勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:ロシア経済ニュース > ロシア経済ニュース時評

    a0960_008527_m
       

    ロシアのプーチン大統領は、これまでウクライナ侵攻で核使用をほのめかし欧州を警戒させてきた。この問題が、欧州と中国との外交関係にも悪影響を与えてきた。中国の習国家主席は、3月の訪ロの際にプーチン氏へ核使用を警告したことが、『フィナンシャル・タイムズ』の報道で明らかになった。中国の外交関係者は、この警告を中国外交の成果として関係国へ喧伝しているという。 

    『フィナンシャル・タイムズ』(7月5日付)は、「習氏、プーチン氏に核兵器使わぬよう警告 ウクライナで」と題する記事を掲載した。 

    中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は3月、ロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナで核兵器を使用しないよう個人的に警告した。西側諸国と中国の当局者らが明らかにした。中国がロシアに暗黙の支援をしているにもかかわらず、戦争に懸念を抱いていることを示唆している。習氏が外遊をした時のことだ。

     

    (1)「中国政府のシニアアドバイザーは、核兵器使用をプーチン氏に思いとどまらせることは欧州との傷ついた関係を修復する中国の組織的運動の中心だったと語った。ロシアが2022年にウクライナに全面侵攻したことで、ロシアと中国は欧州の多くの国と対立することになった。中国は一貫して公式声明でウクライナでの核兵器使用に反対してきた。しかし、ウクライナを支援する多くの国は、このような抑止に対する中国政府の深い関与を疑ってきた。習氏がプーチン氏と「無制限」の協力関係を持ち、ロシアの主張と重なる「平和案」を掲げたことが背景にある」 

    中国は、ロシアのウクライナ侵攻で微妙な立場に立たされている。明確に「戦争反対」を発言しないことが、欧州との関係を悪化させているのだ。それだけに、中国はロシアへ核使用反対を明らかにして、欧州との関係改善を目指している。 

    (2)「習氏によるプーチン氏への警告は、中国が公の場での発言を密室で裏付けているという明るい期待を与えた一方、プーチン氏の核兵器使用を阻止するのに十分である関係性に悪影響が出る恐れもある。ある米政権高官は「中国はあらゆるレベルで、ロシアにメッセージを送ったことを手柄にしようとしている」と語った。中国外務省にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。しかし、ある元中国政府高官は、習氏がプーチン氏に核兵器を使用しないよう個人的に伝えたことを認めた。核兵器の使用に反対する中国の立場がウクライナ和平に関する政策提言書に含まれているとも指摘した」 

    中国外交関係者は、ロシアへの「核警告」を手柄にしているという。それだけ、警告効果があると認めているのであろう。

     

    (3)「共同声明で核兵器の使用を非難したのは、ほぼ間違いなく中国の意向で追加されたものだと、西側の安全保障当局者は付け加えた。もし、ロシアがウクライナで核兵器を使用すれば「中国にとってはマイナス面ばかりだ」とある当局者は語ったロシアのウクライナ侵攻は、中国からの支援に大きく依存しており、ロシアが重要な国際市場やサプライチェーン(供給網)から排除される経済制裁を乗り切ることに役立っている。昨年、中国によるロシアとの2国間貿易は過去最高の1900億ドル(約27兆5000億円)に達した。これは、中国がロシアのエネルギー購入を拡大し、ロシアが半導体を含む重要な技術を輸入できるようにしたためである」 

    ロシアが核を使用すれば、中国との関係悪化は必至である。経済面で中国の支援を受けているだけに、ロシア経済の窮迫は間違いない。

     

    (4)「中国政府のシニアアドバイザーによれば、この戦争は欧州と米国の間にくさびを打ち込もうとする中国の努力を台無しにする恐れがあるという。同人物は、ロシアがウクライナや欧州の協力国を核攻撃すれば、欧州が中国を敵対するリスクになると述べた。一方、中国がそのような行為を阻止するためにロシアに継続的に圧力をかけることは、欧州との関係改善につながるかもしれないという。北京の中国人民大学国際関係学院の時殷紅教授は「ロシアが核兵器を使用することを中国が承認したことは一度もないし、今後もないだろう」と述べた。もしロシアがウクライナに対して核兵器を使用すれば「中国はロシアからさらに距離を置くだろう」と付け加えた」 

    中国は、ロシアへ核攻撃させないことで欧州との関係を維持している面もある。それだけに、真剣であると指摘している。 

    (5)「ロシア大統領府に近い関係者によれば、ロシアの指導者は、戦術核兵器を使用した場合のシナリオを予測した結果、戦術核兵器がロシアに有利に働くことはないと独自に判断したという。核攻撃は、プーチン氏がロシアの一部と主張している地域を放射線で汚染された荒れ地に変えてしまう可能性が高いが、軍隊の前進を後押しすることはほとんどないと関係者は語った」 

    ロシア当局は、ウクライナでの核使用がロシアにプラスになることはないと認めている。

     

    (6)「ウクライナの反転攻勢が始まった6月、プーチンは再び核兵器について言及し、ロシアがベラルーシに戦術核弾頭を運搬したと述べた。しかしプーチン氏はすぐに、ロシア軍がウクライナの前進を食い止めているため、使用については「その必要はない」と付け加えた。この声明は中国でさえプーチン氏を使用に抑止することはできないかもしれないことを示唆していると米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブエフ氏は「核兵器は、プーチン氏がこの戦争に破滅的に負けることに対する究極の保険なのだ」と指摘する」 

    米国には、プーチン氏が核を破滅的敗北への「究極の保険」として認識しているのでないかと疑念を抱いている筋も存在する。

    118
       


    ウクライナ南部ヘルソン州で、カホウカ・ダムが決壊して多くの死傷者が出ている。原因究明などに当たっていた国際的な法律専門家チームは18日までに、ロシア側の仕業による「可能性が高い」とする初期段階の調査結果を明らかにした。『BBC』が報じた。一方、米紙『ニューヨーク・タイムズ』(NYT)は、専門家チームによって爆薬による破壊と報じた。事態は、新たな局面へ移っている。

     

    『BBC』(6月18日付)は、ダム決壊はロシアの仕業の「可能性大」、 国際専門家調査」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ南部ヘルソン州のカホウカ・ダムの決壊で原因究明などに当たっていた国際的な法律専門家チームは18日までに、ロシア側の仕業による「可能性が高い」とする初期段階の調査結果を明らかにした。

     

    (1)「チームは国際法律事務所「グロバール・ライツ・コンプライアンス」の所属で、ウクライナ検事総長室の調査作業を支援している。これら専門家は最近の2日間、ダム決壊の影響を受けたヘルソン州の被災地なども訪問。ウクライナの検察当局者や国際刑事裁判所の代表者も同行した。チームは今月6日に起きたダムの決壊は、「ダムの構造自体にとって重要な意味を持つ場所に爆発物が前もって仕掛けられていた可能性が高い」と結論づけた」

     

    下線のように、事前に爆発物が仕掛けられていたと指摘している。

     

    (2)「報道発表文で、証拠物件、地震感知のセンサーや最良の爆破専門家らとの話し合いなど活用出来るデータを総合的に分析すれば、決壊はダムの重要な場所に事前に隠されていた爆発物が主因だった可能性が強いことを示唆していると主張。決壊はダム施設の貧弱な管理方法が原因とする見方は「可能性が低い」とし、それだけではあのような壊滅的な破壊の威力を説明出来ないとした。チームはまた、同ダムがロシア軍に占領されていたことに注意を向け、爆破の実行役あるいはダム運用の監督業務担当者はダム施設への接近や現場の管理で相応の権限を必要としていただろうとも推測した」

     

    ダムの自然破壊という見方を否定している。ダムが、ロシア軍によって占領されていたことが重要としている。

     

    (3)「今回、調査に加わった英国人の弁護士は声明で、独自に集めた情報や確認などされた公開情報などを組み合わせれば、この段階ではロシア軍は意図的にダムを壊した可能性が高いことをうかがわせると断じた。国際人道法の下ではダムは本質的に民間インフラと想定されていると指摘。カホウカ・ダム近くの住民は攻撃が差し迫っていることを警告されず、氾濫(はんらん)が起きた地域からの退避を試みていた際、砲撃も受けていたとその非道さを訴えた」

     

    調査に参加した英国人弁護士は、ロシア軍が意図的に爆発したと、断定している。

     

    (4)「カホウカ・ダムの決壊は欧州では過去数十年間で最悪の産業災害あるいは環境災害の一つと受け止められている。村落全体の水没、農地を襲う洪水、停電に見舞われ飲み水を失った数万人規模の住民の苦境も伝えられている。ロシアはダム決壊への関与を一切否定し、ウクライナ側の工作と非難しているが証拠は示していない」

     

    農地が回復するまでに、約70年間もかかるとする見方が出ている。ロシアは、重大な犯罪を行ったと言うほかない。

     

    『ロイター』(6月18日付)は、「ロシアが爆発物仕掛ける カホフカダム破壊で証拠発見ーNYT」と題する記事を掲載した。

     

    米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、ウクライナのロシア支配地域にあるカホフカダムが今月破壊されたことを巡り、ロシアが仕掛けた爆発物によるものであることを示す証拠があると伝えた。

     

    (5)「同紙は16日、複数のエンジニアと爆発物の専門家の話として、調査の結果、ダムのコンクリート基盤を通る通路の爆発物が爆発したことを示唆する証拠が見つかったと報道。「この証拠はダムが、これを管理する側であるロシアが仕掛けた爆発物によって損傷したことを明確に示している」とした。これとは別に、ウクライナの検察当局を支援する国際的な法律専門家チームは16日、初期段階の調査で、ダム決壊はロシア側が仕掛けた爆発物によって引き起こされた可能性が「非常に高い」と表明した」

     

    NYTは、爆発物の爆発を示唆する証拠が見つかったと報じている。国際的な法律専門家チームの調査とは別の爆発部の専門家による作業としている。

    a0960_008527_m
       

    ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」は6月1日、ロシア大統領府がモスクワ市西部にある傘下の「中央臨床病院」敷地内に防空壕を新設する計画だと伝えた。

     

    病院は、郊外の大統領公邸と中心部のクレムリン(大統領府)の間に位置。防空壕はウクライナ侵攻下、プーチン大統領ら要人の避難場所に使われる可能性がありそうだ。 計画は公共事業サイトに掲載された。完成は今年12月下旬の予定。機密情報のやりとりに耐える通信機器を設置するという。『時事通信』(6月2日付)が報じた。

     

    ロシアのウクライナ侵攻は、遠い戦争から「近い戦争」と変わってきた。これは、確実にプーチン氏の戦争計画がいかにずさんで間違っていたかを証明する証拠になる。もはや「特別軍事作戦」どころの話でなく、モスクワまでが攻撃対象になって来たことを示している。

     

    『CNN』(6月2日付)は、「戦争がロシアの玄関口へ 今や安心できない近さに」と題するコラムを掲載した。筆者のマイケル・ボチュルキウ氏は、世界情勢アナリストで欧州安全保障協力機構(OSCE)の元広報担当官である。

     

    プーチン氏の甲冑(かっちゅう)には割れ目ができている。ロシア領への攻撃がますます頻発し、ロシア国内の他州にまで広がれば、いずれはプーチン氏の権力維持にとって重大な転換点が訪れる事態も考えられる。

     

    (1)「ロシア義勇軍団(RVC)と自由ロシア軍団による直近のロシア領越境侵入は、たとえ何らかの形でウクライナ政府との関連があったとしても見事なタイミングで遂行された。侵入に踏み切った時、ロシア軍は前線の別の地点に気を取られ、領土の獲得と占領地の防衛を試みていた。ロシア義勇軍団と自由ロシア軍団は、見たところウクライナを支持するロシアの義勇兵で、プーチン政権の打倒を目指している。RVCと異なり自由ロシア軍団は、ウクライナ軍司令部の指揮下で戦っていると主張。そこには「ロシア人としてウクライナ軍に加わり、プーチン率いる武装したギャングと戦いたい」との思いがある」

     

    ロシア人によって組織されている「ロシア義勇軍団(RVC)と自由ロシア軍団が、プーチン氏の始めた戦争へ「ノー」を突きつけている。これは、プーチン氏の「聖戦」を完全に否定するものだ。ロシア国民にとってはショックな出来事だろう。

     

    (2)「2つの反政府グループに関する情報が世界に広がり始めると早速、米紙ニューヨーク・タイムズはRVCのリーダーとネオナチの分裂派との関係にまつわる記事を発表した。従来これらのグループの名前は、現地の情報を密接に追っていた我々の間でさえもほとんど知られていなかった。仮にニューヨーク・タイムズの記事が事実なら、クレムリンの情報操作マシンがこれを利用し、ウクライナをナチスの温床として印象付ける可能性がある。これは今回の侵攻における誤った前提の一つだ」

     

    ロシアは、前記二つの「ロシア人部隊」を利用して、「ネオナチ」というデッチ上げ情報に利用する危険性がある。

     

    (3)「越境侵入がプーチン氏への脅威となるのか、なるとすればどれほどの大きさか、断定するのはほぼ不可能だ。しかし、自国内を移動するのに大統領専用機ではなく装甲列車に乗っていると伝えられる人物が、現時点で平穏な夜を過ごしているとは考えにくい。戦争がここまで全く計画通りに進んでいないのであればなおさらだ。ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジン氏ですら先週、国民が政権転覆に動くかもしれないと警告した。いわゆる「特別軍事作戦」がこのまま成果を挙げずに推移するなら、そうした状況も起こり得るという」

     

    「ロシア人部隊」による越境侵入は、ロシア国内で「反プーチン運動」を刺激する効果があろう。プーチン氏にとっては頭痛の種が増えた。

     

    (4)「プーチン氏がこの戦争を自分から終わらせることはないと考えるのは理に適う。停戦や和平協定に応じるつもりはないだろう。むしろ本人は、時間稼ぎをすることで勝利できると信じ込んでいるように見える。一般市民の巻き添え被害に、プーチン氏は決して関心を払わない。気にかけるのは自身の安全と権力のみだ。しかしここへ来て、モスクワと前線の間の緩衝地帯は急速に狭まりつつある。従って、自ら始めた戦争が安心できないほど近づく中、プーチン氏が現職に就く日数も目減りしていく可能性があると、筆者は考えている」

     

    プーチン氏は、9月過ぎに来年のロシア大統領選挙を控えて、何らかの「休戦交渉」を提案するとの予測が出ている。米国は、これを見越してウクライナへ7月までに反攻作戦の成果を出すようにと要請しているというのだ。「ロシア人部隊」の反プーチン作戦が、意外な形でプーチン氏を追い詰める材料の一つになる可能性が出てきた。「プーチン終わりの始まり」と見られる理由だ。

    あじさいのたまご
       


    中国のウクライナ「和平仲介」特別代表は、ドイツとフランスへも足を運んだ。その際、ロシアの占領を前提にした和平を提案したという。こういう無謀な提案を持って、各国を回った狙いは何か。ロシアへ恩義を売っていずれ「金を取る算段」ではないかという憶測が出ている。それほど、中国人商法は金に敏感だというのだ。

     

    『朝鮮日報』(5月27日付)は、「中国は請求書を忘れない」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・ボルチャン北京特派員である。

     

    今年3月、中国の習近平国家主席の訪ロ直後、中国のある実業家が「中国の国有企業は早くからシベリア工作組(事業団)を立ち上げていたが?」と言った。

     

    (1)「中国がウクライナ戦争で事実上、ロシアの側に立ってやる代価として、大規模なエネルギー支援を得ることを考えているという話だった。実際、4月1日に中国は、165年ぶりにロシアのウラジオストク港の使用権を取り戻した。外部からは、習近平のロシア注力を巡って「欧州に憎まれるばかりで実のない外交」と評されたが、中国は正確に値を付けて代価を受け取っている」

     

    中国は4月1日、165年ぶりにロシアのウラジオストク港の使用権を取り戻した。これは、ウクライナ「和平仲介料」という見方がされている。あり得ない話ではない。日本が2000年過ぎに、中国へODA(政府開発援助)で借款を供与していたころ、この資金をアフリカで「又貸し」していたことがあとから発覚した。日本が打ち切りを通告すると「逆ギレ」して、継続するように脅迫するほどだった。金にはきれいとは言えない民族である。

     

    (2)「自らを「商業主義大国」と称する中国の属性は、「絹商いの王書房」(韓国における中国人のステレオタイプのイメージ)そのものだ。他国を政治的な目的で助けるとしても、それ相応の経済的利得を別途手に入れる。だから、中国と手を組んだ国は二重に代価を支払わねばならないことが多い」

     

    中国は、賄賂の国である。汚職が絶えない背景である。金にきれいであるはずがない。

     

    (3)「習近平主席の力点事業である「一帯一路」に参加している中国金融機関の重鎮は、「カネを貸してやるとき、『返してもらえないかも』という心配はしない」とし、「現金で返してもらえないのなら港の使用権など利権で請求すれば済む」と語った。中国の友邦である北朝鮮すら、中国と取引する際、「取り立て」の日が来ると思うと慎重になる。朝中交易の中心地、中国・丹東と北朝鮮・新義州を結ぶ新たな橋が、完工してから10年たつのに北朝鮮側の拒否で開通していないことだけを見ても、北朝鮮の警戒心が読み取れる」

     

    多くの発展途上国が、一帯一路で債務付にされて財政破綻に追込まれている。中国が、担保の取り上げを狙って行った過剰融資の結果である。

     

    (4)「中国が最近、国際社会で「仲裁者」を自認しているのも、ある意味で新たな「国家ビジネスモデル」といえる。いわゆる「大国」の地位を利用し、世界の真っただ中で紛争を調停しつつ、仲裁費をたっぷり巻き上げようというのだ。今年3月、サウジアラビアとイランの国交正常化を仲介した後、サウジと中国の間で「中国元による取引」が急増した。中国最新の外交・安全保障政策パッケージである「発展・安全保障・文明イニシアチブ」は、外国がのぞいてみる「仲裁サービスマニュアル」になった」

     

    中国は、仲裁費を取り立てているという。人民元取引の拡大だが、ドル節約の手段に過ぎない。これが、人民元の基軸通貨化への準備などではないのだ。中国は、そのような実力を持っていない。資本移動の自由化もしていない国である。

     

    (5)「中国は、カネがなければ国際秩序を変えることはできず、経済的に米国に後れを取っている状況を逆転できない、と考えている。これは、中国が経済的利得を常に優先で気にかけ、「カネになること」であれば何であろうと全てやるだろうという予想を立てさせる。中国は米国と戦いつつも、米国企業のアップルとは親しい。見方によっては、中国こそが「政経分離」の標本なのかもしれない」

     

    中国の富は、こういうせせこましいことをしても増えるはずがない。貧しいから、こういう他国を欺くようなことをしているのだ。国家の品格を落とすだけである。

     

     

    caedf955
       

    ウクライナのレズニコウ国防相は2月5日、ウクライナ東部の要衝バフムトについて、「依然として象徴だ」と述べた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、昨年末の訪米時に米議会で、「バフムトの戦いは、独立と自由のための戦争であり、悲劇的な物語を変えるだろう」と述べた。この言葉通り、今もバフムトの戦いは続いている。

     

    ロシア軍は、正規軍や民間軍事会社ワグネルの傭兵を投入してバフムト攻略を続けている。ロシア軍が、多くの犠牲者を出しながら攻略できない理由は、ウクライナ軍の高い士気による反撃もさることながら、バフムトという地形が「天然の要塞」になっていることも大きく影響している模様だ。

     

    米『CNN』(2月7日付)は、「東部バフムト、天然の防御で『難攻不落の』要塞に ウクライナ軍司令官」と題する記事を掲載した。

     

    ウクライナ陸軍の司令官は6日、同国東部の都市バフムトについて、天然の防御により「難攻不落の要塞(ようさい)」になっているとの見方を示した。

     

    (1)「陸軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は、SNSのテレグラムで「この地域ならではの地理的な特徴がある。当該の都市は圧倒的な高台や丘に囲まれ、街自体が敵にとって罠(わな)になっている」と述べた。シルスキー氏によると、ウクライナ軍は天然の地形に沿って障害物を設置。それが現場の地域を難攻不落の要塞にし、数千人の敵が死亡する状況になっているという。「我々はあらゆる選択肢を用いる。技術的な能力のみならず自然の機能も活用して、敵の最もすぐれた部隊を撃滅する。戦闘は続いている」(シルスキー氏)と指摘」

     

    ロシア軍は、人海戦術による攻撃を繰返している。最も古典的な戦い方と言われている。この人海戦術には、ワグネルが集めた囚人部隊が投入されており、文字通り「屍を超えて」という悲惨な戦い方である。ウクライナ軍は、バフムトの高台に陣地を構えているので、天然の城(要塞)に守られている。

     

    (2)「ウクライナのゼレンスキー大統領は3日、「バフムトで降伏する者は1人もいない。我々は可能な限り戦うだろう」と述べていた。ロシア民間軍事会社「ワグネル」のトップ、エフゲニー・プリゴジン氏は5日、バフムトでは戦闘が続いており、ウクライナ軍に退却の兆候は見られないとテレグラムで明らかにした」

     

    攻撃側のワグネル創設者プリコジン氏は、このバフムト戦が「困難な戦い」であることを認めたテレグラムを公開した。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(2月7日付)は、「ワグネル創設者プリゴジン、バフムトでの苦戦を認める」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジンは25日、激戦が続くウクライナ東部の要衝バフムトの戦況について、ウクライナ軍を退却させるに至っていないことを認めた。ウクライナ軍は撤退も近いと言われたが、それは嘘だったのだろうか。

     

    (3)「プリゴジンは、「状況を明確にしたい。ウクライナ軍はどこからも撤退はしていない。ウクライナ軍は最後の最後まで戦い続けている。アルチョモフスク(バフムトのこと)の北部ではすべての街路、すべての住宅、すべての吹き抜け階段で、激しい戦闘が行われている」とテレグラムに投稿した。「もちろん、メディアがウクライナ軍の撤退を期待するのはありがたいが、北部でも南部でも東部でも(撤退は)起きていない」と指摘」

     

    バフムトは、数カ月間にわたってロシア軍の集中攻撃の対象となり、無数の砲撃にさらされてきた。バフムトの制圧を目指すロシア軍は、まだ勝利宣言するには至っていない。

     

    (4)「米シンクタンクの「戦争研究所」が5日に発表したレポートによると、ロシア部隊は「バフムトとブフレダルの周辺では攻勢を続けているが、ドネツク市西郊における攻撃のペースは落ちている」という。またレポートは、「ロシア軍の正規部隊、予備役、ワグネルを合わせ、バフムトの制圧に向けて(合わせて)数万人規模の部隊が投入されているが、すでにかなりの人的被害が出ている」としている」

     

    ロシア側は、バフムト攻略で数万人規模の兵員が投入して、多大の犠牲者を出している。これは、今後の大攻略戦に大きく響くことになろう。昨年10月、ロシア軍は大敗走したが、その再現が起こりかねないほど、バフムトに執着している。これでは、他の戦線で大穴を作りかねないだろう。

     

    (5)「米シンクタンク、ディフェンス・プライオリティ―ズで大規模戦略プログラムのディレクターを務めるラジャン・メノンは5日、本誌にこう語った。「ワグネルとロシア正規軍の合同部隊は何カ月にもわたってバフムトとソレダルを攻略しようとしてきたが、人数と火器、特に砲撃力に勝っているにも関わらず、最近になってようやくソレダルを制圧できたに過ぎない」

     

    ワグネルは特に、大きな人的被害を出している。中でも、プリゴジンが恩赦を約束して戦いに駆り出した不運な元受刑者たちの犠牲が大きい、という

     

    (6)「目下、ロシア軍はバフムトを3方向から包囲しているように見える。ならば、なぜウクライナ軍はここまで踏ん張っているのか。ウクライナ軍の狙いは、この戦いをできるだけロシア軍にとって犠牲の多いものにすることと、(敵の)部隊を足止めしてよそで使えないようにするなり、ドンバスの西側のウクライナ支配地域まで追いやることだ。血みどろの戦いだが、ウクライナ軍の士気を高めるとともに、ロシア軍の軍事的能力の低下につながっている

     

    下線部は、ウクライナ軍がバフムトを死守している理由を明確にしている。天然の要塞を利用して、ロシア側を引きつけ消耗戦を強いることである。ロシア軍は、この戦術に嵌り込んでいる印象だ。

     

    このページのトップヘ