2月24日で、ロシアのウクライナ侵攻が始まって1年になる。ロシアは、これをきっかけに大攻勢を掛けるとの見方が流されている。ただ、雪解けシーズンであり、ロシアは昨年この時期に大苦戦を強いられた苦い経験がある。同じ過ちを重ねるとも考えられない。
こうした「風評」とは異なり、米CIA長官バーンズ氏は「今後数ヶ月が決定的に重要な時期」を迎えると発言した。米国は、これに備えウクライナへ新鋭戦車の供与や戦闘機、長距離砲という本格的な武器によって、ロシアとの対決を制す構えを見せ始めている。ロシアの手に乗って侵攻を長引かせないという方針へ切り変えたのであろう。
『CNN』(2月3日付)は、「米CIA長官、今後6カ月が『決定的』 ウクライナ侵攻の結果を左右と発言」と題する記事を掲載した。
米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は2日、今後6カ月がウクライナでの戦争の最終結果を左右する「間違いなく決定的な」ものになると発言した。
(1)「バーンズ氏は米ジョージタウン大学での演説で、米側はロシアのプーチン大統領が「交渉に真剣に向き合っているとは評価していない」と述べ、「戦場での今後6カ月が重要になる」との見方を示した。そうした期間に「プーチン氏の思い上がりに風穴を開けること、ウクライナをさらに進攻できないだけでなく、ひと月ごとに不法に掌握した土地を失うリスクが高まることを明確にすること」などが重要だと言及した」
米国は、ウクライナに本格的は領土奪回作戦を展開させる決意を固めたように受け取れる。時間がかかりながらも、ウクライナ側の要求する武器を次第に供与していることからも、それが窺える。戦車に続いてF16戦闘機の供与も現実味を帯びてきた。
米国は、ウクライナ侵攻を長引かせると、中国の台湾侵攻と重なり「ダブル侵攻」という最悪事態を迎え兼ねないのだ。下手をすると「第三次世界大戦」へ発展しかねないだけに、ウクライナは早めに解決する必要性が出てきたのであろう。
(2)「バーンズ氏は、プーチン氏が「時間を自分に有利に働かせることができると賭けている」と指摘。政治的な疲れが欧州を覆い、米国の注意もそがれる中で、ウクライナを「摩滅させる」ことができると信じているとの見方を示した。バーンズ氏はまた、ロシアのナルイシキン対外情報局長官と昨年11月に会談した際、ロシアの計算には2月の侵攻当初の決断の時と同じくらい「深刻な欠陥がある」と伝えたとも語った」
プーチン氏は、ウクライナ侵攻と台湾侵攻が重なれば、米国の注意もそがれる、ウクライナを占領できるという戦術を練っているのであろう。そうでなければ、次々と徴兵を拡大させる構えを取らないであろう。ウクライナ侵攻を長引かせることが、プーチン氏の最大の戦略になっていると見られる。
『CNN』(2月3日付)は、「米、射程距離がより長いミサイル供与の見通し 2800億円規模の新支援で」と題する記事を掲載した。
米国が新たに行う22億ドル(約2800億円)規模のウクライナ向け安全保障支援の中に、射程距離がこれまでより長いミサイルが含まれる見通しであることがわかった。米政権高官や複数の米当局者が明らかにした。
(3)「支援パッケージには誘導ミサイル「地上発射型小直径爆弾(GLSDB)」が含まれる予定。ボーイングとこれを共同開発したサーブによると、このミサイルは高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」から発射され、射程は約90マイル(約145キロ)に及ぶ。ウクライナ軍が現在ハイマースに使う弾薬「GMLRS」の射程の約2倍となる。GLSDBは発射後に小さな翼を広げ、ロケットエンジンで目標に向けて飛行する。ただ、ウクライナが要請していた射程200マイル(約320キロ)超のミサイル「ATACMS」は支援に入らない。米国はロシア国内の奥深い標的に同ミサイルが使われる恐れがあるとの懸念を示している」
下線のように、「ハイマース」を使って射程145キロの弾薬「GMLRS」が、ウクライナへ供与される。現在の射程は78キロであるから、ほぼ倍に伸びる。ロシア軍は、すでに78キロ射程を避けて、それ以上に距離を下げて兵站基地をおいている。「GMLRS」が前線に配備されると、ロシアの兵站線はさらに後退する。それだけ、補給に時間がかかる。
(4)「今回のパッケージは、1月に米軍の主力戦車「M1エイブラムス」の供与を発表した支援後初の支援となる。早ければ3日に発表され、5億ドル分は米軍の備蓄から直接供与、残り17億ドル分は軍事企業との購入契約に基づき供給されることとなる。当局者によれば、今回のパッケージには大砲やハイマースの弾薬、補助システム、地対空ミサイル「パトリオット」向けの部品も含まれる」
米国はロシアを刺激したくない、つまり、核使用という最悪事態を避けながら、ウクライナへ武器を供与するという姿勢を取っている。今回の供与プランでも実戦に配備されるまでには時間がかかる。米国は、まだ本格的な武器増産体制へ移っていない。備蓄している兵器を取り崩している形だ。仮に、中国が2025年へと台湾侵攻を繰り上げた場合、米国の武器弾薬の備蓄はないのが実情だ。対艦ミサイルの備蓄は、戦争1週間分とされている。お寒い限りである。
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2023-02-02 |