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ウクライナ侵攻のロシア軍は、進行速度が遅れているとのニュースが報じられている。ロシア軍が、ウクライナの軍隊や民間人の抵抗に遭っている結果だ。その裏で、ロシア軍が食料や燃料の不足など基本的な物資補給面の課題に直面しているという。米国防当局高官が3月1日、匿名で述べたところでは、「一部の部隊では士気が低下しているもよう」という。『ロイター』(3月2日付)が報じた。

 

ロシア兵の士気低下は食糧不足も理由であろうが、外にも大きな要因がある。ウクライナ側が、「プーチン戦争」によって死傷したり、捕虜になった兵士の「生の声」や映像をロシア側へ流しているのだ。ロシア軍の隠したい事実が、映像や音声で公開されているので、ロシア兵の家族が知るところとなっている。これが、ロシア兵の士気低下に繋がっていると見られる。

 


米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月2日付)は、「ロシアが隠す戦争の悲惨さ、ウクライナの武器に」と題する記事を掲載した。

 

ロシア政府が国民の目に触れないようにしている数々の画像が、ウクライナ側ではテレグラム(対話アプリ)の「ルック・フォー・ユアーズ」と呼ばれるチャンネルで数分おきに流れている。その一つは、雪原で硬直して横たわっている迷彩服姿の男性の遺体を映し出していた。顔があった部分は損傷が激しく血だらけで「身元不明」の字幕が添えられている。

 

(1)「ウクライナ内務省当局者が運営するこうしたチャンネルやウェブサイトは、ウクライナ側が「ロシアの弱み」とみるものに照準を定めている。つまり、ロシア国内の銃後の守りや兵士らの士気だ。ロシア当局者はウクライナへの侵攻を開始して以降、市民から大きな抵抗を受けているとの見方を否定しており、ロシア側に犠牲者は出ていないと説明してきた。ルック・フォー・ユアーズに投稿される画像や映像は、焼け焦げた遺体や破壊された車両の中でねじれた遺体など、戦争の悲惨な現実を物語っている。また捕虜の動画や捕虜や死者の身元確認書類も扱っている」

 


ロシアの最も隠したい情報が、ウクライナ側から明らかにされている。プーチン氏一人の憤懣で始めた「プーチン戦争」で、ロシアの若者が死傷しているのだ。ロシアで現在、高まっている反戦運動の裏には、こういう戦争の実態が知れ渡ってきた面もあろう。

 

ロシアの市民生活は、SWIFT排除によるルーブル暴落で消費者物価が高騰する。全て「プーチン戦争」の結果である。ロシア国内は、反プーチン運動で揺れるだろう。

 

(2)「ウクライナ内務省当局者のビクトル・アンドルシフ氏は、ルック・フォー・ユアーズへの投稿動画で、「残念ながら、すべての写真について身元を特定することはできない」とロシア語で語っている。「これらはすべて、あなたの大統領が仕掛けた戦争の恐ろしさに他ならない」。このチャンネルでは、捕虜の動画も投稿しており、中には司令官に見捨てられた、あるいはウクライナ侵攻について知らされないまま、軍事演習に参加するためにベラルーシに送られたと話すロシア兵士もいる」

 

プーチン侵略戦争の悲惨さが、生の映像と声でロシアの家庭へ伝わるとは、これまで想像もできなかった事態だ。大義なき戦いは、敗れる運命にある。

 

(3)「ウクライナ政府のこうした取り組みは、ロシア国民がウクライナとの戦闘に送られた親族の兵士を特定し、連絡を取れるよう支援することが目的だと説明した。ウクライナ国防省は親族を探すロシア人のために「ウクライナからの生還」と称するホットラインを開設した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は国民に対して、一般市民を人質にとっている西側支援を受けた敵対的な政府から、ウクライナを解放していると説明している。しかし、こうした口実は維持することがますます難しくなってきた。ウクライナ軍は激しく抵抗しているほか、一般市民も戦いに加わるなどしており、ロシア軍の進軍は停滞。犠牲者も増えているためだ。ロシア国防省は2月27日、初めて兵士が殺害されたことを明らかにした」

 

ロシアは、死傷者の情報を隠してきたが発表せざるを得なくなっている。ウクライナ側からの「生の情報」に押された結果であろう。下線部のウクライナによるホットライン開設は、いやが上にもロシア兵家族の不安を煽る。ロシア政府の「ウソ」が暴かれるのだ。

 

(4)「ロシアによる全面侵攻が始まって以降、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領をはじめ、ウクライナ当局者はロシア国民に対して、戦争に反対するよう繰り返し訴えている。前出のウクライナ内務省当局者アンドルシフ氏は、ルック・フォー・ユアーズのウェブサイトで、ロシア兵の親族にこう訴えている。「この戦争を終わらせるため、できる限りの手段を尽くして。あなたの子どもや夫、息子がわが国で死なずにすむように」ある動画では、目隠しされた男が差し出された携帯電話で「母さん、自分はウクライナの捕虜になった」と話している。これに対し、「どうしてそんなにことに?」と答える女性の声が聞かれる」

 

下線部は、ロシア兵の士気を低下させると同時に、ロシアの反戦運動を高めるであろう。若者を侵略戦争の犠牲にしてはならないのだ。

 

(5)「ロシアでは、ウクライナに送られた徴集兵や職業軍人の親らが、侵攻開始以降、連絡が取れなくなった息子の居場所を突き止める運動を始めたそのロシア非政府組織「兵士の母委員会」は全国に展開する支部で、愛する人の情報を求める親族からの問い合わせに当たっている。責任者のスベトラナ・ゴーラブさんは「受けた問い合わせの数はもう数え切れない」と話す。「母親、祖母、父親、甥(おい)、友人などさまざまな人から電話を受ける。ホットラインには問い合わせが殺到しており、すべての電話に出て話を聞くよう努めている」。ロシア南部の都市、ボルゴグラードで兵士の母委員会の責任者を務めるニーナ・ポノマレバさんは、ロシアの侵攻が始まって以降、一日に少なくとも10件の問い合わせがあると話す」

 

2月24日の侵攻開始以降、ロシアでは連絡が取れなくなった兵士の居場所を突き止める運動が始まった。これは、死傷したかウクライナで捕虜になっている証明であろう。ロシアのホットラインには問い合わせが殺到しているという。「プーチン戦争」の犠牲者が、気の毒なことにそれだけ多いのだ。