ウクライナ大統領は、ロシアに対して「言葉だけでは信じられない」と手厳しい姿勢を続けている。ただ、先の停戦交渉によって、おぼろげながら将来のウクライナの姿が浮かび上がってきた。
ロシアは、この侵略戦争で経済的に大きなダメージを受けている。欧州復興開発銀行(EBRD)によると、停戦が近く実現すれば今年のロシア経済はマイナス10%成長、23年はゼロ成長と見込んでいる。欧米から資本と技術の流入が遮断される影響は今後、長引くと予想している。ウクライナ経済は、今年がマイナス20%成長と大きく落込むものの、来年は急回復を見込んでいる。
このように、停戦を前提にした経済予測ができるようになってきた。だが、停戦が実現するまでにはいくつかの問題が横たわっている。
米『CNN』(3月31日付)は、「ロシアとウクライナの交渉、停戦への道筋示すも行く手には地雷原」と題する記事を掲載した。
3月29日、イスタンブールで行われたロシアとウクライナの代表団による会合では政治的ムードはかなり改善され、おぞましい壊滅的戦争の全面的解決の輪郭が、おぼろげながらも見え始めた。会合では、クリミアおよびドンバス地方の今後の在り方やウクライナの中立的立場、安全保障の確約による保護、現在キエフ北部で展開しているロシア軍の大幅な撤退の他、プーチン大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談の可能性についても話し合われた。
(1)「ウクライナ側はロシアが2014年に併合したクリミアの地位について、今後の課題とすることに合意した。クリミア併合に関してはウクライナも欧米諸国もこれまで承認していなかったが、ポドリャク大統領府顧問は今後の展望として、「この領域の地位に関しては、15年間かけて二国間協議で話し合うことに双方が同意した」と述べた。「これとは別に、二国間協議が行われる15年間は軍事的敵対行為を行わないことについても話し合った」とも報道陣に語った。これにより、もっとも対立を深める争点のひとつが、とりあえず棚上げされる形となる」
ロシアが一方的に併合したクリミアの地位については、両国が今後15年間かけて協議する。その間の軍事的敵対行為を行なわない点も合意した。これは、ウクライナ側の主張が通ったものだろう。
(2)「歩み寄りの中でも直近のものとして、チェルニヒウと首都キエフに対する攻撃を大幅に縮小するとロシアが宣言したことが挙げられる。北部ウクライナのチェルニヒウはこの3週間ロシア軍に包囲され、甚大な被害を被っていた。とくに重大なのは、ウクライナ側の提案が十分に調整されており、「大統領に提示することができる。我々も今後適切な返答を提示する」とメジンスキー氏が発言したことだ。「合意交渉が迅速に行われ、妥協が見出せるのであれば、和平合意の可能性もより近づくだろう」と同氏は述べた――2月末の最初の交渉以来、ロシア当局者の考えとしてはもっとも前向きな発言だ」
北部ウクライナのチェルニヒウは、この3週間ロシア軍に包囲されて、甚大な被害を被っていた。ウクライナ側は、この攻撃を縮小するように求めている。次回の停戦交渉で回答が出れば、和平合意の可能性に近づくとしている。
(3)「これまでロシア当局者は、大統領本人が直接協議の場につく前にさらなる交渉が必要だとして、プーチン大統領の交渉参加を一切退けていた。だが今やロシア国営通信社のRIAノーボスチは――ロシア代表団の発言として――両国外相による和平協議と並行し、プーチン大統領とゼレンスキー大統領による首脳会談もありうると報じた。交渉の仲介にあたったトルコのチャブシュオール外相は「一刻も早い停戦実現に向けた最優先事項は、恒久的な政治的解決への道筋を築くことだ」とし、想定されるシナリオについて語った」
ロシア側は、両国首脳会談について拒否してきたが、軟化姿勢を見せている。その前に,外相会談をすることになった。
(4)「ウクライナにとって、安全保障の確約はつねに紛争解決の要だった。だが次第にゼレンスキー大統領も政府当局者も歩み寄りの姿勢を見せ、憲法で謳(うた)われているNATO加盟はウクライナの権利――むしろ義務――というこれまでの主張を譲歩している。そこへきて今、非常に異なる提案が持ち上がっている。会合の後、ウクライナ交渉団の1人ダビッド・アラカミア氏はウクライナのTVに対し、「我々は全ての保証国が署名する国際協定を策定し、批准することを強く主張する」と発言した」
ウクライナ側が、NATO加盟を断念する代わりに、安全保障の国際協定を要求している。
(5)「ウクライナ当局者によれば、この協定は保証当事国の議会で批准されなくてはならない。またウクライナは、保証国にロシアも含む国連安全保障理事会の常任理事国を加えたい考えだ。安全保障の確約は非常に具体的なものになるだろう、とアラカミア氏は述べた。ウクライナに対して侵攻や軍事作戦が行われた場合には「3日以内に協議を行わなければならない」。「その後、保証国には我々の支援が義務付けられる。軍事支援、兵力、武器、飛行禁止区域――我々が今非常に必要としながらも、手に入れることができずにいるもの全てだ」。ウクライナが現在目指しているものは、保護下での――かつ恒久的な――中立性と言えるだろう」
国際協定は議会批准が必要であること。保証国には、ロシアも含む国連安全保障理事会の常任理事国を加えたい考えである。これによって、恒久的な中立性を保障させる意向だ。
(6)「別の交渉団のメンバー、オレクサンドル・チャリー氏は次のように語った。「ウクライナの安全保障再建に向けて、あらゆる手段を講じることが主要条件だ。我々にとって根幹的要件であるこれら主要事項を確立できるなら、ウクライナは事実上、永世中立という形で非同盟国、非核国としての地位を固める立場を取るだろう」。さらにチャリー氏はこうも続けた。「(我々は)領地内に他国の軍事基地や他国の軍隊を配備しない。軍事的、政治的同盟は締結しない。国内での軍事演習は、保証国の同意のもとでのみ行う」。プーチン大統領がこれまでずっと要求の中核に据えてきたのもこの点である」
ウクライナは永世中立という形で、非同盟国・非核国としての地位を確立する。この点は、プーチン氏の要求にもあう。
(7)「ウクライナはNATO加盟という野望を断念する代わりに、EUへの早期加盟を目指すことがさらに明確になった――これに関しても、ウクライナは保証国の後押しを望んでいる。ウクライナ国民の間でも広く支持されているEU加盟の可能性が見えてくれば、ウクライナ政府が公約に掲げてきた安全保障を伴う中立性も、国民投票で全面的に承認されることになるだろう」
ウクライナは、NATO加盟を諦める。だが、EUへの早期加盟を実現する。これが実現の方向であれば、安全保障を伴う中立性も国民から承認される可能性が見えてくるであろう。



