勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ウクライナ経済ニュース時評

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    2月24日の未明に始まったロシアのウクライナ侵略は、早くも1ヶ月になる。ロシアは、制圧地域を広げられず戦死者だけが増える、予想もしなかった事態に陥っている。今後、プーチン氏はどうするのか。化学兵器を使うのでないかと警戒されるている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月23日付)は、「ロシア、侵攻1カ月で戦況膠着 制圧地域拡大せず」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがウクライナ侵攻を始めてから24日で1カ月となり、戦況は膠着し始めている。首都キエフを数日で制圧する「短期圧勝シナリオ」は補給体制の不備やウクライナ軍の強い抵抗で崩壊し、制圧地域もほとんど広がっていない。戦闘の継続で、双方とも死傷者が拡大し、戦力の喪失も大きくなっている。人道危機も深刻さを増している。

     


    (1)「米国防総省はロシア軍が10日以降、キエフ近郊ではほとんど前進していないと分析する。ウクライナ軍は22日、キエフ西方の地方都市マカリフを奪回したと発表した。米戦争研究所が22日時点でまとめたロシア軍が支配・侵攻する地域はウクライナ全体の4分の1程度で13日と大きな変化はみられない。ウクライナ軍は、ロシアの黒海艦隊から入手した機密文書をもとに、ロシアは2週間程度で侵攻を完了する計画だったと主張。米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は、ロシア軍がキエフを2日以内に陥落させる段取りを描いていたと暴露した」

     

    ロシアのウクライナ侵略は、「2週間程度で完了計画」であったという。とんだ誤算をしている。ロシアの年間国防予算は600億ドル(約7兆2600億円)以上。対するウクライナはわずか40億ドル(約4800億円)余りだ。この差からみても、簡単にひねり潰せると見ていたのだ。西側職国が、ウクライナを支援するという計算をしていなかったのだ。

     


    (2)「米国防総省高官は22日、記者団に対して侵攻停滞の理由について燃料や食料の補給が依然としてスムーズに進んでいないと指摘した。スコット・ベリア米国防情報局長は8日、ロシア軍の死亡者を2000~4000人と推計した。20年間のアフガニスタン戦争で命を落とした米兵は2461人とされる。軍事サイト「Oryx」によると、ロシア軍の戦車や装甲車の損失は22日時点で800台超とウクライナ軍の3.5倍にのぼり、対地・対空ミサイルも約140と同6割多い。

     

    ロシア軍は、開戦間もなく首都キエフ近郊のホストメル空港に戦闘ヘリコプターで攻撃を仕掛けた。だが、ウクライナ軍の猛攻撃に遭遇して、空挺師団の指揮官が戦死する羽目になった。このためロシア軍は、空路を確保できず、兵員や装備、物資の補給で危険な陸路に頼らざるを得なくなった。ロシア軍は、制空権を奪えなかったことが最大の誤算である。

     


    (3)「米政権の推定で、ロシアは侵攻までに15万~19万人の兵力を国境付近に集めた。弾丸や燃料、食料など兵士1人の維持にかかる費用を1日1000ドル(約12万円)と仮定すれば、1日に1.5億~2億ドルの支出が続く。世界銀行によると、ロシアの2020年の軍事支出は約617億ドルで戦費負担も軽くはない。元米軍高官のベン・ホッジス氏は米欧の経済制裁が効力を発揮し、今後戦費調達が苦しくなることなどもあり、ロシア軍は激しい攻勢を長くは続けられないと分析する」

     

    ロシア軍は、兵士1人の維持にかかる費用を1日1000ドル(約12万円)と仮定すれば、1日に1.5億~2億ドルの支出が続くと推計している。だが、英国では桁違いの1日250億ドル以上と見ている。1日に1.5億~2億ドルは、歩兵1人当たりの「生活費」の合計という意味であろう。ロシア兵の装備は不完全で、凍傷にかかる者も出て戦線を離脱しているほど。安価な装備で出撃させたのだ。

     

    ロシア兵の士気は「極めて低い」と言う西側当局者がいる。別の政府関係者は、ロシア兵はそもそもベラルーシとロシアの雪の中で何週間も待機させられた挙句に、侵略を命じられたので、「凍えているし、くたびれて、腹を空かせている」のだと話した。以上は英『BBC』(3月23日付)が報じた。

     

    (4)「地上部隊の苦戦を受け、ロシア軍は都市部への多数の砲撃などでウクライナの抵抗力をそぐ方針に転換している。特に南東部の港湾都市マリウポリでは避難所や商業施設などへの無差別砲撃を繰り返し、深刻な人道危機が発生している。国連によると、これまでにウクライナで少なくとも953人の一般市民が死亡した。実際にはこの人数を大幅に上回るとの見方が多い。1000万人超が国内外で避難生活を強いられている」

     

    戦線の膠着は、ロシア軍の無差別攻撃を招くので、人命の損傷危機が高まる。これを早く止めるには、さらなる経済制裁しかないのだ。ロシア経済は、これから「大きな代償」を払わされる番である。

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    ロシアは、ウクライナに「無条件降伏」を迫るために無差別攻撃を行なっている。これにより恐怖を植えつけ、ウクライナ側の戦意を喪失させ、降伏を迫るねらいである。シリア内戦で駆使した手法と類似しており、深刻な人道危機を引き起こす恐れが強まってきた。

     

    ウクライナは、無差別攻撃を受けながらも戦意は高い。西側諸国が、支援を強めているから「戦い抜く」という決意を固めている。米国は、ポーランド保有のロシア製軍用機をウクライナへ提供する代わりに。Fー16戦闘機をポーランドへ供与する、「三角バーター」を検討している。

     


    『ブルームバーグ』(3月6日付)は、「米国とポーランド、ウクライナへの軍用機提供を検討-ホワイトハウス」と題する記事を掲載した。

     

    米国は、ロシアの侵略を受けているウクライナ向けに他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国が、軍用機を提供できるかどうかを巡り、ポーランドと協力して取り組んでいる。ホワイトハウス報道官が明らかにした。

     

    (1)「こうした考えは、NATOに加盟している幾つかの東欧諸国が拒否していたが、ウクライナのゼレンスキー大統領が5日に行った米上下両院の300人近い議員とのビデオ電話で取り上げた。電話協議後、米議員の何人かが軍用機の提供を支持すると述べた。ウクライナ軍の操縦士が訓練を受けているロシア製の軍用機が提供される可能性がある」

     


    ウクライナは、数少ない軍用機はロシアとの「決戦」に備えて温存している。僅かに、トルコ製の無人機で攻撃する程度だ。軍用機の提供を受ければ、戦況を立て直してロシアの無差別攻撃の曝される危険性も減る。喉から手が出るほど、軍用機が欲しいところだ。

     

    (2)「ホワイトハウス報道官によれば、ポーランド軍が保有機の中からウクライナに戦闘機を引き渡す可能性があり、バイデン政権はその代替機の手配を検討している。報道官は、ポーランドが決定すると指摘し、同国から軍用機をどのようにしてウクライナに移送するかなどの課題があるとも説明した。事情に詳しい関係者の1人は、ウクライナに運ばれる軍用機の代わりとして、F16戦闘機がポーランドやスロバキアなどの国に送られる可能性があることを明らかにした」

     

    ドイツが、ウクライナに提供したミサイルは「旧ソ連製」である。これだと、ロシアも目くじら立てられないという計算が働いている。これと同様に、ロシア製軍用機がウクライナへ提供されれば、ロシアは苦笑いするほかあるまい。ポーランドが、所有するロシア製軍用機をウクライナへ提供すれば、その穴を米国のF―16で補ってくれるという案である。

     

    F―16は、4500機以上製造され、世界20ヵ国以上の空軍が採用している。米国空軍向けの生産は終了しているが、海外では新規に採用する国があるため、輸出向けとして改良型の生産が続いている。こういうベストセラー機が、ポーランド空軍に渡れば、悪い話ではない。他の国々でロシア製軍用機を保有していれば、この際こぞってウクライナへ移譲したいであろう。

     

    (3)「民主党のシューマー上院院内総務は、「東欧諸国にはウクライナにロシア製の軍用機を提供」してほしいとゼレンスキー大統領が強く訴えたとする声明を発表。「こうした軍用機は極めて必要だ」と主張し、バイデン政権に働き掛けると表明した」

    旧ソ連領に組入れられていた東欧諸国には、ロシア製軍用機が保有されているはず。それらが、F-16とバーターされれば、これほど有利な取引もない。

     


    (4)「ウクライナのクレバ外相は5日、ポーランド国境沿いでブリンケン米国務長官と会談した際、「われわれに最も必要なのは戦闘機と攻撃機、防空システムであることは周知の事実だ」と記者団に述べた。米議会側とのビデオ電話で、ゼレンスキー大統領は追加武器支援の約束を取り付けたが、ウクライナ上空にNATOの飛行禁止区域設定を求める訴えには難色が示された。NATOと米政府は、飛行禁止区域を設定すればロシアとの戦争に突入するリスクがあるとしている」

     

    米議会は、追加武器支援では積極的である。だが、飛行禁止区域設定には二の足を踏んでいる。ウクライナ上空を、NATOの飛行禁止区域に設定すると、プーチン氏が「宣戦布告」であると力んでいるからだ。米国とNATOは、戦線拡大のリスクを抱えるだけに慎重である。

     

    テイカカズラ
       

    文政権は、ウクライナ支援において西側諸国で最後になった。韓国は、G7首脳会議に招待されたことで、自称「G8」と呼ぶほど鼻に掛けてきた。それにも関わらず、ウクライナ支援では最も遅れることになったのはなぜか。「親中ロ」外交路線が、災いしたものである。西側諸国が、こぞってウクライナ支援へ動いているにも関わらず、じっと様子見をしていたのだ。

     

    『中央日報』(3月6日付)は、「『堂々としたG8』と自慢した文在寅政権ウクライナには毎回G7より遅かった」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、3月3日午後にウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した。文大統領は「韓国は戦争を体験したため戦争の惨状をだれよりもよくわかる」としながら慰労と支持の意を伝えた。ゼレンスキー大統領は直後にツイッターで電話会談の事実を知らせ韓国に謝意を示した。どうしても遅い感があるのは事実だった。



    (1)「文在寅政権は、任期内に先進7カ国(G7)に加え韓国がG8の地位に上がったと自評した。政府が自負した通り「G8」ならば、ウクライナ支援への動きはどうであったか。G7各国と比較してみよう。バイデン米大統領は言うまでもなく、ジョンソン英首相も数日間隔でゼレンスキー大統領と電話して共同対応を協議する。ゼレンスキー大統領は先月25日にはドイツのシュルツ首相、フランスのマクロン大統領、イタリアのドラギ首相と電話会談した。カナダのトルドー首相は先月27日にウクライナ首相と、2日にはゼレンスキー大統領と電話した。日本の岸田文雄首相は2月15日に続き28日にもゼレンスキー大統領と電話会談した」

     

    文大統領は3月3日午後、初めてウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した。G7各国が2月中に何回もゼレンスキー氏と電話会談しているのに、文氏はこれほど遅れたのだ。最初から、ウクライナ侵攻を深刻な事態と見ていなかったと言われても反論できないだろう。岸田首相は、2月中に2度も電話しているのだ。

     


    (2)「文大統領とゼレンスキー大統領の電話会談の知らせに、うれしさより「いまごろ?」という反応が先に出てきた理由だ。ところがウクライナ情勢悪化以降の韓国政府の対応はほとんどがこのような形だ。どれも一歩ずつ、数日ずつ遅い。それも当然やるべきことをだ。そうしながらまるですごいことをやったかのように、成果のように発表する。ウクライナの戦況が毎日、いや数時間単位で変わる危急状況だが、こうした局面で一歩ずつ、数日ずつ遅れるのは国際社会が認識する韓国の地位と直結する問題であるためだ」

     

    韓国は、西側諸国の動きから見れば明らかに鈍い。日本の植民地にされたと、ことあるごとに怒りをぶちまけ、賠償と謝罪を求める韓国が、ウクライナ侵攻では全く違う動きをした。明らかに、親中ロの外交路線が邪魔したと見られる。韓国の「本籍」は西側か、あるいは中ロ側なのか。韓国の本心が問われる局面である。

     

    (3)「経済制裁もそうだ。今年初めから米国が主導する対ロシア制裁の時計は速く回転していた。ロシアがウクライナ東部地域に対する軍派遣命令を出した2月21日から米国が同盟と友邦を糾合して大々的な制裁に乗り出せたのもこのためだ。イランと北朝鮮には数年かかった強力な制裁が、わずか1週間でほとんど体制を整えたほどだ。韓国にも1月中旬ごろにすでに米国の制裁協議要請があった。だが韓国が参加の立場を明らかにしたのは2月24日だった。それも独自制裁はしないと線を引いてだ」

     

    米国が、2月21日に同盟国と図り大々的な制裁を発表した。韓国は、これより3日遅れて制裁に参加する意思を示したが、独自制裁しないという「名ばかり」な制裁内容であった。

     

    (4)「韓米同盟を外交の主軸とし、世界10位の経済規模を持った韓国としては「3日も」遅れたのだ。後続措置発表にはそれからさらに4日かかった。米国が半導体技術などの対ロシア輸出禁止と関連し、根拠となる海外直接製品規則(FDPR)で「制裁参加パートナー国」の場合には免除を適用するが当初韓国を除いたのもこのためだ。韓国はバイデン大統領が描く対ロシア制裁スクラム、その「信頼の輪」に入っていないのだ。米国は3月3日に免除国リストに韓国を含めることを決めた。「1週間も」遅れた」

    韓国は、ウクライナ国民の苦しみへの連帯よりも、ロシアへの貿易を優先させていた。朝鮮戦争で北朝鮮の侵略を受けた韓国は、現在のウクライナと同じ辛酸な経験を強いられたのである。韓国は、この苦悩を共有する立場を捨てて、金儲けを優先させたのだ。

     


    (5)「人道的支援はもっと早くやるべきだった。他国に大きな災害が発生したらすぐに決めるのが緊急人道的支援だ。
    だがウクライナに対する韓国政府の人道的支援は2月28日に出てきた。規模は1000万ドルだった。もちろん通常の人道的支援規模より大きいのは事実だ。この日の夕方、岸田首相はゼレンスキー大統領と電話で会談し、1億ドル規模の借款提供に加え、さらに1億ドル相当の人道的支援を約束した。これをゼレンスキー大統領がツイッターを通じて直接発表し公式化した。岸田首相の2億ドルのダブル支援の前に韓国の一歩遅れた1000万ドル支援はすぐ関心から埋もれてしまった」

     

    日本が、ウクライナへ2億ドルの人道的支援をしたのに対して、韓国は1000万ドルに止まった。この少ない金額こそ、ロシアへの気配りを示している。TPP(環太平洋経済連携協定)加盟では、中国に気遣いして原加盟国になり損なった。ウクライナ支援では、ロシアを気に掛ける。中ロの「衛星国気分」が抜けないのであろう。

     

    (6)「最も残念な「失機」は、文大統領の三一節の記念演説だった。いまウクライナでは、農夫が体ひとつでロシアの戦車に駆け寄って進軍を防ぎ、子どもたちがロシア兵に向かって小さな手でこぶしを握りながら1日1日を耐え忍んでいる。こうした抵抗精神は1919年の三一運動で私たちの先祖が見せたまさにそれだ。だが文大統領の三一節記念演説に、ウクライナ国民に対する連帯のメッセージはなかった。三一運動に対し「非暴力の平和的な抵抗が新しい時代を開くことができることを見せた。独立の叫びは鴨緑江を渡って太平洋を越え全世界に鳴り響いた」としながらも、これをウクライナ国民の抵抗と連結できなかった」

     

    三一節(日本への抵抗運動)記念演説では、日本への批判を言葉にする。その抵抗精神は当然、ウクライナ国民のロシアへの抵抗精神に繋がる筈である。それが、見られないのだ。韓国の抵抗運動は、日本だけに向けられたものであり、人類普遍でないことを端なくも示している。日本を憎むが、ロシアの蛮行は半ば容認という片手落ちの「抵抗運動論」である。 

     

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    ウクライナの首都キエフに向かっていたロシア軍車両の行列が、燃料不足などの理由で進軍が事実上止まった、と英国放送「ITV」が2日(現地時間)、米国国防総省当局者の言葉を引用して報じた。報道によると、この当局者は「多くの事例を見ると、文字どおり燃料がなくなった」とし、「今や兵士に食べさせる食料まで底をつき始めている」と話した。韓国紙『中央日報』(3月4日付)が伝えている。

     

    米国NBC放送は2月28日(現地時間)、プーチン大統領が「ウクライナでの戦闘状況を聞いて閣僚に対して激怒した」と、米情報当局者の言葉を引用して報じた。プーチン氏が激怒するほど、ウクライナ侵攻の作戦計画の遂行は遅れている。その原因は、燃料不足による物資輸送の遅れにあるという。

     

    『中央日報』(3月4日付)は、「キエフに向かっていたロシア軍64キロメートルの列、燃料不足に進軍止まる」と題する記事を掲載した。


    米国メディアは民間衛星写真分析に基づいて全長64キロメートルに達する車両の行列がキエフ都心まで27キロメートル手前まで接近したと先月28日、報じた。「装甲車・タンク・大砲・支援車両などで構成された行列は、キエフ包囲作戦と無差別砲撃に動員される可能性があると懸念されていた。

     

    (1)「当局者は、「ここ24時間、ロシア軍がキエフに向かってほとんど前進することができなかった」とし、「長引く補給問題の結果ではないか」と話した。戦場で軍用車両の行列がこのように長々と並んでいるのは相手から空襲を受ける危険性が高くなる。英国もロシア軍のキエフ進軍が停滞したとし、同じような診断を下した。ベン・ウォレス英国防相はスカイニュースとのインタビューで「ロシアの侵攻が計画よりかなり遅れている状態」と話した。ウォレス氏はロシア軍に補給問題が持ち上がっている可能性が高く、ウクライナ軍の抵抗のため状況が悪化したと分析した」

     


    ロシア軍の車列が止まっているのは、先頭車列がウクライナ軍の攻撃によるものだろう。故障したロシア軍のトラックを、ウクライナの農民がトラクターで引っ張る情景がSNSに投稿されている。また、高速道路上でウクライナ国民がデモをして、ロシア軍の車列を止めている光景も見られる。ここでは、「牧歌的」な戦場の姿が、映し出されている。大義のない戦争で、ロシア軍の士気が低下している結果と見られる。

    一方、渋滞しているロシア軍の車列は、ウクライナ軍にとって空爆できる絶好のチャンスである。現実には、攻撃されていないのだ。

     

    『中央日報』(3月4日付)は、「身動きできない64キロの露軍…ウクライナは攻撃しないのでなくできなかった」と題する記事を掲載した。

     

    2月28日、ベラルーシから出発してキエフに向かっていたロシア軍の長い護送隊の行列が西側の人工衛星で確認され、1日にはこの行列が64キロメートルに達した。西側の分析家は数百のタンク・装甲車と1個師団(約1万5000人)の兵力がこの中に含まれていると予想した。

    (2)「疑問なのは、ウクライナ軍が身動きできないロシア軍を攻撃せず、静かに見守っている点だ。米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」の軍事専門家ロブ・リー氏は、「巨大な規模の護送隊は航空機による攻撃目標物だが、今回はそのようなことが起きなかった」とした。『フィナンシャル・タイムズ』(FT)は軍事専門家の言葉を引用して「ウクライナ軍は攻撃をしないのではなく、できないのだ」と3月2日、報じた」

     

    ウクライナ軍が、渋滞する車列を攻撃しないのは、攻撃能力の問題で見送らざるを得ないと判断されている。首都防衛に備えて、貴重な武器を温存しているのであろうか。

     


    (3)「ウクライナの軍事力は、全般的にロシアと著しい開きがある。特に空軍力が不足している。このためウクライナが残りの戦力を考慮して護送隊の打撃に出なかった可能性が提起される。ウクライナはトルコから輸入した偵察・攻撃用無人機「バイラクタル TB2」を運用中だ。TB2はこれまでロシア軍の地対空ミサイルを撃破して猛活躍した。だが、保有台数が非常に少ないため中途半端に投じることはできないという見解だ。FTによると、ウクライナはこの無人機を20機余り保有している」

     

    ウクライナ軍は、トルコ製の偵察・攻撃用無人機「バイラクタル TB2」を保有している。トルコとの協定でウクライナでの製造も可能になった。トルコは最近、ロシア艦艇の海峡通過を停止すると発表し、ウクライナ寄り姿勢を強めている。トルコが、TB2供給を増やせば戦況の「局面転換」も可能となろう。

     

    (4)「西側専門家は、「TB2の保有台数が小規模なのでウクライナ軍はTB2を広い範囲に投じようとはしないだろう」と分析した。また他の情報当局関係者は「TB2の場合、長期戦用としては実用性が落ちる」と話した。ウクライナ国防省は2日、「近く追加TB2無人機がトルコから引き渡されるだろう」と発表した」

     

    TB2無人機は、これまでいくつかの他の戦線でめざましい戦果を上げている。ロシア製武器を打ち破っているのだ。こういう実績から見て、膠着している戦線を打開するには、TB2無人機の増加がカギを握っている。

     

    (5)「軍事専門家は、ロシア空軍も当初の予想よりも力が出せていないと分析した。ロシア軍が2月24日の侵攻以降、現在まで制空権掌握に失敗したことがこれを物語っている。FTによると、ロシア軍がウクライナ国境周辺に300機余りの軍用機を配備したが、特に長距離攻撃機はほとんど投じていない。専門家はウクライナの防空網を確実に制圧できないロシア軍が戦闘機損失を懸念して出撃を遅らせていると伝えた。また、伝統的にロシアは地上軍と空軍の合同作戦がスムーズではなかった点も挙げられている

     

    ロシア軍の弱点が、ウクライナ侵攻で露呈している。西側諸国は、ウクライナに強力な武器を供与し、作戦計画面で支援すれば「互角」の戦いが可能になるかも知れない。それに期待したい。

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    ウクライナ侵攻のロシア軍は、進行速度が遅れているとのニュースが報じられている。ロシア軍が、ウクライナの軍隊や民間人の抵抗に遭っている結果だ。その裏で、ロシア軍が食料や燃料の不足など基本的な物資補給面の課題に直面しているという。米国防当局高官が3月1日、匿名で述べたところでは、「一部の部隊では士気が低下しているもよう」という。『ロイター』(3月2日付)が報じた。

     

    ロシア兵の士気低下は食糧不足も理由であろうが、外にも大きな要因がある。ウクライナ側が、「プーチン戦争」によって死傷したり、捕虜になった兵士の「生の声」や映像をロシア側へ流しているのだ。ロシア軍の隠したい事実が、映像や音声で公開されているので、ロシア兵の家族が知るところとなっている。これが、ロシア兵の士気低下に繋がっていると見られる。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月2日付)は、「ロシアが隠す戦争の悲惨さ、ウクライナの武器に」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア政府が国民の目に触れないようにしている数々の画像が、ウクライナ側ではテレグラム(対話アプリ)の「ルック・フォー・ユアーズ」と呼ばれるチャンネルで数分おきに流れている。その一つは、雪原で硬直して横たわっている迷彩服姿の男性の遺体を映し出していた。顔があった部分は損傷が激しく血だらけで「身元不明」の字幕が添えられている。

     

    (1)「ウクライナ内務省当局者が運営するこうしたチャンネルやウェブサイトは、ウクライナ側が「ロシアの弱み」とみるものに照準を定めている。つまり、ロシア国内の銃後の守りや兵士らの士気だ。ロシア当局者はウクライナへの侵攻を開始して以降、市民から大きな抵抗を受けているとの見方を否定しており、ロシア側に犠牲者は出ていないと説明してきた。ルック・フォー・ユアーズに投稿される画像や映像は、焼け焦げた遺体や破壊された車両の中でねじれた遺体など、戦争の悲惨な現実を物語っている。また捕虜の動画や捕虜や死者の身元確認書類も扱っている」

     


    ロシアの最も隠したい情報が、ウクライナ側から明らかにされている。プーチン氏一人の憤懣で始めた「プーチン戦争」で、ロシアの若者が死傷しているのだ。ロシアで現在、高まっている反戦運動の裏には、こういう戦争の実態が知れ渡ってきた面もあろう。

     

    ロシアの市民生活は、SWIFT排除によるルーブル暴落で消費者物価が高騰する。全て「プーチン戦争」の結果である。ロシア国内は、反プーチン運動で揺れるだろう。

     

    (2)「ウクライナ内務省当局者のビクトル・アンドルシフ氏は、ルック・フォー・ユアーズへの投稿動画で、「残念ながら、すべての写真について身元を特定することはできない」とロシア語で語っている。「これらはすべて、あなたの大統領が仕掛けた戦争の恐ろしさに他ならない」。このチャンネルでは、捕虜の動画も投稿しており、中には司令官に見捨てられた、あるいはウクライナ侵攻について知らされないまま、軍事演習に参加するためにベラルーシに送られたと話すロシア兵士もいる」

     

    プーチン侵略戦争の悲惨さが、生の映像と声でロシアの家庭へ伝わるとは、これまで想像もできなかった事態だ。大義なき戦いは、敗れる運命にある。

     

    (3)「ウクライナ政府のこうした取り組みは、ロシア国民がウクライナとの戦闘に送られた親族の兵士を特定し、連絡を取れるよう支援することが目的だと説明した。ウクライナ国防省は親族を探すロシア人のために「ウクライナからの生還」と称するホットラインを開設した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は国民に対して、一般市民を人質にとっている西側支援を受けた敵対的な政府から、ウクライナを解放していると説明している。しかし、こうした口実は維持することがますます難しくなってきた。ウクライナ軍は激しく抵抗しているほか、一般市民も戦いに加わるなどしており、ロシア軍の進軍は停滞。犠牲者も増えているためだ。ロシア国防省は2月27日、初めて兵士が殺害されたことを明らかにした」

     

    ロシアは、死傷者の情報を隠してきたが発表せざるを得なくなっている。ウクライナ側からの「生の情報」に押された結果であろう。下線部のウクライナによるホットライン開設は、いやが上にもロシア兵家族の不安を煽る。ロシア政府の「ウソ」が暴かれるのだ。

     

    (4)「ロシアによる全面侵攻が始まって以降、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領をはじめ、ウクライナ当局者はロシア国民に対して、戦争に反対するよう繰り返し訴えている。前出のウクライナ内務省当局者アンドルシフ氏は、ルック・フォー・ユアーズのウェブサイトで、ロシア兵の親族にこう訴えている。「この戦争を終わらせるため、できる限りの手段を尽くして。あなたの子どもや夫、息子がわが国で死なずにすむように」ある動画では、目隠しされた男が差し出された携帯電話で「母さん、自分はウクライナの捕虜になった」と話している。これに対し、「どうしてそんなにことに?」と答える女性の声が聞かれる」

     

    下線部は、ロシア兵の士気を低下させると同時に、ロシアの反戦運動を高めるであろう。若者を侵略戦争の犠牲にしてはならないのだ。

     

    (5)「ロシアでは、ウクライナに送られた徴集兵や職業軍人の親らが、侵攻開始以降、連絡が取れなくなった息子の居場所を突き止める運動を始めたそのロシア非政府組織「兵士の母委員会」は全国に展開する支部で、愛する人の情報を求める親族からの問い合わせに当たっている。責任者のスベトラナ・ゴーラブさんは「受けた問い合わせの数はもう数え切れない」と話す。「母親、祖母、父親、甥(おい)、友人などさまざまな人から電話を受ける。ホットラインには問い合わせが殺到しており、すべての電話に出て話を聞くよう努めている」。ロシア南部の都市、ボルゴグラードで兵士の母委員会の責任者を務めるニーナ・ポノマレバさんは、ロシアの侵攻が始まって以降、一日に少なくとも10件の問い合わせがあると話す」

     

    2月24日の侵攻開始以降、ロシアでは連絡が取れなくなった兵士の居場所を突き止める運動が始まった。これは、死傷したかウクライナで捕虜になっている証明であろう。ロシアのホットラインには問い合わせが殺到しているという。「プーチン戦争」の犠牲者が、気の毒なことにそれだけ多いのだ。

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