勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:ロシア経済ニュース時評 > ロシア経済ニュース時評

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    G7のウクライナ支援策

    中国のロシア支援が明確

    中国の自国利益優先とは

    NATOが軍事支援協定

     

    中国は、意に沿わぬ国に対しところ構わず「戦狼外交」で威嚇してきた。その中国が一転して、「仲介外交」というハト派に転じ、ウクライナ侵攻の平和解決に向けて特使を派遣した。中国特使は5月16~17日に、最初の訪問国としてウクライナへ。次は、19日にポーランドへ足を伸ばしたが、いずれも厳しい反応が返ってきた。中国特使は、ウクライナでゼレンスキー大統領と会談したが、ウクライナ当局はその事実すら発表せず黙殺された形だ。よほど、ウクライナを怒らせた会談内容であったのであろう。

     

    中国特使は、ポーランドでもほぼウクライナ同様の対応が返ってきた。おまけに、ロシアへ武器の支援をしたならば、欧州との関係で重大な結果をもたらされると警告された。中国特使が、「玄関払い」の扱いを受けることになったのだ。およそ、「特使」という扱いを受けず、厄介者扱いされたのである。

     

    ロシアは、ウクライナを侵略した。中国は本来、そのロシアを説得し侵略行為を中止させなければならない立場である。この重大な事実に触れず一方的に停戦を求めても、ウクライナが聞く耳持たぬのは当然だ。ウクライナは現在、侵略された国土の奪回を求めて反攻作戦の準備をしている最中である。そのウクライナが、中国の「和平案」を受け入れることは、ロシアの侵略を認めることだ。中国は、こうした不条理な和平案を持ち込んだのである。外交センスが、完全にズレていることを示した。

     

    G7のウクライナ支援策

    こうした前哨戦の後、5月19~21日にG7広島サミットが開催された。発表された共同宣言の最初の項目は「ウクライナ」である。次のような内容だ。

     

    1)国際法の重大な違反であるロシアによるウクライナ侵攻を改めて最も強い言葉で非難。

    2)ロシアの残忍な侵略戦争は国際社会の基本的な規範、規則、原則に反し、全世界への脅威だ。

    3)永続的な平和を取り戻すため必要な限り、ウクライナへの揺るぎない支援を再確認する。ウクライナに対する外交、財政、人道、軍事的な支援を強化する。

     

    このG7の共同発表によれば、中国の和平案は「白と黒」の関係に立つ。中国案が12項目からなるが、主要部分は次の点である。

    1)すべての国の主権の尊重

    2)冷戦思考からの脱却

    3)敵対行為の停止

    4) 和平交渉の再開

     

    1)は、文字通りに読めば、ロシアの侵略を認めない前提に立っている。ロシアは、明白にウクライナの主権を侵害したからだ。だが、NATO(北大西洋条約機構)が加盟国を増やしてロシアの主権を脅かしたので、ウクライナ侵攻はロシアの「自衛戦争」という位置づけと理解すれば、ロシアの主権尊重という意味合いになる。両方にとれる「曲球」である。

    2)は、「ロシアの主権尊重」と理解すれば、NATOがウクライナを支援するのは「冷戦志向」という解釈になる。このウクライナへの支援を止めろという文脈だ。

    3)は、「ロシアの主権尊重」の立場から言えば、ウクライナが戦闘行為を中止すべきという結論になる。

    4)は、ロシア主導で和平交渉を行う、という結論になるであろう。

     

    以上のように解釈すると、中国の和平案は中立を装った「ロシア提案の和平案」と言って差し支えないほど、不公平な案である。この裏には、中国の台湾侵攻の意図が隠されていることに気づかねばならない。つまり、台湾の主権は中国にあるという解釈である。だが、中国政府の主権は台湾に及んでいないのだ。選挙で選ばれた台湾政府が、国民と領土を統治しているもので、台湾に国家主権が成立する。中国の台湾侵攻は、国際法違反行為になる。ロシアのウクライナ侵攻と中国の台湾侵攻は、同一次元において完全な国際法違反となる。

     

    中国のロシア支援が明確

    実は、今年2月にインドで開催されたG20の財務相・中央銀行総裁会議で、ウクライナを侵攻するロシア非難の合同宣言を見送らざるを得なかった一件がある。ロシアと中国が反対したからだ。他の18カ国は、ロシア非難で一致していた。ここから読み取れることは、中ロが紛う方なき「一枚岩」の団結を示している点である。

     

    共同宣言案の中で、ロシアによる軍事侵攻を「最も強い表現」で非難するという部分について、中国が受け入れを拒否した。ロシア政府は、西側の「反ロシア」諸国がG20を「不安定」にしたと非難した。G20議長国のインドは、その後に「議長総括」を発表。その中で、ウクライナの状況と対ロシア制裁について「複数の異なる情勢分析」があったと指摘して内幕を明かした。中国とロシアが反対したのだ。

     

    これまでの国連におけるロシア非難決議の採決では、ただ「賛成・反対・棄権」の中から選択するだけで、その理由は不明であった。だが、今年のG20の財務相・中央銀行総裁会議では、中国が国連決議におけるような「棄権」でなく、堂々とロシアと同一意見であることを示した。この一点を以て「中ロ」は一体化していることを明確にした。厳密に言えば、中国にはウクライナ侵攻での公平な「和平仲介」国になる資格がないのだ。(つづく)

     

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    https://www.mag2.com/m/0001684526

     

     

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    ウクライナ軍は、気象条件の回復を待って領土奪回作戦を行うとしている。防衛側に立つロシア軍は、深刻な人員と弾薬の不足に直面しているとの分析が、米国家情報長官によって明らかにされた。ロシア側の攻撃主力部隊になっている民間軍事会社ワグネルのプリコジン氏は、弾薬不足を理由にして、5月10日に撤退すると発表。ロシア軍の弾薬不足は深刻な様子である。

     

    米『CNN』(5月5日付)は、「『ロシア、今年大きな攻撃は不可能』米国家情報長官」と題する記事を掲載した。

     

     ヘインズ米国家情報長官は4日、ウクライナとロシアの戦争について、ウクライナ軍の反攻の成否にかかわらず、ロシア軍は弾薬と人員の不足により「今年大きな攻撃」をかけることはできないとの見方を示した。

     

    1)「ヘインズ氏は上院軍事委員会に対し「実際、ロシアが強制動員を開始せず、イランなど既存の供給元に加えて第三者からのかなりの弾薬供給を確保しなければ、小さな攻撃すらロシアにとっては続けることが難しくなるだろう」と述べた。さらに、ヘインズ氏はロシアのプーチン大統領について、「おそらく」ウクライナにおける短期的な野心を縮小したと指摘。「ウクライナの東部と南部の占領地支配を強固にし、絶対にウクライナを北大西洋条約機構(NATO)の加盟国としない」ことを勝利と考えていると付け加えた。

     

    プーチン氏は、勝利の条件として東部・南部の占領地とウクライナのNATO加盟阻止に固執すると見られる。これらが、認められない限り、和平交渉に応じないのだろう。

     

    2)「ただ、こうした評価にもかかわらず、ロシアが今年停戦を交渉する可能性は高くないと同氏は述べた。政治的な要素が「プーチン氏の考えを変える」ことがない限り、そうした交渉に入る公算は極めて低いとした。また、ロシア軍はウクライナ軍の反攻に備えて「新たな防衛態勢」を整えつつあり、「4月に獲得した領土は、その前の3カ月のどの月よりも少なかった」と説明した。

     

    停戦交渉は、今年中に行う可能性が低いとしている。来年が、ロシア大統領選であるので弱みを見せられないというのであろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月5日付)は、「ワグネル、10日にバフムト撤退表明『弾薬不足で損失』」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏は5日、激しい戦闘が続いているウクライナ東部の要衝バフムトから部隊を10日に引き揚げると表明した。弾薬不足が解消されず、部隊に重大な損失が生じているためとした。

     

    (3)「プリゴジン氏は、通信アプリ「テレグラム」で「弾薬不足で我々の損失は日々飛躍的に増大している」と撤退の理由を説明し、代わりにロシアの正規軍を投入するよう求めた。撤退表明に先立ってワグネルの兵士だとする複数の遺体の前で撮影したビデオも投稿した。弾薬の補充が足りないと主張し、ゲラシモフ参謀総長やショイグ国防相を強く批判していた。プリゴジン氏はこれまでも発言を撤回したことがあり、実際にバフムトから撤退するかは不透明だ。弾薬の供給を巡りロシア軍に圧力をかける狙いの可能性もある。ロシアのペスコフ大統領報道官は5日、プリゴジン氏が主張した弾薬の供給不足の指摘について「コメントできない」と記者団に述べた」

     

    ワグネルは、撤退日を5月10日としている。これは、5月9日が「祖国大勝利記念日」であることへの配慮であろうか。実際に、撤退するかどうかは不明だが、弾薬不足を理由にしていることは看過できないことだ。米国家情報局長の発言を裏付けているのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月2日付)は、「激戦地でロシア兵2万人死亡、半数がワグネル 米政府」と題する記事を掲載した。

     

    米政府高官は1日、ロシアが侵攻するウクライナ東部ドネツク州の最激戦地バフムト周辺などで2022年12月以降に2万人以上のロシア人が死亡したとの推計を示した。その半数がロシアの民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員だと明らかにした。

     

    (4)「米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日、記者団に「バフムトでの大規模な攻勢は失敗した。ロシアは高い代償を伴った」と述べた2万人の死者を含む死傷者は計10万人ほどに達し、軍事品の在庫を使い果たしたとも指摘。ワグネルはロシアの刑務所から採用して戦地に派遣しており、犠牲者の多くは元囚人だったとの認識を示した。カービー氏は、「十分な戦闘訓練や指導などがないまま、戦地に送り込まれた」と話した。

     

    ロシアの死傷者数は、昨年12月以降に10万人に達している。武器弾薬を使い果たしたと見られるのだ。終戦間際、敗色濃厚な日本軍を思わせるようなニュースである。

     

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    ロシア軍は、これまで大量の武器弾薬を残して敗走した。ウクライナ軍は、これら武器で改修すべきものは修理して、ロシア軍追撃に利用する皮肉な現象が起こっている。これに気付いたロシア軍は、「徹底抗戦」しないで早めに撤収する戦術に変わった様子だ。ウクライナ軍に、遺した武器弾薬を利用されまいという苦肉の策だろう。

     

    『CNN』(10月6日付)によれば、ウクライナ軍が南部ヘルソン州で前進する中、ロシア軍部隊は多大な損失を被っている。負傷者と兵器は、ドニプロ川を越えた最寄りの救護施設に避難させようとしている。ウクライナ軍参謀本部は、「敵は負傷した軍人150人と破損した軍事装備50台ほどをカホフカ水力発電所近くのベセレ集落に移動させた」と述べた。

     


    南部ヘルソンは、クリミア半島の水源でもある。ロシア軍にとっては死守すべき防衛線の筈だが、早めに負傷者と武器弾薬を安全な場所へ避難させている。これまでにない「逃げ腰戦術」である。武器弾薬も避難させたのは、新たな補給がない証拠だ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月6日付)は、「ウクライナ軍、奪ったロシア製兵器でさらに攻勢」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍が同国東部で攻勢に出る中、捕獲されたか放棄されたロシア軍の戦車・榴弾砲・戦闘車両は、今やロシア軍に対する攻撃に使われている。こうした装備品に付いていた、ロシア軍を象徴する「Z」マークは速やかにこすり取られ、代わりにウクライナ軍を表す十字架が描かれている。

     


    (1)「軍当局者によると、ウクライナが1カ月前にハリコフ州で急速に戦果を上げた結果、ロシア軍が無秩序な撤退に追い込まれ、重火器や複数の倉庫内の物資を置き去りにしたため、何百ものロシアの装備品がウクライナ側に渡ったという。ロシア軍の装備品の中には、すぐに使用できるものもあれば、前線で再び使うために修理中のものもある。損傷があまりにひどく修理できない戦車やその他の車両・銃は解体され、部品は予備用に回される。さらにロシア軍が、ウクライナではほとんど使い尽されたソ連式の砲弾を大量に残していったのは重要なことだ

     

    ウクライナ軍が9月に、ハリコフ州で行なった電撃作戦で、ロシア軍が大量の武器弾薬を遺して敗走した。これは、大変な戦利品であり、ウクライナ軍の攻撃力を強化している。ロシア軍が、その後の戦いで徹底抗戦せずに、武器弾薬を遺さずに持って撤退する方式へ切り変えたと原因と見られる。ロシアの兵站(補給)が弱体化している証拠である。

     


    (2)「こうした装備品は、ウクライナ軍が要衝リマンを含む同国東部ドネツク州の一部を奪還し、さらに東に隣接するルガンスク州に進軍する際に戦力の一部となっている。ウクライナのカルパシアン・シーチ大隊の副参謀長ルスラン・アンドリーコ氏によると、同隊は先月、ハリコフ州の要衝イジュムに入った後、10台の近代的なT80型戦車と5門の2S5ギアツィント152ミリ自走式榴弾砲を奪い取った。同氏は「われわれにはあまりにも多くの戦利品があり、それらをどうすればいいのかさえ分からない。初めは歩兵大隊として戦闘に加わったが、今では機械化された大隊になりつつあるようなものだ」と話す」

     

    ロシア軍の遺した武器弾薬は、ウクライナ軍がその後に行ったロシア軍追討作戦で威力を発揮している。ウクライナ歩兵大隊は、ロシア軍の遺した武器によって、「機械化大隊」に変身しているという。大変な皮肉である。

     


    (3)「ハリコフ州の前線で戦うウクライナ砲兵大隊の参謀長によると、「ロシア軍はもはや、火力で優位性を持たない。われわれは攻撃前にロシアの砲兵部隊をたたきつぶしてから迅速に前進を始めたため、ロシア側は戦車に燃料を補給したり、荷物を積んだりする時間さえなかった。彼らは何もかもを置いて逃げていった」と述べた。公開情報を利用する軍事アナリストによると、ロシアが4月にキーウ(キエフ)などのウクライナ北部の都市から撤退した際に奪い取った兵器に今回の分が加わったことで、ロシアはウクライナにとって群を抜いて最大の武器供給国となり、その数は米国やその他の同盟国や友好国を大きく上回った。ただし、西側諸国が供与する武器は、より先進的で精度が高いことが多い」

     

    ロシア軍はもはや、火力で優位性を持たないという。ウクライナ軍が、「ハイマース」で弾薬庫をピンポイント攻撃し、兵站線を叩き潰した結果である。これでは、ロシア軍の本格的な反攻作戦は無理だろう。雌雄は、すでに決した感じだ。

     


    (4)「公開情報を利用したコンサルティングを提供するOryx(オリックス)がソーシャルメディアや報道から集めた視覚的な証拠によると、ウクライナはロシアの主力戦車460台、自走式榴弾砲92門、歩兵戦闘車448台、装甲戦闘車195台、多連装ロケット発射機44基を奪い取った。奪い取った全ての兵器が映像に収められているわけではないため、実際の数はもっと多い可能性が高い。全ての兵器が先進的というわけではない。Oryxで兵器損失リストを集計しているヤクブ・ヤノフスキ氏は、「彼らが奪い取っているのは、かなり有効に使える現代的な兵器と、本当は博物館に置いておくべき兵器の両方だ」と話す」

     

    ロシア軍は、最新兵器と博物館行きの古い武器で武装していたことが分った。ロシア軍の弱さを見る思いがする。ロシア軍は、この先どこまで戦えるか疑問符がつくのだ。

     

     

     

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    ウクライナ軍は6月30日、ウクライナ南部オデッサ州沖合の黒海上にあるズメイヌイ(スネーク)島からロシア軍が撤退したと明らかにした。ロシア国防省も同日、撤退を認めた。同島は周辺の制海権や制空権を掌握する上で要衝とされ、ウクライナ軍が奪還に向けた攻撃を続けていた。『日本経済新聞 電子版』(6月30日付)が報じた。

     

    ロシア国防省は、ウクライナからの穀物の輸出に向け、国連などが黒海で安全に貨物船が通れる「回廊」の設置を協議しており、これを阻害しないために撤退したと説明した。これにより、世界の穀物危機が回避される希望が出てきた。

     


    ウクライナからの穀物輸出を巡っては、ロシアのラブロフ外相とトルコのチャブシオール外相が6月8日に会談し、黒海に貨物船が通過できる「回廊」の設置などを協議。さらにウクライナとロシアに加え、トルコと国連も参加する4者協議をイスタンブールで開くことを提案していた。ロシア軍が、スネーク島撤退を明らかしたことで、ウクライナから穀物輸出が可能になりそうだ。

     

    一方、ロシア軍のスネーク島撤退は、ウクライナ軍の猛攻撃に耐え切れなかったという軍事的な側面がある。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月28日付)は、「ウクライナ沖の小島、戦争で大きな役割」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアはスネーク島を制圧して以降、拠点の確立と防衛の強化に繰り返し取り組んできた。一方で、ウクライナは妨害工作を活発化。複数回にわたりロシア軍のヘリや防空システム、重火器を空爆で破壊したと主張している。ロシア側はこれを否定している。衛星データ企業マクサーとプラネット・ラボがウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に提供した衛星画像によると、ロシア軍は4カ月でスネーク島の要塞(ようさい)化に成功。新たにテント構造や塹壕(ざんごう)を構築し、短距離ミサイルシステムを配備した。とりわけ6月初め以降の進展が著しい。

     


    (1)「ウクライナ軍はトルコ製ドローン「バイラクタル」を使って相次ぎスネーク島で空爆に成功したと主張している。58日に公表された動画によると、島の上空を飛行していたロシア軍のヘリがドローン攻撃を受けたみられる様子が映っている。ウクライナの軍情報機関トップ、キリロ・ブダノフ氏は22日、テレビのインタビューで「われわれは攻撃を加えており、スネーク島を全面解放するまで作戦を続ける」と言明した。ウクライナのアンドリー・ザゴロドニュク元国防相は、ロシアがスネーク島にレーダーや防空・電子戦システムを導入することで、実質的に沈没したモスクワの代わりにしようとしていると指摘する。ウクライナは414日、対艦ミサイルでモスクワを撃沈させた。ロシアは原因不明の火災が原因だと説明している」

     

    スネーク島を巡って、ロシア軍とウクライナ軍が激しい攻防戦を繰返してきた。ロシア軍は、沈没した「モスクワ」に代わって、スネーク島へレーダーや防空・電子戦システムを導入していた。絶対的な防衛戦構築の構えであった。それが、6月30日に撤退したのだ。相当の決断の結果である。

     


    (2)「ロシアはウクライナの海上封鎖を狙っている」とザゴロドニュク氏。「ロシアはスネーク島を沈まない巡洋艦として使い、黒海で飛行・航行するものすべてを攻撃する考えだ」軍事専門家によると、ロシアはウクライナの空爆にさらされながらスネーク島で軍事拠点の構築を続けるリスクを勘案した結果、島にとどまり、いずれ地対空ミサイルシステム「S400」などの最新鋭兵器を持ち込むことの利点が、島を断念するコストを上回ると結論づけた可能性がある」

     

    ロシア軍のスネーク島死守の決断が揺らいだのは、ウクライナ軍の猛攻であったに違いない。ウクライナ軍は、米英からミサイルも供与されているので猛攻できる兵器を揃えていたことは事実だ。

     

    (3)「ウクライナにとっては、スネーク島を奪還できれば、ロシア軍による封鎖を突破するための一助となる。ロシアの軍艦がオデッサ南部の沖合を巡回しており、ウクライナ南部の拠点から穀物など重要な食糧が輸出されるのを妨げている。港湾封鎖で経済が壊滅的な打撃を受けているオデッサのゲナディー・トゥルハノフ市長は「スネーク島はシンボルになった」と話す。「ここを支配すれば、戦況を支配できる」。ロシア、ウクライナ双方とも今のところ、目標は達成できていない。ただ、ウクライナはスネーク島への部隊配置を目指しているのではなく、むしろロシアによる軍事拠点の構築を阻止することに注力している可能性があるとの指摘も出ている」

     

    下線のように、スネーク島奪回はウクライナ軍の戦況を有利に展開できるシンボル的な意味を持っている。この象徴的な「小島」をウクライナ軍が手中に奪回したことは、ウクライナ戦争全体へ大きな意味を持っている。ウクライナが、和平への足がかりを掴んだとも言えるのだ。

     


    (4)「前出のザゴロドニュク氏は「戦争が終わるまで総じて空白のままだろう。スネーク島の支配を維持することは極めて困難だ」と話す。「ここに残っても意味がないとロシアが認識するまで、軍装備を何度破壊しなければならないのだろうか」と指摘」

     

    ロシア軍は、ウクライナからの穀物輸出を妨害していると世界の非難を浴びてきた。だが、こうした非難ぐらいで撤退するロシアではない。穀物輸出を口実に撤退したと理解すべきだ。撤退の潮時と判断したのだ。それは、ウクライナ侵攻全体の構図を俯瞰した上での決断と読むべきである。和平への準備を始めたとも読める。

     

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    ロシア中央銀行は、4月5日に期限のきた国債元利金支払いで「ルーブル払い」を強行したが、ついにドル払いへ転換した。これで、デフォルトという最悪事態を免れる。方針転換した裏には、制裁によってロシア経済が急速に悪化している事情がある。ダブルパンチを回避するには、契約通りの「ドル払い」しか道がなかったのであろう。

     

    格付け会社は、上記のロシア国債は契約違反として「潜在的デフォルト」扱いになっている。5月4日までにドル払いとならなければ、最終的な「デフォルト」が決定するところだった。

     


    『ロイター』(4月29日付)は、「ロシア、ドル建て債の支払いをドルで実施 デフォルト回避か」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア財務省は29日、これまで自国通貨ルーブルで行うとしていたドル建て債の支払いをドルで行ったと明らかにした。デフォルト(債務不履行)回避に向けた動きとみられる。

     

    (1)「財務省は2022年満期債券について5億6480万ドル、24年満期債券について8440万ドルの支払いをドルで行ったとし、資金はシティバンクのロンドン支店に送られたと明らかにした。両債券の支払い期日は過ぎているが、30日の猶予期間が設定されているため、最終的な期日は5月4日になっている。米政府高官は、ロシアが米国で凍結された外貨準備金を使わずに支払いを行ったと確認しつつも、資金の明確な出所は不明と述べた」

     

    ロシアは、意地を張って合計6億4920万ドルの支払いをルーブル払いにする損失が、今後のロシア経済に大きな痛手になることを認めた形だ。ひたひたと迫りくる経済制裁による黒い影に、ロシア当局が音を上げたものであろう。

     


    『日本経済新聞』(4月30日付)は、「ロシア、制裁で傷む経済 3月製造業生産マイナス」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ侵攻をめぐり米欧から制裁を受けるロシアで、実体経済の傷みが目立ってきた。禁輸措置などのあおりを受け、3月の製造業の生産指数は前年同月比で11カ月ぶりにマイナスに転じた。ロシア中央銀行は2回連続の利下げを決めたが、インフレ懸念から大胆な金融緩和には踏み切れない。ロシア経済の冷え込みが続けば、軍事作戦継続への影響が出そうだ。


    (2)「ロシア中銀は29日、政策金利を17%から14%へと引き下げると決めた。5月4日から実施する。利下げ発表は4月8日に続き2回連続。声明では利下げの背景として「企業は生産や物流面で相当な困難に直面している」と指摘した。制裁の影響を見えにくくするため、ロシア政府は原油生産量など一部の経済統計の発表を取りやめている。それでも入手可能なデータの分析からは、同国経済の苦境が垣間見える。世界銀行は2022年のロシアの経済成長率を前年比マイナス11%と見込む。国内景気の悪化と外貨収入の減少、インフレに手足を縛られる金融政策という三重苦になっている」

     

    ロシア中銀は、4月に2回もの政策金利引下げを発表した。20%から14%へとつごう6ポイントの引き下げだ。それでも異常な高さである。設備投資への刺激期待はゼロであろう。

     


    (3)「一例が鉱工業生産指数で、3月は3%増と2月(6.%増)から勢いが鈍った。鈍化の主因は製造業だ。2月の6.%増から一転、3月は0.%減だった。自動車関連は45.%低下し、電気機器やたばこも10%以上下がった。「外資撤退や部品不足による生産減が顕著に表れてきた」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介副主任研究員)。2月下旬以降、欧米や日本は半導体や工作機械の輸出を停止し、ロシア産製品の輸入も禁じた。外資に頼ってきた自動車生産は特に縮小が目立つ。仏ルノーやトヨタ自動車など車各社は3月にロシアでの生産を相次ぎ止めた。欧州ビジネス協議会(AEB)によると3月のロシアの新車販売台数は前年同月比63%減った」

     

    経済制裁による影響は大きい。鉱工業生産指数は、2月の6.3%増が3月は3%増と半分に鈍化した。4月以降はマイナスに転じるであろう。外資撤退や部品不足が顕著になっているからだ。原油・天然ガスの輸出減少も痛手である。

     


    (4)「雇用への影響は深刻だ。米エール大経営大学院によればロシア事業の停止や縮小を表明した企業は750社以上。モスクワ市長は同市の外国企業で働く「約20万人が職を失う恐れがある」とブログに投稿した。

     

    外資による事業停止や縮小、撤退などによって約20万人が失業の危機を迎える。外資による雇用は100万人以上とされている。

     

    (5)「主力産業である石油や天然ガスなど鉱業は7.%増と堅調さを保っており、鉱工業生産指数全体ではプラス圏を維持した。欧州などはエネルギーをロシアに依存し、禁輸に踏み切れていない。ただし直近では消費者からの批判を懸念して、商社などがロシア産原油を自主的に回避する動きがじわりと広がる。国際エネルギー機関(IEA)は、ロシア産の石油供給が5月以降日量300万バレル減るとの見方を示す。輸出量の4割に相当する。主に欧州向けに輸出されるロシア産原油は需要鈍化のせいで国際価格に比べて約3割安で取引されている」

     

    IEAの予測では、5月以降の原油生産が日量300万バレルの減少である。これは、約3割減と大幅なダウンである。5~6月積み出しの原油入札では、応札がゼロという深刻な事態だ。価格も国際市況の3割安と不利な状況に追い込まれている。状況に精通していない向きでは、国際市況を基にしてロシアの原油収入は大幅増と言っているが、そういう甘い期待を持つべきでない。

     


    (6)「国際金融協会(IIF)の分析では、原油・石油製品・天然ガスが、ロシアの輸出の5~6割、財政収入の25%を占める。「輸出や生産が落ち込めば財政への打撃は大きく、支出削減を迫られる可能性がある」(IIF)」

     

    一説では、原油・石油製品・天然ガスが財政収入の45%としている。これが落込めば、ロシア経済に痛手は当然である。戦争継続上も負担が増大する。今年の歳入不足分は、国債発行に依存せず、ファンドからの借入れで賄う方針だ。財政相がすでに発表している。 

     

     

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