勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

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    ウクライナのレズニコウ国防相は2月5日、ウクライナ東部の要衝バフムトについて、「依然として象徴だ」と述べた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、昨年末の訪米時に米議会で、「バフムトの戦いは、独立と自由のための戦争であり、悲劇的な物語を変えるだろう」と述べた。この言葉通り、今もバフムトの戦いは続いている。

     

    ロシア軍は、正規軍や民間軍事会社ワグネルの傭兵を投入してバフムト攻略を続けている。ロシア軍が、多くの犠牲者を出しながら攻略できない理由は、ウクライナ軍の高い士気による反撃もさることながら、バフムトという地形が「天然の要塞」になっていることも大きく影響している模様だ。

     

    米『CNN』(2月7日付)は、「東部バフムト、天然の防御で『難攻不落の』要塞に ウクライナ軍司令官」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ陸軍の司令官は6日、同国東部の都市バフムトについて、天然の防御により「難攻不落の要塞(ようさい)」になっているとの見方を示した。

     

    (1)「陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は、SNSのテレグラムで「この地域ならではの地理的な特徴がある。当該の都市は圧倒的な高台や丘に囲まれ、街自体が敵にとって罠(わな)になっている」と述べた。シルスキー氏によると、ウクライナ軍は天然の地形に沿って障害物を設置。それが現場の地域を難攻不落の要塞にし、数千人の敵が死亡する状況になっているという。「我々はあらゆる選択肢を用いる。技術的な能力のみならず自然の機能も活用して、敵の最もすぐれた部隊を撃滅する。戦闘は続いている」(シルスキー氏)と指摘」

     

    ロシア軍は、人海戦術による攻撃を繰返している。最も古典的な戦い方と言われている。この人海戦術には、ワグネルが集めた囚人部隊が投入されており、文字通り「屍を超えて」という悲惨な戦い方である。ウクライナ軍は、バフムトの高台に陣地を構えているので、天然の城(要塞)に守られている。

     

    (2)「ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、「バフムトで降伏する者は1人もいない。我々は可能な限り戦うだろう」と述べていた。ロシア民間軍事会社「ワグネル」のトップ、エフゲニー・プリゴジン氏は5日、バフムトでは戦闘が続いており、ウクライナ軍に退却の兆候は見られないとテレグラムで明らかにした」

     

    攻撃側のワグネル創設者プリコジン氏は、このバフムト戦が「困難な戦い」であることを認めたテレグラムを公開した。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(2月7日付)は、「ワグネル創設者プリゴジン、バフムトでの苦戦を認める」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジンは25日、激戦が続くウクライナ東部の要衝バフムトの戦況について、ウクライナ軍を退却させるに至っていないことを認めた。ウクライナ軍は撤退も近いと言われたが、それは嘘だったのだろうか。

     

    (3)「プリゴジンは、「状況を明確にしたい。ウクライナ軍はどこからも撤退はしていない。ウクライナ軍は最後の最後まで戦い続けている。アルチョモフスク(バフムトのこと)の北部ではすべての街路、すべての住宅、すべての吹き抜け階段で、激しい戦闘が行われている」とテレグラムに投稿した。「もちろん、メディアがウクライナ軍の撤退を期待するのはありがたいが、北部でも南部でも東部でも(撤退は)起きていない」と指摘」

     

    バフムトは、数カ月間にわたってロシア軍の集中攻撃の対象となり、無数の砲撃にさらされてきた。バフムトの制圧を目指すロシア軍は、まだ勝利宣言するには至っていない。

     

    (4)「米シンクタンクの「戦争研究所」が5日に発表したレポートによると、ロシア部隊は「バフムトとブフレダルの周辺では攻勢を続けているが、ドネツク市西郊における攻撃のペースは落ちている」という。またレポートは、「ロシア軍の正規部隊、予備役、ワグネルを合わせ、バフムトの制圧に向けて(合わせて)数万人規模の部隊が投入されているが、すでにかなりの人的被害が出ている」としている」

     

    ロシア側は、バフムト攻略で数万人規模の兵員が投入して、多大の犠牲者を出している。これは、今後の大攻略戦に大きく響くことになろう。昨年10月、ロシア軍は大敗走したが、その再現が起こりかねないほど、バフムトに執着している。これでは、他の戦線で大穴を作りかねないだろう。

     

    (5)「米シンクタンク、ディフェンス・プライオリティ―ズで大規模戦略プログラムのディレクターを務めるラジャン・メノンは5日、本誌にこう語った。「ワグネルとロシア正規軍の合同部隊は何カ月にもわたってバフムトとソレダルを攻略しようとしてきたが、人数と火器、特に砲撃力に勝っているにも関わらず、最近になってようやくソレダルを制圧できたに過ぎない」

     

    ワグネルは特に、大きな人的被害を出している。中でも、プリゴジンが恩赦を約束して戦いに駆り出した不運な元受刑者たちの犠牲が大きい、という

     

    (6)「目下、ロシア軍はバフムトを3方向から包囲しているように見える。ならば、なぜウクライナ軍はここまで踏ん張っているのか。ウクライナ軍の狙いは、この戦いをできるだけロシア軍にとって犠牲の多いものにすることと、(敵の)部隊を足止めしてよそで使えないようにするなり、ドンバスの西側のウクライナ支配地域まで追いやることだ。血みどろの戦いだが、ウクライナ軍の士気を高めるとともに、ロシア軍の軍事的能力の低下につながっている

     

    下線部は、ウクライナ軍がバフムトを死守している理由を明確にしている。天然の要塞を利用して、ロシア側を引きつけ消耗戦を強いることである。ロシア軍は、この戦術に嵌り込んでいる印象だ。

     

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    ウクライナは、ロシア軍の撃ち込むイラン製の自爆型ドローンへの対抗策を打ち出した。捕獲したドローンの内部分解によって、電子頭脳を特定した。これによって、回避できる対応策が可能になるという。

     

    一方、ロシアへドローンを提供しているイラン外相は、ポルトガル外相との電話会談で、ロシアへの提供を否定したという。今さら恥ずかしくて、認めるわけにも行かないのであろう。

     

    米『CNN』(10月16日付)は、「イラン製ドローン無力化へ、ウクライナが新技術開発」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナのレズニコウ国防相は16日までに、ロシアが調達しウクライナへ投入しているイラン製の攻撃型ドローン(無人機)を無力化する新たな技術を開発していることを明らかにした。

     

    (1)「国防相はロシアが現在保有するこれらドローンは約300機と推定。さらに数千機の追加調達をもくろんでいるとも判断した。ロシアがより多くのドローンを獲得する事態への準備をしなければならないとし、その脅威を封殺するためのシステムを開発中とした。細部まで分解して内部に搭載している「電子頭脳」の種類などを特定し、様々な対抗措置を検討しているとした。ウクライナ軍南部作戦管区のフメニュク報道担当者によると、ロシア軍はイラン製の自爆攻撃用ドローンを集団で投入し、ウクライナ軍の防空態勢の探知などを進めている」

     

    ロシア軍は、イラン製の自爆攻撃用ドローンを集団で投入している。ウクライナは、これに対抗するには、イラン製ドロ-ンを一網打尽にする技術の開発が必要だ。ドローンの内部に搭載されている「電子頭脳」の種類を特定して、この機能を狂わす電波でも送れば可能なのか。SF的な戦争になってきた。

     


    (2)「これらドローンをウクライナ全土で用いており、南部だけでなく北部からも飛ばしているという。ウクライナ軍は、南部でドローン109機を撃墜したが、33機は標的に命中していた。狙っていた施設などの大半は、公共インフラだったとした。自爆攻撃用ドローンは、「マッチ」のような役目を果たすともし、爆発ではなく火災を生じさせて標的の機能を抹消させる場合がより多いと述べた」

     

    イラン製ドロ-ンは、ロシア軍の精査によれば半分以上が不良品と言うことだ。ドローンがマッチのような役割を果たし、爆発しないが火災を起させるという。

     


    (3)「ロシア軍によるイラン製ドローンの動員が目立つ新たな展開を受け、ウクライナ政府は西側諸国に対し防空システムの供与の拡大を求めてもいる。自爆攻撃用ドローンは標的があるとみられる地域の上空に滞空し、敵側の軍事資産などを特定すれば攻撃に転じる性能を持つ。精密誘導ミサイルを装備でき、搭載する兵器などの重量は約50キロとされる。小型、携行可能で発射の操作も容易だが、最大の利点は探知が難しく遠方から飛ばせることにある。「カミカゼ・ドローン」とも呼ばれているのは使い捨てが可能だからだ。ウクライナのゼレンスキー大統領によると、ロシアは自爆攻撃用ドローン「シャヘド136」の計2400機をイランに注文した」

     

    イラン製ドローンは、大きな犠牲を出さないが、ウクライナにとっては「蚊」のような鬱陶しい存在なのだろう。ただ、ドローンは油断できない面があるので、ウクライナの防空体制を固めるべく西側諸国へ防空システムの提供を呼びかけており、近く一斉にウクライナへ提供されることになっている。

     


    『CNN』(10月16日付)は、「
    イラン、ロシア軍への武器提供を否定 ポルトガルとの外相会談で」と題する記事を掲載した。

     

    イランのアブドラヒアン外相は14日、同国がロシアに対し、ウクライナ侵攻で使用するドローンなどの武器を提供しているとの情報を否定した。ポルトガルのクラビーニョ外相との電話会談で語った。

     

    (4)「イラン当局が発表した会談の記録によると、アブドラヒアン氏はこの中で、ウクライナ侵攻への武器提供は「これまでも、今後もない」と改めて強調。紛争当事者に武器を提供すれば戦争を長引かせることになると指摘し、「ウクライナでもアフガニスタンでも、シリア、イエメンでも、戦争が正しいやり方だとは考えていない」との立場を示した。ポルトガル当局によると、クラビーニョ氏は会談で、ロシア軍が最近、ウクライナでイラン製ドローンを使っている証拠があるとの報道に懸念を表明し、イラン当局はロシアにドローンを提供しない姿勢を明確に示す必要があると強調した」

     

    イラン外相はこれまでも今後も、ロシアへドローンを提供しないとしている。事実と異なるだけに、信じ難い発言である。

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    ロシアのプーチン大統領は21日、「部分的動員令」を発表した際に核使用を仄めかしたことで、「核危機」が浮上している。米軍は、核を24時間体制で監視しているが、ロシア軍に対して非公式だが警告も与えているという。核を使用した場合、米軍が報復攻撃するという内容だ。

     

    一方、米諜報機関の情報によればプーチン氏が、自らウクライナ前線のロシア軍を指揮しているというのだ。前代未聞の話である。プーチン氏はウクライナ侵攻の結果が、自らの政治生命に直結する危機感に怯えている。こうなると、「部分的動員令30万人」も一部で報じられているように「100万人説」を否定できなくあろう。ともかく、プーチンの政治生命のかかる異常な戦争が繰り広げられている。

     


    米『CNN』(9月24日付)は、「米、ロシアに核兵器投入を警告 非公式接触で過去数カ月間」と題する記事を掲載した。

     

    複数の米政府当局者は24日までに、米国が過去数カ月間、非公式の接触手段を通じウクライナに侵攻したロシアに対し核兵器を使った場合、相応の結果を招くと警告してきたことを明らかにした。

     

    (1)「この接触手段の詳細や警告した時期などは即座にわかっていない。ただ、米政府当局者は米国務省が関与していることは認めた。バイデン米政権は、ウクライナ侵攻に備えた兵力集積や侵攻開始の時期に情報機関を通じて機微に触れるメッセージを伝えてきてもいた。ロシアのプーチン大統領は今月21日の演説で、ウクライナにおける戦況の劣勢が目立ち始めたことを受け、核兵器使用も威嚇していた。米政府当局者によると、プーチン氏が核兵器攻撃に触れたのは今年2月のウクライナ侵攻の開始以降、初めてではない。ただ、一部専門家は21日の威嚇は過去の類似の言動と比べ、より具体的かつ可能性の拡大をにじませたものと受け止めている」

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、プーチン氏がロシア軍に核投下を命じた際、ロシア軍がそれに従うか、と疑問符を投げかけている。これは、米国が非公式にロシア軍へ警告している事実を踏まえた記事であったことが分る。米情報当局は、これまでもロシア軍の動きについて相当微妙な部分までキャッチしていることから言えば、この「核警告」はロシア軍中枢へ届いているはずだ。

     


    仮に、ロシア軍が戦術核を投下した場合、米軍が直ぐに非核による殲滅的な報復攻撃することで、ロシア軍が壊滅的打撃を受けるとすれば、ロシア国内の反戦ムードは確実に高まる。それは、2024年のロシア大統領選挙に大きく響くことになろう。プーチン氏が、こういう「損得計算」をすれば、簡単に「核使用」という決断を下せないであろう。

     

    (2)「米中央情報局(CIA)の最高幹部らは公には、ロシアが核兵器の使用を準備している兆候はないと説明している。しかし、一部の軍事アナリストらはウクライナでの形勢の不利を踏まえ戦場での威力にとどめる戦術核を投入する事態を危惧してきた。米情報機関当局者たちは、プーチン氏はロシアあるいは自らの支配体制の存在が危険な局面に陥ったと判断した場合のみ、核の選択肢に頼る可能性があるとみてきた。ウクライナ戦争での敗北への直面がこれに該当するのかどうかは不明となっている」

     

    下線部のように、プーチン氏は自らの政治生命に関わる事態を防ぐべく核を使用すれば、逆に米国の報復攻撃によって、自らの政治生命が危険になる。こういう重大なリスクを背負っていることに気付くべきである。

     

    『CNN』(9月24日付)は、「ロシア軍、ウクライナ反攻への対応で意見割れる 米情報筋」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ軍の今月の進撃を受け、ロシア軍内でどのような対抗策が最善か、意見が割れていることが分かった。米国の諜報に詳しい複数の情報筋が明らかにした。ロシアは現在、ウクライナ東部と南部で守勢に立たされている。

     

    (3)「米欧の諜報に詳しい情報筋2人によると、ロシアのプーチン大統領は自ら戦場の将官に指示を与えている。これは現代の軍では異例の管理手法で、開戦当初からロシアに付きまとってきた指揮系統の機能不全を示唆していると情報筋は指摘す情報機関が傍受した通信では、ロシアの将校が互いに言い争ったり、母国の友人や親類とのやり取りで政府の意思決定について不満を漏らしたりする様子が確認できるという。情報筋の1人が明らかにした。また、ロシア軍幹部はどの地域の防衛線強化に集中すべきかでも一致できておらず、戦略をめぐる深刻な意見対立が生じているという」

     


    下線部のように、プーチン氏が戦場の将官へ作戦指示を与えているという。驚くべき「私兵化」である。軍務経験ゼロのプーチン氏が、手駒を動かすように軍隊を動かすのだ。古代の王になったような気分を味わっているに違いない。プーチンは「戦争狂」になった。ドイツのヒトラーは、塹壕の中からドイツ軍を指揮したが、プーチンも同じことを行なっている。「敗戦意識」が強くなってきたのだろう。


    (4)「
    ロシア国防省は、ウクライナの進撃が最も目立つ北東部ハルキウ州に軍を移動させていると主張するが、欧米の情報筋によると、ロシア軍の大部分は依然として南部にとどまっているという。ウクライナは南部ヘルソン周辺でも攻勢を掛けている」

     

    ロシア軍の主力部隊は、南部に止まっているという。ウクライナ軍のクリミア半島奪回作戦阻止という布陣だ。

     

     

    あじさいのたまご
       

    ロシアのプーチン大統領が、ついに奥の手を出してきた。9月21日発効で予備役30万人の動員令を下した。予備役とは、過去5年以内に徴兵制で現役であった人たちだ。ロシアには、200万人が登録されている。現役兵士は90万人在籍しているはずで、予備役まで動員することは、兵士の逼迫が激しいことを伺わせている。予備役30万人動員令によって、ロシア国内はパニックに陥っている。

     

    『中央日報』(9月22日付)は、「『なぜプーチンのために死ぬ必要が?』…ロシア動員令に『腕を折る方法』検索が急増」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「21日(現地時間)、『ニューヨーク・タイムズ』(NYT)や『ロイター通信』など複数の外信によると、この日ロシア38都市で動員令反対デモが起き、少なくとも1000人以上のデモ隊が警察に逮捕されたとロシアの人権監視団体「OVD-Info」が集計した。動員令の発表以降、ロシアでは市民の反発以外にも国外脱出ラッシュが続いている。モスクワからノービザに行けるトルコ(テュルキエ)、アルメニア、アゼルバイジャン行きの航空便が完売したとガーディアンは伝えた。


    これまで、ウクライナ侵攻への反戦デモは弾圧されてきただ、今回の予備役動員令で一挙に反戦ムードが高まる気配だ。ロシア国防省は、この日声明を通じて大学生を除く18~27歳の男性のうち、1年間の義務軍服務を終えた人たちが対象と発表した。徴兵対象が明らかになった以上、この人たちは海外脱出へ殺到している。

     


    『中央日報』(9月22日付)は、「『30万人動員令』にロシア脱出…高額のトルコ航空券も売り切れ」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアからトルコに向かう航空便が売り切れた。ロシアが予備軍部分動員令を下してから起きたことだ。

     

    (2)「21日(現地時間)、dpa通信は同日から週末までトルコに向かう航空便が動員令発表の数時間前にすでに売り切れたと、トルコ航空会社を引用して報じた。トルコ航空のウェブサイトでは今後3~4日間、モスクワからトルコ・イスタンブール・アンカラ・アンタリアに向かう飛行機便を購入することができない。航空券の価格も急騰した。モスクワ発イスタンブール行きの飛行機チケットの最低価格は、8万ルーブル(約18万円)から17万3000ルーブルへと2倍以上急騰した。トルコ航空関係者は「今のように需要が集中すれば追加航空便の配置も検討する可能性がある」と話した。また、他のトルコ航空会社のペガサス航空もモスクワ発イスタンブール行きの飛行機便が土曜日まで売り切れた。欧米の制裁でロシアからはアルメニア、アラブ首長国連邦やトルコなど限られた数カ国へのみ出国できる」

     

    欧米の制裁で、ロシアから出国できるのはアルメニア、アラブ首長国連邦やトルコなど数カ国のみ。航空券が手に入るかどうかが、兵役を逃れるかどうかの分かれ道である。気の毒に思う。2月24日のウクライナ侵攻以来、若者は大挙して出国している。特に、IT関係の技術者がすでに脱出した。

     


    (3)「ロシア上院は前日、下院が議決した軍紀違反兵士に対する処罰強化法改正案を承認した。改正案は動員令や戒厳令のうち部隊を脱走した兵士に対する最大刑量を従来の5年から10年に増やした。戦闘を拒否したり、上官の命令に不服従したりした兵士も最大10年の懲役を受けることができる。自主的に降伏した兵士は最大10年、略奪を犯した兵士は最大15年の懲役刑を受けることになる

    残酷である。前線兵士への締め付けを厳しくしており、下線のような罰則が強化される。大義のない戦争へ駆り出されて、しかも重罰を科すとは一体どういうことか。こうなった誰でも逃げ出すのが当然であろう。逃げ遅れれば、死が待っている。過酷な運命と言うほかない。気の毒だ。

     


    英『BBC』(9月21日付)は、「ロシアのプーチン大統領、予備役の部分的動員表明 『あらゆる手段』でロシア防衛と」題する記事を掲載した。

     

    プーチン大統領は国民向けのビデオ演説で、西側諸国はロシアとウクライナの和平など望んでいないとして、ウクライナ国民を犠牲にしてでもロシアを滅ぼすことが西側諸国の目的だと明らかになったと批判した。その上で大統領は、ロシアの目的はドンバスの解放だとして、「解放された土地」の住民を守るため緊急の判断が必要だと説明。「だから私は国防省に、部分的動員に合意するよう要請した」と述べた。

     

    (4)「プーチン氏の演説を受けてイギリスのベン・ウォレス国防相は、ロシアのウクライナ侵攻が失敗しつつあるしるしだと反応した。英国防省は、「国民の一部を動員しないという約束をプーチン大統領が自ら違え」たことで、「侵略が失敗しつつあると認めたことになる」というウォレス氏のコメントをツイート。その中で国防相は、「(プーチン氏)と国防相は何万人もの自国民を、満足な装備を与えず、粗末な指揮官のもと、死に追いやった。どれだけ脅してプロパガンダをまき散らしたところで、この戦争に勝ちつつあるのはウクライナで、国際社会は団結しており、ロシアが世界的なのけ者になりつつある事実は、隠しようがない」と述べた」

     

    厳しい言葉でのプーチン批判である。当然だ。他国領土を侵略しながら「大義」を語るその偽善性に唖然とする。独裁者とは、こういうロジックを使うのだ。習氏も台湾侵攻の際に、プーチン発言をなぞるのであろう。権力者の欲望が、人の生命を弄ぶ。許せない振る舞いだ。

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    ロシア軍が、ウクライナ侵攻を開始したのは2月24日早暁だ。すでに開戦後、6ヶ月を超えている。ウクライナ軍は、米英らの支援で長距離重火砲を揃え、ロシア軍と真っ正面から戦う体制を確立した。

     

    一方のロシア軍は、米軍の推計では最大8万人の死傷者が出ている。「大義なき戦争」と言われるだけに、ロシア軍は兵士の補充にも困難を極めているのだ。ロシア国防省は、こうした人員不足を埋め合わせるために、契約軍人を募集する。負傷兵を強制的に戦場に再投入する。民間の警備会社から人員を獲得する。徴集兵には、特別手当を支払うなど、と四苦八苦している。

     

    ロシア軍に兵士が集まらないのだ。この前代未聞の事態は、何を物語るのか。ウクライナ戦線で、ロシア軍が「劣勢」という事態が広く知れ渡っている結果であろう。ソ連軍は、かつて米ソ対立で世界を二分した戦闘力を擁したものである。その「後裔」であるロシア軍は現在、兵士の士気が低く囚人すら恩赦を与えて急造で兵士に仕立てているほどだ。そのロシア軍の「実力」を覗いて見た。

     


    『ブルームバーグ』(8月24日付)は、「
    吹き飛ぶ、6カ月の戦争で軍の実力不足が露呈」と題する記事を掲載した。

     

    プーチン大統領のウクライナ侵攻から6カ月がたった。この戦争で、ロシアの軍事力と経済に関する根本的な仮定が覆された。

     

    (1)「今年初めに米国が、ロシアのウクライナ侵攻が近づいていると警告した際、規模ではるかに勝り装備でも優れるロシア軍が短期間でウクライナ軍を圧倒するだろうと、欧米の当局者やアナリストは一様に想定した。プーチン氏は弱い自国経済に手足を縛られるだろうとの見方も示していた。米国のミリー統合参謀本部議長は議会で、キーウは侵攻開始から72時間以内に陥落する恐れがあるとすら警告した。バイデン大統領はロシアの通貨ルーブルを紙くずにすると述べた。一方、ロシア政府内でプーチン氏とその側近は、ウクライナを無能な指導者に率いられた分断国家で、戦う意思などないだろうと決めつけていた」

     

    米国は、事前にロシア軍の情報を世界に公表してウクライナ侵攻をけん制した。だが、米国の軍事支援は小規模であり、ウクライナ大統領に亡命を勧めたほどで、ウクライナ軍の即時「降伏」を予想していた。だがウクライナ軍は、NATO軍仕込みの「機動戦」で戦いロシア軍を圧倒した。勝因は、ロシア軍が第二次世界大戦当時の戦法であったことだ。ロシア軍は、短期決戦で勝利が付くとして、兵站に決定的な弱点を抱え、ここをウクライナ軍に突かれた。劣勢を余儀なくされている理由だ。

     




    (2)「こうした思惑は、全くの見当違いだったことが証明された。これが最終的に意味するところは、戦争の結果と同様に不透明だ。ウクライナはロシアとの戦争を半年持ちこたえ、独立を守っている。明らかなのは、プーチン氏が望んだようなロシアが世界の軍事大国として再び台頭する展開ではなく、ウクライナ侵攻でロシアの通常戦力の能力を巡り深刻な見直しが始まったことだ。中立だったフィンランドとスウェーデンは北大西洋条約機構(NATO)加盟を決意するなど、NATOのさらなる拡大も招いた」

     

    フィンランドとスウェーデンは、これまでロシア軍の戦力を過大視し、中立を余儀なくされて来た。だが、ロシア軍の実力を見て安堵。NATOへ加盟申請するまでになった。ロシア軍の報復を恐れなくなったのだ。

     


    (3)「
    ロシアは、「米国と軍事的に対等」でなく、米国よりも小さいNATO加盟国にすら劣ると、英スコットランドのセントアンドルーズ大学で戦略研究を専門とするフィリップス・オブライエン教授は指摘。今回の戦争で、ロシアは「英国やフランス、イスラエルが実行できるようなやり方で複雑な作戦を遂行できないことが明らかになった。その意味で、二流の軍事大国ですらない」と語った。ロシア軍の進軍が低調にとどまっている理由の一つは、軍が人員面の投資不足を隠しおおせると考えていたことで、これが戦争になってから明らかになったと、ワシントンの安全保障シンクタンク、CNAのロシア軍事力に関する専門家であるマイケル・コフマン氏は分析する」

     

    ロシア軍は、米国と軍事的に対等でなく、米国よりも小さいNATO加盟国にすら劣るという評価が出てきた。もっとも、こういう見解に反論がある。ロシア軍は、消耗戦が得意というのだ。つまり、兵士がいくら死傷しても前線から撤退しないというのである。これは、歴史的な戦争での話だ。

     

    現に、ロシア軍は兵士不足に悩んでいる。60歳までの兵士応募を認める、と「ウソ」のような本当の話が出ている。ウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」としているため、広く徴兵制度を敷けない矛楯に直面している。広い徴兵制にすれば、国民の反発を受けて「プーチン批判」が殺到する。よって、これは不可能なのだ。

     

    (4)「西側諸国の経済制裁が輸入を阻む中で、ロシアが技術的に進んだ兵器を生産する能力は一層後退する公算が大きい。ウクライナの戦場で奪取したり破壊したりしたロシアの軍用品に関する研究によって、ドローンやミサイル、通信装備など27の重要な軍用システムで450の外国部品が使われていたことが判明。これら部品の大半は米国製で、残りは主にウクライナを支援する諸国からだった

     

    下線部は、技術的後進国であるロシア軍が、兵器製造で経済制裁されている西側諸国の半導体に頼っている現実を浮き彫りにしている。中国は、このロシアから武器を輸入しているのだ。ロシアへの経済制裁は長期に続く以上、ロシア兵器は半導体不足で生産が不可能になる。よって、中国の武器輸入も止まるはずだ。台湾侵攻に大きな障害になろう。

     

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