勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

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    ロシア経済は、侵略戦争開始後すでに4年目に入っている。プーチン大統領は、退くに引けない事態に陥った。足下の経済は、すでに限界点を超えている。戦争経済は,歴史的に3年が限度。ロシアはすでに、そのレッドラインへ踏み込んでいる。

     

    25年のGDP成長率は、期を追って減速するという最悪事態へ突入した。1~3月期が1.4%(前年同期比)、4~6月期1.1%(同)、7~9月期0.6%(同)である。この調子では、10~12月期がマイナス成長へ落込むのは確実だ。ちなみに、昨年の10~12月期が4.5%(同)と高かった。最後の「線香花火」というイメージである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月15日付)は、「ロシア戦時経済が減速 7~9月GDP.%増、原油安が打撃」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア連邦統計局が14日発表した2025年7〜9月期の実質GDP(国際総生産、速報値)は前年同期比0.%増だった。46月期の1.%増から鈍化した。継戦能力を左右する戦時経済は原油安が響き、減速が鮮明になっている。

     

    (1)「ウクライナに全面侵略を始めた2022年以降、ロシア経済は軍事支出の拡大を成長のエンジンにしてきた。侵略が4年目に入り経済の過熱感は薄れ、戦時下の人手不足や物価高、投資の停滞といったひずみが浮き彫りになっている。79月期は10四半期連続のプラス成長を維持したものの、マイナス成長だった23年1〜3月期(0.%減)以来の低い成長率だった。ロシア経済発展省によると、79月期は製造業が1.%増だった。前四半期の3.%増から減速が目立った。小売り(2.%)や建設(1.%)といった内需も勢いを欠く」

     

    高金利(現在、16.5%)下で、民需が圧迫されるのは当然である。戦争継続のために、全資源を無益な戦争へつぎ込んでいるのだ。

     

    (2)「インフレを抑えるため、ロシア中央銀行は24年にかけて政策金利を段階的に引き上げ、企業の投資や高額消費が低迷した。中銀は25年6月以降、4会合連続で利下げを決めたが、政策金利は16.%となお高い水準にある。25年通年のロシアの成長率予測について国際通貨基金(IMF)は10月、従来の0.%から0.%に下方修正した。成長率が4%を超えた23、24年を大幅に下回る。26年も1%にとどまり、低成長が続く見通しだ」

     

    まともな事業では、16.5%もの高金利で借入れ不能である。住宅ローンも不可能だ。こうして、内需は窒息状態へ陥っている。IMFは、25年GDP成長率を0.6%と予測。

     

    (3)「経済の停滞に伴い、企業は労働時間の削減に動いている。タス通信によると、自動車最大手アフトワズは9月末に始めた週4日勤務への短縮を12月末まで続ける。チタン大手VSMPOアビスマやセメント最大手なども週4日勤務への一時移行を明らかにした。ロイター通信は鉱業・運輸分野の6社が同様の対応を決めたと10月に伝えた。戦車生産企業が1割の人員削減を計画中との報道もある。企業の未払い賃金総額は9月末時点で1年前の4倍に膨らんだ。実質所得の伸び率も低下し、家計へのしわ寄せは隠せない」

     

    自動車大手は、需要不足で週4日勤務へ短縮した。企業の未払い賃金総額は、9月末時点で1年前の4倍に膨らんだ。

     

    (4)「追い打ちをかけるのが原油安だ。主要産油国の増産などで原油価格は下落基調にある。直近のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は1バレル60ドル前後で推移する。ロシアの石油・天然ガス収入は1〜10月に前年同期比2割減った。米英が10月にロシアの2大石油企業に制裁を科し、同国産の原油価格への下押し圧力はさらに強まった。ロシア紙コメルサントによると、主力油種のウラル原油の北海ブレントに対する割引幅は11月10日までに1バレルあたり19ドルに達した。制裁の発表前は11〜12ドルだった」

     

    原油安も響いている。石油・天然ガス収入は、1〜10月に前年同期比2割も減った。これが、ロシア経済を直撃している。

     

    (5)「侵略の長期化で膨らむ財政赤字もGDP比2.%(25年予算)と米英やフランスを下回る。増税や国債の発行でも財源を捻出しており、戦費がすぐに枯渇する可能性は低い。国外拠点のロシア経済学者らによる独立系シンクタンク「欧州分析戦略センター」は10月発表の報告書で、ロシア経済は今後10年にわたり停滞するが破綻の兆しはないと分析した。制裁下で技術の遅れが進み「経済成長よりも地政学的な対立を優先する」状況が続くと指摘した」

     

    国外拠点の独立系シンクタンク「欧州分析戦略センター」は、ロシア経済が今後10年にわたり停滞するが破綻の兆しはないと分析している。この見通しは正しいか。今後、10年間も戦争を継続すれば、確実に破綻する。プーチン体制は、果たして持ちこたえられるか。すでに、自動車工場は週4日勤務と短縮している。この度合いは,さらに酷くなるに違いない。明らかに「ジリ貧経済」へ突入している。現状は、軍需産業がフル稼働し、辛うじて雇用や生産を支えている状態だ。これは、非生産的な需要であり、長期的な成長にはつながらないのだ。太平洋戦争下で、日本経済が受けた被害を考えれば分る話である。

    テイカカズラ
       

    トランプ米大統領は数カ月にわたり、ロシアに対して新たな制裁を求める声に抵抗してきた。プーチン大統領と取引して戦争を終わらせることができると信じ、数週間以内にブダペストで首脳会談を行う計画まで立てた。だが今週、事態は急展開した。トランプ氏は首脳会談の計画を撤回しただけでなく、2期目に入って初となる対ロシア制裁を発表した。「その時が来た」とトランプ氏は述べた。

     

    『ブルームバーグ』(10月25日付)は、「米国の対ロシア政策転換、背景にルビオ国務長官の判断-関係者」と題する記事を掲載した。

     

    突然の方針転換には、長年の対ロシア強硬派で、かつてプーチン氏を「悪党」と呼んだルビオ国務長官による評価が寄与した。事情に詳しい米国と欧州の当局者によると、ロシアは実質的に姿勢を変えていないとルビオ氏は判断した。

     

    (1)「内部での協議について話しているとして匿名を要請した当局者によると、ルビオ氏はロシアのラブロフ外相との電話会談で、ロシアが停戦協議を引き延ばし、戦争を継続しようというたくらみが明らかになったため、同外相との直接会談を取りやめた。トランプ政権の対ロシア政策の展開は、ルビオ氏が国務長官としてだけではなく暫定的な大統領国家安全保障顧問として、政権中枢でいっそう広範な役割を担っていることを示唆する。同氏の姿勢は、トランプ氏の長年の友人でロシアに対して融和的なアプローチを主張するウィトコフ特使とは対照的だ」

     

    ルビオ氏が、国務長官としてだけではなく暫定的な大統領国家安全保障顧問として、政権中枢でいっそう広範な役割を担っていることを示唆している。トランプ氏が、初めてルビオ氏の意見を容れて対ロシア強硬政策へ踏み切った。

     

    (2)「プーチン氏との1回目の会談が厳しい内容だったにもかかわらず、トランプ氏は先週、長時間にわたった同氏との電話会談の後で、2回目の会談に合意した。米国はイスラエルとハマスの停戦を実現させた外交の勢いを生かしたい考えだった。だが、複数の当局者によると、ロシアは最近、ウクライナとの和平条件の概略を示した計画書を米国に送付してきたが、内容はウクライナにさらなる領土放棄を求めるなど、従来の主張を繰り返すものだった。米外交問題評議会(CFR)のリアナ・フィックス上級研究員は「アラスカでの会談を経て、米国はロシア側に柔軟性が全くないことを悟った。今回は会談前にその現実を理解できた点で、一歩前進だ」と語った」

     

    権威主義国家ロシアにおいて、プーチン氏の名誉を傷付けるようなウクライナ侵略戦争の終結はありえない。ロシアへ相当の打撃を与えない限り、プーチン氏は妥協しないであろう。その対ロ強硬策が今、始まったところである。

     

    (3)「ロシア側でも混乱が生じていた。ロシア大統領府の意向に詳しい関係者によると、先週の米露電話会談後、トランプ氏が、ロシアの小さな領土的譲歩と引き換えに、ウクライナがドンバス地方の残る支配地域を放棄するというロシアの要求を受け入れたと、ロシアの当局者らは確信した。しかしその翌日、トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領との会談後、現在の戦線に沿った停戦を支持するとあらためて表明した。これは、アラスカ会談前にモスクワが拒否していた案で、ロシアのラブロフ外相はルビオ氏との20日の電話会談でこの相違を強調していたと、関係者は明らかにした」

     

    ロシアは、侵略戦争の当事者である。戦線が不利にならない限り、妥協することはないであろう。

     

    (4)「関係者によると、先週のトランプ氏とゼレンスキー氏との会談でも、ウィトコフ氏は再びプーチン氏が要求するドンバス地方の割譲に同意するよう、ゼレンスキー氏に迫った。だが、トランプ政権は22日、ロシア石油大手のロスネフチとルクオイルに制裁を科すと発表した。ルビオ氏は、直接会談を含むロシアとの対話の余地は残している。イスラエルおよびアジア歴訪に出発する前に、ワシントン郊外のアンドルーズ統合基地でルビオ氏は22日夜、記者団に対し、「平和を実現する機会があるのなら、われわれは常に対話に関心を持つ」と述べた」

     

    ロシアは、ウクライナ領土の獲得意欲が極めて強い。この結果、国民に向けた説明がつかない妥協は、絶対に拒むであろう。ロシアが、経済的・軍事的に追詰められない限り妥協しないことは確実だ。

    あじさいのたまご
       

    ウクライナ戦争の終結は、これからが難問である。トランプ氏とプーチン氏が行なったアラスカでの首脳会談。18日にホワイトハウスで開かれたトランプ氏やゼレンスキー氏、欧州首脳らとの協議は、プーチン氏がゼレンスキー氏と首脳会談に応じる意思があるかどうか、大きな関心が集まっている。ロシア政府当局者らは19日、会談の実現に向けた動きをほとんど示唆せず、ラブロフ外相は、当局者間の接触に関する計画は「細心の注意を払って」進められるべきだと発言。他のロシア政府高官らは、ゼレンスキー氏がまともな政治家ではないとやゆした。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月20日付)は、「ロシア・ウクライナ首脳会談は期待薄か、現状維持続く可能性」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ロシアのプーチン大統領は、3年半にわたってウクライナのゼレンスキー大統領が正統性のない指導者で、操り人形だと批判してきた。米国トランプ大統領の要請に応じるかに注目が集まっている。プーチン氏は、2022年のウクライナ侵攻を正当化するため、国民に対し、この戦争は欧米との広範な対立の一部であり、ゼレンスキー氏とウクライナは単なる駒にすぎないと主張してきた。だが、ゼレンスキー氏と直接会談することになれば、慎重に築き上げてきたその構図と大きく矛盾する」

     

    プーチン氏は、ジレンマに立たされている。これまで、ゼレンスキー氏を操り人形と批判してきたからだ。そのゼレンスキー氏に会えば、プーチン氏はこれまでの発言に傷がつくという理屈だ。無辜の市民が傷つき倒れるよりも、自己保身が先である。

     

    (2)「トランプ氏からの要請は、プーチン氏を窮地に追い込むものだ。要請を拒否すれば、すでに追加制裁をちらつかせているトランプ氏の怒りを買うリスクがある。一方でゼレンスキー氏との会談に応じれば、ロシアのエリート層や国民との関係で政治的な打撃を受けることも考えられる。プーチン氏が速やかに、あるいは容易にゼレンスキー氏との会談に同意するとはみられていない」

     

    トランプ氏という強圧権力者が、プーチン氏を苦しめている。要請に答えなければ、経済制裁が強化される。時間を引き延ばしつつ、最大の利益を得る。こういうプーチン式交渉術は成功するか。

     

    (3)「プーチン氏は、ゼレンスキー氏を欧米の手先だとして繰り返し非難し、両首脳が会談する前には多くの複雑な問題を解決する必要があると主張してきた。またゼレンスキー氏が戦争中の選挙実施に関する問題を理由に通常の5年の任期を超えて大統領職を務めている点に触れ、ゼレンスキー氏の正統性に疑問を投げかけている。さらに、同氏が和平合意に署名する権限にも疑問を呈している」

     

    ロシア経済が現在、急減速に見舞われている。ここへ、制裁が強化されればプーチン氏のメンツは吹飛ぶ。時間の問題であろう。

     

    (4)「プーチン氏はこれまでに、両首脳の会談は和平プロセスの最終段階で行われるべきで、必要な文書に署名する形式的なものにすぎないと発言。6月には「会談する用意はある。ただし延々と物事を分け合うのではなく、最終段階としてこれを終わらせるためであればだ」と述べた。また「正統な当局者の署名が必要になるだろう」と語った」

     

    「正統な当局者の署名が必要」というプーチン発言は、ゼレンスキー氏が侵略戦争で大統領選が行えないという「弱点」を指している。引き延しの口実だ。

     

    (5)「アナリストらはプーチン氏がこの戦争に関し、冷戦終結以来ロシアが抱いてきた不満を再検討する広範な取り組みの一つだと説明。問題は、ゼレンスキー氏にとどまるものではないとした。ロシアがトランプ政権と関与していることは、ウクライナでの領土譲歩をはるかに超え、欧州全体の安全保障体制の構造に関わる合意を確保する取り組みの一部となっている。

     

    プーチン氏は、NATO体制に疑念を持っている。これが、ウクライナを唆しているという理由だ。自らの侵略意図を隠すためであろう。

     

    (6)「カーネギー財団ロシア・ユーラシアセンターの上級研究員、タチアナ・スタノバヤ氏は、「プーチン氏にとって、これは欧米側とのより広範な対立であり、ウクライナはロシアと欧米の戦場になっている」と説明。「プーチン氏からすれば、その中でゼレンスキー氏はプレーヤーではない」とし、「ウクライナが戦い続けているのは、欧米の支援があるからだ」と付け加えた」

     

    プーチン氏は、ウクライナ戦争がロシアと欧米の戦争という位置づけである。となれば、米国は、前面に出てプーチン氏へ圧力をかけなければならない。プーチン氏は、「後講釈」で、侵略戦争を美化しているのだ。

     

    (7)「プーチン氏は、和平に向けたトランプ氏の努力に対し、これまでに微妙な駆け引きを続けてきた。だがゼレンスキー氏との会談に応じれば、これが終わる可能性があるのは最も重要なポイントでもある。プーチン氏は、米政府による追加制裁を避けるために和平への意欲を表明する一方で、ロシア軍は攻勢を強めてウクライナ東部で重要な進展を勝ち取っている。その中でゼレンスキー氏との首脳会談に応じれば、プーチン氏は望まない正念場を迎える可能性もある」

     

    プーチン氏の狙いは、米国の経済制裁を避けるために和平のポーズを取るが、すぐに休戦する気持ちはない。引き延ばして、ウクライナの占領地を増やす魂胆である。ゼレンスキー氏との首脳会談に応じれば、プーチン氏は望まない正念場を迎える可能性がある。

     

     

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    中国とヨーロッパを結ぶ国際貨物列車「中欧班列」は、今年に入って不振が続いている。ロシア経済が停滞しているからだ。ロシアのウクライナ侵攻が始まって、今年2月で満3年を経た。戦争経済は3年が限界とされるので、ロシア経済に息切れが出て当然である。

     

    『東洋経済オンライン』(8月4日付)は、「中国発国際貨物列車、不振が示すロシア景気悪化」と題する記事を掲載した。これは、中国『財新』の転載記事である。

     

    中国とヨーロッパを結ぶ国際貨物列車「中欧班列」の不振が続いている。

     

    (1)「中国の国有鉄道である中国国家鉄路集団(国家鉄路)が7月16日に公表したデータによれば、中欧班列の2025年上半期(1~6月)の運行本数は前年同期比3.3%減少。貨物輸送量は同7.4%減少した。進行方向別では(中国製品の輸出を担う)往路の不振が目立つ。上半期の往路の運行本数は前年同期比16.6%減、貨物輸送量は20.3%減にとどまった」

     

    中国からロシア行き鉄道貨物輸送量が上期で、2割の減少になっている。中欧班列の運賃は、船便の2~3倍高いとされるので、貨物運賃コスト高が問題になれば減少するのは当然だ。ロシア経済は、戦争経済下で大きな痛手を受けているので、その影響が出たもの。

     

    (2)「中欧班列の運行本数と貨物輸送量は、2025年初めから6ヶ月連続で前年同月を下回り続けている。その裏には、中欧班列の貨物輸送量の約9割を占めるロシア向けが大きく落ち込んでいることがある。「上半期の不振は、ロシア政府が中国製自動車の輸入を実質的に制限する措置をとったことに加えて、ロシアの景気後退で購買力が低下している影響が大きい」。中国のあるフォワーダー(貨物運送代理業者)の経営者は、財新記者の取材に対してそう述べた」

     

    ロシアの実質GDPは、今年1~3月期に1.4%に低下した。昨年10~12月期の4.5%から急減速である。これでは、中欧班列の運行本数や貨物輸送量が減少して当然である。

     

    (3)「2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ロシアは中国製品の輸入を急拡大し、それが中欧班列の貨物輸送量拡大を支えていた。ところが2025年に入ると、“ロシア特需”の息切れがはっきりしてきた」

     

    米国が、ロシアへ8月8日を期限に停戦を要求している。これに対して、ロシアがどう対応するかは不明である。停戦に応じなければ、ロシア産原油輸入国へ「二次制裁」として100%関税を掛けるとしている。ロシアは、ますます苦境に立たされる。

     

    (4)「ロシア企業は今、政府財政の逼迫、資金調達の困難、消費者の購買力低下、過剰在庫など多数の問題に直面している」。前出のフォワーダーの経営者はそう指摘する。さらに、6月から8月にかけてはもともとロシアの休暇シーズンだ。ロシア企業で多数の従業員が長期休暇を取り、生産活動や物資調達が停滞していることも、中欧班列の不振に拍車をかけているという」

     

    ロシアは、長い夏休みの習慣がある。その影響は、ハッキリと出るだのろう。

     

    (5)「国家鉄路が、ヨーロッパ行き国際貨物列車のブランドを「中欧班列」に統一したのは2016年のことだ。それ以来、中欧班列の貨物輸送量は2024年まで右肩上がりで伸び続けていた。なかでもロシア特需がピークに達した2024年は、年間の運行本数が1万9392本と前年比10.7%増の2桁成長を記録した。だが、ロシア向け貨物輸送が大幅な減少に転じた今、その穴を埋められる需要は見当たらない。前出のフォワーダーの経営者は、今後について次のような見方を示した。「中欧班列の低迷は、ロシアとウクライナの戦争が終わるまで打開できないだろう」と指摘」

     

    中欧班列の貨物輸送量は、2024年まで増え続けた。25年に入ってからは一転して減少である。ロシアGDPの動きと軌を一にしている。興味深い動きだ。

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    トランプ米大統領は13日、ロシアのプーチン大統領と合意したウクライナ侵略の停戦交渉にウクライナも参加すると表明した。「ウクライナ、ロシア、他の人も関与することになるだろう。多くの人たちだ」と述べた。トランプ氏が、このように発言した裏には、次のような事情があった。

    ゼレンスキー氏は13日、「ウクライナ抜きのいかなる合意も受け入れられない」と自国を交えない頭越しの交渉に難色を示した。トランプ氏が12日にゼレンスキー氏に先立ってプーチン氏と電話したことにも「ロシアが優先というわけではないと思うが、実際のところ不快だ」と語った。トランプ氏は13日、米ホワイトハウスで記者団に「『最初にゼレンスキー氏に電話すべきだった』という人がいるがそう思わない。ロシアが取引を望んでいるか見極めなければならない」と釈明した。「ゼレンスキー氏が取引を望んでいるのは知っている。彼が私にそう言った」と唱えた。以上、『日本経済新聞 電子版』(2月14日付)が報じた。


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月14日付)は、「米副大統領、ウクライナ和平巡りプーチン氏に制裁・軍事行動を示唆」と題する記事を掲載した。

    JD・バンス米副大統領は13日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナの長期的な独立を含む和平合意に同意しなければ、米政府として制裁だけでなく、場合によっては軍事行動を取る可能性もあると述べた。

    (1)「バンス氏は、ロシア政府が誠実に交渉に応じない場合、米軍をウクライナに派遣する可能性について、選択肢として「残されている」と発言。前日に米軍派遣に否定的な考えを示したピート・ヘグセス国防長官よりも、はるかに強硬な姿勢を取った。また「プーチン氏に対して米国が使える経済的な圧力手段もあれば、もちろん軍事的な圧力手段もある」ともバンス氏は述べた。ドナルド・トランプ大統領は、ウクライナでの戦争を終わらせるため、プーチン氏と交渉を始めると発言」

    米国は、ロシアが誠実に和平交渉に応じなければ、米軍をウクライナ派遣すると強硬姿勢である。


    (2)「バンス氏はその数時間後にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューに応じ、「多くの人々を驚かせるような合意が出てくると思う」と語った。またバンス氏は14日には、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談する予定にもなっている。ロシアは、ウクライナの武装解除と現政権の交代を求めているが、今回の発言はこれに対し、トランプ政権として最も強くウクライナを支持する内容となった。ゼレンスキー氏は、ロシアとの交渉にウクライナが参加することを強く求めていたが、トランプ氏は13日にはこれを認めると発言。一方でロシアを先進7カ国(G7)に復帰させるべきだとしたほか、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟はロシアが容認できないものだとも言及していた」

    米国は、ロシアによるウクライナの武装解除と現政権の交代を求めているが、これを明確に拒否している。この一方で、ロシアをG7へ復帰させることを提案している。ロシアの「疑心暗鬼」を解く狙いだ。これは、米国のロシア取り込み策で、中国との間に「溝」を作らせようという戦術だ。

    (3)「バンス氏は14日、世界の指導者らが共通の脅威について議論するミュンヘン安全保障会議で演説する予定となっている。同氏との2国間会談の確保に奔走する欧州当局者らは、トランプ政権高官の初の訪問が米国との新たな協力関係の契機となるほか、ウクライナでの戦争終結に向けた計画の詳細が示されることに期待を寄せていた。だがバンス氏は、欧州各国は反体制政治の台頭を受け入れて大規模な移民を阻止し、進歩的な政策を抑制する必要があると指導者らに伝えると述べた。また伝統的価値観への回帰と移民犯罪の終息も呼びかけるという。さらにドイツの政治家らに対しては、反移民を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を含むすべての政党と協力するよう促す考えも明らかにしている」

    バンス氏は、欧州各国が反体制政治の台頭を受け入れて、大規模な移民阻止で一致した行動に出るように求めている。


    (4)「バンス氏はウクライナについて、ロシアの支配下に残る領土の規模や、米国と他の同盟国がウクライナに提供できる安全保障面の保証について、詳細は和平交渉で詰める必要があるとし、現時点では言及できないと述べた。そのうえで「さまざまな形式や構成が考えられるが、ウクライナの主権的独立は重要だ」とした。同氏はまた、ウクライナを巡る合意に達した後、ロシアとは関係をリセットする用意があるとも発言。欧米市場からの現在の孤立により、ロシアは中国の下位パートナーとなっていると指摘し、「中国との連合で弟分の立場に甘んじることはプーチン氏の利益にならない」と述べた」

    ウクライナ問題が解決したならば、ロシアへの経済制裁を解除すべきとしている。現状のロシアは、中国の下位パートナーで従属した関係である。これが、プーチン氏の利益にならならないとしている。米国のロシア懐柔策である。米ロが、中国へ対抗する構図を狙っている。

    (5)「12日にブリュッセルで開かれたNATOの会合でヘグセス氏は、ウクライナの国境はロシアが最初に侵攻した2014年以前の状態には戻らない可能性が高いと指摘。また、交渉の結果、ウクライナがNATO加盟国になることはないだろうとし、米国以外の国が(ウクライナの)安全を保障する必要があると述べた」

    米国は、ウクライナのNATO加盟に反対だ。この問題が、ウクライナ戦争を引き起した原因であるからだ。ロシアの疑心暗鬼を解くために、米国はこういう譲歩案を出している。英仏が、ウクライナへ駐留部隊5万人程度の派遣を検討している。




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