勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

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    ロシアが、動員令を発令したのは第2次世界大戦以降初めてだ。ウクライナ戦争で戦闘力の補強がそれだけ急がれる状況ということだ。これまで、プロパガンダで「大勝利」を喧伝してきただけに、国民は「だまし討ち」にあった感じである。それだけに反発も大きい。果たして、動員令は戦闘力に実質的なプラスになるのか。元韓国軍少将によると、ロシア軍の戦力にならないという厳しい診断である。

     

    韓国紙『中央日報』(9月23日付)は、「焦るプーチンの動員令『むしろロシア軍を亡ぼすことも」3つの根拠』と題する記コラムを掲載した。筆者は、パク・ジョングァン/韓国国防研究院客員研究員/予備役陸軍少将である。


    冷戦時代、ソ連軍の平時兵力は約340万人にのぼった。戦時に動員令が発令されれば1、2週以内に約500万人が追加され、全体兵力は約840万人以上に増えるという計画だった。こうした大規模な軍隊に必要な装備と物資を管理するため、補給廠では約120万人が勤務した。冷戦以降、このような巨大システムは消えた。第2次チェチェン戦争(1999年)とジョージア戦争(2008年)では、全体規模10万人以下の範囲内で特殊部隊と臨時編成部隊で作戦を遂行した。



    (1)「こうした経験を基づいてロシア軍は2008年になって大規模な動員を放棄した。その代わり契約による募兵で約100万人の兵力を維持することにした。2009年に徴集兵士の服務期間を18カ月から12カ月に短縮し、徴集兵士が海外に派兵されることを法で禁止した。しかし募兵は計画通りには進まなかった。ウクライナ侵攻直前まで募兵人員は全体兵力の約40%未満だった。問題は、海外軍事作戦に投入できる実際の兵力が約20万~30万人に限られたという点だ。さらに戦争が長期化する場合、作戦持続の限界もあった。2012~13年、ロシア軍もこうした問題点を認識し、米軍の州防衛軍制度と似た方法の導入を検討した。しかし実質的な措置はなかった。結局、プーチンの動員令はこうした構造的な問題点ために避けられない選択だ」

     

    ロシア軍は、冷戦時代のような大規模な補給廠を持たずに、その場しのぎの小規模な兵站でことを済ませてきた。今回は、30万人(一説では100万人)の動員令になったが、これに即応できるバックアップ体制が取れるか疑問視されている。

     


    (2)「次のような理由で、実質的な戦闘力増強効果は期待しにくいと予想される。動員兵力が装備および物資、訓練の側面で準備できていない可能性が高い。2009年から徴集兵士の服務期間が12カ月に短縮されたからだ。現在30歳過ぎまでの予備軍は、部隊で約6カ月だけ生活し、戦術訓練に熟達する前に転役した。こうした兵士にまともな戦闘力発揮を期待するのは無理だ。さらに動員のために必要な装備と物資が準備されていない可能性がある。2000年代初めまで続いたロシアの経済危機は、動員装備および物資管理体制を含め、優先順位が低い軍事システムから瓦解させた。2008年以降に本格化した国防改革は現役の将兵と部隊に集中した。動員戦力に関心を向けて予算を投入する余裕がなかったのだ

     

    このパラグラフでは、ロシア軍の弱点を公にしている。30万人の動員兵力が、装備および物資、訓練の側面でバックアップできる準備できていない可能性が高いというのだ。敗戦直前の日本軍は、兵士を召集しても鉄砲を十分に与える数がなかった。ロシア軍でも、ソ連崩壊後の財政危機で、兵站部が充実しているか疑問という。

     

    (2)「動員した兵力を戦場に補充する方法は2つある。各個兵士単位で補充する方法と部隊単位で補充する方法だ。戦闘力発揮の側面では当然、前者よりも後者が望ましい。米軍はベトナム戦争で個別補充方式を適用して失敗した。80年代に全般的な国防システムの革新を経た後、米軍は湾岸戦争とイラク戦争では部隊補充方式を適用して成功した。ロシア軍は個別補充方式を適用するしかないだろう。動員した兵力を受け入れる部隊が準備されていなかったからだ。すなわち、東部および南部の戦線に投入された部隊の死傷者発生で生じた空席を個別に満たすということだ。その兵力が従来の部隊員と戦闘に必要なチームワークを形成していく過程は決して簡単でない。このため新兵の半分以上が最初の戦闘で死傷する。ウクライナ戦争でもこうした現象が再現される可能性が高い」

     

    動員した兵力を戦場に補充する方法は2つある。各個兵士単位で補充する方法と部隊単位で補充する方法だ。ロシア軍は、各部隊へ個別兵士を補充する方法を採用するとみられる。これは最悪で、新兵の半分以上が最初の戦闘で死傷するという。そうではなくて、部隊全体を入れ換えて戦う手法では戦闘力を増すという。ロシア軍に、兵站面でその余力がないのだ。



    (3)
    結論的に言えば、ロシア軍の動員令は戦闘力にも実質的なプラスにならず、国民の戦争持続意志を決定的に弱める可能性に注目する必要がある。ブリンケン米国務長官も「ロシア軍がそれだけ弱まったという信号であり、失敗の信号でもある」と評価した。プーチンの立場でそのような状況は最悪だ」

    30万人動員令が、何ら成果を上げずに「討ち死」という最悪事態になれば、ロシア国内は収拾のつかない事態に陥るだろう。その危険性が、極めて高いという結論である。

     



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    2月24日の未明に始まったロシアのウクライナ侵略は、早くも1ヶ月になる。ロシアは、制圧地域を広げられず戦死者だけが増える、予想もしなかった事態に陥っている。今後、プーチン氏はどうするのか。化学兵器を使うのでないかと警戒されるている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月23日付)は、「ロシア、侵攻1カ月で戦況膠着 制圧地域拡大せず」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがウクライナ侵攻を始めてから24日で1カ月となり、戦況は膠着し始めている。首都キエフを数日で制圧する「短期圧勝シナリオ」は補給体制の不備やウクライナ軍の強い抵抗で崩壊し、制圧地域もほとんど広がっていない。戦闘の継続で、双方とも死傷者が拡大し、戦力の喪失も大きくなっている。人道危機も深刻さを増している。

     


    (1)「米国防総省はロシア軍が10日以降、キエフ近郊ではほとんど前進していないと分析する。ウクライナ軍は22日、キエフ西方の地方都市マカリフを奪回したと発表した。米戦争研究所が22日時点でまとめたロシア軍が支配・侵攻する地域はウクライナ全体の4分の1程度で13日と大きな変化はみられない。ウクライナ軍は、ロシアの黒海艦隊から入手した機密文書をもとに、ロシアは2週間程度で侵攻を完了する計画だったと主張。米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は、ロシア軍がキエフを2日以内に陥落させる段取りを描いていたと暴露した」

     

    ロシアのウクライナ侵略は、「2週間程度で完了計画」であったという。とんだ誤算をしている。ロシアの年間国防予算は600億ドル(約7兆2600億円)以上。対するウクライナはわずか40億ドル(約4800億円)余りだ。この差からみても、簡単にひねり潰せると見ていたのだ。西側職国が、ウクライナを支援するという計算をしていなかったのだ。

     


    (2)「米国防総省高官は22日、記者団に対して侵攻停滞の理由について燃料や食料の補給が依然としてスムーズに進んでいないと指摘した。スコット・ベリア米国防情報局長は8日、ロシア軍の死亡者を2000~4000人と推計した。20年間のアフガニスタン戦争で命を落とした米兵は2461人とされる。軍事サイト「Oryx」によると、ロシア軍の戦車や装甲車の損失は22日時点で800台超とウクライナ軍の3.5倍にのぼり、対地・対空ミサイルも約140と同6割多い。

     

    ロシア軍は、開戦間もなく首都キエフ近郊のホストメル空港に戦闘ヘリコプターで攻撃を仕掛けた。だが、ウクライナ軍の猛攻撃に遭遇して、空挺師団の指揮官が戦死する羽目になった。このためロシア軍は、空路を確保できず、兵員や装備、物資の補給で危険な陸路に頼らざるを得なくなった。ロシア軍は、制空権を奪えなかったことが最大の誤算である。

     


    (3)「米政権の推定で、ロシアは侵攻までに15万~19万人の兵力を国境付近に集めた。弾丸や燃料、食料など兵士1人の維持にかかる費用を1日1000ドル(約12万円)と仮定すれば、1日に1.5億~2億ドルの支出が続く。世界銀行によると、ロシアの2020年の軍事支出は約617億ドルで戦費負担も軽くはない。元米軍高官のベン・ホッジス氏は米欧の経済制裁が効力を発揮し、今後戦費調達が苦しくなることなどもあり、ロシア軍は激しい攻勢を長くは続けられないと分析する」

     

    ロシア軍は、兵士1人の維持にかかる費用を1日1000ドル(約12万円)と仮定すれば、1日に1.5億~2億ドルの支出が続くと推計している。だが、英国では桁違いの1日250億ドル以上と見ている。1日に1.5億~2億ドルは、歩兵1人当たりの「生活費」の合計という意味であろう。ロシア兵の装備は不完全で、凍傷にかかる者も出て戦線を離脱しているほど。安価な装備で出撃させたのだ。

     

    ロシア兵の士気は「極めて低い」と言う西側当局者がいる。別の政府関係者は、ロシア兵はそもそもベラルーシとロシアの雪の中で何週間も待機させられた挙句に、侵略を命じられたので、「凍えているし、くたびれて、腹を空かせている」のだと話した。以上は英『BBC』(3月23日付)が報じた。

     

    (4)「地上部隊の苦戦を受け、ロシア軍は都市部への多数の砲撃などでウクライナの抵抗力をそぐ方針に転換している。特に南東部の港湾都市マリウポリでは避難所や商業施設などへの無差別砲撃を繰り返し、深刻な人道危機が発生している。国連によると、これまでにウクライナで少なくとも953人の一般市民が死亡した。実際にはこの人数を大幅に上回るとの見方が多い。1000万人超が国内外で避難生活を強いられている」

     

    戦線の膠着は、ロシア軍の無差別攻撃を招くので、人命の損傷危機が高まる。これを早く止めるには、さらなる経済制裁しかないのだ。ロシア経済は、これから「大きな代償」を払わされる番である。

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    ロシアは、ウクライナに「無条件降伏」を迫るために無差別攻撃を行なっている。これにより恐怖を植えつけ、ウクライナ側の戦意を喪失させ、降伏を迫るねらいである。シリア内戦で駆使した手法と類似しており、深刻な人道危機を引き起こす恐れが強まってきた。

     

    ウクライナは、無差別攻撃を受けながらも戦意は高い。西側諸国が、支援を強めているから「戦い抜く」という決意を固めている。米国は、ポーランド保有のロシア製軍用機をウクライナへ提供する代わりに。Fー16戦闘機をポーランドへ供与する、「三角バーター」を検討している。

     


    『ブルームバーグ』(3月6日付)は、「米国とポーランド、ウクライナへの軍用機提供を検討-ホワイトハウス」と題する記事を掲載した。

     

    米国は、ロシアの侵略を受けているウクライナ向けに他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国が、軍用機を提供できるかどうかを巡り、ポーランドと協力して取り組んでいる。ホワイトハウス報道官が明らかにした。

     

    (1)「こうした考えは、NATOに加盟している幾つかの東欧諸国が拒否していたが、ウクライナのゼレンスキー大統領が5日に行った米上下両院の300人近い議員とのビデオ電話で取り上げた。電話協議後、米議員の何人かが軍用機の提供を支持すると述べた。ウクライナ軍の操縦士が訓練を受けているロシア製の軍用機が提供される可能性がある」

     


    ウクライナは、数少ない軍用機はロシアとの「決戦」に備えて温存している。僅かに、トルコ製の無人機で攻撃する程度だ。軍用機の提供を受ければ、戦況を立て直してロシアの無差別攻撃の曝される危険性も減る。喉から手が出るほど、軍用機が欲しいところだ。

     

    (2)「ホワイトハウス報道官によれば、ポーランド軍が保有機の中からウクライナに戦闘機を引き渡す可能性があり、バイデン政権はその代替機の手配を検討している。報道官は、ポーランドが決定すると指摘し、同国から軍用機をどのようにしてウクライナに移送するかなどの課題があるとも説明した。事情に詳しい関係者の1人は、ウクライナに運ばれる軍用機の代わりとして、F16戦闘機がポーランドやスロバキアなどの国に送られる可能性があることを明らかにした」

     

    ドイツが、ウクライナに提供したミサイルは「旧ソ連製」である。これだと、ロシアも目くじら立てられないという計算が働いている。これと同様に、ロシア製軍用機がウクライナへ提供されれば、ロシアは苦笑いするほかあるまい。ポーランドが、所有するロシア製軍用機をウクライナへ提供すれば、その穴を米国のF―16で補ってくれるという案である。

     

    F―16は、4500機以上製造され、世界20ヵ国以上の空軍が採用している。米国空軍向けの生産は終了しているが、海外では新規に採用する国があるため、輸出向けとして改良型の生産が続いている。こういうベストセラー機が、ポーランド空軍に渡れば、悪い話ではない。他の国々でロシア製軍用機を保有していれば、この際こぞってウクライナへ移譲したいであろう。

     

    (3)「民主党のシューマー上院院内総務は、「東欧諸国にはウクライナにロシア製の軍用機を提供」してほしいとゼレンスキー大統領が強く訴えたとする声明を発表。「こうした軍用機は極めて必要だ」と主張し、バイデン政権に働き掛けると表明した」

    旧ソ連領に組入れられていた東欧諸国には、ロシア製軍用機が保有されているはず。それらが、F-16とバーターされれば、これほど有利な取引もない。

     


    (4)「ウクライナのクレバ外相は5日、ポーランド国境沿いでブリンケン米国務長官と会談した際、「われわれに最も必要なのは戦闘機と攻撃機、防空システムであることは周知の事実だ」と記者団に述べた。米議会側とのビデオ電話で、ゼレンスキー大統領は追加武器支援の約束を取り付けたが、ウクライナ上空にNATOの飛行禁止区域設定を求める訴えには難色が示された。NATOと米政府は、飛行禁止区域を設定すればロシアとの戦争に突入するリスクがあるとしている」

     

    米議会は、追加武器支援では積極的である。だが、飛行禁止区域設定には二の足を踏んでいる。ウクライナ上空を、NATOの飛行禁止区域に設定すると、プーチン氏が「宣戦布告」であると力んでいるからだ。米国とNATOは、戦線拡大のリスクを抱えるだけに慎重である。

     

    テイカカズラ
       

    文政権は、ウクライナ支援において西側諸国で最後になった。韓国は、G7首脳会議に招待されたことで、自称「G8」と呼ぶほど鼻に掛けてきた。それにも関わらず、ウクライナ支援では最も遅れることになったのはなぜか。「親中ロ」外交路線が、災いしたものである。西側諸国が、こぞってウクライナ支援へ動いているにも関わらず、じっと様子見をしていたのだ。

     

    『中央日報』(3月6日付)は、「『堂々としたG8』と自慢した文在寅政権ウクライナには毎回G7より遅かった」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、3月3日午後にウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した。文大統領は「韓国は戦争を体験したため戦争の惨状をだれよりもよくわかる」としながら慰労と支持の意を伝えた。ゼレンスキー大統領は直後にツイッターで電話会談の事実を知らせ韓国に謝意を示した。どうしても遅い感があるのは事実だった。



    (1)「文在寅政権は、任期内に先進7カ国(G7)に加え韓国がG8の地位に上がったと自評した。政府が自負した通り「G8」ならば、ウクライナ支援への動きはどうであったか。G7各国と比較してみよう。バイデン米大統領は言うまでもなく、ジョンソン英首相も数日間隔でゼレンスキー大統領と電話して共同対応を協議する。ゼレンスキー大統領は先月25日にはドイツのシュルツ首相、フランスのマクロン大統領、イタリアのドラギ首相と電話会談した。カナダのトルドー首相は先月27日にウクライナ首相と、2日にはゼレンスキー大統領と電話した。日本の岸田文雄首相は2月15日に続き28日にもゼレンスキー大統領と電話会談した」

     

    文大統領は3月3日午後、初めてウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した。G7各国が2月中に何回もゼレンスキー氏と電話会談しているのに、文氏はこれほど遅れたのだ。最初から、ウクライナ侵攻を深刻な事態と見ていなかったと言われても反論できないだろう。岸田首相は、2月中に2度も電話しているのだ。

     


    (2)「文大統領とゼレンスキー大統領の電話会談の知らせに、うれしさより「いまごろ?」という反応が先に出てきた理由だ。ところがウクライナ情勢悪化以降の韓国政府の対応はほとんどがこのような形だ。どれも一歩ずつ、数日ずつ遅い。それも当然やるべきことをだ。そうしながらまるですごいことをやったかのように、成果のように発表する。ウクライナの戦況が毎日、いや数時間単位で変わる危急状況だが、こうした局面で一歩ずつ、数日ずつ遅れるのは国際社会が認識する韓国の地位と直結する問題であるためだ」

     

    韓国は、西側諸国の動きから見れば明らかに鈍い。日本の植民地にされたと、ことあるごとに怒りをぶちまけ、賠償と謝罪を求める韓国が、ウクライナ侵攻では全く違う動きをした。明らかに、親中ロの外交路線が邪魔したと見られる。韓国の「本籍」は西側か、あるいは中ロ側なのか。韓国の本心が問われる局面である。

     

    (3)「経済制裁もそうだ。今年初めから米国が主導する対ロシア制裁の時計は速く回転していた。ロシアがウクライナ東部地域に対する軍派遣命令を出した2月21日から米国が同盟と友邦を糾合して大々的な制裁に乗り出せたのもこのためだ。イランと北朝鮮には数年かかった強力な制裁が、わずか1週間でほとんど体制を整えたほどだ。韓国にも1月中旬ごろにすでに米国の制裁協議要請があった。だが韓国が参加の立場を明らかにしたのは2月24日だった。それも独自制裁はしないと線を引いてだ」

     

    米国が、2月21日に同盟国と図り大々的な制裁を発表した。韓国は、これより3日遅れて制裁に参加する意思を示したが、独自制裁しないという「名ばかり」な制裁内容であった。

     

    (4)「韓米同盟を外交の主軸とし、世界10位の経済規模を持った韓国としては「3日も」遅れたのだ。後続措置発表にはそれからさらに4日かかった。米国が半導体技術などの対ロシア輸出禁止と関連し、根拠となる海外直接製品規則(FDPR)で「制裁参加パートナー国」の場合には免除を適用するが当初韓国を除いたのもこのためだ。韓国はバイデン大統領が描く対ロシア制裁スクラム、その「信頼の輪」に入っていないのだ。米国は3月3日に免除国リストに韓国を含めることを決めた。「1週間も」遅れた」

    韓国は、ウクライナ国民の苦しみへの連帯よりも、ロシアへの貿易を優先させていた。朝鮮戦争で北朝鮮の侵略を受けた韓国は、現在のウクライナと同じ辛酸な経験を強いられたのである。韓国は、この苦悩を共有する立場を捨てて、金儲けを優先させたのだ。

     


    (5)「人道的支援はもっと早くやるべきだった。他国に大きな災害が発生したらすぐに決めるのが緊急人道的支援だ。
    だがウクライナに対する韓国政府の人道的支援は2月28日に出てきた。規模は1000万ドルだった。もちろん通常の人道的支援規模より大きいのは事実だ。この日の夕方、岸田首相はゼレンスキー大統領と電話で会談し、1億ドル規模の借款提供に加え、さらに1億ドル相当の人道的支援を約束した。これをゼレンスキー大統領がツイッターを通じて直接発表し公式化した。岸田首相の2億ドルのダブル支援の前に韓国の一歩遅れた1000万ドル支援はすぐ関心から埋もれてしまった」

     

    日本が、ウクライナへ2億ドルの人道的支援をしたのに対して、韓国は1000万ドルに止まった。この少ない金額こそ、ロシアへの気配りを示している。TPP(環太平洋経済連携協定)加盟では、中国に気遣いして原加盟国になり損なった。ウクライナ支援では、ロシアを気に掛ける。中ロの「衛星国気分」が抜けないのであろう。

     

    (6)「最も残念な「失機」は、文大統領の三一節の記念演説だった。いまウクライナでは、農夫が体ひとつでロシアの戦車に駆け寄って進軍を防ぎ、子どもたちがロシア兵に向かって小さな手でこぶしを握りながら1日1日を耐え忍んでいる。こうした抵抗精神は1919年の三一運動で私たちの先祖が見せたまさにそれだ。だが文大統領の三一節記念演説に、ウクライナ国民に対する連帯のメッセージはなかった。三一運動に対し「非暴力の平和的な抵抗が新しい時代を開くことができることを見せた。独立の叫びは鴨緑江を渡って太平洋を越え全世界に鳴り響いた」としながらも、これをウクライナ国民の抵抗と連結できなかった」

     

    三一節(日本への抵抗運動)記念演説では、日本への批判を言葉にする。その抵抗精神は当然、ウクライナ国民のロシアへの抵抗精神に繋がる筈である。それが、見られないのだ。韓国の抵抗運動は、日本だけに向けられたものであり、人類普遍でないことを端なくも示している。日本を憎むが、ロシアの蛮行は半ば容認という片手落ちの「抵抗運動論」である。 

     

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    ウクライナの首都キエフに向かっていたロシア軍車両の行列が、燃料不足などの理由で進軍が事実上止まった、と英国放送「ITV」が2日(現地時間)、米国国防総省当局者の言葉を引用して報じた。報道によると、この当局者は「多くの事例を見ると、文字どおり燃料がなくなった」とし、「今や兵士に食べさせる食料まで底をつき始めている」と話した。韓国紙『中央日報』(3月4日付)が伝えている。

     

    米国NBC放送は2月28日(現地時間)、プーチン大統領が「ウクライナでの戦闘状況を聞いて閣僚に対して激怒した」と、米情報当局者の言葉を引用して報じた。プーチン氏が激怒するほど、ウクライナ侵攻の作戦計画の遂行は遅れている。その原因は、燃料不足による物資輸送の遅れにあるという。

     

    『中央日報』(3月4日付)は、「キエフに向かっていたロシア軍64キロメートルの列、燃料不足に進軍止まる」と題する記事を掲載した。


    米国メディアは民間衛星写真分析に基づいて全長64キロメートルに達する車両の行列がキエフ都心まで27キロメートル手前まで接近したと先月28日、報じた。「装甲車・タンク・大砲・支援車両などで構成された行列は、キエフ包囲作戦と無差別砲撃に動員される可能性があると懸念されていた。

     

    (1)「当局者は、「ここ24時間、ロシア軍がキエフに向かってほとんど前進することができなかった」とし、「長引く補給問題の結果ではないか」と話した。戦場で軍用車両の行列がこのように長々と並んでいるのは相手から空襲を受ける危険性が高くなる。英国もロシア軍のキエフ進軍が停滞したとし、同じような診断を下した。ベン・ウォレス英国防相はスカイニュースとのインタビューで「ロシアの侵攻が計画よりかなり遅れている状態」と話した。ウォレス氏はロシア軍に補給問題が持ち上がっている可能性が高く、ウクライナ軍の抵抗のため状況が悪化したと分析した」

     


    ロシア軍の車列が止まっているのは、先頭車列がウクライナ軍の攻撃によるものだろう。故障したロシア軍のトラックを、ウクライナの農民がトラクターで引っ張る情景がSNSに投稿されている。また、高速道路上でウクライナ国民がデモをして、ロシア軍の車列を止めている光景も見られる。ここでは、「牧歌的」な戦場の姿が、映し出されている。大義のない戦争で、ロシア軍の士気が低下している結果と見られる。

    一方、渋滞しているロシア軍の車列は、ウクライナ軍にとって空爆できる絶好のチャンスである。現実には、攻撃されていないのだ。

     

    『中央日報』(3月4日付)は、「身動きできない64キロの露軍…ウクライナは攻撃しないのでなくできなかった」と題する記事を掲載した。

     

    2月28日、ベラルーシから出発してキエフに向かっていたロシア軍の長い護送隊の行列が西側の人工衛星で確認され、1日にはこの行列が64キロメートルに達した。西側の分析家は数百のタンク・装甲車と1個師団(約1万5000人)の兵力がこの中に含まれていると予想した。

    (2)「疑問なのは、ウクライナ軍が身動きできないロシア軍を攻撃せず、静かに見守っている点だ。米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」の軍事専門家ロブ・リー氏は、「巨大な規模の護送隊は航空機による攻撃目標物だが、今回はそのようなことが起きなかった」とした。『フィナンシャル・タイムズ』(FT)は軍事専門家の言葉を引用して「ウクライナ軍は攻撃をしないのではなく、できないのだ」と3月2日、報じた」

     

    ウクライナ軍が、渋滞する車列を攻撃しないのは、攻撃能力の問題で見送らざるを得ないと判断されている。首都防衛に備えて、貴重な武器を温存しているのであろうか。

     


    (3)「ウクライナの軍事力は、全般的にロシアと著しい開きがある。特に空軍力が不足している。このためウクライナが残りの戦力を考慮して護送隊の打撃に出なかった可能性が提起される。ウクライナはトルコから輸入した偵察・攻撃用無人機「バイラクタル TB2」を運用中だ。TB2はこれまでロシア軍の地対空ミサイルを撃破して猛活躍した。だが、保有台数が非常に少ないため中途半端に投じることはできないという見解だ。FTによると、ウクライナはこの無人機を20機余り保有している」

     

    ウクライナ軍は、トルコ製の偵察・攻撃用無人機「バイラクタル TB2」を保有している。トルコとの協定でウクライナでの製造も可能になった。トルコは最近、ロシア艦艇の海峡通過を停止すると発表し、ウクライナ寄り姿勢を強めている。トルコが、TB2供給を増やせば戦況の「局面転換」も可能となろう。

     

    (4)「西側専門家は、「TB2の保有台数が小規模なのでウクライナ軍はTB2を広い範囲に投じようとはしないだろう」と分析した。また他の情報当局関係者は「TB2の場合、長期戦用としては実用性が落ちる」と話した。ウクライナ国防省は2日、「近く追加TB2無人機がトルコから引き渡されるだろう」と発表した」

     

    TB2無人機は、これまでいくつかの他の戦線でめざましい戦果を上げている。ロシア製武器を打ち破っているのだ。こういう実績から見て、膠着している戦線を打開するには、TB2無人機の増加がカギを握っている。

     

    (5)「軍事専門家は、ロシア空軍も当初の予想よりも力が出せていないと分析した。ロシア軍が2月24日の侵攻以降、現在まで制空権掌握に失敗したことがこれを物語っている。FTによると、ロシア軍がウクライナ国境周辺に300機余りの軍用機を配備したが、特に長距離攻撃機はほとんど投じていない。専門家はウクライナの防空網を確実に制圧できないロシア軍が戦闘機損失を懸念して出撃を遅らせていると伝えた。また、伝統的にロシアは地上軍と空軍の合同作戦がスムーズではなかった点も挙げられている

     

    ロシア軍の弱点が、ウクライナ侵攻で露呈している。西側諸国は、ウクライナに強力な武器を供与し、作戦計画面で支援すれば「互角」の戦いが可能になるかも知れない。それに期待したい。

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