勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

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    ロシア政府は、2月4日のウクライナ侵攻後に占領したウクライナで、若者を出国禁止にして動員令をかけていることが分った。ウクライナ人同士で、戦わせようという残酷な方法を採用するようだ。モラルの一片もない非道な話である。占領地での徴兵は、国際法違反である。

     

    『中央日報』(9月26日付)は、「『ロシア、ウクライナの占領地に動員令』 少数民族の動員多く不満高まる」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアが占領したウクライナ南部ヘルソンなどで、」ウクライナ人男性をロシア軍に動員しようとする状況が捉えられたと『ニューヨーク・タイムズ』が25日に報道した。ヘルソンはロシアのウクライナ侵攻から1カ月後の3月に占領された。

     


    (1)「同紙は、ヘルソン州とザポリージャ州に住む18~35歳のウクライナ人男性の出国を禁止し、軍服務の可否を確認する作業を進めているとウクライナ政府関係者と現地住民の話として報道した。また、ロシアが2014年に併合したクリミア半島でも動員作業が行われている。現地住民らは地域の男性らがロシア軍の徴兵を逃れて地下に隠れ、一部は脱出を試みていると伝えた。ヘルソン州のある住民は同紙に「みんなが恐怖に震えている。ロシア軍は最初に家を捜索し、いまは男性たちを軍隊に引っ張っていこうとする。これはすべて違法だが私たちには現実」と話した」

     

    ロシアは、ウクライナで占領した地域に住む若者を動員する方針を示している。ウクライナ人同士を戦わせようという狙いだ。それだけ、動員が難しくなっていることを示す例だ。徴兵が行き詰まっているのであろう。占領地での住民の徴兵は、国際条約に違反しており、ロシアの強引な兵員補充である。

     


    (2)「ヘルソンなどの占領地でウクライナ人を戦線に送ろうとする作業は、ロシアのプーチン大統領が21日に部分動員令を出してから数十万人の補充兵を募集するための広範囲な計画の一環とみられる。また、ウクライナ人に対する動員の動きはロシアが占領したヘルソン、ザポリージャ、ドネツク、ルハンシクの4州で進行中である併合住民投票と同時に行われている。27日に投票が終わり早ければ30日にもロシアへの併合が宣言されれば動員活動はさらに活発になるものとみられる。住民投票結果は27日に発表される予定だ」

     

    ウクライナ人の動員が、強制的な併合住民投票と同時に行われている。住民投票に賛成したのだから軍務に就けと圧力を掛けるのであろう。こういうロシア政府のやり方は、ロシアの野望をウクライナ人の命で遂行しようというもの。酷いとしか言いようがない。

     


    (3)「ロシア国内で、動員反対世論はますます強まっている。特にカスピ海沿岸にあるダゲスタン共和国などロシア連邦内の共和国で大きく反発している。住民8400人のうち100人の男性に招集通知が送られたのに怒ったダゲスタン共和国エンディレイ村の住民たちはこの日道路をふさぎ警察と対峙したとこの日ロイター通信が報道した。この渦中で警察が空中に空砲弾を撃ったりもした。BBCの集計によるとウクライナ戦争で死亡したダゲスタン出身の軍人は301人で、モスクワ出身者より10倍多い」

     

    ロシア国内でも動員反対の動きが活発になっている。モスクワの南東185キロに位置するリャザン市のバス停では、ウクライナで戦いたくないと叫んだ男性が焼身自殺を図り、救急車で運ばれた。南部のダゲスタン共和国の首都マハチカラでは25日、部分動員令に抗議する人々と警察が衝突し、少なくとも100人が拘束された。『ロイター』(9月26日付)が伝えた。

     


    (4)「クリミア半島内イスラム少数民族タタール人も、「動員が不均衡に行われている」と不満を表出した。ガーディアンはウクライナ人権団体クリミアSOSを引用して「クリミア半島の人口の13%を占めるタタール人のうち90%が動員通知書を受け取ったと推定される」と伝えた。これに対してウクライナのポドリャク大統領顧問は、ツイッターに「本当の民族虐殺であり国全体に対する巨大な悲劇。ロシアが占領地の市民に戦争を強要する行動は服従しない市民をなくそうとする試みにすぎない」と書き込んだ」

     

    ロシアの占領したクリミア半島では、人口の13%を占めるタタール人のうち90%が動員通知書を受け取ったとされる。タタール人撲滅を意図した行為だ。次々に明るみに出されるロシア政府の暴虐行為は、厳しく批判されなければならない。

     

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    ロシア軍は、ウクライナ北東部戦線で遁走した結果、重要な兵器を遺棄した。その中でも、機密扱いの電子戦装備について複数を喪失した。ロシア軍には、重大な損失を招く事態だ。今後の武器輸出に障害になりそうだという。

     

    それらは今、西側諸国の手に渡っている。回収されたロシア軍の装備には、敵の電子防衛を妨害できる戦闘機向けのポッドや最先端の電子戦システムを装備した車両などが含まれているという。ウクライナや西側の軍事エレクトロニクス専門家が、それらを解体し分析すれば、ロシア軍の攻撃を回避するよう自分たちの装備を設計できる。「虎の巻」を戦場に棄てて逃げるほど、ロシア軍の規律は乱れているようだ。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月17日付)は、「ロシア軍の失地回復に高い壁、軍事産業にも打撃」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナの反撃でこれまで占領した地域の一部から撤退を余儀なくされたロシア軍は目下、守りを固め、態勢の立て直しを急いでいる。だが、これは理想的な状況ですら難しく、失地回復を目指すロシア軍の取り組みは難航しているようだ。

     

    (1)「ロシア国内ではウラジーミル・プーチン大統領や政権関係者への批判は目立たないものの、確実に大きくなっている。戦争の行方への不安が広がれば、兵力の限定的な動員や徴兵など、プーチン氏の選択肢が狭まる恐れがある。兵力の総動員や徴集に踏み切るには、ロシアの法律では正式に「戦争」だと宣言しなければならない可能性が高い。とはいえ、ロシア軍は依然かなりの兵力をウクライナ全土に配備しており、兵器や弾薬の在庫も豊富だ。反転攻勢に転じる可能性は十分にある。ウクライナはロシアの前線部隊の一部を撃退するなどして主導権を握ったが、制圧された地域のロシア兵をすべて排除するには程遠い」

     

    ロシア軍のウクライナ戦線での戦いは、明らかに劣勢になっている。ただ、まだロシア国内には、兵器や弾薬の在庫が豊富である。ウクライナ軍や西側諸国は、油断しているとしっぺ返しを受けよう。

     


    (2)「ロシア軍の足かせとなっているのは士気の低さと、硬直的な軍の指令構造、保守作業のずさんさが露呈した軍装備品だ。対照的に、戦場で機敏な動きをみせているウクライナ軍の士気は上がっており、手入れの行き届いた新型兵器を手にしている。ロシアはウクライナへの侵攻開始以降、戦場における機密情報や新たな動向への反応が鈍いと、ウクライナや西側の専門家は指摘している。最近でも、ウクライナがハリコフ州近辺で反撃に出る準備をしているとの情報を得ていながら、それに対応できなかったという。こうした硬直性は、ロシア軍が突然見舞われた想定外の失敗に対処する能力が限られることを示唆していると言えそうだ

     

    ロシア軍では、前線の兵士に戦い方を決める権限を与えていない。すべて、将官の権限とされるので、下線部のような事態がおこる。ロシア軍が、ハリコフ州近辺で遁走した背景には、こういう指揮命令系統の硬直性が災いしている。ウクライナ軍は、NATO軍の教育訓練によって、兵士一人一人の判断を重視するシステムに切り変えている。

     


    (3)「国際戦略研究所(IISS)の軍事専門家、ジェームズ・ハケット氏は「ロシア軍にとっては、戦いながら新たな状況に適応することは難しいだろう」と話す。2014年にウクライナのドンバス地方でロシアの非正規軍を率いた元情報当局者、イゴール・ガーキン氏はテレグラムのチャンネルで、ウクライナ軍が成功しているのは、軍事戦略においてロシア指導部の指揮がまずいためだと断じている。その上で、ロシア軍が2月以降の戦いぶりを続ければ、「最終的にはわれわれはこの戦争で惨敗を喫するだろう」と述べている」

     

    下線部は、ロシア軍の硬直性を指摘している。「戦いながら新たな状況に適応することは難しい」のは、前線の兵士に考える訓練をしていない結果だ。ロシア軍の戦い方では、惨敗もありうるというのが元ロシア軍情報当局者の見立てである。

     

    (4)「ロシアは部隊の立て直しに向けて、囚人らの徴集も含め、兵力の増強を急いでいる。だが、戦場で戦力になるまでにはかなりの訓練を必要とするほか、訓練を実施する人手も必要だ。何より、ロシア軍は階級を問わず兵士が不足している。十分な兵力が補充できなれば、ロシアはさらなるウクライナの攻撃を撃退できるだけの戦力を確保できないかもしれない。前出のハケット氏は「ウクライナが一層のプレッシャーをかけ続けるほど、ロシア軍は厳しい立場に追い込まれるだろう」と述べる」

     

    ウクライナ軍が、前線で圧力を加えるほど、ロシア軍は劣勢に立たされるという。

     

    (5)「ロシア軍にとっては、先端技術を失うことも中長期的に大きな痛手となるだろう。ウクライナ軍が投稿した画像によると、回収されたロシア軍の装備には、敵の電子防衛を妨害できる戦闘機向けのポッドや最先端の電子戦システムを装備した車両などが含まれている。ウクライナや西側の軍事エレクトロニクス専門家がそれらを解体し、分析すれば、ロシア軍の攻撃を回避するよう自分たちの装備を設計できる。ハケット氏は、「これは西側の国防機密機関にとってはまたとない掘り出し物だ」と述べる。西側諸国の制裁により、ロシアは先端電子機器を入手できない状況にあるため、失った軍装備の更新や補充は難しいとみられる。また、ロシアの先端防衛システムが西側に流出しているとのうわさが広がれば、武器輸出も落ち込み、ロシアの軍事産業はさらに衰退しかねないと指摘されている」

     

    ロシア軍にとって、電子先端武器は虎の子である。それを、遺棄して遁走するとは、軍の規律自体が弛緩している証拠である。「西側の国防機密機関にはまたとない掘り出し物」とされる。ロシアは半導体輸入が禁止されている。今後、電子先端武器を生産することすら難しくなっているなかで、とんだ失態を演じた。

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    ロシアのウクライナ侵攻が始まって、8月24日で半年が過ぎた。プーチン・ロシア大統領は、東欧諸国でロシアの歴史的な影響力を復活させ、冷戦後の歴史を塗り替えようとする試みが失敗したのだ。また、欧州諸国はほぼ「反プーチン」で結束した。北大西洋条約機構(NATO)は息を吹き返し、スウェーデンとフィンランドが新たに加盟する。プーチン氏にとってほぼすべてが裏目に出る展開である。

     

    だが、ウクライナで戦闘は続く。ロシア軍の劣勢が明らかになった。ウクライナ東部は失速状態。南部は、弱点を補強中である。ウクライナ軍は、首都キーウを死守した際の戦略を踏襲する戦略だ。具体的には、ゲリラ戦術などを駆使し、前線から離れた後方の補給ラインを狙い、ロシア軍の戦闘能力を弱め、撤退を迫る作戦である。持久戦の様相を呈している。

     


    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月25日付)は、「ウクライナ侵攻から半年、ロシアの苦戦鮮明に」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがウクライナに侵攻してから半年が経過した。軍事、経済の両面で戦況は緩やかながらも、ウクライナと後ろ盾である西側諸国に優位に傾く兆しが強まっている。だが、死と破壊の連鎖が終わる兆候はなお見えない。ウクライナはロシアの圧倒的な軍事力を前になお厳しい戦いを余儀なくされているが、西側からさらに武器が到着するのに伴い、ロシアの補給ラインや基地を確実に攻撃できるようになってきた。

     

    (1)「米国防研究組織CNAのロシア研究プログラム責任者、マイケル・コフマン氏は「ロシア軍は勢いの大半を失っており、ウクライナによる南部での反撃に備えて部隊の多くを再配置している」と指摘する。「戦況の膠着が自然な成り行きだとは思わない」と話すコフマン氏。「冬が訪れる前に、少なくもあと一回は新たな展開が訪れる」。その取り組みがどんな結果をもたらすのかは見通せないが、紛争の行方は、ウクライナが何を実現できるかにかかっていると言えそうだ」

     

    戦線は、膠着状態になっている。この状態を動かすのは、ウクライナ軍がどのような戦い方をするかにかかっているという。戦闘の主導権は、ウクライナ軍が握った形である。

     


    (2)「2月24日の侵攻開始以降、ロシア、ウクライナ双方で数万人の兵士が死傷したとみられている。ロシアは兵士や軍装備の補充でウクライナよりも苦戦しており、外国の雇い兵や代理勢力、旧型戦車を投入せざるを得ない状況に追い込まれている。さらに、ロシア経済は西側諸国よりも深刻なリセッション(景気後退)に直面している。それでも、戦争がいつまで続くのかという問いと同様に、その結末も読みにくい。ロシアは依然、はるかに多くの重火器を保有している。平地での進軍が困難なため、ウクライナが領土を奪還することも難しくなる。西側諸国がロシアと直接戦火を交える事態を招きかねないほどの支援を行わない限り、ウクライナが軍事的に勝利を収めることはできない――。西側の政策担当者の間では、こうした懐疑的な見方が依然として根強い」

     

    劣勢になっている形のロシア軍は、依然として多くの重火器を保有している。平野部での戦闘だけに、ウクライナ軍がロシア軍を大きく押し返すには力不足である。こういう見方が、西側専門家に多いという。

     




    (3)「夏が終わりに近づく中、ウクライナ軍はロシアの前線から遠く離れた後方拠点にも攻撃を加えることができるようになってきた。ウクライナ東部ドンバス地方における、ロシアの攻撃は失速しつつある。またロシアは、ウクライナ南部のぜい弱な拠点を補強するため、兵士の配置転換を余儀なくされている。それでも、ロシアから領土の大部分を奪還することは、ウクライナ軍にとって今も至難の業だ。ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問はインタビューで、南部での反撃について、正面から猛攻撃を仕掛けることはしないと述べた。むしろ、首都キーウを死守した際の戦略を踏襲するという。具体的には、ゲリラ戦術などを駆使して前線から離れた後方の補給ラインを狙い、ロシア軍の戦闘能力を弱め、撤退を迫る作戦だ」

     

    ウクライナ軍は、南部での反撃について猛攻撃を仕掛けるのでなく、首都キーウを防衛したようにゲリラ戦術などを駆使して、ロシア軍の兵站線を遮断し戦闘部隊の撤退へ追込むという。

     


    (4)「ポドリャク氏は、「ロシア軍は弾薬、燃料、前線に近い現場司令部を必要としている。われわれが燃料や弾薬を破壊し、司令部がなくなることで混乱が生じる。そのため、すでに士気低下が広がっている。そこに攻撃を仕掛け、切り込むのだ」と説明する。「キーウ防衛で機能した。今回の反撃でもうまく行くだろう」ポドリャク氏はその上で、ロシアの電子戦防御を突き破るため、追加のハイマースと攻撃ドローンが必要だと訴えた」

     

    ウクライナ軍は、NATOから柔軟な戦い方を習得している。これは、ロシア軍にはない戦術である。重火器で「ドカン」「ドカン」と攻撃する第二次世界大戦型のロシア軍を打倒するには、ゲリラ戦が有効という判断である。

     




    (5)「現在の戦闘局面において、ロシア、ウクライナのいずれも相手に対して大きく優位に立ってはいないものの、ウクライナが前線から遠く離れたロシア軍のインフラに攻め入っていることは、いかに主導権がシフトしたかを如実に物語っている。米国防当局者はこう現状を分析している。ある米国防総省の高官は19日、ロシア軍がドンバス地方での戦いで優勢に立っていた2カ月前と比べて、戦争が異なる局面に入ったとの認識を示した。「ロシア軍が戦場で全く前進していないと言える状況だ」という」

     

    下線部のように、ウクライナ軍が前線から遠く離れたロシア軍の兵站を攻撃できることは、戦線の主導権がウクライナへ移っていることを示している。ロシア敗北の第一歩が始まっている。

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    ロシアのウクライナ侵攻は、大きな岐路を迎えている。ロシアが、2014年に編入したウクライナ南部クリミア半島のサキ軍用飛行場で9日に大爆発が起こった。これにより、ロシア黒海艦隊の海軍航空戦闘機は、半数以上が使用不能になったと、西側当局者が19日に述べた。当局者によると、黒海艦隊はもはや「沿岸防衛艦隊」以上の機能を果たせず、南部オデーサ(オデッサ)への陸海空軍共同の攻撃が難航しているという。さらに、全体的に戦争は「作戦停止に近い状態」とした。『ロイター』(8月20日付)が報じた。

     

    人工衛星写真によれば、ロシア軍はクリミア半島のサキ軍用飛行場大爆発に伴い12日、クリミア半島を離脱する大量の車列が確認されている。さらなる被害を避けてロシア本土へ脱出する様子が認められるのだ。英国『BBC』(8月20日付)が報じた。

     

    英国『BBC』(8月20日付)は、「ウクライナ軍がクリミア半島で反撃、ロシアに『心理的』影響ー西側当局者」と題する記事を掲載した。

     

    強力な艦隊として長い歴史を持つ黒海艦隊だが、2月のウクライナへの侵攻開始以来、相次ぐ屈辱のため、防戦態勢を余儀なくされていると、西側の当局者は話す。ウクライナ軍は4月、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」を沈没させた。乗員510人のミサイル巡洋艦は、侵攻において海側からの攻撃を担っていたが、その沈没は象徴的にも軍事的にも大きな打撃となった。

     

    (1)「ロシア国防省は当時、モスクワに積載していた弾薬が、原因不明の火災で爆発したと説明。港までけん引されている途中に転覆したと述べていた。さらに6月には、2月の侵攻開始日に占領した黒海のズミイヌイ(英語名スネーク)島がウクライナ軍に集中爆撃され、艦隊は撤退を余儀なくされている。そしてここ数週間、ロシアが2014年に併合したクリミア半島で黒海艦隊が拠点としてきたクリミア西岸セヴァストポリの周辺が、ウクライナ軍の攻撃にさらされている」

     


    ウクライナからクリミア西岸セヴァストポリまで、約200キロの距離がある。ウクライナには、これだけの長距離砲を持っていないことから、ウクライナ特殊部隊が活動していると見られる。ロシアにとって、もはやクリミア半島が「安全地帯」でなくなったのだ。

     

    (2)「セヴァストポリの北にあるサキ空軍基地への爆撃では、少なくとも戦闘機8機が破壊された。ウクライナ侵攻開始後もクリミア半島に戦火は及んでいなかったものの、サキ基地へのこの攻撃後には、多くの観光客がクリミア半島から逃れる様子が確認された。BBCが入手した写真では、半島からロシアへ続く道路が大渋滞となっている様子がうかがえる」

     

    火災を起したセヴァストポリの北にあるサキ空軍基地では、少なくも8機の戦闘機が破壊されたという。サキ空軍基地の防衛力が低下したことから、ロシア軍の車列がロシア本土へ向かっている。退避である。ロシアにとって想像もしない事態が起こったのだ。

     


    (3)「ウクライナ軍によるクリミア攻撃は、89日のサキ軍事基地だけではない。ロシア当局は7月、セヴァストポリで行われた海軍記念日の式典がウクライナのドローン攻撃を受けたと発表。また、8月16日にもクリミア北東部マイスケの弾薬庫で爆発が相次いだ。ウクライナ軍の攻撃能力はクリミア半島には決して届かないだろうというのが、これまでの見方だった。しかし8月に入ってから、クリミアで相次いだ爆発を多くのロシア人観光客が目撃し、その後ロシアに逃げ帰っている。西側当局者は、こうしたことがロシア政府に心理的な影響を与えていると報道陣に話した」

     

    プーチン氏には、予想外の展開になっている。間もなく侵攻後、半年を経過するが一段と不利な事態だ。プーチン氏は穀物輸出で妥協するなど、国連とトルコを仲介人にする準備をしているようにも見えるのだが、踏み切れないのだろう。

     

    (4)「この当局者らは今回、報道陣への状況説明に応じた。それによると、ロシアの黒海艦隊は現在、沿岸警備にあたる小規模な艦艇部隊と大差のない規模まで縮小しており、ウクライナの攻撃を警戒して慎重な動きを強いられている。また、ロシア軍がウクライナ南西部の主要港オデーサ港を攻撃する能力や、攻撃する可能性は、短期的にはほとんどないだろうと述べた」

     

    黒海艦隊は、ロシアにある5つある艦隊の中で、歴史を誇る存在である。それが現在、旗艦モスクワをウクライナ攻撃で失い、沿岸警備にあたる小規模な艦艇部隊並に落ちぶれているという。ウクライナ沿岸を攻撃する能力など、とっくに失っているというのだ。

     


    (5)「イギリス国防省は16日の戦況分析で、黒海艦隊の実行力が現在「限定」されているせいで、ロシア政府の全般的な「侵略戦略が損なわれている」と指摘した。「水陸からのオデーサへの脅威が、現在ほとんど無効化されている」ことが、この一因だという。英国防省によると、この時期に他の海域で活発化するロシア軍の活動とは対照的に、黒海艦隊は概して「極めて防戦的」な態勢をとり、その警戒活動はクリミア沿岸から目視できる範囲に留まっているという」

     

    ロシアが、ウクライナの小麦輸出を認めた裏には、黒海艦隊が沿岸警備隊程度に零落していることと無関係でない。ウクライナ攻撃能力喪失をカムフラージュしているつもりなのだ。

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    ウクライナ軍は、6月末から予定されていた南部での本格的反攻作戦の準備が整った。ロシアに占領されているウクライナ国民へ、作戦の巻き添えにならぬよう避難を呼びかけた。

     

    米国から提供された高機動ロケット砲システム「ハイマース」は、射程距離77キロもある。ロシア軍は、これに対抗する射程距離の重火砲を保持していないので、苦戦を強いられるのは必至とみられる。

     

    『産経新聞 電子版』(7月9日付)は、「ウクライナ軍、南部で本格反攻準備 住民に避難要請」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの侵攻を受けるウクライナのベレシチュク副首相は7月8日、近くウクライナ軍が本格的な反攻作戦を開始するとして、南部ヘルソン州とザポロジエ州内のロシア占領地域の住民に即時の避難を呼びかけた。火砲の使用が予定されており、巻き添えとなるのを避けるためだとした。ウクライナメディアが伝えた。

     


    (1)「ウクライナ国軍のマロムシュ大将も8日、同国メディアで、米欧から供与された兵器の習熟が完了しつつあると指摘。「今後3~4週間で大規模な奪還作戦が始まり、南部からロ軍を駆逐できるだろう」との見通しを示した。米シンクタンク「戦争研究所」も6日、「ウクライナ軍がヘルソン方面で反攻を準備している」とする分析を公表している。 ただ、ロ軍も南部の占領地域で防衛線を構築。ウクライナ軍が反攻を本格化させた場合、激しい戦闘が起きる見通しだ」

     

    ウクライナ軍が、南部の反攻作戦を始めるに当り信頼をよせている兵器は、米国の「ハイマース」である。射程距離77キロという強みを持っている。すでに8基が訓練も終えてウクライナ軍の前線に配置された。極めて優れており、精密誘導弾での攻撃になるので、ピンポイント攻撃に威力を増している。ロシア軍は、精密誘導弾を使い果たしており、非精密誘導弾という標的に当るか当らないか分らない「盲状態」である。これが、ウクライナ側施設の被害を大きくしている。

     


    (2)「ロシアが全域の制圧を目指す東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)のうち、ウクライナ側がなお4割超を保持するドネツク州では8日も攻防が続いた。ウクライナ軍参謀本部は同日、同州の中心都市スラビャンスク方面に前進を図ったロ軍を撃退したと発表。ロ軍が同州の複数の集落に砲撃を続けているとも発表した。ロシアはドンバス全域を制圧後、ドンバスと南部の占領地域を「割譲」する条件でウクライナに停戦をのませる思惑だとみられる」

     

    ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、CNNのインタビューで、自国の土地をロシアに譲る気はなく、戦争を終わらせるための外交交渉に領土の譲歩は含まれないとの立場を堅持していると語った。「ウクライナ人は自分たちの土地を手放し、これらの領土がロシアに属することを受け入れるつもりはない。これは我々の土地だ」と、ゼレンスキー氏はCNN番組「ザ・シチュエーション・ルーム」で7日に放映された独占インタビューで語った。「我々はそれを証明するつもりだ」と同氏は付け加えた。

     

    (3)「ウクライナは、ドネツク州を死守する間に、南部の奪還を進める方針だ。 米CNNテレビによると、米国は8日、ウクライナに対し、新たに高機動ロケット砲システム「ハイマース」4基と弾薬、155ミリ榴弾(りゅうだん)砲用の高精度な新型弾薬1千発など、4億ドル(約540億円)相当の追加支援を行うと発表した」

     

    米国から、さらに「ハイマース」4基が追加供給される。これで、ウクライナ軍は合計12基の「ハイマース」を使ってロシア軍への反撃作戦を展開できる。「高機動」だけに、ロケット発射後すぐに攻撃地点を離れて、ロシア軍の反撃を受けずに済むという大きなメリットがある。

     

    「ハイマース」については、次の記事を参照してください。

     

    2022-07-08

    ウクライナ、「お待たせ」米提供の高機動ロケット砲、国土奪回目指し作戦開始「手応え十分

     

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