習氏は、きょうプーチン氏と会談する。何を語り合うのか。これが、中国の将来に危険性をもたらさないか。改めて、その「危険度」を探る。
『ブルームバーグ』(10月17日付)は、「プーチン氏に賭けた習氏の危ういギャンブル 負ければ失うもの多し」と題する記事を掲載した。
ロシアのプーチン大統領は2022年2月の中国訪問で習近平国家主席から「限界のない」パートナーシップという約束を取り付けた。プーチン氏はそれから1カ月を経ずして、ウクライナへの武力侵攻を開始。今や中国の経済支援と自ら招いた政治的孤立からの脱却を必要としている同氏は17日、再び北京に戻った。習氏が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議が北京で同日開幕する。
(1)「ウクライナ侵攻開始から1年8カ月がたち、ロシアの対中依存は経済のあらゆる面に及んでいる。今のところ、プーチン、習両氏は首脳会談で2国間関係の強化に焦点を絞ると予想されている。ロシアは中国からの経済支援を確固たるものにし、中国政府に新しいガスパイプラインに関する協定に調印するよう働きかけたい考えだ」
プーチン氏は、中国から経済支援と新しいガスパイプライン協定調印を目指している。
(2)「習氏としては、新たな世界秩序のビジョンを構築する上で強力なパートナーとなる信頼に足るロシアを必要としている。それは、西側諸国、特に米国とその同盟国に対する長きにわたる不信と、台湾を巡る中国の立場を強めたいという願いに基づくものだ。中国が領土の一部と見なす台湾に米国は支援を約束している。習氏にとって、プーチン氏は重要な一翼を担う。すぐにはあり得ないだろうが、実際にもし中国が台湾に侵攻するようなことがあれば、ロシアは食料や燃料の供給を確保し、国連安全保障理事会で政治的な援護をする可能性がある」
中国は、台湾侵攻の際にロシアから食料や燃料の供給を確保と政治的援護を期待している。
(3)「中国とロシアの間には不穏な雰囲気も漂う。中国がロシアとの関係で得ているのは一定の自動車・テレビ・スマートフォン市場と、値引きされたロシア産石油・ガスを除けばほとんどないと北京の一部専門家や学者は分析。このため、プーチン氏に賭けるギャンブルの度が過ぎるのではないかという疑念も浮上している。ワルシャワのヤクブ・ヤコボフスキ東方研究センター副所長は、「習氏にとってプーチン氏は理想的なパートナーではないと思う。習氏はもっと大きなことを望んでいた」と指摘。ロシアが始めた戦争に関与したくない「中国エリート層の一部からすれば、プーチン氏は習氏にとって一段と重荷になっている」と述べた」
中国がロシアとの関係で得ているのは、輸出急増を除けば何もないという。中国は、ロシアが始めたウクライナ戦争に関与したくないのが本音だ。
(4)「EUの行政執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)はウクライナに対する中国の姿勢が、EUの対中投資意欲を減退させていると警告している。マレーシアのマラヤ大学で中国研究所所長を務め、中国政治について多くの著書があるヌゲオウ・チャウ・ビン氏は「中国とロシアが同じカテゴリーに分類され続ける限り、欧米などとの橋渡し役」になれないことを中国政府は憂慮しているとし、「中国はどちらの側からも頼れる存在として自らをアピールしたいと考えている」との見方を示した」
ウクライナ戦争に対する中国の姿勢が、EUの対中投資意欲を減退させていることは間違いない。中国の理想は、EUとロシア双方から尊敬されることだという。これは、中国経済の減速とともに不可能になってきた。
(5)「欧州を拠点とするある外交官は、2人の関係性には同志間の抗争のような側面もあると主張する。両国の関係はしばしば緊張し、時には公然と敵対してきた。1969年の国境紛争では、当時のソ連が中国に対して核兵器の使用をちらつかせた。EU担当の中国外交官だった王義桅・中国人民大学国際事務研究所所長によれば、この「核の脅し」がウクライナに対する同じようなロシアの威嚇に中国が反対する理由の一つだという」
1969年の国境紛争で、当時のソ連が中国に対して核兵器の使用をちらつかせた。これが、トラウマになっており、ロシアへの感情に不信感が混ざっているという。
(6)「中国政府にとってもう一つの「レッドライン」は、国連憲章にうたわれている領土主権の原則だ。中国は台湾を巡る自国の見解を強化しようと常にこの原則に触れている。習氏はまた、北大西洋条約機構(NATO)拡大に対するプーチン氏の懸念を共有しているように見える。だが、それは全面的なロシア支持を示すものではない。親モスクワ派は「ロシアの領土奪取を支持している」のではなく、「西側の覇権に対抗するロシアの行動を評価している」のだと王氏は言う。「多くの人々がロシアを嫌い、ロシアを批判している」とも話した」
中国は、西側の覇権に対抗するロシアの行動を評価しているだけだという。中国の「お仲間」づくりにすぎない。これでは、真の関係強化は不可能だ。
(7)「両国間で緊張が生じている分野の一つが、習氏肝いりの一帯一路だ。中国は1兆ドル(約150兆円)規模のこのプロジェクトを通じ影響力拡大を図っており、ロシアの裏庭である中央アジアに足を踏み入れている。今のところ、ロシアは対中関係の不均衡についてほとんど何もできない。BEのロシア担当エコノミスト、アレクサンダー・イサコフ氏によると、「ロシア政府は国内経済を維持するため中国の協力をしかたなく必要としている」という」
中国は、一帯一路事業でロシアの勢力圏である中央アジアへ触手を伸ばしている。こういう現状から言えば、プーチン氏は習氏へ複雑な感情を持っているはず。プーチン氏は、こういう「一物」を胸に、習氏と会談するのだろう。