勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース時評 > ロシア経済ニュース時評

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    「関税男」を自称する米大統領トランプ氏が、ロシアに対して「50日以内のウクライナ停戦」を要求した。従わなければ、ロシア産の原油などの輸入国へ「二次制裁」として100%関税を課すと通告した。原油の輸出などで国家財政を賄っているロシアにとって、輸入国の中国やインドが二次制裁を恐れて購入を止めれば、事実上の輸出ストップになる。25年のロシアは、3年半に及ぶウクライナ侵攻で経済的に行き詰まりが明らかになっている。米国による「兵糧攻め」が、プーチン氏を翻意させて停戦に向うのか。大きな転機になろう。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(7月15日付)は、「トランプ氏、ロシアに通告 停戦なければ『2次関税と制裁』」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は、ウクライナでの戦争が早期に終結しなければ、ロシアに対し「非常に厳しい」関税や金融制裁を科すと警告した。あわせて、北大西洋条約機構(NATO)加盟国を通じてウクライナに武器を追加供与する方針も明らかにした。さらに「50日以内に停戦合意がなければ、非常に厳しい関税、つまり『2次関税』と呼ばれる約100%の関税を課す」とも述べた。この関税は「痛烈で、非常に強力な措置になる」と強調した。

     

    (1)「米国は、国際金融の中心にあるため、広範な制裁プログラムを通じて、個人や国を国際経済から締め出すことができる強い立場にある。2次関税や制裁は、ロシアと取引する第三国の企業・産業・国家に打撃を与えることで、モスクワへの圧力を一層強めることになる。ラトニック米商務長官は14日午後、「制裁と関税は、いずれもトランプ氏の『道具箱』にある手段だ」と述べた」

     

    米国は、ドルが世界の基軸通貨である。これにより、自動的に国際金融の中心になっている。この米国が、ロシアと原油取引する國へ「二次制裁」で関税100%を掛けるというのだ。米国から20~30%の関税を通告されるだけで右往左往している現状から言えば、100%関税は大きな抑制効果を持つであろう。

     

    (2)「ロシア大統領府は、トランプ氏の発表に対して即座には反応を示さなかった。ロシア上院のコサチョフ副議長はSNSで「欧州諸国は(ウクライナへの兵器供与のために)今後も出費を強いられるだろう。利益を得るのは米国の防衛産業だけだ」と書き込んだ。さらに「50日もあれば、戦況も米国やNATOの指導層の姿勢も大きく変わる可能性がある。だが我々の士気は揺るがない」と付け加えた」

     

    ロシアはまだ、公式の反応をみせていない。ロシア上院のコサチョフ副議長はSNSで「50日の余裕があるから、どうなるか分らない」と、トランプ氏にまつわる「TACO(朝令暮改)」現象を引き合いに出している。

     

    (3)「トランプ氏は14日、防空システム「パトリオット」を含む武器をウクライナに追加供与する計画を確認した。NATO加盟国が米国から「数十億ドル相当の防衛装備品」を購入し、ウクライナの「戦場に迅速に配備する」方針であると説明した。トランプ氏は「ドイツや(NATO)主要加盟国の大半と協議した。各国はこの計画に非常に前向きだった」と述べた」

     

    米国が、ウクライナへ供与する武器は、防空システム「パトリオット」のほかに、攻撃型武器も含まれている。ロシアが、50日間に「死闘」を展開すれば、ウクライナは不利になるからだ。これを食止めるには、相応の攻撃型武器も不可欠である。

     

    (4)「この兵器供与計画には「あらゆるものが含まれる」とし、「パトリオットが中心だ。すべての関連装備を含む。バッテリーも一式そろっている」と強調した。一部のパトリオットはノルウェーから供給される見通しで、ある国ではパトリオット17基が「輸送準備に入っており」、ウクライナに「非常に迅速に」供与することが可能だと語った。ルッテ氏は、これはウクライナへの武器供与の「第1波にすぎない」と強調した」

     

    NATO事務総長ルッテ氏は、ウクライナへの武器供与として、パトリオットが第一波として、後続支援を示唆している。

     

    (5)「迎撃ミサイルのパトリオットは、ロシアによる空爆からウクライナを守る上で極めて重要な装備だ。米国製のこのシステムは、ロシアの弾道ミサイルを撃墜できる唯一の手段である。ルッテ氏は、ウクライナへの兵器供与計画にあたっては、米国の備蓄状況も考慮されると強調した。ロシア政府はここ数週間、ウクライナの各都市への空爆を強化している。巡航ミサイルや弾道ミサイルに加え、イラン製の自爆ドローン(無人機)数百機が、民間・軍事インフラを標的として放たれている。ウクライナの防空システムは兵器不足に直面しており、軍は迎撃対象の選別を余儀なくされている。迎撃率は高く、通常は約70%に達するものの、毎回数十機のドローンや数発のミサイルが防空網をすり抜けている」

     

    迎撃ミサイルのパトリオットは、ウクライナが最も欲していた武器である。それが、ようやく揃うことは朗報である。防空網を完備して、逆にロシア領奥深く攻撃できる武器が揃えば、ロシアも真剣に停戦を考えざるを得まい。米国は、ウクライナ支援で迷いのあったことが、ウクライナの犠牲を増やした。ウクライナが対等の武器を揃えれば、ロシアも停戦の潮時と判断せざるを得まい。

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    ロシアのプーチン大統領は12日、国防相を務めたショイグ氏を交代させ、第1副首相のベロウソフ氏を後任に充てる人事を議会へ提案した。経済閣僚が長い同氏を起用して、国防省と軍の組織改革を進める。ロシアは、ウクライナ侵略の長期化で戦費が膨張している。国防相交代は、財政規律の引き締めを図るのが目的だ。ベロウソフ氏は、国防相として軍事予算や軍備の管理を担う。ペスコフ大統領報道官は同日、国防相交代の理由を「軍の予算を国全体の経済運営に合致させる必要がある」と説明した。

     

    『ロイター』(5月13日付)は、「ロシア大統領、ショイグ国防相を交代 後任にベロウソフ氏」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領は12日、ショイグ国防相を交代させ、副首相だったアンドレイ・ベロウソフ氏を後任に起用する人事を提案した。経済政策を専門とするベロウソフ氏を国防相に充てることで、ウクライナでの勝利に向けて防衛費の有効活用を図り、経済戦争に備える狙いがあるとみられる。

     

    (1)「今回の人事刷新は22年2月のウクライナ侵攻以降にプーチン氏が軍司令部に対し実施した最も重要な変更となる。人事案は議会の承認が確実視される。大統領府のペスコフ報道官は今回の交代について、軍と法執行当局が国内総生産(GDP)の7.4%を占めていた1980年代半ばのソ連のような状況に近づいているため理にかなっているとし、こうした支出を国家経済全体と整合的にすることが重要だと説明。プーチン大統領が国防相にエコノミスト起用を望むのはこのためだとし、「革新に前向きな者こそが戦場で勝利する」と述べた」

     

    ロシアの2024年の国家予算では、国防費が前年比6割増の10兆ルーブル(約17兆円)超に伸びる見通しだ。歳出全体の3割も占める規模になる。3月にはプーチン政権が戦費確保のために個人所得税の増税を検討しているとも報じられたほどだ。下線部で、国防関係費が、GDPの7.4%も占めた旧ソ連時代(1980年半ば)に接近している事実を認めている。こういう事態が、旧ソ連経済を崩壊させたことから、プーチン氏は「戦費節約策」に出ざるをえなかったのであろう。

     

    ロシア財務省は、2022〜23年の戦争関連の財政出動が、GDPの約10%相当と推計していた。フィンランド銀行新興経済研究所が公表した調査によると、同期間に民需生産が横ばいだったのに対し、戦争関連の工業生産は35%増加した。

     

    フィンランド銀の調査チームは、直近のロシア経済予測リポートで次のように指摘している。「政府が、戦争を他の何よりも優先すると、経済政策の基本原則を無視することになる。ここ20年来、ロシア政府は堅実な経済政策を選択してきたが、(戦争によって)ロシアの堅実な政策が放棄されることは、経済専門家のみならず多くの人を驚かせた」。『フィナンシャルタイムズ(FT)』(2月3日付)が報じた。

     

    前記の報道から推察されるのは、ロシアが2年3ヶ月以上続けてきたウクライナ侵攻によって、経済がガタガタになっていることだ。これまで、ロシア経済は予想外に持ちこたえているとみられてきた。だが、ロシアは「国防関係費が、GDPの7.4%も占めた旧ソ連時代」という暗黒時代を引き合いに出すほどになっている。経済的にみれば、ロシアの継戦能力に限界がみえてきたことを示唆している。前記FTは、次のようにも指摘している。

     

    エコノミストに加え、ロシア政府の要職にあるテクノクラートの一部も、大々的な軍事支出によって、ロシア経済に新たなひび割れが生じ始めていると警戒感を示す。国家歳入の約3分の1を占める石油・ガス輸出への依存を減らすどころか、プーチン氏の戦時体制は新たな依存症を生んだ。武器の生産である。

     

    ウィーン国際比較経済研究所(WIIW)のエコノミストチームは、1月のリポートで「戦争が長引くほど、ロシア経済の軍事支出依存度が高まる」と指摘した。「このため、紛争が終結した後、経済が停滞したり、明らかな危機に陥ったりする恐れが生じている」と警告した。ロシア経済は、ウクライナ侵攻で大きなダメージを受けている。

     

    (2)「ベロウソフ氏は、プーチン氏に非常に近いことで知られる。ロシアのドローン(無人機)プログラムで重要な役割を果たしてきた。一方、退任するショイグ氏はウクライナでの戦況を巡り軍事ブロガーらから強く批判され、昨年には民間軍事会社ワグネルの創設者だったプリゴジン氏が反乱を主導した経緯がある」

     

    プーチン氏は、新たな政権発足時を捉えて人事一新を断行する。開戦中の国防相交代は、難しい事情をはらんでいるであろう。軍部内の反発などだ。ただ、新政権発足で全閣僚の辞任届を預かっているので、形式上は反発を招かないように配慮していることが窺える。

     

     

     

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    流血の惨事が予想されていた「ワグネルの反乱」は、ベラルーシ大統領の仲介で収拾された。ワグネルはモスクワへの「行進」を中止して撤収する。プリゴジン氏は、ベラルーシへ行くというのが合意事項だ。今回の騒動は、大きな波紋を残した。プーチン大統領が、騒ぎを事前に解決できなかったこと。また、ワグネルに特別功労賞を贈りながら、一転した「逆賊」扱いにしてロシア国民へ説明できない事態となったこと。プリゴジン氏は、ウクライナ侵攻の不当性を訴えていたこともあり、プーチン氏の受けた打撃は計り知れない。

     

    『BBC』(6月25日付)は、「『ワグネル』プリゴジン氏、 モスクワへの前進中止を発表 ベラルーシ大統領が仲介とロシア報道」と題する記事を掲載した。

     

    プリゴジン氏はメッセージアプリ「テレグラム」で、「ロシア人の血が流れる(可能性の)責任を理解し、我々は隊列を方向転換させ、予定通り野営地に戻る」と書いた。

    24日夜には、ロシア南西部ロストフ・ナ・ドヌにあるロシア軍の南部軍管区司令本部を、ワグネル戦闘員と共に出るプリゴジン氏の姿が確認された。

     

    (1)「これに先立ち、プーチン大統領の報道官、ドミトリー・ペスコフ氏は午後9時(日本時間25日午前3時)ごろ、プリゴジン氏とワグネルへの刑事訴追は中止し、プリゴジン氏はベラルーシへ移動すると明らかにした。ロシア国防省と雇用契約を交わしたいワグネルの雇い兵は、引き続きそれは可能だとも述べた。さらにペスコフ報道官は、ワグネルのこの日の行動がウクライナでのロシアの軍事行動に影響するなど「ありえない」と強調した」

     

    (2)「ロシア政府は24日未明には、プリゴジン氏が「武装蜂起」を呼びかけ内戦を開始しようとしたとして、刑事捜査に着手したと明らかにしていた。ロシア国営テレビ「ロシア24」によると、事態が一気に収束へ向かったのは、ベラルーシのルカシェンコ大統領がプリゴジン氏と電話で協議した後のことだという。ロシア24は、ルカシェンコ大統領の広報を引用する形で、「ロシア領内でワグネルの移動を中止するというルカシェンコの提案を、プリゴジンは受け入れた」と伝えた。さらに、「ワグネル戦闘員の安全保証と共に、受け入れ可能な事態沈静化の形を見つけることは可能だ」と判明したとも報道した」

     

    今回の「ワグネル反乱」は、日本の「2・26事件」(1936年)に似たような面もある。この事件では、「首謀者」を除き寛大な処分になった。これが、後の太平洋戦争への火種になった。「ワグネル反乱」では、刑事訴追を中止するので誰も罰せられないのだ。一度は、大ナタを振るいながら、うやむやにする便宜的解決策になった。これが、ロシアの統制がぐらついていることを示している。ロシアが、国際法違反の傭兵部隊をウクライナ侵攻に用いたこと自体、プーチン氏の統率力の欠如を示している。

     

    「2・26事件」では、ケジメをしっかりつけなかった。これがその後、青年将校の跋扈を許したのである。彼らは米国との開戦を迫り、東条首相の生命を脅かすまでに増長した。そういう日本の脆弱性と似ているのだ。

     

     

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    6月6日未明に起ったウクライナ南部のダム決壊は、想像以上の後遺症をもたらすことが分ってきた。ウクライナ軍南部司令部のナタリヤ・フメニュク報道官は、ウクライナ・テレビに対し「(ロシア占領地域の)対歩兵用地雷の多くが浮き上がり、水に流されている」と述べた。その上で、こうした地雷ががれきなどに当たると爆発する可能性が高いと述べ、「これは大きな危険となる」と指摘する。事態は深刻である。 

    ウクライナとロシアは互いを非難しているが、ダムの決壊が起きたのはロシアの占領地域である。決壊の原因はまだ分っていないものの、CNNによる衛星画像の分析によれば、ダムは決壊の数日前に損傷していた。この損傷が、自然発生か人為的工作によるものかは不明である。ロシア側の占領地域ダムだけに、損傷を修復する、あるいは警告する義務がロシア側にある。ロシアの責任は免れず永遠の十字架を背負うだろう。

     

    『ブルームバーグ』(6月8日付)は、「ロシアのエリート層、ウクライナ侵攻の見通し悲観ー停戦も見えず」と題する記事を掲載した。 

    プーチン大統領が始めたウクライナ侵攻を巡り、重苦しい空気がロシアのエリート層を支配している。ロシアにとっていまやあり得る結果は、最善でも紛争の「凍結」でしかないとの見方が広がっている。 

    (1)「事情に詳しい7人の関係者によると、政治や実業界のエリート層の多くは戦争にうんざりし、戦争を止めたいと考えているが、プーチン大統領が戦争を停止するとは思っていない。関係者は繊細な内容を話しているとして匿名を要請した。侵攻について大統領に立ち向かおうとする者は誰もいないが、政権に対する絶対的な信念は揺らいでいると、関係者4人が述べた 

    ロシア・エリートは、すでにプーチン氏への絶対的な信念が揺らいでいる。危険水域へ入っている証拠だ。 

    (2)「最も望ましい展開は、年内に交渉が行われて紛争が「凍結」され、占領地域の一部の支配を維持してプーチン氏が一応の勝利を宣言できるようになることだと、関係者の2人は話した。元ロシア政府顧問で侵攻後に国を離れ、現在はウィーンを拠点とするシンクタンク、『Re:Russia』の責任者を務めるキリル・ロゴフ氏は「エリートは袋小路にはまっている。無意味な戦争のスケープゴートにされることを恐れている」と指摘。「ロシアのエリート層の間で、プーチン氏が今回の戦争に勝利できない可能性がこれほど広く考えられるようになったというのは、実に驚くべきだ」と続けた」 

    プーチン氏への絶対的な信頼が揺らいでいることは、これまでになかった。「プーチン終焉」が近くなっている兆候であろう。

     

    (3)「失望感の深まりで、先行きが怪しくなってきた侵攻の責任を巡る非難合戦が強まりそうだ。すでに、国粋主義的な強硬派とロシア国防省の間の亀裂は表面化している。欧米の巨額の支援を受けたウクライナが反転攻勢に乗り出す中で、ロシア当局者による戦況好転への期待は低い。ロシア軍は冬季に攻勢をかけたもののほとんど進軍できず、多大な犠牲ばかりを生んだ」 

    下線部は、重大な事態である。傭兵組織を率いるプリゴジン氏は国防省トップをこき下ろしている。これだけでも「敗北の前兆」だ。プーチン氏が、この紛糾を抑える動きもしないとは、どういう意味か。両者が、武器を持っているので片方の肩を持てば相手側がプーチン氏の追い落としを策するであろう。そういう意味では、極めて危険なゾーンに入っている。ウクライナ侵攻の継戦能力に疑問符がつくのだ。 

    (4)「ウクライナに対する侵攻を支持し、攻撃強化を望んでいた向きですら、戦争の見通しに対する期待はしぼんだ様子だ。侵攻は当初、数日で終わると考えられていたが、いまや16カ月目に入った。ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループ創設者のエフゲニー・プリゴジン氏ら国粋主義者は、ショイグ国防相とゲラシモフ軍参謀総長に軍事的失敗の責任があると非難し、破滅的な敗北を避けるため総動員と戒厳令の導入を呼び掛けている。ロシア大統領府と緊密な関係を持つ政治コンサルタントのセルゲイ・マルコフ氏は、「あまりに多くの大きな誤りがあった」と述べ、「ずっと前には、ロシアがウクライナの大部分を占領できるとの期待があった。しかしその期待は実現しなかった」と説明した」 

    国粋主義者と国防省のトップが、責任のなすり合いをしている。これは、ウクライナ侵攻が敗北過程に入っている証拠であろう。旧日本軍では、最後に陸軍と海軍が争って合同作戦を妨げた例もある。「負け戦」とは、内部の統一が崩れることでもあるのだ。

     

    (5)「プーチン大統領と政権幹部は、まだロシアが勝利するとの主張を続けている。政権内部からプーチン氏に挑戦するような兆しは見られない。事情に詳しい関係者4人によると、エリートの大半は大勢に影響を及ぼすことはできないと信じ、目立たないようおとなしく仕事に専念しているという。プーチン氏は終戦を望んでいる兆候を一切見せていないと、関係者5人が述べた」 

    日本では敗戦前夜、ポツダム宣言受託をめぐって血なまぐさい争いがあった。終戦促進派がいた。ロシアには、未だそれが現れないのだ。エリートは、「国難」を見て見ぬ振りをしている。これもロシア危機を示す例だ。

     

     

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    ロシア軍は、陸上攻撃が減る一方、首都キーウへのロケットと無人機攻撃が行われている。28日現在、14回目のロケットと無人機の攻撃が行われた。29日の朝は、ロシアの砲撃がウクライナ西部の空軍基地を襲い、航空機5機と滑走路が損傷した。ここ数日で2度目の大規模なロケットとドローンによる攻撃である。

     

    『CNN』(5月29日付)は、「ウクライナ首都への攻撃、ロシアが多大な労力をかける理由は」と題する記事を掲載した。

     

     ウクライナの首都キーウがロシア軍による空からの攻撃の標的となったのは5月に入り14日目となった。ウクライナ当局者の推計によれば、28日未明にキーウに対して行われた攻撃で、ロシアはドローン(無人機)50機あまりを送り込んだ。市当局によれば、ドローンの大部分は防空システムによって破壊され、死傷者や損害も最小限に抑えられた模様だ。

     

    (1)「なぜロシアは、見返りが限られるなかでも、攻撃にこれほどの労力をつぎ込むのだろうか。一つにはイラン製のドローン「シャヘド」がキーウに対して何らかの苦痛を与えるのに安価な方法だということだ。キーウは昨年の大部分、ロシアによる侵攻の影響を免れていた。

     

    キーウへの攻撃は、防空システムによってほぼ撃ち落とされている。ただ。イラン製ドローンは安価であることから、ウクライナ市民を苦しめる目的で使われている模様だ。

     

    (2)「ロシアは数百機のドローンを購入しているが、ドローンの価格はミサイルの20分の1程度に過ぎない。夜間の攻撃では、数千人の人々が避難所や地下室に逃げ込む。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、キーウで空襲のサイレンが鳴った時間は887時間におよぶ。歴史的に見て近いのは、第2次世界大戦の末期に、ナチス・ドイツがV2ロケットを使って英首都ロンドンに対して行った空爆かもしれない」

     

    キーウの空襲サイレンは、887時間にも及ぶ。第二次世界大戦で、英国ロンドンがドイツの攻撃で受けた空襲サイレン時間に匹敵するという。

     

    (3)「キーウ市は、28日に1500年以上前の建都を記念した「キーウ市の日」を祝う準備を進めていたが、ロシアによる攻撃は偶然ではないだろう。こうした攻撃が行われ、避難と疲れにもかかわらず、キーウの人々の姿勢は弱まるどころか強さを増しているようだ。ロシア側がドローンを送り込む目的は、ウクライナの防空能力を疲弊させ、少なくなっている弾薬をドローンに対して使わせることにある可能性が高い」

     

    ロシアは、ウクライナを屈服させるべく「奇策」を使っている。だが、ウクライナ市民の抵抗精神はますます高まっている。侵略期間が長くなるほど、ロシア経済が追い詰められることを忘れているのだ。

     

    ロシア中央銀行は5月26日、次のような報告を発表した。「ロシア株式市場において、個人投資家の信頼が低下した場合、長期的に資金が外部へ流出し、ロシア企業の長期資金調達能力の低下リスクがある」と警告している。『ロイター』(5月29日付)が報じた。ロシアは、イラン製ドローンでウクライナを威嚇している愚かさに気づくことだ。ウクライナ政府は、イランに対しても対抗措置を講じる。

     

    『CNN』(5月29日付)は、「イラン製ドローンによる首都攻撃、イランに相応の結果を警告 ウクライナ」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、首都キーウに対する攻撃にイラン製ドローン(無人機)「シャヘド」が使われたことを受けて、イランに対して相応の結果を警告した。

     

    (4)「ポドリャク氏はツイッターへの投稿で、イラン政府はウクライナでの戦争で、ロシア政府の重要な同盟国となり、民間の都市に対する攻撃用の武器を意図的に供給していると指摘。ポドリャク氏は、28日のキーウへの攻撃で50機のシャヘドが使われたこともイランによる武器供給という真実を雄弁に物語っていると述べた。ポドリャク氏は「法律的観点から言えば、イランは直接的な意図を持ち、その行動の結果を理解した上で、これを行っている。そこには必ず結果が伴う」と述べた」

     

    ウクライナは、イランへの制裁措置を検討している。イラン政府は、公式にはロシアへの無人機販売を否定している。

     

    (5)「ポドリャク氏によれば、ウクライナのゼレンスキー大統領は政府に対して、50年間のイランへの制裁を提案するという。大統領府高官によれば、提案される制裁は、イラン人に対する貿易や金融、技術の制限、ウクライナ領内のイランの船舶や飛行機の通過の禁止など」

     

    ウクライナは、イランへの制裁措置を早急に発表すべきだ。ポドリャク氏のBBCとのインタビューで、「ゼレンスキー大統領は、強い性格の持ち主である。ゼレンスキー夫人以外、彼の意思を変えられる人はいない」とジョークを飛ばした。イランへ強い制裁措置を考えているに違いない。

     

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