中国が、主宰した23日のBRICS(中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ)オンライン首脳会議の共同発表は、なんら目新しいものもなかった。事前の情報では、BRICSを米欧との対抗軸に押し上げる「策略」を練っていると伝えられていたのだ。それが、拍子の抜けするような「常識的」内容に止まった背景は、「クアッド」(日米豪印)へ足を踏み入れているインドが、中ロの「策略」に賛成しなかったのであろう。
『ブルームバーグ』情報ではインドが、中ロによるBRICSを米欧対抗軸に変質させることに反対すると漏らしていた。BRICS会議直前、中ロはそれぞれ米国とNATOを厳しく批判していた。激しい前哨戦であっただけに、BRICSでも同様の主張をしたはずだ。だが、インドは、この過激なラインに乗らなかったのだ。
ロシアは、ウクライナ侵攻によって世界的に評価を急落させている。逆に米国の評価が上がっている。
米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は、「2022グローバル・アティテュード・サーベイ」を6月22日に発表した。主要18カ国の成人を対象にした今回の調査で、米国とNATOに対しては友好的な評価を示した。だが、ロシアに対する評価はこれまでの最低を記録した。
米国に対しては61%が「好感」を示した。ロシアに対しては、「好感」が10%で2020年から急激に下落。過去最低値を記録した。「非好感」の回答の割合は85%で、中でもポーランドのロシア非好感度は97%でもっとも高かった。
ロシアに対する「好感」がこれほど低い状況では、中ロ以外のBRICSメンバーのインド、ブラジル、南アフリカもロシアの言分を認めて、米欧へ対抗する気持ちも失せたに違いない。
『時事通信』(6月24日付)は、「ウクライナ危機で対話支持、BRICS首脳が『北京宣言』」と題する記事を掲載した。
中国の習近平国家主席が主宰し、ロシアのプーチン大統領らが参加した新興5カ国(BRICS)のオンライン首脳会議は23日、ロシアとウクライナの対話を支持するとした「北京宣言」を採択した。ただロシアは侵攻したウクライナで攻勢を強めており、現時点で対話の実現は見通せない。
(1)「中国外務省によると、宣言は「各国の主権や領土の一体性を尊重する」とし、「対話や協議を通じ国家間の不一致や紛争を解決すべきであり、危機の平和的解決に資する努力を支持する」と言及した。朝鮮半島情勢に関しては「完全非核化」に向けた北朝鮮など関係国の話し合いを後押しした」
このパラグラフは、これまでの中国が表向きに「中立」を装った発言と寸分、変わらない内容だ。インドが、米欧に対抗するという過激な発言に賛成しなかった結果であろう。中国は、インドの外交戦略を完全に見誤っている。
インド最大の敵は、中国である。国境線で繰返される武力紛争がそれを示している。インドが、好き好んで中国の片棒を担ぐはずがない。中国が、インドへ接近しているとすれば、外交的に米欧と対立して苦しい立場に立たされていることを示すものだ。
「中ロ枢軸」は孤立している。厳密に言えば、習近平氏とプーチン氏の二人が、肝胆相照らす関係であり、国家は道連れにしているだけだ。この二人の寿命に限りがある。未来永劫にわたり、中ロが一体化している訳でない。巷間、言われているようにプーチン氏に健康不安があるとすれば、プーチン後ますます中ロの関係は不安定化しよう。
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2022-06-24 |