勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース時評 > ロシア経済ニュース時評

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    ウクライナ軍は6月30日、ウクライナ南部オデッサ州沖合の黒海上にあるズメイヌイ(スネーク)島からロシア軍が撤退したと明らかにした。ロシア国防省も同日、撤退を認めた。同島は周辺の制海権や制空権を掌握する上で要衝とされ、ウクライナ軍が奪還に向けた攻撃を続けていた。『日本経済新聞 電子版』(6月30日付)が報じた。

     

    ロシア国防省は、ウクライナからの穀物の輸出に向け、国連などが黒海で安全に貨物船が通れる「回廊」の設置を協議しており、これを阻害しないために撤退したと説明した。これにより、世界の穀物危機が回避される希望が出てきた。

     


    ウクライナからの穀物輸出を巡っては、ロシアのラブロフ外相とトルコのチャブシオール外相が6月8日に会談し、黒海に貨物船が通過できる「回廊」の設置などを協議。さらにウクライナとロシアに加え、トルコと国連も参加する4者協議をイスタンブールで開くことを提案していた。ロシア軍が、スネーク島撤退を明らかしたことで、ウクライナから穀物輸出が可能になりそうだ。

     

    一方、ロシア軍のスネーク島撤退は、ウクライナ軍の猛攻撃に耐え切れなかったという軍事的な側面がある。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月28日付)は、「ウクライナ沖の小島、戦争で大きな役割」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはスネーク島を制圧して以降、拠点の確立と防衛の強化に繰り返し取り組んできた。一方で、ウクライナは妨害工作を活発化。複数回にわたりロシア軍のヘリや防空システム、重火器を空爆で破壊したと主張している。ロシア側はこれを否定している。衛星データ企業マクサーとプラネット・ラボがウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に提供した衛星画像によると、ロシア軍は4カ月でスネーク島の要塞(ようさい)化に成功。新たにテント構造や塹壕(ざんごう)を構築し、短距離ミサイルシステムを配備した。とりわけ6月初め以降の進展が著しい。

     


    (1)「ウクライナ軍はトルコ製ドローン「バイラクタル」を使って相次ぎスネーク島で空爆に成功したと主張している。58日に公表された動画によると、島の上空を飛行していたロシア軍のヘリがドローン攻撃を受けたみられる様子が映っている。ウクライナの軍情報機関トップ、キリロ・ブダノフ氏は22日、テレビのインタビューで「われわれは攻撃を加えており、スネーク島を全面解放するまで作戦を続ける」と言明した。ウクライナのアンドリー・ザゴロドニュク元国防相は、ロシアがスネーク島にレーダーや防空・電子戦システムを導入することで、実質的に沈没したモスクワの代わりにしようとしていると指摘する。ウクライナは414日、対艦ミサイルでモスクワを撃沈させた。ロシアは原因不明の火災が原因だと説明している」

     

    スネーク島を巡って、ロシア軍とウクライナ軍が激しい攻防戦を繰返してきた。ロシア軍は、沈没した「モスクワ」に代わって、スネーク島へレーダーや防空・電子戦システムを導入していた。絶対的な防衛戦構築の構えであった。それが、6月30日に撤退したのだ。相当の決断の結果である。

     


    (2)「ロシアはウクライナの海上封鎖を狙っている」とザゴロドニュク氏。「ロシアはスネーク島を沈まない巡洋艦として使い、黒海で飛行・航行するものすべてを攻撃する考えだ」軍事専門家によると、ロシアはウクライナの空爆にさらされながらスネーク島で軍事拠点の構築を続けるリスクを勘案した結果、島にとどまり、いずれ地対空ミサイルシステム「S400」などの最新鋭兵器を持ち込むことの利点が、島を断念するコストを上回ると結論づけた可能性がある」

     

    ロシア軍のスネーク島死守の決断が揺らいだのは、ウクライナ軍の猛攻であったに違いない。ウクライナ軍は、米英からミサイルも供与されているので猛攻できる兵器を揃えていたことは事実だ。

     

    (3)「ウクライナにとっては、スネーク島を奪還できれば、ロシア軍による封鎖を突破するための一助となる。ロシアの軍艦がオデッサ南部の沖合を巡回しており、ウクライナ南部の拠点から穀物など重要な食糧が輸出されるのを妨げている。港湾封鎖で経済が壊滅的な打撃を受けているオデッサのゲナディー・トゥルハノフ市長は「スネーク島はシンボルになった」と話す。「ここを支配すれば、戦況を支配できる」。ロシア、ウクライナ双方とも今のところ、目標は達成できていない。ただ、ウクライナはスネーク島への部隊配置を目指しているのではなく、むしろロシアによる軍事拠点の構築を阻止することに注力している可能性があるとの指摘も出ている」

     

    下線のように、スネーク島奪回はウクライナ軍の戦況を有利に展開できるシンボル的な意味を持っている。この象徴的な「小島」をウクライナ軍が手中に奪回したことは、ウクライナ戦争全体へ大きな意味を持っている。ウクライナが、和平への足がかりを掴んだとも言えるのだ。

     


    (4)「前出のザゴロドニュク氏は「戦争が終わるまで総じて空白のままだろう。スネーク島の支配を維持することは極めて困難だ」と話す。「ここに残っても意味がないとロシアが認識するまで、軍装備を何度破壊しなければならないのだろうか」と指摘」

     

    ロシア軍は、ウクライナからの穀物輸出を妨害していると世界の非難を浴びてきた。だが、こうした非難ぐらいで撤退するロシアではない。穀物輸出を口実に撤退したと理解すべきだ。撤退の潮時と判断したのだ。それは、ウクライナ侵攻全体の構図を俯瞰した上での決断と読むべきである。和平への準備を始めたとも読める。

     

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    ロシア中央銀行は、4月5日に期限のきた国債元利金支払いで「ルーブル払い」を強行したが、ついにドル払いへ転換した。これで、デフォルトという最悪事態を免れる。方針転換した裏には、制裁によってロシア経済が急速に悪化している事情がある。ダブルパンチを回避するには、契約通りの「ドル払い」しか道がなかったのであろう。

     

    格付け会社は、上記のロシア国債は契約違反として「潜在的デフォルト」扱いになっている。5月4日までにドル払いとならなければ、最終的な「デフォルト」が決定するところだった。

     


    『ロイター』(4月29日付)は、「ロシア、ドル建て債の支払いをドルで実施 デフォルト回避か」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア財務省は29日、これまで自国通貨ルーブルで行うとしていたドル建て債の支払いをドルで行ったと明らかにした。デフォルト(債務不履行)回避に向けた動きとみられる。

     

    (1)「財務省は2022年満期債券について5億6480万ドル、24年満期債券について8440万ドルの支払いをドルで行ったとし、資金はシティバンクのロンドン支店に送られたと明らかにした。両債券の支払い期日は過ぎているが、30日の猶予期間が設定されているため、最終的な期日は5月4日になっている。米政府高官は、ロシアが米国で凍結された外貨準備金を使わずに支払いを行ったと確認しつつも、資金の明確な出所は不明と述べた」

     

    ロシアは、意地を張って合計6億4920万ドルの支払いをルーブル払いにする損失が、今後のロシア経済に大きな痛手になることを認めた形だ。ひたひたと迫りくる経済制裁による黒い影に、ロシア当局が音を上げたものであろう。

     


    『日本経済新聞』(4月30日付)は、「ロシア、制裁で傷む経済 3月製造業生産マイナス」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ侵攻をめぐり米欧から制裁を受けるロシアで、実体経済の傷みが目立ってきた。禁輸措置などのあおりを受け、3月の製造業の生産指数は前年同月比で11カ月ぶりにマイナスに転じた。ロシア中央銀行は2回連続の利下げを決めたが、インフレ懸念から大胆な金融緩和には踏み切れない。ロシア経済の冷え込みが続けば、軍事作戦継続への影響が出そうだ。


    (2)「ロシア中銀は29日、政策金利を17%から14%へと引き下げると決めた。5月4日から実施する。利下げ発表は4月8日に続き2回連続。声明では利下げの背景として「企業は生産や物流面で相当な困難に直面している」と指摘した。制裁の影響を見えにくくするため、ロシア政府は原油生産量など一部の経済統計の発表を取りやめている。それでも入手可能なデータの分析からは、同国経済の苦境が垣間見える。世界銀行は2022年のロシアの経済成長率を前年比マイナス11%と見込む。国内景気の悪化と外貨収入の減少、インフレに手足を縛られる金融政策という三重苦になっている」

     

    ロシア中銀は、4月に2回もの政策金利引下げを発表した。20%から14%へとつごう6ポイントの引き下げだ。それでも異常な高さである。設備投資への刺激期待はゼロであろう。

     


    (3)「一例が鉱工業生産指数で、3月は3%増と2月(6.%増)から勢いが鈍った。鈍化の主因は製造業だ。2月の6.%増から一転、3月は0.%減だった。自動車関連は45.%低下し、電気機器やたばこも10%以上下がった。「外資撤退や部品不足による生産減が顕著に表れてきた」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介副主任研究員)。2月下旬以降、欧米や日本は半導体や工作機械の輸出を停止し、ロシア産製品の輸入も禁じた。外資に頼ってきた自動車生産は特に縮小が目立つ。仏ルノーやトヨタ自動車など車各社は3月にロシアでの生産を相次ぎ止めた。欧州ビジネス協議会(AEB)によると3月のロシアの新車販売台数は前年同月比63%減った」

     

    経済制裁による影響は大きい。鉱工業生産指数は、2月の6.3%増が3月は3%増と半分に鈍化した。4月以降はマイナスに転じるであろう。外資撤退や部品不足が顕著になっているからだ。原油・天然ガスの輸出減少も痛手である。

     


    (4)「雇用への影響は深刻だ。米エール大経営大学院によればロシア事業の停止や縮小を表明した企業は750社以上。モスクワ市長は同市の外国企業で働く「約20万人が職を失う恐れがある」とブログに投稿した。

     

    外資による事業停止や縮小、撤退などによって約20万人が失業の危機を迎える。外資による雇用は100万人以上とされている。

     

    (5)「主力産業である石油や天然ガスなど鉱業は7.%増と堅調さを保っており、鉱工業生産指数全体ではプラス圏を維持した。欧州などはエネルギーをロシアに依存し、禁輸に踏み切れていない。ただし直近では消費者からの批判を懸念して、商社などがロシア産原油を自主的に回避する動きがじわりと広がる。国際エネルギー機関(IEA)は、ロシア産の石油供給が5月以降日量300万バレル減るとの見方を示す。輸出量の4割に相当する。主に欧州向けに輸出されるロシア産原油は需要鈍化のせいで国際価格に比べて約3割安で取引されている」

     

    IEAの予測では、5月以降の原油生産が日量300万バレルの減少である。これは、約3割減と大幅なダウンである。5~6月積み出しの原油入札では、応札がゼロという深刻な事態だ。価格も国際市況の3割安と不利な状況に追い込まれている。状況に精通していない向きでは、国際市況を基にしてロシアの原油収入は大幅増と言っているが、そういう甘い期待を持つべきでない。

     


    (6)「国際金融協会(IIF)の分析では、原油・石油製品・天然ガスが、ロシアの輸出の5~6割、財政収入の25%を占める。「輸出や生産が落ち込めば財政への打撃は大きく、支出削減を迫られる可能性がある」(IIF)」

     

    一説では、原油・石油製品・天然ガスが財政収入の45%としている。これが落込めば、ロシア経済に痛手は当然である。戦争継続上も負担が増大する。今年の歳入不足分は、国債発行に依存せず、ファンドからの借入れで賄う方針だ。財政相がすでに発表している。 

     

     

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    ウクライナ侵攻開始から4日目の2月27日、ロシアのプーチン大統領は、戦略的核抑止部隊に「特別警戒」を命令した。西側諸国が、ロシアに「非友好的な行動」をとったことを理由にしたのである。ロシア政府による「核戦争危機論」は、その後沈静化していたが、4月25日にラブロフ外相の蒸返しによって、改めてこの問題が浮上している。

     

    『ロイター』(4月26日付)は、「ロシア外相、核戦争の『深刻なリスク』警告」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシアのラブロフ外相は国営テレビのインタビューで、核戦争が起きる「かなりのリスク」があり、過小評価すべきではないとの見方を示し、ロシアはリスクを抑えたいと述べた。また、西側諸国がウクライナに供与する武器はロシア軍の「正当な標的」になるとした。「このようなリスクを人為的に高めることは望まない。高めたいと考える国は多い。深刻で現実の危険があり、それを過小評価してはならない」と語った。外務省のウェブサイトに発言内容が掲載された」

     


    このような発言が飛び出す背景は、ロシア軍が苦戦していることを意味する。英国防省は25日、つぎのような発表をした。

     

    「英国防省は25日、ウクライナのマリウポリ防衛が「多くのロシア部隊を消耗させ戦闘効果を落とした」と明らかにした。ロシアが、ウクライナ東部ドンバス地域をすべて占領しようとして「小さな進展」を成し遂げたが、供給問題が攻勢の足を引っ張り「重大な突破口」を設けられずにいると付け加えた。また、英国のウォレス国防相は下院でウクライナ軍によるロシア軍の戦死者が1万5000人に達するという分析を明らかにし、ロシア軍の装甲車も2000台以上が破壊されたり、ウクライナ軍に奪取されたと話した」『中央日報』(4月26日付)が伝えた。ロシア軍が,予想以上の苦戦を強いられていることから、苦し紛れに「核戦争論」が出てきたのであろう。



    (2)「ラブロフ氏のインタビューを受け、ウクライナのクレバ外相はツイッターで、ロシアはウクライナ支援をやめるよう外国を脅せるとの望みを失ったようだと指摘。「つまり、敗北感を覚えているということだ」とした」

     

    ウクライナ外相は、このバブロフ発言がロシア軍劣勢を自ら言っているようなものだと批判している。核戦争がどんな意味を持っているか、あまりにも軽々に発言しすぎているからだ。客観的に見て、ロシアがウクライナ戦争で「核投下」する危険性はあるのか。

     


    英『BBC』(3月1日付)は、「核使用のリスク、どれくらいあるのか ロシアのウクライナ侵攻」と題する解説記事を掲載した。

     

    ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2月27日、核兵器を含む「抑止部隊」を「戦闘の特別態勢」に移すよう、軍に命じた。一体なにを意味しているのか。多くの人は今回の動きについて、実際の核兵器使用の意図を示したというより、主に世界に向けてシグナルを送ったものと解釈している。プーチン氏は、核を使えば西側から核の報復を受けることを分かっている。イギリスのベン・ウォレス国防相は、プーチン氏の発表について、主に「言葉の上」のことだとの考えを示した。だからといって、リスクがゼロというわけではない。状況は注意深く見守られることになるだろう。

     

    (1)「プーチン氏は先週、間接的な言い方で、ロシアの計画を邪魔する国は「見たことのないような」結果に直面すことになると警告していた。北大西洋条約機構(NATO)に向かって、ウクライナで直接的な軍事行動を取らないよう注意したものと、広く受け止められた。NATOは一貫して、そうした行動を取るつもりはないと言明している。もし実施すれば、ロシアとの直接衝突につながり、核戦争へとエスカレートしうると理解しているからだ。2月27日のプーチン氏の警告は、これまでより直接的かつ公なものだった」

     

    プーチン氏は、NATOが直接的な軍事行動を恐れて、「核使用」という形でけん制している。もともと、ロシアはNATOがロシアの安全保障を脅かしているという理由で、ウクライナ侵攻を行なったはずだ。それが、本当にNATO参戦になれば、大変な思惑違いになる。

     


    (2)「プーチン氏は、ウクライナの戦場でロシア軍がどれほど抵抗を受けるかについて、見誤っていた可能性がある。プーチン氏はまた、西側が厳しい制裁措置を取ることについて、どこまで結束するのかも見誤った。そのため、彼は新たな選択肢と、さらに厳しい話を持ち出すことになった。「怒り、フラストレーション、落胆の表れだ」と、ある元英軍司令官は先日、私に言った」

     

    プーチン氏の予測が完全に外れたことへの絶望感が、「核使用」というトンデモ発言に現れたに違いない。最近では黒海艦隊旗艦「モスクワ」が撃沈されるなど、予想外の事態が連続的に起こっている。「核使用」という言葉を外相に使わせて鬱憤晴らしをしている面もあろう。

     


    (3)「このように見ると、核への警戒の呼びかけは、自国民に向けてメッセージを発する1つの方法のように思われる。別の見方としては、西側がウクライナに軍事支援を提供するのをプーチン氏は懸念しており、西側に対してやり過ぎないよう警告しているとも考えられる。さらに、プーチン氏が制裁について、政情不安と政権転覆を狙ったものではないかと心配しているとの解釈もできる(演説では制裁に触れていた)。しかし、メッセージ全体としては、NATOに対して、直接関与すれば事態は悪化しうると警告したものと思われる」

     

    ロシアが、甘く見ていたNATOの結束ぶりに驚き、さらに本格的な反撃に出てくることを恐れているにちがいない。その意味でロシアは日々、苦境に立たされているとの認識を強めているのかも知れない。

     


    (4)「冷戦時代、西側ではロシアの核兵器の動きを監視する巨大な情報マシーンが作り出された。人工衛星、通信傍受、その他の情報を分析し、ロシアの行動に変化を示すものがないか探った。武器や、爆撃機の乗組員の準備といった、警告が必要となる状況が生じていないか調べた。それらの多くはまだ残っていて、西側各国はロシアの動きに重大な変化がないか、活動を注意深く見ている。変化を示すものは、いまのところない」
     

    NATO軍の情報収集に加え、「ファイブアイズ」(米英豪加ニュージーランド)5ヶ国の特別諜報網が、ロシアによる核への動きを監視している。冷戦時代のソ連監視網は、現在に引継がれているのだ。仮に、ロシアが核投下の兆候を見せれば即、世界へ発表されるだろう。ロシアの評価は、それだけで激落間違いない。そういう事態にならぬよう、プーチン氏の自重を祈るほかない。


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    ウクライナ兵の高い士気に比べ、ロシア兵の士気は大きく劣っている。意味のない「プーチン戦争」に駆り出されているからだ。ロシア軍では、ウクライナ派遣を拒否する兵士も出ているほど。

     

    ロシア軍のウクライナ北部からの撤退は、大きな損傷を受けた結果とされている。余裕を持った撤退でなかった。撤退直後に英『BBC』記者が現地取材した映像によれば、食べ物が散乱しており、慌てて撤退した様子が窺えるとしている。「規律ある部隊ではない」とBBC記者は伝えた。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月4日付)は、「ロシアの戦略転換、ウクライナ戦争長期化か」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのウクライナ戦争は先週、ギアチェンジした。複数の戦線で迅速な攻撃を実行するだけの兵力を欠くロシアは、首都キーウ(キエフ)などウクライナ北部の都市から後退を始め、当面の目標を東部の一部地域の掌握に定めた。5週間にわたって激しい戦闘を展開したあげくの方針転換は、ウクライナの抵抗がいかに激しく、有効であったかを物語っている。戦いは長期の消耗戦になりそうだが、ロシアの動きからは戦争続行の決意もうかがえる。

     

    (1)「ウクライナ政府関係者によると、長期の通常戦争になれば、ロシアと比べて軍事的資源が少ない同国にとって、戦車や重火器のような大型兵器を調達する必要性がさらに高まる。ロシアはドンバス地方の掌握に集中することで、縮小した戦線に攻撃能力を集中したり、補給線を短縮したりすることができる。航空支援も容易になる可能性があり、軍事的成功の確率は高くなる。また、ドンバス地方に配置されたウクライナの精鋭部隊の一部を包囲しやすくなる。しかし、ロシアがキーウから後退すれば、ウクライナも東部のドンバス戦線に追加資源を再配置できる。しかもルートが短いため、動きははるかに速い」

     

    ロシア軍は、ウクライナ北部の都市から撤退した。東部へ兵力を移動させ、最後の決戦を挑む体制である。一方、ウクライナ軍は、これまでの首都防衛部隊を東部へ短時間で移動できるので、戦力的には大幅に補強される。

     


    (2)「ロシア軍は精鋭部隊の一部をキーウなどウクライナ北部に派遣していた。軍事アナリストによると、その多くが激しい戦闘で大打撃を受けており、再編成して再配置に備えるには相当の時間が必要になる。米政府関係者の推計では、ロシアがウクライナに投入した19万人強の兵士のうち、死者は約1万人に上り、数万人が負傷したか捕虜になった。ロシアは兵力を補充しようと予備役を招集している。徴集兵に加えてナゴルノカラバフや南オセチアに駐留している兵士もウクライナに派兵している。通常は主に国内の治安任務を担う国家親衛隊の隊員も含むこうした兵士の中には、ウクライナへの派遣命令を拒否した人もいる」

     

    ロシア軍のウクライナ北部派遣軍は、精鋭部隊であった。それが、かなりの打撃を受けており再編成までには時間がかかりそうという。ロシア軍は、戦力の補充が難しくなっており、国内の治安任務を担う国家親衛隊の隊員まで動員されている。

     


    (3)「英空軍中将エドワード・ストリンガー氏はロシアには新たな攻撃に投入できる予備役は多くないと指摘する。同氏は英国防省で複数の作戦を指揮し、英国によるウクライナでの軍事訓練プログラムの創設を支援した。「実質的な戦闘力のほとんどは既に戦争に投入されている」とストリンガー氏は指摘する。したがってプーチン大統領は「より多くの戦闘力を構築するか、今ある戦闘力を集めるかだが、前者は制裁の影響もあり、兵力の動員がなければ難しい」と指摘」

     

    ロシアは、戦闘力の構築(武器弾薬の増産)が、経済制裁で困難になっている。部品不足でタンクや自動車の生産は中止状態だ。頼みは、兵員の動員にかかっている。十分な兵員を集められなければ、苦戦を免れない。

     


    (4)「ウクライナとロシアは和平交渉を続けているが、戦争は数カ月かそれ以上続く可能性が高いというのが多くのウクライナ政府関係者と軍事アナリストの見方だ。ロシアはウクライナよりはるかに人口が多く、保有する軍装備品も多いが、長期の消耗戦では時間は必ずしもロシアに味方するわけではない。「どのシステムもそうだが、軍事的潜在力はその中で最も弱い部分と同程度の強さしかない。ロシアの場合は最も弱い部分は人だ。ロシアには大量の装備品、大量の防護具があるが、訓練された人材に大きな問題がある」。ザゴロドニュク元ウクライナ国防相はこう指摘した」

     

    悲観的な見方では、これから数ヶ月の戦争が続く懸念があるという。プーチン氏が、メンツにかけて戦わせる結果だ。ロシアは、5月6日の対独戦勝記念日に「ウクライナ戦勝パレード」を行なう計画があると報じられたが、現実はそうした甘い夢を実現させられない状況だ。ロシアは、肝心な兵力の枯渇という難題に突き当たっている。

     


    (5)「ウクライナは戦争が始まった時点で約20万人の兵力があり、必要があれば同規模の軍を出動させることができるだろうとザゴロドニュク氏は言う。
    「戦争が長期になれば、ウクライナが西側のパートナー、まず米国からの支持を受け続けられるかが唯一の問題だ。西側の支持があれば、われわれはロシアより長く持ちこたえることができる」。ウクライナは長距離砲、戦車、防空技術、自国の軍用機と攻撃ヘリコプターを使って大規模な通常戦争を戦っている。同国はこうした軍事的資産を日々失っているが、これまで西側からの補充はなかった。

     

    ウクライナには、士気も高く予備兵力を残している。問題は装備面の劣化である。これが補充されなければ、長期戦に耐えられない状況にある。

     


    (6)「こうした状況は徐々に変わりつつある。3月31日には英国のベン・ウォレス国防相が、35カ国が支援国会議で長距離砲・装甲車・対砲兵システム・対空兵器・沿岸防御兵器をウクライナに提供することで合意したと述べた。ゼレンスキー大統領が要請していた戦車や戦闘機は含まれないものの、兵器が迅速に提供されれば、ウクライナの勝機は大幅に高まるだろう

     

    西側35ヶ国は、ウクライナへ兵器の補充を決めた。これが迅速に実現すれば、ウクライナは勝利へ向けてチャンスが広がるという。

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    ウクライナの首都キエフに向かっていたロシア軍車両の行列が、燃料不足などの理由で進軍が事実上止まった、と英国放送「ITV」が2日(現地時間)、米国国防総省当局者の言葉を引用して報じた。報道によると、この当局者は「多くの事例を見ると、文字どおり燃料がなくなった」とし、「今や兵士に食べさせる食料まで底をつき始めている」と話した。韓国紙『中央日報』(3月4日付)が伝えている。

     

    米国NBC放送は2月28日(現地時間)、プーチン大統領が「ウクライナでの戦闘状況を聞いて閣僚に対して激怒した」と、米情報当局者の言葉を引用して報じた。プーチン氏が激怒するほど、ウクライナ侵攻の作戦計画の遂行は遅れている。その原因は、燃料不足による物資輸送の遅れにあるという。

     

    『中央日報』(3月4日付)は、「キエフに向かっていたロシア軍64キロメートルの列、燃料不足に進軍止まる」と題する記事を掲載した。


    米国メディアは民間衛星写真分析に基づいて全長64キロメートルに達する車両の行列がキエフ都心まで27キロメートル手前まで接近したと先月28日、報じた。「装甲車・タンク・大砲・支援車両などで構成された行列は、キエフ包囲作戦と無差別砲撃に動員される可能性があると懸念されていた。

     

    (1)「当局者は、「ここ24時間、ロシア軍がキエフに向かってほとんど前進することができなかった」とし、「長引く補給問題の結果ではないか」と話した。戦場で軍用車両の行列がこのように長々と並んでいるのは相手から空襲を受ける危険性が高くなる。英国もロシア軍のキエフ進軍が停滞したとし、同じような診断を下した。ベン・ウォレス英国防相はスカイニュースとのインタビューで「ロシアの侵攻が計画よりかなり遅れている状態」と話した。ウォレス氏はロシア軍に補給問題が持ち上がっている可能性が高く、ウクライナ軍の抵抗のため状況が悪化したと分析した」

     


    ロシア軍の車列が止まっているのは、先頭車列がウクライナ軍の攻撃によるものだろう。故障したロシア軍のトラックを、ウクライナの農民がトラクターで引っ張る情景がSNSに投稿されている。また、高速道路上でウクライナ国民がデモをして、ロシア軍の車列を止めている光景も見られる。ここでは、「牧歌的」な戦場の姿が、映し出されている。大義のない戦争で、ロシア軍の士気が低下している結果と見られる。

    一方、渋滞しているロシア軍の車列は、ウクライナ軍にとって空爆できる絶好のチャンスである。現実には、攻撃されていないのだ。

     

    『中央日報』(3月4日付)は、「身動きできない64キロの露軍…ウクライナは攻撃しないのでなくできなかった」と題する記事を掲載した。

     

    2月28日、ベラルーシから出発してキエフに向かっていたロシア軍の長い護送隊の行列が西側の人工衛星で確認され、1日にはこの行列が64キロメートルに達した。西側の分析家は数百のタンク・装甲車と1個師団(約1万5000人)の兵力がこの中に含まれていると予想した。

    (2)「疑問なのは、ウクライナ軍が身動きできないロシア軍を攻撃せず、静かに見守っている点だ。米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」の軍事専門家ロブ・リー氏は、「巨大な規模の護送隊は航空機による攻撃目標物だが、今回はそのようなことが起きなかった」とした。『フィナンシャル・タイムズ』(FT)は軍事専門家の言葉を引用して「ウクライナ軍は攻撃をしないのではなく、できないのだ」と3月2日、報じた」

     

    ウクライナ軍が、渋滞する車列を攻撃しないのは、攻撃能力の問題で見送らざるを得ないと判断されている。首都防衛に備えて、貴重な武器を温存しているのであろうか。

     


    (3)「ウクライナの軍事力は、全般的にロシアと著しい開きがある。特に空軍力が不足している。このためウクライナが残りの戦力を考慮して護送隊の打撃に出なかった可能性が提起される。ウクライナはトルコから輸入した偵察・攻撃用無人機「バイラクタル TB2」を運用中だ。TB2はこれまでロシア軍の地対空ミサイルを撃破して猛活躍した。だが、保有台数が非常に少ないため中途半端に投じることはできないという見解だ。FTによると、ウクライナはこの無人機を20機余り保有している」

     

    ウクライナ軍は、トルコ製の偵察・攻撃用無人機「バイラクタル TB2」を保有している。トルコとの協定でウクライナでの製造も可能になった。トルコは最近、ロシア艦艇の海峡通過を停止すると発表し、ウクライナ寄り姿勢を強めている。トルコが、TB2供給を増やせば戦況の「局面転換」も可能となろう。

     

    (4)「西側専門家は、「TB2の保有台数が小規模なのでウクライナ軍はTB2を広い範囲に投じようとはしないだろう」と分析した。また他の情報当局関係者は「TB2の場合、長期戦用としては実用性が落ちる」と話した。ウクライナ国防省は2日、「近く追加TB2無人機がトルコから引き渡されるだろう」と発表した」

     

    TB2無人機は、これまでいくつかの他の戦線でめざましい戦果を上げている。ロシア製武器を打ち破っているのだ。こういう実績から見て、膠着している戦線を打開するには、TB2無人機の増加がカギを握っている。

     

    (5)「軍事専門家は、ロシア空軍も当初の予想よりも力が出せていないと分析した。ロシア軍が2月24日の侵攻以降、現在まで制空権掌握に失敗したことがこれを物語っている。FTによると、ロシア軍がウクライナ国境周辺に300機余りの軍用機を配備したが、特に長距離攻撃機はほとんど投じていない。専門家はウクライナの防空網を確実に制圧できないロシア軍が戦闘機損失を懸念して出撃を遅らせていると伝えた。また、伝統的にロシアは地上軍と空軍の合同作戦がスムーズではなかった点も挙げられている

     

    ロシア軍の弱点が、ウクライナ侵攻で露呈している。西側諸国は、ウクライナに強力な武器を供与し、作戦計画面で支援すれば「互角」の戦いが可能になるかも知れない。それに期待したい。

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