ロシア経済は、侵略戦争開始後すでに4年目に入っている。プーチン大統領は、退くに引けない事態に陥った。足下の経済は、すでに限界点を超えている。戦争経済は,歴史的に3年が限度。ロシアはすでに、そのレッドラインへ踏み込んでいる。
25年のGDP成長率は、期を追って減速するという最悪事態へ突入した。1~3月期が1.4%(前年同期比)、4~6月期1.1%(同)、7~9月期0.6%(同)である。この調子では、10~12月期がマイナス成長へ落込むのは確実だ。ちなみに、昨年の10~12月期が4.5%(同)と高かった。最後の「線香花火」というイメージである。
『日本経済新聞 電子版』(11月15日付)は、「ロシア戦時経済が減速 7~9月GDP0.6%増、原油安が打撃」と題する記事を掲載した。
ロシア連邦統計局が14日発表した2025年7〜9月期の実質GDP(国際総生産、速報値)は前年同期比0.6%増だった。4〜6月期の1.1%増から鈍化した。継戦能力を左右する戦時経済は原油安が響き、減速が鮮明になっている。
(1)「ウクライナに全面侵略を始めた2022年以降、ロシア経済は軍事支出の拡大を成長のエンジンにしてきた。侵略が4年目に入り経済の過熱感は薄れ、戦時下の人手不足や物価高、投資の停滞といったひずみが浮き彫りになっている。7〜9月期は10四半期連続のプラス成長を維持したものの、マイナス成長だった23年1〜3月期(0.9%減)以来の低い成長率だった。ロシア経済発展省によると、7〜9月期は製造業が1.4%増だった。前四半期の3.6%増から減速が目立った。小売り(2.1%)や建設(1.2%)といった内需も勢いを欠く」
高金利(現在、16.5%)下で、民需が圧迫されるのは当然である。戦争継続のために、全資源を無益な戦争へつぎ込んでいるのだ。
(2)「インフレを抑えるため、ロシア中央銀行は24年にかけて政策金利を段階的に引き上げ、企業の投資や高額消費が低迷した。中銀は25年6月以降、4会合連続で利下げを決めたが、政策金利は16.5%となお高い水準にある。25年通年のロシアの成長率予測について国際通貨基金(IMF)は10月、従来の0.9%から0.6%に下方修正した。成長率が4%を超えた23、24年を大幅に下回る。26年も1%にとどまり、低成長が続く見通しだ」
まともな事業では、16.5%もの高金利で借入れ不能である。住宅ローンも不可能だ。こうして、内需は窒息状態へ陥っている。IMFは、25年GDP成長率を0.6%と予測。
(3)「経済の停滞に伴い、企業は労働時間の削減に動いている。タス通信によると、自動車最大手アフトワズは9月末に始めた週4日勤務への短縮を12月末まで続ける。チタン大手VSMPOアビスマやセメント最大手なども週4日勤務への一時移行を明らかにした。ロイター通信は鉱業・運輸分野の6社が同様の対応を決めたと10月に伝えた。戦車生産企業が1割の人員削減を計画中との報道もある。企業の未払い賃金総額は9月末時点で1年前の4倍に膨らんだ。実質所得の伸び率も低下し、家計へのしわ寄せは隠せない」
自動車大手は、需要不足で週4日勤務へ短縮した。企業の未払い賃金総額は、9月末時点で1年前の4倍に膨らんだ。
(4)「追い打ちをかけるのが原油安だ。主要産油国の増産などで原油価格は下落基調にある。直近のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は1バレル60ドル前後で推移する。ロシアの石油・天然ガス収入は1〜10月に前年同期比2割減った。米英が10月にロシアの2大石油企業に制裁を科し、同国産の原油価格への下押し圧力はさらに強まった。ロシア紙コメルサントによると、主力油種のウラル原油の北海ブレントに対する割引幅は11月10日までに1バレルあたり19ドルに達した。制裁の発表前は11〜12ドルだった」
原油安も響いている。石油・天然ガス収入は、1〜10月に前年同期比2割も減った。これが、ロシア経済を直撃している。
(5)「侵略の長期化で膨らむ財政赤字もGDP比2.6%(25年予算)と米英やフランスを下回る。増税や国債の発行でも財源を捻出しており、戦費がすぐに枯渇する可能性は低い。国外拠点のロシア経済学者らによる独立系シンクタンク「欧州分析戦略センター」は10月発表の報告書で、ロシア経済は今後10年にわたり停滞するが破綻の兆しはないと分析した。制裁下で技術の遅れが進み「経済成長よりも地政学的な対立を優先する」状況が続くと指摘した」
国外拠点の独立系シンクタンク「欧州分析戦略センター」は、ロシア経済が今後10年にわたり停滞するが破綻の兆しはないと分析している。この見通しは正しいか。今後、10年間も戦争を継続すれば、確実に破綻する。プーチン体制は、果たして持ちこたえられるか。すでに、自動車工場は週4日勤務と短縮している。この度合いは,さらに酷くなるに違いない。明らかに「ジリ貧経済」へ突入している。現状は、軍需産業がフル稼働し、辛うじて雇用や生産を支えている状態だ。これは、非生産的な需要であり、長期的な成長にはつながらないのだ。太平洋戦争下で、日本経済が受けた被害を考えれば分る話である。





