勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時報

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    西側諸国にとって、ロシアはすでに「憎しみ」の対象である。主要7カ国(G7)は3月11日に出した共同声明で、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへ、新たな経済制裁を科すと表明した。ロシアからの輸入品に大幅に高い関税を課すほか、高級品の対ロ輸出も禁じる。

     

    欧州連合(EU)と英国は15日、G7の共同声明に基づき、ウクライナに侵攻したロシアへの追加制裁を発表した。世界貿易機関(WTO)のルールに基づく「最恵国待遇」からロシアを除外する。米国に追随し、ロシアへの経済面での締め付けを一段と強めるもの。EUは、格付け機関にロシアの政府と企業を格付けするのを禁止する。ロシア政府や企業が、EUの金融市場に一段とアクセスしにくくする目的だ。

     


    ロシア株式市場は現在、閉鎖されたままである。株価の暴落を回避すべく、ウクライナ侵攻が落ち着くまで閉鎖状況が続くのであろう。ロシア経済は、すでに半身不随状態へ追い込まれている。そこへ、今回のEU・英国のよる追加経済制裁である。ロシア経済は、窒息状態へ追い込まれる。

     

    ロシアのG7向けの輸出高は、対GDP比(21年)で5.9%も占めている。中国向けの同3.7%を上回る。このG7向け輸出が落込むことは、ロシア経済にとって死活的問題である。しかも、対ロシア制裁は短期間に終わるものではない。ロシアに政変が起こって、プーチン氏復活の可能性がないことや、民主政治へ100%変革したという確証が掴めぬ限り、経済制裁は続くと見るほかない。ロシアは、「コペルニクス的転回」が求められるのである。

     


    『日本経済新聞 電子版』(3月15日付)は、「EU・英、ロシアに追加制裁 『最恵国待遇』から除外」と題する記事を掲載した。

     

    G7の共同声明は、「主要製品でロシアに『最恵国待遇』を与えない措置を講じるよう努める」と記してある。各国・地域は世界貿易機関(WTO)ルールに基づき、ロシア製品に他国と同じ低い関税を課してきた。今回、最恵国待遇を取り消せば、35%も高い関税がかけられる。

     

    (1)「ロシアの鉄鋼製品をEUに輸入するのも禁じる。欧州委員会はこの分野のロシアの輸出による収入約33億ユーロ(約4300億円)が失われるとみている。EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は声明で「制裁の目的はプーチン大統領の非人間的で無意味な戦争をやめることだ」と主張した。英国もロシアからの数百種類の輸入品の関税を大幅に引き上げる。最恵国待遇から外すことで制裁の対象となるロシアからの輸入品に35%の関税が上乗せされる。対象は鉄鋼や銅、アルミニウムといった原材料のほかウオッカや飲料、魚介類など食品も含む。声明で「国際秩序を尊重しない者が、WTOからの利益を享受できないようにする措置だ」とロシアを非難した」

     

    EUは、ロシアからの鉄鋼製品の輸入を禁止した。これにより、ロシア鉄鋼業は年間輸出高4300億円の市場を失う。ロシアからのエネルギー輸入は、従来通りである。EUにとっては、命綱であるからだ。プーチン氏も「契約を守る」と殊勝な発言をしている。ロシアにとっては貴重な外貨収入源であるから、双方が「手付けず」の聖域である。ただ、EU委員長は、2027年までにロシア産エネルギー輸入をゼロにする目標を発表している。

     

    ロシア産天然ガスは、EUが全体の71.9%(2020年)も輸入している。これが、27年までにゼロとなれば、ロシア経済は成り立たなくなる。天然ガス・石油が、輸出高に占める比率は40%台前半にもなっている。これだけの高いウエイトを占めているエネルギーが,EU向けでゼロになれば、ロシアはどうなるか。想像しただけでも鳥肌が立つであろう。

     


    (2)「EU、英ともに高級品をロシアに輸出することも禁止する。英は今後詳細を発表するが高級自動車や宝飾品、美術品などが対象となる見通しだ。ロシアのプーチン大統領を支えるオリガルヒ(新興財閥)など富裕層に打撃を与える狙いがある。主要7カ国(G7)は11日の共同声明で「ロシアに最恵国待遇を与えない措置を講じるよう努める」と宣言した。EU、英の15日の発表は、これに対応したものだ。EU、英ともこれまでにロシア金融機関の資産凍結やオリガルヒを標的とした制裁を実施している」

     

    ロシア経済の弱点は、諸費財の4割を輸入に頼っている状況だ。ロシアは、国内で満足に消費財の生産もできない国である。それにも関わらず、「ロシア帝国再興」と大きな夢を持ちだして、今回のウクライナ侵略を始めた。極端に資源依存経済であり、これからの「脱炭素」経済では、確実に世界で落後する体質である。プーチン氏は、この経済構造大転換期に、侵略戦争にうつつをぬかしているのだ。

     

     

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    ロシアによるウクライナ侵攻は、EU(欧州連合)の経済活動に深刻な影響を与えた。これまでロシアに大きく依存してきたエネルギー供給を、2027年までにゼロにするという画期的な計画をまとめた。これが実現すると、ロシアは原油と天然ガスの重要な販売先を失うことになり恐慌状態に陥る。プーチン氏が、ウクライナで侵略戦争を行なっている余裕はなくなる。

     

    『ロイター』(3月12日付け)は、「EU首脳、域外への依存脱却で合意 ウクライナ早期加盟は棚上げ」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)は11日、10日から2日間の日程で開いた首脳会議で、食料、半導体、医薬品、原材料のほか、デジタル技術などに対する域外への依存を低下させることで合意した。

     


    (1)「ロシアによるウクライナ侵攻を受け、EUでは自立の必要性が強く意識されている。首脳会議で採択された共同宣言は、戦略的パートナーシップ、備蓄、リサイクル、資源効率化を通じて、重要な原材料の輸入への依存を低下させることで合意したとしている。フランスのマクロン大統領は会議後に記者団に対し、「今回の危機を受け、食料、エネルギー、防衛が全て主権の問題に関わっていることが明確になった」とし、「われわれは世界に開かれた存在でありたいが、誰にも依存したくない」と述べた。EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、ロシア産天然ガス、原油、石炭に対するEUの依存を向こう5年間で段階的に解消するための計画を5月半ばまでに策定すると表明した」

     

    グローバル経済の終焉を改めて印象づける記事だ。EUはウクライナ戦争で、食料、エネルギー、防衛において全て主権の問題に関わっていることが明確になった、と強調した。このグローバル経済の終焉で、最も困難な立場に追い込まれるのは中ロである。中国の「一帯一路」は宙に浮くし、ロシアのエネルギー販売に大きな壁ができるのだ。

     


    EUの行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は13日までに、ロシア産のエネルギー源への加盟国の依存度を2027年までにゼロにする対策を今年5月半ばまでに示す方針を明らかにした。27年までにロシア産の天然ガス、石油や石炭への依存度を段階的に減らし、加盟国や欧州全体が保有する資源の活用を訴える内容になるとした。パリ郊外のベルサイユ宮殿で開いたEU首脳会議の終了後、フランスのマクロン大統領やミシェルEU首脳会議常任議長と共に臨んだ記者会見で述べたもの。米『CNN』(3月13日付け)が、明らかにした。

     

    (2)「共同声明によると、現在は主に米国と台湾から輸入している半導体について、域内に製造工場を建設して増産し、2030年までに世界シェアを20%に倍増させる。医薬品については、中国から輸入する代わりに域内の生産を増強。人工知能(AI)を含むデジタル技術などへの投資も拡充させるほか、食料の自給自足を進めるために植物性タンパク質の製造を拡大する。EU首脳はこうしたプロジェクトへの投資は、先ずEUと各国の予算で賄うとし、公共投資を行うことで規模の大きい民間投資を呼び込みたい考えを示した」

     

    半導体については、台湾企業の誘致が成功のカギを握っている。EUが最近、中国離れして台湾受入れ姿勢を見せている裏に、この半導体製造問題が関わっている。食料の自給自足を進めるため、植物性タンパク質の製造を拡大するという。これは、今後の水資源不足とも関わる問題で、EUが先鞭を切る。

     


    (3)「EU首脳はこのほか、ウクライナに対する資金と軍備の提供拡大と、ロシアに対する一段の制裁措置の導入で合意。ただ、ウクライナの早期加盟については一線を画した。ウクライナは従来からEUと北大西洋条約機構(NATO)への加盟を希望していたが、2月24日のロシアによる侵攻開始を受け、EUに対し早期加盟を要請していた。フランスのマクロン大統領は記者会見で「ウクライナのように勇敢に戦えば、もっと多くのことを望むのはよく理解できる。ただ、われわれはこの紛争の当事者ではない」と指摘。

     

    ウクライナ問題では、EUへの早期加盟が難しい情勢である。

     

    (4)「ドイツのショルツ首相は、ウクライナのほか、モルドバとジョージアの加盟要請を、詳細な法的分析のために欧州委員会の執行部に提出するのは「正しい」と述べた。一方、東欧諸国は失望感を表明。リトアニアのナウセーダ大統領は「ウクライナが加盟候補国になることを望んでいる。今回の会議では合意できなかったが、再度協議される」と語った。ウクライナへの支援について、EU外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、兵器購入資金として5億ユーロ(5億5000万ドル)を追加的に提供する可能性があると表明。紛争終結後の再建支援も確約した」

     

    ドイツは、ウクライナなどのEU加盟を促進させる姿勢を見せている。東欧諸国もウクライナの加盟を支持しているので、次回の会議で改めて議論されるにちがいない。EUが、ここでウクライナの加盟に腰の引けた態度を見せることは、ロシアを増長させるリスクを増すであろう。

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    ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、欧州連合(EU)に対し、ウクライナの加盟を「即時」承認するよう要請した。ゼレンスキー氏は、「新たな特別手順により、EUにウクライナを即時加盟させるよう要請する」と述べた。

     

    一方、EUのフォンデアライエン委員長は2月28日、「ウクライナとはすでに様々な分野で協力関係にある。ウクライナは、将来的にEUへ入ってほしいと思っている」と述べた。ウクライナは2014年以降、親EU政権が続いており、EU加盟を憲法にも明記しているほどだ。

     

    ウクライナ大統領府によれば3月1日、申請文書はすでにEU本部のあるベルギーのブリュッセルに向かっていると明らかにした。このように、ウクライナのEU加盟問題が、「プーチン戦争」による危機打開の手段として浮かびあがっている。

     


    『ロイター』(3月1日付)は、「EU首脳『ウクライナ加盟を討議の公算』紛争解決の切り札か」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)高官は2月28日、3月の非公式EU首脳会議でウクライナのEU加盟を巡る討議が行われる可能性があると述べた。

     

    (1)「同高官は匿名を条件に、こうした討議はロシアとの紛争の解決に向け重要である可能性があると指摘。ただプロセスはまだ開始されていないとし、先走ることがあってはならないと述べた。この日は、ミシェルEU大統領、欧州委員会のフォンデアライエン委員長、マクロン仏大統領、ショルツ独首相が夕方にパリで会合を開く。同高官は、ウクライナのEU加盟を巡る問題は当然、この会合で取り上げられるとし、3月10~11日の欧州理事会の非公式会合で討議される可能性があるとの見方を示した」

     

    EUは、民主主義を守るという視点からロシア侵攻と戦っているウクライナ国民を見殺しにできない。「仲間」として迎え入れることである。すでに、EUのフォンデアライエン委員長も歓迎姿勢を見せている。

     


    (2)「スロベニアのヤンシャ首相は、ウクライナのEU加盟を「完全に支持する」と表明。チェコのフィアラ首相は、ウクライナがEUに歓迎されていると明確なメッセージを示す必要があると述べた。ドイツのベーアボック外相は、EU加盟は数カ月で行えることではないとしながらも、ウクライナは欧州の一部で、EUは歓迎すると表明。加盟はウクライナをロシアから切り離すEUの意図を示すものではなく、多くのウクライナ国民の意図を反映するものとの考えを示した」

     

    ドイツは、すでに「歴史的転換」を表明した。従来のロシアへの融和的姿勢を改め、防衛意識を高めるというもの。EUが、対ロ政策でなかなか一本化できなかった背景は、ドイツの融和策があった。その障害がなくなった以上、ウクライナをEUへ迎え入れるべきだろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月1日付)は、「『冷戦2.0』突入、ロシア侵攻で世界激変」と題する記事を掲載した。

     

    歴史はゆっくりと動きつつ、ある時点で加速する。ウクライナの戦争は、数日のうちに欧州の安全保障の地勢図を塗り替え、冷戦後の秩序を一変させ、ロシアを再び西側から切り離した。

     

    (3)「ロシアによる侵攻を受け、西側諸国とその同盟国は、空前の対ロ経済制裁を相次ぎ打ち出した。米国と欧州は予想外の結束ぶりを見せつけている。欧州連合(EU)は、ロシアがもたらす真の脅威に何年も及び腰だったが、ここ数十年に見られなかったほど迅速かつ果断に行動している。従来はロシアに対してハト派的だったドイツは、政策を急転換し、ウクライナ防衛のために軍事費の大幅増額と殺傷能力の高い兵器の導入を表明した」

     

    プーチン戦争は、改めてロシアの好戦性に目覚めさせられた。これまで抱いてきたロシアへの「懐疑」が、「確信」に変わったのである。外交だけで戦争を防げない現実を、いやというほど思い知らされた。

     


    (4)「2月24日の(ウクライナ)攻撃は、NATOの新たな同盟諸国がそもそもなぜNATOへの接近を望んだのかを、如実に示している。
    今後の展開は、ウクライナの動向に大きく左右される。軍事専門家によると、プーチン氏は侵攻に対する西側の反応を過小評価していたかもしれないのと同様に、ロシア軍がウクライナを迅速に制圧する能力も、過大評価していた可能性がある」

     

    プーチン氏の描いていたウクライナ攻略図は、大きな手違いが起こっている。西側諸国が、軍事面と強力無比な経済制裁でウクライナを支援していることだ。西側は、眠った獅子ではなかった。

     

    (5)「専門家は、ロシアの量的・質的な軍の優位性について、当初想定していなかった状況の深刻化に見舞われる可能性はあるが、なお勝利を収める公算が大きいとみている。だが、西側の防衛軍備と何千人もの市民ボランティアに助けられたウクライナ軍の反応は、ロシア軍を複数の前線で後退させた。前進が止まったことで、ロシア軍を妨げている物流やその他の問題も明らかになった。2014年にクリミアを併合して以降のプーチン氏の行動は、それまであまり目立たなかったウクライナの国家意識を喚起している

     

    2014年以降、プーチン氏の見せた傍若無人の振る舞いが、ウクライナに強い国家意識を育んだ。同時に、西側諸国もここで立ち上がらなければ、独裁者の蹂躙を許すという危機感がロシア軍の進撃を遅らせている。「歴史はゆっくりと動きつつ、ある時点で加速する」という現実が、ウクライナで起こっているとみるべきだろう。

     

    このことは、中国についても言えることだ。南シナ海を占拠する行動を手始めに、領土拡大を狙っている。世界が、じっとその振る舞いを観察中である。ある時点で、その暴挙を食止める動きが表面化するはず。そのことを忘れてはならない。

     

     

     

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