EU(欧州連合)は、EU圏企業が中国へ進出していることから、中国の対EU輸出や企業進出に米国ほどの「強硬さ」をみせないできた。だが、中国のソーラーパネルがEU市場を完全に「食い荒らす」事態に直面して、EUの対中姿勢は強硬姿勢へ変わっている。こうしたEUの変化の実態を吟味しないで、EUは中国へ融和的であろうという論調もまだみられる。
『中央日報』(6月6日付)は、「関税で中国を手懐けられるだろうか」と題するコラムを掲載した。筆者は、ルイーズ・ルー/エコノミスト(オックスフォード・エコノミクス)である。
米国の大統領選挙を背景に、関税をめぐる米中の緊張が高まっている。関税リスクが米中ニュースのヘッドラインを再び飾り始めた。最近、バイデン大統領が中国の電気自動車、半導体、太陽光、バッテリーに追加関税を課した。トランプ前大統領が2018年に対中関税を重くしてから約6年ぶりだ。
(1)「多くの分析家は、今回の関税が米国と中国のインフレと国内総生産(GDP)、そして両国のマクロ政策に及ぼす影響はわずかだろうと見る。電気自動車の場合、過去に米国が中国製電気自動車に課した関税がすでにある程度影響を及ぼしたということだ。昨年の対米バッテリー電気自動車輸出は中国が約4億ドル、欧州が約75億ドルに達した。バイデン政権がトランプ時代の関税を撤回しないで追加関税を課すことにした決定は、バイデン大統領の国内産業政策に潜在的な変化があることを示唆する」
経済安全保障という概念が、伝統的な自由貿易論の論理を押しのけてしまった。もはや、保護貿易による非効率性を議論する向きも少ない。中国やロシアの「好戦的」動きが、この裏には存在する。先ずは、自国の安全保障確立が先行している。「準戦時体制」に切り替わったのだ。
(2)「経済専門家らには、両経済大国間の地政学的環境がますます危険になっているというシグナルと読み取られる。こうしたニューノーマルの状況で国家安全保障と貿易の紛争が続けば双方ともに間欠的な貿易制限措置により政策誤判断の危険性を高めるだろう。米中の力学関係変化の交差点に置かれた多国籍企業は供給網回復力にさらに集中する必要がある。台湾、人権、サイバーセキュリティに至るまで、「低確率高衝撃」の地政学的リスクがある事件が増加するためだ」
「低確率高衝撃」とは、実際に起こる確率は低くても、起こった場合の衝撃が極めて大きいことだ。中国の台湾侵攻は、この例であろう。
(3)「北京の政策計算法が、10年間で非常に変わったことに注目しなければならない。中国の輸出依存度は2006年のGDPの36%から現在は21%と構造的に減少した。また、中国が重点を置いている「代替困難な新産業製品」は、指導者に輸出競争力回復に対する追加的な自信を提供している。その結果、軍事等級装備や半導体部品の場合のように、特定核心技術分野にはさらに排他的な「スモールヤード・ハイフェンス」式の目標接近方式がさらに多く登場するだろう。また、第三国を通じた迂回貿易が強化され、米中貿易関係はさらに重商主義的に変わりかねない」
「スモールヤード・ハイフェンス」とは、限定された先端技術を厳重に管理する取り組みを示し、「高い柵で囲われた小さな庭」を指している。互いに、相手へ打撃を与えて経済安全保障の実を挙げようという狙いだ。「準戦時体制」と言ってもよい。こういう状態で、自由貿易など不可能になった。
(4)「欧州の自動車産業のリーダーは、すでに中国製電気自動車に対する追加関税の効果に対しては懐疑的だ。欧州の当局者が「チャイナショック」を避ける方法がある。彼らはバッテリーや鉄鋼など「戦略部門」に分類される特定の中国製品群に標的化された関税を適用し、これに対し太陽光パネルや光電池の場合、中国への依存度が高いので関税を課さない。欧州はこの方法で中国企業が米国より欧州をより魅力的な生産基地と判断するようにさせられるはずだ」
ルーマニア政府が、実施した太陽光発電所の建設プロジェクトの競争入札から、応札していた中国企業2社が撤退したことがわかった。EUの政策執行機関であるEU委員会が、これらの中国企業に対して不公正な補助金の有無に関する調査を進めていたことが影響したとみられる。
EU委員会は最近、補助金調査で中国企業を狙い撃ちにしている。2月16日に中国の鉄道車両メーカー、中国中車青島四方機車車両(中車四方)に対して調査を開始したのを皮切りに、4月9日には中国製の風力発電装置への調査にも着手した。そのうち中車四方は、調査対象となったブルガリア政府の鉄道車両調達の入札から早々と撤退している。中国企業は、中国政府からの補助金を支給されているので、その実態を暴かれたくなかったのであろう。「臭い物には蓋をする」行動にみえるのだ。





