたが、同幹部によると、いざデフォルト(債務不履行)の可能性が迫ると、結局はドルで返済資金をねん出した。ルーブル決済を振りかざすのは「対外的なポーズ」という側面が強いという」

     

    ロシアが、経済制裁でドル資金不足に悩んでいるときに、「ルーブル払い」を要求すること自体、「対外的ポーズ」の臭いがする。過剰な心配は要らない、という結論になりそうだ。

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    西側諸国にとって、ロシアはすでに「憎しみ」の対象である。主要7カ国(G7)は3月11日に出した共同声明で、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへ、新たな経済制裁を科すと表明した。ロシアからの輸入品に大幅に高い関税を課すほか、高級品の対ロ輸出も禁じる。

     

    欧州連合(EU)と英国は15日、G7の共同声明に基づき、ウクライナに侵攻したロシアへの追加制裁を発表した。世界貿易機関(WTO)のルールに基づく「最恵国待遇」からロシアを除外する。米国に追随し、ロシアへの経済面での締め付けを一段と強めるもの。EUは、格付け機関にロシアの政府と企業を格付けするのを禁止する。ロシア政府や企業が、EUの金融市場に一段とアクセスしにくくする目的だ。

     


    ロシア株式市場は現在、閉鎖されたままである。株価の暴落を回避すべく、ウクライナ侵攻が落ち着くまで閉鎖状況が続くのであろう。ロシア経済は、すでに半身不随状態へ追い込まれている。そこへ、今回のEU・英国のよる追加経済制裁である。ロシア経済は、窒息状態へ追い込まれる。

     

    ロシアのG7向けの輸出高は、対GDP比(21年)で5.9%も占めている。中国向けの同3.7%を上回る。このG7向け輸出が落込むことは、ロシア経済にとって死活的問題である。しかも、対ロシア制裁は短期間に終わるものではない。ロシアに政変が起こって、プーチン氏復活の可能性がないことや、民主政治へ100%変革したという確証が掴めぬ限り、経済制裁は続くと見るほかない。ロシアは、「コペルニクス的転回」が求められるのである。

     


    『日本経済新聞 電子版』(3月15日付)は、「EU・英、ロシアに追加制裁 『最恵国待遇』から除外」と題する記事を掲載した。

     

    G7の共同声明は、「主要製品でロシアに『最恵国待遇』を与えない措置を講じるよう努める」と記してある。各国・地域は世界貿易機関(WTO)ルールに基づき、ロシア製品に他国と同じ低い関税を課してきた。今回、最恵国待遇を取り消せば、35%も高い関税がかけられる。

     

    (1)「ロシアの鉄鋼製品をEUに輸入するのも禁じる。欧州委員会はこの分野のロシアの輸出による収入約33億ユーロ(約4300億円)が失われるとみている。EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は声明で「制裁の目的はプーチン大統領の非人間的で無意味な戦争をやめることだ」と主張した。英国もロシアからの数百種類の輸入品の関税を大幅に引き上げる。最恵国待遇から外すことで制裁の対象となるロシアからの輸入品に35%の関税が上乗せされる。対象は鉄鋼や銅、アルミニウムといった原材料のほかウオッカや飲料、魚介類など食品も含む。声明で「国際秩序を尊重しない者が、WTOからの利益を享受できないようにする措置だ」とロシアを非難した」

     

    EUは、ロシアからの鉄鋼製品の輸入を禁止した。これにより、ロシア鉄鋼業は年間輸出高4300億円の市場を失う。ロシアからのエネルギー輸入は、従来通りである。EUにとっては、命綱であるからだ。プーチン氏も「契約を守る」と殊勝な発言をしている。ロシアにとっては貴重な外貨収入源であるから、双方が「手付けず」の聖域である。ただ、EU委員長は、2027年までにロシア産エネルギー輸入をゼロにする目標を発表している。

     

    ロシア産天然ガスは、EUが全体の71.9%(2020年)も輸入している。これが、27年までにゼロとなれば、ロシア経済は成り立たなくなる。天然ガス・石油が、輸出高に占める比率は40%台前半にもなっている。これだけの高いウエイトを占めているエネルギーが,EU向けでゼロになれば、ロシアはどうなるか。想像しただけでも鳥肌が立つであろう。

     


    (2)「EU、英ともに高級品をロシアに輸出することも禁止する。英は今後詳細を発表するが高級自動車や宝飾品、美術品などが対象となる見通しだ。ロシアのプーチン大統領を支えるオリガルヒ(新興財閥)など富裕層に打撃を与える狙いがある。主要7カ国(G7)は11日の共同声明で「ロシアに最恵国待遇を与えない措置を講じるよう努める」と宣言した。EU、英の15日の発表は、これに対応したものだ。EU、英ともこれまでにロシア金融機関の資産凍結やオリガルヒを標的とした制裁を実施している」

     

    ロシア経済の弱点は、諸費財の4割を輸入に頼っている状況だ。ロシアは、国内で満足に消費財の生産もできない国である。それにも関わらず、「ロシア帝国再興」と大きな夢を持ちだして、今回のウクライナ侵略を始めた。極端に資源依存経済であり、これからの「脱炭素」経済では、確実に世界で落後する体質である。プーチン氏は、この経済構造大転換期に、侵略戦争にうつつをぬかしているのだ。

     

     

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