勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

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    ロシアが貿易で孤立を深めている。米国が、ロシアの制裁逃れに加担する第三国の金融機関に制裁を科す方針を表明し、中国などロシアの友好国の一部金融機関は同国との決済を停止した。ロシアでは追加制裁の方針が響き、電子部品などの調達が難航している。戦時経済体制への痛手となろう。 

    『日本経済新聞 電子版』(6月3日付)は、「ロシア、米制裁で貿易孤立、中国金融機関など決済停止」と題する記事を掲載した。 

    ロシア中央銀行によると、14月の輸入総額は前年同期比10%減った。ロシアが戦時物資の調達で依存する中国からの輸入は3月以降に急減している。 

    (1)「中国税関総署のまとめでは、4月の対ロ輸出額(ドル建て)は前年同月比14%減った。2022年6月以来の減少だった3月(16%減)から2ヶ月連続のマイナスとなった。品目別にみると鋼材やアルミニウムが減少し、電子部品などの輸出にも支障が出ている。中国の物流会社の関係者は「3月からロシアとの取引は特定の銀行でしか決済できなくなった」と話す。取引可能な銀行でも審査が厳しくなり、「入金までに1カ月以上かかる状況だ」という」

    中国の対ロ輸出(ドル建て)は、3~4月と連続で前年比マイナス10%台になった。米国が警告した「二次制裁予告」効果が出ている。米国のドル決済網から排除されたら、銀行はビジネスが不可能になる。それほどの効き目があるのだ。 

    (2)「ロシアと友好関係を維持する新興各国でも、ロシア向け輸出の減少が目立つ。13月ではトルコで前年同期比3割減、カザフスタンも同25%落ち込んだ。23年に中ロの貿易は過去最高を記録した。トルコやアルメニア、カザフなどの中央アジア諸国を経由し、先端部品を輸入する迂回調達もロシア経済を支えてきた。米国はロシアが中国から輸入する電子部品などを使って軍需生産を加速したとみる。今年に入ってロシアの貿易にブレーキが掛かった背景には、米国が検討する追加の金融制裁がある」 

    ロシア友好国は、対ロ輸出が軒並み減っている。これまで、ロシアへの「隠れ輸出ルート」が遮断されたのも同然の効果である。

    (3)「米欧は22年に世界的な決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの主要銀行を遮断したものの、ロシア側は中国の金融機関に口座を開くなどして取引を続けた。バイデン大統領は23年12月、こうした制裁逃れの貿易を止めるため、ロシアの物資調達に関わった第三国の銀行についても経済制裁の対象に加える方針を示した。イエレン財務長官ら米当局者は中国などを訪問し、米国の制裁対象になっている企業と取引すれば米市場へのアクセスを失う可能性があると警告した 

    米国は、世界の唯一の基軸通貨国である。この米ドルに逆らっては、いかなる国も貿易決済ができなくなるのだ。

     

    (4)「第三国の金融機関にとって、米国の制裁は経営の大きな障害となる。ロシアとの取引を敬遠し、中国の大手銀である中国工商銀行などはロシアからの人民元建て決済を拒否している。取引全体の8割にあたる決済が一時停止に追い込まれたとの見方もある。トルコの主要金融機関も1月以降、軍事関連のロシア企業に法人口座の閉鎖を通告した。軍事関連以外でも書類やデータの確認に時間をかけ、決済手続きを厳しくした」 

    かつて、中国ファーウェイ副会長(当時)が、イランとの取引を偽装した疑いでカナダにおいて逮捕され長期にわたって拘束された事件がある。これは、米ドル決済禁止を破ったことが理由である。この事例をみれば、米国からの「二次制裁」の厳しさが分る。 

    (5)「アラブ首長国連邦(UAE)の大手銀行であるファースト・アブダビ・バンクやエミレーツNBDなどが続き、5月22日にはモンゴルの一部銀行も決済を一時停止したことが明らかになった。カザフの銀行がロシア製のクレジットカードの利用を停止するといった動きも出ている。ロシア紙『コメルサント』は同国内の電子部品メーカーの支払いが3月末以降、中国の銀行で処理されていないと報じた。多くのロシア企業は在庫で対応しているが、夏以降に電子部品などの不足が深刻になるとの見方が多い。乗用車など最終製品の値上げは避けられず、インフレの再燃につながりかねない」 

    二次制裁の威力はすごいものがある。ロシアと取引してきた各国の銀行は、ドル決済からの排除という最悪事態を恐れて対ロ貿易縮小へ動いている。米ドルの威力である。

     

    (6)「ロシア中銀は5月24日に発表した報告書で、米国が23年秋以降に科した制裁がロシア企業だけでなく、友好国の企業も対象としていると批判。「輸出入の減少や国境を越えた決済などがより複雑になる可能性がある」との懸念を示した。プーチン大統領は危機感を強める。5月16日に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との首脳会談で決済の問題を提起し、記者会見で「国家レベルで支援する必要がある」と訴えた。ただ、中国側から公式な反応はなく、解決には時間がかかるとの見方が大勢だ。ロシアはウクライナ北東部など前線で攻勢を強めるが、先端兵器の不足が指摘されてきた。貿易面での孤立がさらに深まれば、兵器生産が停滞し、継戦能力に影響を与える可能性もある」 

    今回の「二次制裁」の警告が、ロシアのウクライナでの戦いに影響しそうだという。ロシアが、先端兵器の購入ができなくなれば、戦線に影響するからだ。

    ロシアが貿易で孤立を深めている。米国が、ロシアの制裁逃れに加担する第三国の金融機関に制裁を科す方針を表明し、中国などロシアの友好国の一部金融機関は同国との決済を停止した。ロシアでは追加制裁の方針が響き、電子部品などの調達が難航している。戦時経済体制への痛手となろう。

     


    テイカカズラ
       

    ロシアのウクライナ侵攻は、中国を複雑な立場にしている。習近平国家主席は、ロシアのプーチン大統領が生涯の盟友だけに敗北させる訳にはいかないからだ。プーチン氏が政治的に健在であることが、習氏の「終身」国家主席を可能にさせる上で有利である。だが、国家経済としての中国という視点で判断すると、違う結果になろう。欧州が、中国を警戒して貿易関係で疎遠化する動きをみせている。当面、習・プーチンの関係で中ロは密接でも、複雑な面をみせるはずだ。 

    『フィナンシャルタイムズ』(5月20日付)は、「中ロ首脳の結束『ゆるがぬ構造』」と題する記事を掲載した。 

    (1)「ロシアを中国から引き離すという具体性に欠く議論は、どちらの国に接近するべきかについての意見の相違を見過ごしている。多くの欧州諸国は、ウクライナを巡ってプーチン氏に厳しい態度を取るよう習氏を説得したいと考えている。つまり彼らの狙いはロシアを孤立させることだ。一方、米政府では長期的な敵対国としては中国の方が危険だというのが一致した見解だ。米国の戦略家の中には、ロシアが中国に取り込まれれば世界の勢力バランスが中国にとって有利になると懸念する人もいる。キッシンジャー氏も長年にわたって中国を称賛はしていたが、個人的にはこうした見方をしていたようだ」 

    英国マッキンダーによる「地政学論」が登場した背景には、ロシアがドイツと結びつくことの軍事的危険性が指摘されていた。現代では、ロシアと中国の「接近」である。常識的に言えば一体化する条件はあるが、経済基盤が全く異なる。中国は、ロシアと一体化するメリットが少ないからだ。中国経済には、西側諸国との貿易抜きでは考えられない。

     

    (2)「理屈の上では、ロシアと中国が再び分断するよう画策することは、こうした不安の解決策となるだろう。だが残念ながら、そのような地政学的な動きが実際に実現する可能性は、少なくとも当面の間は極めて低い。5月16〜17日に北京を訪問したプーチン氏に対する温かい歓迎は、中ロ関係が永続的で強固であることを物語っている。習氏とプーチン氏の結束が今も強いのは、共通の世界観に基づいているからだ。両者ともに米国を主な脅威とみなす独裁的な国家主義者だ。プーチン氏の訪中時に発表された共同声明で両者は、米国がロシアと中国を標的とした「二重の封じ込め」政策を追求しており、「覇権主義的」な行動をしていると非難した」 

    習近平氏が、堂々と大国同士の首脳外交を展開できる相手はプーチン氏ぐらいだ。北京で厚くもてなしするのは当然であろう。中国は、「格下」とみた国には冷淡でも、相手をみて対応を変える國である。 

    (3)「ロシアと中国は、米国が敵対的な軍事同盟によって自国を包囲しようとしていると考えている。その軍事同盟とは、欧州における北大西洋条約機構(NATO)であり、インド太平洋では日本や韓国、フィリピン、オーストラリアと米国との2国間同盟だ。もちろん米国が欧州とアジアに多くの同盟国を持つ理由は、ロシアと中国がともに近隣諸国の多くに恐怖心を抱かせているからだ。プーチン氏と習氏はこの現実を認識したがらない。代わりに彼らは、拡張主義の米国から自国を守っていると主張する。おそらく彼らは本当にそう思っているのだろう」 

    中国は「戦狼外交」を行った結果、周辺国が米国との同盟を強化したという事実を認めず、一方的な「被害者意識」を強めている。これは、中国が「同盟」を本能的に嫌うという秦の始皇帝以来の外交感覚である。

     

    (4)「ロシアと中国は、それぞれの地域の米同盟国に疑念の目を向ける一方、互いを比較的信頼できる隣国とみなしている。中ロは長い国境を接しており、そのため中ロが友好関係を維持することは、米国と米国の同盟各国による「二重の封じ込め」を阻止するのに極めて重要だと考えられている。中国からみれば、ロシアの敗北は中国を危険なまでに孤立させるリスクがある。この相互依存は、中ロ関係の根底にどんな緊張があろうと両国が結束し続けることを意味する」 

    下線部分は重要である。中国は、ロシアの敗北が「中国危機」に向うとみている。それは、西側諸国が一段と中国へ圧力をかけると警戒しているからだ。ロシア勝利となれば逆に、西側諸国は「台湾侵攻」間近という想定で守りを固めるであろう。中国は、「台湾侵攻」という時限爆弾を抱えているだけに、中国にとってプラスになることはないのだ。 

    (5)「それでも両国の間に緊張が存在することに疑いの余地はない。世界観は似ていても、ロシアと中国は地政学的にはまったく異なる状況にある。プーチン氏は、ロシアを西側諸国からのけ者扱いされる国家にしてしまった。対照的に中国は、今も米国と欧州の最大の貿易相手国の一つであり続けている。この違いが、中国が無謀だとみなすようなリスクをロシアが進んで取る理由だ。最近、北京を訪れた筆者に対し、複数の中国人アナリストが、ロシアと北朝鮮の軍事関係がますます緊密になっていることに不安を感じていると語った。懸念の一つが、ロシアが北朝鮮から砲弾を受け取る引き換えに、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権と先端軍事技術を不用意に共有していることだという」 

    ロシア経済は、ウクライナ侵攻に伴う西側の制裁で発展途上国へ逆戻りする。中国は、このロシアと密接な関係を持てば、西側諸国は距離を置くことになる。中国経済にはデメリットだ。要するに、中国はロシアとの関係を深めて得をするのは習近平氏だけであり、経済としてみれば損害を被るであろう。

     

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    ロシアのプーチン大統領は、ライバル不在の中で大統領選に圧勝した。当面の課題の第一は、ウクライナ侵攻をいつ止めるのかだ。そのカギは、ロシアの兵器増産力がいつまで保つかにもかかっている。数年説もあるが、長引けば長引くほどロシアの国力を消耗する。すでに予算の29%を国防費に向けている。確実に国力衰退に向っている。 

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月20日付)は、「ロシアの兵器増産 持続力には疑問」と題する記事を掲載した。 

    ロシアの戦車・ミサイル・砲弾生産能力は西側諸国を驚かせ、ウクライナにさらなる圧力をかけた。問題は、それがいつまで続くかだ。欧米の当局者やアナリストの間では、ロシアが公表している軍事生産量は誤解を招きやすく、労働力不足や品質低下などの問題を覆い隠しているとの声がある。増産は経済全体の資源を消耗するため、長く続けるのは難しい可能性がある。生産量が落ちれば、中国・イラン・北朝鮮といった友好国からの援助にさらに頼ることになるかもしれないという。

     

    (1)「ロシアが2022年にウクライナに侵攻すると、米国とその同盟諸国は一連の制裁を科し、ロシアの軍需産業を阻害しようとした。戦場では、ロシアはすぐに装備を失い、ミサイルや砲弾の在庫が底を突いた。これを受けて、ロシア政府は直ちに兵器産業に資源を投入した。昨年は、連邦政府支出に占める国防費の割合が21%と、2020年の約14%を上回った。2024年の連邦予算ではこの割合がさらに大きくなり、29%を超えた」 

    ロシアの国防費は24年、予算の29%超にもなった。ウクライナ侵攻前の20年は、14%だ。この間に倍増している。国家経済を大きく圧迫していることは疑いない。 

    (2)「欧米の当局者らによれば、ロシアはミサイルなどの兵器も増産している。例えば、2021年に40万発だった砲弾生産量は翌年に60万発となり、米国と欧州連合(EU)の合計生産量を上回ったと、エストニアの軍事情報機関は推定している。北大西洋条約機構(NATO)の高官によれば、ロシアは現在の規模であと2~5年は戦力を維持できるとみられる。欧州の少なくとも二つの軍事情報機関は、あと数年は十分な兵器を生産できるとの見方を示している」 

    欧州の複数の軍事情報機関は、ロシアがあと数年は兵器生産ができるとみている。

     

    (3)「ロシア経済の他部門からの投資・労働力・資材の流出を考えると、増産――および軍事費全体の水準――は持続可能なものではない可能性があるとフィンランド銀行は結論づけている。同行の分析では、増産された防衛関連品の大半はローテク製品(加工鋼など)であり、ロシアが国外のサプライヤーに依存している、より高度な製品(半導体など)ではないことも明らかになっている。ロシアは一部の製品については制裁を回避することができたが、戦車の乗組員の視界を確保する光学部品など、ロシアが欧米から購入していた特殊部品は、第三者を通じて購入することがはるかに難しい」 

    フィンランド銀行は、ロシア経済の他部門からの投資・労働力・資材の流出を考えると、兵器生産「数年説」を否定する。増産された防衛関連品の大半が、ローテク製品(加工鋼など)であると指摘している。ハイテク兵器ではないのだ。 

    (4)「ロシアが主張する生産数に疑問を呈するアナリストもいる。例えばロシアの生産数は、新たに生産された装甲車と、倉庫から出して改修した旧型車を区別していない。「生産数は誇張されている」と国際戦略研究所のマイケル・ジェルスタッド研究員は言う。ジェルスタッド氏が開戦前後の衛星画像を調べたところ、ロシアが昨年、少なくとも1200両の旧型戦車を倉庫から引っ張り出してきたとみられることが分かったという。つまり、ロシアが昨年生産した戦車はせいぜい330両ということになるが、実際の数はその半分である可能性が高いと同氏は指摘する」 

    ロシアは、兵器の生産数を誇張しているとみられる。これまで眠っていた旧型戦車(約1200両)を引っ張り出して、「増産」に数えている節がある。ロシアが、昨年生産した戦車はせいぜい330両とみられる。

     

    (5)「ロシアの兵器メーカーは人手不足に直面している。ロシア大統領府のウェブサイトに掲載された発言記録によれば、ウラジーミル・プーチン大統領は2月に同国最大の戦車工場を訪問した際、熟練工が不足していることは認識していると従業員に語った。ウラルバゴンザボード社の同工場では昨年初め、特に深刻な人手不足に陥り、近隣の刑務所から250人の受刑者を受け入れたと、同刑務所が当時明らかにしていた。ユーリ・ボリソフ副首相は2022年6月、兵器産業では労働者が約40万人不足していると述べた。ボリソフ氏などの当局者は同産業の必要人員を約200万人としていることから、約20%の人員が足りていない計算になる」 

    ロシアの兵器生産では、労働力不足で刑務所の受刑者を兵器生産に当らせているほどだ。兵器産業では労働者が約40万人不足(20%)している状態だ。増産説に疑問がつく大きな理由だ。 

     

     

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    ロシアのウクライナ侵攻から、すでに満2年を経て戦線は膠着状態である。ウクライナ支援の米英やEU(欧州連合)は、西側に預けられていたロシア中央銀行の約3000億ドルを巡って、没収論(米英)と利子利用論(EU)で意見が対立している。

     

    国際法上、国家資産は原則没収できないことになっている。ロシア資産を例外とする論拠にしたのは、国連の国際法委員会が2001年にまとめた文書が論拠である。それによると、違法行為によって特別に影響を受ける国は、加害国の責任を追及できると記した。米国はこれに基づき、予算の面などで影響を受けるG7も対抗措置が可能だと主張した。英国は、米国の意見に賛成している。

     

    ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの凍結資産そのものの活用を求めている。資産没収には各国の国内手続きも必要になる。旗振り役の米国も、没収を可能にする国内法の成立は見通せていないのだ。独仏は、没収できるとする米国の解釈に真っ向から反論する。交戦状態にない第三国の資産を没収すれば、異例の措置となるからだ。国際法違反の悪しき前例になると訴えている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(3月11日付)は、「ロシア凍結資産の没収論。民間投資に逆風 歴史学者」と題するインタビュー記事を掲載した。米コーネル大ニコラス・ミュルデル助教授へのインタビューである。

     

    ウクライナ侵攻から2年がたち、主要7カ国(G7)はロシア向けの経済制裁の強化を模索している。凍結資産の没収といった踏み込んだ対応は、世界経済にどのようなリスクをもたらすのか。制裁の歴史に詳しい米コーネル大助教授(欧州近現代史)のニコラス・ミュルデル氏に聞いた。

     

    (1)「(質問)ロシア向けの経済制裁は歴史的にみて異例か。(答え)「これまでとは量的にも質的にも違う。イランやベネズエラのような小国ではなく、世界で10〜11番目の経済大国に制裁を科した例は1930〜40年代以来だ。エネルギー市場での存在感が強いため、ロシアに原油供給を続けさせながら値段を下げる上限価格措置が導入された点も新しい。ロシアの中央銀行の資産凍結までは一般的な対応だ。アフガニスタンやイランでも凍結した。ただ、資産を没収すれば大きな影響がある。通常は戦争後に勝利した国が実施するものだ。欧州にとって凍結資産はロシアに和解させる際の交渉材料にもなるはずだが、その影響力もなくなる

     

    ロシアの資産凍結は、過去の例でもみられた案件だ。だが、没収となると事態は複雑になる。ロシアが、永遠に戦争が可能でない以上、どこかで和平が求められる。凍結資産は、和平交渉の材料に使える、としている。

     

    (2)「(質問)G7の力は金融市場で圧倒的ですが、GDPのシェアは低下している。経済を武器として使うやり方は持続可能か。(答え)「重要な問いだ。米国が非常にユニークなのは、世界最大の経済大国でありながら産油国である点だ。ドイツはエネルギーを輸入に依存しているため、経済を武器として使えない。日本もロシアでの石油・天然ガス開発事業『サハリン2』のような事例があり、限界がある。経済を武器に使えるかどうかという観点でみると、米国は世界の歴史でみても特異な存在であり、他のほとんどの国にはまねができない」

     

    米国の没収論は、米国経済の特異性にある。米国が、世界最大の経済大国であり同時に、産油国であることだ。米国には、こうして強気の姿勢で交渉できる強みがある。ただ、他国はこれを鵜呑みにすると、後からロシアの「しっぺ返し」を受ける危険性を抱え込む。

     

    (3)「(質問)ロシア原油の価格上限のようにドルを武器として使うやり方は、ドル離れを加速させるのでは。(答え)「世界経済が、急速に脱ドルに向かう現実的な見通しは存在しない。ドルは、非常に重要な基軸通貨であり続ける。アジアの貿易取引では、ドルが人民元におされ始めているが、金融資産や外貨準備という点では人民元の量が足りないためドルの地位は維持される」

     

    米国が基軸通貨国である理由は、前述のように世界最大の経済大国であり、世界最大の軍事力を擁することにある。他国が、米ドルを資産として持つことに何らの不安もないのだ。ふらつく中国経済とは、比較にならない強みを持っている。

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    ロシア軍のウクライナ侵攻が始まって、間もなく3年目を迎える。ウクライナは、多大な被害を受けながらも、国土を守り抜く強い意志を示している。だが、世論調査ではそういう強い意志をみせる国民は8割を下回っており、「休戦」の二文字がちらつき始めている。

     

    『毎日新聞』(2月15日付)は、「対露戦争3年目を前に疲弊漂うウクライナ 徴兵逃れや関心低下も」と題する記事を掲載した。

    ロシアの侵攻が続くウクライナ。昨年2月以来、1年ぶりに現地入りした記者(鈴木)が感じたのは、人々の間にじわりと広がる疲弊ムードだ。24日で3年目に突入する戦いは終わりが見えない。捕虜への関心低下や、兵員不足の深刻化など重い課題が浮き彫りとなっている。

     

    (1)「前線で戦った兵士のことを忘れるな!」「捕虜を解放させろ!」――。11日、首都キーウ(キエフ)市内の大通りの交差点。冬曇りの下で、ウクライナ内務省傘下の戦闘部隊「アゾフ大隊」の隊員家族ら約200人がプラカードを掲げてデモを行った。アゾフ大隊は開戦当初に、南東部の要衝マリウポリの製鉄所などを拠点としてロシア軍と激戦を繰り広げた部隊だ。製鉄所に立てこもった隊員たちは2022年5月中旬に投降し、ロシアの捕虜となった」

     

    南東部の要衝マリウポリの製鉄所は、激戦地で多数の犠牲者が出た場所だ。多くの兵士が、ロシア軍の捕虜となった。

     

    (2)「デモに参加したカトリーナさん(25)の婚約者の男性(27)は、今もロシアの収容所に捕らわれている。カトリーナさんは昨年6月にテレビ番組のニュース映像でロシアの法廷に姿を現した婚約者を見たというが、それ以降の消息は不明だ。「映像を目にしたときは驚きで息が止まるかと思った。痩せこけていて心配だ」と目に涙を浮かべる。ロシア側との捕虜交換で解放された隊員もいるが、現在でも700人以上が拘束されているとされる。手詰まり状態の戦況に、カトリーナさんは「兵士ではない私が無責任なことは言えない。ただ早く戦争が終わって婚約者が無事に帰ってきてほしい」と声を落とした」

     

    捕虜の解放を待つ身にしてみれば、早い戦争終結を待ちわびている。 

     

    (3)「毎週日曜に続けるこのデモの企画者の一人、ターニャさん(44)は「ウクライナの人々も戦争状態に慣れたり疲れたりしてきている」と指摘する。捕虜の存在にも関心が薄れてきているといい、「彼らは英雄だ。忘れてはならないと訴え続ける」と力を込めた。総動員令が出ているウクライナでは、18~60歳の男性は出国が原則禁止されている。地元メディアによると、侵攻開始後の数カ月間は何万人もの男性がこぞって兵役を志願したが、熱意は次第に低下。前線では兵員不足が深刻化している。ゼレンスキー大統領は昨年12月、最大50万人の追加動員を検討中と明かした」

     

    ゼレンスキー大統領は昨年12月、最大50万人の追加動員を検討している。18~60歳の男性は、すでに全員が出国禁止されている。そのなかで、50万人を動員できるのか。

     

    (4)「こうした状況の中、徴兵逃れが大きな問題となっている。英公共放送BBCは昨年11月、これまでに約2万人の男性が国外に出国したと報道。また、約2万1000人が出国に失敗してウクライナ当局に拘束されたという。徴兵事務所から数回にわたって兵役を呼びかける手紙を受け取ったという男性(31)は匿名を条件として取材に応じ、「適切な装備も訓練もなく前線に放り込まれるのは絶対にごめんだ」と語気を強めた。軍の徴兵担当者らが街頭で対象者をチェックしている場合があるといい、外出の際には、仲間らとネット交流サービス(SNS)で情報交換をするなど警戒しているという。「強制的に徴兵事務所に連行されるのではないかと恐怖を感じている」と話すこの男性。「2年前は国の未来を守るために兵役を志願する人々がいた。今、私は妻と6歳の長女を守るため、戦場へ行くことを拒否する」と断言した」

     

    戦争忌避する人々もいる。中には、不正手段で出国するという事態も発生している。こういうなかで、ゼレンスキー大統領は今後の展望をどのように描いているのか。戦闘機の導入が本格化すれば、新たな展開も期待できるのであろう。

     

    (5)「ウクライナの世論調査機関「キーウ国際社会学研究所」が23年12月に公表した世論調査によると、「どんな状況の下でも領土を諦めるべきではない」と回答したのは74%。多数派ではあるが、22年5月からの調査で初めて8割を下回った。また、「平和のために領土を諦めてもよい」と答えたのは全体の19%で、昨年5月の10%から9ポイント上昇している。回答者の居住地域別にみると、激戦が続くウクライナ東部では25%が「諦めてもよい」と回答。南部、中央部、西部よりも領土放棄を容認する割合が高くなっている。一方で、「領土を諦めてもよい」と答えた人のうち71%は「西側諸国からの適切な支援があれば(露軍の撃退に)成功できる」と回答。「領土を諦めるべきではない」と答えた人では93%が同様の回答をしている。市民レベルでも、欧米の軍事支援が戦況のカギを握ると強く意識している模様だ」

     

    最終的には、ウクライナ世論が停戦=和平案を決めることだ。その時期は、24年中に来るであろうか。

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