勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: EU経済ニュース時報

    あじさいのたまご
       

    ロシアは、ウクライナ侵攻で停戦気配をみせないどころか、さらに欧州へ戦線拡大を危惧される事態を迎えている。欧州の盟主であるドイツは、ロシア侵攻への備えとして、26年から18歳男子すべての身体検査を行うことになった。ドイツ連邦軍は当面、現在の18万2000人から2035年までに26万人へ増やす必要があるしている。ドイツは、2011年に徴兵制を停止したが、志願兵への兵役制度を復活させることになった。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月13日付)は、「ドイツ連立与党、新たな兵役制度で決着 18歳男性全員に身体検査」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツの連立与党間で合意された軍事力増強政策に基づき、今後18歳の全ドイツ人男性は兵役適性を確認するための身体検査が義務付けられることになる。

     

    (1)「欧州連合(EU)最大の経済国であるドイツは、ロシアの侵略に対する北大西洋条約機構(NATO)の懸念を受け、軍を拡大しようとしている。新しい形の兵役制度については、当初は志願者のみを募集する。新たな兵役制度の詳細をめぐる数カ月の政治的駆け引きの末、ピストリウス独国防相は募集活動の進捗状況について6ヶ月ごとに独連邦議会(下院)に報告することに同意した。もし志願兵を十分に確保できなかった場合、議員らは強制兵役の対象者を無作為に抽選で選ぶ案など、他の選択肢の検討を求められることになる」

     

    当初は志願制であるが、募集が定数に満たない場合、徴兵となる。

     

    (2)「合意を発表したピストリウス氏は、欧州諸国がドイツに注目しているのは、今後数年にわたってドイツが軍の装備刷新に数千億ユーロを投じるだけでなく、兵員の拡充に取り組んでいるからだと強調した。「これらすべてが成功すると強く確信している」と述べた。メルツ独首相は5月に就任した際、ドイツ軍を欧州で最も強力な通常戦力にすることを約束していた。軍当局は、ドイツ連邦軍の規模を現在の18万2000人から2035年までに26万人に増やす必要があると述べている。また、危機時に招集可能な予備役も6万人から20万人へ拡大する必要がある」

     

    現在の定員18万2000人が、2035年までに26万人に増える。予備役も6万人から20万人へ拡大する必要があるという。

     

    (3)「ドイツは11年に徴兵制を停止した。メルツ氏率いる中道右派キリスト教民主同盟(CDU)と連立相手の中道左派ドイツ社会民主党(SPD)が結んだ連立協定は、新たな志願制の兵役制度の導入を約束していた。しかし、新たな兵役制度の法制化は難航してきた。CDU内には、欧州の緊迫した安全保障状況を考えると、志願制だけでは不十分だと警告する声が多い。一方、平和主義が根強いSPDは徴兵制の導入を求める声に抵抗してきた。両党は10月に合意に達したかに見えたが、ピストリウス氏が合意内容のいくつかの要素に不満を示したため合意は頓挫していた

     

    連立政権のCDUとSPDでは、徴兵制への意見が食い違っている。CDUは、徴兵制やむなしであるが、SPDが徴兵制へ抵抗してきた。それがようやく合意した。

     

    (4)「11月12日夜に取りまとめられた新たな合意によれば、26年1月から18歳全員に対して、身体・精神の健康状態や従軍の意欲および能力についての詳細を尋ねる質問票が送付されることになる。男性は、法律により回答が義務付けられる。女性は任意となる。これは以前の兵役制度が男性のみに適用されていた名残である。性別に関する規定を撤廃するには憲法改正が必要で、連邦議会で3分の2の賛成が必要となるが、現在の連立政権ではその確保は困難だろう。質問票に回答した後、若年男性全員は、たとえ従軍する意思がなくても身体検査を受ける必要がある」

     

    26年1月から18歳全員の男女に対して、身体・精神の健康状態や従軍の意欲および能力についての詳細を尋ねる質問票が送付される。男性は回答を義務づけるが、女性は任意となる。女性の徴兵は憲法改正が必要。若年男性全員は、身体検査を受ける義務がある。

     

    (5)「ピストリウス氏は、能力がある若者全員の招集が必要となりうる危機に備えるために、こうした検査が重要だと強調した。同氏は13日、検査によりドイツの若い男性の「全体像を把握」することができ、これは「防衛能力を評価する上で不可欠だ」と述べた。ドイツ軍は、魅力的な給与や運転免許取得費用を安くする補助などの福利厚生で新兵を勧誘しようとしている」

     

    ドイツ軍は、魅力的な給与や運転免許取得費用を安くするなどの福利厚生で新兵を勧誘しようとしている。

     

     

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    EU(欧州連合)が、TPP(環太平洋連携協定)へ接近する構えをみせている。11月29日に予定される、豪州でのTPP参加国閣僚級会合に、EUの通産相であるマロシュ・シェフチョビッチ欧州委員会上級副委員長が出席することになった。EUが、米中の脅威を念頭にTPP加盟国と通商関係を強化する狙いとされる。

     

    EUのシェフチョビッチ氏は7月会見で「新市場を開拓し、ルールに基づく貿易を促進する」と述べて、TPPとの連携への関心を示していた。まずは、TPPとEUの対話の枠組みを設けて、デジタル貿易のルールづくりなどに共同で取り組む案である。各国が、米国の関税政策に翻弄されるなか、「ルールに基づく自由貿易の機運を維持する」(日本の交渉関係者)狙いが双方にあると指摘されている。

     

    『東洋経済オンライン』(10月27日付)は、「TPP加盟国と連携に舵を切るEUの勝算と落とし穴」と題する記事を掲載した。筆者は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員、土田 陽介 氏である。

     

    アメリカのトランプ大統領は、いわゆるGATT/WTO体制の下で構築された自由貿易の原則を反故にし、独善的な通商政策に邁進する。一方の中国は、重要鉱物、特に希土類元素(レアアース)の輸出制限をテコに、各国に圧力をかける。このような中で、EUは第三軸の形成を目指し、TPP加盟国に接近しているわけである。

     

    (1)「EUのTPPへの接近は、インド太平洋戦略の一環として捉えるべき現象でもある。EUは中国に代わる市場として、そして中国に代わる原材料の調達先としてインドに注目している。その延長線上に、ASEAN(東南アジア諸国連合)や太平洋諸国を位置付ける。そしてEUは、インドとの自由貿易協定(FTA)交渉を加速し、年内の交渉の妥結を目指している」

     

    EUにとってTPPは、連携できる最適の相手である。EUが、対米関係で多くの障害を抱えている以上、TPPがその代替役として浮上してきた。

     

    (2)「世界各国が米中から圧力を受けている。ゆえに「敵の敵は味方」の理屈から、新興国が世界3位の経済圏であるEUと通商関係を深めることは、ある意味で現実的な選択だ。ただし同時に、ほとんどの新興国が世界1位の経済力を持つアメリカと2位の中国との間で巨額の貿易を行っている。EUだけでは米中に代わる存在にはなれない事実がある。ここで問われるのは、EUの本気度にほかならない。具体的には、おのれの価値観を重視する外交姿勢を抑制し、実利的な新興国と渡り合えるかどうかが、TPP加盟、ひいてはASEANや太平洋諸国全般との通商関係の深化を図るうえでのカギを握る。自らが普遍的と定義する価値観の共有を相手に強いる外交姿勢を堅持したままなら事は運ばない」

     

    EUは、価値観が一致している集団である。この価値観は、対外関係でも生かされるのは当然であって、非難の対象にはならない。ただ、EUの原理原則重視の度合いは、どこまで緩めて交渉できるかという現実対応力が求められている。

     

    (3)「グローバルなルールメーカーを志向するEUは、自らが望ましいと定めた方向に各国を誘導しようとする傾向が非常に強い。端的な事例としては、脱炭素化に関する誘導がある。脱炭素化を重視するEUは各国に石炭火力発電の廃絶を訴え、電気自動車(EV)の普及を世界各国に呼び掛けた。特に前者に関しては、新興国の強い反発を招いた。それに、EUは法の支配や基本的人権の順守、民主主義を普遍的な価値観と定めている。言い換えると、これらが順守されない国々に対して、その改善を求めて圧力をかけたり、通商関係そのものを打ちきったりする。EUがそうした姿勢を前面に出すなら結局、EUは孤立するだろう」

     

    EUが、理想を高く掲げていることは、決して非難されるべきことでない。その意味では、TPPが、EUと交渉できる基本的資格を共有している以上、交渉は可能である。

     

    (4)「事実、EUにはかつて、ASEANと地域間FTAを締結しようとして、失敗した過去がある。両者は2007年5月に地域間FTAの交渉を開始したが、2009年12月にEUとASEAN加盟国の二者間のFTAを模索する方針に切り替えた。EUがミャンマーの人権問題に関する取り扱いを問題視したことで、ASEANとの交渉が決裂したためだ。この間にEUとのFTAを発効できたASEAN加盟国は、シンガポールとベトナムだけである。

     

    EUとASEANでは、経済発展レベルが違い過ぎる。ASEANとのFTA交渉が難しかったのは当然であろう。

     

    (5)「TPP加盟国は、一般的な自由貿易の原則を重視するからこそ、相互に関税を撤廃・軽減する。しかし、EUが求める自由貿易の在り方は、EUにとって有利なかたちでの自由貿易である。例えば脱炭素化を例にとれば、電気自動車(EV)の普及とガソリン車やディーゼル車の削減というルールを定め、自らに有利な方向にゲームを導こうとする」

     

    これは、双方の話合いで調整できるであろう。EUの通産相であるマロシュ・シェフチョビッチ欧州委員会上級副委員長が、TPP会合へ出席することは、相互理解を深める機会となる。日本が、橋渡してEUとTTPの関係密度を高めることが期待されよう。

     

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    経営的に余裕を持つトヨタ自動車は、世界的のEVメーカーが萎縮している時期を捉え、欧州で初のEV(電気自動車)の生産へ乗り出す。チェコで年産10万台規模、28年からの生産計画だ。

     

    トランプ米大統領が、輸入自動車に15%の追加関税を課すなど、世界経済がブロック化に向かう中、グローバル企業が供給網の分散に動き出す。トヨタは現在、世界で5車種の自社開発EVを販売している。これまでは、日本と中国でのみ生産していたが、生産拠点を5カ国に拡充することで為替や関税リスクを回避する。輸送のリードタイムが短くなるため、より早く顧客に車両を届けられるようにもなる。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月29日付)は、「トヨタがチェコでEV生産、欧州初 2028年にも年10万台規模」と題する記事を掲載した。

     

    トヨタ自動車が、2028年にも欧州で電気自動車(EV)の生産を始めることが29日、わかった。チェコの子会社で年間10万台規模を生産する見込みで、欧州では初の現地生産となる。環境規制が進む欧州では新車販売の15%程度をEVが占めている。足元ではEV需要が低迷する中でも将来の普及を見据えて生産体制を拡充する構えだ。

     

    (1)「多目的スポーツ車(SUV)の生産を始めるとみられる。トヨタは、26年までに欧州で新型車を含めEV14車種を投入する方針を明らかにしている。新しく投入する車種にはSUV「C-HR+(プラス)」やトヨタ初の量産EVの新型「bZ4X」などが含まれる」

     

    C-HR+は、最大で約600kmの航続距離とされる。bZ4Xについては、最大航続距離が約567kmである。トヨタは、性能面で競争力を強化するため、充電効率やバッテリーのプレコンディショニング(急速充電を最適化する技術)を導入している。また、デザインや信頼性、長年の技術への信頼も競争力の一部と捉えている。欧州市場は、航続距離だけでなく、充電時間や利便性、ブランド力が選ばれる要素とされている。

     

    (2)「足下のEVへ需要は、伸び悩んでいる。24年の欧州域内主要31カ国のEV販売は23年比で1%減の199万台で、新車販売に占めるEV比率は23年の15.%から15.4%に下がった。もっとも、2%を下回る日本に比べると一定程度普及している。欧州連合(EU)では、35年に合成燃料を除くエンジン車の新車販売を原則禁止する方針を掲げている。再生可能エネルギー由来の合成燃料を利用したエンジン車は継続販売可能なものの、こうした長期的な環境対応にも備える観点からも現地生産を進めることが最適と判断したようだ」

     

    24年の欧州EV需要は、約200万台である。トヨタは、ここへ年産10万台で参入する。浸透している「トヨタ・ブランド」をバックに、「EVトヨタ」を売り込む。

     

    (3)「トヨタは、欧州で35年に二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を達成する目標を掲げている。トヨタのEV販売は全体でも2%弱にとどまっており、これから生産・販売両面ともに拡充する必要がある」

     

    トヨタは、EVのほかに商用での水素自動車や水素電池の普及に取組んでいる。こうして、トヨタの水素戦略は欧州で大きな注目を浴びています。特に商用車分野への普及を加速させる取り組みが際立っている。トヨタは、水素充填ステーションのインフラ拡大に注力しており、フランスのHRSやENGIEと協力して欧州全域に水素ステーションネットワークを展開する契約を締結した。

     

    大型商用車用の次世代燃料電池システムも開発中で、短時間の水素充填で長距離走行が可能になる技術を搭載している。環境負荷を削減しつつ、商用モビリティの持続可能性を実現する戦略だ。こういうトヨタの総合的戦略は、欧州で高い評価となって結実している。EV販売でも、この企業イメージがプラスとなろう。

     

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    中国は、米国との関税戦争に直面して、欧州へ秋波を送っている。だが、EUは中国とのハイレベル経済・貿易対話に背を向けており、両者間にある深い溝を浮き彫りにしている。EU高官は、首脳会議で実行に移せる合意ができない限り、EU側が経済対話を開くことはない、と語っているほど。

     

    一方の中国は、18日のG7首脳会議の議長総括で、中国による「市場歪曲、過剰生産能力の抑制」求めるとの談話に反発している。議長総括によると、G7首脳は、貿易・産業政策に関する懸念に加え、「中国による東シナ海・南シナ海を不安定化させる活動に対する、進行中の深刻な懸念や、台湾海峡の平和と安定の維持の重要性」について議論した。中国にはアゲインストの風が吹いている。

     

    フィナンシャル・タイムズ」(6月17日付)は、「EU、中国との経済対話見送りか 貿易分野で成果見込めず」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)が7月の首脳会議を前に、中国との重要な経済会議の開催を拒否している。事情に詳しい4人の関係者によると、両者間の多くの貿易交渉に進展がないことが理由という。

     

    (1)「経済対話はEU・中国首脳会議への布石となる場合が多い。関係者によると、2025年の首脳会議は7月24〜25日に中国・北京で開催される見通しで、今回は両者の外交関係樹立から50周年の節目にあたるだけに外交上特別な意味を持つ。関係者の一人は「中国は(経済対話を)望んでいるが、すべての分野の交渉において進展が見られていない」と明かす。匿名を条件に取材に応じたあるEU高官は、首脳会議で実行に移せる合意ができない限りEU側が経済対話を開くことはない、と語った」

     

    今年は、EU・中国の外交関係樹立50周年にあたる。EU側は、すっかり熱が冷めている。中国が約束したことを守らないからだ。米中間のいざこざの原因も、中国の不履行にある。

     

    (2)「EUと中国は、通商面でますます多くの摩擦を抱えている。EUは24年、中国の電気自動車(EV)業界が多額の政府補助金を受けているとして、同国製EVに追加関税を導入した。これを受け、中国側はEU産ブランデーに反ダンピング(不当廉売)関税を課し、豚肉と一部の乳製品についても反補助金調査に乗り出した。これにより関税がさらに引き上げられる可能性もある。EUはここ数週間で、中国製の医療機器をほとんどの公共調達契約から排除し、建築用の中国産硬質合板に対する反ダンピング関税を導入した」

     

    中国は、米国やEUとの貿易面で約束しても守らないというゴタゴタを起こしている。日本は、中国とこういう問題が起らず助かっている。貿易構造が違うからだ。

     

    (3)「関係者によると、米国が4月に打ち出した関税政策への報復として中国が導入したレアアース(希土類)の輸出規制が、緊張を一段と高めている。中国は、電子機器やEVのモーター、風力タービン、防衛用途に使われるさまざまなレアアースの生産・加工をほぼ独占している。中国当局の輸出許可手続きが遅れているため、欧州の一部の生産業者は操業停止に追い込まれる懸念を表明している」

     

    中国は、レアアースの輸出規制を武器にしている。EUは、こういう「小賢しい」中国のやり方を嫌っているのだ。27年から、日本がレアアース輸出国に名を連ねる。南鳥島の深海から、中国内陸部のレアアースよりも20倍もの高品位「レアアース泥」の採掘が始まるからだ。中国の「天下」はそれまでだ。

     

    (4)「経済対話が見送られれば、首脳会議で具体的な成果が得られるとの期待は薄れるだろう。ただ、経済対話の開催は不定期であり、必ずしも首脳会議に先行するわけではないと、別のEU高官が匿名を条件に指摘した。首脳会議は50周年の節目に北京で開催されるにもかかわらず、中国側からは習近平(シー・ジンピン)国家主席ではなく、ナンバー2の李強(リー・チャン)首相が出席するとみられている。EU側はこれを冷遇と受け止めている」

     

    中国の欠陥は、すぐに「威張り散らす」ことだ。劣等感の裏返しである。EUとは、肌が合わないであろう。中国は、20年前の自国の姿を思い起こして、謙虚に振る舞うべきである。さすが、日本に対してはそういう態度を取らないようである。日本が、ODA(政府間援助)で中国を支援した関係であるからだ。

     

    (5)「23年12月に開催された前回のEU・中国首脳会議の前には、EUの執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)と中国の何立峰(ハァ・リーファン)副首相との協議が開かれた。ドムブロフスキス氏は協議の場で、特に農産物輸出や医療機器、化粧品、乳児用粉ミルクについて、欧州企業の中国市場へのアクセスに問題があると指摘した」

     

    中国は、自国の欠陥をすぐに認めないという悪弊がある。EUには、腹立たしいであろう。

     

    (6)「欧州委の通商・経済安全保障総局で副局長を務め、中国問題を担当するマリア・マーティンプラット氏によると、これらの問題のほとんどは未解決だ。同氏は5日にベルギー・ブリュッセルで開いた会議で「今から首脳会議までの間にやるべき作業が山積している」と語った。また、作業の大部分を占めるのは「(中国側と)長らく議論を重ねてきた問題」だと付け加えた。「我々が議論しているのは、(中国が)横断的な法規制の一部を海外勢に不利な形で運用するやり方についてだ。データ安全法しかり、反スパイ法もまたしかりだ」と指摘」

     

    EUと中国では、価値観が180度ことなる。民主主義国と権威主義国とでは、スムースな交渉が進まないのであろう。日本は、中国とはこういういざこざが起らず助かっている。余り関係を深めたくないケースの国家なのだろう。

     

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    今年は40万トン増

    概算金なんと5割増

    巧妙なEU農業政策

    輸出視野に大転換へ

     

    令和の米騒動は、政府の備蓄米放出で一時的に米価高騰を抑えこんだ形になった。一方、本命とも言うべき銘柄米は、高値に張り付いたままだ。現在のコメ小売市場は、5キロ2000円台の随意契約米、3000円台の備蓄米を使ったブレンド米、それに銘柄米の4000円台と3通りの価格帯が存在する。異常事態に陥っている。

     

    この現象をどう理解すべきか。明らかに、農業政策の失敗を意味する。本来であれば、備蓄米は地震など緊急時に備えて置くべきコメである。入札制の備置米放出は、未だ5割強が店頭に並んだだけ。残りは「行方不明」だ。放出の主旨から言えば、認められないことだが、堂々と「隠匿」されている。これは、制度の欠陥である。コメは現在、卸売業者間で投機対象になっている。今後の制度改革で、大きな焦点になろう。

     

    政府は、当面の米価高騰抑制目的で随意契約によって押さえ込みにかかっている。これは、ごく短期の政策である。米価政策が何ら変わっていない以上、「来年はどうなるか」という不安を抱えたままだ。米作は、一毛作で年1回である。25年産米の出荷が始まる9月以降も、高値の状況が変わらなければ、本格的な「米騒動」が起っても不思議はない。驚くことに集荷業者は現在、24年産米よりもさらに高値で買付けている。

     

    日本のコメ市場は、不思議な存在である。供給は原則、国内に限定されている。輸入は、日本農業を破壊するという長年の認識によってタブーなのだ。生産者保護が、全面的に打ち出されている。食糧自給維持が基本である以上、やむを得ない面もあるが、国内流通網だけは完全に「市場ルール」である。供給が、大幅に国内だけに制限されている市場において、流通業者が自由経済前提のビジネスを行っている。投機を奨励しているようなものなのだ。

     

    投機機能は本来、必要な経済行為である。需要と供給が、自由に行われている状況下で、価格安定機能を発揮させるからだ。だが、日本のような歪なコメ市場では、肝心の供給が制限されている。その中で、コメ卸売業者が6次まで存在して投機をしている。日本の消費者は、上乗せされる流通マージン分だけ高い値段のコメを買わされている計算なのだ。消費者から、怒りの声が上がるのは当然である。

     

    今年は40万トン増

    注目の25年産米価格はどうなるか。消費者の関心は、この一点に移っている。コメの高騰を受け、農家は生産意欲を高めている。2025年産米の収穫量見込みは、前年比40万トン増の719万トンとされる。増産幅は、調査を開始した2004年以降で最大である。問題は、夏の天候だ。23年夏のように異常高温の再来となると、暑さに弱い「銘柄品種」は大きな影響を受ける。

     

    2023年の銘柄米上位10位の銘柄と高温耐性に弱い品種は次の通りである。

     銘  柄   作付け割合   主要産地

    コシヒカリ   33.1%    新潟・茨城・栃木

    ヒノヒカリ    7.4%    熊本・大分・鹿児島

    アキタコマチ   6.7%    秋田・茨城・岩手

    ナナツボシ    3.3%    北海道

    ユメピリカ    1.9%    北海道

    キヌヒカリ    1.8%    滋賀・兵庫・京都府

    出所:ニッセイ基礎研究所(2025年4月)

     

    銘柄米上位10位の中で、高温耐性に弱いのが6種類、作付け合計で54.2%も占めている。米どころ新潟県は、コシヒカリの主産地だ。高温耐性の弱い品種が、日本産米の主力であることは深く考えさせられる問題である。今後の異常気温頻発を前提にすれば、品種の変更も考慮されるべきだろう。

     

    25年の夏の気温はどうなるか。日本気象協会は、次のように警告している。全国的に猛暑が予想されるからだ。鍵となるのが、「ラニーニャ現象」で、太平洋熱帯域の海面水温が変化する。ラニーニャ現象が発生すると、冬は寒く、夏は猛暑となる傾向が強い。今年の冬はたびたび強い寒波に襲われた。夏は、いつもより暑くなるという予想である。

     

    この通りになると、前記の銘柄がそのまま25年も作付けされていれば、暑さに弱いだけに、25年産米が前年比40万トン増になるかは不明。減少は不可避だ。

     

    集荷業者のJA(全農)やコメ商社は、25年産米で昨年よりも「高値買付け」を積極的に行っている。米価が、今後も高値で推移すると判断した上での行動だ。

     

    コメの流通網は次のようになっている。

    農家→集荷業者→卸売業者(6次まで)→小売店→消費者

    JAは、集荷業務で全国の4割を占める。かつての米価統制時代は100%であったが、シェアはこれだけ低下した。この低下分が、コメ商社が蚕食したことになる。「コメ・ビジネスが儲かる」という判断である。

     

    集荷業者は、農家への買付けで「概算金」(予約金)を支払いヒモ付けにしている。ただ、概算金を受け取った農家は、必ずしも販売予約先へコメを引き渡していないのが実態だ。高値の買い付け先が現れれば乗換えている。こういう事情だけに、JAも商社も現在の米価高騰に乗って強気の概算金払いを始めている。

     

    コメの最大生産地の新潟県では、JA全農にいがたが2025年産コシヒカリについて6月、農家への「概算金」目標を60キログラムあたり2万6000円(5キログラム2167円)以上とする方針を県内の各JAに示した。24年産当初の概算金から5割も高い水準だ。政府の備蓄米放出後も品薄感が強く、集荷業者間で争奪戦を激化させている。

     

    概算金なんと5割増

    JA全農にいがたが、25年産概算金で前記の通り、前年比5割も高い水準になった。25年産米のさらなる値上がりを予告している。全国25年産米の生産量が、40万トン増で2004年以来の増加とされるが、集荷業者は超強気の値付けをしていることが不思議に思えるのだ。異常気象を想定しているような振舞である。(つづく)

     

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