勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース時評 > ロシア経済ニュース時評

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    流血の惨事が予想されていた「ワグネルの反乱」は、ベラルーシ大統領の仲介で収拾された。ワグネルはモスクワへの「行進」を中止して撤収する。プリゴジン氏は、ベラルーシへ行くというのが合意事項だ。今回の騒動は、大きな波紋を残した。プーチン大統領が、騒ぎを事前に解決できなかったこと。また、ワグネルに特別功労賞を贈りながら、一転した「逆賊」扱いにしてロシア国民へ説明できない事態となったこと。プリゴジン氏は、ウクライナ侵攻の不当性を訴えていたこともあり、プーチン氏の受けた打撃は計り知れない。

     

    『BBC』(6月25日付)は、「『ワグネル』プリゴジン氏、 モスクワへの前進中止を発表 ベラルーシ大統領が仲介とロシア報道」と題する記事を掲載した。

     

    プリゴジン氏はメッセージアプリ「テレグラム」で、「ロシア人の血が流れる(可能性の)責任を理解し、我々は隊列を方向転換させ、予定通り野営地に戻る」と書いた。

    24日夜には、ロシア南西部ロストフ・ナ・ドヌにあるロシア軍の南部軍管区司令本部を、ワグネル戦闘員と共に出るプリゴジン氏の姿が確認された。

     

    (1)「これに先立ち、プーチン大統領の報道官、ドミトリー・ペスコフ氏は午後9時(日本時間25日午前3時)ごろ、プリゴジン氏とワグネルへの刑事訴追は中止し、プリゴジン氏はベラルーシへ移動すると明らかにした。ロシア国防省と雇用契約を交わしたいワグネルの雇い兵は、引き続きそれは可能だとも述べた。さらにペスコフ報道官は、ワグネルのこの日の行動がウクライナでのロシアの軍事行動に影響するなど「ありえない」と強調した」

     

    (2)「ロシア政府は24日未明には、プリゴジン氏が「武装蜂起」を呼びかけ内戦を開始しようとしたとして、刑事捜査に着手したと明らかにしていた。ロシア国営テレビ「ロシア24」によると、事態が一気に収束へ向かったのは、ベラルーシのルカシェンコ大統領がプリゴジン氏と電話で協議した後のことだという。ロシア24は、ルカシェンコ大統領の広報を引用する形で、「ロシア領内でワグネルの移動を中止するというルカシェンコの提案を、プリゴジンは受け入れた」と伝えた。さらに、「ワグネル戦闘員の安全保証と共に、受け入れ可能な事態沈静化の形を見つけることは可能だ」と判明したとも報道した」

     

    今回の「ワグネル反乱」は、日本の「2・26事件」(1936年)に似たような面もある。この事件では、「首謀者」を除き寛大な処分になった。これが、後の太平洋戦争への火種になった。「ワグネル反乱」では、刑事訴追を中止するので誰も罰せられないのだ。一度は、大ナタを振るいながら、うやむやにする便宜的解決策になった。これが、ロシアの統制がぐらついていることを示している。ロシアが、国際法違反の傭兵部隊をウクライナ侵攻に用いたこと自体、プーチン氏の統率力の欠如を示している。

     

    「2・26事件」では、ケジメをしっかりつけなかった。これがその後、青年将校の跋扈を許したのである。彼らは米国との開戦を迫り、東条首相の生命を脅かすまでに増長した。そういう日本の脆弱性と似ているのだ。

     

     

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    6月6日未明に起ったウクライナ南部のダム決壊は、想像以上の後遺症をもたらすことが分ってきた。ウクライナ軍南部司令部のナタリヤ・フメニュク報道官は、ウクライナ・テレビに対し「(ロシア占領地域の)対歩兵用地雷の多くが浮き上がり、水に流されている」と述べた。その上で、こうした地雷ががれきなどに当たると爆発する可能性が高いと述べ、「これは大きな危険となる」と指摘する。事態は深刻である。 

    ウクライナとロシアは互いを非難しているが、ダムの決壊が起きたのはロシアの占領地域である。決壊の原因はまだ分っていないものの、CNNによる衛星画像の分析によれば、ダムは決壊の数日前に損傷していた。この損傷が、自然発生か人為的工作によるものかは不明である。ロシア側の占領地域ダムだけに、損傷を修復する、あるいは警告する義務がロシア側にある。ロシアの責任は免れず永遠の十字架を背負うだろう。

     

    『ブルームバーグ』(6月8日付)は、「ロシアのエリート層、ウクライナ侵攻の見通し悲観ー停戦も見えず」と題する記事を掲載した。 

    プーチン大統領が始めたウクライナ侵攻を巡り、重苦しい空気がロシアのエリート層を支配している。ロシアにとっていまやあり得る結果は、最善でも紛争の「凍結」でしかないとの見方が広がっている。 

    (1)「事情に詳しい7人の関係者によると、政治や実業界のエリート層の多くは戦争にうんざりし、戦争を止めたいと考えているが、プーチン大統領が戦争を停止するとは思っていない。関係者は繊細な内容を話しているとして匿名を要請した。侵攻について大統領に立ち向かおうとする者は誰もいないが、政権に対する絶対的な信念は揺らいでいると、関係者4人が述べた 

    ロシア・エリートは、すでにプーチン氏への絶対的な信念が揺らいでいる。危険水域へ入っている証拠だ。 

    (2)「最も望ましい展開は、年内に交渉が行われて紛争が「凍結」され、占領地域の一部の支配を維持してプーチン氏が一応の勝利を宣言できるようになることだと、関係者の2人は話した。元ロシア政府顧問で侵攻後に国を離れ、現在はウィーンを拠点とするシンクタンク、『Re:Russia』の責任者を務めるキリル・ロゴフ氏は「エリートは袋小路にはまっている。無意味な戦争のスケープゴートにされることを恐れている」と指摘。「ロシアのエリート層の間で、プーチン氏が今回の戦争に勝利できない可能性がこれほど広く考えられるようになったというのは、実に驚くべきだ」と続けた」 

    プーチン氏への絶対的な信頼が揺らいでいることは、これまでになかった。「プーチン終焉」が近くなっている兆候であろう。

     

    (3)「失望感の深まりで、先行きが怪しくなってきた侵攻の責任を巡る非難合戦が強まりそうだ。すでに、国粋主義的な強硬派とロシア国防省の間の亀裂は表面化している。欧米の巨額の支援を受けたウクライナが反転攻勢に乗り出す中で、ロシア当局者による戦況好転への期待は低い。ロシア軍は冬季に攻勢をかけたもののほとんど進軍できず、多大な犠牲ばかりを生んだ」 

    下線部は、重大な事態である。傭兵組織を率いるプリゴジン氏は国防省トップをこき下ろしている。これだけでも「敗北の前兆」だ。プーチン氏が、この紛糾を抑える動きもしないとは、どういう意味か。両者が、武器を持っているので片方の肩を持てば相手側がプーチン氏の追い落としを策するであろう。そういう意味では、極めて危険なゾーンに入っている。ウクライナ侵攻の継戦能力に疑問符がつくのだ。 

    (4)「ウクライナに対する侵攻を支持し、攻撃強化を望んでいた向きですら、戦争の見通しに対する期待はしぼんだ様子だ。侵攻は当初、数日で終わると考えられていたが、いまや16カ月目に入った。ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループ創設者のエフゲニー・プリゴジン氏ら国粋主義者は、ショイグ国防相とゲラシモフ軍参謀総長に軍事的失敗の責任があると非難し、破滅的な敗北を避けるため総動員と戒厳令の導入を呼び掛けている。ロシア大統領府と緊密な関係を持つ政治コンサルタントのセルゲイ・マルコフ氏は、「あまりに多くの大きな誤りがあった」と述べ、「ずっと前には、ロシアがウクライナの大部分を占領できるとの期待があった。しかしその期待は実現しなかった」と説明した」 

    国粋主義者と国防省のトップが、責任のなすり合いをしている。これは、ウクライナ侵攻が敗北過程に入っている証拠であろう。旧日本軍では、最後に陸軍と海軍が争って合同作戦を妨げた例もある。「負け戦」とは、内部の統一が崩れることでもあるのだ。

     

    (5)「プーチン大統領と政権幹部は、まだロシアが勝利するとの主張を続けている。政権内部からプーチン氏に挑戦するような兆しは見られない。事情に詳しい関係者4人によると、エリートの大半は大勢に影響を及ぼすことはできないと信じ、目立たないようおとなしく仕事に専念しているという。プーチン氏は終戦を望んでいる兆候を一切見せていないと、関係者5人が述べた」 

    日本では敗戦前夜、ポツダム宣言受託をめぐって血なまぐさい争いがあった。終戦促進派がいた。ロシアには、未だそれが現れないのだ。エリートは、「国難」を見て見ぬ振りをしている。これもロシア危機を示す例だ。

     

     

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    ロシア軍は、陸上攻撃が減る一方、首都キーウへのロケットと無人機攻撃が行われている。28日現在、14回目のロケットと無人機の攻撃が行われた。29日の朝は、ロシアの砲撃がウクライナ西部の空軍基地を襲い、航空機5機と滑走路が損傷した。ここ数日で2度目の大規模なロケットとドローンによる攻撃である。

     

    『CNN』(5月29日付)は、「ウクライナ首都への攻撃、ロシアが多大な労力をかける理由は」と題する記事を掲載した。

     

     ウクライナの首都キーウがロシア軍による空からの攻撃の標的となったのは5月に入り14日目となった。ウクライナ当局者の推計によれば、28日未明にキーウに対して行われた攻撃で、ロシアはドローン(無人機)50機あまりを送り込んだ。市当局によれば、ドローンの大部分は防空システムによって破壊され、死傷者や損害も最小限に抑えられた模様だ。

     

    (1)「なぜロシアは、見返りが限られるなかでも、攻撃にこれほどの労力をつぎ込むのだろうか。一つにはイラン製のドローン「シャヘド」がキーウに対して何らかの苦痛を与えるのに安価な方法だということだ。キーウは昨年の大部分、ロシアによる侵攻の影響を免れていた。

     

    キーウへの攻撃は、防空システムによってほぼ撃ち落とされている。ただ。イラン製ドローンは安価であることから、ウクライナ市民を苦しめる目的で使われている模様だ。

     

    (2)「ロシアは数百機のドローンを購入しているが、ドローンの価格はミサイルの20分の1程度に過ぎない。夜間の攻撃では、数千人の人々が避難所や地下室に逃げ込む。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、キーウで空襲のサイレンが鳴った時間は887時間におよぶ。歴史的に見て近いのは、第2次世界大戦の末期に、ナチス・ドイツがV2ロケットを使って英首都ロンドンに対して行った空爆かもしれない」

     

    キーウの空襲サイレンは、887時間にも及ぶ。第二次世界大戦で、英国ロンドンがドイツの攻撃で受けた空襲サイレン時間に匹敵するという。

     

    (3)「キーウ市は、28日に1500年以上前の建都を記念した「キーウ市の日」を祝う準備を進めていたが、ロシアによる攻撃は偶然ではないだろう。こうした攻撃が行われ、避難と疲れにもかかわらず、キーウの人々の姿勢は弱まるどころか強さを増しているようだ。ロシア側がドローンを送り込む目的は、ウクライナの防空能力を疲弊させ、少なくなっている弾薬をドローンに対して使わせることにある可能性が高い」

     

    ロシアは、ウクライナを屈服させるべく「奇策」を使っている。だが、ウクライナ市民の抵抗精神はますます高まっている。侵略期間が長くなるほど、ロシア経済が追い詰められることを忘れているのだ。

     

    ロシア中央銀行は5月26日、次のような報告を発表した。「ロシア株式市場において、個人投資家の信頼が低下した場合、長期的に資金が外部へ流出し、ロシア企業の長期資金調達能力の低下リスクがある」と警告している。『ロイター』(5月29日付)が報じた。ロシアは、イラン製ドローンでウクライナを威嚇している愚かさに気づくことだ。ウクライナ政府は、イランに対しても対抗措置を講じる。

     

    『CNN』(5月29日付)は、「イラン製ドローンによる首都攻撃、イランに相応の結果を警告 ウクライナ」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、首都キーウに対する攻撃にイラン製ドローン(無人機)「シャヘド」が使われたことを受けて、イランに対して相応の結果を警告した。

     

    (4)「ポドリャク氏はツイッターへの投稿で、イラン政府はウクライナでの戦争で、ロシア政府の重要な同盟国となり、民間の都市に対する攻撃用の武器を意図的に供給していると指摘。ポドリャク氏は、28日のキーウへの攻撃で50機のシャヘドが使われたこともイランによる武器供給という真実を雄弁に物語っていると述べた。ポドリャク氏は「法律的観点から言えば、イランは直接的な意図を持ち、その行動の結果を理解した上で、これを行っている。そこには必ず結果が伴う」と述べた」

     

    ウクライナは、イランへの制裁措置を検討している。イラン政府は、公式にはロシアへの無人機販売を否定している。

     

    (5)「ポドリャク氏によれば、ウクライナのゼレンスキー大統領は政府に対して、50年間のイランへの制裁を提案するという。大統領府高官によれば、提案される制裁は、イラン人に対する貿易や金融、技術の制限、ウクライナ領内のイランの船舶や飛行機の通過の禁止など」

     

    ウクライナは、イランへの制裁措置を早急に発表すべきだ。ポドリャク氏のBBCとのインタビューで、「ゼレンスキー大統領は、強い性格の持ち主である。ゼレンスキー夫人以外、彼の意思を変えられる人はいない」とジョークを飛ばした。イランへ強い制裁措置を考えているに違いない。

     

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    G7のウクライナ支援策

    中国のロシア支援が明確

    中国の自国利益優先とは

    NATOが軍事支援協定

     

    中国は、意に沿わぬ国に対しところ構わず「戦狼外交」で威嚇してきた。その中国が一転して、「仲介外交」というハト派に転じ、ウクライナ侵攻の平和解決に向けて特使を派遣した。中国特使は5月16~17日に、最初の訪問国としてウクライナへ。次は、19日にポーランドへ足を伸ばしたが、いずれも厳しい反応が返ってきた。中国特使は、ウクライナでゼレンスキー大統領と会談したが、ウクライナ当局はその事実すら発表せず黙殺された形だ。よほど、ウクライナを怒らせた会談内容であったのであろう。

     

    中国特使は、ポーランドでもほぼウクライナ同様の対応が返ってきた。おまけに、ロシアへ武器の支援をしたならば、欧州との関係で重大な結果をもたらされると警告された。中国特使が、「玄関払い」の扱いを受けることになったのだ。およそ、「特使」という扱いを受けず、厄介者扱いされたのである。

     

    ロシアは、ウクライナを侵略した。中国は本来、そのロシアを説得し侵略行為を中止させなければならない立場である。この重大な事実に触れず一方的に停戦を求めても、ウクライナが聞く耳持たぬのは当然だ。ウクライナは現在、侵略された国土の奪回を求めて反攻作戦の準備をしている最中である。そのウクライナが、中国の「和平案」を受け入れることは、ロシアの侵略を認めることだ。中国は、こうした不条理な和平案を持ち込んだのである。外交センスが、完全にズレていることを示した。

     

    G7のウクライナ支援策

    こうした前哨戦の後、5月19~21日にG7広島サミットが開催された。発表された共同宣言の最初の項目は「ウクライナ」である。次のような内容だ。

     

    1)国際法の重大な違反であるロシアによるウクライナ侵攻を改めて最も強い言葉で非難。

    2)ロシアの残忍な侵略戦争は国際社会の基本的な規範、規則、原則に反し、全世界への脅威だ。

    3)永続的な平和を取り戻すため必要な限り、ウクライナへの揺るぎない支援を再確認する。ウクライナに対する外交、財政、人道、軍事的な支援を強化する。

     

    このG7の共同発表によれば、中国の和平案は「白と黒」の関係に立つ。中国案が12項目からなるが、主要部分は次の点である。

    1)すべての国の主権の尊重

    2)冷戦思考からの脱却

    3)敵対行為の停止

    4) 和平交渉の再開

     

    1)は、文字通りに読めば、ロシアの侵略を認めない前提に立っている。ロシアは、明白にウクライナの主権を侵害したからだ。だが、NATO(北大西洋条約機構)が加盟国を増やしてロシアの主権を脅かしたので、ウクライナ侵攻はロシアの「自衛戦争」という位置づけと理解すれば、ロシアの主権尊重という意味合いになる。両方にとれる「曲球」である。

    2)は、「ロシアの主権尊重」と理解すれば、NATOがウクライナを支援するのは「冷戦志向」という解釈になる。このウクライナへの支援を止めろという文脈だ。

    3)は、「ロシアの主権尊重」の立場から言えば、ウクライナが戦闘行為を中止すべきという結論になる。

    4)は、ロシア主導で和平交渉を行う、という結論になるであろう。

     

    以上のように解釈すると、中国の和平案は中立を装った「ロシア提案の和平案」と言って差し支えないほど、不公平な案である。この裏には、中国の台湾侵攻の意図が隠されていることに気づかねばならない。つまり、台湾の主権は中国にあるという解釈である。だが、中国政府の主権は台湾に及んでいないのだ。選挙で選ばれた台湾政府が、国民と領土を統治しているもので、台湾に国家主権が成立する。中国の台湾侵攻は、国際法違反行為になる。ロシアのウクライナ侵攻と中国の台湾侵攻は、同一次元において完全な国際法違反となる。

     

    中国のロシア支援が明確

    実は、今年2月にインドで開催されたG20の財務相・中央銀行総裁会議で、ウクライナを侵攻するロシア非難の合同宣言を見送らざるを得なかった一件がある。ロシアと中国が反対したからだ。他の18カ国は、ロシア非難で一致していた。ここから読み取れることは、中ロが紛う方なき「一枚岩」の団結を示している点である。

     

    共同宣言案の中で、ロシアによる軍事侵攻を「最も強い表現」で非難するという部分について、中国が受け入れを拒否した。ロシア政府は、西側の「反ロシア」諸国がG20を「不安定」にしたと非難した。G20議長国のインドは、その後に「議長総括」を発表。その中で、ウクライナの状況と対ロシア制裁について「複数の異なる情勢分析」があったと指摘して内幕を明かした。中国とロシアが反対したのだ。

     

    これまでの国連におけるロシア非難決議の採決では、ただ「賛成・反対・棄権」の中から選択するだけで、その理由は不明であった。だが、今年のG20の財務相・中央銀行総裁会議では、中国が国連決議におけるような「棄権」でなく、堂々とロシアと同一意見であることを示した。この一点を以て「中ロ」は一体化していることを明確にした。厳密に言えば、中国にはウクライナ侵攻での公平な「和平仲介」国になる資格がないのだ。(つづく)

     

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    ウクライナ軍は、気象条件の回復を待って領土奪回作戦を行うとしている。防衛側に立つロシア軍は、深刻な人員と弾薬の不足に直面しているとの分析が、米国家情報長官によって明らかにされた。ロシア側の攻撃主力部隊になっている民間軍事会社ワグネルのプリコジン氏は、弾薬不足を理由にして、5月10日に撤退すると発表。ロシア軍の弾薬不足は深刻な様子である。

     

    米『CNN』(5月5日付)は、「『ロシア、今年大きな攻撃は不可能』米国家情報長官」と題する記事を掲載した。

     

     ヘインズ米国家情報長官は4日、ウクライナとロシアの戦争について、ウクライナ軍の反攻の成否にかかわらず、ロシア軍は弾薬と人員の不足により「今年大きな攻撃」をかけることはできないとの見方を示した。

     

    1)「ヘインズ氏は上院軍事委員会に対し「実際、ロシアが強制動員を開始せず、イランなど既存の供給元に加えて第三者からのかなりの弾薬供給を確保しなければ、小さな攻撃すらロシアにとっては続けることが難しくなるだろう」と述べた。さらに、ヘインズ氏はロシアのプーチン大統領について、「おそらく」ウクライナにおける短期的な野心を縮小したと指摘。「ウクライナの東部と南部の占領地支配を強固にし、絶対にウクライナを北大西洋条約機構(NATO)の加盟国としない」ことを勝利と考えていると付け加えた。

     

    プーチン氏は、勝利の条件として東部・南部の占領地とウクライナのNATO加盟阻止に固執すると見られる。これらが、認められない限り、和平交渉に応じないのだろう。

     

    2)「ただ、こうした評価にもかかわらず、ロシアが今年停戦を交渉する可能性は高くないと同氏は述べた。政治的な要素が「プーチン氏の考えを変える」ことがない限り、そうした交渉に入る公算は極めて低いとした。また、ロシア軍はウクライナ軍の反攻に備えて「新たな防衛態勢」を整えつつあり、「4月に獲得した領土は、その前の3カ月のどの月よりも少なかった」と説明した。

     

    停戦交渉は、今年中に行う可能性が低いとしている。来年が、ロシア大統領選であるので弱みを見せられないというのであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月5日付)は、「ワグネル、10日にバフムト撤退表明『弾薬不足で損失』」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏は5日、激しい戦闘が続いているウクライナ東部の要衝バフムトから部隊を10日に引き揚げると表明した。弾薬不足が解消されず、部隊に重大な損失が生じているためとした。

     

    (3)「プリゴジン氏は、通信アプリ「テレグラム」で「弾薬不足で我々の損失は日々飛躍的に増大している」と撤退の理由を説明し、代わりにロシアの正規軍を投入するよう求めた。撤退表明に先立ってワグネルの兵士だとする複数の遺体の前で撮影したビデオも投稿した。弾薬の補充が足りないと主張し、ゲラシモフ参謀総長やショイグ国防相を強く批判していた。プリゴジン氏はこれまでも発言を撤回したことがあり、実際にバフムトから撤退するかは不透明だ。弾薬の供給を巡りロシア軍に圧力をかける狙いの可能性もある。ロシアのペスコフ大統領報道官は5日、プリゴジン氏が主張した弾薬の供給不足の指摘について「コメントできない」と記者団に述べた」

     

    ワグネルは、撤退日を5月10日としている。これは、5月9日が「祖国大勝利記念日」であることへの配慮であろうか。実際に、撤退するかどうかは不明だが、弾薬不足を理由にしていることは看過できないことだ。米国家情報局長の発言を裏付けているのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月2日付)は、「激戦地でロシア兵2万人死亡、半数がワグネル 米政府」と題する記事を掲載した。

     

    米政府高官は1日、ロシアが侵攻するウクライナ東部ドネツク州の最激戦地バフムト周辺などで2022年12月以降に2万人以上のロシア人が死亡したとの推計を示した。その半数がロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員だと明らかにした。

     

    (4)「米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日、記者団に「バフムトでの大規模な攻勢は失敗した。ロシアは高い代償を伴った」と述べた2万人の死者を含む死傷者は計10万人ほどに達し、軍事品の在庫を使い果たしたとも指摘。ワグネルはロシアの刑務所から採用して戦地に派遣しており、犠牲者の多くは元囚人だったとの認識を示した。カービー氏は、「十分な戦闘訓練や指導などがないまま、戦地に送り込まれた」と話した。

     

    ロシアの死傷者数は、昨年12月以降に10万人に達している。武器弾薬を使い果たしたと見られるのだ。終戦間際、敗色濃厚な日本軍を思わせるようなニュースである。

     

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