弱い犬ほどよく吠えると言われるが、ロシアのプーチン大統領はこの類いかも知れない。ウクライナ侵攻して数日後、核攻撃を示唆して世界を驚かせた。開戦後のロシア軍は、精鋭を誇った空挺部隊が約1000名も殲滅され危機感を強めたのだ。これが、プーチン氏の「核発言」の背景である。
今回は、ウクライナ北東部でロシア軍が大敗北した危機感が、二度目の「核発言」をもたらしたものだ。人間も弱い者ほど強がるが、国家も似ているようである。
米国は、冷戦時代からソ連の核動向を常時、監視している。その体制は、現在も変わらないという。プーチン「核発言」が、これからどうなるかは米軍の監視体制によってウォッチされるのだ。
米『ニューズウィーク 日本語版』(9月22日付)は、「プーチンが核攻撃を決断すれば『アメリカが検知する』」と題する記事を掲載した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による再度の「核の脅し」を受けて、今度こそロシアの核攻撃が迫っているのでは、と懸念する声が上がっている。だがアメリカは、プーチンが攻撃を計画した段階で、それを検知することができるという。
(1)「プーチンは9月21日、NATOが核兵器でロシアを「脅そうとした」と非難した。事前収録されたテレビ演説の中で、ロシア側も「さまざまな大量破壊兵器を保有しており」、反撃の用意があると警告。「ロシアと国民を守るために、あらゆる手段を行使する」つもりだと述べ、「はったりではない」とつけ加えた。ロシアにとっても核兵器の使用は最後の手段だが、専門家は、もし本当にプーチンが核攻撃を決断しても、アメリカは事前にそれを検知することができるだろうと指摘する。米軍備管理不拡散センターの政策担当シニアディレクター、ジョン・エラスによれば、こうした核活動の監視は冷戦以降、当たり前のことになっていると本誌に語った」
プーチン氏は、ロシアだけが核を保有しているような発言をしているが、米国は冷戦時代からソ連(ロシア)の核攻撃を事前に察知すべく監視網を敷いている。米国は、数分以内に報復攻撃が可能な体制を維持しているのだ。
(2)「全米科学者連盟の核情報プロジェクト責任者であるハンス・クリステンセンは本誌に対し、プーチンが核兵器の使用を決定した場合、中央保管施設から持ち出さなければならない短距離核戦力よりも、既に警戒態勢に入っている長距離核戦力を使用する方が迅速に動けるだろうと指摘した。米情報当局はロシアの核兵器保管施設を監視しており、核弾頭がトラックやヘリコプターに積み込まれたり、核兵器を扱うための特殊訓練を受けた部隊の活動が活発化したりした場合に、それを検知することができる。これらの活動は、プーチンが短距離核戦力による攻撃の準備に着手したことを示すものとなる」
核は常時、厳重に保管されている。これを取り出し攻撃体制へシフトさせるには、それなりの過程を踏む。そこで、米国の監視網がこれを検知できるシステムになっている。
(3)「一方で地上型の移動式発射台、ミサイル潜水艦や巡航ミサイルの移動が通常よりも増えた場合には、長距離核戦力が使用される可能性があると予測できる。「核兵器の指揮統制システムや通信全般における検知可能な活動が増えることからも、何かが起きていることが伺える」とクリステンセンは指摘した。全米科学者連盟によれば、ロシアは世界最大の核兵器保有国で、保有する核弾頭は推定5977個にのぼる。世界で2番目に多いのがアメリカの4428個、その次がフランスの290個だ」
下線部のように、ロシア軍の通信網を傍受しているであろう米軍は、「核異変」が起これば直ぐに察知する体制だ。
(4)「プーチンが核攻撃の警告を発したのは今回が初めてではない。ウクライナへの軍事侵攻を受けて西側諸国が対ロ制裁を発動し、またグローバル企業がロシアから撤退し始めた2月末には、核戦力を含む「核抑止部隊」を、任務遂行のための高度な警戒態勢に移行させると言った。だが当時はプーチンが核攻撃の準備を行っていることを示す動きはみられなかった、とクリステンセンは言う。彼は今回も当局者たちが前回同様にロシアの動きを観察し、脅威がどれだけ差し迫ったものか否かを明らかにすると期待している。またアメリカ側も1000発近い核兵器を数分以内に発射できる態勢にあるため、プーチンが核攻撃を行っても、すぐに反撃できるともいう」
米国は、ロシアの核攻撃の動きを察知すれば、事前に世界へ公表するであろう。同時に、米国も報復する旨を伝えて抑止への動きを強める筈だ。
(5)「米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官は21日、もしもロシアが核兵器を使用すれば「深刻な結果」がもたらされることになると述べたが、現時点ではウクライナでの戦闘がそこまでのレベルにエスカレートすることを示す情報は「一切ない」とも説明した」
現状では、ロシアの核攻撃の気配はゼロという。米国の情報網は、「ファイブアイズ」(米・英・豪・カナダ・ニュージーランド)によって、第二次世界大戦中から高度の機密情報を収集している。情報戦で一歩先を行く米国が、ロシアの「核クライシス」予防に向けてフル回転するはずだ。





