勝又壽良のワールドビュー

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    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

    あじさいのたまご
       

    ロシアは、5月9日の対独戦勝記念日に「勝利宣言」するのでないかとの推測を呼んできた。最近は、「徴兵拡大」という守勢に立った方針を発表するのではとの観測が出ている。真逆の情勢変化である。

     

    軍事力で圧倒するロシア軍が、ここまで窮地に立たされている背景について、日本の軍事専門家は、戦術の拙さを指摘している。緒戦において、弱体と見られていたウクライナ軍が勇猛果敢な戦いを挑んでいることに度肝を抜かれ、士気が低下している面もあろう。

     

    『BS・TBS』(5月2日付『報道1930』)は、「『軍に決定的な欠陥が』、ロシアが『敗ける日』 これだけの理由 核攻撃を防ぐ方法はあるんです」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアが誇る「対独戦勝記念日」。この日までに戦果を挙げて、プーチン大統領は勝利宣言をするものと当初は見られていた。しかし、“勝利”は程遠いのが現状だ。ロシアは何故ここまで苦戦をしているのだろうか。その理由を探った。

     


    (1)「ウクライナ東部の攻防で、ロシア軍は苦戦を強いられていると伝えられる。その理由の1つは、侵攻の主力部隊「大隊戦術群=BTG」にある致命的な欠点だと、元陸上自衛隊東部方面隊のトップ・渡部氏は指摘する。「部隊の中の歩兵の少なさが致命的な欠陥。ロシアBTGは1000名の中で歩兵が200名しかいない。これは圧倒的に少ない。歩兵が少ないと攻撃する部隊の左右と後ろの安全を守ることも出来ない。戦闘初期にキエフの近くの道路でBTGの装甲車や戦車が長い列を作って並んでしまい、ウクライナ軍の攻撃を受けた。本来なら歩兵がしっかりと偵察をして、敵がいたらそれを掃討して前進しなければいけない」

     

    ロシア軍では、1000人の部隊で歩兵は200名しかいない。これが、致命的な欠陥という。歩兵による偵察が、不十分であると敵の逆襲に遭うからだ。

     


    (2)「このBTGには欠陥がもう1つある。BTGは指揮統制がものすごく難しいものだ。戦車の火力、後ろにいる長距離の榴弾砲の火力、これを密接に連携させてこそ部隊編成が完了する。戦車を機動しながら、火力を機動に合わせて効果的に連携させなければならない。部隊が大きければ、全体をコントロールするスタッフも増えるのでそれも難しくはないが、このBTG1000人の単位で、全てのものを連携させるのは難しい。今回の戦いを見ていると、訓練もあまりやれていないのではないか」

     

    1000人の部隊は、有機的に連動させなければならない。戦車の火力、後ろにいる長距離の榴弾砲の火力、それに歩兵の偵察が上手く噛み合わなければ有利な戦いは不可能という。

     

    (3)「ウクライナ東部は平原地帯だ。東部戦線は、戦車と戦車が激しく撃ち合う「大戦車戦」になると言われてきた。渡部氏は、大平原でロシア軍を食い止めるために、まず“障害”を作る。戦車が自由に動ける場所を限定的にしてある場所に引き入れる。その前に、地雷原や対戦車壕を作って戦車を止める。つまり、障害をつくって1カ所に敵戦車を集め、そこを狙い撃ちし、最後は両側からウクライナ軍が機動戦力を持ってロシア戦車を攻撃する。実際、ウクライナ側は、東部で大規模な戦車濠を掘削している映像を公開している」

     

    戦車と戦車が戦うのが、ウクライナ東部の主流になると予測されている。これは、相手の戦車群を上手く1カ所へ誘い込んで集中攻撃するのが定型の作戦という。相手を罠に仕掛けるのだ。ウクライナ軍は、戦車濠を構築して定型の大戦車戦を準備している。

     


    (4)「渡部氏は、
    ロシア軍には大戦車戦を展開するだけの戦車が、すでにないのではないかとする指摘もあるという。防衛研究所防衛政策研究室の高橋杉雄室長は、ロシア軍に戦車が3000両あり、そのうちの1000両が失われているとすれば、残りは2000両になる。予備は1万両あるといわれているが、すべてをウクライナに送るわけにはいかない。今後、難しい戦いになるということは言えると思う」

     

    ロシアには、大戦車戦を展開するだけの戦車群がこれまでの戦いで消耗して消えているという見方もある。そうなると、ウクライナ東部戦線で雌雄を決する戦車戦は、戦わずしてロシアに不利になりかねない。

     

    (5)「高橋室長は、「戦争では攻めている側(ロシア)の損害が大きいのは普通である。とりわけロシア側の作戦技量が今回は高くなく、かつウクライナ側は2014年から待ち受けていた戦場であることを考えると、こういうことは起こってもおかしくはない。ただウクライナも戦車はもともと現役850両なので、なかなか厳しい環境ではある。だからこそ、ポーランドが提供した200両というのはかなり大きな意味を持ったと指摘する」

     

    ロシアの戦車は構造的に脆弱であり、被弾すると戦車内の弾薬が一度に爆発する構造になっている。これまで、ウクライナ軍はこの弱点を突いて戦果を上げてきた。ただ、ポーランドから提供された旧ソ連型戦車はこういう弱点を抱えているはずで、その補強は済んでいるだろうか。

     


    (6)「兵器の損失が拡大するなか、ロシアを悩ませているのが戦力の補充だ。既に米国とEUは半導体や工作機械のロシアへの輸出を停止している。一方のウクライナには西側諸国から兵器の提供が続いている。アメリカはこれまで37億ドルの軍事支援をしていたが、4月末、更に204億ドルの軍事支援を表明した。このほか、30か国以上が50億ドル以上の軍事支援を約束したという。こうした点を踏まえ、渡部氏は「この戦争は長引けば長引くほどウクライナに有利になる。ロシアへの経済制裁が一番効くのは軍事産業」と指摘する」

     

    ロシアは、経済制裁で半導体や工作機械の輸入が禁止されている。武器生産にとって大きなマイナスである。ウクライナは、軍事支援による武器供給で有利な状況だ。立場が逆転しつつある。

     

    (7)「高橋室長、「今、ロシアはウクライナで第二次攻勢をかけているが、これが成功しても失敗してもロシアには第三次攻勢をかける力は残ってない。ドンバス決戦もどうやらロシアが決定的に勝てる状況にはなさそうだ。となれば、更なる資源の動員は必要で、そのために『戦争状態』ということで国家総動員体制に向けていくということではないか」

     

    ロシアは、兵員面でも枯渇してきた。国家総動員体制をかけなければ、戦えない状態になっている。

     

    (8)「ロシアが国家総動員体制となれば、形勢は一気に逆転するのだろうか? 渡部氏 「それは難しいと思う。戦い慣れた連中ではなく、まったく訓練を受けていない人がたくさん増えても即戦力にはならない。ロシアで総動員がかかれば、アメリカなどの民主主義陣営も徹底的にウクライナに支援をすることになる。その金額はものすごく大きくなる」 

    ロシアが、5月9日に国家総動員体制を取っても、戦況に変化はなさそうだ。肝心の武器供給が大きな制約を受けているからだ。ウクライナ戦争は、岐路に立っている。


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    ロシア軍は目下,他国の軍隊では滅多に見られないような事態が連続して起こっている。将官クラス7人の戦死のほかに、今度はロシア軍参謀総長という軍のトップがウクライナ東部の戦線で負傷したというのだ。軍の最高指導部が、このような「異変」に見舞われているのは、ウクライナ侵攻が芳しい結果が出ていない証拠と見られる。

     

    『中央日報』(5月2日付)は、「ロシア軍がまた屈辱、参謀総長『ウクライナで尻に破片、帰国』」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ東部戦線の最前方地域をロシア軍最高指揮官のゲラシモフ参謀総長が訪問した事実が明らかになった。ゲラシモフ総長はプーチン大統領、ショイグ国防相と共にウクライナ侵攻を計画したロシア軍の核心人物だ。



    (1)「5月1日(現地時間)の『ニューヨークタイムズ』(NYT)と英『デイリーメール』によると、ウクライナ当局者はゲラシモフ総長がこの数日間、ドンバスを含む東部戦線の最前方陣地を訪れていたと把握した。ゲラシモフ総長は4月30日、ロシア軍の占領地イジウムを経てロシアに戻ったという」

     

    ロシア軍のゲラシモフ参謀総長が、ウクライナの東部戦線を訪問した。ロシア軍最高指揮官が、危険な最前線に出たのは軍隊史上でも珍しいこととされている。戦線膠着を打開する指示を与える目的であったのであろう。

     

    (2)「ゲラシモフ総長はイジウムで脚と尻を破片で負傷したという報道もあった。『デイリーメール』は、ロシアの非公式情報筋を引用し、ゲラシモフ総長がイジウムで「骨折でなく破片による負傷」のため急いで帰国し、現在は手術を終えて命に別条はない状態だと報じた。続いて、「ゲラシモフ総長は(ドネツク州の要衝地)スラビャンスクに対する攻撃を指揮するためにウクライナ入りしたが、彼の負傷と帰国はロシア軍のもう一つの敗北」と伝えた。ウクライナ軍はゲラシモフ総長がロシアに戻った後、東部最前線の陣地を爆撃した。この攻撃で少なくとも1人の将軍を含む約200人のロシア軍が死亡したと、ウクライナ軍は主張した。匿名を求めた米当局者2人もゲラシモフ総長がウクライナ東部に数日間とどまったと確認した」

     

     

    ゲラシモフ総長は、現地部隊の士気高揚の目的もあったであろう。ウクライナ側が、この情報を把握していたことから見て、極めて危険な前線視察である。

     


    (3)「西側の軍事専門家らは、軍の最高位職が最前方に行くのは極めて異例だとし、ロシア軍内部の混乱の証拠かもしれないと分析した。ロシアは、ウクライナ全域を占領しようとした当初の目標を修正し、東部ドンバス地域に戦線を大幅に縮小して大々的な空襲を浴びせているが、明確な成果を出せずにいる。現在、ロシア軍は軍需物資資源と食料・燃料補給の支障など慢性的な兵たん問題、部隊間の意思疎通・協力問題などが解決せず、内部の不満が高まっている。ウクライナ軍の抗戦が続き、士気も落ちた状態だ。東部地域でロシア軍が占領した一部の村も、ウクライナ軍の反撃で少しずつ奪還されている状況という」

     

    下線部のように、ロシア軍のウクライナ東部の作戦は停滞している。兵士の士気が落ちているという。ウクライナ北部戦線で敗退してきただけに、ウクライナ軍への恐怖感が先立っているに違いない。戦争はロボットがするものでなく、感情のある人間が行なうもの。一度、苦手意識を持った相手とは、互角に戦えないのであろう。

     


    (4)「4月30日にペロシ米下院議長と共にウクライナを訪問したクロウ下院議員は、NYTに「ゲラシモフ総長の最前方訪問はロシアの状況が良くないとことを意味する」とし「ロシア軍の数千人が戦死して士気が落ち、東南部で攻勢が停滞したとみられる」と話した。一方、開戦から約2カ月間でロシア軍は少なくとも12人の将軍を失い、こうした状況は現代史に前例がないという西側の指摘が出ている。米政治専門メディアのザ・ヒルによると、1日、北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍の元最高司令官ジェームズ・スタブリディス氏は、WABC放送のラジオインタビューで「この2カ月間に少なくとも12人のロシア将軍が死亡したと聞いている」とし、「将軍の死だけ見ると、現代史でこのような前例はない」と述べた」

     

    米国の軍事専門家からも、ロシア軍の攻撃が稚拙であると指摘されている。第二次世界大戦当時の戦闘方式をとっていることと当初、ウクライナ軍を甘く見て無防備で進撃し全滅したトラウマから抜け出せないようである。ウクライナ軍は,NATO(北大西洋条約機構)から、最新の合理的な戦闘方式を学んでいる。この差が、大きく出ているに違いない。

     


    (5)「続いて、「米国は20年間にわたり戦争をしたアフガニスタン戦争はもちろん、イラク戦争の事例まで合わせて、実際の戦闘で戦死した将軍は一人もいない」とし、ロシア軍の無能は驚くほどだと評価した。また開戦後に引き続き提起されているロシア軍の兵たん問題、戦略不在、ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」沈没などに言及し、「ロシア軍の成果はみすぼらしい」と話した。スタブリディス元司令官は、米国南部指令官・欧州司令官を務め、欧州司令官在任中は欧州連合軍最高司令官も兼ねた」

     

    元米軍司令官からは、ロシア軍が無能なほどの戦い方であると見下されている。こうなると、「軍事大国ロシア」の評価はズタズタである。戦争の勝敗は、単純に兵士と武器の数で決まるのでないという教訓が、改めて思い起こされる。「兵站」という後方の支援体制を含めた総合戦力が、最終的な勝敗を決するものだ。ロシア軍は、この点でウクライナ軍に劣っているのだろう。

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    西側諸国が、ロシアのウクライナ侵攻を止めるには、経済的に追詰めることしかない。具体的には,ロシア産エネルギーの輸入をゼロにすれば大きな効果がでるものの、この分りきったことを早急に実現できないところに悩みがある。

     

    ウクライナのゼレンスキー大統領は4月14日、英『BBC』の単独インタビューに応じ、ロシア産原油を買い続ける欧州諸国について「他人の流血」でビジネスをしていると非難した。

     

    (1)「BBCのクライヴ・マイリー記者は、欧州がロシアにエネルギー供給のため1日10億ドルを払い続けている一方で、2月末以降に欧州がウクライナに提供した軍事援助は総額が10億ドルだと指摘。これをどう思うかゼレンスキー氏に質問した。これに対して大統領は、「いったいどうやったら他人の流血で金もうけができるのか、理解できない」と答えた。続けてゼレンスキー大統領はドイツとハンガリーを名指しし、ロシア産エネルギーに対する禁輸措置の実現を両国が阻止したと非難した。エネルギー輸出によるロシアの年間収入は、最大2500億ポンド(約41兆2000億円)に上るとされる」

     

    西側にとって長年、ロシアがまさかウクライナ侵攻に走るとは想像もしていなかった。特にドイツは、国内の原発を止めて、ロシア産エネルギーへ大幅に依存する体制を取った。これについて、米国は「エネルギー安保」の見地から、ドイツへ警告し続けてきたが無視されたもの。現在、ドイツは自国の甘い見通しによって大きな打撃を受けている。

     


    プーチン氏は、ドイツの対ロシアのエネルギー依存度を高め、ドイツに逃げられないようにしてウクライナ侵攻に着手したと見て良い。だが、「騙された」形のドイツは、意地でもロシア依存を早急に断ち切らなければならない立場に追い込まれている。ロシアにとっては、中長期的な大きな需要先を失うことになったのだ。

     

    米『CNN』(4月17日付)は、「完全な原油禁輸なら戦争は『1カ月内』に停止 ロシア大統領元顧問」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアのプーチン大統領の経済問題担当首席顧問を以前務めたアンドレイ・イラリオノフ氏は17日までに、西側諸国がロシア産原油の全面的な禁輸に踏み込んだ場合、ウクライナでの戦闘を即座に終結させ得るとの見解を明らかにした。

     

    (2)「同氏は英BBC放送の最近の取材に、「本当の意味での禁輸」を仕掛ければ、ウクライナでの軍事作戦は恐らく、「1、2カ月」で止まるだろうとも述べていた。イラリオノフ氏はCNNの今回の取材に、全面的な禁輸発動について「クレムリンの政策決定過程に影響力をもたらす、非軍事面で極めて重要な対応策」と強調。その理由は非常に単純とし、「現段階でロシアが原油や天然ガスの輸出で稼ぐ収益はロシアの全ての歳入の約4割を占めるとみなされる」と指摘。「連邦予算の編成では多分、全ての歳入源の6割近くまで達する」と指摘した」

     


    ロシア最大の輸出産業は、エネルギー(原油・天然ガス)である。これが、ロシア財政(歳入)の約4割も占めているのだ。西側諸国が、ここに的を絞り輸入禁止できる状態が可能になれば、ロシア財政が窮迫して戦争継続が著しく困難になるとしている。だが、現実には早期にそれを実行できない事情にあるのだ。

     

    (3)「同氏は、これら歳入がロシアのエネルギー輸出に対する全面的な禁輸で相当な規模で減らされたとしても、「中国に加えほかの小規模な輸入国が一部おり、我々は全面的な禁輸ではあり得ないと考えるだろう」とも説明。それでも、ロシア産のエネルギー源の大手の輸入国の大半に影響を与えることにはなるとした。また、ロシアが経済制裁を受けて金融市場を利用できず、ロシア中央銀行の外貨準備高が凍結されている現状を踏まえ、プーチン政権は財政支出を賄う財源を持っていないとも説明。「全ての支出額が40~50%削られ、この圧縮幅は1990年代にも見られなかった水準になる」とした」

     


    西側諸国が対ロシアに行っている経済制裁は、金融措置を含めて広範囲である。エネルギー輸入を大幅に削減できれば、ロシア経済が窮地に立つのは目に見えている。財政的に苦しくても、海外で資金調達できる可能性はゼロになっているだけに、「日干し」にされることは確実である。その時期が,いつ来るかである。米当局は、少なくも年末にならなければ無理と見ているようである。

    (4)「同氏はこれらの考察を踏まえ、プーチン政権は軍事作戦を止め、ウクライナとの間で何らかの停戦の枠組みや交渉を模索する局面に追い込まれるだろうとも予測した」

     

    ロシアを経済的に追込むことが、ロシアを停戦させる最大のテコになる。それまでは、無理というのが現在の見立てである。

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    ウクライナのゼレンスキー大統領は2日未明、定例のビデオ演説で、ロシア軍がウクライナ北部では「ゆっくりながらも目に見えてそれと分かる」ペースで撤退しているとした上で、ウクライナ東部の軍事状況は「引き続き、きわめて困難」だと述べた。

     

    ロシア軍は東部ドンバス地域や前線の都市ハルキウ(ロシア語でハリコフ)周辺に集結しつつあるため、東部で「あらためて強力な攻撃」が始まると予想し備えているのだと、大統領は説明した。「厳しい戦闘が待ち受けている。自分たちがすべての関門を通過したなど、思うわけにはいかない」と、ゼレンスキー氏は強調した。以上、英『BBC』(4月2日付)が伝えた。

     『BBC』(4月1日付)は、「ロシア軍は『撤退ではなく再編成』とNATO、ジョージアから部隊増派か」と題する記事を掲載した。

     

    北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は3月31日、ウクライナのロシア軍について、東部での攻撃を強めるために再編成しているとの見方を示した。英当局は、ロシア軍がジョージアから部隊を増派しているとした。

     

    (1)「ストルテンベルグ氏はこの日の記者会見で、「ロシアは再編成、再補給、再強化しようとしている」と述べた。ロシアは29日の停戦協議の後、首都キーウ(ロシア語でキエフ)とチェルニヒウ周辺での軍事活動を「大幅に」縮小すると表明した。しかし、ストルテンベルグ氏は、ロシア軍の動きは撤退と言えるものではないと話した」

     


    ロシア軍は、首都キーウ(キエフ)近郊から撤退している。ウクライナ軍が奪還していることで明らかだ。これは、ロシア軍の配置を変えるためのもので、東部戦線へ主力を向ける戦術と見られる。

     

    (2)「ロシア政府は現在、南東部ドンバス地方の「解放」に重点を置いているとしている。一方、イギリス当局は、ロシアがジョージアから1200~2000人規模の部隊を、補強のためウクライナに派遣しているとした。英国防省は、「ロシアがこのような方法で増強を計画していた可能性はきわめて低く、この侵攻中に想定外の損失を受け続けていることの表れだ」とツイートした。ストルテンベルグ氏は会見で、「都市への砲撃が続き、ロシアは一部部隊を配置し直している状況だ。ドンバス地方での活動強化を目的に部隊を移動している可能性が高い」と述べた」

     

    ロシアは、ジョージアから1200人以上の部隊をウクライナへ派遣している。開戦当初は、予想もできなかった事態に陥っている証拠という。はっきり言えば、ウクライナ軍に苦戦を強いられているのだ。

     


    (3)「イギリスのベン・ウォレス国防相も、ストルテンベルグ氏の見解に沿う警告を発した。ウォレス氏は、ロシアの戦術の変化は「後退ではない」とし、当初の軍事行動がうまくいかなかったため「焦点を変えている」とした。
    一方、アメリカの国防当局者は、キーウ周辺のロシア軍の約2割が再配置の動きを見せ始めたとの見方を明らかにした。この当局者は、ロシア軍がキーウ郊外のホストメリ空港をほぼ放棄したと説明。チョルノービリ(ロシア語でチェルノブイリ)原発からも撤退しているとした」

     

    ロシア軍は、開戦と同時に攻撃したキーウ周辺のホストメリ空港を放棄した。これは、東部戦線への移動を示唆しているという。

     


    (4)「ロシア軍は、地上でいくぶん部隊を分散させているが、上空では圧力をかけ続けている。キーウや北部チェルニヒウで空爆を継続している。南部の都市や町でも爆撃はやんでいない。ロイター通信によると、ウクライナのヴァディム・デニセンコ内相補佐官は、南部が主要な前線になっていると話した。ウクライナ空軍は3月31日夜、西側諸国に追加支援を求めた。兵器が旧型のため、ロシア軍に対抗できないとし、新型戦闘機F-15やF-16、アメリカのパトリオットミサイルや、ノルウェーのNASAMSミサイルの提供を呼びかけた。ウクライナ空軍はツイッター、「真実:空での優位性がこの戦争を決する要因であり、第2次世界大戦後のすべての戦争で鍵を握ってきた」とした」

     

    ウクライナ軍が、ロシア軍に勝利を収めるには戦闘機とミサイルの補強が必要としている。米国は、この要望にどのように答えるのか。ある時点で、決断しないとウクライナの犠牲を増やすばかりである。無駄死を増やすことを避けなければならない。

     


    (5)「米情報当局によると、ロシア軍は侵攻開始以降、東部であまり前進できていない。ウクライナ軍がロシア軍の動きを「行き詰まらせ」、「妨害」しているためだという。東部には、独立を一方的に宣言しているルハンスクとドネツクの両「人民共和国」がある。ロシアはそれを支援しており、2月24日の侵攻開始3日前には独立国家と承認した。ロシア軍の配置転換について、米情報当局はどのような効果を生むかまだ分からないが、長期化につながる可能性があるとした
     

    激戦を続ける東部では、ロシア軍の進出はわずかである。ウクライナ軍が、死闘を尽くしている結果だ。この抵抗を無駄にさせてはならない。長期戦が見込まれるというが、ロシアは財政的に一段と苦しくなろう。

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    第7代のドイツ首相(1998~2005年)を務めたゲアハルト・シュレーダー氏が、ドイツ全土から猛烈な非難の声に曝されている。ウクライナを侵略したプーチン大統領と親密な関係にあって、未だにロシアとの濃密な関係を続けていることが理由である。

     

    シュレーダー氏は25日、ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムの取締役に指名された。この後の2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が発生。シュレーダー氏は侵攻発生後も、「ロシアとの関わりを断つべきではない」とSNSへの投稿を行い、またロシア国営企業の役員も辞さなかったのだ。

     


    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(3月28日付)は、「シュレーダー元ドイツ首相、ロシアとの関係絶てず」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアがウクライナに侵攻した時、高額報酬でロシア政府系企業の取締役会に名を連ねていたかつての欧州首脳の大半は即座に、侵攻に抗議して辞任した。フィンランドからイタリア、フランスからオーストリアに至るまで、元首相がすぐさま取締役の職を辞した。辞任しなかった人物が1人だけいる。ドイツのシュレーダー元首相だ。

     

    (1)「ロシアのプーチン大統領を批判することを一切拒む態度に、元同僚とドイツ国民は当惑し、怒りを覚えている。「なぜ彼がこういうことをしているのか、とにかく分からない」とある元同僚はこう話す。「本当に理解しがたい」。この状況に対し、シュレーダー氏の事務所のスタッフが全員辞職し、同氏は地元ハノーバーから名誉市民権を剥奪された。同市が前回この処罰を下した相手は、死後のヒトラーだ」

     

    シュレーダー氏とプーチン氏との関係は、ソ連崩壊後からずっと続く盟友関係である。ドイツが、経済的にロシアへ深く食込むきっかけは、シュレーダー・プーチン両氏の親密関係に始まった。

     


    (2)「それでも、ドイツ社会民主党(SPD)元党首のシュレーダー氏は、クレムリンの支援を受けているロシア企業のポストを手放さなかった。今も国営石油大手ロスネフチと天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」運営会社の会長の座にあり、国営ガス大手ガスプロムでの最近の取締役候補指名を辞退していない。本人を知る人たちは、シュレーダー氏(がロシアとの縁を切らない)動機は極めて個人的なものでもあると主張する。1998年から2005年までドイツ首相を務めた同氏は、互いのトップ就任当初からプーチン氏と友情を築き、その関係が今日までずっと続いている」

     

    シュレーダー氏には、公私混同がある。プーチン氏がいくら親しい友人であっても、シュレーダー氏は決然とウクライナ侵略を非難すべきある。それが、元ドイツ首相を務めた人間の義務でもあろう。シュレーダー氏は、それをしなかったのだ。

     


    (3)「ある元高官によると、首相に就任したばかりの頃、シュレーダー氏は堅苦しい英語のせいで世界各国の首脳と親しい関係を築くことができなかった。だが、ベルリンの壁が崩壊した時に旧共産国の東ドイツに駐留するソ連国家保安委員会(KGB)工作員だったプーチン氏はドイツ語を流ちょうに話した。シュレーダー、プーチン両氏の家族はクリスマスに集まり、01年にはモスクワで一緒にそりに乗っているところを写真にとられている。よく似た幼少期も友情を育んだ。どちらも貧しい家庭の出身で、自らの才覚によってトップに上り詰めた」

     

    シュレーダー氏は貧しい家庭の生まれという。プーチン氏の場合、さらに複雑で出生の秘密を抱えている。こういう両氏が、互いの生まれ育った環境で理解し合い、刎頸の友になったのだろう。

     

    (4)「首相を退任して以来、シュレーダー氏は富豪になった。ロスネフチの決算報告は、同氏の報酬が年間60万ユーロ(約8100万円)であることを示している。ドイツメディアはノルドストリームでの給与が別途25万ユーロ(約3375万円)に上ると報じている。またシュレーダー氏はガスプロムの取締役候補に指名され、6月に承認が予定されている。さらに、ドイツ政府から月間約8000ユーロ(約1080万円:年間約1億2960万円)の年金も受給している。ウルシェル氏は言う。「60歳の誕生日に、政界を離れたら何をするか質問した。すると、ただ一言、『お金を稼ぐ』と言った。彼は自分の国に仕えたと感じている。今、そのお金を得る権利があると思っている」

     

    他人の懐を計算するのは悪趣味だが、シュレーダー氏は現在、相当の富豪になっている。ロシア企業の報酬が年間約8100万円、ノルドストリームが同約3375万円、ドイツの年金は同約1億2960万円である。合計すると、年間2億4435万円である。暮しに困ることはない。ロシア関連収入をすべて断っても、ドイツの年金だけで1億3000万円もあるのだ。

     


    (5)「
    今のところ、ウクライナについてシュレーダー氏が出した唯一の声明は、ビジネス向けSNS(交流サイト)のリンクトインのプロフィルに書き込んだものだ。「戦争と戦争に伴うウクライナの人々の苦しみは、できるだけ早く終わらせなければならない。それがロシア政府の責任だ」とある。シュレーダー氏の所属するSPD(社会民主党)は、元党首への対応でつまずいた。ショルツ首相は記者会見で、目に見えて腹を立てているようだ。4州のSPD支部はシュレーダー氏の党員資格を剥奪するよう求めた。だが、SPDに所属するニーダーザクセン州首相は同氏の名誉勲章を剥奪することを拒否し、今も連絡を取り合っている」

     

    シュレーダー氏の所属するSPDは、ショルツ首相の与党である。それだけに、ドイツ政府は、シュレーダー氏の振る舞いに困り果てている。SPD支部は、党員資格剥奪を求めるほど激昂しているのだ。

     


    (6)「政治的な反対勢力は、SPDのためらいに付け入った。CDU(キリスト教民主同盟)の人権問題担当の議会スポークスマン、ミヒャエル・ブラント氏は、シュレーダー氏に制裁を科すよう政府に求めた。「シュレーダー氏は元首相というよりも、プーチン氏の外国工作員だ」。シュレーダー氏が3月上旬にウクライナ危機を仲裁するためにモスクワを訪れたことが報じられた。会談からは何の成果も生まれなかった。ある元同僚は今、シュレーダー氏が事実上、プーチン支持に「追い込まれた」のではないかと考えている。「彼はいずれにせよ、もう政治的に終わった。もしかしたら今も昔も(プーチン氏の)親友なのかもしれない。だが今では、基本的にプーチン氏の従業員だ。同氏が過剰なお金を払うことでシュレーダー氏を堕落させた」と非難するのだ」

     

    野党CDUが、シュレーダー氏に制裁を科すべしと要求している。また、プーチン氏の外国工作員とまで罵倒される始末だ。ウクライナの人道被害が拡大されるほど、シュレーダー非難の声は高まる状況にある。

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