勝又壽良のワールドビュー

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    テイカカズラ
       


    ロシア軍は、ウクライナ侵攻で重大局面を迎えている。ウクライナ軍がクリミア半島奪回に向けて作戦計画を練っているからだ。これまで、冬季の作戦は膠着状態になると予想されていたが、地表の凍結によって作戦が容易になるというのである。

     

    冬季作戦では、ロシア軍が不利と見られている。耐寒装備が、不十分であろうと見られていることだ。ロシア軍兵士は、耐寒装備が行き渡っておらず、凍死などの危険性と隣合わせになれば、士気は一層の低下を余儀なくされよう。

     

    『日経ヴェリタス』(12月4日付)は、「ウクライナ軍『迫るレッドライン』ロシア核使用の懸念も」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナでは、侵攻中のロシア軍が戦力を南部から東部に再配置し始めたことで、今後の戦闘の焦点は東部に移るとの見方が浮上している。ただ、ウクライナ軍は東部だけでなく、南部でも反転攻勢を続けており、ロシア軍が南部で大きな後退を強いられれば、化学兵器や小型核兵器といった大量破壊兵器の使用に踏み切る事態がかつてなく現実味を帯びそうだ。

     

    (1)「ロシア軍は11月、南部へルソン州のドニプロ川西岸から部隊を撤退させ、東岸地域で防衛線を構築している。同時に、後退させた部隊の一部を東部戦線に振り向けたことで、東部地域で攻防が激化するとの見方が多い。ただ、主戦場が東部に限定される保証はない。ウクライナ軍は9月以降、南部にロシア軍主力を引き付けたうえで、東部で一気に占領地を奪回してみせた。一方、現在はロシア軍が東部を重視していることで、南部でのロシア側の守りは手薄になっている」

     

    軍事専門家の見方では、ロシア軍の作戦に迷いがあると指摘している。ウクライナの東部と南部のどちらに防衛の力点を置いているか不明というのだ。ウクライナ軍は、南部でクリミア半島奪回に向けて動いている。ロシア軍はそれを気づきながら、東部で不要な攻撃をかけているのは解せないというのである。

     

    (2)「ウクライナ軍にとって9月と状況が異なるのは、南部での前進を阻むドニプロ川という地理的障害があることだ。ただ、これまでの戦闘でもウクライナ軍は渡河作戦を実施しており、ロシア軍がウクライナ軍のドニプロ渡河作戦を警戒しているとの情報もある。仮にウクライナ軍が東岸に橋頭堡(きょうとうほ)を築ければ、そこを起点に障害が比較的少ないヘルソン州南西部を経てクリミア半島の付け根部分まで短期間に進出する展開がみえてくる」

     

    ウクライナ軍が、ドニプロ川を渡河するのは極めて危険を伴う。対岸にはロシア軍が防衛戦を築いているからだ。こういうリスクを冒すよりも、ザボリージャ州を南下してロシア軍を分断し、クリミア半島への兵站線を絶つ戦術を取るだろう。これが、軍事専門家の見方だ。ウクライナ軍は、「敵前上陸」のような危険な作戦を回避するであろう。

     

    (3)「一方、そこはロシア軍にとってはレッドライン(越えてはならない一線)で、「過激な反応」を誘いやすい。これには二つの事情がある。まず、ロシア軍が2014年の電撃侵攻の成果であるクリミア半島を失う可能性が出てくる。これが現実になると、ロシア国内の厭戦(えんせん)気分や、強硬派によるプーチン政権への突き上げが強まるのは避けられない」

     

    ロシア軍が、クリミア半島奪回が視野に入れば、ロシア軍が核を使うだろうという予想がある。西側諸国もこれをもっとも警戒している。だが、軍事専門家によれば、軍事的な意味はないという。ロシア軍は、報復を受けることを十分に認識しているからだ。米国が、ホットラインでロシアへ警告したほか、両国の情報当局トップが会談して意思疎通を図っている。核を使えば、NATO(北大西洋条約機構)が参戦する危険性が高まる。ロシアは、これを最も警戒しているのだ。

     

    (4)「(クリミア半島を失えば)ロシアの中長期的計画が狂うことだ。「ロシア軍はヘルソン州からさらに西に支配地域を広げ、モルドバを制圧することで、ウクライナを海への出口を持たない内陸国にしてしまうことを企図している」(防衛省情報部局関係者)。できれば、目下の戦闘を膠着状態に持ち込んだ上で、今後数年間かけて軍を再建し、14年、22年に続く3度目となる次回侵攻でウクライナの内陸国化を果たしたいと考えているわけだ。その意味でも、ロシア軍はドニプロ東岸(へルソン州南部)を失うわけにはいかない」

     

    このパラグラフは、完全にロシア側の身勝手な青写真である。西側諸国は、絶対にこれを認める訳にいかないのだ。ロシアが受けている経済制裁は、これから一段と厳しくなる。EU(欧州連合)とG7・豪州は、12月5日からロシア産原油価格の上限制(当面は1バレル60ドル)によって、ロシアの収入減を実現させる。これによって、戦争継続を困難にさせる戦術を発動させるのだ。ロシアは、自らの思惑が実現できるほど、世界が甘くないことを知るであろう。

     

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    ロシアは、核脅迫という「最後通告」とその後の「Uターン」を繰り返し、戦争目的も絶えず変化している。このため西側諸国の政府当局者の間では、プーチン氏は自分の手に負えなくなっているこの戦争で、行き当たりばったりに対処することを余儀なくされているとの見方が強まっている。 

    ロシアは、欧米の制裁で重要産業の運営維持に苦慮している。このため、自動車、航空機、鉄道の部品を含む製品500以上のリストをインドに送付していたことが分かった。『ロイター』(11月29日付)が報じた。ロシアは、ここまで追込まれているが、「止めるに止められない戦争」という、最悪事態へ自ら落込んでいる。プーチン氏にも解決方法はないのだ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月29日付)は、「ぶれるプーチン氏、戦争目的と『レッドライン』は」と題する記事を掲載した。 

    ウラジーミル・プーチン大統領が主導したウクライナ侵攻後、ロシアはしばしば戦争をエスカレートさせるという脅しをかけてきたが、脅しの多くを後にトーンダウンするか無視している。米国とその同盟国は、プーチン氏の真のレッドラインはどこなのか推測せざるを得なくなっている。 

    (1)「キングス・カレッジ・ロンドン戦争学部のマイケル・クラーク客員教授は、「プーチン氏の行動には現在、自暴自棄の要素がある。なぜなら、戦況が芳しくないこと、そして戦闘の長期化を覚悟しなければならないことを知っているはずだからだ」と述べた。ロシアはウクライナへの侵攻を拡大させている。ここ数週間でさらに数万人の兵士を前線に送り、ウクライナの電力網をはじめとする民間インフラへの攻撃を繰り返しており、首都キーウなどの都市はたびたび停電に見舞われている」 

    プーチン氏は、自暴自棄になっている気配があるという。勝ち目のない戦争だが、自ら止めるワケにもいかない。そこで、ウクライナの厭戦気分や支援する西側諸国の支援疲れを待っているのであろう。

     

    (2)「軍事アナリストらによると、ロシアの目的は、冬季にウクライナ国民を凍えさせることで士気を低下させ、西側諸国のウクライナ支援のコストをさらに高め、戦争が積極的に押し進められていることをロシア国内向けに示すことだという。ロシアと北大西洋条約機構(NATO)加盟国の双方が維持するレッドラインの一つは、ほとんど明言されていないが、相手との直接的な軍事衝突を望んでいないことだ」 

    ロシアは、NATO軍との軍事衝突を望んでいない。全面衝突になればさらに勝ち目がなくなるからだ。ロシア大統領選挙は2024年3月である。プーチン氏が立候補するならば、早く戦争を切り上げる必要があろう。

     

    (3)「ロシアのその他のレッドラインは、しばしば幻想であることが判明しており、特に好戦的な発言の一部は裏目に出ている。プーチン氏は9月21日、「ロシアとその国民を守るために利用可能な全ての手段」を講じると述べ、ウクライナで核兵器を使用する用意があると警告した。同氏は「これははったりではない」と付け加えた。ロシア政府はその後、ウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」の準備を進めていると非難した」 

    弱い犬ほど「遠吠え」するというが、ロシアはこれまで何回か「核威嚇」してきた。これにより、ウクライナやNATOの厭戦気分を引き出す計画であった。

     

    (4)「西側諸国の当局者はこの動きについて、衝突をエスカレートさせる口実だと指摘した。西側の当局者やアナリストによると、この脅しの主な目的は、西側諸国の市民に戦争に関するパニックを起こさせ、ウクライナへの支持をやめて、ロシアが示す条件で和平交渉を進めるよう各国政府を説得してもらうことにあった。今のところ、この脅しは西側諸国によるウクライナ支援に影響しておらず、支援は順調に続いているように見える」 

    米国は、ロシアへ核使用のリスクを伝えている。通常兵器での報復である。ロシア軍部は、これを聞いて震え上がったのであろう。ロシアの黒海艦隊を全滅させると通告されているのだ。

     

    (5)「プーチン氏の核戦力による威嚇は、世界からの非難を浴び、ロシアを外交的に一層孤立させた。ジョー・バイデン米大統領はロシア政府に対し、戦術核兵器の使用が「極めて深刻な過ち」になると警告した極め付きは、中国の習近平国家主席が初めて公の場でロシアによる戦争行為を非難したことだった。習氏は、いかなる者も紛争で核兵器を使用したり、その使用をちらつかせたりすべきではないとけん制した」 

    ロシアの盟友である中国は、ロシアの核使用に反対している。インドも表明した。こうなると、ロシアの核脅迫発言は国際社会で自らの孤立を深めるだけだ。

     

    (6)「ロシア政府は、10月下旬までに姿勢を後退させた。プーチン氏はテレビの長時間インタビューで、ロシアにはウクライナで核兵器を使用する計画がないと述べた。世界中にいるロシアの外交官からも同様の発言が出た。西側専門家は、戦場における核兵器の使用はロシアの軍事侵攻の目的達成にほとんど役立たず、米国とその同盟諸国を戦争にさらに深く引き込むリスクがあると指摘する。また、1945年以来維持されてきた核兵器使用のタブーを破れば、ロシアへの非難が強まり国際的な孤立が一層深まるだろ」 

    プーチン氏は、ウクライナで核兵器を使用する計画がないと述べた。自らまき散らした「核脅迫」は不発になりそうだ。こうなると、ロシアはどうするのか。「ダラダラ戦争」を行なって「偽正義」を言い募るという無益な試みで時間を空費するのだ。その間の人命の損失を考える余裕はなくなっている。自分の身の処し方で夢中になっているのであろう。

     

     

     

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    ロシアは、理由もなく隣国ウクライナを侵略。戦況が不利になると、ウクライナの発電所をミサイル攻撃し「エネルギー攻め」にしている。すでに零度以下になっているウクライナ国民は、電気も水もない中で寒さに震え苦痛を強いられている。ロシアは、残酷な仕打ちをしているのだ。

     

    『ロイター』(11月25日付)は、「ウクライナ政府、市民の苦痛終わらせること可能ーロシア大統領府」と題する記事を掲載した。

     

    ロシア大統領府(クレムリン)は24日、ウクライナのエネルギー関連施設に対する攻撃が民間人を標的としたものであるという見方を否定した。同時に、ウクライナ政府が紛争終結に向けロシアの要求に応じれば、市民の「苦痛を終わらせる」ことができるという認識を示した。

     

    (1)「ロシア軍によるウクライナ全土の主要インフラに対するミサイル攻撃によって、各地では停電や断水が発生。気温が氷点下となる中、数百万人の市民が数時間もしくは数日間にわたり、暖房や水のない生活を強いられる状況となっている。クレムリンのぺスコフ報道官は「『社会的』な標的に対する攻撃は行われておらず、細心の注意が払われている」と強調。ウクライナ市民の苦しみとプーチン大統領の立場についてどのように折り合いをつけるのかという質問に対しては、「ウクライナ指導部には、ロシア側の要求を満たす形で状況を解決し、ウクライナ市民の苦しみを終わらせるあらゆる機会がある」と応じた」 

    ウクライナは、ロシア側の要求通りに応じれば発電所攻撃を止める、としている。ロシアが、一方的に始めた侵略戦争である。要求に応じなければ、真冬に向かう中で「エネルギー攻め」にすると豪語している。21世紀の現在、こういう侵略国が存在するのだ。

     

    『BBC』(11月25日付)は、「ウクライナ、インフラ一部復旧も電力需要の50%しか満たせず ロシア軍の攻撃で」と題する記事を掲載した。 

    ウクライナの国営電力会社ウクルエネルゴは、主要インフラの修復が最優先だが、修復にはより多くの時間がかかるとした。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、首都キーウを含む15州で、電力だけでなく水の供給も「最も困難な状況」にあると述べた。冬の到来を迎えたウクライナ全土では降雪が観測され、気温は氷点下にまで低下。低体温症による死者が出ることが懸念されている。 

    (2)「キーウでは24日朝、市民の7割が電力を喪失していた。同市のヴィタリ・クリチコ市長はBBCウクライナ語に対し、電気、暖房、水が使えなくなる「最悪のシナリオ」を排除できないと述べた。しかしその後、ウクライナ当局はすべての地域で電気と水の供給が徐々に回復しているとした。ウクライナ大統領府のキリロ・ティモシェンコ副長官は、まず重要インフラの電力が復旧したと述べた。そして、「現時点で、一般家庭向けネットワークの接続が徐々に進んでいる」と付け加えた」 

    キーウでは24日朝、市民の7割が電力を喪失した状態という。ロシアは、苦しければ「降伏せよ」とせせら笑うような姿勢だ。戦争が終わった後、ロシアは世界中から糾弾されて、二度と立直れない程の罰を受けなければならない。

     

    (3)「ウクライナ当局によると、携帯電話を充電したり、お茶やコーヒーを飲んだりできる仮設の暖房テントが全国に4000以上設置されている。ゼレンスキー大統領は24日遅く、毎晩定例の演説で、ロシア軍は「戦い方を知らない」と述べた。「彼らにできるのは、恐怖を与えることだけだ。エネルギーテロか、砲撃テロか、ミサイルテロか。それが現在の指導者のもとで堕落したロシアのすべてだ」と憤る」 

    ウクライナ国民の団結は、さらに固くなろう。ロシアが期待するような、和平交渉への声が出てくるか疑問だ。ロシアは、ここでも道を間違えている。 

    (4)「こうした中、ウクライナのイリナ・ヴェレシュチュク副首相はBBCの番組ワールド・トゥナイトで、「テロリストのロシアは我々に対してエネルギー戦争を始めた。その目的は大規模な人道的危機を作り出すことだ。私たちにとって最大の課題は、高齢者や子供連れの女性、入院中の病人など最も弱い立場にある人達を守ることだ」と述べた。「(ウクライナ)国民は120日間持ちこたえなければならない。この日数が冬の期間にあたり、それこそがロシアの狙いだからだ。ロシアは冬の間、(ウクライナ)国民に最大級の苦痛を与えようとしている」。ヴェレシュチュク副首相によると、南部ヘルソン市など一部地域はいまも砲撃を受けており、ウクライナ政府はすでに自主避難の指示を開始しているという」 

    ロシアの目的は、ウクライナで人道危機をもたらすことだ。これによって、和平論の出てくるのを待っている。拷問と同じ手法である。ウクライナには、西側諸国が支援していることを忘れたような振る舞いである。 

    (5)「多くのキーウ市民は自分たちが直面している困難な状況を冷静にとらえ、それを乗り越える方法を見出しているように見える。実際、発電機を設置する人が増えている。ウクライナでは23日にミサイル攻撃を受ける以前から、水道水の確保もままならなくなっている」 

    こういう事態に、ウクライナ軍の前線部隊は、一段と士気を高めて領土奪回に向け奮闘するであろう。ウクライナ国民は、この試練を乗り越えれば、ロシア上回る強靱な国民性を身に付けるであろう。

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    ロシアが2014年、ウクライナのクリミア半島を侵攻して以来、米軍が民衆による抵抗運動のマニュアル「ROC(抵抗活動戦略)」を作った。それが、パルチザン組織によるロシアへの抵抗運動の始まりである。現在、このパルチザン組織が効果を上げておりロシア軍を背後から脅かす存在になっている。

     

    『中央日報』(11月19日付)は、「夜になると急変する彼ら、ロシア兵士をひそかに殺すウクライナ『ビジネスマン』の正体」と題する記事を掲載した。

     

    開戦9カ月目に入ろうとしているウクライナ戦争でゲームチェンジャーに挙げられるものが2つある。1つは米国が供与した高機動ロケット砲システム(HIMAS・ハイマース)、もう1つはロシア軍の背後でゲリラ戦を実行しているウクライナ非正規軍「パルチザン」だ。

     

    (1)「AFP通信やキーウ通信などは最近、ウクライナが開戦初期にロシアに奪われた南部要衝地ヘルソン地域を奪還するなど、意味ある勝利を収めている背景にパルチザン(非正規戦を遂行する遊撃隊員)の活躍があると伝えた。パルチザンは正規軍ではなく民間人の身分で、侵略者に対抗して防御戦を遂行する遊撃隊を意味する。今年2月のロシア侵攻以降、数多くのウクライナ人がパルチザンに志願して活躍中だ。ロシア軍の位置情報収集・提供、ロシア重要人物の暗殺、拠点破壊などが彼らの主な任務だ」

     

    パルチザンは、非正規とはいえ一国の軍事組織に近い力を保有している。これに対して、レジスタンスは比較的小規模な組織とされている。いずれも、占領軍への抵抗組織である。ウクライナでは、このパルチザンが政府公認の下で行なわれて、「戦果」を上げている。  

     

    (2)「パルチザンが収集・提供したロシア軍の位置は、ハイマースの攻撃効果を高めるのに必要な核心情報だ。ウクライナ軍事情報局のバディム・スキビツキー副局長は、キーウポストとのインタビューで「ロシア軍の数字、移動経路を教える主な情報部員がこのパルチザン」としながら「米軍もパルチザンが提供した情報の量と正確性に驚いている」と付け加えた。ヘルソンでパルチザンとして活動中の音楽家志望のティモールさん(19)は、「過去数カ月間、ロシア軍が寝ている場所、酒を飲むところ、装備や弾薬の位置などの情報を把握してウクライナ軍に毎日のように送った」としながら、「一日中歩き回って観察した内容を家に帰ってきて一つ残らずメモし、情報を送った後は証拠をすべて消去した」とAFPに伝えた」

     

    ロシア軍が、占領地でウクライナの通行人を拉致しているのは、パルチザン運動を警戒している結果だ。市民がスマホで、ロシア軍の位置情報などをウクライナ軍へ通報して、攻撃で成果を上げている。

     

    (3)「ロシア側の要人暗殺にもパルチザンが積極的に関与している。米国シンクタンクである戦争研究所(ISW)によると、これまでパルチザンの活躍によって除去された親ロ高位要人は少なくとも11人にのぼる。パルチザンは、ロシア協力者の車両の車輪に爆弾を仕掛けたり、意図的に交通事故を起こしたりする方式で暗殺を積極的に実行中だ。毎日新聞は、今月9日に交通事故で亡くなった親露派勢力幹部だったストレモウソフ氏も、パルチザンによって除去されたとみられると伝えた」

     

    ロシア将官11人は、ウクライナで死亡事故を起しているが、これもパルチザン運動の成果とされている。ロシア軍は四六時中、どこに敵が潜んでいるか分からない不気味な状況に置かれている。

     

    (4)「もともと、ウクライナ政府はパルチザン活動を不法と規定して禁止してきた。だが、2014年ロシアがクリミア半島を侵攻・併合したことを受けて「第2のクリミア半島事態をうまないため」にパルチザン活動を合法化した。今年初めのロシア侵攻以降、ウクライナ国防省は最初から「国民レジスタンスセンター」というサイトを開設して「ロシアと戦う皆さんを支援する」として市民のパルチザン参加を積極的に奨励している。サイトには、「ロシアのドローンを見つけたときの対処法」「ロシアの戦車を盗む方法」「家庭で煙幕弾を製造する方法」「小型火器の使用法」などが掲載されている」

     

    ロシア軍の侵攻前、ウクライナ市民は街頭で火炎瓶づくりをしている姿が報じられた。これも今になって見れば、パルチザン運動の一環であったことが分かる。

     

    (5)「パルチザンが参考にするゲリラ式戦術の教科書「ROC(抵抗活動戦略)」には、「道路標識を付け替えおよび撤去」「道にガラスを撒く」などが含まれている。『ニューヨーク・タイムズ』によると、パルチザンの主なターゲットはロシアに協力する警察・政府公務員・教師などだ。反面、医師・消防署員・電力会社職員は攻撃対象から除外する。有事の際に助けを受けることができるためだ。ロシアはウクライナのパルチザンが自国の軍事作戦に脅威になることはもちろん、軍士気低下の原因だとみて「パルチザン狩り」に出た状態だ。現在ロシア刑務所に送られたパルチザンは1500人と推算される。ロシアは彼らを死刑にすると脅している」

     

    ゲリラ式戦術の教科書「ROC(抵抗活動戦略)」は、米軍特殊部隊が米軍の戦闘例を参考にしてつくったものである。さすがは米国と言うべきか、すぐにマニュアル化して広く普及させている。「道路標識を付け替えおよび撤去」は、開戦直後のキーウ市内で行なわれていた。このニュースを読んだときは「ニヤッ」としたが、パルチザン運動の一環であった。

     

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    ロシアのウクライナ侵攻は、世界的なエネルギー供給構造に劇的な変化をもたらしたという分析が、IEA(国際エネルギー機関)から発表された。これは、ロシアからの化石燃料輸出が減ったことから起こったもので、脱化石燃料依存へのスピードが加速され今後、数十年も続くという明るい分析である。

     

    ロシア経済は化石燃料依存であるので、西側諸国の経済制裁が継続されれば、これから経済成長の手段を失うだけに深刻な事態が想定される。ロシアが自ら蒔いた種とはいえ、罪のない一般ロシア国民には想定外の受難期を迎えそうだ。

     

    フランスのボルヌ首相は10月3日、フランス議会で演説し、ウクライナでの戦争は続くが、フランスは準備が整っており、ロシアにとって戦争の代償を耐えられないものにしたいと述べた。ロシアは、まさに「戦争の代償を耐えられない」構造変動が起きる原点に立たされたわけだ。

     

    米『CNN』(11月5日付け)は、「ウクライナ戦争でエネルギー源移行が加速、大転換とIEA」と題する記事を掲載した。

     

    国際エネルギー機関(IEA)は5日までに、ウクライナに侵攻したロシアの化石燃料の輸出が減少の一途をたどっていることを受け、より持続可能で安定したエネルギー源確保への移行が世界規模で加速する可能性があるとの報告書を公表した。年次の「世界エネルギー見通し」で指摘したもので、国際エネルギー市場は「大きな方向転換」の最中にあるとの認識も示した。

     

    (1)「ロシアから欧州へのエネルギー源の輸出がしぼんだことを受け、多くの国が新たな事態への適応を図っているとし、世界規模の二酸化炭素の排出量は2025年に最高水準に達する可能性があるとも予想した。また、IEAのエネルギー源需給などに関する予測としては初めて、全ての化石燃料への世界的な需要は2030年代半ばに頭打ちとなる前に、ピークあるいは横ばいの水準に到達する可能性があるともした。IEAのビロル事務局長は、エネルギー市場や関連政策はロシアのウクライナ侵攻を受け変質したとし、その波及効果は当面の期間の問題ではなく今後数十年にも及ぶと指摘した」

     

    ロシアのウクライナ侵攻に対する西側諸国の経済制裁によって、化石燃料の最大輸出国ロシアの輸出量が減少している。西側諸国は、エネルギー源の転換に乗り出しており、これによってエネルギー供給構造に大きな変化が起こっている。

     

    (2)「世界エネルギー見通しによると、多くの政府はエネルギー危機に直面し短期的な消費者保護対策だけでなく長期的な展望を踏まえた措置を講じているとも分析。一部政府は原油や天然ガスの調達元の多様化の拡大を図り、多くはエネルギー政策に関する構造的な変化の加速も見据えているとした。IEAの予測によると、クリーンエネルギーへの世界規模での投資は2030年までに年間で2兆ドル以上に膨らむ可能性がある。現状と比べ50%以上の増加を意味する

     

    クリーンエネルギーへの投資は、2030年までに現行の5割増しが予測される。これは、エネルギー供給構造に抜本的な影響を与えるはずだ。

     

    (3)「IEAは、化石燃料の最大の輸出国であるロシアが、国際的なエネルギー市場での強固な足場を取り戻すことは決してないだろうとも予測した。ウクライナ侵攻に伴って欧州市場との関係が破綻し、エネルギー市場での大きな地位低下にさらされることになったと断じた」

     

    世界的なエネルギー供給構造の大変革によって、IEAはロシアが国際的なエネルギー市場で強固な足場を取り戻すことは決してないだろうと予測する。化石燃料に依存するロシア経済は今後、輸出すべき産物を失う悲劇が待っているのだ。

     

    (4)「事務局長は3日には、世界や欧州のガス市場でみられる直近の傾向や予想し得る事態の進展を踏まえれば、欧州が来年の冬、ガス調達でより厳しい試練に遭遇する方向にあることが見てとれるとも主張。欧州の各国政府がさらなるガス不足を回避するために迅速な行動に出る必要があるとし、エネルギー使用の効率向上や再生可能などのエネルギー開発の加速に早急に取り組むことが重要と説いた。ガス需要を構造的に減らす他の措置の導入も訴えた」

     

    目先の問題として、欧州は来年の冬に天然ガス調達で厳しい試練に立たされる。これを乗り切れば、事態は好転していくと見られる。あと少しの辛抱で、ロシアの経済力は激変に見舞われ、「侵略余力」を失うであろう。

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