勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: ロシア経済ニュース時報

    a0005_000022_m
       

    ロシア政府は、ウクライナ侵攻が約3年半に及び、国防費が高止まりする一方、西側諸国からの制裁を受けて経済が低迷している。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナでの戦闘がロシア経済を破壊しているとの見方を否定している。しかし、軍事費支出の増加に伴って財政赤字が拡大する一方、欧米の制裁措置を受けて石油・ガス収入は減っている。

     

    『ロイター』(8月21日付)は、「ロシア、増税と歳出削減を準備か 軍事費高止まり」とする記事を掲載した。

     

    (1)「ロシア経済は冷え込んでおり、当局者の一部は景気後退に陥るリスクを警告。財政赤字は約4兆9000億ルーブル(約9兆円)に拡大し、債務を履行しながら現在のペースで軍事費を調達することに苦戦している。ロシア連邦議会上院予算委員会のアナトリー・アルタモノフ氏は7月下旬に「経済指標の見通しがより悲観的になっており、石油・ガス収入の減少も考慮すると、緊急の財政再建に乗り出す必要がある」と警鐘を鳴らした」

     

    連邦議会上院予算委員は、石油・ガス収入減少を考慮すると、緊急の財政再建に乗り出す必要があるとしている。石油・ガス収入の減少が痛手であり、その上、経済制裁が追加されると、ロシア財政は一層厳しくなる。

     

    (2)「ロシアが、2022年2月にウクライナに侵攻して以来、予算支出は名目値でほぼ倍増し、インフレの加速を招いた。このため中央銀行は主要政策金利を最大で21%に引き上げることを余儀なくされた。25年の国防と国家安全保障の支出は計17兆ルーブル(約31兆2800億円)に達し、米国との冷戦終結後の最高水準にある。これは支出全体の41%を占め、民間部門の生産が減少する中で軍需が経済成長の主なけん引役となっている。プーチン氏は6月にロシアが軍事費を削減する計画だと主張したが、当局は現時点で依然増加を見込んでいる。アルタモノフ氏も「国家防衛への支出を削減することはできず(中略)おそらく増加する必要がある」と語った」

     

    25年の国防と国家安全保障の支出は、計17兆ルーブル(約31兆2800億円)に達し、米国との冷戦終結後の最高水準になった。財政支出全体の41%を占めている。こういう状態は、いつまでも続けられない。限界に来ている。

     

    (3)「2026年予算案は今年9月に提出される予定だ。防衛・安全保障支出は国内総生産(GDP)の8%に設定しているが、政府関係者は実際の数値は若干高いと明らかにした。26年の防衛支出は、削減されないとした上で「27年に戦闘が停止した場合、他の支出分野が予算を分捕ろうとする中で、削減される可能性はある」と指摘した」

     

    26年予算案では、防衛・安全保障支出をGDPの8%に設定している。休戦になれば、減少する。

     

    (4)「アルタモノフ氏は日刊経済紙RBCへの寄稿で、ロシアが28年まで毎年2兆ルーブルの非防衛支出を削減し、その削減分を防衛予算に振り向ける必要があるとの考えを示唆。その上で「今後3年間は、現在のように快適に生活するための糧を持てなくなる」と訴えた。ロシア中銀の元副総裁で、ロンドンのNESTセンターのシニアフェロー、セルゲイ・アレクサシェンコ氏は、ロシア中銀が、25年に67%になると予測しているインフレ率を下回るペースで年金などの支出を物価に連動させることで、実質的な税金の引き上げと支出削減を実施することが予想されると語った」

     

    ロシアは、28年まで毎年2兆ルーブル(約3兆6800億円)の非防衛支出を削減し、その削減分を防衛予算に振り向ける必要があるとの考えを示唆。いよいよ、民生費を削減して国防費に繰り入れる必要性が出てきた。継戦能力に赤信号だ。

     

    (5)「政府関係者は、増税が不可避だとして「そうでなければ防衛費を削減しても、単純に収支が合わなくなる。石油・ガス収入は減っており、経済はこれを完全に穴埋めできないからだ」と言及した。予算の緊縮措置は、最終的にロシアの経済成長を押し下げるものの、ロシアの純債務残高の対GDP比率が約20%と依然低いことが政府に一定の財政余地を与えている」

     

    政府関係者は、増税が不可避としている。石油・ガス収入が減っているからだ。ロシアの純債務残高の対GDP比率が、約20%と健全財政であることが一定の余裕を与えている。

     

    (6)「政府関係者は、25年の財政赤字がGDPの2.5%に相当する約5兆ルーブル(約9兆2000億円)になると推計している。セントロクレジットバンクのエコノミスト、エフゲニー・スボロフ氏は赤字額が8兆ルーブル(約14兆7200億円)に達する可能性があると指摘した。財務省の計画に精通した高官は「財政赤字が計画を上回る可能性があるなどの理由により、中銀は主要政策金利の引き下げを急いでいない」と解説した」

     

    25年の財政赤字は、約9兆2000億円~約14兆7200億円と幅があるので、中央銀行は利下げに慎重である。

     

    a0960_008532_m
       

    強気のプーチン・ロシア大統領が、戦争経済の危機に直面している。ウクライナ侵攻を始めて、すでに3年半近い歳月が経っている。この間の「戦争経済」によって、ロシア経済は成長するという異常事態にある。その分が、民間経済へしわ寄せされている。銀行破綻の恐れも出ており、利下げを急ぐ状況へ追い込まれている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月7日付)は、「ロシア経済、危険信号が点滅

    景気減速で戦時経済の限界露呈」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア経済は、突如として現実の厳しい世界に戻りつつある。最近の経済指標は危険信号を発している。製造業の活動は縮小し、消費者は財布のひもを締め、インフレ率は高止まりし、財政は逼迫している。

     

    (1)「ロシア当局者は今、リセッション(景気後退)のリスクを公然と警告しており、トラクターから家具に至るまで、製造業者は生産を削減している。中央銀行は3日、6月の政策金利引き下げに続き、今月も引き下げを検討すると述べた。景気減速は、プーチン氏の戦時経済の限界を露呈させるとともに、制裁で決定的な一撃を受けてはいないものの、次第に痛手が大きくなりつつあることを示している。制裁がさらに強化されるか、原油価格が下落した場合、ロシア経済は不安定化し始める可能性がある」

     

    ロシアは、西側の制裁強化や原油価格下落の場合、経済が不安定化する懸念が強まっている。今は、その瀬戸際に立たされている。

     

    (2)「シンクタンク、ドイツ国際安全保障研究所(SWP)のロシア経済専門家ジャニス・クルーゲ氏は「軍事支出のみに基づく成長モデルは崩壊しつつある」と指摘。「戦争産業の成長継続を可能にするために労働力を確保すれば、民間部門の生産能力は縮小せざるを得ない。そういうモデルは持続不可能だ」と語った。ロシアのマクシム・レシェトニコフ経済相は先月、ロシアが「景気後退入り」の瀬戸際にあると警告していた。アントン・シルアノフ財務相は今が「最悪の状況」だと表現した。プーチン氏は、景気後退やスタグフレーションは「どんな状況においても容認されるべきではない」と警告した」

     

    ロシア経済は、軍事支出によって維持されているという、「戦争経済モデル」に依存している。世にも稀な存在である。

     

    (3)「ロシアの軍事支出はソ連時代以降で最も多くなり、今年は国内総生産(GDP)比6%超となっている。この軍事支出はロシア経済を押し上げ、西側諸国による制裁の影響を鈍らせた。一方、昨年の米国の軍事支出はGDP比で3%前後、ドイツは2%前後だった。今年の政府支出全体のうち、軍事費と安全保障費が占める割合はおよそ40%だ。ロシアは制裁を回避して中国に石油を輸出できているほか、電子機器や機械の供給で中国の支援を受けている。これが経済をさらに押し上げた」

     

    ロシアは、軍事費が対GDP費6%超にもなっている。米国は、これが3%前後である。軍事費と安全保障費が、政府予算の40%にもなっている。何ら、生産物を生まない費用が、これだけの割合を占めているのだ。継戦能力が、限界点に達している。

     

    (4)「軍事費の急増は、急速なインフレをもたらした。中銀はそれを抑えるため、政策金利を史上最高の21%に引き上げることを余儀なくされた。金利上昇は企業の借り入れコストを増大させ、投資および事業拡大計画の縮小や、利益の圧迫につながった。落ち込みはすでに始まっている。公式統計によると、ロシアのGDP伸び率(前年同期比)は昨年10~12月期の4.5%から、今年1~3月期には1.4%に低下した。

     

    軍事費急増は、対価物を生まない無駄な支出である。インフレが起るのは当然のこと。金利が21%にも引上げられ、民間経済は窒息を余儀なくされた。GDPが急減速するのは当然である。

     

    (5)「一部のアナリストは、銀行システムも不安定さを増していると指摘している。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の最近の報告書によると、ウクライナ侵攻開始後にロシア政府が主要銀行の戦争関連の融資を管理する決定を下して以来、銀行システムのリスクが高まっている。ロシア政府は銀行に対し、戦争に関わっている企業への融資について、政府が決定した金利など優遇条件の適用を指示することができる。戦争開始以降、金利が上昇する中で、企業が返済義務を果たせなくなれば、政府が損失補填(ほてん)を強いられる可能性が出てくる」

     

    銀行リスクが、高まっている。金利上昇で、企業の債務返済が滞ってきた結果である。

     

    (6)「CSISの報告書によると、ロシアの銀行システムは依然安定しており、資本も十分にあるとみるアナリストもいる。その一方で、マクロ経済分析・短期予測センター(モスクワ)は5月の報告書で、2026年に銀行システム全体に影響を及ぼすような長期にわたる危機が起こるリスクは「中程度」だが、リスクは高まっているとの見方を示している」

     

    金融危機が、26年に起るリスクは「中程度」とされる。だが、確実にその危険性が高まっている。中央銀行は7月3日、6月の政策金利引き下げに続き、今月も引き下げを検討すると述べた。

     

    a1320_000160_m
       


    プーチン大統領は、非常に拙いタイミングで「30万人動員令」を掛けてしまった。原油価格の下落がはっきりして、ロシア財政は8月から赤字に転落した。ウクライナ侵攻に伴う軍事費負担が歳出増加の要因だ。そこへ、この動員令という新たな財政負担が加わる。財政破綻は近い。

     

    こうして、ロシア経済は開戦当初の原油価格高騰時とは真逆の状況へ追込まれた。戦争が長引くほど、ロシア経済を窮地に追込む構造が定着したのだ。人材流出も痛手である。高度の技能保持者ほど脱出している。この影響は今後、何十年も影響するとみられている。プーチン氏は、自ら「貧乏くじ」を引いてしまった。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月29日付)は、「プーチン氏の動員令、ロシア経済に痛烈な打撃」と題する記事を掲載した。

     

    プーチン氏がウクライナ侵攻にさらなる資源をつぎ込むことを決めたことで、ロシア経済に暗雲が立ちこめてきた。動員令に伴い30万人以上を新たに投入すれば、徴集兵の軍装備や訓練、給料を手当てする必要が出てくるためだ。さらに民間企業にとっては、兵役または徴兵逃れの国外脱出によって人手が奪われ、新たな問題に直面することになる。

     

    (1)「折しも、エネルギー価格高騰による収益押し上げ効果はピークを過ぎたもようだ。ロシアの財政収支は8月、エネルギー収入の落ち込みが響き、赤字に転落した。これには足元の原油急落や、ロシアが欧州への天然ガス供給をほぼ完全に遮断した影響はまだ反映されておらず、すでにそれ以前の段階で国家財政が手当てできていないことになる。戦争では往々にして、長期的に戦費を確保できる経済力を持った側が勝利することが多い。ウクライナ経済も壊滅的な打撃を受けているが、西側から巨額の資金援助を受けている」

     

    ロシア経済は、原油価格の急落と戦費の増大という「ダブルパンチ」を受け、急速に悪化している。長期の戦争には、耐えられない状況に追込まれてきた。

     


    (2)「ロシア経済の崩壊が迫っていることを示す兆候はないが、国内の経営者や投資家の間では、部分動員令を受けて動揺が広がっている。プーチン氏の発令がさらなる徴兵に扉を開いたとの指摘もある。ほぼ国内投資家のみに限られるロシアの株式市場は、動員令の発表を受けて急落した。動員令の発令前に公表された政府データによると、8月の財政収支は大幅な赤字となった。その結果、今年1~8月の財政黒字は1370億ルーブル(約3400億円)と、1~7月の約4810億ルーブルから大幅に縮小した」

     

    単月では、8月に財政赤字になった。ただ、これまでの黒字によって、1~8月は財政黒字だが、間もなく正直正銘の財政赤字国になる。いつまでも、戦争継続が不可能になる。来年は転機となろう。

     


    (3)「ロシア経済が抱える問題は、自らの政策が招いた「自業自得」の側面もある。ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の跳ね上がりは当初、ロシアに巨額の収入をもたらしていた。国際金融協会(IIF)では、1~7月のロシア連邦予算のうち、石油・ガス収入は約45%を占めていたと分析している。ところが、エネルギー価格の高騰は世界経済の成長に急ブレーキをかけ、各地で石油需要の減退を招いた。原油の国際指標である北海ブレントは6月の高値から約3割下げ、バレル当たり85ドルを割り込んでいる。ロシア産原油が約20ドルのディスカウントで取引されていることを踏まえると、ロシアはすでに財政収支を均衡させるのに必要な水準を下回る価格で原油を販売していることになる

     

    財政収支を均衡させる原油価格は、S&Pグローバル・コモディティ・インサイツは2021年に、この水準をバレル当たり69ドルと推定している。現行のディスカント価格65ドルでは赤字になっている。

     

    (4)「キャピタル・エコノミクスでは、ロシアの石油・ガス収入が2023年に今年の推定およそ3400億ドル(約49兆1300億円)から1700億ドルに半減すると試算している。落ち込みの規模は昨年のロシア国防予算の2倍以上に相当する額だ。西側諸国はさらに制裁を強める構えで、主要7カ国(G7)はロシア産石油に価格上限を設定する方向で調整している」

     

    23年の石油・ガス収入は、今年の半分程度に落込むという。落込み幅は、国防予算の2倍以上に相当する。これでは、ロシア経済はお手上げ必至だ。

     

    (5)「高まる不安から、国外脱出を図る兵役年齢のロシア人男性が国境へと殺到しており、ウクライナ侵攻以降、すでに相当な規模に達していた頭脳流出がさらに加速している。IEビジネス・スクール(マドリード)のマクシム・ミロノフ教授(金融)は、「人々は行けるところに逃げている」と話す。「彼らは高い技能を持ち、教育水準の高い労働者が中心だ。そのため今回の動員令は、来年のみならず、数十年にわたって経済に重大な影響をもたらすだろう」と指摘」

     

    人材の流出が、ロシア経済の成長でブレーキになる。すでに、IT関連技術者は大挙して出国している。

    a0960_008532_m
       

    ロシアが、ウクライナへ戦争を仕掛けて3月10で2週間になる。ロシアは、短期で戦争を終わらせる計画だったが、大きな狂いが生じている。それだけ、ロシア軍兵士が犠牲が多いいことを物語る。

     

    ウクライナ政府が運営するホットラインへ、ロシア軍兵士の家族が生死の問合せをしている。なんとも痛ましい話だ。戦争の悲劇を物語る一断面である。

     

    米『CNN』(3月9日付)は、「『彼はキエフに向かうと・・・』 不明兵士を探すロシア人、電話する先はウクライナ当局」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ・キエフ(CNN)「お騒がせして申し訳ありません。兄弟のことで電話しております」「私の夫について何か情報はありませんか」「もしもし、安否確認にはこちらのホットラインに電話すればよろしいでしょうか」ウクライナ政府が運営するホットラインに寄せられた電話の音声の一部だ。

     


    (1)「ロシアとウクライナの戦争に終わりが見えない中、父母や妻、きょうだいなどは必死の思いで愛する人を探している。だが、電話の向こうの震える声が探しているのはウクライナ人ではなく、ロシア人兵士の情報だ。音声記録はホットラインを運営するウクライナ当局者がCNNに独占提供した。相談者の声ににじむ絶望と不安からは、ロシア政府が戦争に関する通信をいかに厳しく統制しているかが浮かび上がる。

     

    ウクライナ政府は、ロシア兵に関するホットラインを開設している。「敵兵」の生死を調べるという、ちょっと考えつかないアイデアだ。

     


    (2)「一連の録音では、多くのロシア兵が自分たちの予定や派遣理由を知らない様子であることがうかがえる。ロシア兵が家族との通信を禁じられているとの報道を裏付ける内容でもある。ある妻は涙ながらに、悲痛な声で夫のことを尋ねている。オペレーター ご主人から最後に連絡があったのはいつですか。 発信者 国境を越えた2月23日です。オペレーター どこへ行くか言っていましたか。発信者 彼はキエフに向かうと言っていました。 オペレーター 理由については何か言っていましたか。 発信者 いえ、他には何も言っていませんでした。インターネット上では2月24日の侵攻開始以降、ウクライナの民間人や軍人がロシア兵に自宅への電話や、両親との通話を許可する動画が出回っている」

     

    多くのロシア兵が、自分の任地や目的も知らせられないままにウクライナへ連れてこられたケースが多い。

     


    (3)「『生きてウクライナから戻る』と名付けられたホットラインは、ウクライナ内務省が設置した。同省はこの取り組みについて、人道目的とプロパガンダの道具としての両面があることを認めている。ホットラインの運営を担うクリスティナ氏(仮名)はCNNに対し、安全上の理由から身元を報じないよう求めた。同氏は心理学者として訓練を受けた経歴を持つ。クリスティナ氏はウクライナ首都キエフの非公開の場所から、ホットラインの目的について説明した。「第1に、我々の目的は、だまされて行く先も理由も分からず我が国に来たロシア兵が親族を見つけるのを助けることにある。第2は、この戦争全体を止める手助けをすることだ」

     

    戦争の残酷さが実に良く現れている。このホットラインは、人道目的とプロパガンダの道具としての両面があることを認めている。ロシア国内で「反戦ムード」を高めて、早く戦争を終わらせるという目的である。

     


    (4)「開戦当初に設置されて以降、ホットラインが鳴りやんだことはなく、2月24日以降に6000件以上の電話があったという。電話の発信地はロシア極東のウラジオストクからウクライナ国境に近いロストフ・ナ・ドヌまで多岐にわたる。履歴からは一部の電話がロシア国外からかけられたことも判明。欧州全域のほか、バージニア、ニューヨーク、フロリダ各州を含む米国内からも電話があった」

     

    下線部の6000件以上というのは、行方不明者の件数でもある。電話は、米国からも掛かっている。これは、ロシアから問合せ電話して、後から当局に弾圧されることを恐れて友人・知人を介してのホットラインになった。

     

    (5)「CNNは、米国から電話をかけた3人に話を聞き、実際にホットラインを利用したか、またウクライナ内務省から肉親に関する情報が得られたかを確認した。取材に応じたバージニア州のマラットさんは、ウクライナ政府とつながりのあるテレグラムの安否確認用チャンネル上で、いとこの身分証の写真を目にしたと明かした。このチャンネルはウクライナでの戦闘中に拘束されるか死傷したロシア人の情報に特化したもので、パスポートの写真や氏名、認識票、部隊の情報を掲載している。マラットさんはいとこの運命について率直な認識を語った。「彼が戦死した可能性が高いことは分かっているが、遺体が見つかるとすればどこなのか情報を探している。それにもしかしたら、彼は生きているかもしれない」と言った」

     

    ウクライナ政府は、ロシア兵の死亡者について身分証明書を示している。ロシア軍がひた隠ししているウクライナ軍に拘束されるか、死傷した兵士を公表して、プロパガンダに利用している。ロシア国内での反戦運動を高めて戦争を止めさせる一助にしたい考えだ。

     


    (6)「ロシアのウファに住む家族はマラットさんに対し、息子を探せばロシア当局に報復される恐れがあるため、ホットラインに電話してほしいと依頼した。「ロシアでは誰もがおびえているので、家族は誰からも連絡を受けないようにしている。法執行当局による追跡を恐れ、皆話すのを怖がっている状況だ」(マラットさん)ますます明らかになりつつあるのは、ロシアのプーチン大統領が戦争に関する国内の情報を統制していることだ。死傷者数に関する発表はこれまで、498人が死亡したとするロシア国防省の無味乾燥な声明のみだ」

     

    ロシアの権威主義的な政治の一端が現れている。国内情報を統制している点は、戦時中の日本と酷似している。息が詰まるような社会なのだろう。

     


    (7)「フロリダ州でCNNの取材を受けたもう1人の相談者、マリーナさんは、自分の叔母はロシア国防省から何も情報を提供されていないと語る。 「家族は、彼のことを探そうとしたが、誰からも回答がない」とマリーナさん。そこで、ウクライナのホットラインに電話することに唯一の望みを託したが、現時点でいとこに関する情報は得られていない。ホットラインを担当する当局者らによると、電話をかけてきた人の大半は、息子や夫から予備役の訓練や軍事演習に派遣されると伝えられていた。侵攻開始直前の2月22日か23日に連絡が途絶えたケースが多いという

     

    プーチン戦争緒戦に、ロシア兵の犠牲者が多いことを物語る。兵士は、事前に戦争に知識を知らされないままに戦場へ引き出された結果であろう。

     

    (8)「キエフでホットラインの責任者を務めるクリスティナ氏は、受けた電話のことが頭から離れないと話す。「ある父親から電話があった。彼の話では『子どもたちは消耗品、肉の盾として使われている。政治家や有力者がゲームに興じて自分たちの問題解決を図る一方で、子どもたちは死んでいく。誰かがそれで金もうけをしたいから、あるいは自身の野心を満たして世界の王になりたいからだ』と

     

    このウクライナ侵攻は、文字通り「プーチン戦争」である。プーチンの野心を満たすための戦争であるからだ。

     

    このページのトップヘ