勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

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    ロシアは、石油収入が潤沢だったころ、あらゆる社会問題を「金で解決できる」と夢想した時期もあった。その延長が、ウクライナ侵攻である。今や、財政状況はひっ迫してキリキリ舞い。今年1~8月のエネルギー収益は、2割減と大きな落ち込みだ。今年のGDPは、1%台へ落込む見込みである。ドロ沼の戦争をいつまで続けるのか。限界が近くなっている。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(9月7日付)は、「苦境深まるロシア経済 プーチン氏に厳しい決断迫る」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領は、8月末から9月初めにかけて中国を訪れ、外交成果を誇示した。長く棚上げされていた中ロ間のガス供給パイプライン建設で合意文書に署名した。しかし、国内に目を向ければ、戦時経済には警戒信号がともっている。ウクライナ侵略当初、ロシア経済は予想を上回る強さを示した。原油・ガス価格の安定と軍事支出の拡大が、賃金と消費需要を押し上げたのだ。今は、軍事費の膨張、景気の減速、ルーブル高、原油安が重なり、厳しい選択を迫られている。

     

    (1)「ロシアの中央銀行が実施する定例調査に回答したアナリストらは、25年通年の国内総生産(GDP)成長率は前年の4.%から1.%に減速し、今後3年間にわたり2%を超えることはないとの見通しを示した。同中銀は最悪の場合、ロシアは深刻な景気後退に陥る可能性があると警告している。侵略開始から3年余が過ぎても、ロシアが戦時経済を解こうとする兆しはない。エコノミストや元官僚の間では、ロシア経済の限界が鮮明になっており、(中国との)新たな貿易協定だけでは行き詰まりを解消できないとの認識が広がっている。石油・ガス収益は7月に四半期ごとの支払いで一時的に増えたものの、基調は低迷している。通年の財政赤字は当初予想を大きく上回る見通しだ」

     

    25年GDP成長率は、1.4%へ低下する。24年が4.3%だから、3分の1への急減速である。容易ならざる事態だ。エコノミストや元官僚の間では、ロシア経済の限界が鮮明になっているとみる。

     

    (2)「ロシア政府は、9月半ばをめどに26年度連邦予算案を編成中だが、財政赤字が重荷になっている。プーチン氏によると、25年前半の財政赤字は4.9兆ルーブル(約8兆8000億円)に達し、GDP比2.%と当初目標の0.%を大きく上回った。シルアノフ財務相は必要な支出をまかなう「財源」を探していると大統領に報告したという。予算案では一部の支出削減が見込まれ、軍事関連以外のインフラ事業や、サッカークラブ、赤字経営のサナトリウムなど非中核分野の補助金が対象になりそうだ。連邦議会上院予算委員会のアルタモノフ委員長によると、実施すれば支出を2兆ルーブル削減できる見通しだ」

     

    26年の予算編成では、軍事関連以外の財政項目が削減される。2兆ルーブル削減できる見通しで、その分が国民生活へしわ寄せされる。

     

    (3)「エコノミストは、残りの赤字は政府の借り入れで補えるとみている。中央銀行が6月に利下げを始め、政策金利は過去最高の21%から18%に下がった。国債発行による赤字補塡は、プーチン氏が選好する選択肢とみられる。同氏は9月5日、極東ウラジオストクでの経済フォーラムで「ロシアの債務負担は依然容認可能な水準にあり低い。赤字はさらに拡大できる」と述べた。予備費の取り崩しも選択肢だが、既に半分を戦費に充てており、国外資産も制裁で凍結されている。ドイツ国際安全保障研究所のヤニス・クルーゲ研究員は「25年にはかつてない課題に直面し、予算で初めて実質的なトレードオフを迫られている」と指摘する」

     

    ロシアは、財源不足を国債発行で賄う方針である。だが、25年予算で初めて深刻な事態へ直面し、深刻な「二者択一」を迫られる。ロシアが、初めて戦争経済の壁にぶつかるのだ。

     

    (4)「ロシアウオッチャーらは、同国政府とウクライナ政府の間で何らかの休戦が結ばれたとしても、戦時支出に対するロシアの考え方がすぐに変わるとは限らない、と指摘する。クルーゲ氏は「戦車工場は備蓄を補充するために何年もフル稼働を続ける必要がある」と指摘する。元政府高官も「最終的には一部の投資計画を見直すだろう」としながら、「休戦が成立しても軍需生産が急に止まるわけではない。工場は動き続ける」と語った」

     

    休戦が結ばれても、ウクライナ侵攻で失われた武器の補充生産が行なわれる。このため、民生が余裕を持てるのは、何年も先になるという。

     

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    ウクライナのゼレンスキー大統領が8日、ザルジニー総司令官を解任した。後任のシルスキー氏は、これまで陸軍司令官を務めてきた。シルスキー氏は、ザルジニー氏よりも年長者であらが、ザルジニー総司令官の補佐を快く務めるなど軍人らしい「度量」の大きさをみせてきた。あくまでも、「国家防衛」という任務に徹する軍人タイプである。

     

    世上では、今回の交代人事についていろいろ取り沙汰されている。ザルジニー氏の国民的な人気が高いことから、ゼレンスキー大統領にとって次期大統領選でライバルになる恐れがあるので交代させたというものである。

     

    こういう「陰謀説」は説得力を持つが、ウクライナ防衛が行き詰まっている現在、総司令官交代は当然である。米国では、作戦に失敗すれば司令官を交代させるのは常識である。旧日本軍の常識では、勝ち戦まで「司令官を変えない」が、これこそ異常である。旧日本軍は、この悪弊のために多くの将兵が命を失う羽目になった。新しい司令官の下で作戦計画を立て直すことだ。

     

    『ロイター』(2月9日付)は、「ウクライナ大統領、国民に人気の軍総司令官更迭 米『決定を尊重』」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、ウクライナ軍のザルジニー総司令官の更迭を発表した。後任に陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官を充てる。国民的英雄と見られているザルジニー氏と大統領の間に亀裂があるとの憶測が出ていた中、同氏の解任は前線部隊の士気に影響を与えるほか、大統領の評価にも傷がつく可能性がある。

     

    (1)「ゼレンスキー氏は、声明で「きょうから新しい指導部がウクライナ軍を引き継ぐ」と表明した。ウメロフ国防相も、軍の指導者を交代させる決定が下されたと声明で発表した。ゼレンスキー氏は声明で、ザルジニー氏とウクライナ軍に必要な刷新について協議したとし、誰が軍の新たな指導者に得るかについても話し合ったと表明。ザルジニー氏に自身のチームにとどまるよう要請したとした」

     

    ウクライナにとっては、西側諸国の軍事支援に陰りが出ている中で、効率的な戦い方を迫られている。総司令官を交代させることは、作戦の見直しに結びつく。

     

    (2)「ザルジニー氏は、自身の声明で大統領と「重要かつ真剣な対話」を行い、戦術と戦略を変更することを決定したと表明。「(ロシアによる全面侵攻が始まった)2022年の課題と24年の課題は異なる」とし、「勝利するために、誰もが新しい現実にも適応しなければならない」と述べた。ゼレンスキー氏は、軍を率いたザルジニー氏への謝意を示し、2人が笑顔で握手している写真を投稿した。発表後、「鉄の将軍」として知られたザルジニー氏への感謝のメッセージがソーシャルメディアにあふれた。昨年終盤の世論調査では、国民の90%以上がザルジニー氏を信頼していると回答。ゼレンスキー氏の77%を大きく上回った」

     

    ザルジニー氏を総司令官へ抜擢したのは、ゼレンスキー大統領である。シルスキー氏という年長者を差し置いての起用が、見事に成功したと評されてきた。今度は、逆にシルスキー氏を総司令官へ起用して膠着した戦線を見直すのは、十分にあり得る戦術交代だ。

     

    (3)「ゼレンスキー氏は、ザルジニー氏更迭を決めた背景には昨年の失敗があったと示唆。「この戦争の2年目、われわれは黒海を制した。冬を制した。ウクライナの空を再び支配できることを証明した。しかし、残念なことに地上では国家の目標を達成できなかった」と述べた。「ユキヒョウ」のコールサインで呼ばれる後任のシルスキー氏(58)については、22年のキーウ防衛と同年のハリコフ反攻を指揮した際の功績を挙げた」

     

    シルスキー氏は、ロシア人である。両親や親戚は、ロシア在住でロシア国籍を持つ。父親はロシアの退役軍人であり、また兄弟もロシアに住んでいる。ロシア在住の両親は2019年、ウクライナで禁止されているゲオルギーリボンをつけて行進する等ロシア愛国者である。こういう家庭環境から、ロシア前大統領のメドベージェフ安全保障会議副議長は9日、シルスキー氏を裏切り者だと批判した。

     

    シルスキー氏は、1965年7月に当時ソ連の一部だったロシアのウラジーミル地方で生まれ、同世代の多くのウクライナ軍関係者と同様、モスクワの高等軍事学校で学んだ。ソ連軍に5年間在籍し、1980年代からウクライナに住んでいる。ソ連崩壊後のロシア軍に在籍したことはない。こういうシルスキー氏の経歴をみると、筋金入りの「ウクライナ軍人」と言えよう。

     

     

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    ウクライナ軍が、予想されるロシア軍への反転攻勢を前に、準備段階に当たる「形成」作戦を開始したことが分かった。米軍や欧米当局の高官がCNNに明らかにした。ウクライナ東部の激戦地バフムトで5月10日、ウクライナ軍がロシア精鋭部隊壊滅させたことが「形成」作戦に当たると見られる。

     

    形成作戦の内容には、部隊の進軍に備えて戦場の状況を準備するため、武器集積所や指揮所、装甲車、火砲を攻撃することが含まれる。大規模な連合作戦の前に行われる標準的な戦術となっている。ウクライナが昨年夏に南部と北東部で反攻を仕掛けた際にも、事前に航空攻撃で戦場を形成する作戦が行われた。米軍高官によると、こうした形成作戦は、予定されるウクライナの攻勢の主要部分の前に何日も続く可能性があるという。『CNN』(5月12日付)が報じた。

     

    『朝鮮日報』(5月12日付)は、ウクライナ軍がバフムトで大反撃 ロシア軍最精鋭部隊が壊滅

     

      ウクライナ軍がバフムトでの反撃でロシアに対する反転攻勢の序幕を飾った。ウクライナ東部の都市バフムトは昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、最大の激戦地だった ウクライナ陸軍第3強襲旅団は10日(現地時間)「バフムトでロシア軍第72自動小銃旅団を退却させた」と発表した。第72自動小銃旅団はロシア軍最精鋭部隊の一つだ。ウクライナの民兵隊「アゾフ連隊」のアンドリー・ビレツキー氏は動画メッセージで「ロシア軍2個中隊の兵力を壊滅させ、7.8平方キロの領土を回復した」と明らかにした。

     

    (1)「ウクライナ軍は、敵陣への空襲からロシア軍の逃亡に至る圧勝の様子を動画と写真で公開したことから、機先を制していることがうかがえる。ウクライナ軍筋によると、ウクライナ軍は旧ソ連製戦車T64や米国製装甲車M113などを先頭にロシア軍陣地に進撃した。反転攻勢の始まりだった。ウクライナ製の対戦車ミサイル「スタグナP」も反撃に加わった。 ロシアの民間軍事会社ワグネルのトップでプーチン大統領の側近とされるプリゴジン氏は「ロシア軍第72自動小銃旅団が退却したため、ワグネルの兵士500人が犠牲になった」と主張し、ウクライナ軍の攻勢で逃亡したロシア正規軍を非難した」

     

    今回のバフムトでのウクライナ軍の反攻作戦は、「諸兵科連合作戦」のテスト版であろう。小手試しに戦術を展開した結果で、まずは成功と言える。

     

    (2)「現時点で確認されていないロシア正規軍の被害を合計すれば、死亡者の数はさらに増えそうだ。ウクライナ・メディアのキーウ・ポストは「ここ数カ月ではロシア軍最大の敗北」と報じた。ウクライナ軍はバフムト攻撃の様子を撮影した動画、さらにウクライナ軍の攻勢に押されロシア軍が逃走する様子を撮影した写真などを公開した。戦果が決して誇張されていないことを強調することで、プーチン大統領とロシア正規軍、そしてワグネルの士気を下げる狙いがあるとみられる」

     

    ロシア軍は、ここ数ヶ月では最大の敗北とされる。バフムトは、ロシア軍が占領を目指して多くの犠牲を払ってきた要衝地である。それが、ウクライナ軍の小型「諸兵科連合作戦」によって敗退したとすれば、これから迎える本格的な反攻作戦にも大きな影響が出るはずだ。

     

    (3)「ウクライナ軍によるバフムトでの攻勢は、ロシアに大きな打撃を与えた可能性も考えられる。それは、バフムトが戦略的に非常に重要とされるからだ。バフムトは東部ドネツク州の都市でここ9カ月の間にウクライナ軍とロシア軍・ワグネルが激しい戦闘を続けてきた。 ウクライナの立場からすれば、戦争の勝機をつかむにはロシア軍がすでに大部分を掌握したバフムトを死守しなければならない。またロシアにとってもバフムトはドネツク州やルハンシク州など東部ドンバス地域の占領を維持する重要な拠点となる。そのためウクライナ軍によるバフムト奪還はロシアにとっては手痛い打撃だ」

     

    バフムトは、ウクライナ軍にとって防衛の象徴的な場所になっている。ロシア軍に多大な消耗を強いて、今後の反撃能力を奪うことに主眼が置かれてきた。ウクライナは、この目的を100%達成して、ついに反攻作戦に転じたのだ。

     

    (4)「ウクライナ軍の被害が、ワグネルとの戦闘で相次いだ際には西側諸国から撤退を求める声も相次いだ。そのたびに、ウクライナのゼレンスキー大統領は「絶対に放棄できない」として強い意志を何度も表明してきた。 「クリミア半島周辺でウクライナが反転攻勢に乗り出す」との見方は以前から有力視されていた。ところがウクライナ軍が突然バフムトで攻撃を開始したことで、「ロシアの舌を切り取った」との評価も相次いでいる」

     

    ロシアは、ロシア軍第72自動小銃旅団が退却した衝撃は大きいであろう。これから本格化が予想されるウクライナの反攻作戦により、ロシア軍の士気が低下するであろう。

     

    (5)「ウクライナ軍が、今回の勝利で奪還した地域はまだ一部に過ぎないため、「ウクライナ軍によるバフムトでの勝利は戦争の版図を変えるほどではない」との見方もある。ウクライナ東部軍のセルヒー・チェレバティ広報担当官は「現時点でロシア旅団全体の兵力が破壊されたわけではない」とコメントした」

     

    ウクライナ軍は、今回のバフムトの反撃を過大評価しないという慎重さを見せている。なによりも、「諸兵科連合作戦」が機能したことに手応えを得た点で、大きな「戦果」になったといえよう。

     

     



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    2月24日で、ロシアのウクライナ侵攻が始まって1年になる。ロシアは、これをきっかけに大攻勢を掛けるとの見方が流されている。ただ、雪解けシーズンであり、ロシアは昨年この時期に大苦戦を強いられた苦い経験がある。同じ過ちを重ねるとも考えられない。

     

    こうした「風評」とは異なり、米CIA長官バーンズ氏は「今後数ヶ月が決定的に重要な時期」を迎えると発言した。米国は、これに備えウクライナへ新鋭戦車の供与や戦闘機、長距離砲という本格的な武器によって、ロシアとの対決を制す構えを見せ始めている。ロシアの手に乗って侵攻を長引かせないという方針へ切り変えたのであろう。

     

    『CNN』(2月3日付)は、「米CIA長官、今後6カ月が『決定的』 ウクライナ侵攻の結果を左右と発言」と題する記事を掲載した。

     

    米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は2日、今後6カ月がウクライナでの戦争の最終結果を左右する「間違いなく決定的な」ものになると発言した。

     

    (1)「バーンズ氏は米ジョージタウン大学での演説で、米側はロシアのプーチン大統領が「交渉に真剣に向き合っているとは評価していない」と述べ、「戦場での今後6カ月が重要になる」との見方を示した。そうした期間に「プーチン氏の思い上がりに風穴を開けること、ウクライナをさらに進攻できないだけでなく、ひと月ごとに不法に掌握した土地を失うリスクが高まることを明確にすること」などが重要だと言及した」

     

    米国は、ウクライナに本格的は領土奪回作戦を展開させる決意を固めたように受け取れる。時間がかかりながらも、ウクライナ側の要求する武器を次第に供与していることからも、それが窺える。戦車に続いてF16戦闘機の供与も現実味を帯びてきた。

     

    米国は、ウクライナ侵攻を長引かせると、中国の台湾侵攻と重なり「ダブル侵攻」という最悪事態を迎え兼ねないのだ。下手をすると「第三次世界大戦」へ発展しかねないだけに、ウクライナは早めに解決する必要性が出てきたのであろう。

     

    (2)「バーンズ氏は、プーチン氏が「時間を自分に有利に働かせることができると賭けている」と指摘。政治的な疲れが欧州を覆い、米国の注意もそがれる中で、ウクライナを「摩滅させる」ことができると信じているとの見方を示した。バーンズ氏はまた、ロシアのナルイシキン対外情報局長官と昨年11月に会談した際、ロシアの計算には2月の侵攻当初の決断の時と同じくらい「深刻な欠陥がある」と伝えたとも語った」

     

    プーチン氏は、ウクライナ侵攻と台湾侵攻が重なれば、米国の注意もそがれる、ウクライナを占領できるという戦術を練っているのであろう。そうでなければ、次々と徴兵を拡大させる構えを取らないであろう。ウクライナ侵攻を長引かせることが、プーチン氏の最大の戦略になっていると見られる。

     

    『CNN』(2月3日付)は、「米、射程距離がより長いミサイル供与の見通し 2800億円規模の新支援で」と題する記事を掲載した。

     

    米国が新たに行う22億ドル(約2800億円)規模のウクライナ向け安全保障支援の中に、射程距離がこれまでより長いミサイルが含まれる見通しであることがわかった。米政権高官や複数の米当局者が明らかにした。

     

    (3)「支援パッケージには誘導ミサイル「地上発射型小直径爆弾(GLSDB)」が含まれる予定。ボーイングとこれを共同開発したサーブによると、このミサイルは高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」から発射され、射程は約90マイル(約145キロ)に及ぶ。ウクライナ軍が現在ハイマースに使う弾薬「GMLRS」の射程の約2倍となる。GLSDBは発射後に小さな翼を広げ、ロケットエンジンで目標に向けて飛行する。ただ、ウクライナが要請していた射程200マイル(約320キロ)超のミサイル「ATACMS」は支援に入らない。米国はロシア国内の奥深い標的に同ミサイルが使われる恐れがあるとの懸念を示している」

     

    下線のように、「ハイマース」を使って射程145キロの弾薬「GMLRS」が、ウクライナへ供与される。現在の射程は78キロであるから、ほぼ倍に伸びる。ロシア軍は、すでに78キロ射程を避けて、それ以上に距離を下げて兵站基地をおいている。「GMLRS」が前線に配備されると、ロシアの兵站線はさらに後退する。それだけ、補給に時間がかかる。

     

    (4)「今回のパッケージは、1月に米軍の主力戦車「M1エイブラムス」の供与を発表した支援後初の支援となる。早ければ3日に発表され、5億ドル分は米軍の備蓄から直接供与、残り17億ドル分は軍事企業との購入契約に基づき供給されることとなる。当局者によれば、今回のパッケージには大砲やハイマースの弾薬、補助システム、地対空ミサイル「パトリオット」向けの部品も含まれる」

    米国はロシアを刺激したくない、つまり、核使用という最悪事態を避けながら、ウクライナへ武器を供与するという姿勢を取っている。今回の供与プランでも実戦に配備されるまでには時間がかかる。米国は、まだ本格的な武器増産体制へ移っていない。備蓄している兵器を取り崩している形だ。仮に、中国が2025年へと台湾侵攻を繰り上げた場合、米国の武器弾薬の備蓄はないのが実情だ。対艦ミサイルの備蓄は、戦争1週間分とされている。お寒い限りである。

     

    次の記事もご参考に。

    2023-02-02

    メルマガ434号 中ロ枢軸、「ウクライナ・台湾」同時侵攻の危険性 第三次世界大戦を防げるか

     

     




     

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    ウクライナは、間もなくロシアの侵攻開始から1年になる2月24日を迎える。この間に受けたウクライナ側の経済的な損害は、人的・物的合わせれば厖大なものだ。早く、この戦争を止めなければならないが、ウクライナはその手段を持たないというジレンマを抱えている。

     

    最大の防御策は、ウクライナが強力な兵器を備えることだ。すでに、ドイツの主力戦車300両以上の供与のメドがついたが、制空権を守るためには戦闘機が不可欠。米国製のF16がその候補になっている。米国は今のところ、ロシアを刺激したくないという理由で供与を渋っている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)は、「ウクライナが勝つために何が必要か」と題する社説を掲載した。

     

    ジョー・バイデン大統領は、米国がウクライナにF16戦闘機を供与する予定はないと話している。だが、この戦争を開戦から1年間、注意深く見てきた人なら誰でも、この発言の意味が分かる。後でもう一度要請してほしいということだ。バイデン氏のチームは、ウクライナに対する兵器供与の要請を受けるたびに躊躇し、後に態度を変えてこれに応じてきた。今回もまた、大統領が方針を変更し、戦場でウクライナ軍を直ちに助け、そして戦争が終わった後も同国の役に立つような一層の軍事支援を提供することを期待しよう。

     

    (1)「北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は今週、韓国を訪問した際にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「和平に向けた準備をしている兆候は見られない。われわれが目にしているのは、それとは正反対のことだ」と語った。ストルテンベルグ氏は、ロシアは恐らく、さらに20万人の兵士を動員し、「積極的に新たな兵器を入手し、弾薬の追加供給を受けている」と分析。プーチン大統領は「ウクライナを支配する」という自身の核心的な目標を諦めていないと述べた。「これが事実である限り、われわれは長期的(な戦闘)に備える必要がある」と指摘」

     

    ロシアは、さらに20万人の追加徴兵する可能性がある以上、長期戦へ持込む意思と見られる。こうなると、これに対応した兵器をウクライナへ供与する必要性が高まる。米国戦闘機F16がそれだ。米バイデン大統領は、先に「断る」との回答をしているが、二度三度の要請には応じる。これが、パターン化している以上、最終的にはF16が供与されるとみられる。

     

    (2)「F16はウクライナの制空能力を大幅に向上させるとみられる。西側諸国は最新鋭戦闘機F35の調達を行っており、世界には利用可能なF16が数多く存在する。また、F16をウクライナに供与すれば、同国の防衛への西側諸国の明確な関与の証しとなり、それは、今回の戦争が終了したあとも長期間にわたりウクライナを防衛する強力な抑止力が構築されるという意味を持つ」

     

    F16は、米国にとっては旧型機に属する。最新鋭機F35が、主力になっているからだ。この退役機のF16が、ウクライナ侵攻の長期化を防ぐ手段になれば、二度目の大役を果たすことになろう。

     

    (3)「ヘンリー・キッシンジャー氏が最近指摘したように、ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナがロシアと西側諸国の間で中立の立場を維持できるのかという問いに終止符を打った。ウクライナが勝者となった場合、同国はNATOに加盟するか否かにかかわらず、西側の一員になるだろう」

     

    ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナは「自動的」にNATO側へ付く結果になった。ロシアの大きな誤算である。逆の結果になるからだ。

     

    (4)「プーチン氏は、ウクライナの戦意と西側諸国の支援が続かなくなるまで攻勢を続けられるとの考えから、長期戦に向けた態勢を整えつつある。この事実は、より早急にウクライナに追加の支援を届け、ウクライナ軍が年内に自国領土の大半あるいは全土からロシアを追い出せるようにすることの重要性を高める。バイデン政権は、何両かの戦車を供与するようドイツを説得するのに、何週間も費やしてしまった。しかも、米政府の説明によれば、米国の戦車「Mエイブラムス」がウクライナに届くのは「何週間かではなく、何カ月か」先になる」

     

    ロシアの大攻勢が、数週間以内に行なわれると予測されている。こうした緊迫化した中で、ウクライナも早期に対抗手段を取らなければならない。F16の供与は、ウクライナの士気を高めるだろう。

     

    (5)「米国のウクライナ支援は、新たな国造り(ネーションビルディング)の取り組みや行き当たりばったりの介入ではない。米国人が戦って死者を出しているわけでもない。ウクライナ支援は、自らの自由のために命をかけて戦っている他国の人々を助けるという、伝統的なレーガン・ドクトリンを踏襲している。米政府は、長距離ミサイルを今すぐに、戦闘機をできる限り早急に提供する形で、ウクライナ支援を一層強化かつ迅速化できる」

     

    西側諸国は、ロシアが期待している「ウクライナ支援疲れ」を防ぐ意味でも、制空権を守る戦闘機の供与が必要になっている。これが結局、西側諸国の負担を軽減させる道になるだろう。

     

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