勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時報

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    中国は、米国との関税戦争に直面して、欧州へ秋波を送っている。だが、EUは中国とのハイレベル経済・貿易対話に背を向けており、両者間にある深い溝を浮き彫りにしている。EU高官は、首脳会議で実行に移せる合意ができない限り、EU側が経済対話を開くことはない、と語っているほど。

     

    一方の中国は、18日のG7首脳会議の議長総括で、中国による「市場歪曲、過剰生産能力の抑制」求めるとの談話に反発している。議長総括によると、G7首脳は、貿易・産業政策に関する懸念に加え、「中国による東シナ海・南シナ海を不安定化させる活動に対する、進行中の深刻な懸念や、台湾海峡の平和と安定の維持の重要性」について議論した。中国にはアゲインストの風が吹いている。

     

    フィナンシャル・タイムズ」(6月17日付)は、「EU、中国との経済対話見送りか 貿易分野で成果見込めず」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)が7月の首脳会議を前に、中国との重要な経済会議の開催を拒否している。事情に詳しい4人の関係者によると、両者間の多くの貿易交渉に進展がないことが理由という。

     

    (1)「経済対話はEU・中国首脳会議への布石となる場合が多い。関係者によると、2025年の首脳会議は7月24〜25日に中国・北京で開催される見通しで、今回は両者の外交関係樹立から50周年の節目にあたるだけに外交上特別な意味を持つ。関係者の一人は「中国は(経済対話を)望んでいるが、すべての分野の交渉において進展が見られていない」と明かす。匿名を条件に取材に応じたあるEU高官は、首脳会議で実行に移せる合意ができない限りEU側が経済対話を開くことはない、と語った」

     

    今年は、EU・中国の外交関係樹立50周年にあたる。EU側は、すっかり熱が冷めている。中国が約束したことを守らないからだ。米中間のいざこざの原因も、中国の不履行にある。

     

    (2)「EUと中国は、通商面でますます多くの摩擦を抱えている。EUは24年、中国の電気自動車(EV)業界が多額の政府補助金を受けているとして、同国製EVに追加関税を導入した。これを受け、中国側はEU産ブランデーに反ダンピング(不当廉売)関税を課し、豚肉と一部の乳製品についても反補助金調査に乗り出した。これにより関税がさらに引き上げられる可能性もある。EUはここ数週間で、中国製の医療機器をほとんどの公共調達契約から排除し、建築用の中国産硬質合板に対する反ダンピング関税を導入した」

     

    中国は、米国やEUとの貿易面で約束しても守らないというゴタゴタを起こしている。日本は、中国とこういう問題が起らず助かっている。貿易構造が違うからだ。

     

    (3)「関係者によると、米国が4月に打ち出した関税政策への報復として中国が導入したレアアース(希土類)の輸出規制が、緊張を一段と高めている。中国は、電子機器やEVのモーター、風力タービン、防衛用途に使われるさまざまなレアアースの生産・加工をほぼ独占している。中国当局の輸出許可手続きが遅れているため、欧州の一部の生産業者は操業停止に追い込まれる懸念を表明している」

     

    中国は、レアアースの輸出規制を武器にしている。EUは、こういう「小賢しい」中国のやり方を嫌っているのだ。27年から、日本がレアアース輸出国に名を連ねる。南鳥島の深海から、中国内陸部のレアアースよりも20倍もの高品位「レアアース泥」の採掘が始まるからだ。中国の「天下」はそれまでだ。

     

    (4)「経済対話が見送られれば、首脳会議で具体的な成果が得られるとの期待は薄れるだろう。ただ、経済対話の開催は不定期であり、必ずしも首脳会議に先行するわけではないと、別のEU高官が匿名を条件に指摘した。首脳会議は50周年の節目に北京で開催されるにもかかわらず、中国側からは習近平(シー・ジンピン)国家主席ではなく、ナンバー2の李強(リー・チャン)首相が出席するとみられている。EU側はこれを冷遇と受け止めている」

     

    中国の欠陥は、すぐに「威張り散らす」ことだ。劣等感の裏返しである。EUとは、肌が合わないであろう。中国は、20年前の自国の姿を思い起こして、謙虚に振る舞うべきである。さすが、日本に対してはそういう態度を取らないようである。日本が、ODA(政府間援助)で中国を支援した関係であるからだ。

     

    (5)「23年12月に開催された前回のEU・中国首脳会議の前には、EUの執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)と中国の何立峰(ハァ・リーファン)副首相との協議が開かれた。ドムブロフスキス氏は協議の場で、特に農産物輸出や医療機器、化粧品、乳児用粉ミルクについて、欧州企業の中国市場へのアクセスに問題があると指摘した」

     

    中国は、自国の欠陥をすぐに認めないという悪弊がある。EUには、腹立たしいであろう。

     

    (6)「欧州委の通商・経済安全保障総局で副局長を務め、中国問題を担当するマリア・マーティンプラット氏によると、これらの問題のほとんどは未解決だ。同氏は5日にベルギー・ブリュッセルで開いた会議で「今から首脳会議までの間にやるべき作業が山積している」と語った。また、作業の大部分を占めるのは「(中国側と)長らく議論を重ねてきた問題」だと付け加えた。「我々が議論しているのは、(中国が)横断的な法規制の一部を海外勢に不利な形で運用するやり方についてだ。データ安全法しかり、反スパイ法もまたしかりだ」と指摘」

     

    EUと中国では、価値観が180度ことなる。民主主義国と権威主義国とでは、スムースな交渉が進まないのであろう。日本は、中国とはこういういざこざが起らず助かっている。余り関係を深めたくないケースの国家なのだろう。

     

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    今年は40万トン増

    概算金なんと5割増

    巧妙なEU農業政策

    輸出視野に大転換へ

     

    令和の米騒動は、政府の備蓄米放出で一時的に米価高騰を抑えこんだ形になった。一方、本命とも言うべき銘柄米は、高値に張り付いたままだ。現在のコメ小売市場は、5キロ2000円台の随意契約米、3000円台の備蓄米を使ったブレンド米、それに銘柄米の4000円台と3通りの価格帯が存在する。異常事態に陥っている。

     

    この現象をどう理解すべきか。明らかに、農業政策の失敗を意味する。本来であれば、備蓄米は地震など緊急時に備えて置くべきコメである。入札制の備置米放出は、未だ5割強が店頭に並んだだけ。残りは「行方不明」だ。放出の主旨から言えば、認められないことだが、堂々と「隠匿」されている。これは、制度の欠陥である。コメは現在、卸売業者間で投機対象になっている。今後の制度改革で、大きな焦点になろう。

     

    政府は、当面の米価高騰抑制目的で随意契約によって押さえ込みにかかっている。これは、ごく短期の政策である。米価政策が何ら変わっていない以上、「来年はどうなるか」という不安を抱えたままだ。米作は、一毛作で年1回である。25年産米の出荷が始まる9月以降も、高値の状況が変わらなければ、本格的な「米騒動」が起っても不思議はない。驚くことに集荷業者は現在、24年産米よりもさらに高値で買付けている。

     

    日本のコメ市場は、不思議な存在である。供給は原則、国内に限定されている。輸入は、日本農業を破壊するという長年の認識によってタブーなのだ。生産者保護が、全面的に打ち出されている。食糧自給維持が基本である以上、やむを得ない面もあるが、国内流通網だけは完全に「市場ルール」である。供給が、大幅に国内だけに制限されている市場において、流通業者が自由経済前提のビジネスを行っている。投機を奨励しているようなものなのだ。

     

    投機機能は本来、必要な経済行為である。需要と供給が、自由に行われている状況下で、価格安定機能を発揮させるからだ。だが、日本のような歪なコメ市場では、肝心の供給が制限されている。その中で、コメ卸売業者が6次まで存在して投機をしている。日本の消費者は、上乗せされる流通マージン分だけ高い値段のコメを買わされている計算なのだ。消費者から、怒りの声が上がるのは当然である。

     

    今年は40万トン増

    注目の25年産米価格はどうなるか。消費者の関心は、この一点に移っている。コメの高騰を受け、農家は生産意欲を高めている。2025年産米の収穫量見込みは、前年比40万トン増の719万トンとされる。増産幅は、調査を開始した2004年以降で最大である。問題は、夏の天候だ。23年夏のように異常高温の再来となると、暑さに弱い「銘柄品種」は大きな影響を受ける。

     

    2023年の銘柄米上位10位の銘柄と高温耐性に弱い品種は次の通りである。

     銘  柄   作付け割合   主要産地

    コシヒカリ   33.1%    新潟・茨城・栃木

    ヒノヒカリ    7.4%    熊本・大分・鹿児島

    アキタコマチ   6.7%    秋田・茨城・岩手

    ナナツボシ    3.3%    北海道

    ユメピリカ    1.9%    北海道

    キヌヒカリ    1.8%    滋賀・兵庫・京都府

    出所:ニッセイ基礎研究所(2025年4月)

     

    銘柄米上位10位の中で、高温耐性に弱いのが6種類、作付け合計で54.2%も占めている。米どころ新潟県は、コシヒカリの主産地だ。高温耐性の弱い品種が、日本産米の主力であることは深く考えさせられる問題である。今後の異常気温頻発を前提にすれば、品種の変更も考慮されるべきだろう。

     

    25年の夏の気温はどうなるか。日本気象協会は、次のように警告している。全国的に猛暑が予想されるからだ。鍵となるのが、「ラニーニャ現象」で、太平洋熱帯域の海面水温が変化する。ラニーニャ現象が発生すると、冬は寒く、夏は猛暑となる傾向が強い。今年の冬はたびたび強い寒波に襲われた。夏は、いつもより暑くなるという予想である。

     

    この通りになると、前記の銘柄がそのまま25年も作付けされていれば、暑さに弱いだけに、25年産米が前年比40万トン増になるかは不明。減少は不可避だ。

     

    集荷業者のJA(全農)やコメ商社は、25年産米で昨年よりも「高値買付け」を積極的に行っている。米価が、今後も高値で推移すると判断した上での行動だ。

     

    コメの流通網は次のようになっている。

    農家→集荷業者→卸売業者(6次まで)→小売店→消費者

    JAは、集荷業務で全国の4割を占める。かつての米価統制時代は100%であったが、シェアはこれだけ低下した。この低下分が、コメ商社が蚕食したことになる。「コメ・ビジネスが儲かる」という判断である。

     

    集荷業者は、農家への買付けで「概算金」(予約金)を支払いヒモ付けにしている。ただ、概算金を受け取った農家は、必ずしも販売予約先へコメを引き渡していないのが実態だ。高値の買い付け先が現れれば乗換えている。こういう事情だけに、JAも商社も現在の米価高騰に乗って強気の概算金払いを始めている。

     

    コメの最大生産地の新潟県では、JA全農にいがたが2025年産コシヒカリについて6月、農家への「概算金」目標を60キログラムあたり2万6000円(5キログラム2167円)以上とする方針を県内の各JAに示した。24年産当初の概算金から5割も高い水準だ。政府の備蓄米放出後も品薄感が強く、集荷業者間で争奪戦を激化させている。

     

    概算金なんと5割増

    JA全農にいがたが、25年産概算金で前記の通り、前年比5割も高い水準になった。25年産米のさらなる値上がりを予告している。全国25年産米の生産量が、40万トン増で2004年以来の増加とされるが、集荷業者は超強気の値付けをしていることが不思議に思えるのだ。異常気象を想定しているような振舞である。(つづく)

     

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    向うところ敵なしの米国大統領トランプ氏に対し、早くも米国世論が鋭く反応し始めた。米首都ワシントンなど全米各地で5日、トランプ政権の政策に抗議する大規模なデモを実施した。全米50州で約1200のデモが行われたとみられ、カナダとメキシコでも開催が予定されている。

    欧州でも同日、ベルリンやフランクフルト、パリ、ロンドンなどでトランプ氏やDOGEを率いる実業家イーロン・マスク氏に対する抗議活動が行われ、現地在住の米国人らが参加した。ロンドンでは、数百人がトラファルガー広場に集まり、「カナダに手を出すな」、「グリーンランドに手を出すな」、「ウクライナに手を出すな」などと声を上げた。以上は、『ロイター』(4月6日付)が報じた。

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月4日付)は、「米有権者、トランプ氏の権限拡大に制限望む=WSJ調査」と題する記事を掲載した。

    有権者は議会と裁判所がトランプ氏の権限に一定の制限を設けるよう望んでいることが明らかになった。WSJの世論調査は、3月27日から4月1日にかけて、1500人の登録済み有権者を対象に実施された。全サンプルの誤差の範囲はプラスマイナス2.5ポイントとなっている。


    (1)「今回の調査で、有権者の約62%が大統領は議会の承認なしに連邦機関を閉鎖すべきではないと回答した。58%は、裁判所がトランプ氏による措置を制限すると決定した場合、同氏はたとえこれに同意しない場合でも、その決定に従うべきだと答えた。この結果は、トランプ氏が主張する幅広い大統領権限は、憲法が定める三権分立の下で権力の抑制と均衡を損なうと米国民が懸念していることを示唆している。また有権者の55%が、トランプ氏は連邦政府機関の縮小に向けた取り組みで、実業家イーロン・マスク氏に過剰な権限を与えていると回答した」

    この世論調査結果は、4月5日に行われた欧米での「反トランプ」デモの動きと多くの点で一致している。トランプ氏の「やり過ぎ」が、世論の反発を受けている。こうなると、表現は良くないが「ミソもクソも一緒」の扱いになって、トランプ氏に不利な状況をつくっている。トランプ氏が、効を焦りすぎているのだろう。

    トランプ氏は、幅広い大統領令を使っている。これは、米国憲法が定める三権分立の下で権力の抑制と均衡を損なう危険性がある。米国民が懸念してデモ行進を始めている背景である。


    『ロイター』(4月6日付)は、「トランプ氏、前例なき『権力行使』で政敵攻撃 個人的復讐と批判も」と題する記事を掲載した。

    トランプ米大統領は2期目に入って以来、ビジネス界や政界、メディアから同盟国まであらゆる方面で「敵対勢力」と見なす個人や団体に対し、自身の意思に従わせようとさまざまな権力を行使してきた。こうしたやり方をした近代の米大統領は前例がない。

    (2)「トランプ政権は、抗議行動に参加した学生の拘束と強制送還、大学への連邦予算拠出停止、政敵とつながりのある法律事務所の排除、裁判官への脅迫、報道関係者への圧力行使などを進めている。連邦政府のリストラを通じて同氏の意向に従わない可能性がある職員も解雇した。このような措置の中心的手段になったのは大統領令だが、政敵を標的にして大統領令を出す例は今までなかった。トランプ氏は堂々と、訴訟や公然とした脅し、連邦政府の予算配分によって相手を服従させようとしている」

    トランプ氏は、大統領権限を使ってあらゆるところへ指示を出している。これまでの大統領が行わなかった分野へ「越権行為」とみられる指示も多いのだ。今は、大目にみられるにしても、株価が急落しても回復せず、経済が悪化すれば「状況一変」だ。トランプ氏は、批判の矢面に立たされるであろう。


    (3)「ニューヨーク大のピーター・シェーン教授(法学)は、「あらゆる取り組みに共通するのは、MAGA(米国を再び偉大にする)政策課題と自らの権力にとって抵抗源になりそうな全ての勢力を黙らせたいというトランプ氏の欲求だ」と指摘した。トランプ氏の狙いは政治の分野にとどまらず、強力な行政部門を頂点に米国社会の秩序を再構築したいという願望がうかがえる。議会上下両院は与党共和党が支配し、連邦最高裁判事も保守派が多数を占めるだけに、他の大統領に比べてトランプ氏はブレーキをかけられずに権力を行使できる余地が大きい」

    トランプ氏は、権威型政治に魅力を持っていると指摘されている。早くも、憲法で禁じている3期目大統領を画策し始めていることにそれが窺える。周辺が、トランプ氏を「よいしょ」していることはまちがいない。権力行使の恩典に与りたい人たちが多いのだ。

    (4)「トランプ氏はこれまでに、コロンビア大や大手法律事務所、メタやウォルト・ディズニーといった巨大企業などから譲歩を引き出すことに成功している。彼らは、いずれも圧力に耐え忍ぶより政権と和解する道を選び、その代わりにある程度の独立性を放棄し、「悪しき」と評価され得るような前例を作った。トランプ氏の怒りを先んじてかわそうとする動きも広がっている。ゴールドマン・サックスやグーグル、ペプシコを含めた20を超える大手企業・金融機関は、トランプ氏が目の敵にしている多様性プログラムを撤回している。3つの大手法律事務所は、所属弁護士が機密文書や連邦政府の建物へのアクセスを遮断されないように政権側と取引した」

    米国ビジネス界は、哀しいまでに政治権力へなびいている。こういう「こびへつらい」が何時まで続くのか。すべては、経済情勢が左右する。風向きが変われば、蜘蛛の子を散らすように逃げ去るであろう。それが、現実社会である。


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    外国為替市場では、トランプ氏が昨年の大統領選に勝利して以来、投機筋がドルに対して弱気な姿勢に転じた。米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータ(3月18日終了週)によると、ヘッジファンドなど投機筋によるドルショート(ドル売り)が9億3200万ドル(約1390億円)規模に達した。ドルのロングポジション(ドル買い)340億ドル規模に上っていた1月中旬からは劇的な変化だ。トランプ氏の政策や米経済に対する疑問が、ドルの見通しを修正する兆候が浮き彫りになった。

    『ブルームバーグ』(3月22日付)は、「投機筋がドルショートに転じる トランプ氏勝利以来―不透明感が重し」と題する記事を掲載した。

    (1)「アムンディの債券・為替戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は、「トランプトレードに対する見方は完全にひっくり返った」と指摘。「混乱を招くトランプ氏の政策運営が不確実性をもたらしている」とし、トランプ氏の政策が「経済やインフレ、金融政策に与える影響に関して、市場の見方は景気刺激的から景気縮小的へと変化した」と述べた」


    もともと昨年12月中旬時点では、トランプ氏の政策と米金融当局の利下げで2025年後半にドルに下押し圧力がかかる可能性が高いとみていた。だが、この「ドル安転換」予想時期が早まってきた。トランプ関税政策が、ますます不透明になっているからだ。トランプ氏得意の減税政策もしぼんでいる以上、ドル安予想へ早めに舵を切っている。

    ドルは24年に大幅上昇しており、15年以来最大の上げとなった。米大統領選挙でのトランプ氏勝利と、好調な経済データを受け、トレーダーらが来年の米利下げ回数予測を下方修正したことが要因だ。専門家は、ドルの強さについて「胃が痛くなる思いだ」と述べ、「長期的に持続不可能な水準まで相場が押し上げられている」と指摘していた。こういう、異常なドル高相場であった以上、「過熱」部分の剥落が起こったところで驚くには当るまい。


    (2)「ウォール街では、2025年のドル相場について、少なくとも上期はドル高になるとの予想が多かった。トランプ大統領の政策見通しに加え、米利下げ回数が限定的になるとの見方が背景にあった。だが、足元では米経済の先行きに対する不安から、2026年1月までに3回の利下げが行われるとの観測が強まっている」

    トランプ氏は、関税引上げに伴い利下げするように、とFRB(米連邦準備制度理事会)へ希望を出し始めているが、そういう甘い期待を持てるはずがない。関税引き上げが、国内物価を押上げるリスクを高めるからだ。

    ドル強気派の多くは昨年末、トランプ氏の関税引上げがドルを支えるとの見方を強め。ドル買いのポジションを積み上げてきた背景がある。現実には、逆の事が起こっている以上、「ドル売り」ポジションへ乗換えるのは当然のことである。投機筋は、見方が間違っていたと悟れば後は、「脱兎」のごとく走り出すのが習性である。


    ブルームバーグ・ドル・スポット指数の大半は、昨年11月初めの選挙日直前とそれ以降の上げとされている。トランプ氏の関税と減税がインフレをあおり、米金融当局の利下げ方針を向こう数カ月にわたり複雑化させるとの見方がドル高を後押ししたのだ。

    トランプ政権下のドル相場の動向を考える場合、過去の値動きが参考になる。9年前のトランプ氏初当選直後に急上昇した後、17年には、米経済の勢いが失われる一方で欧州の成長が加速したため、ブルームバーグ・ドル指数は年間で過去最大の下落を記録した。ウォール街は、昨年末の時点で25年に劇的なドル安にならないと予想していた。だが、現在のユーロ相場は上昇しており、どうやら17年の再現になる可能性を否定できなくなっている。ユーロは、ドイツが財政拡大政策へ切替えたことでユーロ高・ドル安場面となっている。


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    ドイツ連邦議会(下院)は18日、防衛およびインフラ支出に向け何千億ユーロもの借り入れを可能にする法案を採決した。これにより、財政拡大政策への大転換が始まる。ドイツが欧州防衛の要になることを確実にするともに、インフラ投資によって国内経済立直しへ向けてテコ入れする。

    ドイツは、過剰貯蓄国であるにもかかわらず、憲法で財政赤字比率をGDPの0.35%に規制してきた。これが、ドイツ経済の活力を奪うという矛盾に陥っていた。それが、ようやく改善されることになった。ドイツが、その国力に応じた経済運営と欧州防衛の核として立ち上がることは、ロシアへの牽制として重要な一歩になる。もはや、欧州は眠れる集団でなくなる。


    『ブルームバーグ』(3月18日付)は、「ドイツは欧州防衛強化の基盤築いているー次期首相有力のメルツ氏演説」と題する記事を掲載した。

    ドイツの次期首相就任が確実視されるメルツ氏は18日、ドイツが軍事支出を増やすために借り入れ制限を解除する動きは、英国やノルウェーなどの欧州連合(EU)非加盟国を含む広範な欧州防衛共同体創設に向けた「第一歩」と捉えるべきだと述べた。

    (1)「中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)陣営を率いるメルツ氏は、18日に予定されている採決を前に、拡張的な財政政策への転換を意味する画期的な法案を支持するよう議員らに訴えた。メルツ氏のCDU・CSU陣営と社会民主党(SPD)が提出し緑の党が支持するこの法案は、21日に連邦参議院(上院)で最終承認を得る前に、連邦議会(下院)の3分の2の賛成多数で可決される必要がある」

    次期首相が有力視されるメルツ氏が率いる保守系会派(CDU)と社会民主党(SPD)は先週、緑の党との間で合意。財政拡大法案を連邦議会で可決させるのに必要な3分の2の賛成票確保のめどが立った。ドイツの16の州が代表を出す連邦参議院(上院)が、21日採決し承認すれば、シュタインマイヤー大統領が署名して法律が成立する。


    メルツ氏が、率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)陣営と、SPDは次期政権樹立に向けた協議を行っている。それに先立ち、大幅な歳出拡大を可能にしようと取り組んできた。国防費の増大によってよって、トランプ氏の米大統領復帰に端を発する地政学的な激変への対応を急ぐ。

    防衛および安全保障関連の支出として、GDPの1%、つまり約450億ユーロ(約7兆4000億円)を超える額が、ドイツ憲法に盛り込まれた借り入れ制限、いわゆる「債務ブレーキ」から除外される。実質的に、GDPの1%を超える支出に上限がなくなることを意味する。同時に、予算外の特別なインフラ基金が憲法に組み込まれ、今後12年間に5000億ユーロを上限として借り入れを行うことが可能になる。さらに、16の州にはGDPの0.35%、160億ユーロ相当までの借り入れの余地が与えられる。これで、地方はインフラ投資が可能になる。

    超右翼政党出現の裏には、厳しい財政規律で地方行政に足かせがはめられたことも一因である。これが、財政的に緩和されればドイツの「右翼化」は是正されるであろう。


    (2)「メルツ氏は、ドイツに自由、平和、繁栄をもたらした政治体制が脅威にさらされており、平和の配当は「とっくに底をついている」ため、抜本的な対策が緊急に必要だと論じた。「今日のわれわれの決定は、今後数年、数十年にわたるわれわれの防衛能力を決定する」と語った。CDU・CSU、SPD、緑の党の議員を合わせると520議席となり、3分の2の賛成に必要な489議席を31議席上回るため法案は可決される見込み。投票結果は現地時間午後3時頃には判明する見通し」

    CDU・CSU陣営とSPDは連立協議を急ピッチで進め、遅くとも復活祭(4月20日)までには合意に達する見通しがついた。CDU・CSUが2月の選挙で勝利して以来、暫定内閣として政権運営を行っているSPDのショルツ氏から、メルツ氏が首相の座を引き継ぐために、連邦議会の承認を確保する道筋が整う。ドイツは、新たな時代を迎える。




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